JP3628802B2 - 防曇性薄膜及びその形成法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質形状をした防曇性能を有する酸化物薄膜およびその形成法であり、ガラス基板の表面に形成した単層膜または積層膜の表面で防曇性能を持った保護膜として、多孔質形状による屈折率の低下での低反射膜として、また防曇性と低反射性を合わせ持つ複合化膜として、さらには多孔質形状で表面積が格段に大きくかつガラスまたは上下層膜との化学的結合力も格段に良好となって例えば長期にわたりその効果を持続せしめるプレコ−ト膜として、光学特性を損なうことなく、高い密着力で耐摩耗性あるいは耐久性に優れ、クラック等の欠陥もないものとなり、鏡などの産業用、建築用もしくは自動車用の窓材、各種膜付きガラス物品等に有用な防曇性薄膜及びその形成法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス基板上に防曇性薄膜を形成する方法としては、例えばポリビニルアルコ−ルやポリビニルピロリドンなどに代表される親水性有機高分子や非イオン系界面活性剤をガラス表面に塗布処理して親水性にするなどの方法がある(例えば、特開昭48−89278号公報、特開平1−37268 号公報)。
【0003】
また例えば、硼珪酸ガラス基板を酸でエッチングして多孔質化する方法やソ−ダライムガラスをフッ酸でエッチングして表面に凹凸をつけ親水性物質を被覆する方法などがある(例えば、特開平4−124046号公報)。
【0004】
さらに例えば、リン酸を含むバルクガラスにリン酸の液または蒸気を接触させる方法(例えば、特開昭54−105120 号公報)などがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来のガラス表面を親水性有機高分子や非イオン系界面活性剤で処理する方法では耐摩耗性や耐久性が不充分である。
【0006】
また例えばガラス基板表面および組織を多孔質化する方法では多孔質化するのに長時間を要するとともに、使用するエッチング溶液が強酸性であるため取り扱いが危険であって作業性が極めて劣り、生産性の低下等をも招くこととなる。
【0007】
さらに例えば、リン酸系処理については、耐水性がなく雨水で流去するようなことが起こる。
いずれにしても、実用的なものとは言い難く、また使用場所も限定されるようなものであった。
【0008】
そこで、ガラス基板に単に親水性有機高分子や非イオン系界面活性剤を塗布するような方法、あるいはガラス表面を強酸でエッチングして凹凸形状とするような方法ではなくて、優れた親水性を長期間持続する耐久性があり、自動車用窓材等にも使用可能なものが望まれていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来のかかる課題に鑑みてなしたものであって、被膜の表面積を増大させるために溶液中に水溶性有機高分子を添加し、塗布、被覆し乾燥した後、添加した該水溶性有機高分子を燃焼分解によって除去するのではなく、溶媒で除去し加熱処理することで多孔質状防曇性膜を成膜するので、クラック等の欠陥を発現することもなく、簡便でかつ確実に表面積を増大させ、密着性、耐候性に優れ、しかも硬い制御された膜であり、一旦形成した多孔質性は変化することがなく、化学的に強固に結合して優れた耐摩耗性を発揮し、格段に優れた防曇性を長期にわたって持続する耐久性が充分にある等、有用な防曇性薄膜及びその形成法を提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明は、ガラス基板表面に形成した薄膜を、P 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、焼成をすることで成る多孔質構造を有する酸化物薄膜としたことを特徴とする防曇性薄膜。
【0011】
ならびに、少なくともP 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、600℃以上690℃以下の高温加熱による焼成をすることを特徴とする防曇性薄膜の形成法。
【0012】
また、前記防曇性薄膜の表面形状を、添加する水溶性有機高分子の種類、添加量もしくはそれらの組み合わせ、ならびに水溶性有機高分子層の洗い出し処理溶媒の種類によって制御することを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
【0013】
さらに、前記した水溶性有機高分子が、水または水とアルコ−ルの混合溶液に常温で容易に溶けるカルボニル基を有することを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
【0014】
さらにまた、前記した溶媒が、水、アルコ−ル類あるいはエ−テル類であることを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
またさらに、前記した酸が、硝酸またはしゅう酸あるいは塩酸であることを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
【0015】
またさらに、前記した高温加熱が、600 ℃以上690 以下の温度による被膜の焼成処理であることを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法をそれぞれ提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
ここで、前記したように、金属アルコキシド系化合物または平衡水蒸気圧が低い酸化物微粒子を分散した溶液と、金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、高温加熱による焼成をすることで成る多孔質構造を有する酸化物薄膜とした防曇性薄膜としたのは、防曇性の持続性が表面積はもちろん被膜の膜厚の影響も大きく、一般に被膜の膜厚が増大するほど防曇性は良化する傾向にあるが、膜にクラックが発生する危険性も大きくなる。したがって例えば膜厚が約500nm 程度以上となるとクラックが発生するが、本発明は例え500nm 程度以上であっても前記水溶性有機高分子を高温で焼成処理する前に溶媒で除去するため、高温加熱処理時の膜収縮による応力を緩和することができ、その結果クラック等の欠陥がなく、光学特性も損なうこともなく、しかもガラス基板と強固に密着して優れた耐久性等を併せ持ち、単層膜でも充分な防曇機能を発揮できるとともに、積層膜の下地層膜としても多孔性であるが故に上層膜との密着性も格段に向上するなど、有用な多孔質構造を有する酸化物薄膜を厄介な工程もなく、高い安定性と安全性で作業効率よく、生産性を格段に上げ、かつ確実に提供することができるものである。
【0017】
