JP3641650B2 - 繰り返し大変形に対する耐久性が改善された成型クッション材及びその製造方法 - Google Patents

繰り返し大変形に対する耐久性が改善された成型クッション材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維集合体をマトリックスとする成型クッション材およびその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、寝具、ベット等の繰り返し大変形を受けやすいクッション材や、複雑な形状に成型する乗り物用座席や家具、事務用椅子等のクッション材として有用な成型クッション材及びその製造方法に関する。
【0002】
ここで、”大変形”とは、クッション材が圧縮変形を受けるとき、変形前のクッション材の厚みを基準として、その厚みが50%以下となることをいう。
【0003】
【従来の技術】
従来、繊維集合体を成型表面に空気透過性モールド表面にスキャンニングしつつ積層・載置することによるクッション材の型詰め・成型方法(特開平6−31062号公報)が知られている。しかし、この方法では、融着性繊維を混入した短繊維集合体をモールド内に詰め込んで、熱処理を施すことによりクッション材を成型する方法は、該融着性繊維が熱に対して敏感で収縮率を低く出来ず、また非融着性繊維も、この熱処理条件下では収縮を起こすことが多いために、クッション材成型中に短繊維の収縮が起こり、成型されたクッション材が、モールドの寸法より大幅に小さくなってしまうといった現象が避けられない。また、得られるクッション材は、繰り返しの大変形に対する耐久性に劣るので、寝具、ベット等の用途には好適ではなく、更に、該クッション材は、乗り物用座席や家具、事務用椅子等に用いたとき、フィット性、荷重支持特性にかけていた。
【0004】
先に、本発明者等は、一種類の融着繊維とマトリックスとしての非弾性ポリエステル系捲縮短繊維とを用いる系(国際公開番号 WO91/19032等)につき提案を行った。該系では、一度平面マット状に融着成型した短繊維集合体に対し、カットなどを行い、モールド内に詰め、再度融着させることを考えたとき、融着結合部がずれたりして強固な熱固着点(ここで、熱固着点とは短繊維同士が熱処理により融着した結合部分をいう。)が形成されず、また、エラストマーのように耐熱性の悪い低融点ポリマーを融着成分としただけでは、クッション成型時に少なくとも2回は融点以上の加熱を受けるために低融点成分が熱劣化を起こし、得られるクッション材が、繰り返しの大変形に対する耐久性等の低下等をおこしてしまうといったことも想定される。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
本発明の目的は、物性の劣化を起こしにくく、繰り返し大変形に耐久性があり、人体やその他の複雑な形状の物に対しフィット性及び荷重支持特性が優れ、通気性が高い成型クッション材を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、上記成型クッション材を、モールド内での収縮を小さく、モールド寸法に近い形状で成型でき、しかも、局所的に密度や凹凸形状が任意にコントロールできる成型クッション材の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく、本発明者等は、繰り返しの大変形の耐久性に対して、鋭意研究を重ね、クッション材内部の熱固着点の融着結合部の強度がこの耐久性に影響を与えており、更に、強度のみを上昇させるだけではクッション材全体としての性能が劣ることを見いだした。更に、本発明者等は、クッション材中に適度な強度の熱固着点と、少量の比較的大きな強度の融着結合部を散在させることでクッション材全体としての性能が格段と向上することを究明し、本発明を想到するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)集合体をマトリックスとする成型クッション材において、
該短繊維(A)集合体が、成型クッション材重量を基準として40〜90重量%を占め、更に、下記(1)および(2)に夫々示す、融着性短繊維(B)および融着性短繊維(C)との少なくとも2者が融着成分として、短繊維(B)の混入率が短繊維(C)の混入率より大となるよう分散・混入され、
その際、該成型クッション材中には、下記(d)〜(h)に示すような熱固着点が散在し、且つ熱固着点(e)の融着結合部破断強度が熱固着点(d)の破断強度より大であることを特徴とする、繰り返し大変形に対する耐久性が改善された成型クッション材が提供される。
(1)短繊維(A)を構成する非弾性ポリエステル系ポリマーの融点より40〜150℃低い融点を有する熱可塑性エラストマーからなる、融着成分としてのポリマー(b)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(b)が少なくとも表面に露出した短繊維(B)。
(2)短繊維(B)を構成するポリマー(b)の融点より25〜130℃低い融点を有する、融着成分としての低融点ポリエステル系ポリマー(c)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(c)が少なくとも表面に露出した短繊維(C)。
(d)短繊維(A)と短繊維(B)との熱固着点。
(e)短繊維(A)と短繊維(C)との熱固着点。
(f)短繊維(B)と短繊維(C)との熱固着点。
(g)短繊維(B)同士の熱固着点。
(h)短繊維(C)同士の熱固着点。
【0016】
また、本発明によれば、
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)集合体をマトリックスとする成型クッション材の製造方法において、
