JP3592959B2 - 水性樹脂分散体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水性を要する塗料やコーティング剤等に用いられる水性樹脂分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、無公害性、火災の危険性の少ないこと等の利点から、塗装用塗料、構造物の表面保護剤、耐水性や耐侯性の低い基材のコーティング剤等として、水性樹脂分散体が配合された水性塗料が汎用されている。
水性樹脂分散体は、通常、親水性物質である乳化剤を必要とする乳化重合で得られ、しかも、得られた水性樹脂分散体の安定性を確保するためには、乳化剤を多く使用したり、酸性基を有する単量体を共重合させたりするのが一般的である。ところが、乳化剤や酸性基を有する単量体のような親水性成分は、塗膜の耐水性、具体的には耐透水性、耐吸水性、耐水白化性等を低下させるという欠点があった。
【0003】
そこで、塗膜の耐水性を改良するために、水性樹脂分散体について種々の検討が行われている。その1つの手法として、親水性成分である乳化剤や酸性基を有する成分の低減と、水性樹脂分散体の小粒子径化とが考えられる。すなわち、親水性成分を低減し、小粒子径化により緻密な塗膜を形成することによって、塗膜内への水の浸入量を減らし、しかも、小粒子径化により粒子間隙間を微分散させることによって、浸入した水の局在化により生じる白化を防ぐことが期待される。
【0004】
しかし、単に親水性成分を減らした場合には、水性樹脂分散体の重合時の安定性や機械的安定性、化学的安定性が著しく低下するという問題を生じる。このような場合でも、粒子径を大きくすれば安定な水性樹脂分散体が得られるが、粒子径を大きくすると耐水性が低下することとなる。また、水性樹脂分散体を小粒子径化することについては、例えば、特開平10−182706号公報に、粒子径が小さく、残留モノマーの少ない水分散型樹脂組成物の製造方法が提案されているが、同号公報提案のものは、その製造に乳化活性をもつ水溶性ポリマーが大量に使用されているために、耐水性は期待できない。特開平9−302006号公報には、平均粒子径1〜50nmの超微粒子であり、かつ乳化剤含有量の少ないポリマーラッテクスの製造方法が提案されているが、同号公報提案のものは、固形分が極めて低いため、経済性が低く、実用性に欠けるという問題があった。特開平8−48705号公報には、シード重合法による重合安定性が高く、かつ粒子径分布が狭い共重合ラテックスが提案されているが、同号公報提案のものは、製造の際にシード粒子を別の反応釜で調製する必要があるので、工程が煩雑であり、時間を要するものであり、工業的に簡便な方法とは言いがたかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、耐水性に優れた水性樹脂分散体を得るべく、親水性成分である乳化剤および酸性基を有する重合性単量体の量が少なく、かつ、粒子径が小さく、しかも、実用に供し得るのに十分な樹脂固形分を有する水性樹脂分散体の工業的に簡便な製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記解決課題に鑑み、従来の水性樹脂分散体により形成される塗膜においては、水性樹脂分散体に含まれる親水性成分が塗膜への水の浸入の原因となっていること、そして、粒子間隔間に局在化した水が塗膜の白化の原因になっていること、に着目して、乳化重合の方法を種々検討した。その結果、全工程で使用する酸性基を有する重合性単量体と乳化剤との量を特定範囲の量としたうえで、乳化重合を初期重合と本重合とに分けて行い、初期重合工程において、全工程で使用する重合性単量体成分の合計使用量のうちの特定割合と、全工程で使用する乳化剤の量の特定割合とを、一括して仕込んで反応させ、一旦重合をほぼ完結させた後、本重合工程において、残りの重合性単量体成分と乳化剤とを反応させることによって、親水性成分の低減と小粒子径化とを両立させることができ、しかも、実用に供し得るのに十分な樹脂固形分を有する水性樹脂分散体を得ることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の水性樹脂分散体の製造方法は、酸性基を有する重合性単量体およびこれと共重合可能な他の重合性単量体を含む重合性単量体成分と乳化剤とを用い、初期重合工程とそれにつづく本重合工程とを経て水性樹脂分散体を製造する方法であって、前記酸性基を有する重合性単量体は、全重合性単量体成分の0.1〜5重量%を用い、前記乳化剤は、全重合性単量体成分の1〜3.5重量%を用い、前記初期重合工程は、全工程で使用する重合性単量体成分のうち5〜30重量%の重合性単量体成分と、全工程で使用する乳化剤のうち35〜95重量%の乳化剤とを一括して仕込んで反応させて、投入した重合性単量体成分の80重量%以上を重合させ、前記本重合工程は、前記初期重合工程を終えた反応系に、残りの70〜95重量%の重合性単量体成分と、残りの65〜5重量%の乳化剤とを追加して反応させて、重合性単量体成分を重合させる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の水性樹脂分散体の製造方法は、初期重合とこれに続いて行われる本重合とから構成される多段乳化重合によるものである。
