JP3639873B2 - ロボット制御方法およびロボット制御システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はロボット制御方法およびロボット制御システムに関する。さらに詳しくは、ロボットに対する教示作業が自動化されているロボット制御方法およびロボット制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、溶接ロボットなどの産業用ロボットにおける動作教示方法として、生産ライン上で実際のロボットおよびワークを用いて教示を行うオンラインティーチングと、パソコンなどの計算機を利用して仮想の空間内で仮想のロボットと仮想のワークとを用いて教示を行うオフラインティーチングとが知られている。
【0003】
その中で、実際の生産ラインの外で実際のロボットを使用することなく教示作業を行うオフラインティーチングは、計算機のキーボードおよびマウスなどの操作だけで手軽に教示作業が行えるため、生産性を向上させるものとして注目されている。
【0004】
しかしながら、従来のオフラインティーチングは、たとえ計算機の操作とはいえ実際に教示作業を行わなければならず、したがって船舶・橋梁部材などの多品種少量生産品を対象とする分野、すなわち教示された動作をロボットが多数回繰り返し実行することが少ない分野では教示作業に要する時間の割合が長くなり生産性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、CAD(Computer Aided Design)システムにより作成されるワークの形状データおよび溶接設計データを利用して溶接ロボットの動作プログラムを計算機により自動的に生成し、教示作業そのものを自動化する「ティーチレス」技術(以下、教示自動化技術という)がより注目されるようになってきている(特開平10−187223号公報参照)。
【0006】
ところが、従来の教示自動化技術は、主に平面的な単純な形状のワークへの適用を想定したものであり、したがって立体的で複雑な形状のワークに従来の教示自動化技術を適用すると、ツールおよびロボットアームとワークとの干渉関係を正確に把握できない場合があるという問題がある。
【0007】
また、そのような複雑な形状のワークに対して作業を行う場合は、一般にツールなどがワークと干渉する干渉箇所が増加し、干渉箇所の作業を省略する方法ではロボットによる施工率が低下してしまうという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、複雑な形状のワークに対してもロボットアームおよびツールとワークなどの部材とができるだけ干渉しないような最適なロボットの作業態様を自動的に選択し、ロボットを動作させることができるロボット制御方法およびロボット制御システムを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のロボット制御方法は、動作プログラムをコンピュータにより自動的に生成してロボットを動作せさるロボット制御方法であって、
ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれについて所定数の作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがってデータベースから選択する手順と、
選択された各作業態様候補の中からロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれの作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがって採用する手順と、
ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれについて採用された作業態様候補により所定作業に対するロボットの動作をシミュレーションする手順と、 前記シミュレーションでの作業経路における部材との干渉の有無を自動的にチェックする手順と、
前記チェックにより干渉が確認された場合、干渉区間長を算出する手順と、
前記干渉区間長が第1の設定値を超えていなければ、干渉個所でロボットの作業経路を自動的に分断する手順と、
前記分断により干渉区間が排除された作業経路内においてロボットを動作させる手順とを含んでいることを特徴とする。
【0010】
本発明のロボット制御方法においては、干渉区間長が最小となるようロボット姿勢、ツール姿勢およびツールを選択するのが好ましい。
【0011】
本発明のロボット制御方法においては、前記干渉区間長が第1の設定値を超えていれば、干渉回避処理を行うのが好ましい。
