JP3628735B2 - 遊星歯車式変速装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車や鉄道車両等の多段自動変速機に用いられる遊星歯車式変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
遊星歯車式変速装置にトルクコンバーターを組み合わせた自動変速機が実用化されている。遊星歯車式変速装置は、複数の遊星歯車装置に複数のクラッチやブレーキを組み合わせて構成されており、複数のクラッチやブレーキの断続の組み合わせを変更して、変速比(=入力回転数/出力回転数)を複数通りに切り替えることができる。遊星歯車装置は、外側のリングギヤと中心のサンギヤとの間に1〜2段のピニオンギヤを配置し、複数のピニオンギヤがピニオンキャリヤに拘束されて一体に遊星運動する。遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤ、および複数のクラッチやブレーキの各要素間は、トルク伝達を担う殻構造や一方向クラッチによって、適当な組み合わせで相互に連結される。
【0003】
従来の自動車用の自動変速機における遊星歯車式変速装置は、前進3段、後退1段の変速が可能な前進3段型や、前進4段、後退1段の変速が可能な前進4段型が一般的であったが、現在では、これらに変速比が1以下のいわゆるオーバードライブ変速段を追加した前進4段型や前進5段型が開発され、実用化されている。オーバードライブ変速段ではエンジン回転数が抑制されて、高速道路の走行等における燃費が向上する。ここで、前進5段型の遊星歯車式変速装置は、通常、前進4段型の自動変速機に対してその上位車種用や高級仕様向けとして採用されるが、両者の間で部品の共通化が望まれている。
【0004】
そして、前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置の部品共通化を目的とする発明が特開昭47−43658号公報に示される。ここでは、3組の遊星歯車装置を含む前進4段型の遊星歯車式変速装置の出力軸側に副変速装置を連結して前進5段型としており、副変速装置は、1組の遊星歯車装置と2つの締結要素(クラッチとブレーキ)で構成される。従って、前進4段型の遊星歯車式変速装置の主要構成部品を前進5段型でもそのまま使用して、比較的に安価に前進5段型の遊星歯車式変速装置を提供できる利点がある。また、前進4段型では3組の遊星歯車装置を使用し、前進5段型では4組の遊星歯車装置を使用するため、それぞれの遊星歯車装置の歯数比を調整して定める変速比の自由度が高く、前進4段型と前進5段型の両方で変速の各段における変速比の分布を最適に選択できる利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特開昭47−43658号公報の遊星歯車式変速装置では、副変速装置によってオーバードライブ変速段が追加される構成であるから、前進4段型とした場合にオーバードライブ変速段が失われる問題がある。高速道路の整備、道路事情の改善によってオーバードライブ変速段の利用機会が増しており、発進から変速比1に至るまでの変速段の数を1つ削減してもオーバードライブ変速段を確保したい場合がある。オーバードライブ変速段が無いと、車両の燃料消費に大きな影響を及ぼし、特に高速走行における燃料消費の悪化が顕著である。また、公害防止やエンジン騒音の観点からもオーバードライブ変速段の確保が望まれている。
【0006】
上述の特開昭47−43658号公報の遊星歯車式変速装置では、また、変速に関与して負荷状態に晒される遊星歯車装置がサンギヤ入力であるという問題がある。サンギヤは遊星歯車装置の最も内側に位置するため、他のリングギヤ入力やピニオンキャリヤ入力に比較して、サンギヤ入力では同じトルクを伝達する場合に歯面加重が著しく大きくなる。従って、サンギヤ入力では歯面の磨耗や衝突騒音も大きく、遊星歯車装置の薄型化、小型化、長寿命化が困難で、遊星歯車式変速装置の全体の大型化や重量増にも結び付く。
【0007】
上述の特開昭47−43658号公報の遊星歯車式変速装置では、さらに、変速の各段で変速に関与して負荷状態に晒される遊星歯車装置の組数が多いという問題がある。負荷状態に晒される遊星歯車装置の組数が多いと、歯面の摩擦やオイル攪拌による損失が増大して燃費に悪影響を及ぼすし、騒音や機械寿命の観点からも望ましくない。特に、高速走行に利用され、長時間に渡って連続使用される機会が多いオーバードライブ変速段で2組以上の遊星歯車装置が負荷状態に晒されることは致命的である。
【0008】