ならびに、少なくともP 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、 該溶液をガラス基板の表面に塗布、被覆し、次いで150 ℃以下の温度で乾燥処理した後、水または水とアルコ−ルの混合溶液でもって水溶性有機高分子層を除去する処理し、600℃以上690℃以下の高温加熱による焼成をする。
【0018】
また、前記金属アルコキシド系化合物としては、例えば、金属アルコキシドがSiO2、TiO2、P2O5系であり、具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、トリエチルフォスフェ−ト、ジルコニウムノルマルブトキシドなどが挙げられ、リン酸系についてはアルコキシドでは他にトリメチルフォスフェ−トが挙げられ、アルコキシド以外ではPOCl3 、H3PO4 なども使用できるが、これらはゲル化が早くあまり好ましくない。
【0019】
また、前記平衡水蒸気圧が低い酸化物微粒子としては、該平衡水蒸気圧の値が例えば約10-4mmHg程度であり、具体的には、ベ−マタイト結晶型のアルミナ(Al2O3 )あるいはシリカ(SiO2)が挙げられる。また、酸化物微粒子の粒径は約2〜20nm程度である。
【0020】
また、前記溶媒としては、例えば、アルコ−ル類、水およびエ−テル類であり、具体的には、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、蒸留水、エチルエ−テルなどが挙げられ、好ましくは蒸気圧が高いエタノ−ル、イソプロパノ−ルと蒸留水の混合溶媒がよい。
【0021】
また、前記酸としては、例えば硝酸またはしゅう酸あるいは塩酸等である。
また、前記水溶性有機高分子としては、例えば、水または水とアルコ−ルの混合溶液に常温で容易に溶けるカルボニル基を有するものであるが、水または水とアルコ−ルの混合溶液に可溶で金属アルコキシドと均一に混ざりあえば特に限定し制限するものではなく、具体的には、ポリエチレングリコ−ル、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ポリビニルピロリドンまたはポリアクリル酸などが挙げられる。
【0025】
またさらに、コ−ティング溶液のpHとしては約3以上5以下であり、3未満ではアルコキシド溶液の縮重合反応が早くなり、かつ水溶性有機高分子の溶解度が小さくなるためであり、また5を超えると逆に縮重合反応が遅く、コ−ティングできるまでの時間が長くなるからであり、好ましくはpHが3.5 〜4.5 の範囲である。
【0026】
さらにまた、前記150 ℃以下の温度で乾燥処理したのは、150 ℃を超えると、例えばゾル中に含まれている無機元素が溶媒の蒸気とともに濃縮され、膜骨格を次第に強固にし、水溶性有機高分子の溶出処理による除去効率が悪化し、必ずしも洗い出し操作の効力を発揮できなくなって高温での加熱処理時にクラックが発生するからであり、好ましくは100 ℃以上130 ℃以下の範囲である。
【0027】
さらにまた、前記被膜を600 ℃以上の高温で焼成することとしたのは、ガラス基板に影響を与えない程度であって、膜に形成される多孔質形状が焼失することがなく、充分な膜強度を付与することができる温度であり、好ましくは600 ℃以上690 ℃以下、より好ましくは630 ℃以上670 ℃以下である。
【0028】
さらにまた、前記した膜の膜付け法としては、ディッピング法、フローコート法あるいはスピンコート法、ロ−ラ−コ−ト法、印刷法、ノズルフロ−コ−ト法、スプレー法、ならびにそれらの併用等既知の塗布手段が適宜採用し得るものである。
【0029】
また、前記ガラス基板としては、建築用における窓材、鏡、航空機用あるいは船舶用の窓材、および自動車用窓材等、種々のガラス物品などに用いられるソ−ダライムガラス、たとえばフロ−トガラスおよび各種成分組成のガラスを採用することができる。
【0030】
前述したように、本発明の防曇性薄膜及びその形成法によれば、被膜の表面積を増大させるために溶液中に水溶性有機高分子を添加し、塗布、被覆し乾燥した後、添加した該水溶性有機高分子を燃焼分解によって除去するのではなく、溶媒で除去し加熱処理することで多孔質状防曇性膜を成膜するので、クラック等の欠陥を発現することもなく、簡便でかつ確実に表面積を増大させ、密着性、耐候性に優れ、しかも硬い制御された膜であり、一旦形成した多孔質性は変化することがなく、化学的に強固に結合して優れた耐摩耗性を発揮し、例えば眼鏡の曇り止め剤試験(JIS S 4030)のサイクル試験をも合格する等、格段に優れた防曇性を長期にわたって持続する耐久性が充分にある等、建築用もしくは鏡などの産業用、さらには自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品等、種々の被膜に広く採用できる有用な防曇性薄膜及びその形成法を提供することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明は係る実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
出発原料として、リン酸トリエチル(PTE;キシダ化学製)、ケイ酸エチル(TEOS; キシダ化学製)、アルミナ微粒子分散ゾル(Al−10; 川研ファインケミカル製)、イソプロピルアルコ−ル(iPA;キシダ化学製)、純水、ポリエチレングリコ−ル(PEG;平均分子量4000; キシダ化学製)を用い、先ずPEG4000 をAl−10とiPA と純水の混合溶液で室温にて完全に溶解させて、該溶液にPTE とTEOSを添加し、溶液中のモル比がPTE:TEOS: Al−10:iPA: 純水=0.5:1:0.5:10:50 で、かつ、PEG4000 の添加量が重量%で5%とした当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0033】
次いで、予めセリア研磨、上水で水洗、蒸留水でリンス、乾燥した後、アセトン等で払拭したフロ−トガラス基板(10mm×10mm×2mm 厚)をディッピング法により上述したコ−ティング溶液を表面に塗布した。なお、浸漬後のガラス基板の引き上げ速度は約4mm/sec 〜7mm/sec の範囲で塗布処理を行い、ゲル膜付きガラス基板を得た。
【0034】
次に、このゲル膜付きガラス基板を約 150℃で約30分間乾燥した後、エチルアルコ−ルと純水の混合溶媒(体積比で1:1)中に約5分間浸漬し、約40℃で約10分間乾燥した後、電気炉中で約 690℃(昇温速度が約10℃/min )で約4分間熱処理を行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
【0035】
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて以下の評価を実施した。