【0012】
また、本発明のロボット制御方法においては、前記干渉回避処理が、ロボット姿勢を変更するロボット姿勢処理を含み、ロボットアームと部材とが干渉する区間の長さが第2の設定値を超えている場合において、ロボット姿勢を変更する余地があれば、ロボット姿勢を変更するのが好ましい。その場合、ロボット姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされるのがさらに好ましい。
【0013】
さらに、本発明のロボット制御方法においては、前記干渉回避処理が、ツール姿勢を変更するツール姿勢処理を含み、ロボットアームと部材とが干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合において、ツール姿勢に変更する余地があれば、ツール姿勢を変更するのが好ましい。その場合、ツール姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされるのがさらに好ましい。
【0014】
さらに、本発明のロボット制御方法においては、前記干渉回避処理が、ツールを変更するツール変更処理を含み、ロボットアームと部材とが干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合で、かつツール姿勢を変更する余地がない場合において、ツールを変更する余地があれば、ツールを変更するのが好ましい。その場合、ツールの変更が予め定めた優先順位の高い順になされるのがさらに好ましい。
【0015】
さらに、本発明のロボット制御方法においては、前記干渉回避処理により、ロボット姿勢、ツール姿勢またはツールが変更された場合、再度シミュレーションして作業経路における部材との干渉の有無をチェックするのが好ましい。
【0016】
一方、本発明のロボット制御システムは、動作プログラムをコンピュータにより自動的に生成してロボットを動作せさるロボット制御システムであって、
データベースを備え、
ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれについて所定数の作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがって前記データベースから選択し、選択された各作業態様候補の中からロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれの作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがって採用し、前記ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれについて採用された作業態様候補により所定作業に対するロボットの動作をシミュレーションし、前記シミュレーションでの作業経路における部材との干渉の有無を自動的にチェックし、前記チェックにより干渉が確認された場合、干渉区間長を算出し、前記干渉区間長が第1の設定値を超えていなければ、干渉個所でロボットの作業経路を自動的に分断し、前記分断により干渉区間が排除された作業経路内においてロボットを動作させるよう構成されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明のロボット制御システムにおいては、干渉区間長が最小となるようロボット姿勢、ツール姿勢およびツールを選択するよう構成されてなるのが好ましい。
【0018】
また、本発明のロボット制御システムにおいては、干渉区間長が第1の設定値を超えていれば、干渉回避処理を行うよう構成されてなるのが好ましい。
【0019】
さらに、本発明のロボット制御システムにおいては、前記干渉回避処理が、ロボット姿勢を変更するロボット姿勢処理を含み、ロボットアームと部材とが干渉する区間の長さが第2の設定値を超えている場合において、ロボット姿勢を変更する余地があれば、ロボット姿勢を変更するのが好ましい。その場合、ロボット姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされるのがさらに好ましい。
【0020】
さらに、本発明のロボット制御システムにおいては、干渉回避処理が、ツール姿勢を変更するツール姿勢処理を含み、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合において、ツール姿勢に変更する余地があれば、ツール姿勢を変更するよう構成されてなるのが好ましい。その場合、ツール姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされるように構成されてなるのがさらに好ましい。
