JP3634408B2 - リチウム電池の電極用炭素材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高い放電容量および初期充放電効率を有し、リチウム二次電池の電極材料として有用な電極用炭素材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、負極活物質としてリチウム、正極活物質として金属カルコゲン化物や金属酸化物を用い、電解液として非プロトン性有機溶媒に種々の塩を溶解させた電解液を用いて構成される。このリチウム二次電池は、理論的に高い放電力とエネルギー密度とを有し、高エネルギー密度型二次電池の一種として注目され、近年、盛んに研究が行なわれている。このようなリチウム二次電池は、分散型、可搬型電池として電子機器、電気機器、電気自動車、電力貯蔵などの分野での用途が期待されている。
【0003】
しかし、従来のリチウム電池では、負極活物質としてのリチウムが箔状などの金属リチウム単体で用いられる場合が多く、充放電を繰り返すうちに、樹枝状リチウムデンドライトが電極表面に析出する。しかも、樹枝状のリチウムデンドライトは隔膜を貫通して成長し、正極との間で短絡する危険性が大きい。そのため、充放電のサイクル寿命が短い。
【0004】
そこで、アルミニウムや、鉛、カドミウムおよびインジウムを含む可融性合金を用い、充電時にリチウムを合金として析出させ、放電時には合金からリチウムを溶出させる方法が提案されている(米国特許第4002492号明細書)。しかし、このような方法では、電極への加工性が低下するだけでなく、単位重量又は単位容積当りのエネルギー密度が低下し、金属の劣化に伴なって寿命が低下する。
【0005】
近年、上記課題を解決するため、リチウムを各種の炭素材に担持させる研究が盛んに行なわれている。このようなリチウム電池の電極用炭素材には、充分高い電流密度において高い放電容量を有すること、また、高い充放電効率を示すことが要求される。しかし、通常の負極用炭素材にリチウムを担持しても、放電容量及び充放電効率が低下する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、デンドライトの生成がなく、安全性が高いだけでなく、単位体積当りの放電容量、および充放電効率が大きなリチウム電池の電極用炭素材およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、リチウムが担持される炭素材であっても放電容量および充放電効率を増大できるリチウム電池の電極用炭素材およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(a)メソフェーズ小球体を特定の昇温速度で焼成する、(b)特定のキノリン不溶分またはトルエン不溶分を有するメソフェーズ小球体を炭素化する、または(c)特定の粒度に粉砕したメソフェーズ小球体を炭素化するか、またはメソフェーズ小球体を炭素化した後、特定の粒度に粉砕することにより、意外にも前記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の方法(1)では、メソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成することにより、リチウム二次電池などのリチウム電池電極用炭素材を製造する。焼成温度に関し、最終到達温度は450〜3000℃である場合が多い。
【0010】
本発明の他の方法(2)では、キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を炭素化することにより、リチウム電池電極用炭素材を製造する。
【0011】
本発明のさらに他の方法(3)では、メソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、600〜1500℃の温度で炭素化するか、またはメソフェーズ小球体を600〜1500℃の温度で炭素化した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とすることにより、リチウム電池電極用炭素材を製造する。この方法において、メソフェーズ小球体を粉砕して下記の粒度分布を有する粉粒体とした後、炭素化するか、またはメソフェーズ小球体を炭素化した後、粉砕して下記の粒度分布を有する粉粒体としてもよい。
【0012】
(A)累積度数分布における10体積%粒径D10が
0.1μm≦D10≦10μm、
(B)累積度数分布における50体積%粒径D50が
1.8μm≦D50≦15μm、および
(C)累積度数分布における90体積%粒径D90が
4μm≦D90≦80μm
また、上記方法(1)〜(3)を適宜組合せることにより、リチウム電池電極用炭素材を製造することもできる。
【0013】
本発明のリチウム電池電極用炭素材は、上記方法(2)により得られた炭素材であって、活性表面積が0.6mmol/g以下である。
【0014】
本発明の他のリチウム電池電極用炭素材は、累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの炭素化されたメソフェーズ小球体を含む。この炭素材において、炭素化されたメソフェーズ小球体は前記(A)〜(C)の粒度分布を有していてもよい。また、炭素化されたメソフェーズ小球体のBET比表面積は10m2 /g以下であってもよい。
【0015】
なお、本明細書において、「炭素化」とは、特に言及しない限り、例えば450〜1500℃程度の温度で焼成処理することを言う。また、「黒鉛化」とは、特に言及しない限り、例えば1500〜3000℃程度の温度で焼成処理することを言い、結晶構造が黒鉛構造でないときも黒鉛化の概念に含める。
【0016】
また、累積度数分布における10体積%粒径D10、50体積%粒径D50、及び90体積%粒径D90とは、それぞれ、累積度数分布において、10体積%、50体積%及び90体積%における粒径を示す。
【0017】
以下、必要に応じて添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
【0018】
メソフェーズ小球体(メソカーボンマイクロビーズ)は、高度に結晶が配向し、炭素六員環網目が層状に積層した黒鉛類似の構造を有する球晶であり、異方性を有する球状の炭素質微小粒子である。このメソフェーズ小球体は、ピッチ類を熱処理し、分離精製工程を経て得られる。より具体的には、コールタール、コールタールピッチ、石油系重質油(例えば、アスファルト)やエチレンボトム油などの歴青物を、例えば、常圧〜20kg/cm2 ・G、温度350〜450℃(好ましくはは380〜430℃)程度の条件で熱処理し、生成した球晶を分離精製することにより得られる。前記球晶は、マトリックスピッチとは異なる相を形成しており、ピッチの加熱処理過程において、アンチソルベント法、遠心分離法等により単離できる。
【0019】
前記メソフェーズ小球体のBET比表面積は、通常、70m2 /g以下(好ましくは1〜10m2 /g程度)である。前記メソフェーズ小球体は、例えば、1〜100μm程度の粒度分布を有している場合が多く、その平均粒子径は、例えば、1.5〜80μm程度である。
【0020】
このようなメソフェーズ小球体を焼成し、炭素化又は黒鉛化することにより、リチウム二次電池の電極材として適した炭素材が得られる。その際、熱処理温度を変えてメソフェーズ小球体を焼成するだけでは、充分に高い放電容量、充放電効率は得られない。
【0021】
本発明の方法(1)について以下に説明する。
【0022】
メソフェーズ小球体の焼成は、固定床または流動床方式の炭素化炉または黒鉛化炉で行うことができ、所定の温度まで昇温できる炉であれば、炭素化炉または黒鉛化炉の加熱方式や種類は特に限定されない。炭素化炉としては、例えば、リードハンマー炉、トンネル炉、単独炉などが例示される。黒鉛化炉としては、例えば、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉、真空炉などが例示される。
【0023】
炭素化は、前記の条件で行えばよいが、好ましくは非酸化性雰囲気、特に不活性雰囲気下、最終到達温度450〜1500℃、好ましくは600〜1500℃、さらに好ましくは800〜1300℃程度の温度で行うことができる。処理温度が450℃以下では、メソフェーズ小球体に残存する未炭化の芳香族化合物が流出し、それらがバインダーとなってメソフェーズ小球体を焼結させる場合がある。非酸化性雰囲気下での炭素化は、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気や、真空下で行うことができる。
【0024】
黒鉛化は、前記の条件で行えばよいが、好ましくは非酸化性雰囲気、特に不活性雰囲気下、最終到達温度1500〜3000℃、好ましくは2400〜3000℃、さらに好ましくは2500〜3000℃程度で行うことができる。非酸化性雰囲気下での黒鉛化は、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの不活性ガス雰囲気や、真空下で行うことができる。なお、黒鉛化は、必要に応じて、コークス、黒鉛、炭などの還元剤の存在下で行ってもよい。
【0025】
なお、焼成温度があまりに低い場合には、炭素材の電気伝導率が低下し、高過ぎると、リチウム二次電池における放電容量がさほど向上しない。本発明の方法においては、メソフェーズ小球体を焼成する際の最終到達温度を、600〜2900℃、特に650〜2850℃程度(例えば700〜2800℃程度)とする場合が多い。
【0026】
本発明の方法(1)の特色は、メソフェーズ小球体を焼成する際の昇温速度を40℃/時以下(例えば0.05〜40℃/時)とする点にある。好ましい昇温速度は0.05〜35℃/時(例えば0.1〜30℃/時)、特に0.08〜15℃/時(例えば0.1〜10℃/時)程度である。
【0027】
昇温速度を上記の範囲に設定することにより、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示すリチウム二次電池電極用炭素材が得られる。したがって、同じ性能ではリチウム二次電池電極の体積や重量を低減できると共に、対極のリチウムを有効に利用することが可能になる。