本発明は、前進4段型と前進5段型の間で部品の共通化を達成しつつ、燃費や騒音や機械寿命が改善され、しかも、遊星歯車装置のさらなる薄型化、小口径化が可能で遊星歯車式変速装置の小型化、計量化も容易な遊星歯車式変速装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の遊星歯車式変速装置は、入力部材および出力部材の回転軸線上に配置されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、および第3遊星歯車装置を有する遊星歯車式変速装置において、前記出力部材がその内側に他の軸を囲まない中心軸として前記回転軸線上に配置され、第1遊星歯車装置のリングギヤを前記入力部材に対して締結可能な第1クラッチと、第1遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第2クラッチと、第2遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第3クラッチと、第2遊星歯車装置のサンギヤの回転を停止可能な第1ブレーキと、第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転を停止可能な第2ブレーキと、第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第3遊星歯車装置のリングギヤと前記出力部材の間を回転連絡する第1連絡手段と、第1遊星歯車装置のサンギヤと第2遊星歯車装置のリングギヤの間を回転連絡する第2連絡手段と、第2遊星歯車装置のサンギヤと第3遊星歯車装置のサンギヤの間を回転連絡する第3連絡手段と、を有するものである。
【0010】
請求項2の遊星歯車式変速装置は、請求項1の前進4段型の構成(ただし、第1連絡手段は出力部材に直接連絡していない)に追加して、第1連絡手段の回転を入力して減速し、前記出力部材に出力する副変速装置を設けており、前記副変速装置が、前記回転軸線上に配置されたシングルピニオン型またはダブルピニオン型の第4遊星歯車装置と、第4遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤのうち1つの回転を停止可能な第3ブレーキと、第4遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤのうち2つの相対回転をロック可能な第4クラッチとを有する。
【0011】
請求項3の遊星歯車式変速装置は、請求項1の前進4段型の構成に追加して、第1連絡手段の回転から戻し出力を形成して、第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤに入力する副変速装置を設けており、前記副変速装置が、前記回転軸線上に配置されたシングルピニオン型またはダブルピニオン型の第4遊星歯車装置と、第4遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤのうち1つの回転を停止可能な第3ブレーキとを有する。
【0012】
請求項4の遊星歯車式変速装置は、請求項1、2、または3の構成において、第3連絡手段は、第3遊星歯車装置のサンギヤおよび第1ブレーキを一体に回転させる連結部材と第2遊星歯車装置のサンギヤとの間に直列に配置した一方向クラッチと、前記一方向クラッチと並列に配置した第5クラッチとを有するものである。
【0013】
【作用】
請求項1の遊星歯車式変速装置は、シングルピニオン型の3組の遊星歯車装置と3個のクラッチと2個のブレーキとを含む前進4段型のものであるが、1組のシングルピニオン型またはダブルピニオン型の遊星歯車装置と、1〜2組の締結要素(クラッチ、ブレーキ)を追加すれば前進5段型に変更できる。請求項1の構成に対する遊星歯車装置と締結要素の配置と接続に関する例が請求項2〜3に示される。
連絡手段は、双方向の回転トルクを伝達する相互に固定された構造としてもよく、一方向の回転トルクを伝達して逆方向の回転駆動を空転させる一方向クラッチや、一方向クラッチとクラッチを並列に組み合わせた構造としてもよい。連絡手段に一方向クラッチを採用した例が請求項4に示される。
【0014】
請求項1の遊星歯車式変速装置における1速および2速では、第2遊星歯車装置をリングギヤ入力としてピニオンキャリヤから出力を取り出す。1速では、第3遊星歯車装置を補助的に機能させ、第3遊星歯車装置が出力から形成した逆回転を第2遊星歯車装置のサンギヤに戻し入力して、出力となるピニオンキャリアの回転速度を2速よりも低下させる。2速では、サンギヤを停止させた第2遊星歯車装置のみによって出力が形成される。
3速では、第1遊星歯車装置のリングギヤとサンギヤに同時入力して両者の相対回転を失わせることによって、第1遊星歯車装置全体をロックさせて出力部材と一体に回転させる。ピニオンキャリヤからは、出力部材と同じ回転速度が取り出される。