【0021】
さらに、本発明のロボット制御システムにおいては、干渉回避処理が、ツールを変更するツール変更処理を含み、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合で、かつツール姿勢を変更する余地がない場合において、ツールを変更する余地があれば、ツールを変更するよう構成されてなるのが好ましい。その場合、ツールの変更が予め定めた優先順位の高い順になされるように構成されてなるのがさらに好ましい。
【0022】
さらに、本発明のロボット制御システムにおいては、前記干渉回避処理により、ロボット姿勢、ツール姿勢またはツールが変更された場合、再度シミュレーションして作業経路における部材との干渉の有無をチェックするよう構成されてなるのが好ましい。
【0023】
【作用】
本発明は、前記の如く構成されているので、ロボットが所定の作業を行うときに、ロボットアームおよびツールとワークとができるだけ干渉しないような最適な作業態様を自動的に選択し、施工率が高い動作をロボットになさせることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0025】
図1に、本発明の実施形態1に係るロボット制御方法に適用されるロボット制御システムの概略構成を示し、このロボット制御システム(以下、単にシステムという)Aは、例えば船舶および橋梁などの構造物の各構成部分(以下、ワークという)の製造に用いられるロボット、特にワークの各構成部材を相互に溶接する溶接用ロボットRの動作プログラムを自動的に生成してロボットを動作させるものとされる。
【0026】
システムAは、具体的には、構造物および各ワーク(以下、構造物等という)の設計を行う設計CADシステム10と、構造物等の設計データおよび溶接設計データを利用してロボットRの動作プログラムを作成する設計部門用CAM(Computer Aided Manufacturing)20および製造部門用CAM30と、設計部門用CAM20および製造部門用CAM30により生成された動作プログラムを作業実行時にロボットコントローラCに供給する製造現場制御装置40とを含み、これら各構成要素10,20,30,40が通信回線1を介して相互にデータ通信可能に接続されてなるものとされる。また、前記各構成要素10,20,30,40は、いわゆるパーソナルコンピュータなどの計算機にインストールされて動作する、各機能に対応するプログラムモジュールを含むソフトウェアから構成される。
【0027】
ロボットRは、例えば前後、左右および上下の3自由度を有する門構型移動装置(不図示である)に6軸のロボットアーム50(図3等参照)が天吊りされてなるものとされる。また、ロボットアーム50には溶接ツール60が装着される。
【0028】
設計CADシステム10は、構造物の設計・製図を行うためのシステムであって、設計される構造物に関する情報を構造物情報として保存するとともに、ワークW(図2参照)を構成する各部材W1,W2,…,Wnを相互に溶接するときの溶接線Bに関する情報を溶接線情報として保存する設計CAD用データベース11を備えてなるものとされる。
【0029】
設計CAD用データベース11に保存される構造物情報には、構造物および構造物を構成する各ワークWの形状を仮想空間内で再現可能にデータ化した3次元形状データが含まれる。また、溶接線情報には、溶接線の場所(例:ワークWを構成する面のどこに当該溶接線が属するか)および溶接線の種類(例:水平溶接、立向溶接)に関する情報が含まれる。
【0030】
設計部門用CAM20および製造部門用CAM30は、設計CADシステム10により生成される構造物の設計データを用いてロボットRの動作プログラムを生成するシステムとされる。両者は内容的には同一とされ、例えば設計部門用CAM20で生成された動作プログラムを製造部門用CAM30で手直しするという運用がなされる。
【0031】
また、設計部門用CAM20は、ロボットRの動作を数値制御するためのNC情報と、溶接の具体的な作業条件に応じた各種溶接条件をデータベース化した溶接条件データベース(DB)と、ツールとしての溶接トーチの運棒方法をデータベース化した運棒方法データベース(DB)と、ワーク位置を検出するためのセンシング方法をデータベース化したセンシング方法データベース(DB)と、ロボットの姿勢、ツールの姿勢およびツールの種類という各作業態様のカテゴリ毎に予め定めた優先順位を付して各種作業態様を予め作業態様候補として登録したロボット姿勢データベース、ツール姿勢データベースおよびツール種類データベース(以下、ロボット姿勢等データベース(DB)という)とを含むCAM用データベース21を備えてなるものとされる。CAM用データベース21は、設計部門用CAM20と製造部門用CAM30とで共用される。
