JP3638292B2 - 繊維強化熱可塑性樹脂成形体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は繊維強化熱可塑性樹脂成形体に関する。本発明は、成形に便利な熱可塑性樹脂ペレットを用いて機械的強度、特に多軸衝撃強度が大幅に向上した成形品を実現し、プラスチック成形分野の進歩に貢献するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、繊維強化樹脂成形体としては、短繊維強化型のものと長繊維強化型のものが知られている。
短繊維強化型の熱可塑性樹脂構造体は、例えば、3mm程度の短繊維を熱可塑性樹脂とブレンドして押出機で混練し、ペレット化後、射出成形することによって製造されている。このような成形体は、製造工程における繊維の折損により、成形体中の平均繊維長は0.3 mm程度である。かかる成形体は広く用いられているが、成形体中の繊維は短く、絡み合いも少ないため、繊維による補強効果が充分に発揮されておらず、高度の衝撃強度を必要とする用途には満足できる性能を持つことができなかった。
そのため、近年、長繊維強化型の樹脂成形体が提案されている。
熱硬化性樹脂を用いた長繊維強化樹脂構造体は、繊維のトウまたはロービングを低粘度の熱硬化性樹脂の浴に通して引いて、繊維を含浸する事により繊維強化構造物を製造し、これを型枠上に固定後、加熱により架橋反応を起こし硬化させることによって製造されるのが一般的である。しかし、この場合、熱硬化性樹脂が粘稠な為、繊維を濡す事が困難であり、成形品は濡れ性に劣り、機械特性において期待が持てない。又、シート状の繊維強化構造物の成形時、型枠上に固定し圧縮成形する為、成形品形状の自由度も著しく劣り、成形品周囲にバリが発生し、その為後工程で仕上げ加工が必要、その上繊維強化構造物の保存上でも架橋硬化の防止を考慮する必要がある等の問題点がある。
一方、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品としては、スタンパブル・シート等に代表される圧縮成形法によるものが知られているが、これもペレット状原料を用いた射出溶融圧縮成形法、溶融圧縮法、射出成形法によるものに比べ強化繊維が成形品の全般に渡って均一に分散するという点において成形品形状の自由度が著しく劣る。かつ、長繊維強化樹脂成形品において繊維自体に樹脂が十分に被覆された状態が機械特性上好ましいと予想されるが、製造上スタンパブル・シートはシート状の繊維とシート状の樹脂とのサンドウィッチ構造であり、これらを加熱圧縮する為、繊維同士の重なりが避けられず、機械的特性において限界が有る。更に、スタンパブル・シートはシートの特性上、3次元構造物製造時、圧縮成形法を取ると流動性が悪いため構造体の機械物性が著しく不均一な成形品になるという欠点が有る。
又、熱可塑性樹脂被覆繊維束の切断により製造される、平行に配列した繊維で強化されたペレットが知られている。例えば、米国特許第4559262 号明細書には、2〜100mm の平行繊維ペレットと他の(強化繊維なし又は短繊維強化)ペレットとの混合物を射出成形機のような可塑化装置で溶融、均質化して成形する技術が記載されている。この技術によれば、成形品内の強化繊維の繊維長は少なくとも2mmの長さのものが50重量%以上存在するとされている。成形品内の強化繊維長の詳しい情報は開示されていないが、本発明者等がペレットの長さ10mmの実施例について追試したところ、たかだか2〜3mmの長さが主体となることが判明した。要するに、この技術においては、短繊維強化樹脂成形体に比べれば繊維長や強度の改善が見られるが、成形体中の繊維長を5mmレベルに保持することは困難であり、成形品の機械的特性、特に衝撃強度は連続繊維を用いたスタンパブル・シートに比べて低水準のものしか得られないのである。
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、本発明の目的は、特に優れた機械的強度、例えばスタンパブル・シートに匹敵する衝撃強度を持ち、しかも熱可塑性樹脂ペレットを用いて容易に成形することができる成形体を提供することである。又、平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレットからこのような成形体を得るための成形技術を提供することである。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、強化繊維の熱可塑性樹脂中での濡れ性を向上させ、かつ長サイズペレットを用い、繊維の折損を抑制した可塑化装置により可塑化を行った後、圧縮成形法等を用いることによって長繊維を保持し、機械強度、特に衝撃強度が大幅に向上した成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち本発明は、長さ10〜100mmの平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレット乃至はそれを含む樹脂組成物を、スクリューを有する可塑化装置を用いて低剪断力で可塑化し、成形して得られる成形体であって、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、鉱物繊維又は金属繊維からなる長さ5〜 100mm の強化繊維が絡み合った位置関係にあり、成形体重量の10〜80%を占める全強化繊維のうち、50%以上が絡み合い骨格を形成していることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形体、並びに
ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、鉱物繊維又は金属繊維からなる長さ5〜 100mm の強化繊維が絡み合った位置関係にあり、成形体重量の10〜80%を占める全強化繊維のうち、50%以上が絡み合い骨格を形成している繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、長さ10〜100mmの平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレット乃至はそれを含む樹脂組成物を、スクリューを有する可塑化装置を用いて、スクリュー背圧を0kg/cm2Gにして、低剪断力で可塑化し、成形することを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法である。
【0004】
以下、本発明について詳述する。
本発明においては、成形に便利な熱可塑性樹脂ペレットを用いる。そして一層優れた強度を発現させるために、従来、ペレットを用いる熱可塑性樹脂強化の分野で実現していたものより著しく長い5〜100mm の繊維長が保持され、且つ該繊維が成形体中で絡み合った位置関係で存在する構成をとる。このような繊維長(スタンパブル・シートにおける連続繊維と区別して中程度の繊維長と呼ぶ)とその絡み合い構造は、例えば次のような手段で実現することができる。即ち、従来技術の中間原料である熱可塑性樹脂被覆繊維束を、長めの10〜100mm に切断した平行繊維強化ペレットを用い、これを適度の剪断応力のかかる可塑化条件下で成形する。実際には、シリンダ温度、スクリュー回転数、スクリュー背圧の最適化を行い、必要に応じてスクリュー各部寸法、ノズル寸法及びそれらの関係を調整して低剪断力を実現することができる。平行繊維強化ペレットと可塑化条件とを適切に選ぶことにより、上記のような繊維長とその絡み合い構造を持ち、且つ繊維含量10〜80重量%の繊維強化熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。この成形体は、樹脂と繊維の密着性の良い平行繊維強化ペレットを原料とするので、空隙率は極めて低い値に保持される。適切な繊維含量と低い空隙率とは樹脂と繊維の密着性を確保し、中程度の繊維長とその絡み合った位置関係と相まって成形体に優れた強度をもたらす。
このようにして、本発明の技術思想は、長さ5〜100mm の強化繊維が絡み合った位置関係にあり、成形体重量の10〜80%(好ましくは10〜60%)を占める全強化繊維含量のうち、50%以上(好ましくは70%以上)が絡み合い骨格を形成していることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形体として表現される。又、絡み合い骨格を形成する比率(絡み合い度)の代わりに平均繊維長を用いて、長さ5〜100mm の強化繊維が絡み合った位置関係にあり、全強化繊維含量が成形体重量の10〜80%(好ましくは10〜60%)を占め、強化繊維の重量平均繊維長が5〜50mm(好ましくは10〜50mm)であることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形体として表現することもできる。
【0005】
この繊維強化熱可塑性樹脂成形体を最も特徴づけるものは、中程度の長さ(5〜100mm )の繊維の絡み合った位置関係である。絡み合った位置関係とは、必ずしも繊維と繊維が直接に接して絡み合っていることを必要とせず、一方の繊維が他方の繊維のループの中を通っている位置関係にあればよい。実際、予め樹脂を含浸被覆した長繊維から製造された平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを用いて可塑化工程で絡み合った位置関係を実現させる場合、繊維と繊維は直接接触状態にはならず、又、このような非接触絡み合い構造の方が繊維と樹脂との良好な密着が保持されているので好ましい。
このような成形体は、射出成形法、溶融圧縮成形法、圧縮成形法の採用により製造できるが、好ましくは次の成形技術により実現することができる。即ち、長さ10〜100mm の平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレット乃至はそれを含む樹脂組成物を、適度の剪断応力をかけて可塑化、成形する方法である。適度の剪断応力とは大き過ぎない剪断応力であり、別の表現をすれば、繊維の絡み合いを起こすが、著しい切断を引き起こさない程度の剪断応力である。当業者であれば、このような判断基準に基づいて試行することにより適切な条件を選定することができ、その具体例は後記実施例に示されている。又、可塑化工程における剪断応力の指標として、対比できる装置の消費電力の比を用いることができる。