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)を、成型クッション材重量を基準として40〜90重量%と、下記(1)および(2)に夫々示す、融着性短繊維(B)および融着性短繊維(C)との少なくとも3者を、短繊維(B)の混入率が短繊維(C)の混入率より大となるように混綿し、ウェッブ化した後、その複数枚を積層し、短繊維(C)中のポリマー(c)の融点以上、短繊維(B)中のポリマー(b)の融点未満の温度で予備熱処理を施し、下記(e)、(f)および(h)に示す熱固着点を形成して得たマット状成型体をカットし、モールド内に詰めた後、短繊維(B)中のポリマー(b)の融点以上、短繊維(A)を構成するポリマーの融点未満の温度で熱処理を施して、下記(d)および(g)に示す熱固着点を形成すると共に、下記(e)、(f)および(h)に示す熱固着点における融着結合部の破断強度を増加させるように成型する、前記の繰り返し大変形に対する耐久性が改善された成型クッション材の製造方法が提供される。
1)短繊維(A)を構成する非弾性ポリエステル系ポリマーの融点より40〜150℃低い融点を有する熱可塑性エラストマーからなる、融着成分としてのポリマー(b)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(b)が少なくとも表面に露出した短繊維(B)。
(2)短繊維(B)を構成するポリマー(b)の融点より25〜130℃低い融点を有する、融着成分としての低融点ポリエステル系ポリマー(c)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(c)が少なくとも表面に露出した短繊維(C)。
(d)短繊維(A)と短繊維(B)との熱固着点。
(e)短繊維(A)と短繊維(C)との熱固着点。
(f)短繊維(B)と短繊維(C)との熱固着点。
(g)短繊維(B)同士の熱固着点。
(h)短繊維(C)同士の熱固着点。
【0024】
本発明において非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトンまたはこれらの共重合体エステルからなる短繊維およびこれら短繊維の混綿体、または上記のポリマーのうち2種以上からなる複合型短繊維などが挙げられ、該短繊維(A)の断面形状は円形、偏平、異形または中空のいずれであってもよい。
【0025】
上記、短繊維(A)は、短繊維(B)並びに短繊維(C)の融着成分と融着しクッション材中においてマトリックスとなるため、該短繊維(A)単独でも嵩高性を有し、しかも、反撥性を発揮することが必要である。
【0026】
ここで、嵩高性(JIS L−1097に準拠して測定)は、0.5g/cm2 の荷重下で50cm3 /g以上、10g/cm2 の荷重下で20cm3 /g以上あることが好ましく、さらに好ましくは、それぞれ、60cm3 /g以上、25cm3 /g以上あることがよい。該嵩高性が低いと、得られる繊維成型クッション材の弾力性や圧縮反撥性が低いといった問題が顕著になってくる。
【0027】
また、その繊度が3〜500デニールの範囲であることが好ましく、8〜200デニールであることが更に好ましい。該繊度が3デニールより小さいと嵩高性が発揮されず、クッション性や反撥力が乏しくなってしまう。また、該繊度が500デニールを越えると該短繊維のウェッブ化が難しく、得られる成型クッション材中の該短繊維(A)の繊維数が少なく成り過ぎてクッション性が乏しくなる。
【0028】
更に、その捲縮数は、4〜25個/インチ、捲縮度は20〜40%であることが好ましい。該捲縮数および捲縮度が前記の下限を下回るとウェッブの嵩が出にくくなったり、ウェッブ化が困難になったりして好ましくない。得られるクッション材も反撥性に乏しかったり、耐久性の低いものしか得られない。また、逆に捲縮数や捲縮度が上記の上限を越えるとウェッブの嵩高性が出にくく、高密度のクッション材しか得られなかったり、ウェッブ化の際に繊維の絡みが強く筋状のムラ等が出来て好ましくない。これら捲縮短繊維は押し込み捲縮、スパイラル捲縮等の任意の方法にて製造すれば良い。
【0029】
本発明において、短繊維(B)は、共にクッション材中に用いられるポリエステル系短繊維(A)を構成するポリマーの融点より40〜150℃低い融点を有する、低融点ポリマ−(b)が短繊維表面の少なくとも一部に配された短繊維であり、熱処理をすることにより少なくともその短繊維(B)表面に在る低融点ポリマー(b)の少なくとも一部が溶融し短繊維(A)と融着しうる必要がある。この融点差が40℃以下であると、熱処理を行う温度が非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)を構成するポリマーの融点に近くなってしまい、該短繊維(A)の物性や捲縮特性が悪くなってクッション性能が悪くなったり、成型時の収縮が大きくなってしまう。
【0030】
この様ないわゆる融着性を有する短繊維として、共重合ポリエステル系ポリマーや熱可塑性エラストマー系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニルアルコ−ル系ポリマー等よりなる繊維を挙げることができる。
【0031】
特に、少なくとも構成成分として、上記した低融点のポリマー成分と、それより高融点のポリマー成分とからなる複合型短繊維は、形態保持安定性や、成形性が優れているので好ましく、複合形態は、サイドバイサイド型や芯鞘型、偏芯芯鞘型等が好ましく、特に、該短繊維(B)において、融着成分としての低融点ポリマーが該短繊維表面の少なくとも一部に露出している断面形態が好ましい。
【0032】
本発明において上記短繊維(B)は、繊維成型クッション材を製造する際に混綿されることや、クッション材に構成するときの融着成分であることから、デニールは、2〜150デニールであることが好ましく、特に4〜100デニールが好ましい。該デニールが小さいとクッション材中に熱固着点が増えすぎてクッション性が出にくい。また大きすぎると、熱固着点が少なすぎて反撥性が低すぎたり、クッション材使用中にばらけたりし易くなる。また、短繊維(B)のカット長は38〜255mm,捲縮数は4〜50個/インチであることが好ましい。この範囲から外れると、混綿しにくくなったり、ウェッブ化が難しくなる。更に、成型クッション材のクッション性能や圧縮耐久性も悪くなる。
【0033】
本発明のクッション材は、成型後、繰り返し圧縮変形を受け、しかもその圧縮量即ち変形量が大きな(例えば、厚みの50%)用途、例えば、クッション用途等に使用される場合には、熱固着点が変形応力が加わった時変形し易く、変形応力が無くなったときは、歪みを残さず元の位置に戻り易いことが必要である。