【0028】
なお、昇温速度を低下することによりこのような顕著な効果が得られるのは、以下のような理由によるものと考えられる。
【0029】
製造工程で生成したメソフェーズ小球体を分離、精製した段階では、メソフェーズ小球体中にはピッチ等の低沸点成分(揮発成分)が存在している。このようなメソフェーズ小球体を速い昇温速度で焼成すると、揮発成分がメソフェーズ小球体から脱離しにくく、一部の揮発成分はメソフェーズ小球体中に取り込まれた状態でメソフェーズ小球体とともに炭化又は黒鉛化すると思われる。揮発成分がこのようにして炭化又は黒鉛化すると、揮発成分の炭化又は黒鉛化部位は、光学的等方性になり易いと予想される。一方、メソフェーズ小球体は光学的異方性の炭素材である。そのため、光学的異方性炭素材中に、リチウムに対する吸蔵性又は放出性が低下した光学的等方性の組織が点在又は分散し、前記二次電池の特性を低下させる。
【0030】
これに対して、遅い昇温速度で昇温しながらメソフェーズ小球体を焼成すると、前記揮発成分が炭化または黒鉛化される前にメソフェーズ小球体から脱離、気化するため、炭化又は黒鉛化しても、光学的異方性の組織が維持される。そのため、光学的異方性組織の炭素材により、リチウムに対する吸蔵性および放出性を高めることができるものと推測される。なお、昇温速度が0.05℃/時未満の場合には、焼成時間が長くなり生産性が低下しやすい。
【0031】
本発明の方法(2)について説明する。この発明の特色は、キノリン不溶分89.5重量%以上(89.5〜100重量%)及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上(93.6〜100重量%)のメソフェーズ小球体を炭素化する点にある。炭素化に供する好ましいメソフェーズ小球体には、キノリン不溶分90重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.8重量%以上のメソフェーズ小球体が含まれる。特に好ましいメソフェーズ小球体には、キノリン不溶分90重量%以上及びトルエン不溶分93.8重量%以上のメソフェーズ小球体が含まれる。
【0032】
キノリン不溶分、トルエン不溶分が上記範囲にあるメソフェーズ小球体は、メソフェーズ小球体を溶剤で洗浄することにより得ることができる。
【0033】
メソフェーズ小球体の洗浄に用いる溶剤としては、炭素材の充放電特性を損なわない限り特に限定されず、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、テトラリン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコールなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、安息香酸メチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどのケトン;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;ブチルスルホン、メチルフェニルスルホンなどのスルホン;フェノール、クレゾールなどのフェノール類;エチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン、アニリン、o−トルイジン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、ピペリジンなどのアミン;ピリジン、ピコリン、4−エチルピリジン、キノリン、イソキノリンなどの含窒素複素環化合物;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;タール油(タール中油など)、アントラセン油等が挙げられる。なお、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などで洗浄すると、特に炭素材のトルエン不溶分を向上できる。また、溶媒として、ピリジン、キノリンなどの含窒素複素環化合物などを用いると、特に炭素材のキノリン不溶分を高めることができる。
【0034】
これらの溶媒は、一種または二種以上混合して用いることができる。また、異種の溶媒で順次洗浄してもよい。例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素などで洗浄した後、キノリンなどの含窒素複素環化合物などで洗浄してもよく、この逆の順序で洗浄してもよい。
【0035】
洗浄は慣用の方法により行うことができる。また、洗浄は回分法、連続法の何れの方法で行ってもよい。例えば、溶剤中にメソフェーズ小球体を入れ、静置、攪拌、または振盪することにより洗浄できる。また、カラムなどにメソフェーズ小球体を詰め、溶剤を流通させることによっても洗浄できる。
【0036】
洗浄温度は特に制限されないが、例えば0℃〜溶剤の沸点、好ましくは室温程度(例えば15℃)〜溶剤の沸点程度である。溶剤の還流温度で洗浄することもできる。室温〜180℃、特に80℃〜150℃程度で洗浄する場合が多い。
【0037】
洗浄回数は、溶剤の種類、量及び洗浄方法によっても異なるが、1回以上(例えば1〜10回)、好ましくは2〜8回、さらに好ましくは3〜6回程度である。洗浄回数は多いほど、キノリン不溶分及び/又はトルエン不溶分が向上するが、多すぎると生産効率が低下する。
【0038】
メソフェーズ小球体の炭素化は、前記方法(1)における炭素化と同様の条件で行うことができる。
【0039】
一般に、キノリン不溶分およびトルエン不溶分の低いメソフェーズ小球体を炭素化すると、メソフェーズ小球体中に含まれるキノリンまたはトルエン可溶性成分も炭素化されて、不定形の炭素に変化すると考えられる。炭素材をリチウム二次電池の電極として使用すると、この不定形炭素がメソフェーズ小球体の積層構造におけるエッジ面を閉塞して、リチウムのインターカレーションを妨げる。また、活性表面積が増大し、電解液の分解が起こり易くなる。さらに、炭素化の際、前記キノリンまたはトルエン可溶性成分の炭化物のため、メソフェーズ小球体が焼結して固化しやすくなる。そのため、上記の場合には、電極特性、特に充放電効率が低下するものと思われる。
【0040】
これに対し、本発明の方法では、キノリン不溶分、トルエン不溶分が特定の値以上のメソフェーズ小球体を炭素化するので、炭素材中の前記不定形炭素を低減でき、リチウムのインターカレションが妨げられない。また、炭素材の活性表面積を小さくできると共に、メソフェーズ小球体の焼結を防止できる。そのためか、本発明により得られた炭素材を二次電池電極用として用いると、放電容量および充放電効率が共に顕著に増大する。この方法によれば、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れたリチウム二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0041】
本発明の方法(3)について説明する。この方法の特色は、(i)メソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μm(例えば、1.8〜15μm)の粉粒体とした後、炭素化するか、または(ii)メソフェーズ小球体を炭素化した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とする点にある。
【0042】
一般に、炭素は配向性が高いため、炭素化したメソフェーズ小球体を用いて電極を作成する際、メソフェーズ小球体の積層構造の層平面が電極面に対して平行に、配向しやすい。このため、リチウムをインターカレートする部分に相当する積層構造におけるエッジ面は電極面と垂直に配置することになり、充電時の炭素層間へのリチウムの受け入れ性が低下する。これに対し、メソフェーズ小球体を粉砕すると、この配向性をランダムにすることができ、リチウムの吸蔵および放出が容易となる。そのためか、本発明の方法によれば、放電容量および充放電効率が共に高いリチウム二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0043】
メソフェーズ小球体の粉砕方法は特に制限されず、種々の粉砕手段が利用できる。粉砕手段としては、機械的に摩砕する方法、たとえばボールミル、ハンマーミル、CFミル、アトマイザーミル、パルベライザーミルなど、風力を利用した粉砕方法、例えば、ジェットミルなどが例示される。また、粉砕時の発熱を抑制して粉砕効率を高めるため、冷凍または凍結粉砕機なども利用できる。さらに必要であれば、粉砕に際して、分散助剤を添加して分散性を高めることも可能である。
【0044】
前記(i)および(ii)におけるメソフェーズ小球体の粒度分布は、累積度数分布における50体積%粒径D50が、前記(i)においては1.3〜15μm、前記(ii)においては1.8〜15μmである限り特に限定されないが、(A)累積度数分布における10体積%粒径D10は、例えば0.1μm≦D10≦10μm、好ましくは0.2μm≦D10≦5μm、さらに好ましくは0.4μm≦D10≦2.5μm程度であり、(B)前記D50は、好ましくは1.8μm≦D50≦12μm、さらに好ましくは1.9μm≦D50≦10μm程度である。また、(C)累積度数分布における90体積%粒径D90は、例えば4μm≦D90≦80μm、好ましくは6μm≦D90≦50μm、さらに好ましくは8μm≦D90≦30μm程度である。
【0045】
粒度分布が上記範囲より大きい側にシフトすると、電極を作成する際、バインダーとの混合性が悪くなり、抵抗および接触抵抗が大きくなり易い。また、粒度分布が上記範囲より小さい側にシフトすると、比表面積が大きくなるために、電池の自己放電が増大したり、電極表面での電解液の分解が起こり易くなる。
【0046】
前記(i)及び(ii)におけるメソフェーズ小球体の炭素化は、前記(1)の方法における炭素化と同様の条件で行うことができる。前記(i)において、メソフェーズ小球体の炭素化により、炭素化に供したメソフェーズ小球体の粒径に応じて、上記と略同様の粒度分布を有する炭素材が得られる。
【0047】