〔評価方法〕
防曇性能:▲1▼約43℃飽和水蒸気に約3分間接触させた後、約40℃の乾燥器中に約10分間放置し、室温まで冷却された状態で再度最初の飽和水蒸気接触を開始するまでを1サイクルとして、10サイクルまで実施し、その間の曇りの発生状況を目視で評価した。
【0036】
10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなかったものを合格とした。
▲2▼マイナス20℃(冷凍庫)中で約10分間放置直後、約25℃(室温)で約50%RHの環境に放置するのを1サイクルとして、10サイクルまで実施し、その間の曇りの発生状況を目視で評価した。
【0037】
10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなかったものを合格とした。
なお、▲1▼および▲2▼とも後述する表中では、全く曇りの発生が認められないものを○印とし、曇りの発生が認められたものを×印とした。
【0038】
膜表面形状:▲1▼走査型電子顕微鏡(SEM 、日立製作所製、S−415 )によって観察し、撮影した写真をもって膜表面形状の凹凸程度を目視し、凹凸状がハッキリ観察されれば合格とした。
【0039】
▲2▼走査型プロ−ブ顕微鏡のAFM (原子間力顕微鏡)モ−ド(セイコ−電子製、SP13700 、5 μm 四方スキャンあるいはオリンパス製、NV2000、5 μm 四方スキャン)で観察し、JIS B 0601で定義されている中心線平均粗さRa値を求め評価した。
【0040】
膜厚の測定:DEKTAK(Sloan 社製、3030)にて測定した。
その他 :▲1▼クラック等の欠陥の有無。▲2▼膜の各種試験による耐久性。▲3▼可視光線透過率の変化等光学特性への影響など、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に必要な事項を評価した。
【0041】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、また膜の表面形状は走査型電子顕微鏡(以下、SEM という。)の写真(1万5千倍)を図1に示すように、ハッキリした凹凸状を呈し、原子間力顕微鏡(以下、AFM という。)による中心線平均粗さRa値は約9.5nm である凹凸状であり、めざす多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0042】
また、表1および2に示すように、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0043】
なお、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
実施例2
出発原料として、リン酸トリエチル(PTE;キシダ化学製)、アルミナ微粒子分散ゾル(Al−10; 川研ファインケミカル製)、イソプロピルアルコ−ル(iPA;キシダ化学製)、純水、ポリエチレングリコ−ル(PEG;平均分子量4000; キシダ化学製)を用い、先ずPEG4000 をAl−10とiPA と純水の混合溶液で室温にて完全に溶解させて、該溶液にPTE を添加し、溶液中のモル比がPTE:Al−10:iPA: 純水=0.5:0.5:10:50 で、かつ、PEG4000 の添加量が重量%で5%とした当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0044】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0045】
その結果、該P2O5−Al2O3 膜付きガラスは、膜厚が約230nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約7.0nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0046】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0047】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0048】
実施例3
出発原料として、実施例1と同様のPTE 、TEOS、Al−10、iPA 、純水、PEG を用い、先ずPEG4000 をAl−10とiPA と純水の混合溶液で室温にて完全に溶解させて、該溶液にPTE とTEOSを添加し、溶液中のモル比がPTE:TEOS: Al−10:iPA: 純水=0.5:1:0.5:10:80 で、かつ、PEG4000 の添加量が重量%で5%とした当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0049】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0050】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約190nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約7.6nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0051】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0052】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0053】
実施例4
出発原料として、実施例1および3と同様に行うなかで、溶液中のモル比をPTE:TEOS: Al−10:iPA: 純水=0.5:1:0.5:10:100とし、かつ、PEG4000 の添加量が5重量%の当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0054】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0055】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約7.7nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0056】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0057】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0058】
実施例5