初期重合とは、水性媒体、乳化剤、および全重合性単量体成分のうちの一部を混合させた状態で重合開始剤を添加することによって開始される重合を指す。初期重合においては、投入した単量体成分の80重量%以上、好ましくは90重量%以上を重合させて、重合体粒子の核を形成させる。初期重合では、使用する重合性単量体成分を機械攪拌により乳化させたプレエマルションとして添加して重合を始めてもよいし、水性媒体と乳化剤と重合性単量体との単なる混合状態から重合を始めてもよい。
【0009】
本重合は、初期重合を一旦完結させた後、具体的には、投入した重合性単量体成分の80重量%以上、好ましくは90重量%以上を重合させた後に、新たに重合性単量体成分を加えて行う重合を指す。本重合は、1段階で行ってもよいし、多段階にわける多段重合で行ってもよい。本重合を多段重合で行う場合は、前段までに用いた重合性単量体成分の80重量%以上、好ましくは90重量%以上が重合してから新たな重合性単量体成分を加えて反応させる。本重合での単量体の添加方法は、モノマーあるいはプレエマルションでの一括添加、分割添加、連続滴下等、適宜選択すればよく、多段で行う場合は各段で添加方法が同じであっても異なっていてもよい。
【0010】
本発明の水性樹脂分散体の主原料たる重合性単量体成分は、酸性基を有する重合性単量体と、この酸性基を有する重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体とから構成されるものである。本発明においては、全重合性単量体成分のうち、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%を初期重合工程で使用することが重要である。初期重合工程において用いる重合性単量体成分の量が5重量%未満であると、得られる水性樹脂分散体の粒子径が大きくなり易い。一方、初期重合工程において用いる重合性単量体成分の量が30重量%を越えると、重合初期の発熱が大きく、安全性に問題が生じる。
【0011】
酸性基を有する重合性単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物等のカルボキシル基を有する重合性単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホ(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する重合性単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系重合性単量体;等が挙げられる。特に、前記例示の酸性基を有する重合性単量体のうち、カルボキシル基を有する重合性単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましい。酸性基を有する重合性単量体は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。酸性基を有する重合性単量体は、初期重合および本重合のいずれか一方でのみ使用されてもよいし、両方で使用されてもよい。
【0012】
本発明においては、全工程で使用する酸性基を有する重合性単量体の合計使用量は、重合性単量体成分の合計使用量に対して0.1〜5重量%とすることが重要であり、好ましくは0.5〜2.5重量%とすることがよい。酸性基を有する重合性単量体の合計使用量を前記範囲とすることにより、親水性成分の含有量を低減することができ、ひいては耐水性に優れる水性樹脂分散体を得ることができる。酸性基を有する重合性単量体の合計使用量が0.1重量%未満であると、エマルションの機械安定性や化学安定性が低下することとなり、一方、5重量%を越えると、耐水性が損なわれることとなる。
【0013】
酸性基を有する重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体としては、具体的には以下のものが挙げられる。なお、以下に例示の重合性単量体は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
例えば、主な重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコールとのエステル形成反応により合成される(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル;等が挙げられる。
【0014】