【0034】
成型クッション材に大きな変形量が加わっている時、そのクッション材を構成している短繊維(A)と短繊維(B)とで構成される熱固着点は角度の変化や引き延ばし、捩じれ等の変形をうけ、従って、熱固着点のポリマ−は大きく変形回復する特性が必要になってくる。
【0035】
このため、熱固着点は、破壊伸度が大きく、伸長回復特性の良い熱可塑性エラストマーによって構成されることが好ましく、熱固着する相手方のマトリックス、短繊維(A)が非弾性ポリエステル系ポリマーよりなることから、ポリエステル系エラストマーが特に好ましい。
【0036】
該弾性ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステルブロック共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、および/またはこれらのエステル形成誘導体等から選ばれたジカルボン酸の少なくとも一種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、あるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも一種、並びに平均分子量が約400〜5000程度の、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキシド)グリコールのうち少なくとも一種から構成される三元共重合体等が挙げられる。
【0037】
就中、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)との融着性や温度特性、強度、物性の面などから、該熱可塑性エラストマーは、ポリブチレン系テレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシテトラメチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルポリエステルが好ましい。
【0038】
この際、該ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分をテレフタル酸とし、主たるジオール成分をブチレングリコール成分とするポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。もちろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他の成分で置換されてもよく、同様にグリコール成分の一部も置換されてもよい。
【0039】
また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル成分は、テトラメチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルでもよい。なお、該エラストマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、分岐剤、艶消剤、着色剤、その他各種の改質剤・機能付与剤等も必要に応じて配合されていてもよい。
【0040】
本発明において、短繊維(C)は、クッション材中において共に融着成分として用いられる短繊維(B)中のポリマー(b)の融点より25〜130℃低い融点を有する低融点のポリマー(c)が、少なくとも短繊維表面の一部に配された短繊維であって、予備熱処理により少なくともその表面の一部が溶融し非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)または短繊維(B)並びに短繊維(C)同士と融着しうる短繊維のことを言う。
【0041】
該融点差が25℃以下であると、予備の熱処理をする温度が、短繊維(B)中のポリマー(b)の融点に近くなってしまい、該ポリマー(b)の物性や短繊維(B)の捲縮特性を悪くする。
【0042】
この様ないわゆる融着性を有する短繊維を構成する、融着成分としての低融点ポリマー(b)としては、共重合ポリエステル系や耐熱性を強化するため熱安定剤や紫外線吸収材を多く含んだ熱可塑性エラストマーやポリオレフィン系ポリマー及び共重合物、ポリビニルアルコール系ポリマー等がある。特に、少なくとも一構成成分に上記した低融点ポリマーを有する複合型短繊維は、形態保持安定性や、成形性が優れているので好ましい。該複合型短繊維の形態は、サイドバイサイド型や芯鞘型、偏芯芯鞘型等が好ましい。勿論低融点ポリマーが表面に露出する断面形態である必要がある。
【0043】
このうち、融着時の相手方の短繊維がポリエステル系ポリマーが主体になることが好ましいことから、該低融点ポリマーとしては、共重合ポリエステル系ポリマーや熱可塑性ポリエステル系エラストマ−が好ましく、取り扱い上、熱劣化の少なさ等の観点から共重合ポリエステルが特に好ましい。
【0044】
本発明において前記短繊維(B)および(C)の成型クッション材中における混入率は該成型クッション材の重量を基準として、10〜60重量%であることがよい。該短繊維(B)および(C)の混入率が10重量%より少ないとクッション材中の熱固着点が少なくなりすぎて、後で述べる、結合力の弱い、初期の融着処理後も該クッション材の取り扱い性が悪かったり、クッション性が悪くなったりして好ましくない。
【0045】
更に、モールド内に該クッション材を詰めた後で行う、後で述べる強い融着処理後も圧縮反撥性が低すぎることや圧縮耐久性が悪いといった問題が出てくる。逆に、該混入率が大きすぎると熱処理後も、成型クッション材中の熱固着点の数が多すぎて、硬い風合いのクッション材しか得られない。
【0046】
また、短繊維(B)および短繊維(C)の混入率は、特に、高温で融着する短繊維(B)の関与する熱固着点によるクッション特性の発現が必要なこと、強い結合部破断強度を有する短繊維(C)の関与する熱固着点は、圧縮による大変形に対する耐久性を発揮するために少量で、且つ散在していなければならないことから、短繊維(B)の混入率は、短繊維(C)の混入率より高いことが必要である。
【0047】