出発原料として、実施例4と同様に行うなかで、PEG4000 の添加量を10重量%の当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0059】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0060】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約240nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約11.5nmでめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0061】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0062】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0063】
実施例6
出発原料として、TEOS、PTE 、iPA 、酸触媒(0.01N 硝酸)を用い、コ−ティング溶液組成をTEOS: PTE:iPA:酸触媒=1:1:10:7(モル比)とし、室温で約24時間攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0064】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0065】
その結果、該P2O5−SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約1.5nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0066】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0067】
比較例1
実施例1において、上記したPEG を添加しなかった以外はすべて同様にして行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
【0068】
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、図2に示すように、SEM による写真(1万5千倍)は実施例1とは異なって凹凸がハッキリせず平坦化を呈し、明らかにめざす多孔質形状を有する酸化物薄膜ではなかった。
【0069】
また、表1および2に示すように、防曇性能▲1▼の評価試験では2サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0070】
比較例2
実施例1において、コ−ティング溶液に添加する純水の量をTEOS1mol に対して30モル比とした以外はすべて同様にして行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
【0071】
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、SEM による写真観察では比較例1より多少凹凸があるものの、実施例1とは異なって凹凸がハッキリせず、めざす凹凸からは平面化状を呈していると言えるものであり、到底めざす多孔質形状を有する酸化物薄膜ではなかった。
【0072】
また、表1および2に示すように、比較例1と同様、防曇性能▲1▼の評価試験では2サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0073】
比較例3
スパッタリング法でフロ−トガラス基板上にTiO2膜を約200nm の厚みに形成した。水に対する接触角が約5°程度であった。
【0074】
得られたTiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該TiO2膜付きガラスは、SEM による写真観察では実施例1とは異なって凹凸がハッキリせず平面化状を呈しており、到底めざす多孔質形状を有する酸化物薄膜ではなかった。
【0075】
また、表1および2に示すように、比較例1と同様、防曇性能▲1▼の評価試験では2サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0076】
比較例4
市販の眼鏡用の曇り止め剤「クリンピュ−」(呉工業製)を用い、実施例1〜5と同様に洗浄したガラス基板に手で塗布し、余分の液を完全に拭き取り、常温で乾燥した。
【0077】
得られた防曇膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該防曇膜付きガラスは、表1および2に示すように、防曇性能▲1▼の評価試験では4サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、比較例1〜3とは多少改善が見受けられるように見えるものの、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】
以上前述したように、本発明の防曇性薄膜及びその形成法によれば、安定かつ確実に厄介な工程もなく手軽に容易な特定の形成手段でもって特異な多孔質形状をした格段に優れた防曇性能を有する酸化物薄膜を安価に効率よく高生産性でうることができ、クラック等の欠陥がなくかつ充分な防曇可視光線透過率と耐久性等に優れるものとなるなど、建築用もしくは鏡などの産業用、さらには自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品等、種々の被膜に広く採用できる有用な防曇性薄膜及びその形成法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における防曇性薄膜の表面形状を、SEM によって1万5千倍の倍率で撮影した写真で示す図である。
【図2】比較例1における防曇性薄膜の表面形状を、SEM によって1万5千倍の倍率で撮影した写真で示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質形状をした防曇性能を有する酸化物薄膜およびその形成法であり、ガラス基板の表面に形成した単層膜または積層膜の表面で防曇性能を持った保護膜として、多孔質形状による屈折率の低下での低反射膜として、また防曇性と低反射性を合わせ持つ複合化膜として、さらには多孔質形状で表面積が格段に大きくかつガラスまたは上下層膜との化学的結合力も格段に良好となって例えば長期にわたりその効果を持続せしめるプレコ−ト膜として、光学特性を損なうことなく、高い密着力で耐摩耗性あるいは耐久性に優れ、クラック等の欠陥もないものとなり、鏡などの産業用、建築用もしくは自動車用の窓材、各種膜付きガラス物品等に有用な防曇性薄膜及びその形成法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス基板上に防曇性薄膜を形成する方法としては、例えばポリビニルアルコ−ルやポリビニルピロリドンなどに代表される親水性有機高分子や非イオン系界面活性剤をガラス表面に塗布処理して親水性にするなどの方法がある(例えば、特開昭48−89278号公報、特開平1−37268 号公報)。