4速では、リングギヤ入力でピニオンキャリヤから出力を取り出される第1遊星歯車装置に対して第2遊星歯車装置を補助的に機能させる。第2遊星歯車装置が出力から形成した増速回転を第1遊星歯車装置のサンギヤに戻し入力する。リングギヤ以上の回転速度でサンギヤが順方向に回転する第1遊星歯車装置によって変速比1以下の増速出力が形成される。
後退では、ピニオンキャリヤを停止させた第3遊星歯車装置をサンギヤ入力とすることによって、リングギヤから減速された逆回転を出力させる。
【0015】
請求項2の遊星歯車式変速装置では、副変速装置が請求項1の構成による1速と2速をさらに減速させる。そして、請求項1の構成による3速の変速段を減速させた新しい1つの変速段を請求項1の構成による3速の下に追加する。副変速装置は、第3ブレーキを締結することによって減速機として機能する。一方、第4クラッチを締結することによってロックされて一体に回転し、請求項1の構成における出力部材の回転をそのまま出力部材に伝達する。
なお、(1) 第4遊星歯車装置をシングルピニオン型とダブルピニオン型のどちらとするかの別、(2) 第4遊星歯車装置のどの回転要素を入力、出力とし、ブレーキB3に接続するかの別を調整して、第1連絡手段の出力を増速して出力部材に伝達することとすれば、請求項1の構成による1速と2速の間に1段の変速段を配置することも可能である。
【0016】
請求項3の遊星歯車式変速装置では、請求項1の構成による1速の変速段の下にさらに低い回転数(高い変速比)の変速段が追加される。この追加された変速段においては、第2遊星歯車装置、第3遊星歯車装置、第4遊星歯車装置の3つが協働して減速を行う。第3ブレーキによってピニオンキャリヤをロックされた第4遊星歯車装置は、「第2遊星歯車装置に対して補助的に機能する第3遊星歯車装置」に対して補助的に機能する。第4遊星歯車装置が出力から形成した逆回転の戻し出力が第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤにされると、第3遊星歯車装置のサンギヤの逆回転の速度が高まり、第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転速度が請求項1の構成による1速の場合よりもさらに低下する。
なお、(1) 第4遊星歯車装置をシングルピニオン型とダブルピニオン型のどちらとするかの別、(2) 第4遊星歯車装置のどの回転要素を入力、出力とし、ブレーキB3に接続するかの別を調整して、第1連絡手段から順方向の戻し出力を形成した場合には、第3遊星歯車装置のサンギヤの逆回転の速度が低下して、第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転速度が請求項1の構成による1速の場合よりも高まる。
【0017】
請求項4の遊星歯車式変速装置では、一方向クラッチが第2遊星歯車装置のサンギヤの順方向の駆動を空転させる。これにより、請求項1の構成による1速、2速、請求項2の構成による1速、2速、請求項3の構成による、1速、2速、3速におけるエンジンブレーキが遮断される。第5クラッチは、一方向クラッチによる片方向の伝達を両方向に戻して、エンジンブレーキを有効にする。
【0018】
【実施例】
図1〜図4を参照して第1実施例の遊星歯車式変速装置を説明する。第1実施例の遊星歯車式変速装置は、第2〜第6実施例の基礎となる前進4段型のものであって、図示しないトルクコンバーターやオイルポンプに組み合わせて自動車用の自動変速機(オートマチックトランスミッション)に組み立てられる。図1〜図4では、遊星歯車式変速装置の構成が、構成部品の配置と接続状態を表して中心線から下側を図示略したスケルトンで示されている。
図1は第1実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図、図2、図3は各変速段における遊星歯車装置の作動図、図4は遊星歯車装置の配置と接続の変形例である。
図1中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。図2中、(a)は1速、(b)は2速の作動状態をそれぞれ示す。図3中、(a)は3速、(b)は4速、(c)は後退の作動状態をそれぞれ示す。図4の(a)、(b)はそれぞれ別の変形例を示す。
【0019】
図1の(a)において、入力軸E1と同一の回転軸線上に左から3組のクラッチK1、K2、K3、2組のブレーキB1、B2、3組の遊星歯車装置G11、G12、G13、および出力軸E2が配置される。上方にハッチングで示した筐体D1は、これらの機構を格納するとともに、入力軸E1および出力軸E2を回転可能に支持する。