例えば、酸性基以外の官能基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールとのモノエステル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル等のヒドロキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体;N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、アミノスチレン等のアミノ基を有する単量体;イソプロペニルオキサゾリン、ビニルピロリドン等のその他の官能基を有する単量体;等が挙げられる。
【0015】
例えば、多官能性の重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル単量体;(メタ)アクリル酸アリル等の(メタ)アクリル酸のアリルエステル;等が挙げられる。
【0016】
例えば、その他の重合性単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロスチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル等のハロゲン成分を有する単量体;等が挙げられる。
本発明において小粒子径化を効率的に行うためには、初期重合で使用する重合性単量体成分のうち、疎水性の強い重合性単量体を5重量%以上、好ましくは10重量%以上使用するのが望ましい。疎水性の強い重合性単量体としては、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノルマルオクチル、アクリル酸シクロヘキシル等の炭素数6以上のアルキル基を有するアクリル酸エステル;メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の炭素数4以上のアルキル基を有するメタクリル酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;等が挙げられる。これらの疎水性の強い重合性単量体は、初期重合において、単独で使用してもよいし、併用してその合計量が特定量以上になるように使用してもよい。
【0017】
本発明において水性樹脂分散体に良好な耐侯性を付与するためには、重合性単量体成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステル、紫外線安定化能を有する単量体、紫外線吸収能を有する単量体、アルコキシシラン基を有する単量体を用いるのが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル等のシクロアルキル基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物;(メタ)アクリル酸t−ブチル等の3級アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物;ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルアリルアミン等のアルコキシシラン基を有する重合性単量体;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、または2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノンとグリシジル(メタ)アクリレートとを反応させて得られる2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系単量体、および、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系単量体等の紫外線吸収能を有する単量体;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトイル−4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のピペリジン系単量体等の紫外線安定化能を有する単量体;等が挙げられ、これらの単量体のうちの少なくとも1つを使用するのが好ましい。
【0018】
本発明において、全工程で使用する乳化剤の合計使用量は、全工程で使用する前記重合性単量体成分の合計使用量に対して1〜3.5重量%とすることが重要であり、好ましくは1.5〜3重量%とすることがよい。乳化剤の合計使用量が1重量%未満であると、重合安定性、機械的安定性、化学的安定性等のエマルションの安定性が低下し易く、しかも、粒子径が大きくなり耐水性が低下する。一方、乳化剤の合計使用量が3.5重量%を越えると、耐水性が低下することとなる。
【0019】
さらに、初期重合において使用する乳化剤の量は、全工程で使用する乳化剤の合計使用量に対して35〜95重量%とすることが重要であり、好ましくは40〜80重量%とすることがよい。初期重合で用いる乳化剤の量を前記範囲とすることによって、本発明においては全工程で使用する乳化剤量が少ないにもかかわらず、効果的な小粒子径化が可能となる。初期重合で用いる乳化剤の量が35重量%未満であると、粒子径が大きくなり、一方、95重量%を越えると、本重合工程での重合安定性が低下するので、好ましくない。
