JP3634000B2 - 麻酔装置用の安全装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、麻酔装置で使用するための安全装置であって、少なくとも2つの麻酔気化器を備え、
2つ以上の麻酔気化器が同時に麻酔薬を麻酔装置の呼吸回路に供給するのを阻止し、
前記麻酔気化器の各々には設定手段が設けられており、
該設定手段は、呼吸回路における所望の麻酔薬濃度を設定するために気化器弁を制御する形式の安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基本的に、麻酔とは、患者を無意識にし、痛みを感じなくすることをいう。普通は、酸素(O2)、亜酸化窒素(N2O)の混合ガス、麻酔ガスと空気が呼吸回路を介して麻酔装置に供給される。もっともよく使用される麻酔ガスはhalothane(ハロセン),desflurane,enflurane,isoflurane,sevofluraneである。麻酔薬は通常、麻酔気化器内では液体であり、所望の量の麻酔ガスが気化され、呼吸回路に患者に吸引される麻酔薬として送出される。筋弛緩薬が麻酔薬に供給されるから、患者は呼吸の維持に対して完全に麻酔装置に依存する。
【0003】
麻酔薬が異なれば、患者に及ぼす作用も異なる。麻酔薬が異なればその副作用も異なる。したがって麻酔装置には複数の麻酔気化器が設けられており、麻酔医は患者に最善と思う麻酔薬を選択することができる。これにより他の麻酔気化器を接続または取り外す必要がない。
【0004】
しかし異なる麻酔薬の混合が同時に患者に供給されてはならない。したがって麻酔装置は同時には1つの麻酔薬しか患者に供給できないように構成されなければならない。
【0005】
インターロック装置を備えた気化器を設けることが公知である。このような装置は、例えばパンフレット“The Tec 4 Range of Vaporizers”,Ohmeda,IN/0289/9.90/E,1990年9月に記載されている。1つの気化器が設定つまみの回転によって作動されると、円筒状のピンが機械的に気化器の再度から伸張しロックする。これにより気化器の周囲の相応の円筒ピンが移動するのを防止する。ピンは機械的に設定つまみと接続されており、これにより他の気化器の設定つまみをブロックする。
【0006】
たとえ他の気化器のロックが患者の安全性に関して十分に機能しなくても、機械的なインターロック装置は複数の欠点を有する。例えば、設定つまみは機械的ロックが作動される前に所定の距離を回転されなければならない。したがって複数の気化器の設定つまみはOFF位置とは異なる位置を取ることがある。その結果、どの気化器が作動しているのか、またはどの気化器を作動すべきなのかが明確でない。インターロック装置の機械的抵抗も設定つまみを堅くし、そのためこれを作動するために強い力が必要になる。
【0007】
機械的インターロック装置のこの形式により、異なる麻酔ガスの混合体が呼吸回路に流入することがある。1つの麻酔気化器がOFFされ、別の気化器が直ちに作動されると、2つの異なる麻酔ガスが呼吸回路で混合され、呼吸回路でガスが完全に排気されるまで、これが患者に供給されることとなる。また同じ麻酔薬を含む2つの麻酔気化器を接続し、呼吸回路におけるこの麻酔薬の濃度を上昇するために2つを作動することもない。また公知の機械的インターロック装置は、麻酔気化器の1つが故障したり、気化ガス流を通過させたりすると2つの麻酔気化器の同時の作動を阻止する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、さらに安全性を高め、麻酔気化の監視を行うことのできる麻酔装置用の安全装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は本発明により、設定手段はOFF位置から作動位置に変化されたときに作動信号を送出し、
制御装置は設定手段と接続されており、これにより作動信号に基づき、設定手段のいずれかがそのOFF位置から作動位置へ移動されるときを検出し、
制御装置はこれに基づき制御信号を発生し、該制御信号によって少なくとも2つの麻酔気化器の他方の各々における逆止弁を閉鎖することができ、
これにより、少なくとも2つの麻酔気化器の他方の設定手段の1つ以上が作動されている場合でも呼吸回路に麻酔薬の供給されるのが阻止されるように構成して解決される。
【0010】