【0003】
また例えば、硼珪酸ガラス基板を酸でエッチングして多孔質化する方法やソ−ダライムガラスをフッ酸でエッチングして表面に凹凸をつけ親水性物質を被覆する方法などがある(例えば、特開平4−124046号公報)。
【0004】
さらに例えば、リン酸を含むバルクガラスにリン酸の液または蒸気を接触させる方法(例えば、特開昭54−105120 号公報)などがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来のガラス表面を親水性有機高分子や非イオン系界面活性剤で処理する方法では耐摩耗性や耐久性が不充分である。
【0006】
また例えばガラス基板表面および組織を多孔質化する方法では多孔質化するのに長時間を要するとともに、使用するエッチング溶液が強酸性であるため取り扱いが危険であって作業性が極めて劣り、生産性の低下等をも招くこととなる。
【0007】
さらに例えば、リン酸系処理については、耐水性がなく雨水で流去するようなことが起こる。
いずれにしても、実用的なものとは言い難く、また使用場所も限定されるようなものであった。
【0008】
そこで、ガラス基板に単に親水性有機高分子や非イオン系界面活性剤を塗布するような方法、あるいはガラス表面を強酸でエッチングして凹凸形状とするような方法ではなくて、優れた親水性を長期間持続する耐久性があり、自動車用窓材等にも使用可能なものが望まれていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来のかかる課題に鑑みてなしたものであって、被膜の表面積を増大させるために溶液中に水溶性有機高分子を添加し、塗布、被覆し乾燥した後、添加した該水溶性有機高分子を燃焼分解によって除去するのではなく、溶媒で除去し加熱処理することで多孔質状防曇性膜を成膜するので、クラック等の欠陥を発現することもなく、簡便でかつ確実に表面積を増大させ、密着性、耐候性に優れ、しかも硬い制御された膜であり、一旦形成した多孔質性は変化することがなく、化学的に強固に結合して優れた耐摩耗性を発揮し、格段に優れた防曇性を長期にわたって持続する耐久性が充分にある等、有用な防曇性薄膜及びその形成法を提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明は、ガラス基板表面に形成した薄膜を、P 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、焼成をすることで成る多孔質構造を有する酸化物薄膜としたことを特徴とする防曇性薄膜。
【0011】
ならびに、少なくともP 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、600℃以上690℃以下の高温加熱による焼成をすることを特徴とする防曇性薄膜の形成法。
【0012】
また、前記防曇性薄膜の表面形状を、添加する水溶性有機高分子の種類、添加量もしくはそれらの組み合わせ、ならびに水溶性有機高分子層の洗い出し処理溶媒の種類によって制御することを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
【0013】
さらに、前記した水溶性有機高分子が、水または水とアルコ−ルの混合溶液に常温で容易に溶けるカルボニル基を有することを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
【0014】
さらにまた、前記した溶媒が、水、アルコ−ル類あるいはエ−テル類であることを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
またさらに、前記した酸が、硝酸またはしゅう酸あるいは塩酸であることを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法。
【0015】
またさらに、前記した高温加熱が、600 ℃以上690 以下の温度による被膜の焼成処理であることを特徴とする上述した防曇性薄膜の形成法をそれぞれ提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
ここで、前記したように、金属アルコキシド系化合物または平衡水蒸気圧が低い酸化物微粒子を分散した溶液と、金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、高温加熱による焼成をすることで成る多孔質構造を有する酸化物薄膜とした防曇性薄膜としたのは、防曇性の持続性が表面積はもちろん被膜の膜厚の影響も大きく、一般に被膜の膜厚が増大するほど防曇性は良化する傾向にあるが、膜にクラックが発生する危険性も大きくなる。したがって例えば膜厚が約500nm 程度以上となるとクラックが発生するが、本発明は例え500nm 程度以上であっても前記水溶性有機高分子を高温で焼成処理する前に溶媒で除去するため、高温加熱処理時の膜収縮による応力を緩和することができ、その結果クラック等の欠陥がなく、光学特性も損なうこともなく、しかもガラス基板と強固に密着して優れた耐久性等を併せ持ち、単層膜でも充分な防曇機能を発揮できるとともに、積層膜の下地層膜としても多孔性であるが故に上層膜との密着性も格段に向上するなど、有用な多孔質構造を有する酸化物薄膜を厄介な工程もなく、高い安定性と安全性で作業効率よく、生産性を格段に上げ、かつ確実に提供することができるものである。
【0017】
ならびに、少なくともP 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、 該溶液をガラス基板の表面に塗布、被覆し、次いで150 ℃以下の温度で乾燥処理した後、水または水とアルコ−ルの混合溶液でもって水溶性有機高分子層を除去する処理し、600℃以上690℃以下の高温加熱による焼成をする。
【0018】
また、前記金属アルコキシド系化合物としては、例えば、金属アルコキシドがSiO2、TiO2、P2O5系であり、具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、トリエチルフォスフェ−ト、ジルコニウムノルマルブトキシドなどが挙げられ、リン酸系についてはアルコキシドでは他にトリメチルフォスフェ−トが挙げられ、アルコキシド以外ではPOCl3 、H3PO4 なども使用できるが、これらはゲル化が早くあまり好ましくない。
【0019】
また、前記平衡水蒸気圧が低い酸化物微粒子としては、該平衡水蒸気圧の値が例えば約10-4mmHg程度であり、具体的には、ベ−マタイト結晶型のアルミナ(Al2O3 )あるいはシリカ(SiO2)が挙げられる。また、酸化物微粒子の粒径は約2〜20nm程度である。