遊星歯車装置G11は、外周のリングギヤR11と中心のサンギヤS11の間に複数のピニオンギヤP11を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP11をピニオンキャリヤC11で一体に拘束する。遊星歯車装置G12は、外周のリングギヤR12と中心のサンギヤS12の間に複数のピニオンギヤP12を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP12をピニオンキャリヤC12で一体に拘束する。遊星歯車装置G13は、外周のリングギヤR13と中心のサンギヤS13の間に複数のピニオンギヤP13を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP13をピニオンキャリヤC13で一体に拘束する。
【0020】
クラッチK1は、入力軸E1を遊星歯車装置G11のリングギヤR11に対して締結可能である。クラッチK2は、入力軸E1を遊星歯車装置G11のサンギヤS11および遊星歯車装置G12のリングギヤR12に対して締結可能である。クラッチK3は、入力軸E1を遊星歯車装置G12、G13のサンギヤS12、S13に対して締結可能である。ブレーキB1は、筐体D1に対して遊星歯車装置G12、G13のサンギヤS12、S13をロックして、サンギヤS12、S13の回転を停止可能である。ブレーキB2は、筐体D1に対して遊星歯車装置G13のピニオンキャリヤC13をロックして、ピニオンキャリヤC13の回転を停止可能である。
【0021】
遊星歯車装置G11、G12のピニオンキャリヤC11、C12と遊星歯車装置G13のリングギヤR13と出力軸E2の間に連絡部材N11が配置される。遊星歯車装置G11のサンギヤS11と遊星歯車装置G12のリングギヤR12の間に連絡部材N12が配置される。遊星歯車装置G12、G13のサンギヤS12、S13の間に連絡部材N13が配置される。連絡部材N13は、クラッチK3およびブレーキB1を遊星歯車装置G12のサンギヤS12に連絡する部材を兼ねている。連絡部材N11、N12、N13は、トルク伝達用の殻構造や軸方向の噛み合わせ構造や多重の軸構造によって構成され、相対回転を固定して正逆両方向に回転トルクを伝達する。
【0022】
図1の(b)において一覧表として示すように、1速ではクラッチK2とブレーキB2の組み合わせが締結される。2速ではクラッチK2とブレーキB1の組み合わせが締結される。3速ではクラッチK1、K2の組み合わせが締結される。4速ではクラッチK1とブレーキB1の組み合わせが締結される。後退ではクラッチK3とブレーキB2の組み合わせが締結される。これらの変速段における変速比は、遊星歯車装置G11、G12、G13の歯数比α1 、α2 、α3 を用いて右側の数式のように求められる。この数式を用いて歯数比α1 、α2 、α3 をそれぞれ0.40、0.60、0.40と定めた場合の具体的な変速比の数値が右端の欄に示される。
【0023】
次に、図2、図3を参照して、前進4段、後退1段の変速各段における遊星歯車装置の作動状態を説明する。ここでは、クラッチおよびブレーキについては実線が締結状態、破線が解放状態である。遊星歯車装置および各要素の連絡部分については、変速動作に関与して出力に結び付く状態を実線、無関係な状態を破線で示している。
【0024】
図2の(a)の1速では、ブレーキB2によってピニオンキャリヤC13をロックされた遊星歯車装置G13と、クラッチK2によってリングギヤR12入力となる遊星歯車装置G12とによって減速が行われる。ピニオンキャリヤC13が停止された遊星歯車装置G13のリングギヤR13に、遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12の回転が入力されると、遊星歯車装置G13のサンギヤS13からは、リングギヤR13と逆方向の増速された回転が出力される。この逆方向の回転が遊星歯車装置G12のサンギヤS12に戻し入力される。
シングルピニオン型の遊星歯車装置G12では、ピニオンキャリヤC12の回転速度がリングギヤR12とサンギヤS12の回転速度の中間の値(歯数比で重み付けされた値)となる。従って、サンギヤS12が逆回転していると、リングギヤR12の同一回転速度の入力に対して、サンギヤS12が停止した次の2速の場合よりもピニオンキャリヤC12の回転速度が低下する。
図2の(b)の2速では、ブレーキB1によってサンギヤS12を停止させた遊星歯車装置G12が単純な減速を行う。遊星歯車装置G12では、サンギヤS12の回転速度0とリングギヤR12の中間の速度が形成されて、ピニオンキャリヤC12に出力される。