この形式の電子インターロック装置は、公知の機械的インターロック装置と比較して複数の利点を備えた安全装置を実現する。閉じられた逆止弁は他の麻酔気化器の作動を防止する。設定手段は設定つまみに制限されるものではなく、種々の別の仕方で構成することができる。例えば設定手段はキーパッドとして構成することができ、これにより麻酔医は所望の濃度を入力する。設定手段はまた従来技術で使用されているようなレバーまたはつまみとすることができる。したがって安全装置は機械的バルブの使用に制限されるものではなく、電子的に制御されるバルブを使用することもできる。作動信号はまた他の目的、例えば発光ダイオードをアドレシングし、作動するために使用することができる。発光ダイオードは、どの麻酔気化器が麻酔ガスを呼吸回路に供給しているかを明確に指示する。設定手段が作動される手法に関係なく、麻酔医は簡単にどの麻酔ガスが患者に供給されているか見ることができる。安全装置は有利には、別の麻酔気化器の1つ以上の設定手段が作動位置に設定されると、第1の麻酔気化器の作動が遮断されていても逆止弁が麻酔の気化をブロックするように構成することもできる。このようにしてすべての設定手段は、他の麻酔気化器を作動するためにはすべてOFF位置にしなければならない。これにより間違って2つ以上の麻酔ガスが呼吸回路に供給されることが阻止される。
【0011】
逆止弁は有利には、気化器弁とは別個のバルブを有することができる。この構成は麻酔装置に対する付加的な安全性を意味する。というのは、気化器ないの1つの気化器弁が故障していても他の麻酔気化器で気化を行うことができないからである。逆止弁はまた有利には気化器弁および逆止弁として用いる制御バルブとして構成することができる。
【0012】
制御装置が警報ユニット接続されると有利である。制御装置は、設定手段からの作動信号に基づき、2つ以上の設定手段が作動位置に移動されたことを検出すると第2の制御信号を発生し、警報ユニットは、制御装置が第2の制御信号を発生するときに音響的および/または視覚的警報を発令する。
【0013】
第1の麻酔気化器がすでに作動されていれば第2の麻酔気化器を作動しようとする試みはすべて警報(音響的警報または視覚的警報またはその組み合わせ)に結びつくから、患者の安全性が高められる。麻酔医はすぐに状況に気づき、直ちにエラーを取り除く措置をとることができる。視覚的警報は有利には点滅する発光ダイオードまたは第2の麻酔気化器の点滅する発光ダイオードとして構成することができる。
【0014】
安全装置の実施例では、本発明により、各設定手段が設定つまみと、位置指示ユニットと、位置検出ユニットとを有する。位置指示ユニットは設定つまみに配置されているその位置を指示する。位置検出ユニットは設定つまみに配置されていて位置指示ユニットを検知する。少なくとも設定つまみがOFF位置にあるとき前記位置検出ユニットは作動信号を発生し、この作動信号は設定つまみがOFF位置にあるか否かを指示する。
【0015】
設定つまみは麻酔装置におけるもっとも通常の設定手段である。そして単に手首をひねるだけで所望の位置に設定でき有利である。設定手段自身の位置指示ユニットおよび設定つまみの傍らの位置検出ユニットにより、設定つまみの位置を検出することができ、設定つまみがOFFから作動位置へ回転されるとき作動信号を発生することができる。位置検出手段は他の設定つまみの位置を検出する必要はない。したがって作動信号は論理1に相応する信号、または論理ゼロに相応する信号(例えば別の連続する信号のブレーク信号)とすることができる。
【0016】
もちろん、反対の構成も用いることができる。すなわち、位置指示ユニットを設定つまみに配置し、位置検出ユニットを設定つまみの上に配置するのである。
【0017】
位置指示ユニットが磁石であり、位置検出ユニットが磁界を検知する素子、有利にはホール素子であると有利である。実際にこの構成はもっとも簡単で小型の回路を位置検出ユニットに対して提供する。
【0018】
択一的に、位置指示ユニットはコードされたマークを設定つまみに上に有し、位置検出ユニットはコード化されたマークに光を放出するための発光素子と、コード化された素子から反射された光を検出するための光検出素子を有する。
【0019】
OFF位置には例えば高反射性の表面を設け、作動位置に低反射性の表面を設けるようにすると簡単である。さらに複雑なコードを使用することもできる。
【0020】
コード化されたマークを使用する実施例と関連して、コード化されたマークがバーコードであり、設定範囲全体にわたって設定つまみに配置されると有利である。位置検出ユニットは、設定つまみが操作される度に設定つまみの位置を読み出し、呼吸回路の麻酔薬濃度に対する所定の目標値をバーコードから制御装置により読み出し、制御装置は気化器弁を読み出した目標値に従って制御する。