本発明の方法(3)によれば、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示すリチウム二次電池電極用炭素材が得られる。
【0048】
前記方法(3)により得られる炭素材のBET比表面積は、例えば10m2 /g以下、好ましくは0.1〜10m2 /g、さらに好ましくは1〜10m2 /g、特に3〜6m2 /g程度である。BET比表面積が大きすぎると、電極表面で電解液の分解が起こり易くなり、逆に、小さすぎると高い電流密度が得られなくなる。
【0049】
前記方法(1)〜(3)は、2以上組合せて使用できる。前記方法を2以上組合わせることにより、放電容量および充放電効率の極めて高い二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0050】
例えば、(4)キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成することにより、二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0051】
また、(5)メソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)するか、またはメソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とすることにより二次電池電極用炭素材を製造することもできる。
【0052】
さらに、(6)キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、例えば600〜1500℃程度の温度で炭素化するか、または、キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を、例えば600〜1500℃程度の温度で炭素化した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体としてもよい。
【0053】
さらにまた、(7)キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)するか、またはキノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とすることにより二次電池電極用炭素材を製造することもできる。
【0054】
このように前記(1)〜(3)の方法により得られた炭素材は、二次電池、特にリチウム二次電池の電極材として適している。前記電極材はメソフェーズ小球体の自己焼結性を利用して炭素材単独で形成してもよく、結合剤、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチなどの炭素質化可能な結合剤、熱硬化性樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)などの熱可塑性樹脂と併用して電極材を形成してもよい。
【0055】
前記電極材を正極として用いる二次電池は、前記炭素材を含む正極、負極、電解液、セパレータ、集電体、ガスケット、封口板、ケースなどの電池構成要素を用い、常法により組み立てることができる。また、前記電極材を負極として用いる二次電池は、前記炭素材を含む負極、正極及び電解液などの上記電池構成要素を用い、常法により組み立てることができる。図1はリチウム二次電池の一例を示す部分断面図である。
【0056】
リチウム二次電池は、前記炭素材を含む電極3と、正極又は負極活物質で構成された対極1と、前記電極3と対極1との間に介在するセパレータ2を備えている。このセパレータ2には、非水溶媒系電解液が含浸されている。前記対極1、セパレータ2及び炭素電極3は、ケース4内に収容され、ケース4の開口部は封口板5で封止されている。また、ケース4と電極3との間には、ニッケルメッシュ、金属金網、銅箔などで構成された集電体6が配されている。符号7は絶縁パッキンである。
【0057】
炭素電極を正極として用いる場合、対極の負極活物質としては、Li金属、金属カルコゲン化合物、及び各種の有機物を用いることができる。
【0058】
一方、炭素電極を負極として用いる場合、対極の正極活物質としては、例えば、TiS2 、MoS3 、NbSe3 、FeS、Vs2 、VSe2 などの層状構造を有する金属カルコゲン化物;CoO2 、Cr3 O5 、TiO2 、CuO、V3 O6 、Mo3 O、V2 O5 、V2 O5 (・P2 O5 )、MnO2 (・Li2 O)、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMnO2 、LiMn2 O4 などの金属酸化物;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子などを用いることができる。好ましい正極活性物質には、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMnO2 、LiMn2 O4 などの金属酸化物が含まれる。このような正極活物質は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの結合剤で結合させて使用することもできる。
【0059】
電解液としては、一般に用いられる有機電解液用の有機溶媒を使用でき、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルなどの非プロトン性溶媒などが挙げられる。これらの電解液のなかで、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランなどのような、強い還元性環境下でも安定なエーテル系溶媒が好ましい。
【0060】
電解質としては、LiPF6 、LiClO4 、LiBF4 、LiClF4 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiAlO4 、LiAlCl4 、LiCl、LiIなどの溶媒和しにくいアニオンを生成する塩が繁用される。
【0061】
また、セパレータとしては、保液性を有する材料、例えば、多孔質ポリプロピレン製不織布などのポリオレフィン系多孔質膜などが使用できる。
【0062】
二次電池の形状は、円筒型、角型又はボタン型などのいずれの形態であってもよい。
【0063】
二次電池は、分散型、可搬型電池として、電子機器、電気機器、電気自動車、電力貯蔵などの広い分野で利用できる。例えば、ポータブル電子機器の電源、各種メモリーやソーラーバッテリーのバックアップ電源、電気自動車、電力貯蔵用バッテリーなどの広い用途に使用できる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の方法では、(a)メソフェーズ小球体を特定の昇温速度で焼成する、(b)特定のキノリン不溶分またはトルエン不溶分を有するメソフェーズ小球体を炭素化する、または(c)特定の粒度に粉砕したメソフェーズ小球体を炭素化するか、もしくはメソフェーズ小球体を炭素化した後、特定の粒度に粉砕するので、得られた炭素材をリチウム電池の電極用炭素材として利用すると、放電容量および充放電効率を高めることができる。また、リチウム二次電池においてリチウムの担体として利用できるので、デンドライトの生成がなく、安全性を高めることができる。
【0065】
また、本発明のリチウム電池電極用炭素材は、例えば260Ah/kg以上の高い放電容量を有し、しかも充放電効率が60%以上という高い要求性能を満足するため、二次電池の電極用炭素材として好適に使用できる。
【0066】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0067】
なお、炭素材の活性表面積は、島津製作所(株)製の熱分析装置(型式:TGA−50)とガスクロマトグラフ(型式:GC−8A)とを用い、次のようにして求めた。すなわち、炭素材表面に吸着した物質を取り除くために、炭素材を窒素雰囲気下10℃/分で昇温し、炭素化した温度(700〜1400℃)で30分保持し、次いで室温まで降温した。次に、空気雰囲気下、200℃で40時間加熱して炭素材の表面を酸化した。その後、ヘリウム雰囲気下で、再び10℃/分の昇温速度で昇温し、炭素化した温度に至るまでに発生するCOおよびCO2 ガスの総量をガスクロマトグラフで定量し、炭素材1g当りのミリモル数を求めて活性表面積とした。
【0068】
また、QI(キノリン不溶分)及びTI(トルエン不溶分)は、JIS K2425による測定方法で求めた。BET比表面積は、BET比表面積測定装置(micromeritics 社製、型式:ASAP 2400)を用いて、窒素吸着法により求めた。粒度分布は、粒度分析計(日機装(株)製、型式:FRA 9220)により測定した。
【0069】
実施例1
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離し、トルエンで洗浄した後、窒素雰囲気下、150℃にて3時間乾燥した。
【0070】
得られたメソフェーズ小球体を窒素雰囲気下、最終到達温度700℃まで0.1℃/時の昇温速度で昇温した後、同温度で1時間保持させて炭素化した。
【0071】
[炭素極(作用極)の作製]
前記炭素化したメソフェーズ小球体95重量部、ディスパージョンタイプのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(ダイキン工業(株)製、D−1)5重量部を混合し、液相で均一に撹拌した後、乾燥させ、ペースト状とした。得られたペースト状混合物30mgをニッケルメッシュに圧着し、200℃で6時間真空乾燥することにより、炭素極(15mmφ)を作製した。
【0072】
[試験セルの作製]
前記にて得られた炭素極に対して、対極として十分な量の金属リチウムを使用し、電解液として1モル/Lの濃度LiClO4 を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカルボネートとの混合溶媒(混合容積比1:1)を用い、セパレーターとしてポリプロピレン不織布を用い、図1に示すリチウム二次電池を作製した。
【0073】
[電極特性の測定]