【0020】
また、前記溶媒としては、例えば、アルコ−ル類、水およびエ−テル類であり、具体的には、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、蒸留水、エチルエ−テルなどが挙げられ、好ましくは蒸気圧が高いエタノ−ル、イソプロパノ−ルと蒸留水の混合溶媒がよい。
【0021】
また、前記酸としては、例えば硝酸またはしゅう酸あるいは塩酸等である。
また、前記水溶性有機高分子としては、例えば、水または水とアルコ−ルの混合溶液に常温で容易に溶けるカルボニル基を有するものであるが、水または水とアルコ−ルの混合溶液に可溶で金属アルコキシドと均一に混ざりあえば特に限定し制限するものではなく、具体的には、ポリエチレングリコ−ル、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ポリビニルピロリドンまたはポリアクリル酸などが挙げられる。
【0025】
またさらに、コ−ティング溶液のpHとしては約3以上5以下であり、3未満ではアルコキシド溶液の縮重合反応が早くなり、かつ水溶性有機高分子の溶解度が小さくなるためであり、また5を超えると逆に縮重合反応が遅く、コ−ティングできるまでの時間が長くなるからであり、好ましくはpHが3.5 〜4.5 の範囲である。
【0026】
さらにまた、前記150 ℃以下の温度で乾燥処理したのは、150 ℃を超えると、例えばゾル中に含まれている無機元素が溶媒の蒸気とともに濃縮され、膜骨格を次第に強固にし、水溶性有機高分子の溶出処理による除去効率が悪化し、必ずしも洗い出し操作の効力を発揮できなくなって高温での加熱処理時にクラックが発生するからであり、好ましくは100 ℃以上130 ℃以下の範囲である。
【0027】
さらにまた、前記被膜を600 ℃以上の高温で焼成することとしたのは、ガラス基板に影響を与えない程度であって、膜に形成される多孔質形状が焼失することがなく、充分な膜強度を付与することができる温度であり、好ましくは600 ℃以上690 ℃以下、より好ましくは630 ℃以上670 ℃以下である。
【0028】
さらにまた、前記した膜の膜付け法としては、ディッピング法、フローコート法あるいはスピンコート法、ロ−ラ−コ−ト法、印刷法、ノズルフロ−コ−ト法、スプレー法、ならびにそれらの併用等既知の塗布手段が適宜採用し得るものである。
【0029】
また、前記ガラス基板としては、建築用における窓材、鏡、航空機用あるいは船舶用の窓材、および自動車用窓材等、種々のガラス物品などに用いられるソ−ダライムガラス、たとえばフロ−トガラスおよび各種成分組成のガラスを採用することができる。
【0030】
前述したように、本発明の防曇性薄膜及びその形成法によれば、被膜の表面積を増大させるために溶液中に水溶性有機高分子を添加し、塗布、被覆し乾燥した後、添加した該水溶性有機高分子を燃焼分解によって除去するのではなく、溶媒で除去し加熱処理することで多孔質状防曇性膜を成膜するので、クラック等の欠陥を発現することもなく、簡便でかつ確実に表面積を増大させ、密着性、耐候性に優れ、しかも硬い制御された膜であり、一旦形成した多孔質性は変化することがなく、化学的に強固に結合して優れた耐摩耗性を発揮し、例えば眼鏡の曇り止め剤試験(JIS S 4030)のサイクル試験をも合格する等、格段に優れた防曇性を長期にわたって持続する耐久性が充分にある等、建築用もしくは鏡などの産業用、さらには自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品等、種々の被膜に広く採用できる有用な防曇性薄膜及びその形成法を提供することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明は係る実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
出発原料として、リン酸トリエチル(PTE;キシダ化学製)、ケイ酸エチル(TEOS; キシダ化学製)、アルミナ微粒子分散ゾル(Al−10; 川研ファインケミカル製)、イソプロピルアルコ−ル(iPA;キシダ化学製)、純水、ポリエチレングリコ−ル(PEG;平均分子量4000; キシダ化学製)を用い、先ずPEG4000 をAl−10とiPA と純水の混合溶液で室温にて完全に溶解させて、該溶液にPTE とTEOSを添加し、溶液中のモル比がPTE:TEOS: Al−10:iPA: 純水=0.5:1:0.5:10:50 で、かつ、PEG4000 の添加量が重量%で5%とした当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0033】
次いで、予めセリア研磨、上水で水洗、蒸留水でリンス、乾燥した後、アセトン等で払拭したフロ−トガラス基板(10mm×10mm×2mm 厚)をディッピング法により上述したコ−ティング溶液を表面に塗布した。なお、浸漬後のガラス基板の引き上げ速度は約4mm/sec 〜7mm/sec の範囲で塗布処理を行い、ゲル膜付きガラス基板を得た。
【0034】
次に、このゲル膜付きガラス基板を約 150℃で約30分間乾燥した後、エチルアルコ−ルと純水の混合溶媒(体積比で1:1)中に約5分間浸漬し、約40℃で約10分間乾燥した後、電気炉中で約 690℃(昇温速度が約10℃/min )で約4分間熱処理を行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
【0035】
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて以下の評価を実施した。
〔評価方法〕
防曇性能:▲1▼約43℃飽和水蒸気に約3分間接触させた後、約40℃の乾燥器中に約10分間放置し、室温まで冷却された状態で再度最初の飽和水蒸気接触を開始するまでを1サイクルとして、10サイクルまで実施し、その間の曇りの発生状況を目視で評価した。
【0036】
10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなかったものを合格とした。
▲2▼マイナス20℃(冷凍庫)中で約10分間放置直後、約25℃(室温)で約50%RHの環境に放置するのを1サイクルとして、10サイクルまで実施し、その間の曇りの発生状況を目視で評価した。
【0037】
10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなかったものを合格とした。
なお、▲1▼および▲2▼とも後述する表中では、全く曇りの発生が認められないものを○印とし、曇りの発生が認められたものを×印とした。
【0038】