【0021】
このようにして、完全に電子制御され、呼吸回路の麻酔ガスの濃度を監視する麻酔装置が得られる。機械的気化器弁を使用する麻酔気化器によって弁の精密度の制御を行うこともできる。
【0022】
安全装置の有利な改善実施例では、麻酔気化器が着脱可能に麻酔装置に接続され、接続サイトはこの目的のために、コード素子が各着脱可能な気化器に配置され、コード検出素子が各接続サイトに配置され、麻酔気化器が接続されたときにコード素子を検知し、前記コード検出素子は制御装置に接続されており、麻酔気化器が接続されたときにこの盛業装置にコード信号を送出する。
【0023】
この改善実施例により、意図する麻酔気化器を正しく麻酔装置に取る付けることが保証される。
【0024】
この関連から、どの麻酔薬が麻酔気化器にあるかをコード素子も指示し、制御装置がコード検出素子からのコード信号に基づいてどの麻酔薬が麻酔装置に接続されているかを検出すると有利である。
【0025】
麻酔薬の識別により、麻酔装置に対して麻酔薬の特別に多い投量を供給することが可能である。このことを実現するために、麻酔装置に対する安全装置は有利には、スイッチが制御装置と各逆止弁との間に配置されるよう構成される。これに基づき制御装置は、2つ以上の麻酔気化器が作動された場合に、これらのいずれかが同じ麻酔薬を含んでいるか否かを検出し、これに基づきスイッチング信号を発生する。このスイッチング信号は制御装置と、同じ麻酔薬を含む麻酔気化器の逆止弁との間のスイッチを開放し、制御信号が逆止弁に到達するのを阻止する。したがって同じ麻酔薬を含む麻酔気化器を同時に作動することができる。
【0026】
上に述べたようにこの構成は、麻酔装置に対する現在公知の機械的インターロック装置では行うことができない。とりわけ麻酔術導入の開始時に多量の麻酔薬を供給すること所望されれば、患者と呼吸回路に迅速に正しい濃度の麻酔薬を充填することができる。
【0027】
本発明による安全装置の実施例では、制御装置はさらに情報を記憶するための手段と、麻酔薬を呼吸回路に供給するため最初に作動された第1の麻酔気化器が遮断された後の所定時間を設定する手段とを有する。この情報は、どの麻酔気化器が作動されていたことを指示するものである。制御装置は、第2の麻酔気化器が、前記所定時間内に作動されると制御信号を送出する。この信号は、掃気期間の間、第2の麻酔気化器に接続された逆止弁を閉鎖し、以前に供給された麻酔ガスを含んだガスを掃気させる。この掃気が完了すると、麻酔薬が第2の作動された麻酔気化器から呼吸回路に供給される。
【0028】
この安全装置の構成によって、異なる麻酔薬の混合体が麻酔装置のいずれの箇所にも存在しないことが保証される。とりわけ患者は2つの麻酔薬の混合体に曝されてはならない。このことは、従来公知のインターロック装置によって可能である。
【0029】
【実施例】
次に本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。図1に麻酔装置2を示す。この麻酔装置には第1麻酔気化器4、第2麻酔気化器6および第3麻酔気化器8が接続されており、麻酔ガスを呼吸回路10に選択的に供給することができる。呼吸回路10は、麻酔ガスを含む呼吸ガスを患者12に供給する。
【0030】
呼吸ガスはガス混合器14を介して麻酔装置2に供給される。ガスは第1ガス連結管16、第2ガス連結管18および第3ガス連結管20を介してガス混合器14に送気することができる。供給されるガスは空気、酸化窒素(N2O )、および酸素(O2 )から構成することができる。O2 とN2O だけを麻酔装置に供給する場合、第3ガス連結管20は閉鎖することも、O2 を供給するのに用いることもできる。2つの別個のガス連結管を介してO2 を供給することにより、患者への安全性が高められる。流入ガスは任意の比率でガス混合器14で混合され、所定の圧力の呼吸ガスを形成する。混合された呼吸ガスの所定の流量が、第1ガス導管22を介して麻酔気化器4、6、8に送気される。
【0031】
第1麻酔気化器4の傍らには第1逆止弁24が配設されている。この第1逆止弁は通常閉鎖されており、第1ガス導管22からのガスが第1麻酔気化器4に流入するのを阻止する。同様に、第2逆止弁26が第2麻酔気化器6に配設され、第3逆止弁28が第3麻酔気化器8に配設されている。麻酔気化器4、6、8のいずれかを作動させれば、対応する逆止弁24、26、28が開放され、ガス混合器14からのガス流が、作動した麻酔気化器4、6、8に流入する。2つ以上の麻酔気化器4、6、8により同時に麻酔薬が呼吸システムに供給されるのを回避するために、麻酔回路2はこれを防止する安全装置を有する。この安全装置を以下に詳細に説明する。