得られたリチウム二次電池の充放電特性を、次のようにして測定した。すなわち、放電特性は、0.1mA/cm2 の定電流充放電下で測定した。0Vまで充電を行った後、2Vまで放電させた。放電容量は、カット電圧が2.0Vとなるときの容量とした。また、充電放電効率は、第1サイクルにおいて、充電容量に対する放電容量の比率として表示した。
【0074】
実施例2、3
メソフェーズ小球体を炭素化する際の昇温速度を10℃/時(実施例2)または30℃/時(実施例3)とした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0075】
比較例1
メソフェーズ小球体を炭素化する際の昇温速度を50℃/時とした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0076】
実施例4
メソフェーズ小球体を炭素化する際の最終到達温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0077】
実施例5、6および比較例2
メソフェーズ小球体を炭素化する際の昇温速度を10℃/時(実施例5)、30℃/時(実施例6)または50℃/時(比較例2)とした以外は、実施例4と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0078】
実施例7
メソフェーズ小球体の炭素化工程を、下記の炭素化−黒鉛化工程に代えた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0079】
すなわち、メソフェーズ小球体を窒素雰囲気下、0.1℃/時の昇温速度で1000℃まで加熱処理し、さらにアルゴン雰囲気下、0.1℃/時の昇温速度で2800℃まで昇温させ黒鉛化した。
【0080】
実施例8、9および比較例3
メソフェーズ小球体を炭素化及び黒鉛化する際の昇温速度を10℃/時(実施例8)、30℃/時(実施例9)または50℃/時(比較例3)とした以外は、実施例7と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0081】
上記の実施例1〜9、及び比較例1〜3の結果をまとめて表1に示す。
【0082】
【表1】
表1より明らかなように、40℃/時以下の遅い昇温速度で炭素化または黒鉛化したメソフェーズ小球体をリチウム二次電池の電極用炭素材として用いた場合(実施例)には、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れた性能のリチウム二次電池が得られる。
【0083】
実施例10
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離した。得られた球晶2gを、130℃の温度でトルエン(500ml)により、さらに100℃の温度でキノリン(40ml)による洗浄を3回行った。窒素雰囲気下、150℃で3時間乾燥した。得られたメソフェーズ小球体のQI(キノリン不溶分)およびTI(トルエン不溶分)を測定した。
【0084】
前記メソフェーズ小球体を、窒素雰囲気下、700℃で1時間炭素化して炭素材を得た。得られた炭素材の活性表面積を測定した。
【0085】
炭素極(作用極)の作製、試験セルの作製および電極特性の測定を、実施例1と同様にして行った。
【0086】
実施例11〜13
メソフェーズ小球体の炭素化温度を1000℃(実施例11)、1200℃(実施例12)または1400℃(実施例13)とした以外は、実施例10と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0087】
比較例4
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行った以外は、実施例10と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0088】
比較例5
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行った以外は、実施例11と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0089】
比較例6
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行った以外は、実施例12と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0090】
比較例7
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行い、メソフェーズ小球体の炭素化温度を1400℃とした以外は、実施例10と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0091】
上記の実施例10〜13、及び比較例4〜7の結果をまとめて表2に示す。
【0092】
【表2】
表2より明らかなように、QIが89.5重量%以上、TIが93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を炭素化して得られた炭素材をリチウム二次電池電極用炭素材として用いた実施例の電極では、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れた性能のリチウム二次電池が得られる。
【0093】
実施例14
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離した。得られた球晶をトルエンで洗浄した後、窒素雰囲気下、150℃で3時間乾燥した。このメソフェーズ小球体を、ジェットミルを用い、フィード量8.4kg/時、エアー圧力4kg/cm2 の条件で粉砕し、粉粒状物を得た(累積度数分布における50体積%粒径D50:5.0μm)。次いで、窒素雰囲気下、120℃/時で昇温し、700℃にて1時間炭素化し、炭素材を得た。この炭素材のBET比表面積および粒度分布を測定した。
【0094】
炭素極(作用極)の作製、試験セルの作製および電極特性の測定を、実施例1と同様にして行った。
【0095】
実施例15〜17
メソフェーズ小球体の炭素化温度を1000℃(実施例15)、1200℃(実施例16)または1400℃(実施例17)とした以外は、実施例14と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0096】
実施例18
ジェットミルを用いた粉砕の条件を、フィード量18.6kg/時、エアー圧力6kg/cm2 とした以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、粉砕して得られたメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は1.5μmであった。
【0097】
実施例19
ジェットミルを用いた粉砕の条件を、フィード量8.2kg/hr、エアー圧力2kg/cm2 とした以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、粉砕して得られたメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は5.6μmであった。
【0098】
実施例20
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離した。得られた球晶をトルエンで洗浄した後、窒素雰囲気下、150℃で3時間乾燥した。このメソフェーズ小球体を、窒素雰囲気下、120℃/時で昇温し、1000℃で1時間炭素化した。
【0099】
得られた炭素化メソフェーズ小球体を、ジェットミルを用い、フィード量1.8kg/時、エアー圧力6kg/cm2 の条件で粉砕し、炭素材を得た。この炭素材のBET比表面積および粒度分布を測定した。
【0100】
炭素極(作用極)の作製、試験セルの作製および電極特性の測定を、実施例1と同様にして行った。
【0101】
比較例8
粉砕工程を省いたこと以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、炭素化する前のメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は、15.5μmであった。
【0102】
比較例9
ジェットミルを用いた粉砕の条件を、フィード量22.0kg/hr、エアー圧力7kg/cm2 とした以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、粉砕して得られたメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は1.2μmであった。
【0103】
上記の実施例14〜20及び比較例8、9の結果をまとめて表3に示す。
【0104】
【表3】
表3より明らかなように、50体積%粒径D50が1.8〜15μmの範囲にあるメソフェーズ小球体の炭化品をリチウム二次電池用電極材として用いると、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れた性能のリチウム二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はリチウム二次電池の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
3…炭素電極
1…対極
2…セパレータ
4…ケース
5…封口板
6…集電体
7…絶縁パッキン
【産業上の利用分野】
本発明は、高い放電容量および初期充放電効率を有し、リチウム二次電池の電極材料として有用な電極用炭素材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、負極活物質としてリチウム、正極活物質として金属カルコゲン化物や金属酸化物を用い、電解液として非プロトン性有機溶媒に種々の塩を溶解させた電解液を用いて構成される。このリチウム二次電池は、理論的に高い放電力とエネルギー密度とを有し、高エネルギー密度型二次電池の一種として注目され、近年、盛んに研究が行なわれている。このようなリチウム二次電池は、分散型、可搬型電池として電子機器、電気機器、電気自動車、電力貯蔵などの分野での用途が期待されている。