本発明において、成型クッション材の構成としては、クッション性が発揮される密度としては、0.015g/cm3 〜0.150g/cm3 の範囲であり、クッション材の厚みは、2cm以上が好ましい。もし密度が上記範囲よりも小さいと、反撥性や圧縮の耐久性が劣り、また、該密度が大きすぎると、熱固着点が多すぎて固くなりすぎてしまう。
【0048】
次に、本発明の成型クッション材の製造方法において述べる。先ず、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)と短繊維(B)および短繊維(C)との少なくとも3者を混綿し、カードなどで開繊しウェッブ化した後、所定量のウェッブを積層し、パンチングプレートで構成される平板やキャタピラー式の上下パンチングプレートによるコンベアーに積層ウェッブ等を挟み込み、あるいは、ネット上に圧縮しないで搭載し、短繊維(C)を構成するポリマー(c)が融着を起こす温度以上、短繊維(B)を構成するポリマー(b)の融点未満の温度で熱処理を行い、熱固着点(e)、(f)および(h)を形成させて所定厚みのマット状成型体を得る。この厚みや密度は、圧縮して成型するクッション材の所望とする形状や厚みにより設計されるが、3枚〜10枚程度積層して、目標とする密度、形状になるように設計されることが好ましい。
【0049】
更に、予備の熱処理時間は1分以上10分以下であることが必要である。この、熱処理時間が1分以下であるとポリマー(c)が溶融しにくく、短繊維(C)が関与する熱固着点を形成出来ず、逆に該時間が10分を越えると、ポリマー(c)が熱劣化を起こして、短繊維(C)の関与する熱固着点の融着結合部破断強度が低下することになる。
【0050】
次に、モールド形状や部分部分で密度が調整できる様にカットしたマット状成型体をモールド内に詰め込んだ後に、短繊維(B)を構成するポリマー(b)の融点以上、短繊維(A)を構成するポリマーの融点未満の温度で、熱処理をおこなうことが必要である。短繊維(C)が関与する熱固着点は、モールド内での熱成型による高温での強い結合をさせるための融着処理によって、短繊維(C)を構成する低融点のポリマーが凝集すること等によってより強固で強靱な熱固着点を形成することが出来る。しかし、短繊維(C)の構成成分と短繊維(B)の構成成分との融点差が小さかったり、短繊維(C)の混入率が(B)の混入率より大きすぎたりすると、該マット状成型体が、モールド内形状に変形しにくく、成型クッション材内に隙間ができたりして好ましくない。また、短繊維(B)の構成成分として好ましいポリエステル系エラストマーなどは熱安定性が余り高くないために、融点差が少なく、何度も融点近い高温に曝されるのは好ましくない。
【0051】
ここで、予備の熱処理加工温度は、該温度が低過ぎる場合には、短繊維(A)や短繊維(B)のフリー収縮が充分起きないために、マット状成型体がモールド内で熱収縮を起こしてしまう等の問題があるために、短繊維(B)の全構成成分の融点以下で且つ該融点より100℃以上離れていない比較的高い熱処理が好ましい。
【0052】
更に、熱処理の時間は1分以上40分以下であることが必要である。この、熱処理時間が1分以下であるとポリマー(b)が溶融しにくく、短繊維(B)が関与する熱固着点の融着結合部破断強度が低くなり過ぎる。逆に該時間が40分を越えるとであると、ポリマー(a)が熱劣化を起こして、短繊維(C)の関与する熱固着点の融着結合部の破断強度を増加しにくく、逆に低下することになる。
【0053】
なお、短繊維(B)および(C)については、夫々、複数の短繊維を採用してもよい。例えば、短繊維(C)を構成しているポリマー(c)として、融点が異なるポリマー(c1)および(c2)を用意し((c1)の融点<(c2)の融点)、夫々、ポリマー(c1)を繊維表面の一部に配した短繊維およびポリマー(c2)を繊維表面の一部に配した短繊維を混綿して用いてもよい。同様に、短繊維(B)を構成しているポリマー(b)として、融点が異なるポリマー(b1)および(b2)を用意し((b1)の融点<(b2)の融点)、夫々、ポリマー(b1)を繊維表面の一部に配した短繊維およびポリマー(b2)を繊維表面の一部に配した短繊維を混綿して用いてもよい。そして、この場合の予備の熱処理温度はポリマー(c1)の融点以上、ポリマー(b1)の融点未満となる。
【0054】
予備の熱処理により熱固着点を形成することによって、鋏やトムソン刃を用いてモールド形状や密度に対応した枚数等にカットし易くなり、また、取り扱いし易く、機械的に掴んだり、挟んで移動したりし易くなる。このようにして得られたマット状成型体を、図面をもって説明するならば図2に示すように、最終製品に成型されたクッション材(図1)を薄いシート状にスライスした形状にカットする。
【0055】
単純な場合では、丁度、等高線状にスライスした状態にカットする方法がある。もちろん、縦方向や曲面状にスライスした状態やそれらの組み合わせでカットしてもよい。更に、用いるマット状成型体の種類や得ようとするクッション材の形状、物性等から同じ厚みでなく、多少形状を変形しても構わない。
【0056】
このようにしてカットしたマット状成型体を、成型するクッション材中での異なった密度などを想定して部分部分で積層枚数を変えたり、配列させたりして、下モールド(図4)内に、カットしたマット状成型体を詰め、その後、圧縮し、上モールド(図3)で蓋をしたのち、強い融着条件で、即ち短繊維(B)の構成成分を溶融できる温度で、前述した熱固着点の全てを形成する。
【0057】
この様にして、成型クッション材を製造するが、このカットしたマット状成型体を下モールドに積層して詰め込む前に、モールド内表面に、成型クッション材表面を覆う繊維集合体ウェッブを敷いておくことが好ましい。該繊維集合体ウェッブとは、本発明で用いる非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)並びに短繊維(B)および/または短繊維(C)を含んで構成され、それらを融着させないで用いることが好ましい。
【0058】
該繊維集合ウェッブは融着していないため複雑なモールド形状に追従しやすく、特に、下モールド(図4)の下部から空気吸引すること等の手段によりうまくモールド内面にそって覆うことが出来る。このような繊維被覆層を設けることによって、成型されたクッション材は層間剥離を起こしにくかったり、積層した端面が見えないため表面の見栄えを格段によくすることができる。勿論、この繊維集合体ウェッブは取り扱い性を高めるために、融着していても構わない。