【0032】
第4逆止弁30が第1ガス導管22に配設されており、麻酔気化器4、6、8のいずれにも流入しなかったガス流量を通過させる。麻酔装置は、第1逆止弁24と、第2逆止弁26と、第3逆止弁28とが閉鎖された場合に、第4逆止弁30が自動的に開放するように構成される。このことにより患者にいつでも呼吸ガスを確実に供給することができる。
【0033】
呼吸ガスは、麻酔ガスを含む含まないにかかわらずガス混合器14から第2ガス導管32を介してガスリザーバ34に送気される。呼吸ガスをガスリザーバ34で付加的に混合することにより、気化した麻酔薬を完全に呼吸ガスと混合させることができ、その後ガスは呼吸回路10に送気される。
【0034】
本実施例では呼吸回路10は再循環型呼吸回路として構成され、患者は呼吸回路10で多量ないし少量のガスを再呼吸する。ここでは、ガスリザーバ34の混合ガスを呼吸回路10に対する新鮮ガスとして考えるのが適当である。新鮮ガスは呼吸回路10に送気され、例えば患者12のO2 摂取および呼吸回路(患者12を含む)での漏れによるガスの損失分またはガス排出分を補填する。新鮮ガスの呼吸回路10への供給は、フレッシュガスレギュレータ36により制御される。新鮮ガスは呼吸回路10の吸気管38に送気され、患者12に供給される。患者12からの呼気ガスは呼気管40を通って呼吸制御ユニット42に送気される。呼吸制御ユニット42には容器内にベローズが備えられている。ベローズが収縮したときに患者12に吸気させることができ、ベローズが拡張したときに患者は呼気することができる。呼吸制御ユニット42の制御はドライブユニット44により行われる。前記ドライブユニット44は、第4ガス連結管46からの圧縮空気を用いてドライブガスを呼吸制御ユニット42に送気し、かつこのユニットからドライブガスを排除することができる。炭酸ガス吸収装置48が吸気管38に配設され、再利用ガスから二酸化炭素を取り除く。第1逆止め弁50が吸気管38に配設されており、吸気管38の吸気ガスの流入方向を制御する。また第2逆止弁52が同様に呼気管40に配設されており、呼気管の流出方向を制御する。呼吸回路10内の余剰ガスは圧力安全弁54により放気される。
【0035】
麻酔装置2は制御装置56により制御されモニタされる。したがって制御装置56は、ガス混合器14、ドライブユニット44、フレッシュガスレギュレータ36、逆止弁24、26、28、30、麻酔気化器4、6、8の機能を制御する。また制御装置56は、たとえば呼吸数、所望の呼吸気量、呼吸ガスの組成等に対して医局員により設定される設定信号を受信する。制御装置56により実行される他の機能および動作を以下に説明する。
【0036】
第1麻酔気化器4は第1設定つまみ58を回したときに作動し、第2麻酔気化器6は第2設定つまみ60を回したときに作動し、第3麻酔気化器8は第3設定つまみ62を回したときに作動する。麻酔医が設定つまみ58、60、62のいずれかを回せば作動信号が制御装置56に送出される。最も簡単な構成では、作動信号をゼロ信号、すなわち制御装置56へのブレーク信号から構成することができる。
【0037】
例えば第1麻酔気化器4を作動すべき場合には、麻酔医は第1設定つまみ58を回転して、選択された麻酔ガスを呼吸回路10で所望の濃度に調整する。その作動信号は制御装置56に、第1逆止弁24を開放させて第1麻酔気化器4からの気化した呼吸ガス流を流入させることを指示する。第1麻酔気化器4には気化弁が設けられており、この気化弁は第1設定つまみ58と機械的に接続されている。これにより、達成すべき麻酔薬の濃度が指示される。ガス混合器14からの呼吸ガス流は、第1ガス導管22と、第1麻酔気化器4(麻酔薬が気化される)と、第2ガス導管32とを介してガスリザーバ34に流入する。ガスリザーバ34から呼吸ガスおよび麻酔ガスが呼吸回路10に流入する。この段階では、第2設定つまみ60および第3設定つまみ62がどのように操作されるかは関係なく、第2逆止弁26および第3逆止弁28は閉鎖されたままである。したがって第2麻酔気化器6および第3麻酔気化器8ではそれぞれ麻酔薬の気化は行われない。
【0038】