【0003】
しかし、従来のリチウム電池では、負極活物質としてのリチウムが箔状などの金属リチウム単体で用いられる場合が多く、充放電を繰り返すうちに、樹枝状リチウムデンドライトが電極表面に析出する。しかも、樹枝状のリチウムデンドライトは隔膜を貫通して成長し、正極との間で短絡する危険性が大きい。そのため、充放電のサイクル寿命が短い。
【0004】
そこで、アルミニウムや、鉛、カドミウムおよびインジウムを含む可融性合金を用い、充電時にリチウムを合金として析出させ、放電時には合金からリチウムを溶出させる方法が提案されている(米国特許第4002492号明細書)。しかし、このような方法では、電極への加工性が低下するだけでなく、単位重量又は単位容積当りのエネルギー密度が低下し、金属の劣化に伴なって寿命が低下する。
【0005】
近年、上記課題を解決するため、リチウムを各種の炭素材に担持させる研究が盛んに行なわれている。このようなリチウム電池の電極用炭素材には、充分高い電流密度において高い放電容量を有すること、また、高い充放電効率を示すことが要求される。しかし、通常の負極用炭素材にリチウムを担持しても、放電容量及び充放電効率が低下する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、デンドライトの生成がなく、安全性が高いだけでなく、単位体積当りの放電容量、および充放電効率が大きなリチウム電池の電極用炭素材およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、リチウムが担持される炭素材であっても放電容量および充放電効率を増大できるリチウム電池の電極用炭素材およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(a)メソフェーズ小球体を特定の昇温速度で焼成する、(b)特定のキノリン不溶分またはトルエン不溶分を有するメソフェーズ小球体を炭素化する、または(c)特定の粒度に粉砕したメソフェーズ小球体を炭素化するか、またはメソフェーズ小球体を炭素化した後、特定の粒度に粉砕することにより、意外にも前記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の方法(1)では、メソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成することにより、リチウム二次電池などのリチウム電池電極用炭素材を製造する。焼成温度に関し、最終到達温度は450〜3000℃である場合が多い。
【0010】
本発明の他の方法(2)では、キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を炭素化することにより、リチウム電池電極用炭素材を製造する。
【0011】
本発明のさらに他の方法(3)では、メソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、600〜1500℃の温度で炭素化するか、またはメソフェーズ小球体を600〜1500℃の温度で炭素化した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とすることにより、リチウム電池電極用炭素材を製造する。この方法において、メソフェーズ小球体を粉砕して下記の粒度分布を有する粉粒体とした後、炭素化するか、またはメソフェーズ小球体を炭素化した後、粉砕して下記の粒度分布を有する粉粒体としてもよい。
【0012】
(A)累積度数分布における10体積%粒径D10が
0.1μm≦D10≦10μm、
(B)累積度数分布における50体積%粒径D50が
1.8μm≦D50≦15μm、および
(C)累積度数分布における90体積%粒径D90が
4μm≦D90≦80μm
また、上記方法(1)〜(3)を適宜組合せることにより、リチウム電池電極用炭素材を製造することもできる。
【0013】
本発明のリチウム電池電極用炭素材は、上記方法(2)により得られた炭素材であって、活性表面積が0.6mmol/g以下である。
【0014】
本発明の他のリチウム電池電極用炭素材は、累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの炭素化されたメソフェーズ小球体を含む。この炭素材において、炭素化されたメソフェーズ小球体は前記(A)〜(C)の粒度分布を有していてもよい。また、炭素化されたメソフェーズ小球体のBET比表面積は10m2 /g以下であってもよい。
【0015】
なお、本明細書において、「炭素化」とは、特に言及しない限り、例えば450〜1500℃程度の温度で焼成処理することを言う。また、「黒鉛化」とは、特に言及しない限り、例えば1500〜3000℃程度の温度で焼成処理することを言い、結晶構造が黒鉛構造でないときも黒鉛化の概念に含める。
【0016】
また、累積度数分布における10体積%粒径D10、50体積%粒径D50、及び90体積%粒径D90とは、それぞれ、累積度数分布において、10体積%、50体積%及び90体積%における粒径を示す。
【0017】
以下、必要に応じて添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
【0018】
メソフェーズ小球体(メソカーボンマイクロビーズ)は、高度に結晶が配向し、炭素六員環網目が層状に積層した黒鉛類似の構造を有する球晶であり、異方性を有する球状の炭素質微小粒子である。このメソフェーズ小球体は、ピッチ類を熱処理し、分離精製工程を経て得られる。より具体的には、コールタール、コールタールピッチ、石油系重質油(例えば、アスファルト)やエチレンボトム油などの歴青物を、例えば、常圧〜20kg/cm2 ・G、温度350〜450℃(好ましくはは380〜430℃)程度の条件で熱処理し、生成した球晶を分離精製することにより得られる。前記球晶は、マトリックスピッチとは異なる相を形成しており、ピッチの加熱処理過程において、アンチソルベント法、遠心分離法等により単離できる。
【0019】
前記メソフェーズ小球体のBET比表面積は、通常、70m2 /g以下(好ましくは1〜10m2 /g程度)である。前記メソフェーズ小球体は、例えば、1〜100μm程度の粒度分布を有している場合が多く、その平均粒子径は、例えば、1.5〜80μm程度である。
【0020】
このようなメソフェーズ小球体を焼成し、炭素化又は黒鉛化することにより、リチウム二次電池の電極材として適した炭素材が得られる。その際、熱処理温度を変えてメソフェーズ小球体を焼成するだけでは、充分に高い放電容量、充放電効率は得られない。
【0021】
本発明の方法(1)について以下に説明する。
【0022】
メソフェーズ小球体の焼成は、固定床または流動床方式の炭素化炉または黒鉛化炉で行うことができ、所定の温度まで昇温できる炉であれば、炭素化炉または黒鉛化炉の加熱方式や種類は特に限定されない。炭素化炉としては、例えば、リードハンマー炉、トンネル炉、単独炉などが例示される。黒鉛化炉としては、例えば、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉、真空炉などが例示される。
【0023】
炭素化は、前記の条件で行えばよいが、好ましくは非酸化性雰囲気、特に不活性雰囲気下、最終到達温度450〜1500℃、好ましくは600〜1500℃、さらに好ましくは800〜1300℃程度の温度で行うことができる。処理温度が450℃以下では、メソフェーズ小球体に残存する未炭化の芳香族化合物が流出し、それらがバインダーとなってメソフェーズ小球体を焼結させる場合がある。非酸化性雰囲気下での炭素化は、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気や、真空下で行うことができる。
【0024】
黒鉛化は、前記の条件で行えばよいが、好ましくは非酸化性雰囲気、特に不活性雰囲気下、最終到達温度1500〜3000℃、好ましくは2400〜3000℃、さらに好ましくは2500〜3000℃程度で行うことができる。非酸化性雰囲気下での黒鉛化は、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの不活性ガス雰囲気や、真空下で行うことができる。なお、黒鉛化は、必要に応じて、コークス、黒鉛、炭などの還元剤の存在下で行ってもよい。
【0025】
なお、焼成温度があまりに低い場合には、炭素材の電気伝導率が低下し、高過ぎると、リチウム二次電池における放電容量がさほど向上しない。本発明の方法においては、メソフェーズ小球体を焼成する際の最終到達温度を、600〜2900℃、特に650〜2850℃程度(例えば700〜2800℃程度)とする場合が多い。
【0026】
本発明の方法(1)の特色は、メソフェーズ小球体を焼成する際の昇温速度を40℃/時以下(例えば0.05〜40℃/時)とする点にある。好ましい昇温速度は0.05〜35℃/時(例えば0.1〜30℃/時)、特に0.08〜15℃/時(例えば0.1〜10℃/時)程度である。
【0027】
昇温速度を上記の範囲に設定することにより、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示すリチウム二次電池電極用炭素材が得られる。したがって、同じ性能ではリチウム二次電池電極の体積や重量を低減できると共に、対極のリチウムを有効に利用することが可能になる。
【0028】
なお、昇温速度を低下することによりこのような顕著な効果が得られるのは、以下のような理由によるものと考えられる。
【0029】
製造工程で生成したメソフェーズ小球体を分離、精製した段階では、メソフェーズ小球体中にはピッチ等の低沸点成分(揮発成分)が存在している。このようなメソフェーズ小球体を速い昇温速度で焼成すると、揮発成分がメソフェーズ小球体から脱離しにくく、一部の揮発成分はメソフェーズ小球体中に取り込まれた状態でメソフェーズ小球体とともに炭化又は黒鉛化すると思われる。揮発成分がこのようにして炭化又は黒鉛化すると、揮発成分の炭化又は黒鉛化部位は、光学的等方性になり易いと予想される。一方、メソフェーズ小球体は光学的異方性の炭素材である。そのため、光学的異方性炭素材中に、リチウムに対する吸蔵性又は放出性が低下した光学的等方性の組織が点在又は分散し、前記二次電池の特性を低下させる。