【0020】
本発明において使用できる乳化剤としては、特に限定はなく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等の全ての界面活性剤を使用することができる。また、塗膜の耐水性をより向上させるためには、分子中に1個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤を使用するとよい。
【0021】
アニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;等を挙げることができる。
【0022】
ノニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物;等が使用できる。
【0023】
高分子界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;またはこれらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体等が挙げられる。また、クラウンエーテル類等の相関移動触媒は界面活性を示すので、界面活性剤として使用してもよい。
【0024】
重合性界面活性剤としては、具体的には、例えば、プロペニル−2−エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル、ポリオキシアルキルアリールサルフェート塩の構造を有し、かつイソプロペニル基もしくはアリル基を有する化合物等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシアルキルアリールエーテルの構造を有し、かつイソプロペニル基もしくはアリル基を有する化合物等のノニオン性重合性界面活性剤;等が挙げられる。
【0025】
本発明の乳化剤、特に、本重合で用いる乳化剤としては、前記例示の界面活性剤のうち、重合性基を有する乳化剤である重合性界面活性剤が好適に用いられる。重合性基を有する乳化剤を本重合工程で用いることにより、乾燥塗膜の耐水性に優れた水性樹脂分散体を得ることができる。また、本発明における乳化剤としては、前記例示の界面活性剤を1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、また、初期重合と本重合とで同じ種類のものを用いてもよいし、異種類のものを用いてもよい。
【0026】
本発明における乳化重合は、重合性単量体成分と乳化剤とのほかに、乳化させる際の媒体となる水性媒体、および、重合を開始させるための重合開始剤を用いて行うものである。
水性媒体としては、通常、水が使用され、必要に応じて低級アルコールやケトン等の親水性溶媒が併用できる。水性媒体の仕込みは、特に限定はされず、必要に応じ、初期重合工程、本重合工程と逐次段階的に仕込むことができる。水性媒体の使用量は、最終的に得られる水性樹脂分散体の固形分含量が35〜60重量%になるようにすることが好ましい。
【0027】
重合開始剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;過酸化水素、過酢酸、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物;等が挙げられる。
【0028】
重合開始剤の使用量は、特に限定はされないが、全重合性単量体成分の使用量に対して、好ましくは0.05〜1重量%であり、より好ましくは0.1〜0.5重量%であるのがよい。重合開始剤の使用量が多過ぎると、塗膜の耐水性を低下させ、一方、少なすぎると、重合速度が遅くなり、未反応の単量体が残存し易くなるので、いずれも好ましくない。重合開始剤は、1種類の使用でも2種類以上の併用でもよい。また、重合速度を速めるために、必要に応じて、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤や硫酸第一鉄等の金属塩を前記重合開始剤と併用することもできる。
【0029】
重合開始剤の添加は、得られる重合体粒子を細かくするために、初期重合工程で全使用量の40〜100重量%を添加するのが好ましい。添加方法は、特に制限はなく、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下等のいずれの方法であってもよい。また、重合の完了を速めるために、本重合工程で重合性単量体成分の添加終了前後に、重合開始剤の一部をさらに追加して添加してもよい。
【0030】
本発明においては、重合時に、重合開始剤のほかに、必要に応じて、連鎖移動剤を添加することができ、例えば、t−ドデシルメルカプタン等のチオール基を有する化合物を添加することができる。
本発明においては、重合の終了後、酸性基を有する重合体の酸性基の一部または全部を、アルカリ性物質で中和することもできるし、あるいは未中和のままであってもよい。
【0031】