非常に多量の麻酔薬が必要な場合、例えば患者の麻酔処置の開始時には、麻酔装置2の安全装置が次のように構成される。すなわち、第1スイッチ64が制御装置56と第1逆止弁24との間に配置され、第2スイッチ66が制御装置56と第2逆止弁26との間に配置され、第3スイッチ68が制御装置56と第3逆止弁との間に配置されるように構成される。これらのスイッチ64、66、68のすべては制御装置56によって制御される。麻酔医は例えば麻酔装置2をプログラミングすることができ、このプログラミングにより制御装置56は1つ以上のスイッチ64、66、68の開放によって、対応する逆止弁24、26、28が閉じるのを防止する。このようにして2つ以上の麻酔気化器4、6、8を同時に作動することができる。ここでは麻酔気化器が同じ麻酔薬を含むことが前提とされている。
【0039】
麻酔気化器が別の麻酔薬に対しては別の識別マークを有するように構成すれば、不適切なプログラミングが行われず安全性の向上に有利である。不適切なプログラミングが行われると、2つ以上の異なる麻酔薬が呼吸回路に供給されてしまう。上記のように構成すれば麻酔薬を制御装置56のセンサユニットにより識別し、識別された麻酔薬のスイッチ64、66、68だけを開放することができる。スイッチ64、66、68は麻酔気化器4、6、8に連結された逆止弁24、26、28に接続さているからである。
【0040】
図2には第1麻酔気化器4の構成と制御装置56とやりとりされる信号の詳細が示されている。第1ホール素子70が設定つまみ58の近傍に設けられている。ホール素子70は第1設定つまみ58に配置された磁石72を検知する。設定つまみ58がOFF位置にある限り、ホール素子70は磁石を検知し、信号を制御装置56に送出する。この信号は論理ゼロに相応するよう構成されている。第1設定つまみ58が第1麻酔気化器4を作動するため回転されると、ホール素子70は磁石2の検知を停止し、作動信号(論理1に相応する)が制御装置56に送出される。
【0041】
第1の麻酔気化器4が正しく麻酔装置に接続されることを保証するために、第2ホール素子74が第1麻酔気化器4に接続されている。第1麻酔気化器4が正しく接続されていなければ、論理1に相応する信号が発生され、制御装置56に送出される。第1麻酔気化器4が正しく麻酔装置2に接続されていれば、論理ゼロに相応する信号が発生され、制御装置56に送出される。
【0042】
第1発光ダイオード76と第2発光ダイオード78が第1麻酔気化器4に配置されている。第1発光ダイオード76は、第1麻酔気化器4が作動されると緑の信号を放射し、第1麻酔気化器4が作動され、麻酔薬を呼吸回路10の呼吸ガスに供給していることを示す。他の麻酔気化器6、8の1つが、第1麻酔気化器4の作動時にすでに作動されていれば、その代わりに第2発光ダイオード78が警報として用いられ、他の麻酔気化器6、8がすでに作動されていることを指示して点滅する。付加的に、第1逆止弁24は閉じられたままとなる。2つの発光ダイオード76、78は有利には異なる色を有し、これによりさらに警報に気が付くことが保証される。付加的に音響警報を麻酔装置に接続して、第2麻酔気化器を作動しようとする試みがなされたことを操作者に喚起することができる。
【0043】
第2麻酔気化器6と第3麻酔気化器8は相応に制御装置56に接続されている。このことは図2に制御装置56への、またこれからの複数の信号線路により示されている。
【0044】
作動すべきでない麻酔気化器4、6、8をブロックするための手段が図3の回路に示されている。第1ホール素子70からの信号は入力信号80Aとして示され、第2ホール素子74からの信号は入力信号80Bとして示されている。相応にして入力信号80C,80D,80Eおよび80Fはそれぞれ、第2麻酔気化器6および第3麻酔気化器8のホール素子からの信号である。3つの麻酔気化器4、6、8が正しく接続されれば、これらはすべてOFF位置にあり、入力信号の制御装置56へのシーケンスは000000である。各信号は個別に第1インバータ82で反転され、第1インバータ82からの出力信号は84A,84B,84C,84D,84E,84Fで示される(信号シーケンス:111111)。反転された3つの信号は麻酔気化器が正しく接続されたか否かを指示し(84B,84D,84F)、これらの信号はAND回路90に送出され、反転シュミットトリガ86からのそれぞれの出力信号88A,88B,88Cとペアで比較される。すなわち信号88Aと84BがAND回路90の第1AND素子に送出され、この素子からの出力信号は92Aで示される。信号88Bと84DはAND回路90の第2AND素子に送出され、これの出力信号は92Bで示される。さらに信号88Cと84FがAND回路90の第3AND素子に送出され、92Cで示された出力信号を発生する。