【0032】
ここで、ロボット姿勢とは、図3に示すように、ツール60の先端位置を原点Oとし、溶接線をX軸、その直交軸をY軸、上下方向をZ軸とする座標系におけるロボットベース51の位置P(Sx,Sy,Sz)を一つのパラメータとし(以下、前記座標系をベース座標系と称する)、ロボットアーム50の形態(実施形態1では、「アンダー」と「アッパー」の2種類がある)を他の一つのパラメータとして定義される作業形態をいう。
【0033】
すなわち、同図(a)に示すロボット姿勢で、ロボットベース51の位置P(Sx,Sy,Sz)をP´(Sx´,Sy´,Sz´)に変更とすると同図(b)に示されたロボット姿勢となり、ロボットアーム50の形態を「アッパー」から「アンダー」に変更すると同図(c)に示されたロボット姿勢となる。
【0034】
このように、CAM用データベース21のロボット姿勢データベースは、ほぼ無限にあるロボット姿勢の中からツールおよびロボットアームとワークWとの干渉を回避する上で有意な差異のある各ベース位置P(Sx,Sy,Sz)とロボットアーム50の形態との組み合わせを予め所定数(例えば116種類)選出し、それら各組み合わせに予め定めた優先順位を付して登録してなるものとされる。
【0035】
ロボット姿勢の優先順位は、ロボットに行わせる作業の品質を考慮して決定される。例えば、水平溶接の場合、溶接点に正対するロボットの姿勢、つまりSxが値0であるロボット姿勢を基本姿勢として第1優先順位とし、以下、(2):基本姿勢の形態を変更した姿勢、(3):基本姿勢のベース位置をY方向にずらした姿勢、(4):(3)の形態を変更した姿勢、(5):基本姿勢のベース位置をZ方向にずらした姿勢、(6):(5)の形態を変更した姿勢、(7):基本姿勢のベース位置をY、Z方向にずらした姿勢、(8):(7)の形態を変更した姿勢、(9):基本姿勢のベース位置をX方向にずらした姿勢、(10):(9)の形態を変更した姿勢、(11):基本姿勢のベース位置をX、Y方向にずらした姿勢、(12):(11)の形態を変更した姿勢、(13):基本姿勢のベース位置をX、Z方向にずらした姿勢、(14):(13)の形態を変更した姿勢、(15):基本姿勢のベース位置をX、Y、Z方向にずらした姿勢、(16):(15)の形態を変更した姿勢というような原則で予め定めた優先順位を決定する。なお、同一方向に複数の姿勢候補がある場合には、基本姿勢からの変更分が少ない姿勢を上位とし、また変更分が同じである場合は正の変更分の姿勢を上位とする。
【0036】
ツール姿勢とは、図4に示すように、ツール60の仰角θ、前進・後退角ψおよび回転角φを各パラメータとして定義される作業形態をいう。
【0037】
ここで、CAM用データベース21に登録されるツール姿勢の優先順位は、ロボットに行わせる作業の品質を考慮して決定される。例えば、図4に示すように、直交して配される2つの板状部材W1、W2を溶接する場合であれば、仰角θが45°、前進・後退角ψが0°、回転角φが0°のときのツール姿勢を基本姿勢として第1優先順位とし、以下、(2):基本姿勢の回転角φを変更した姿勢、(3):基本姿勢の仰角θを変更した姿勢、(4):基本姿勢の前進・後退角ψを変更した姿勢、(5):基本姿勢の仰角θおよび回転角φを変更した姿勢、(6):基本姿勢の前進・後退角ψおよび回転角φを変更した姿勢、(7):基本姿勢の仰角θ、前進・後退角ψおよび回転角φを変更した姿勢というように、予め定めた優先順位を決定する。なお、同一方向に複数の姿勢候補がある場合には、基本姿勢からの変更分が少ない姿勢を上位とし、また変更分が同じである場合は正の変更分の姿勢を上位とする。
【0038】
また、ツール種類とは、図5に示すように、ツールの形態的・機能的差異による分類をいう。本実施形態では、ツール60の軸Iに対する溶接トーチ61の傾きにより、ストレートトーチ(同図(a))、22.5度カーブドトーチ(同図(b))および45度カーブドトーチ(同図(c))の3種類に分類される。
【0039】
製造現場制御装置40は、工場などの製造現場で各種機器を制御・管理するためのシステムとされ、ロボットRの動作を数値制御するためのNC情報を格納する製造現場データベース41を備えてなるものとされる。
【0040】
しかして、かかる構成のシステムAにより自動的に動作プログラムを生成する教示自動化処理につき説明する。
【0041】