従って、本願における製法発明は、長さ10〜100mm の平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレット乃至はそれを含む樹脂組成物を、上記の適度の剪断応力をかけて可塑化し、成形することを特徴とする長さ5〜100mm の強化繊維が絡み合った位置関係にある繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造法として表現することができる。
【0006】
ここで、本発明を特徴づける上記数値は次のような試験法により確認することができる。
先ず、製品である長繊維強化樹脂成形体から、焼成(600 ℃灰化処理)、溶解等の方法で樹脂成分を除去し、繊維強化の骨格を得る。通常の場合、目視観察によって、この骨格が5〜100mm の繊維長を有するか、且つそれが絡み合った位置関係で存在するか否かを判断できる。即ち、焼成(600 ℃灰化処理)時に骨格が簡単に崩れてしまうものは繊維が絡み合った位置関係にあるとは言えない。骨格が残っていても多量の繊維が骨格からこぼれ落ちるものも繊維が短くて絡み合っていないためである。繊維長や絡み合いの判定が微妙な場合は次の方法で「絡み合い度」を測定して、絡み合い度50%以上のものを絡み合った位置関係にあるものと判定する。
〔絡み合い度の測定法〕
成形体から樹脂成分を除去して得られる繊維成分を2mm標準篩を用い、繊維の骨格が崩れない程度の振動を与えて篩分けする。この際、篩下重量を測定し、全体重量に対する比率(X)を求め、1−Xを百分率で表示して絡み合い度とする。Xが0.5 以下(絡み合い度;50%以上)であれば強化繊維が絡み合った位置関係で存在すると判断する。
〔繊維含量の測定、熱可塑性樹脂であるかの判断〕
成形体中の繊維含量、及び樹脂が熱可塑性樹脂であるか否かは、通常の技術水準で問題なく判別できる。
〔成形体中の強化繊維の繊維長分布および重量平均繊維長の測定法〕
成形体を600 ℃灰化処理後、約100mg をサンプリングして、光学フロファイルプロジェクター上に投影し、十字線にかかった繊維について長さを実測する。繊維長分布および重量平均繊維長はこれに基づいて測定する。
〔多軸衝撃強度の測定法〕
厚さ3mmの成形品から80mm角試験片を切出し、プランジャー先端曲率10mmR、テストスピード1m/秒でインストロン社製多軸衝撃測定装置を用いて測定する。
〔曲げ強度の測定法〕
幅12mm、厚さ3mm、長さ100 mm、スパン50mmの試験片を用いて、テストスピード1.5 m/分で島津製作所社製万能試験機により測定する。
【0007】
次に、本発明に用いる各成分を説明する。
本発明に用いる熱可塑性樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン、ゴム補強ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル樹脂;ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトンカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ABS、ポリフェニレンエーテル/ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド等のブレンド樹脂が挙げられる。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は特に制限は無く、用途に応じて選択すれば良い。例えば、繊維強化の効果が顕著である点は結晶性の熱可塑性樹脂、その中でも汎用性の熱可塑性樹脂が好ましい。
好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル樹脂;ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドまたはこれらの樹脂のブレンド樹脂である。
【0008】
本発明に用いる強化繊維は、本発明に用いる熱可塑性樹脂の引張弾性率よりも高い弾性率を持つものであれば問題無く、例えば、E-ガラス、S-ガラス等のガラス繊維、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系等のカーボン繊維、炭化ケイ素繊維等のセラミック繊維、鉱物繊維等の無機繊維、ステンレス、黄銅等の金属繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、液晶性芳香族ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリ-p- フェニレンテレフタルアミド繊維、ポリ-m- フェニレンイソフタルアミド繊維等のアラミド繊維、ポリフェニレンベンゾチアゾール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ジュート等のセルロース繊維等の有機繊維等が挙げられる。
尚、本発明に用いる強化繊維は機械物性、耐熱性等を考慮し、熱可塑性樹脂との好ましい組合わせ等からガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、鉱物繊維等の無機繊維、ステンレス、黄銅等の金属繊維、液晶性芳香族ポリエステル繊維、ポリ-p- フェニレンテレフタルアミド繊維、ポリフェニレンベンゾチアゾール繊維等が好ましく、単独あるいは組合わせて用いられる。