【0030】
これに対して、遅い昇温速度で昇温しながらメソフェーズ小球体を焼成すると、前記揮発成分が炭化または黒鉛化される前にメソフェーズ小球体から脱離、気化するため、炭化又は黒鉛化しても、光学的異方性の組織が維持される。そのため、光学的異方性組織の炭素材により、リチウムに対する吸蔵性および放出性を高めることができるものと推測される。なお、昇温速度が0.05℃/時未満の場合には、焼成時間が長くなり生産性が低下しやすい。
【0031】
本発明の方法(2)について説明する。この発明の特色は、キノリン不溶分89.5重量%以上(89.5〜100重量%)及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上(93.6〜100重量%)のメソフェーズ小球体を炭素化する点にある。炭素化に供する好ましいメソフェーズ小球体には、キノリン不溶分90重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.8重量%以上のメソフェーズ小球体が含まれる。特に好ましいメソフェーズ小球体には、キノリン不溶分90重量%以上及びトルエン不溶分93.8重量%以上のメソフェーズ小球体が含まれる。
【0032】
キノリン不溶分、トルエン不溶分が上記範囲にあるメソフェーズ小球体は、メソフェーズ小球体を溶剤で洗浄することにより得ることができる。
【0033】
メソフェーズ小球体の洗浄に用いる溶剤としては、炭素材の充放電特性を損なわない限り特に限定されず、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、テトラリン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコールなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、安息香酸メチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどのケトン;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;ブチルスルホン、メチルフェニルスルホンなどのスルホン;フェノール、クレゾールなどのフェノール類;エチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン、アニリン、o−トルイジン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、ピペリジンなどのアミン;ピリジン、ピコリン、4−エチルピリジン、キノリン、イソキノリンなどの含窒素複素環化合物;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;タール油(タール中油など)、アントラセン油等が挙げられる。なお、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などで洗浄すると、特に炭素材のトルエン不溶分を向上できる。また、溶媒として、ピリジン、キノリンなどの含窒素複素環化合物などを用いると、特に炭素材のキノリン不溶分を高めることができる。
【0034】
これらの溶媒は、一種または二種以上混合して用いることができる。また、異種の溶媒で順次洗浄してもよい。例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素などで洗浄した後、キノリンなどの含窒素複素環化合物などで洗浄してもよく、この逆の順序で洗浄してもよい。
【0035】
洗浄は慣用の方法により行うことができる。また、洗浄は回分法、連続法の何れの方法で行ってもよい。例えば、溶剤中にメソフェーズ小球体を入れ、静置、攪拌、または振盪することにより洗浄できる。また、カラムなどにメソフェーズ小球体を詰め、溶剤を流通させることによっても洗浄できる。
【0036】
洗浄温度は特に制限されないが、例えば0℃〜溶剤の沸点、好ましくは室温程度(例えば15℃)〜溶剤の沸点程度である。溶剤の還流温度で洗浄することもできる。室温〜180℃、特に80℃〜150℃程度で洗浄する場合が多い。
【0037】
洗浄回数は、溶剤の種類、量及び洗浄方法によっても異なるが、1回以上(例えば1〜10回)、好ましくは2〜8回、さらに好ましくは3〜6回程度である。洗浄回数は多いほど、キノリン不溶分及び/又はトルエン不溶分が向上するが、多すぎると生産効率が低下する。
【0038】
メソフェーズ小球体の炭素化は、前記方法(1)における炭素化と同様の条件で行うことができる。
【0039】
一般に、キノリン不溶分およびトルエン不溶分の低いメソフェーズ小球体を炭素化すると、メソフェーズ小球体中に含まれるキノリンまたはトルエン可溶性成分も炭素化されて、不定形の炭素に変化すると考えられる。炭素材をリチウム二次電池の電極として使用すると、この不定形炭素がメソフェーズ小球体の積層構造におけるエッジ面を閉塞して、リチウムのインターカレーションを妨げる。また、活性表面積が増大し、電解液の分解が起こり易くなる。さらに、炭素化の際、前記キノリンまたはトルエン可溶性成分の炭化物のため、メソフェーズ小球体が焼結して固化しやすくなる。そのため、上記の場合には、電極特性、特に充放電効率が低下するものと思われる。
【0040】
これに対し、本発明の方法では、キノリン不溶分、トルエン不溶分が特定の値以上のメソフェーズ小球体を炭素化するので、炭素材中の前記不定形炭素を低減でき、リチウムのインターカレションが妨げられない。また、炭素材の活性表面積を小さくできると共に、メソフェーズ小球体の焼結を防止できる。そのためか、本発明により得られた炭素材を二次電池電極用として用いると、放電容量および充放電効率が共に顕著に増大する。この方法によれば、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れたリチウム二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0041】
本発明の方法(3)について説明する。この方法の特色は、(i)メソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μm(例えば、1.8〜15μm)の粉粒体とした後、炭素化するか、または(ii)メソフェーズ小球体を炭素化した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とする点にある。
【0042】
一般に、炭素は配向性が高いため、炭素化したメソフェーズ小球体を用いて電極を作成する際、メソフェーズ小球体の積層構造の層平面が電極面に対して平行に、配向しやすい。このため、リチウムをインターカレートする部分に相当する積層構造におけるエッジ面は電極面と垂直に配置することになり、充電時の炭素層間へのリチウムの受け入れ性が低下する。これに対し、メソフェーズ小球体を粉砕すると、この配向性をランダムにすることができ、リチウムの吸蔵および放出が容易となる。そのためか、本発明の方法によれば、放電容量および充放電効率が共に高いリチウム二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0043】
メソフェーズ小球体の粉砕方法は特に制限されず、種々の粉砕手段が利用できる。粉砕手段としては、機械的に摩砕する方法、たとえばボールミル、ハンマーミル、CFミル、アトマイザーミル、パルベライザーミルなど、風力を利用した粉砕方法、例えば、ジェットミルなどが例示される。また、粉砕時の発熱を抑制して粉砕効率を高めるため、冷凍または凍結粉砕機なども利用できる。さらに必要であれば、粉砕に際して、分散助剤を添加して分散性を高めることも可能である。
【0044】
前記(i)および(ii)におけるメソフェーズ小球体の粒度分布は、累積度数分布における50体積%粒径D50が、前記(i)においては1.3〜15μm、前記(ii)においては1.8〜15μmである限り特に限定されないが、(A)累積度数分布における10体積%粒径D10は、例えば0.1μm≦D10≦10μm、好ましくは0.2μm≦D10≦5μm、さらに好ましくは0.4μm≦D10≦2.5μm程度であり、(B)前記D50は、好ましくは1.8μm≦D50≦12μm、さらに好ましくは1.9μm≦D50≦10μm程度である。また、(C)累積度数分布における90体積%粒径D90は、例えば4μm≦D90≦80μm、好ましくは6μm≦D90≦50μm、さらに好ましくは8μm≦D90≦30μm程度である。
【0045】
粒度分布が上記範囲より大きい側にシフトすると、電極を作成する際、バインダーとの混合性が悪くなり、抵抗および接触抵抗が大きくなり易い。また、粒度分布が上記範囲より小さい側にシフトすると、比表面積が大きくなるために、電池の自己放電が増大したり、電極表面での電解液の分解が起こり易くなる。
【0046】
前記(i)及び(ii)におけるメソフェーズ小球体の炭素化は、前記(1)の方法における炭素化と同様の条件で行うことができる。前記(i)において、メソフェーズ小球体の炭素化により、炭素化に供したメソフェーズ小球体の粒径に応じて、上記と略同様の粒度分布を有する炭素材が得られる。
【0047】
本発明の方法(3)によれば、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示すリチウム二次電池電極用炭素材が得られる。
【0048】
前記方法(3)により得られる炭素材のBET比表面積は、例えば10m2 /g以下、好ましくは0.1〜10m2 /g、さらに好ましくは1〜10m2 /g、特に3〜6m2 /g程度である。BET比表面積が大きすぎると、電極表面で電解液の分解が起こり易くなり、逆に、小さすぎると高い電流密度が得られなくなる。
【0049】
前記方法(1)〜(3)は、2以上組合せて使用できる。前記方法を2以上組合わせることにより、放電容量および充放電効率の極めて高い二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0050】