図6に教示自動化処理のメインルーチンを示す。
【0042】
ステップS1:ロボット姿勢、ツール姿勢およびツール種類という各作業態様カテゴリ毎に作業態様候補をCAM用データベース21から取得する。
【0043】
すなわち、ロボット姿勢データベースの中から溶接線Bの場所、溶接線Bの種類などを条件としてロボット姿勢候補を所定数選択し、ロボット姿勢候補テーブルを作成する。
【0044】
下記表1に立向溶接の場合のロボット姿勢候補テーブルの一例を示す。また、下記表2に水平溶接の場合のロボット姿勢候補テーブルの一例を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
ツール姿勢は、図4に示した各パラメータθ、ψおよびφの中で本実施形態では例えば仰角θのみを変化させた姿勢を候補として選択する。すなわち、仰角θが45°(ψおよびφはともに0°)であるものを基本姿勢として第1予め定めた優先順位とし、以下、仰角θが50°、40°、55°、35°である各ツール姿勢をこの予め定めた優先順位でツール姿勢候補として選択する。
【0048】
ツール種類は、変更可能な全てのツールをツール種類候補として選択する。
【0049】
ステップS2:各作業態様カテゴリ毎に予め定めた優先順位の最も高い候補を採用して今回の作業態様とする。
【0050】
ステップS3:干渉チェック処理を実施する。すなわち、ロボットRの動作経路上でツール60およびロボットアーム50とワークWとの間で干渉が発生しないかをシミュレーションによりチェックする。以下、この干渉チェック処理につき説明する。
【0051】
干渉チェック処理
図2に示すように、ロボットRの動作経路上に設定される各チェックポイント、つまり溶接線Bに沿って等間隔で設定される各チェックポイントP1,P2,…,Pnにおいて、ツール60およびロボットアーム50とワークWとが干渉しないかロボットアーム50,ツール60およびワークWの各3次元形状データを利用してチェックする。
【0052】
具体的には、ツール60先端が各チェックポイントP1〜Pnにあるときに、ロボットアーム50またはツール60の各形状データがワークWの形状データと交錯していないかを判断するようにして、干渉の有無をチェックする。図8(a)にツール60およびロボットアーム50とワークWとが干渉しない場合を示し、同図(b)にツール60が部材W7と干渉している場合を示す。また、同図(c)にロボットアーム50が部材W8と干渉している場合を示す。
【0053】
以下、図2(b)に示すように、黒丸の各チェックポイントPa,Pb,Pcでロボットアーム50およびツール60の両方がワークW(部材W3,W4)と干渉し、黒三角の各チェックポイントPd,Pe,Pfでツール60がワークW(部材W5)と干渉し、同黒三角の各チェックポイントPg,Ph,Pi,Pjでロボットアーム50がワークW(部材W6)と干渉している場合を例に説明する。
【0054】
ステップS4:ツール60およびロボットアーム50とワークWとの間に干渉が発生している区間の長さ(以下、干渉区間長という)dを演算し、干渉区間長dの溶接線B全長Lに対する割合が第1設定値Mを超えるか否かを判定する。
【0055】
すなわち、前記黒丸の各チェックポイントPa,Pb,Pcの区間長をdrt、黒三角の各チェックポイントPd,Pe,Pfの区間長をdt、同黒三角の各チェックポイントPg,Ph,Pi,Pjの区間長をdrとすると、下記式(1)により干渉区間長dが算出される。
【0056】
d=drt+dt+dr (1)
【0057】
ここで、干渉区間長dの溶接線B全長Lに対する割合が第1設定値M以上であればステップS5の干渉回避処理に進み、第1設定値M以上でなければそのときのロボット姿勢、ツール姿勢およびツール種類の各作業態様の組み合わせを選択して、ステップS8に進む。
【0058】
ステップS5:干渉回避処理を実施する。すなわち、ツール60およびロボットアーム50とワークWとの干渉が発生した箇所での干渉を回避するように作業態様を変更するための処理を行う。
【0059】
図7に干渉回避処理の手順をフローチャートで示す。
【0060】
ステップS11:これまでの処理でロボット姿勢が決定済みであるか否かが判定される。ロボット姿勢が決定されていればステップS16に進み、決定されていなければステップS12に進む。初回は決定されていないので、ステップS12に進む。
【0061】