【0059】
また該繊維集合体ウェッブの組成は、成型クッション材表面になるために耐磨耗性を上げるために短繊維の混入率を変更したり、デニールを変更したり、繊維の構成を変えたり、また表面に防炎性や耐炎性を付与した集合体とする等、所望に応じて行えばよい。
【0060】
本発明の製造方法において、下モールド内にマット状成型体を積層配列した短繊維集合体を圧縮し、上モールドで蓋をした後、高温での、強い結合ができる融着条件で融着一体化成型するが、この処理条件は、短繊維(C)の関与する交絡点に強固で強靱な熱固着点を形成する。短繊維(C)の構成成分が溶融する温度では低融点のポリマーが短繊維(C)の関与する交絡点に凝集を強く起こさないような条件であったのに対し、短繊維(B)の構成成分が溶融するような高い温度条件になることによって強固で強靱な結合点を形成する。
【0061】
なお、短繊維(A)および(B)については、夫々、複数の短繊維を採用してもよい。例えば、短繊維(B)を構成しているポリマー(b)として、融点が異なるポリマー(b1)および(b2)を用意し((b1)の融点<(b2)の融点)、夫々、ポリマー(B1)を繊維表面の一部に配した短繊維およびポリマー(b2)を繊維表面の一部に配した短繊維を混綿して用いてもよい。
【0062】
同様に、短繊維(A)を構成しているポリマー(A)として、融点が異なるポリマー(a1)および(a2)を用意し((a1)の融点<(a2)の融点)、夫々、ポリマー(A1)を繊維表面の一部に配した短繊維およびポリマー(A2)を繊維表面の一部に配した短繊維を混綿して用いてもよい。そして、この場合の熱処理温度はポリマー(b1)の融点以上、ポリマー(a1)の融点未満となる。
【0063】
このように熱処理された成型クッション材は冷却された後、モールド内からとりだされて成型クッション材が得られる。以上の方法は、複雑なモールド成型の方法であるが、平板状のマットを成型する場合も、最初マット状成型体を得た後、再度厚みを増し厚いものを作るときも同様である。
【0064】
もちろん、熱処理を一回行うだけで短繊維(B)の構成成分を融着する熱処理も可能ではあり、この場合も、熱固着点は同様に短繊維(C)の関与する交絡点は短繊維(B)の関与する熱固着点よりも強く結合して大きな変形に対して強くすることが出来、また、クッション性は短繊維(B)の関与する熱固着点が寄与する。但しこの方法ではモールド内での熱処理時に成型クッション材が収縮を起こす。
【0065】
本発明の製造方法において、更に、成型されたクッション材を圧縮し、圧縮に対し弱い熱固着点やクッション性に妨げになる熱固着点を取り除くことや、再度の熱処理により物性を安定化させることが好ましい。
【0066】
【発明の作用・効果】
本発明の成型クッション材は、適度な強力を持った熱固着点とともに、少量の強靱な熱固着点が散在するので、繰り返し大変形に対する耐久性が改善され、更に、成型クッション材中で局所的に密度や凹凸形状が任意にコントロール出来、人体やその他の複雑な形状に対しフィット性及び荷重支持特性が優れ、通気性が高く、更には、成型クッション材使用後のリサイクルにも対応ができ、焼却によって発生する煙や煙の有毒性も少ない。従って、本発明の成型クッション材は3次元形状をもったり、平板形状以外の成型クッション材、例えば、乗り物用座席、家具用クッション、事務用椅子のクッション材、枕等の成型クッション材として最適である。
【0067】
また、本発明の成型クッション材の製造方法によれば、熱可塑性繊維100%を用い、融着して取り扱い易いマット状成型体をカットし、部分部分で積層枚数を変えてモールド内に詰め、その後、より高い温度で再度熱処理することによって強靱な熱固着点により融着一体化した部分と、クッション性に有効な熱固着点とを形成した成型クッション材を製造できる。即ち、成型クッション材をモールド内での収縮を小さくしモールド寸法に近い形状で成型することができる。さらに、工業的に製造しようとする場合には、繰り返しの精度が良いので、機械による自動化を行っても何等問題がない。
【0068】
【実施例】
以下実施例により本発明をより具体的に説明する。
なお、実施例中における各評価項目はそれぞれ下記の方法に従って評価した。
【0069】
捲縮数、捲縮度:JIS L−1015に準拠し測定した。
【0070】
クッション材の密度(g/cm3 ):成型クッション材の一部を直方体状に切りだし、重さ(g)と荷重0.5g/cm2 の荷重板で厚み(mm)を測定したのち体積(cm3 )から算出した。
【0071】
硬さ(kgf):JIS K−6401による25%圧縮硬さを用いた。通常のクッション材用途では、20〜30kgあれば実用上問題は無い。
【0072】
融点:熱示差分析計990型(Du Pont社製)を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が正確に測定出来ないときは、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、約3gのポリマーを2枚のカバーガラスに挟み、ピンセットで軽く押さえながら、昇温速度20℃/分で昇温し、ポリマーの熱変化を観測した。その際ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とした。
圧縮残留歪み:JIS K−6401に準拠し測定した。
【0073】
8万回圧縮残留歪み:JIS K−6401に準拠し測定した。該、8万回圧縮残留歪みは12%以下であれば実用上問題はない。
【0074】
8万回圧縮硬さ保持率:初期に75%予備圧縮後、再び25%圧縮したときの圧縮応力(F0)とJIS K−6401に準拠して8万回の繰り返し圧縮を行い、30分放置後、75%予備圧縮後再び25%圧縮したときの圧縮応力(F1)を
下記式に基づき算出した。
【0075】
【数1】
〔(F1/F0)×100(%)〕
該、8万回圧縮硬さ保持率は50%以上あればよい。
【0076】
ウェッブの嵩高性:JIS L−1097に準拠して測定した。
【0077】