例えば、(4)キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成することにより、二次電池電極用炭素材を得ることができる。
【0051】
また、(5)メソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)するか、またはメソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とすることにより二次電池電極用炭素材を製造することもできる。
【0052】
さらに、(6)キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、例えば600〜1500℃程度の温度で炭素化するか、または、キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を、例えば600〜1500℃程度の温度で炭素化した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体としてもよい。
【0053】
さらにまた、(7)キノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.3〜15μmの粉粒体とした後、40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)するか、またはキノリン不溶分89.5重量%以上及び/又はトルエン不溶分93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を40℃/時以下の昇温速度で昇温しながら焼成(例えば、炭素化)した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.8〜15μmの粉粒体とすることにより二次電池電極用炭素材を製造することもできる。
【0054】
このように前記(1)〜(3)の方法により得られた炭素材は、二次電池、特にリチウム二次電池の電極材として適している。前記電極材はメソフェーズ小球体の自己焼結性を利用して炭素材単独で形成してもよく、結合剤、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチなどの炭素質化可能な結合剤、熱硬化性樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)などの熱可塑性樹脂と併用して電極材を形成してもよい。
【0055】
前記電極材を正極として用いる二次電池は、前記炭素材を含む正極、負極、電解液、セパレータ、集電体、ガスケット、封口板、ケースなどの電池構成要素を用い、常法により組み立てることができる。また、前記電極材を負極として用いる二次電池は、前記炭素材を含む負極、正極及び電解液などの上記電池構成要素を用い、常法により組み立てることができる。図1はリチウム二次電池の一例を示す部分断面図である。
【0056】
リチウム二次電池は、前記炭素材を含む電極3と、正極又は負極活物質で構成された対極1と、前記電極3と対極1との間に介在するセパレータ2を備えている。このセパレータ2には、非水溶媒系電解液が含浸されている。前記対極1、セパレータ2及び炭素電極3は、ケース4内に収容され、ケース4の開口部は封口板5で封止されている。また、ケース4と電極3との間には、ニッケルメッシュ、金属金網、銅箔などで構成された集電体6が配されている。符号7は絶縁パッキンである。
【0057】
炭素電極を正極として用いる場合、対極の負極活物質としては、Li金属、金属カルコゲン化合物、及び各種の有機物を用いることができる。
【0058】
一方、炭素電極を負極として用いる場合、対極の正極活物質としては、例えば、TiS2 、MoS3 、NbSe3 、FeS、Vs2 、VSe2 などの層状構造を有する金属カルコゲン化物;CoO2 、Cr3 O5 、TiO2 、CuO、V3 O6 、Mo3 O、V2 O5 、V2 O5 (・P2 O5 )、MnO2 (・Li2 O)、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMnO2 、LiMn2 O4 などの金属酸化物;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子などを用いることができる。好ましい正極活性物質には、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMnO2 、LiMn2 O4 などの金属酸化物が含まれる。このような正極活物質は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの結合剤で結合させて使用することもできる。
【0059】
電解液としては、一般に用いられる有機電解液用の有機溶媒を使用でき、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルなどの非プロトン性溶媒などが挙げられる。これらの電解液のなかで、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランなどのような、強い還元性環境下でも安定なエーテル系溶媒が好ましい。
【0060】
電解質としては、LiPF6 、LiClO4 、LiBF4 、LiClF4 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiAlO4 、LiAlCl4 、LiCl、LiIなどの溶媒和しにくいアニオンを生成する塩が繁用される。
【0061】
また、セパレータとしては、保液性を有する材料、例えば、多孔質ポリプロピレン製不織布などのポリオレフィン系多孔質膜などが使用できる。
【0062】
二次電池の形状は、円筒型、角型又はボタン型などのいずれの形態であってもよい。
【0063】
二次電池は、分散型、可搬型電池として、電子機器、電気機器、電気自動車、電力貯蔵などの広い分野で利用できる。例えば、ポータブル電子機器の電源、各種メモリーやソーラーバッテリーのバックアップ電源、電気自動車、電力貯蔵用バッテリーなどの広い用途に使用できる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の方法では、(a)メソフェーズ小球体を特定の昇温速度で焼成する、(b)特定のキノリン不溶分またはトルエン不溶分を有するメソフェーズ小球体を炭素化する、または(c)特定の粒度に粉砕したメソフェーズ小球体を炭素化するか、もしくはメソフェーズ小球体を炭素化した後、特定の粒度に粉砕するので、得られた炭素材をリチウム電池の電極用炭素材として利用すると、放電容量および充放電効率を高めることができる。また、リチウム二次電池においてリチウムの担体として利用できるので、デンドライトの生成がなく、安全性を高めることができる。
【0065】
また、本発明のリチウム電池電極用炭素材は、例えば260Ah/kg以上の高い放電容量を有し、しかも充放電効率が60%以上という高い要求性能を満足するため、二次電池の電極用炭素材として好適に使用できる。
【0066】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0067】
なお、炭素材の活性表面積は、島津製作所(株)製の熱分析装置(型式:TGA−50)とガスクロマトグラフ(型式:GC−8A)とを用い、次のようにして求めた。すなわち、炭素材表面に吸着した物質を取り除くために、炭素材を窒素雰囲気下10℃/分で昇温し、炭素化した温度(700〜1400℃)で30分保持し、次いで室温まで降温した。次に、空気雰囲気下、200℃で40時間加熱して炭素材の表面を酸化した。その後、ヘリウム雰囲気下で、再び10℃/分の昇温速度で昇温し、炭素化した温度に至るまでに発生するCOおよびCO2 ガスの総量をガスクロマトグラフで定量し、炭素材1g当りのミリモル数を求めて活性表面積とした。
【0068】
また、QI(キノリン不溶分)及びTI(トルエン不溶分)は、JIS K2425による測定方法で求めた。BET比表面積は、BET比表面積測定装置(micromeritics 社製、型式:ASAP 2400)を用いて、窒素吸着法により求めた。粒度分布は、粒度分析計(日機装(株)製、型式:FRA 9220)により測定した。
【0069】
実施例1
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離し、トルエンで洗浄した後、窒素雰囲気下、150℃にて3時間乾燥した。
【0070】
得られたメソフェーズ小球体を窒素雰囲気下、最終到達温度700℃まで0.1℃/時の昇温速度で昇温した後、同温度で1時間保持させて炭素化した。
【0071】
[炭素極(作用極)の作製]
前記炭素化したメソフェーズ小球体95重量部、ディスパージョンタイプのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(ダイキン工業(株)製、D−1)5重量部を混合し、液相で均一に撹拌した後、乾燥させ、ペースト状とした。得られたペースト状混合物30mgをニッケルメッシュに圧着し、200℃で6時間真空乾燥することにより、炭素極(15mmφ)を作製した。
【0072】
[試験セルの作製]
前記にて得られた炭素極に対して、対極として十分な量の金属リチウムを使用し、電解液として1モル/Lの濃度LiClO4 を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカルボネートとの混合溶媒(混合容積比1:1)を用い、セパレーターとしてポリプロピレン不織布を用い、図1に示すリチウム二次電池を作製した。
【0073】
[電極特性の測定]
得られたリチウム二次電池の充放電特性を、次のようにして測定した。すなわち、放電特性は、0.1mA/cm2 の定電流充放電下で測定した。0Vまで充電を行った後、2Vまで放電させた。放電容量は、カット電圧が2.0Vとなるときの容量とした。また、充電放電効率は、第1サイクルにおいて、充電容量に対する放電容量の比率として表示した。