【0025】
図3の(a)の3速では、遊星歯車装置G11の全体をロックさせて入力軸と一体に回転させる。遊星歯車装置G11のリングギヤR11とサンギヤS11に対して、それぞれクラッチK1、K2を通じて入力軸の回転が入力される。リングギヤR11とサンギヤS11の相対回転が失われた遊星歯車装置G11では、リングギヤR11、ピニオンキャリヤC11、サンギヤS11の噛み合わせ状態を維持したまま全体が一体に回転して、ピニオンキャリヤC11から入力軸と等しい回転速度が取り出される。このとき、出力軸E2の出力には直接関与していないが、リングギヤR12とピニオンキャリヤC12に対して同じ回転速度が入力される遊星歯車装置G12でも、回転要素の相対回転が失われて全体が一体に回転している。
【0026】
図3の(b)の4速では、遊星歯車装置G11のサンギヤS11をリングギヤR11よりも高速回転させることによって、変速比が1以下の増速された回転を形成してピニオンキャリヤC11に出力する。すなわち、ブレーキB1によってサンギヤS12をロックされた遊星歯車装置G12は、出力軸E2の回転を増速してリングギヤR12に出力する。そして、リングギヤR12の増速された回転を遊星歯車装置G11のサンギヤS11に戻し入力して、遊星歯車装置G11のサンギヤS11をリングギヤR11よりも高速回転させる。
【0027】
図3の(c)の後退では、ブレーキB2によってピニオンキャリヤC13をロックされた遊星歯車装置G13が単純な反転と減速を行う。クラッチK3を通じて入力軸の回転が遊星歯車装置G13のサンギヤS13に入力されると、減速された逆方向の回転がリングギヤR13から出力される。
【0028】
以上のように構成された第1実施例の遊星歯車式変速装置によれば、前進4段型であるにもかかわらず、変速比1以下のオーバードライブ変速段を確保しているため、高速走行における燃費の悪化を避けることができる。さらに、走行中に常用される変速比1の変速段では、遊星歯車装置G11、G12の噛み合いがロックされるため歯面の摩擦や発熱が抑制されるから、自動変速機の伝達効率が高まって燃費が向上するとともに、歯面の磨耗に起因した運転騒音の増大時期が遅くなり、遊星歯車装置の交換寿命も伸びる。
また、後退を除くすべての変速段において、直接出力に関わる遊星歯車装置G11、G12がリングギヤR11、R12入力である。また、出力についてもピニオンキャリヤC11、C12から取り出される。従って、サンギヤを通じて入出力する場合に比較して同じトルクを伝達する際の歯面加重(接線力)が小さくて済み、遊星歯車装置の口径の縮小や歯厚の薄型化を通じて、遊星歯車式変速装置の小型化、軽量化が容易となる。なお、後退の変速段では、遊星歯車装置G13をサンギヤS13入力で使用することになるが、後退の変速段の使用時間は短く、エンジンから取り出されるトルクもあまり大きくないから、遊星歯車装置G13を小型化することも困難ではない。
【0029】
さらに、図1の(b)の一覧表に明らかなように、1速〜4速の隣接する変速段では、1つの締結要素を共通にしたまま他の1つの締結要素を切り替えて変速動作が実行される。従って、変速動作が円滑となり、2つの締結要素を順番に切り替える場合よりも短い時間で変速動作を完了できる。そして、2つの締結要素を同時に切り替える変速動作が無いから、変速動作に伴って自動変速機の機構や車体にショックを与える心配も無い。従って、動作が円滑で速く、運転者に変速動作の有無を気付かせない自動変速機を提供できる。
【0030】
第1実施例では、遊星歯車装置G11が発明の第1遊星歯車装置、遊星歯車装置G12が発明の第2遊星歯車装置、遊星歯車装置G13が発明の第3遊星歯車装置に相当し、連絡部材N11が発明の第1連絡手段、連絡部材N12が発明の第2連絡手段、連絡部材N13が発明の第3連絡手段にそれぞれ相当する。
なお、これらの連絡手段やその他の正逆両方向で回転トルクを伝達する部材の少なくとも1つを「一方向クラッチとクラッチを並列配置した連絡手段」に置き換えてもよい。一方向クラッチによって片方向のトルク伝達として不必要なエンジンブレーキを遮断可能とする一方、下り坂等でエンジンブレーキが必要な場合には並列配置されたクラッチを締結して両方向のトルク伝達とする。
また、それぞれの遊星歯車装置の歯数比を変更して変速各段の変速比を異ならせてもよい。
さらに、2つのブレーキと3つのクラッチには、特開平2−159443号の第38図〜第48図に示されるように、多板クラッチ、バンドブレーキ、および、これらに一方向クラッチを組み合わせた構造を用途や目的に応じて任意に選択できる。
【0031】