中和剤は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の中和剤を使用することができる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類;等が挙げられる。前記例示の中和剤は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。中和剤としては、臭気や耐水性を考慮すると、アンモニア水やモノエタモールアミン等の低沸点アミンが好ましい。
【0032】
乳化重合の際の重合条件については、初期重合工程および本重合工程ともに特に限定されるものでなく、適宜選択すればよい。具体的には、重合温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃がよい。重合温度は、初期重合工程と本重合工程とで同じ温度であっても、異なる温度であってもよい。また、重合時間は、初期重合と本重合に対して、反応の進行状況に応じ、それぞれ、適宜選ぶことができ、反応開始から終了まで2〜8時間の範囲が好ましい。さらに、乳化重合は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。また、本発明においては、得られる塗膜物性を悪化させない範囲において、さらに、親水性溶媒を添加したり、公知の他の添加剤等を添加することもできる。
【0033】
本発明において得られる水性樹脂分散体は、固形分が35〜60重量%、好ましくは40〜55重量%となり、かつ、樹脂粒子の体積平均粒子径が50〜110nm、好ましくは70〜100nmとなる。水性樹脂分散体の固形分が35重量%未満であれば、水性樹脂分散体を塗料等として塗布した場合に非経済的で実用に供しえないこととなり、一方、固形分が60重量%を越えると、重合安定性が損なわれることとなるため、好ましくない。また、樹脂粒子の体積平均粒子径が50nm未満であると、重合安定性が損なわれることとなり、一方、110nmを越えると、水性樹脂分散体を塗料等として塗布した場合に良好な耐水性が得られにくい。
【0034】
本発明においては、前述のように、他の重合性単量体として紫外線安定性の重合性単量体や紫外線吸収性の重合性単量体を用いることによって、得られる水性樹脂分散体に耐侯性を付与することができるが、得られた水性樹脂分散体に、紫外線安定化能を有する物質や紫外線吸収能を有する物質を配合することによっても、耐侯性を付与することができる。例えば、重合性基をもたない低分子量の紫外線安定剤や紫外線吸収剤を、本発明で得られた水性樹脂分散体に添加したり、水性樹脂分散体の重合時に重合性単量体とともに添加したりすればよく、あるいは、前記の紫外線安定性の重合性単量体や紫外線吸収性の重合性単量体を別に重合して得た高分子量の水溶性樹脂または水分散型樹脂を添加してもよい。
【0035】
本発明で得られた水性樹脂分散体は、そのまま使用してもよいし、多官能イソシアネートや多官能ヒドラジン等の硬化剤を添加して使用してもよい。また、必要に応じて、さらに公知の添加剤、例えば、成膜助剤、顔料、分散剤、増粘剤、防腐剤、充填剤、帯電防止剤、艶消し剤等を配合して使用してもよい。
本発明により得られる水性樹脂分散体は、風雨に曝される構造物の保護用や窯業系無機建材、木材、紙等の耐水性の低い基材の保護用等のコーティング剤用途等に広く用いられる。また、本発明により得られる耐侯性を備えた水性樹脂分散体は、長期にわたる美観の維持や基材の保護が要求されるコーティング用途に適しており、しかも、顔料の有無に関わらず使用可能であり、乾燥条件も常温乾燥から加熱乾燥まで用途に合わせて適宜選択することができるものである。
【0036】
本発明により得られる水性樹脂分散体は、耐水性改良剤として、他の水性樹脂分散体や水溶性樹脂とブレンドして使用することもできる。特に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等の耐侯性樹脂や、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の耐食性樹脂と組み合わせることは有効な使用方法である。
【0037】
【実施例】
以下に、実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で得られた水性樹脂分散体は、下記の測定法や計算法で物性を測定するとともに、評価試験に供した。
【0038】
<固形分>
精秤した試料1gを110℃の熱風乾燥機中で60分間乾燥し、乾燥残量を固形分として、乾燥前の重量に対する比率を重量%で表示した。
<粒子径>
動的光散乱法による粒子径測定装置(HIAC/ROYCO INSTRUMENTS DIVISION 社製NICOMP Model 370)を用いて測定した。粒子径は体積平均粒子径で示した。
【0039】
・試験板の作成
試料の水性樹脂分散体100重量部に、ブチルセロソルブ(成膜助剤)の75%水溶液5.8重量部を添加して、試験液を調製した。アプリケーターを用い、乾燥後の膜厚が約60μmとなるように試験液をガラス板に塗工し、このガラス板を100℃の熱風乾燥機中で10分間乾燥させて、試験板を作成した。