【0045】
麻酔気化器が正しくインストールされており、OFFであれば、AND回路かあの出力信号92A,B,Cは論理ゼロとなる(信号シーケンス:000)。AND回路90からの出力信号92A,92B,92Cは交差してNOR回路94に送出され、出力信号96Bを発生する。信号92Aと92BはNOR回路94の第3NOR素子に送出され、出力信号96Cを発生する。入力信号としての論理ゼロによってのみ出力信号96A,96B,96Cは論理1となる(信号シーケンス:111)。これらの信号は第2インバータ98に送出され、第2インバータは出力信号100A,100Bおよび100Cを供給する(信号シーケンス:000)。出力信号100Aは第1Dフリップフロップ104の入力端子に送出され、第3出力信号100Cは第3Dフリップフロップ106の入力端子に送出される。第1Dフリップフロップ102は反転シュミットトリガ86からの出力信号88Aによりクロック制御され、第2Dフリップフロップ104は反転シュミットトリガ86からの出力信号88Cによりクロック制御される。それぞれのDフリップフロップ102、104、106への出力信号100A,100B,100Cが、クロック信号の到着前に変化する時間を有することを保証するために、遅延素子99が反転シュミットトリガ86とDフリップフロップ102、104、106との間に挿入接続されている。遅延素子99はDフリップフロップ102、104、106のクロック制御を適切なインターバルにより遅延する。第1Dフリップフロップ102からの出力信号108Aは第1逆止弁24に送出され、第2Dフリップフロップ104からの出力信号108Bは第2逆止弁26に送出され、第3Dフリップフロップ106からの出力信号108Cは第3逆止弁28送出される。麻酔装置が始動する時、出力信号108A,B,Cは論理ゼロであり、逆止弁24、26、28は閉じられている。
【0046】
次に第1麻酔気化器4が第1設定つまみ58の回転によって作動されたとする。この場合、ホール素子70が磁石72の移動を検知するときに作動信号が発生される。言い替えると、入力信号80Aが論理ゼロから1に変化する(入力信号シーケンス:100000)。第1インバータ82における反転の結果として出力信号84は論理ゼロとなる(信号シーケンス:011111)。ここで反転シュミットトリガ86は出力信号88A(信号シーケンス:100)としてクロック信号(論理1)を発生し、遅延素子99における遅延の後、第Dフリップフロップ102を作動させる。DAI1Dフリップフロップ102への入力信号は論理1であり、したがって第1Dフリップフロップ102は論理1を出力信号108Aとして形成する。これにより第1逆止弁24が開放される。AND回路90では(入力信号シーケンス:110101)、同じように出力信号92Aが論理1に切り替わる。その結果、NOR回路94からの出力信号96Bと96Cが論理1になる(信号シーケンス:011)。第2インバータ98ではこれらの論理1が論理ゼロに反転される。したがって第2Dフリップフロップ104と第3Dフリップフロップ106への入力信号として用いる信号100Bと100Cがそれぞれ論理ゼロになる(信号シーケンス:100)。しかし第2Dフリップフロップ104と第3Dフリップフロップ106への入力信号88B,88Cはそれぞれ論理ゼロであるから、これらの出力信号は影響を受けない。第2および第3逆止弁26、28は閉じられたままである。
【0047】
次に第3麻酔気化器8もさらに作動されたと仮定する。これは入力信号80Eが論理1になることを意味する(入力信号シーケンス:100010)。これは次に第1インバータ82で反転され、したがって反転シュミットトリガ86への入力信号84Eは論理ゼロになる(信号シーケンス:010)。反転シュミットトリガ86からの出力信号88Cは次に論理1になり、これは第3Dフリップフロップ106を作動する(信号シーケンス:101)。しかし第3Dフリップフロップ106への入力信号は論理ゼロである。したがって出力信号108Cは論理ゼロのままであり、第3逆止弁28は閉じられたままである。したがって第3麻酔気化器で8で気化を行うことができない。回路の他の部分、NOR回路からの出力信号96Aも論理1になる(信号シーケンス:111)。そして第1Dフリップフロップ102への入力信号100Aは相応して同様に論理ゼロになる。しかし第1Dフリップフロップ102は、第1設定つまみ58がOFF位置に回され次に復帰されるまでクロック制御することはできないから、出力信号108Aは論理1のままであり、第1逆止弁24は開いたままである。