ところで、第1実施例の構成は、連絡部材等による相互の連絡関係を維持したままであれば、3つの遊星歯車装置と2つのブレーキと3つのクラッチの配置の順番や相対的な位置関係を種々に変更可能である。そして、筐体構造や連絡状態の都合に合わせて各要素の配置順序や連絡部材の迂回方向を調整して、連絡部材の本数と長さを最小限にしてもよい。このとき、遊星歯車装置の回転要素(サンギヤ、ピニオンキャリヤ、リングギヤ)は、左右の都合の良い側を選択して連絡部材を接続すればよい。
図4の(a)、(b)は、図1の(a)の遊星歯車装置G11、G12、G13の配置順序を入れ替えて、連絡部材N11、N12、N13等の形状を調整した第1実施例の変形例を示す。
【0032】
図4の(a)では、図1の(a)の遊星歯車式変速装置における遊星歯車装置G11、G12の間に遊星歯車装置G13を配置して、第1実施例と同様に回転要素を接続している。
図4の(b)では、図1の(a)の遊星歯車式変速装置における遊星歯車装置G11よりも入力軸E1側に遊星歯車装置G13を配置している。(b)の構成によれば、すべての締結要素(3つのクラッチK1、K2、K3と2つのブレーキB1、B2)を近接してひとまとめに配置できるため、摩擦板を拘束するスプラインを形成した内外の回転部材、締結要素駆動用の油圧シリンダー、油圧回路部品等を共通化、兼用化して、最終的な部品点数の削減や構造のコンパクト化を達成できる。
【0033】
図5〜図7を参照して第2実施例の遊星歯車式変速装置を説明する。第2実施例の遊星歯車式変速装置は、第1実施例の遊星歯車式変速装置の出力軸側に1組の遊星歯車装置と1組のクラッチと1組のブレーキを追加して前進5段型としたものである。
図5は第2実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図、図6、図7は各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
図5中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。図6中、(a)は1速、(b)は2速、(c)は3速の作動状態をそれぞれ示す。図7中、(a)は4速、(b)は5速、(c)は後退の作動状態をそれぞれ示す。
【0034】
図5の(a)に示す前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置は、第1実施例と共通な基本構造を持つ主機構部A21に、副変速装置A22を連結して構成される。副変速装置A22は、シングルピニオン型の遊星歯車装置G24とブレーキB3とクラッチK4と出力軸E2を含む。遊星歯車装置G24は、ブレーキB3を締結することで減速機となり、また、クラッチK4を締結することで全体がロックされて一体に回転する。
【0035】
図5の(a)において、入力軸E1と同一の回転軸線上に左から3組のクラッチK1、K2、K3、3組のブレーキB1、B2、B3、4組の遊星歯車装置G21、G22、G23、G24および出力軸E2が配置される。入力軸E1側の筐体D21は、クラッチK1、K2、K3、ブレーキB1、B2、遊星歯車装置G21、G22、G23、および入力軸E1を格納して回転可能に保持する。出力軸E2側の筐体D22は、遊星歯車装置G24、ブレーキB3、クラッチK4、および出力軸E2を格納して回転可能に保持する。
【0036】
遊星歯車装置G21は、外周のリングギヤR21と中心のサンギヤS21の間に複数のピニオンギヤP21を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP21をピニオンキャリヤC21で一体に拘束する。遊星歯車装置G22は、外周のリングギヤR22と中心のサンギヤS22の間に複数のピニオンギヤP22を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP22をピニオンキャリヤC22で一体に拘束する。遊星歯車装置G23は、外周のリングギヤR23と中心のサンギヤS23の間に複数のピニオンギヤP23を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP23をピニオンキャリヤC23で一体に拘束する。遊星歯車装置G24は、外周のリングギヤR24と中心のサンギヤS24の間に複数のピニオンギヤP24を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP24をピニオンキャリヤC24で一体に拘束する。
第2実施例における遊星歯車装置G21、G22、G23は、クラッチK1、K2、K3、ブレーキB1、B2との接続状態や対応する変速段における機能については、第1実施例における遊星歯車装置G11、G12、G13と同じである。ただし、歯数比α1 、α2 、α3 を異ならせて、最終的な変速比の分布を調整している。