【0040】
<耐水白化試験>
前記試験板を脱イオン水中に浸漬し、室温で7日間保持した。7日間浸漬試験した試験板を目視観察して白化の程度を評価した。試験結果は下記のごとく記号で区分し、◎、○および△を合格とした。
◎:異常なし、○:僅かに蛍光色を帯びる、△:蛍光色を帯びる、×:白化する
<耐温水白化試験>
60℃の温水で24時間保持したこと以外は、前記耐水白化試験1と同様にして試験を行い、膜の白化度を評価した。◎、○および△を合格とした。
【0041】
[実施例1]
初期重合工程:
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに脱イオン水820.65gと、ハイテノールN−08(第一工業製薬製)の15%水溶液48.0gと、ノニポール200(三洋化成製)の25%水溶液14.4gと、メチルメタクリレート47.7gと、ブチルアクリレート40.5gと、アクリル酸1.8gとを仕込み、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に75℃まで昇温した。昇温後、5%の過硫酸カリウム水溶液を54.0g添加し、重合を開始した。反応系内を80℃で10分間保持した後、初期重合を一旦終了した。この時、添加したモノマーの80重量%以上が反応していることを、固形分から確認した。
【0042】
本重合工程:
初期重合反応終了後、反応系内を80℃に維持したまま、ハイテノールN−08(第一工業製薬製)の15%水溶液31.8gと、ノニポール200(三洋化成製)の25%水溶液9.7gと、脱イオン水228.5gと、メチルメタクリレート429.3gと、ブチルアクリレート364.5gと、アクリル酸16.2gとからなるプレエマルションを、180分間にわたって均一滴下した。滴下後、脱イオン水20gで滴下ロートを洗浄し、その洗浄液をフラスコ内に添加した。その後、60分間、反応系内を80℃に維持し、重合を終了した。
【0043】
次に、反応系内を50℃にまで冷却し、25%アンモニア水14.1gを添加し、同温度で10分間攪拌した。攪拌後、室温にまで冷却し、100メッシュの金網で濾過して、水性樹脂分散体を得た。固形分、粒子径、および耐水白化試験、耐温水白化試験の結果を表1に示す。
[実施例2〜5]および[比較例1〜4]
重合性単量体成分および乳化剤の種類を表1および表3に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして水性樹脂分散体を得た。なお、いずれの例でも、初期重合工程において添加したモノマーの80重量%以上が反応していることを、固形分から確認した。固形分、粒子径、および耐水白化試験、耐温水白化試験の結果を表1および表3に示す。
【0044】
[実施例6]
初期重合工程:
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに脱イオン水826.9gと、アクアロンHS−10(第一工業製薬製)の25%水溶液28.8gと、アクアロンRN−20(第一工業製薬製)の25%水溶液14.4gと、メチルメタクリレート69.3gと、2−エチルヘキシルアクリレート19.8gと、アクリル酸0.9gとを仕込み、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に75℃まで昇温した。昇温後、5%の過硫酸カリウム水溶液を54.0g添加し、重合を開始した。反応系内を80℃で10分間保持した後、初期重合を一旦終了した。この時、添加したモノマーの80重量%以上が反応していることを、固形分から確認した。
【0045】
本重合工程:
初期重合反応終了後、反応系内を80℃に維持したまま、アクアロンHS−10(第一工業製薬製)の25%水溶液13.4gと、アクアロンRN−20(第一工業製薬製)の25%水溶液6.7gと、脱イオン水99.8gと、メチルメタクリレート259.2gと、2−エチルヘキシルアクリレート79.2gと、アクリル酸3.6gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート18.0gとからなるプレエマルションを、80分間にわたって均一滴下した。滴下後、脱イオン水20gで滴下ロートを洗浄し、その洗浄液をフラスコ内に添加した。その後、30分間、反応系内を80℃に維持し、重合を終了した。この時、添加したモノマーの80重量%以上が反応していることを、固形分から確認した。
【0046】
次いで、反応系内を80℃に維持したまま、アクアロンHS−10(第一工業製薬製)の25%水溶液5.8gと、アクアロンRN−20(第一工業製薬製)の25%水溶液2.9gと、脱イオン水139.2gと、メチルメタクリレート162.0gと、2−エチルヘキシルアクリレート256.5gと、アクリル酸4.5gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.0gと、グリシジルメタクリレート18.0gとからなるプレエマルションを、100分間にわたって均一滴下した。滴下後、脱イオン水20gで滴下ロートを洗浄し、その洗浄液をフラスコ内に添加した。その後、60分間、反応系内を80℃に維持し、重合を終了した。