【0048】
図3に示された回路図には、別のセーフティ機能を備えた他の構成もある。このセーフティ機能は、同時には1つの逆止弁しか開放できないことを保証する(2つ以上のスイッチ64、66、68が開放された場合をのぞいて)。この機能はまたマイクロプロセッサにファームウェアとして移植することもできる。
【0049】
設定つまみにホール素子と磁石を配置する代わりに、設定つまみにパターンマークとフォトダイオードを設けることができる。このパターンマークは発光ダイオードにより照明され、フォトダイオードはパターンを検知する。すなわち設定つまみが回転される時を検知する。最も簡単な構成では、OFF位置を低反射性表面によってマークすることができ、作動位置は高反射性表面によってマークすることができる。もっとも進んだ形では、パターンは例えばグレーコードからなり、グレーコードもまた濃度セットを指示する。麻酔装置は通常、濃度計を呼吸回路に麻酔薬の濃度測定のために有する。所望の濃度が読み出され、真の濃度が測定されるならば、制御ユニットは、付加的な警報機能が設けられていれば、濃度が過度に低いか、または高いかを指示することができる。
【0050】
前記の安全装置により行われる別のオプションは、2つの麻酔薬が呼吸回路19に混合されるという可能性を最小にすることである。麻酔医は手術中に麻酔薬を切り替えたいときもある。このような切り替えにより2つの麻酔薬が呼吸回路に混合されることとなる。したがって制御装置には有利にはメモリ機能が設けられ、このメモリ機能は麻酔気化器が作動される情報を記憶する。作動された麻酔気化器がスイッチオフされ、他の麻酔気化器が所定の周期時間内に作動されれば第4逆止弁30がまず作動され、これにより麻酔薬のない呼吸ガスがガスリザーバ34を通過し、呼吸回路10からは第1の麻酔薬が掃気される。これが行われた後にだけ逆止弁は開放して、作動された麻酔気化器が新たな麻酔薬を呼吸回路10に供給することを許可する。
【0051】
設定つまみに接続された機械的気化器バルブは必要ない。電気的に制御される、麻酔気化器内の麻酔薬の制御気化に対するバルブも考えられる。この場合設定つまみは他の設定手段、例えばキーパッドやポテンシオメータ等を作動するためのつまみと置換される。キーパッドにより所望の濃度を入力することができる。これらの実施例で気化器バルブと逆止弁はシングルコモンバルブからなる。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、安全性を高め、麻酔気化の監視を行うことのできる麻酔装置用の安全装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の安全装置を備えた麻酔装置の概略図である。
【図2】麻酔気化器と安全装置の詳細を示す概略図である。
【図3】2つ以上の麻酔気化器が同時に作動するのを防止する電子回路の実施例を示す回路図である。
【符号の説明】
2 麻酔装置
4、6、8 麻酔気化器
10 呼吸回路
12 患者
ガス混合器
24、26、28 逆止弁
56 制御装置
Claims (11)
- 麻酔装置(2)で使用するための安全装置であって、少なくとも2つの麻酔気化器(4、6、8)を備え、
2つ以上の麻酔気化器(4、6、8)が同時に麻酔薬を麻酔装置(2)の呼吸回路(10)に供給するのを阻止し、
前記麻酔気化器(4、6、8)の各々には設定手段(58、60、62)が設けられており、
該設定手段は、呼吸回路における所望の麻酔薬濃度を設定するために気化器弁を制御する形式の安全装置において、
設定手段(58、60、62)はOFF位置から作動位置に変化されたときに作動信号を送出し、
制御装置(56)は設定手段(58、60、62)と接続されており、これにより作動信号に基づき、設定手段(58、60、62)のいずれかがそのOFF位置から作動位置へ移動されるときを検出し、
制御装置(56)はこれに基づき制御信号を発生し、該制御信号によって少なくとも2つの麻酔気化器(4、6、8)の他方の各々における逆止弁(24、26、28)を閉鎖することができ、
これにより、少なくとも2つの麻酔気化器(4、6、8)の他方の設定手段の1つ以上が作動されている場合でも呼吸回路(10)に麻酔薬の供給されるのが阻止される