熱固着点の融着結合部破断強力:成型クッション材の中から顕微鏡で観察しながら、短繊維が交絡点のうち、ほぼ90°に交差した(代表例を図6に示す。)、2本の短繊維を、融着結合した部位を含んでサンプリングし、互いの繊維を熱固着点を中央にし、ニップ長2mmで掴んで2mm/minの速度でひっぱり、強力(g)を計り、2本の繊維の平均Deで割って算出した。n数はそれぞれ10とし平均を求め繊維の融着結合破断強力とした。
【0078】
比較例1
ジメチルテレフタレートとジメチルイソフタレートとを80:20(モル%)で混合した酸成分と、ジエチレングリコールとテトラメチレングリコールとを3:97(モル%)のグリコール成分とを反応させて、融点192℃の低融点のポリエステルポリマーを得た。この低融点ポリマーの固有粘度は0.90であった。
【0079】
この低融点ポリエステルを鞘部に配し、常法により得られたポリエチレンテレフタレートを芯部に配して、芯部と鞘部との重量比率が50:50である偏芯芯鞘型複合繊維を得た。
【0080】
得られた繊維を2.5倍に延伸し、100℃で乾燥・捲縮発現した後、油剤を付与し、繊維長64mmにカットした。得られた短繊維はデニールは9デニール、捲縮数は15個/インチ、捲縮度は27%であった。この複合型短繊維を短繊維(B)とした。
【0081】
次にテレフタル酸とイソフタル酸とを60:40(モル%)で混合した酸成分と、エチレングリコールとジエチレングリコールとを85:15(モル%)で混合したジオール成分とから共重合ポリエステルを得た。このポリエステルの固有粘度は0.78であった。融点については明確ではなかったが、110℃付近から軟化して流動を始めたので、110℃をもって軟化点とした。
【0082】
このポリマーを鞘成分に配し、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配し、芯部と鞘部との重量比が50:50の複合型繊維を常法により得た。この複合型繊維を短繊維(C)とした。
【0083】
次に常法により得られたポリエチレンテレフタレート捲縮短繊維(A)(14デニール、繊維長64mm、異方冷却によるスパイラル状捲縮の捲縮数9個/インチ、捲縮度30%、嵩高性が0.5g/cm2 の荷重下で79cm3 /g、10cm3 /gの荷重下で34cm3 /g、中空断面、融点256℃)を65重量部、短繊維(B)を20重量部、短繊維(C)を4重量部を混綿し、カードによりウェッブ化した後、積層ウェッブを得た。
【0084】
このウェッブを、厚み5cm、密度が0.010g/cm2 となるように、平板形の通気性モールドに挟み込み、160℃の熱風炉で2分間加圧・加熱処理後、冷却し、マット状の成型体(平板状の融着繊維成型体)を得、続いて図7に示すような椅子のクッション形状になるようにトムソン刃で打ち抜いた。打ち抜かれたマット状成型体は取り扱い性もよく、作業がやりやすく、更に、機械化も容易であると推定された。この打ち抜かれたマット状成型体をモールド内の所定位置に所定枚数重ねて、210℃で5分間加熱されたモールドで上下から圧縮し、冷却後、モールド内より取り出して、図7に示す成型クッション材を得た。
【0085】
得られた成型クッション材は、座る部分の密度が0.050g/cm3 であり、縁の部分は高密度化し0.060g/cm3 となった。また、得られた成型クッション材は、モールド内との隙間がほとんどなく、熱成型時の収縮が極めて小さいと推定された。得られたクッション材の、熱固着点(d)の融着結合部破断強度は0.8g/deであり、熱固着点(e)の強度は1.0g/deであり、熱固着点(f)の強度は1.9g/deであり、熱固着点(g)の強度は1.3g/deであり、熱固着点(h)の強度は0.6g/deであった。
【0086】
得られた成型クッション材を切り出し、座る部分の圧縮耐久性を測定した。その結果、25%硬さは18kg、8万回圧縮残留歪みは8%、8万回圧縮硬さ保持率は90%であった。
【0087】
[比較例
比較例1において、短繊維(C)を用いることなく、短繊維(B)を24重量部を用い、熱処理することなく得た積層ウェッブをトムソン刃で打ち抜くこと以外は、比較例1と同様の操作を行って成型クッション材を得ようとした。
【0088】
しかし、該トムソン刃を用いての打ち抜き性が悪く、更に打ち抜いた積層ウェッブの取り扱い性も悪く機械化は困難と推定された。また、得られるクッション材の形状は、モールド内との隙間があり、収縮が大きいことが推定された。得られたクッション材の密度は0.050g/cm3 、25%硬さは18kg、8万回圧縮残留歪みは10%、8万回圧縮硬さ保持率は81%と、クッション材としての性能に劣った物であった。熱固着点(d)の強度は0.7g/deであり、熱固着点(g)の強度は1.2g/deであった。
【0089】
[実施例
テレフタル酸とイソフタル酸とを80:20(モル%)で混合した酸成分と、ブチレングリコールとを反応させて得られたポリブチレン系テレフタレートと、ポリテトラメチレングリコール(分子量2000)とを、ポリマー重量を基準として40:60(重量%)の割合になるように加熱反応させてブロック共重合ポリエーテルポリエステルエラストマーを得た。
【0090】
この熱可塑性エラストマーの融点は157℃であった。この熱可塑性エラストマーを鞘部に配し、ポリブチレンテレフタレート(融点224℃)を芯部に配して、芯部と鞘部との重量比が50:50になるように常法により紡糸した。なお、この複合型繊維は、偏芯芯鞘型複合繊維である。この繊維を2.0倍に延伸したのち、80℃で乾燥・捲縮発現させ、油剤を付与し、繊維長64mmに切断した。
【0091】
ここで、得られた複合型繊維のデニールは9デニール、捲縮数は13個/インチ、捲縮度は30%であった。この複合繊維を短繊維(B)とした。
【0092】
次にテレフタル酸とイソフタル酸とを60:40(モル%)で混合した酸成分と、エチレングリコールとジエチレングリコールとを85:15(モル%)で混合したジオール成分とを反応させて共重合ポリエステルを得た。このポリマーの固有粘度は0.78であった。融点は明確でないが、110℃付近から軟化して流動を始めたので、110℃をもって軟化点とした。
【0093】