ステップS12:ロボットアーム50がワークWと干渉すると判断された区間の長さ(以下、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さ長という)darmを演算し、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さ長darmの溶接線B全長Lに対する割合が第2設定値N以上であるか否かを判定する。前記例では、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さ長darmは下記式(2)により演算される。
【0062】
darm=drt+dr (2)
【0063】
ここで、前記割合が第2設定値N以上であればステップS13に進み、第2設定値N以上でなければステップS20に進み、現在のロボット姿勢候補をロボット姿勢に決定後、ステップS16に進む。
【0064】
ステップS13:他にロボット姿勢候補があるか否かを判定する。他にロボット姿勢候補があればステップS14に進み、他にロボット姿勢候補がなければステップS15に進む。
【0065】
ステップS14:ロボット姿勢候補テーブル(表1または表2参照)の中から優先順位が次順位のロボット姿勢を選択した後、本干渉回避処理を終了し、図6の教示自動化処理に戻る。ステップS12〜ステップS14の処理によって、ロボットアーム50とワークWとの干渉箇所が多い場合にはロボット姿勢がツール姿勢よりも優先的に変更される。
【0066】
ステップS15:ロボットアームと部材が干渉する区間の長さ長darmを最小とするロボット姿勢を選択し、ステップS16に進む。
【0067】
ステップS16:他にツール姿勢候補があるか否かを判定する。他にツール姿勢候補があればステップS17に進み、他にツール姿勢候補がなければステップS18に進む。
【0068】
ステップS17:優先順位が次順位のツール姿勢を選択した後、本干渉回避処理を終了し、図6の教示自動化処理に戻る。
【0069】
ステップS18:他にツール種類候補があるか否かを判定する。ここで、他にツール種類候補がなければ本干渉回避処理を終了し、あればステップS19のツール種類変更処理に進む。
【0070】
ステップS19:優先順位が次順位のツールを選択した後、本干渉回避処理を終了し、図6の教示自動化処理に戻る。なお、ここでツール60の種類を変更したときには、第1優先順位のツール姿勢から再度ステップS3の干渉チェック処理を行う。
【0071】
図6に戻り、ステップS6では、ロボット姿勢、ツール姿勢およびツール種類のいずれかに変更があったか否かを判定する。変更があれば前記ステップS3に戻り、変更がなければステップS7に進む。
【0072】
ステップS7:干渉チェック処理の結果により干渉区間長dを最小とするロボット姿勢、ツール姿勢およびツール種類の各作業態様の組み合わせを選択する。
【0073】
ステップS8:前記ステップS4またはステップS7で選択された各作業態様の組み合わせを最終的な作業態様として選択し、この作業態様で干渉箇所があればその箇所でロボットRの動作経路を分割し、干渉が発生していない部分のみをロボットRにより施工するものとして干渉を回避する。
【0074】
すなわち、ロボット姿勢、ツール姿勢、ツール種類の変更による干渉回避処理の結果、図9に示すように、黒三角の各チェックポイントPd、Pe、Pfの区間および同黒三角の各チェックポイントPg、Ph、Pi、Pjの区間では干渉が解消し、黒丸の各チェックポイントPa、Pb、Pcの区間ではロボットRによる施工は行わないものとし、その余の区間L1、L2をロボットRにより施工するように動作プログラムを生成する。
【0075】
このように、本実施形態のロボット制御方法では、ロボット姿勢、ツール姿勢およびツール種類の各作業態様カテゴリ毎に作業品質に応じて予め定めた優先順位を付した作業態様候補を予め選定し、干渉区間長dが所定の長さを超えるときには前記予め定めた優先順位に従って作業態様を変更し、前記作業態様候補の中でロボットRによる施工率が最も大きくなる作業態様を選択して動作プログラムが生成されるので、作業品質と作業効率とをバランスさせた最適な動作プログラムを生成することが可能となり、ロボットを効率よく動作させることができる。
【0076】
また、干渉による作業不能な部分が所定長さ(割合)を超えるときにのみ作業態様を変更するようにしているので、最適な作業態様の探索に要する時間と、ロボットによる施工率アップによる作業時間節約とをバランスさせて動作プログラムを生成してロボットを動作させることも可能となる。
【0077】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではなく、種々改変が可能である。例えば、実施形態では溶接ロボットを例に採り説明されているが、本発明の適用は溶接ロボットに限定されるものではなく、各種ロボットに適用でき、例えば塗装ロボットやシーリングロボットにも適用できる。