膜表面形状:▲1▼走査型電子顕微鏡(SEM 、日立製作所製、S−415 )によって観察し、撮影した写真をもって膜表面形状の凹凸程度を目視し、凹凸状がハッキリ観察されれば合格とした。
【0039】
▲2▼走査型プロ−ブ顕微鏡のAFM (原子間力顕微鏡)モ−ド(セイコ−電子製、SP13700 、5 μm 四方スキャンあるいはオリンパス製、NV2000、5 μm 四方スキャン)で観察し、JIS B 0601で定義されている中心線平均粗さRa値を求め評価した。
【0040】
膜厚の測定:DEKTAK(Sloan 社製、3030)にて測定した。
その他 :▲1▼クラック等の欠陥の有無。▲2▼膜の各種試験による耐久性。▲3▼可視光線透過率の変化等光学特性への影響など、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に必要な事項を評価した。
【0041】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、また膜の表面形状は走査型電子顕微鏡(以下、SEM という。)の写真(1万5千倍)を図1に示すように、ハッキリした凹凸状を呈し、原子間力顕微鏡(以下、AFM という。)による中心線平均粗さRa値は約9.5nm である凹凸状であり、めざす多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0042】
また、表1および2に示すように、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0043】
なお、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
実施例2
出発原料として、リン酸トリエチル(PTE;キシダ化学製)、アルミナ微粒子分散ゾル(Al−10; 川研ファインケミカル製)、イソプロピルアルコ−ル(iPA;キシダ化学製)、純水、ポリエチレングリコ−ル(PEG;平均分子量4000; キシダ化学製)を用い、先ずPEG4000 をAl−10とiPA と純水の混合溶液で室温にて完全に溶解させて、該溶液にPTE を添加し、溶液中のモル比がPTE:Al−10:iPA: 純水=0.5:0.5:10:50 で、かつ、PEG4000 の添加量が重量%で5%とした当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0044】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0045】
その結果、該P2O5−Al2O3 膜付きガラスは、膜厚が約230nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約7.0nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0046】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0047】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0048】
実施例3
出発原料として、実施例1と同様のPTE 、TEOS、Al−10、iPA 、純水、PEG を用い、先ずPEG4000 をAl−10とiPA と純水の混合溶液で室温にて完全に溶解させて、該溶液にPTE とTEOSを添加し、溶液中のモル比がPTE:TEOS: Al−10:iPA: 純水=0.5:1:0.5:10:80 で、かつ、PEG4000 の添加量が重量%で5%とした当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0049】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0050】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約190nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約7.6nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0051】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0052】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0053】
実施例4
出発原料として、実施例1および3と同様に行うなかで、溶液中のモル比をPTE:TEOS: Al−10:iPA: 純水=0.5:1:0.5:10:100とし、かつ、PEG4000 の添加量が5重量%の当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0054】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0055】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約7.7nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0056】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0057】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0058】
実施例5
出発原料として、実施例4と同様に行うなかで、PEG4000 の添加量を10重量%の当該溶液を約3時間室温で攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0059】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0060】
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約240nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約11.5nmでめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0061】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0062】
なお、実施例1と同様、上記該薄膜中の微粒子の残存状態を、X 線〔(株)理学製、RINT 1500 〕でもって調べたところ、結晶としてγ−Al2O3 が存在していた。
【0063】
実施例6
出発原料として、TEOS、PTE 、iPA 、酸触媒(0.01N 硝酸)を用い、コ−ティング溶液組成をTEOS: PTE:iPA:酸触媒=1:1:10:7(モル比)とし、室温で約24時間攪拌しコ−ティング溶液とした。