このポリマーを複合型繊維の鞘部に配し、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配して、芯部と鞘部との重量比が50:50の芯鞘型複合繊維を常法によって得た。この芯鞘型複合繊維を短繊維(C)とした。
【0094】
次に、常法にて得られたポリエチレンテレフタレート捲縮短繊維(A)(14デニール、カット長64mm、異方冷却スパイラル捲縮の捲縮数9個/インチ、捲縮度30%、0.5g/cm2 の荷重下で密度79cm3 /g、10cm3 /gの荷重下で密度34cm3 /g、中空断面、融点256℃)65重量部と、短繊維(B)27重量部と短繊維(C)8重量部を混綿し、カードによってウェッブ化し、積層して積層ウェッブを得た。この積層ウェッブを、厚み5cm、密度0.015g/cm3 になるように平板形の通気性モールドに挟み込み、140℃の熱風炉で2分間加圧・加熱処理後冷却し、マット状成型体を得た。このマット状成型体における熱固着点(e)の融着結合部破断強度は0.2g/de、熱固着点(h)の強度は0.4g/deであった。
【0095】
続いて、図1に示す様に、成型するクッション材1をスライスした状態の形状になるように、上記のマット状成型体をトムソン刃によりプレスカットした。このカット操作は、融着させない積層ウェッブに比べてカット性が良く容易にカット出来た。更に上記融着処理をする前の積層ウェッブに対してニードルパンチを施した不織布(図5中4)(密度、100g/cm3 )を、空気透過性を有するパンチングプレートでつくられた、3次元形状の上下モールド(図5中3)の内面にセットして空気吸引によって覆った。このウェッブは繊維同士が結合していないため、3次元形状のモールド内を、ウェッブが割れたり、隙間が出来ることなく容易に沿って覆うことが出来た。
【0096】
続いて、ウェッブに覆われた下モールドの内側に、カットした融着されたマット状成型体(図5中2)を順番に所定位置に所定枚数を積層した。次に圧縮して、積層ウェッブに覆われた下モールドを積層ウェッブ側を下にして上モールドで蓋をした。このようにして短繊維集合体が詰められたモールドを、熱風循環型の熱風炉にて差圧5mmH2O、200℃で15分間熱処理を行った。
【0097】
その後、ゆっくりと冷却したのちモールド内より取り出して、成型クッション材を得た。この時得られた成型クッション材は、座る部分の密度が0.035g/cm3 であり、縁の部分は0.045g/cm3 となっており当初の設計通りであった。また、成型されたクッション材はモールド内との隙間も殆ど無く、熱成型時の収縮が極めて小さいものであった。また外見からみても層状に重ねて作成したことが分かり難く、美観は良好であった。この成型クッション材を初期の厚みの50%程度までの圧縮を4回行った。
【0098】
ここで、得られたクッション材の熱固着点(d)強度は0.6g/deであり、熱固着点(e)の強度は0.9g/deであった。また、熱固着点(f)の強度は0.7g/deであり、熱固着点(g)の強度は1.1g/deであり、熱固着点(h)の強度は1.5g/deであった。
【0099】
得られた成型クッション材を切り出して、座る部分の圧縮耐久性を測定した。その結果、25%硬さが20kg、8万回圧縮残留歪みは6%,8万回圧縮硬さ保持率は85%であった。
【0100】
[実施例
実施例において、弱い融着処理を行うことなくウェッブのままモールド内に詰め込み熱処理時間を20分間に変更する以外は実施例と同様の操作を行った。得られた成型クッション材は成型時に熱収縮を起こしたが、実用上問題はなく成型したクッション材は、密度0.036g/cm3 、25%硬さ21kg、8万回圧縮残留歪み6%、8万回圧縮硬さ保持率85%、圧縮残留歪み23%と、実施例と比較して大差なかった。また、得られたクッション材の熱固着点(d)の強度は0.5g/deであり、熱固着点(e)の強度は0.9g/deであった。また、熱固着点(f)の強度は0.6g/deであり、熱固着点(g)の強度は1.0g/deであり、熱固着点(h)の強度は1.5g/deであった。この成型クッション材を切断しても内部の隙間は少なく、シートの接合部も区別がつきにくいほど均一であった。
【0101】
[比較例
比較例1において、短繊維(C)を混入することなく、短繊維(B)の混入率を35重量部とし、初期の140℃の熱処理を行わずに、直接、パンチングプレートモールド内に詰め、200℃で成型を試みた。しかし、カットに手間がかかりしかもカットされたウェッブは取り扱いが難しく、パンチングプレートモールドの所定位置に所定量並べるのが困難で、成型した後に隙間やウェッブの折り畳まれてしまった所などがあり、好ましい成型クッション体は得られなかった。得られたクッション材の熱固着点(d)の強度は0.7g/deであり、熱固着点(g)の強度は1.2g/deであった。また、この成型クッション材に対する圧縮耐久試験では、8万回圧縮残留歪が9%と高く、むらになった、密度の低い部分へ、圧縮により歪が集中するなどの影響があるものと考えられる。
【0102】
[比較例
実施例において、短繊維(A)65重量部と短繊維(B)35重量部とを混綿し、初期の熱処理温度を140℃から変えて180℃にすること以外は比較例1と同様の操作を行ってマット状成型体を得た。このマット状成型体に、比較例1と同様の操作を行い、成型クッション材を得た。また、得られたクッション材の熱固着点(d)の強度は0.4g/deであり、熱固着点(e)の強度は0.7g/deであった。また、熱固着点(f)の強度は0.5g/deであり、熱固着点(g)の強度は0.9g/deであり、熱固着点(h)の強度は1.1g/deであった。
【0103】
得られたクッション材の8万回圧縮残留歪は8%とやや悪く、圧縮残留歪も28%とやや低く、圧縮したときの風合いはガサツキ感があった。一方、得られた成型クッション材中の、熱固着点(d)の融着結合部破断強度は0.4g/de、熱固着点(g)の強度は0.9g/deであった。比較例1の場合よりも熱固着点(d)の強度が低く、短繊維(B)の低融点成分のポリマーの熱劣化の可能性が考えられる。
【0104】
[実施例