強化繊維径は繊維の種類によっても異なるが、例えばガラス繊維の場合は3〜20μm であるが、機械特性から細い方が好ましいが、3μm 未満ではペレットを作る過程で繊維への樹脂の含浸が困難であり、逆に20μm を越えると折損しやすくなる。
【0009】
本発明の成形体の製造に用いる成形材料は、熱可塑性樹脂で連続単繊維の表面を被覆した連続繊維/熱可塑性樹脂複合体を一定長に切断することにより得られる平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレットである。尚、ここで平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレットとは、繊維が実質上ペレットと同一長さでペレットの長さ方向に実質的に平行配列しているものを言う。
平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの長さは10〜100mm であり、該ペレット長が10mm未満の場合は成形物の繊維強化効果は期待できず、また、100mm を越える長さでは可塑化装置への均一な供給が困難となり好ましくない。
成形用材料中の繊維強化材の充填率は成形体の機械的強度等の目的に応じて選ぶことができ、普通10〜80重量%である。一般に高充填率ほど強度は大きくなるが、80重量%を越えると、単繊維の表面を熱可塑性樹脂で十分に被覆する事ができず、成形品において補強効果が低下する為好ましくない。低い充填率の場合は絡み合い度が小さくなりやすく、機械的強度等の特徴を発揮しないことがある。マスターバッチとして用いる場合、10重量%未満では経済面からも好ましくない。
繊維状強化材の熱可塑性樹脂との接着性の面から機械的物性を改良する別の手段として、ペレット製造の過程で表面処理する事は望ましく、例えばガラス繊維の場合、シラン系、チタン系カップリング剤で処理する事は特に好ましい。
連続でかつ平行配列した繊維を含有するペレットの製造にあたっては、連続平行配列した繊維束の構成単位である単繊維(フィラメント)の表面の大部分を熱可塑性樹脂で被覆し、ストランドを作成し、これを所定の長さで切断する事により得られる。この熱可塑性樹脂で被覆する方法としては、通常の方法は全て利用でき、例えば、熱可塑性樹脂を溶融状態で繊維強化材に含浸させる溶融含浸法(特開昭61−229534号、同61−229535号、同61−229536号、特願昭61−216253号公報)、粉末状の熱可塑性樹脂を空気中に浮遊、または水などの液体中に懸濁させた状態で繊維束に含浸させた後、溶融してストランドを得る方法等が挙げられる。溶融含浸法としては特に制約は無く、偏平ダイ(特開昭63−216732号公報)、屈曲通路(特開昭63−264326号公報)を通す方法、ローラー(特開昭63−132036号公報)やベルト(特開平1−214408号公報)を用いる方法等の公知のいずれの方法でも良い。特に、操作性の点で、偏平ダイや屈曲通路を有する形状の含浸ダイを繊維束が通る引き抜き成形法が好ましい。また、これらの方法で得られた熱可塑性樹脂が含浸した繊維束を更に賦形ダイを通して所望のストランド形状、かつ長さで切断しペレットを得る事もできる。
【0010】
成形体全体の組成を所望のものにするために、必要に応じ平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレット以外の形で熱可塑性樹脂を併用することもできる。例えば繊維で強化されていない樹脂ペレット、短繊維強化樹脂ペレット、異種の樹脂を含むペレット、樹脂粉末等を併用することができる。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形体には、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤(防止剤)、滑剤、着色剤等の各種安定剤を同成形体を用いた成形品の機械特性を損なわない範囲で添加することができる。これらの添加剤はペレット成分として加えるか、または別個に加えることができる。
【0011】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらのものは本発明をなんら限定するものではない。
以下の実施例、比較例で用いた長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、次のような方法で作製した樹脂含浸繊維束を切断することにより得たものである。即ち、ガラス繊維束のロービングを連続的に引取りながら加熱した後、クロスヘッドダイを通過させた。クロスヘッドダイには、押出機にて溶融したポリプロピレン(住友化学製ノープレンAX574 )が供給されており、クロスヘッドダイ中でポリプロピレンをガラスロービングに含浸した。この時、ガラスロービングの引取り速度と溶融ポリプロピレンの供給量を制御して、ガラス含有量を40重量%に調整した。クロスヘッドダイを出たポリプロピレン含浸ガラスロービング(ストランド)は、次に、賦形ダイを通過し、更に引取りロールを通過後、ペレタイダーにてストランドを切断して48mm、12mm、3mm長のペレットを作製した。
このペレットを下記の可塑化装置を用いて、下記条件で適度な剪断応力を加えながら可塑化した後、200 ×100 ×3mmの平板試験金型を用いたハンドプレスで、冷却時間60秒で圧縮成形を行い、80×80mmの試験片を切り出して試験を行った。