【0078】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、複雑な形状のワークに対しても合理的な範囲で最適な作業態様を選定して、ロボットによる施工率の高い動作プログラムを自動生成して、ロボットを動作させることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るロボット制御方法が適用される教示自動化システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】ワークの一例を示す模式図であり、同(a)は斜視図、同(b)は平面図を示す。
【図3】ロボット姿勢の各態様を示す斜視図であり、同(a)は変更前のロボット姿勢、同(b)はベース位置変更後のロボット姿勢、同(c)は形態変更後のロボット姿勢を示す。
【図4】ツール姿勢の態様を示す模式図であり、同(a)は斜視図、同(b)は側面図、同(c)は正面図を示す。
【図5】ツール種類の各態様を示す模式図であり、同(a)はストレートトーチ、同(b)は22.5度カーブドトーチ、同(c)は45度カーブドトーチを示す。
【図6】教示自動化処理の手順を示す流れ図である。
【図7】干渉回避処理の手順を示す流れ図である。
【図8】ツールおよびロボットアームとワークとの干渉の態様を示す模式図であり、同(a)は干渉のない場合、同(b)はツールとワークとが干渉する場合、同(c)はロボットアームとワークとが干渉する場合を示す。
【図9】ロボットの動作経路の分割例を示す模式図である。
【符号の説明】
10 設計CADシステム
11 CAD用データベース
20 設計部門用CAM
21 CAM用データベース
30 製造部門用CAM
40 製造現場制御装置
41 製造現場データベース
50 ロボットアーム
60 ツール
61 トーチ
A ロボット制御システム
C ロボットコントローラ
R ロボット
W ワーク
Claims (20)
- 動作プログラムをコンピュータにより自動的に生成してロボットを動作せさるロボット制御方法であって、
ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれについて所定数の作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがってデータベースから選択する手順と、
選択された各作業態様候補の中からロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれの作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがって採用する手順と、
ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれについて採用された作業態様候補により所定作業に対するロボットの動作をシミュレーションする手順と、 前記シミュレーションでの作業経路における部材との干渉の有無を自動的にチェックする手順と、
前記チェックにより干渉が確認された場合、干渉区間長を算出する手順と、
前記干渉区間長が第1の設定値を超えていなければ、干渉個所でロボットの作業経路を自動的に分断する手順と、
前記分断により干渉区間が排除された作業経路内においてロボットを動作させる手順
とを含んでいることを特徴とするロボット制御方法。 - 干渉区間長が最小となるようロボット姿勢、ツール姿勢およびツールを選択することを特徴とする請求項1記載のロボット制御方法。
- 干渉区間長が第1の設定値を超えていれば、干渉回避処理を行うことを特徴とする請求項1記載のロボット制御方法。
- 干渉回避処理が、ロボット姿勢を変更するロボット姿勢処理を含み、ロボットアームと部材とが干渉する区間の長さが第2の設定値を超えている場合において、ロボット姿勢を変更する余地があれば、ロボット姿勢を変更することを特徴とする請求項3記載のロボット制御方法。
- ロボット姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされることを特徴とする請求項4記載のロボット制御方法。
- 干渉回避処理が、ツール姿勢を変更するツール姿勢処理を含み、ロボットアームと部材とが干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合において、ツール姿勢に変更する余地があれば、ツール姿勢を変更することを特徴とする請求項3記載のロボット制御方法。