ことを特徴とする、麻酔装置用の安全装置。 - 各麻酔気化器(4、6、8)に制御バルブが設けられており、該制御バルブは気化器弁としても逆止弁(24、26、28)としても使用される
請求項1記載の安全装置。 - 制御装置(56)は警報ユニット(78)に接続されており、
制御装置(56)は、設定手段(58、60、62)からの作動信号に基づき、2つ以上の設定手段がその作動位置に移動されたことを検出したときに第2の制御信号を発生し、
警報ユニット(78)は音響および/または視覚的警報を、制御装置(56)が第2の制御信号を発生したときに発令する
請求項1または2記載の安全装置。 - 各設定手段(58、60、62)は、設定つまみ(58、60、62)と、位置指示ユニット(72)と、位置検出ユニット(70)とを有し、
前記位置指示ユニットは設定つまみの上に配置されており、当該設定つまみの位置を指示し、
前記位置検出ユニットは設定つまみに配置されており、位置指示ユニットを検出し、
少なくとも設定つまみ(58、60、62)がOFF位置にあるとき、前記位置検出ユニット(70)は作動信号を送出し、
該作動信号はどの設定つまみ(58、60、62)がOFF位置にあり、どれがないかを指示する
請求項1から3までのいずれか1項記載の安全装置。 - 位置指示ユニットは磁石(72)を有し、
位置検出ユニットは磁界を検出するホール素子(70)を有する
請求項4記載の安全装置。 - 位置指示ユニットはコード化されたマークを設定つまみの上に有し、
位置検出ユニットは光をコード化されたマークに放射するための発光素子と、コード化された素子から反射された光を検出するための光検出素子を有する
請求項4記載の安全装置。 - コード化されたマークは設定つまみに配置されたバーコードであり、
該バーコードは設定つまみの全設定範囲にわたって配置されており、
該バーコードは麻酔濃度の目標値を指示し、
位置検出ユニットは設定つまみの位置を、当該つまみが操作される度に読み出し、
呼吸回路の麻酔濃度に対する所定の目標値が前記バーコードから制御装置によって読み出され、
制御装置は気化器弁を読み出された目標値に従って制御する
請求項6記載の安全装置。 - 麻酔気化器(4、6、8)は着脱可能に、このために構成された接続サイトにて麻酔装置に接続されており、
コード素子が各着脱可能麻酔気化器(4、6、8)に配置されており、
コード検出素子が各接続サイトに配置されており、麻酔気化器(4、6、8)が接続されたときにコード素子を検出し、
前記コード検出素子は制御装置(56)に接続されており、麻酔気化器(4、6、8)が接続されたときに当該制御装置にコード信号を送出する
請求項1から7までのいずれか1項記載の安全装置。 - コード素子はまた、どの麻酔薬が麻酔気化器(4、6、8)にあるかを指示し、
制御装置(56)は、コード検出素子からのコード信号に基づいて、どの麻酔薬が麻酔装置に接続されているかを検出する
請求項8記載の安全装置。 - 少なくとも3つの麻酔気化器(4、6、8)を有し、当該麻酔気化器のうちの2つは同じ麻酔薬を含み、
スイッチ(64、66、68)が、制御装置(56)と各逆止弁(24、26、28)との間に配置されており、
制御装置(56)は2つ以上の麻酔気化器(4、6、8)が作動されたとき、これらのうちのいずれかが同じ麻酔薬を含むか否かを検出し、
これに基づきスイッチング信号を発生し、
当該スイッチング信号は、制御装置(56)と、同じ麻酔薬を含む麻酔気化器(4、6、8)の逆止弁(24、26、28)との間のスイッチを開放し、
これにより制御信号が逆止弁(24、26、28)に到達するのを阻止し、
同じ麻酔薬を含む2つの麻酔気化器(4、6、8)を同時に作動することができる
請求項9記載の安全装置。 - 制御装置(56)はさらに情報を記憶するための手段と、麻酔薬を呼吸回路(10)に供給するため最初に作動された第1の麻酔気化器が遮断された後の所定時間を設定する手段とを有し、
前記情報はどの麻酔気化器(4、6、8)が作動されていたかを指示するものであり、
制御装置は、前記所定時間内に第2の麻酔気化器(4、6、8)が作動されたとき制御信号を発生し、
当該制御信号によって、掃気期間の間、第2の麻酔気化器(4、6、8)に接続されている逆止弁を閉鎖し、以前に供給された麻酔ガスを含むガスを掃気弁(30)によって掃気させ、
当該掃気を実行してから、麻酔薬が前記第2の麻酔気化器から呼吸回路(10)に供給される
請求項1から10までのいずれか1項記載の安全装置。
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