【0074】
実施例2、3
メソフェーズ小球体を炭素化する際の昇温速度を10℃/時(実施例2)または30℃/時(実施例3)とした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0075】
比較例1
メソフェーズ小球体を炭素化する際の昇温速度を50℃/時とした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0076】
実施例4
メソフェーズ小球体を炭素化する際の最終到達温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0077】
実施例5、6および比較例2
メソフェーズ小球体を炭素化する際の昇温速度を10℃/時(実施例5)、30℃/時(実施例6)または50℃/時(比較例2)とした以外は、実施例4と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0078】
実施例7
メソフェーズ小球体の炭素化工程を、下記の炭素化−黒鉛化工程に代えた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0079】
すなわち、メソフェーズ小球体を窒素雰囲気下、0.1℃/時の昇温速度で1000℃まで加熱処理し、さらにアルゴン雰囲気下、0.1℃/時の昇温速度で2800℃まで昇温させ黒鉛化した。
【0080】
実施例8、9および比較例3
メソフェーズ小球体を炭素化及び黒鉛化する際の昇温速度を10℃/時(実施例8)、30℃/時(実施例9)または50℃/時(比較例3)とした以外は、実施例7と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0081】
上記の実施例1〜9、及び比較例1〜3の結果をまとめて表1に示す。
【0082】
【表1】
表1より明らかなように、40℃/時以下の遅い昇温速度で炭素化または黒鉛化したメソフェーズ小球体をリチウム二次電池の電極用炭素材として用いた場合(実施例)には、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れた性能のリチウム二次電池が得られる。
【0083】
実施例10
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離した。得られた球晶2gを、130℃の温度でトルエン(500ml)により、さらに100℃の温度でキノリン(40ml)による洗浄を3回行った。窒素雰囲気下、150℃で3時間乾燥した。得られたメソフェーズ小球体のQI(キノリン不溶分)およびTI(トルエン不溶分)を測定した。
【0084】
前記メソフェーズ小球体を、窒素雰囲気下、700℃で1時間炭素化して炭素材を得た。得られた炭素材の活性表面積を測定した。
【0085】
炭素極(作用極)の作製、試験セルの作製および電極特性の測定を、実施例1と同様にして行った。
【0086】
実施例11〜13
メソフェーズ小球体の炭素化温度を1000℃(実施例11)、1200℃(実施例12)または1400℃(実施例13)とした以外は、実施例10と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0087】
比較例4
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行った以外は、実施例10と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0088】
比較例5
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行った以外は、実施例11と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0089】
比較例6
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行った以外は、実施例12と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0090】
比較例7
球晶の洗浄を、室温下トルエン(100ml)で行い、メソフェーズ小球体の炭素化温度を1400℃とした以外は、実施例10と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0091】
上記の実施例10〜13、及び比較例4〜7の結果をまとめて表2に示す。
【0092】
【表2】
表2より明らかなように、QIが89.5重量%以上、TIが93.6重量%以上のメソフェーズ小球体を炭素化して得られた炭素材をリチウム二次電池電極用炭素材として用いた実施例の電極では、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れた性能のリチウム二次電池が得られる。
【0093】
実施例14
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離した。得られた球晶をトルエンで洗浄した後、窒素雰囲気下、150℃で3時間乾燥した。このメソフェーズ小球体を、ジェットミルを用い、フィード量8.4kg/時、エアー圧力4kg/cm2 の条件で粉砕し、粉粒状物を得た(累積度数分布における50体積%粒径D50:5.0μm)。次いで、窒素雰囲気下、120℃/時で昇温し、700℃にて1時間炭素化し、炭素材を得た。この炭素材のBET比表面積および粒度分布を測定した。
【0094】
炭素極(作用極)の作製、試験セルの作製および電極特性の測定を、実施例1と同様にして行った。
【0095】
実施例15〜17
メソフェーズ小球体の炭素化温度を1000℃(実施例15)、1200℃(実施例16)または1400℃(実施例17)とした以外は、実施例14と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。
【0096】
実施例18
ジェットミルを用いた粉砕の条件を、フィード量18.6kg/時、エアー圧力6kg/cm2 とした以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、粉砕して得られたメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は1.5μmであった。
【0097】
実施例19
ジェットミルを用いた粉砕の条件を、フィード量8.2kg/hr、エアー圧力2kg/cm2 とした以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、粉砕して得られたメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は5.6μmであった。
【0098】
実施例20
[メソフェーズ小球体の調製]
出発原料として脱水コールタールを、3kg/cm2 ・Gの加圧下、385℃で14時間加熱処理した。生成した球晶を高温遠心分離機で、反応タール中より分離した。得られた球晶をトルエンで洗浄した後、窒素雰囲気下、150℃で3時間乾燥した。このメソフェーズ小球体を、窒素雰囲気下、120℃/時で昇温し、1000℃で1時間炭素化した。
【0099】
得られた炭素化メソフェーズ小球体を、ジェットミルを用い、フィード量1.8kg/時、エアー圧力6kg/cm2 の条件で粉砕し、炭素材を得た。この炭素材のBET比表面積および粒度分布を測定した。
【0100】
炭素極(作用極)の作製、試験セルの作製および電極特性の測定を、実施例1と同様にして行った。
【0101】
比較例8
粉砕工程を省いたこと以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、炭素化する前のメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は、15.5μmであった。
【0102】
比較例9
ジェットミルを用いた粉砕の条件を、フィード量22.0kg/hr、エアー圧力7kg/cm2 とした以外は、実施例15と同様にしてリチウム二次電池を作製し、電極特性を測定した。なお、粉砕して得られたメソフェーズ小球体の粉粒状物の50体積%粒径D50は1.2μmであった。
【0103】
上記の実施例14〜20及び比較例8、9の結果をまとめて表3に示す。
【0104】
【表3】
表3より明らかなように、50体積%粒径D50が1.8〜15μmの範囲にあるメソフェーズ小球体の炭化品をリチウム二次電池用電極材として用いると、放電容量500Ah/kg以上且つ充放電効率60%以上、または放電容量220Ah/kg以上且つ充放電効率75%以上を示す優れた性能のリチウム二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はリチウム二次電池の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
3…炭素電極
1…対極
2…セパレータ
4…ケース
5…封口板
6…集電体
7…絶縁パッキン
Claims (4)
- メソフェーズ小球体を600〜1500℃の温度で炭素化した後、粉砕して累積度数分布における50体積%粒径D50が1.9〜10μmの粉粒体とするリチウム電池の電極用炭素材の製造方法。
- メソフェーズ小球体を炭素化した後、粉砕して下記の粒度分布を有する粉粒体とする請求項1記載のリチウム電池の電極用炭素材の製造方法。
(A)累積度数分布における10体積%粒径D10が
0.1μm≦D10≦10μm、
(B)累積度数分布における50体積%粒径D50が
1.9μm≦D50≦10μm、および
(C)累積度数分布における90体積%粒径D90が
4μm≦D90≦80μm - 請求項1記載の方法により得られた炭素材であって、炭素化されたメソフェーズ小球体のBET比表面積が10m2/g以下であるリチウム電池の電極用炭素材。
- 炭素化されたメソフェーズ小球体のBET比表面積が0.1〜10m2/gである請求項3記載のリチウム電池の電極用炭素材。
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