実施例の操作を行って得られた、初期の弱い融着処理をされ、カットされたマット状成型体を、積層ウェッブで覆われた下モールドの下部から空気吸引を行いつつ、機械的に、所定場所に所定量のマット状成型体を積層したのち、積層ウェッブに覆われた上モールドで蓋をして、熱風吸引炉にいれ、差圧をかけながら、強い融着処理を行った。この操作で得られた成型クッション材は、人手によって積層・配置して詰め、成型したものと遜色なかった。この方法は、繰り返し行っても精度がよく、失敗の頻度も極めて少なかった。
【0105】
[比較例
実施例において、積層ウェッブを融着処理することなくそのままカットしてモールド内に、機械的に詰めることを試みたが、うまくウェッブを輸送出来ずモールド詰めは困難であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】成型された繊維クッション材の模式図である。
【図2】弱く融着処理された後、モールドに詰めるためにカットされたマット状成型体の模式図である。
【図3】上モールドの斜視図である。
【図4】下モールドの斜視図である。
【図5】下モールド内への、カットしたマット状成型体の積層モデル詰め込み模式図(断面)である。
【図6】熱固着点の代表的交点の走査型電子顕微鏡写真図(×350)である。
【図7】椅子状に成型したクッション材の模式図である。
【符号の説明】
1 繊維クッション材。
2 短繊維(C)が融着処理されカットされたマット状成型体。
3 モールド。
4 シート状繊維集合体ウェッブ。

Claims (8)

  1. 非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)集合体をマトリックスとする成型クッション材において、
    該短繊維(A)集合体が、成型クッション材重量を基準として40〜90重量%を占め、更に、下記(1)および(2)に夫々示す、融着性短繊維(B)および融着性短繊維(C)との少なくとも2者が融着成分として、短繊維(B)の混入率が短繊維(C)の混入率より大となるよう分散・混入され、
    その際、該成型クッション材中には、下記(d)〜(h)に示すような熱固着点が散在し、且つ熱固着点(e)の融着結合部破断強度が熱固着点(d)の破断強度より大であることを特徴とする、繰り返し大変形に対する耐久性が改善された成型クッション材。
    (1)短繊維(A)を構成する非弾性ポリエステル系ポリマーの融点より40〜150℃低い融点を有する熱可塑性エラストマーからなる、融着成分としてのポリマー(b)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(b)が少なくとも表面に露出した短繊維(B)。
    (2)短繊維(B)を構成するポリマー(b)の融点より25〜130℃低い融点を有する、融着成分としての低融点ポリエステル系ポリマー(c)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(c)が少なくとも表面に露出した短繊維(C)。
    (d)短繊維(A)と短繊維(B)との熱固着点。
    (e)短繊維(A)と短繊維(C)との熱固着点。
    (f)短繊維(B)と短繊維(C)との熱固着点。
    (g)短繊維(B)同士の熱固着点。
    (h)短繊維(C)同士の熱固着点。
  2. 熱固着点(h)の融着結合部破断強度が、熱固着点(g)の強度より大である、請求項1記載の成型クッション材。
  3. 低融点ポリエステル系ポリマー(c)がポリエチレンテレフタレート系共重合ポリマーである、請求項1または請求項2に記載の成型クッション材。
  4. JIS K−6401に準拠して測定された8万回圧縮残留歪みが2〜12%である、請求項1〜3のいずれか記載の成型クッション材。
  5. 非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)集合体をマトリックスとする成型クッション材の製造方法において、
    非弾性ポリエステル系捲縮短繊維(A)を、成型クッション材重量を基準として40〜90重量%と、下記(1)および(2)に夫々示す、融着性短繊維(B)および融着性短繊維(C)との少なくとも3者を、短繊維(B)の混入率が短繊維(C)の混入率より大となるように混綿し、ウェッブ化した後、その複数枚を積層し、短繊維(C)中のポリマー(c)の融点以上、短繊維(B)中のポリマー(b)の融点未満の温度で予備熱処理を施し、下記(e)、(f)および(h)に示す熱固着点を形成して得たマット状成型体をカットし、モールド内に詰めた後、短繊維(B)中のポリマー(b)の融点以上、短繊維(A)を構成するポリマーの融点未満の温度で熱処理を施して、下記(d)および(g)に示す熱固着点を形成すると共に、下記(e)、(f)および(h)に示す熱固着点における融着結合部の破断強度を増加させるように成型する、請求項1に記載の繰り返し大変形に対する耐久性が改善された成型クッション材の製造方法。
    (1)短繊維(A)を構成する非弾性ポリエステル系ポリマーの融点より40〜150℃低い融点を有する熱可塑性エラストマーからなる、融着成分としてのポリマー(b)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(b)が少なくとも表面に露出した短繊維(B)。
    (2)短繊維(B)を構成するポリマー(b)の融点より25〜130℃低い融点を有する、融着成分としての低融点ポリエステル系ポリマー(c)と、非弾性ポリエステル系ポリマーとから成り、前記ポリマー(c)が少なくとも表面に露出した短繊維(C)。
    (d)短繊維(A)と短繊維(B)との熱固着点。
    (e)短繊維(A)と短繊維(C)との熱固着点。
    (f)短繊維(B)と短繊維(C)との熱固着点。
    (g)短繊維(B)同士の熱固着点。
    (h)短繊維(C)同士の熱固着点。
  6. 請求項5記載の低融点ポリエステル系ポリマーがポリエチレンテレフタレート系共重合ポリマーである、請求項5に記載の成型クッション材の製造方法。
  7. 予備熱処理の時間が1分以上10分以下である、請求項5または請求項6に記載の成型クッション材の製造方法。
  8. 熱処理の時間が1分以上40分以下である、請求項5〜7のいずれか記載の成型クッション材の製造方法。
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