- ツール姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされることを特徴とする請求項6記載のロボット制御方法。
- 干渉回避処理が、ツールを変更するツール変更処理を含み、ロボットアームと部材とが干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合で、かつツール姿勢を変更する余地がない場合において、ツールを変更する余地があれば、ツールを変更することを特徴とする請求項3記載のロボット制御方法。
- ツールの変更が予め定めた優先順位の高い順になされることを特徴とする請求項8記載のロボット制御方法。
- 前記干渉回避処理により、ロボット姿勢、ツール姿勢またはツールが変更された場合、再度シミュレーションして作業経路における部材との干渉の有無をチェックすることを特徴とする請求項4、5、6、7、8または9記載のロボット制御方法。
- 動作プログラムをコンピュータにより自動的に生成してロボットを動作せさるロボット制御システムであって、
データベースを備え、
ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれについて所定数の作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがって前記データベースから選択し、選択された各作業態様候補の中からロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれの作業態様候補をそれぞれの優先順位にしたがって採用し、前記ロボット姿勢、ツール姿勢およびツールのそれぞれに ついて採用された作業態様候補により所定作業に対するロボットの動作をシミュレーションし、前記シミュレーションでの作業経路における部材との干渉の有無を自動的にチェックし、前記チェックにより干渉が確認された場合、干渉区間長を算出し、前記干渉区間長が第1の設定値を超えていなければ、干渉個所でロボットの作業経路を自動的に分断し、前記分断により干渉区間が排除された作業経路内においてロボットを動作させるよう構成されてなることを特徴とするロボット制御システム。 - 干渉区間長が最小となるようロボット姿勢、ツール姿勢およびツールを選択するよう構成されてなることを特徴とする請求項11記載のロボット制御システム。
- 干渉区間長が第1の設定値を超えていれば、干渉回避処理を行うよう構成されてなることを特徴とする請求項11記載のロボット制御システム。
- 干渉回避処理が、ロボット姿勢を変更するロボット姿勢処理を含み、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さが第2の設定値を超えている場合において、ロボット姿勢を変更する余地があれば、ロボット姿勢を変更するよう構成されてなることを特徴とする請求項13記載のロボット制御システム。
- ロボット姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされるよう構成されてなることを特徴とする請求項14記載のロボット制御システム。
- 干渉回避処理が、ツール姿勢を変更するツール姿勢処理を含み、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合において、ツール姿勢に変更する余地があれば、ツール姿勢を変更するように構成されてなることを特徴とする請求項13記載のロボット制御システム。
- ツール姿勢の変更が予め定めた優先順位の高い順になされるように構成されてなることを特徴とする請求項16記載のロボット制御システム。
- 干渉回避処理が、ツールを変更するツール変更処理を含み、ロボットアームと部材が干渉する区間の長さが第2の設定値を超えていないか、あるいは超えていてもロボット姿勢を変更する余地がない場合で、かつツール姿勢を変更する余地がない場合において、ツールを変更する余地があれば、ツールを変更するように構成されてなることを特徴とする請求項13記載のロボット制御システム。
- ツールの変更が予め定めた優先順位の高い順になされるように構成されてなることを特徴とする請求項18記載のロボット制御システム。
- 前記干渉回避処理により、ロボット姿勢、ツール姿勢またはツールが変更された場合、再度シミュレーションして作業経路における部材との干渉の有無をチェックするように構成されてなることを特徴とする請求項14、15、16、17、18または19記載のロボット制御システム。
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