【0047】
次に、反応系内を50℃にまで冷却し、25%アンモニア水7.1gを添加し、同温度で10分間攪拌した。攪拌後、室温にまで冷却し、100メッシュの金網で濾過して、水性樹脂分散体を得た。固形分、粒子径、および耐水白化試験、耐温水白化試験の結果を表2に示す。
[実施例7]
重合性単量体成分および乳化剤の種類を表2に示すように変えた以外は、実施例6と同様にして水性樹脂分散体を得た。なお、初期重合工程において添加したモノマーの80重量%以上が反応していることを、固形分から確認した。固形分、粒子径、および耐水白化試験、耐温水白化試験の結果を表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
なお、表中、重合性単量体成分および乳化剤は、以下の略号で示した。
MMA:メチルメタクリレート、2EHA:2−エチルヘキシルメタクリレート、AA:アクリル酸、St:スチレン、CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、HEMA:2−ヒドロキシエチルヘキシルメタクリレート、GMA:グリシジルメタクリレート、BA:ブチルアクリレート
表1から明らかなように、実施例1〜実施例5は、重合性単量体成分が本発明の範囲を満足する組成であるので、粒子径が小さく、耐水白化性および耐温水白化性が良好であり、固形分も十分に高い水性樹脂分散体であった。また、表2から明らかなように、実施例6および実施例7は、本重合を2段に分けて滴下法にて行ったので、耐水白化性および耐温水白化性に特に優れたものであった。
【0052】
一方、表3から明らかなように、比較例1は、全乳化剤の使用量が本発明の範囲よりも高いので、耐水白化性および耐温水白化性に劣るものであった。比較例2は、初期重合工程で用いた乳化剤量が本発明の範囲よりも少なかったので、粒子径が大きく、耐水白化性および耐温水白化性に劣るものであった。比較例3は、酸性基を有する重合性単量体の含量が本発明の範囲よりも多いので、耐水白化性および耐温水白化性に劣るものであった。比較例4は、初期重合工程で用いる重合性単量体成分の量が本発明の範囲よりも少なく、しかも全乳化剤の使用量が少ないので、粒子径が大きく、耐水白化性および耐温水白化性に劣るものであった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、水溶性成分である乳化剤および酸性基を有する重合性単量体の量が少なく、かつ、粒子径が小さく、しかも、実用に供し得るのに十分な樹脂固形分を有する水性樹脂分散体の工業的に簡便な製造方法を提供することができる。
【0054】
そして、本発明により得られる水性樹脂分散体は、風雨に曝される構造物の保護用や窯業系無機建材、木材、紙等の耐水性の低い基材の保護用等のコーティング剤用途等に広く用いられる。
Claims (4)
- 酸性基を有する重合性単量体およびこれと共重合可能な他の重合性単量体を含む重合性単量体成分と乳化剤とを用い、初期重合工程とそれにつづく本重合工程とを経て水性樹脂分散体を製造する方法であって、
前記酸性基を有する重合性単量体は、全重合性単量体成分の0.1〜5重量%を用い、
前記乳化剤は、全重合性単量体成分の1〜3.5重量%を用い、
前記初期重合工程は、全工程で使用する重合性単量体成分のうち5〜30重量%の重合性単量体成分と、全工程で使用する乳化剤のうち35〜95重量%の乳化剤とを一括して仕込んで反応させて、投入した重合性単量体成分の80重量%以上を重合させ、
前記本重合工程は、前記初期重合工程を終えた反応系に、残りの70〜95重量%の重合性単量体成分と、残りの65〜5重量%の乳化剤とを追加して反応させて、重合性単量体成分を重合させる
水性樹脂分散体の製造方法。 - 本重合工程で使用する乳化剤として、重合性基を有する乳化剤を使用する、請求項1に記載の水性樹脂分散体の製造方法。
- 初期重合工程で用いる重合性単量体成分として、炭素数6以上のアルキル基を有するアクリル酸エステル、炭素数4以上のアルキル基を有するメタクリル酸エステル、芳香族ビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの疎水性単量体を使用し、かつ、前記疎水性単量体の合計使用量を、初期重合工程での重合性単量体成分使用量に対して5重量%以上とする、請求項1または2に記載の水性樹脂分散体の製造方法。
- 固形分が35〜60重量%であり、かつ、樹脂粒子の体積平均粒子径が50〜110nmである水性樹脂分散体を得る、請求項1から3までのいずれかに記載の水性樹脂分散体の製造方法。
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