〔可塑化装置及び条件〕
スクリュー径;90mm、スクリューピッチ;90mm
溝深さ;フィード部10mm、メタリング部5mm
スクリュー回転数;90rpm 、圧縮比;2.5
予備加熱;100 ℃
成形温度調節値;(吐出)240,230,220,200 ℃(供給)
吐出径20mm、背圧0kg/cm2G
〔試験項目〕
繊維長観察、繊維含量実測、繊維長分布の実測と重量平均繊維長の算出、絡み合い度の測定、機械的強度の測定
実施例1、比較例1
上記48mm長の平行繊維強化ポリプロピレンペレットを用い、上記条件で可塑化し、圧縮成形して板状成形品(実施例1)を作成した。この板状成形品はペレットからの成形品であるから、繊維長はペレットの長さを越えることはなく、比較的折れやすいような条件で可塑化しても重量平均繊維長は12mm程度あり、ポリプロピレン製スタンパブル・シート(比較例1)に用いられている連続ガラス繊維(40%含有)の長さとは比較にならない。それにもかかわらず、表1に示すように、ポリプロピレン製スタンパブル・シートに匹敵する多軸衝撃強度を有する。又、アイゾット衝撃強度もポリプロピレン製スタンパブル・シートに近い値である。
尚、後記比較例3に示した従来技術による成形体のアイゾット衝撃強度は19(ノッチ付き)および52(反ノッチ)であり、短繊維強化ポリプロピレン成形体(比較例2)の12および42という値にくらべれば大きいが、実施例1に比べれば著しく小さい。
【0012】
【表1】
【0013】
実施例2、比較例2〜3
上記12mm長の平行繊維強化ポリプロピレンペレットを用い、上記条件で可塑化し、圧縮成形して板状成形品(実施例2)を作成した。又、上記3mm長の平行繊維強化ポリプロピレンペレットを用い、上記条件で可塑化し、圧縮成形して板状成形品(比較例2)を作成した。更に、上記12mm長の平行繊維強化ポリプロピレンを用い、通常の射出成形ノズル(吐出径4mm)をつけた装置で、通常の条件(背圧5kg/cm2G)で可塑化処理後、圧縮成形して板状成形品(比較例3)を作成した。
これらのものの物性値を表2に示す。実施例2の成形品は、比較例2〜3の成形品に比べて、優れた機械的強度が発揮されている。
【0014】
【表2】
【0015】
実施例3、比較例4
実施例1と同じペレットを用い、同様の可塑化処理で、圧縮成形により箱状成形品(300 ×200 ×150 ×3mm)を作製し、天板部と側板部に分けて80mm角の試験片を切出し評価した。又、連続ガラス繊維(40%)含有のポリプロピレン製スタンパブル・シートを用いて、同様の圧縮成形により箱状成形品を作製し、評価した。
表3の結果から明らかなように、比較例4では可塑化溶融物(ブランク)の投入位置である天板部の多軸衝撃強度は高いが、圧縮時の流動によって賦形される側板部の多軸衝撃強度は極めて低い値を示し、測定位置(流動距離)の違いによる物性差が大きいことがわかる。これにに対し、実施例3の成形品では、繊維長が比較例4よりも短いにもかかわらず、何れの場所でも充分な多軸衝撃強度を有している。
【0016】
【表3】
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、取扱いやすいペレット状の繊維強化熱可塑性樹脂材料を用いて、連続繊維のスタンパブル・シートに匹敵し、側板部についてはこれを凌駕する機械的強度を有する成形体が得られる。本発明は、従来のスタンパブル・シートに比べて成形体形状の自由度が大きく、又、強化繊維含有量も広範囲のものを実現できる。
Claims (2)
- 長さ10〜100mmの平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレット乃至はそれを含む樹脂組成物を、スクリューを有する可塑化装置を用いて低剪断力で可塑化し、成形して得られる成形体であって、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、鉱物繊維又は金属繊維からなる長さ5〜 100mm の強化繊維が絡み合った位置関係にあり、成形体重量の10〜80%を占める全強化繊維のうち、50%以上が絡み合い骨格を形成していることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形体。
- ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、鉱物繊維又は金属繊維からなる長さ5〜 100mm の強化繊維が絡み合った位置関係にあり、成形体重量の 10 〜 80 %を占める全強化繊維のうち、 50 %以上が絡み合い骨格を形成している繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、長さ 10 〜 100mm の平行繊維強化熱可塑性樹脂ペレット乃至はそれを含む樹脂組成物を、スクリューを有する可塑化装置を用いて、スクリュー背圧を0 kg / cm 2 G にして、低剪断力で可塑化し、成形することを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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