【0064】
塗布成膜ならびに熱処理(焼成)条件については、前記実施例1と同様に行い、P2O5−SiO2膜付きガラスを得た。
得られたP2O5−SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
【0065】
その結果、該P2O5−SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、またSEM による写真は実施例1と同様ハッキリしためざす凹凸状を呈し、AFM による中心線平均粗さRa値は約1.5nm でめざす凹凸状であり、多孔質形状を有する酸化物薄膜であった。
【0066】
また、表1および2に示すように、実施例1と同様に、防曇性能▲1▼および▲2▼の評価試験では10サイクルにおいて全く曇りの発生が認められなく、格段に優れた防曇性能を示すものであり、クラック等の欠陥もなく、しかも耐久性に優れたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを、安定かつ確実に厄介な工程もなく簡便な手段で効率よく得ることができ、建築用、産業用ならびに自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品に使用可能なめざす所期の防曇性薄膜を得た。
【0067】
比較例1
実施例1において、上記したPEG を添加しなかった以外はすべて同様にして行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
【0068】
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、図2に示すように、SEM による写真(1万5千倍)は実施例1とは異なって凹凸がハッキリせず平坦化を呈し、明らかにめざす多孔質形状を有する酸化物薄膜ではなかった。
【0069】
また、表1および2に示すように、防曇性能▲1▼の評価試験では2サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0070】
比較例2
実施例1において、コ−ティング溶液に添加する純水の量をTEOS1mol に対して30モル比とした以外はすべて同様にして行い、P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスを得た。
【0071】
得られたP2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該P2O5−Al2O3 −SiO2膜付きガラスは、膜厚が約200nm であり、SEM による写真観察では比較例1より多少凹凸があるものの、実施例1とは異なって凹凸がハッキリせず、めざす凹凸からは平面化状を呈していると言えるものであり、到底めざす多孔質形状を有する酸化物薄膜ではなかった。
【0072】
また、表1および2に示すように、比較例1と同様、防曇性能▲1▼の評価試験では2サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0073】
比較例3
スパッタリング法でフロ−トガラス基板上にTiO2膜を約200nm の厚みに形成した。水に対する接触角が約5°程度であった。
【0074】
得られたTiO2膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該TiO2膜付きガラスは、SEM による写真観察では実施例1とは異なって凹凸がハッキリせず平面化状を呈しており、到底めざす多孔質形状を有する酸化物薄膜ではなかった。
【0075】
また、表1および2に示すように、比較例1と同様、防曇性能▲1▼の評価試験では2サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0076】
比較例4
市販の眼鏡用の曇り止め剤「クリンピュ−」(呉工業製)を用い、実施例1〜5と同様に洗浄したガラス基板に手で塗布し、余分の液を完全に拭き取り、常温で乾燥した。
【0077】
得られた防曇膜付きガラスについて、前記実施例1と同様の評価を実施した。
その結果、該防曇膜付きガラスは、表1および2に示すように、防曇性能▲1▼の評価試験では4サイクル目において曇りの発生が認められ、▲2▼の評価試験では1サイクル目において曇りの発生が認められる等、比較例1〜3とは多少改善が見受けられるように見えるものの、防曇性能が全く劣るものであり、到底めざす所期の防曇性薄膜ではなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】
以上前述したように、本発明の防曇性薄膜及びその形成法によれば、安定かつ確実に厄介な工程もなく手軽に容易な特定の形成手段でもって特異な多孔質形状をした格段に優れた防曇性能を有する酸化物薄膜を安価に効率よく高生産性でうることができ、クラック等の欠陥がなくかつ充分な防曇可視光線透過率と耐久性等に優れるものとなるなど、建築用もしくは鏡などの産業用、さらには自動車用の窓材をはじめ、各種ガラス物品等、種々の被膜に広く採用できる有用な防曇性薄膜及びその形成法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における防曇性薄膜の表面形状を、SEM によって1万5千倍の倍率で撮影した写真で示す図である。
【図2】比較例1における防曇性薄膜の表面形状を、SEM によって1万5千倍の倍率で撮影した写真で示す図である。
Claims (3)
- ガラス基板表面に形成した薄膜を、P 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、焼成をすることで成る多孔質構造を有する酸化物薄膜としたことを特徴とする防曇性薄膜。
- P 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物、及びベーマイト型結晶型のアルミナ、シリカから選ばれる平衡水蒸気圧が低い酸化物微粒子を分散した溶液が混合されることを特徴とする請求項1に記載の防曇性薄膜。
- 少なくともP 2 O 5 系の金属アルコキシド系化合物と、SiO 2 系の金属アルコキシド系化合物とを混合した溶液を用いて、溶媒、水および酸とともに水溶性有機高分子の共存下で加水分解ならびに縮重合反応を進めた溶液をコ−ティング溶液とし、該コ−ティング溶液を塗布して被覆し、乾燥後、水またはアルコ−ルと水との混合溶液で有機高分子の洗い出しを行い、600℃以上690℃以下の高温加熱による焼成をすることを特徴とする防曇性薄膜の形成法。
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