【0037】
クラッチK1は、入力軸E1を遊星歯車装置G21のリングギヤR21に対して締結可能である。クラッチK2は、入力軸E1を遊星歯車装置G21のサンギヤS21および第2遊星歯車装置G22のリングギヤR22に対して締結可能である。クラッチK3は、入力軸E1を遊星歯車装置G22、G23のサンギヤS22、S23に対して締結可能である。クラッチK4は、遊星歯車装置G24のピニオンキャリアC24とサンギヤS24の相対回転をロック可能である。
ブレーキB1は、筐体D21に対して遊星歯車装置G22、G23のサンギヤS22、S23をロックして、サンギヤS22、S23の回転を停止可能である。ブレーキB2は、筐体D21に対して遊星歯車装置G23のピニオンキャリヤC23をロックして、ピニオンキャリヤC23の回転を停止可能である。ブレーキB3は、筐体D22に対して遊星歯車装置G24のサンギヤS24をロックしてサンギヤS24の回転を停止可能である。
【0038】
遊星歯車装置G21、G22のピニオンキャリヤC21、C22と遊星歯車装置G23、G24のリングギヤR23、R24の間に連絡部材N21が配置される。遊星歯車装置G21のサンギヤS21と遊星歯車装置G22のリングギヤR22の間に連絡部材N22が配置される。遊星歯車装置G22、G23のサンギヤS22、S23の間に連絡部材N23が配置される。連絡部材N21、N22、N23は、2以上の回転要素の相対回転を固定して、正逆両方向に回転トルクを伝達する。
【0039】
図5の(b)において一覧表として示すように、1速ではクラッチK2とブレーキB2、B3の組み合わせが締結される。2速ではクラッチK2とブレーキB1、B3の組み合わせが締結される。3速ではクラッチK1、K2とブレーキB3の組み合わせが締結される。4速ではクラッチK1、K2、K4の組み合わせが締結される。5速ではクラッチK1、K4とブレーキB1の組み合わせが締結される。そして、後退ではクラッチK3とブレーキB2、B3の組み合わせが締結される。
それぞれの変速段における変速比は、遊星歯車装置G21、G22、G23、G24の歯数比α1 、α2 、α3 、α4 を用いて、右側の数式のように求められる。この数式を用いて歯数比α1 、α2 、α3 、α4 をそれぞれ0.45、0.56、0.50、0.44と定めた場合の具体的な変速比の数値が右端の欄に示される。
【0040】
図5の(a)に示す前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置は、遊星歯車装置G24とブレーキB3とクラッチK4を除去して、連絡部材N21を出力軸E2に直結すれば、直ちに前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置となる。具体的には、主機構部A21から副変速装置A22を分離して、出力軸を保持する図示しない別筐体を副変速装置A22の代わりに主機構部A21に連結する。主機構部A21は、図1の(a)の第1実施例の構成と実質的に同一である。第2実施例の遊星歯車式変速装置を前進4段型とした場合、各変速段における変速動作および変速比の数式表示は第1実施例と同じである。
図1の(b)と図5の(b)の比較から明らかなように、第2実施例の遊星歯車式変速装置では、第1実施例の1速、2速を副変速装置A22が(1+α4 )だけ減速され、変速比1の変速段の下に新たな3速が追加される。新たな3速では、主機構部A21による変速比1の変速段(3速)を副変速装置A22が(1+α4 )だけ減速する。
【0041】
次に、図6、図7を参照して、前進5段、後退1段の変速各段における遊星歯車装置の具体的な作動状態を説明する。ここでは、主機構部A21のみによる前進4段型の変速段の1速を元の1速、2速を元の2速、3速を元の3速等と呼んでいる。
図6の(a)の1速では、遊星歯車装置G22、G23を協働させて形成した元の1速の減速出力を遊星歯車装置G24でさらに一段と減速する。
ブレーキB2によってピニオンキャリヤC23を停止させた遊星歯車装置G23のリングギヤR23に対して、遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC22の回転が入力される。遊星歯車装置G23は、リングギヤR23と逆方向の増速された回転をサンギヤS23に出力させる。この逆方向の回転が遊星歯車装置G22のサンギヤS22に戻し入力される。サンギヤS22が逆回転する遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC22の回転速度は、サンギヤS22が停止した場合よりも低くくなる。
ピニオンキャリヤC22の回転は、ブレーキB3によってサンギヤS24をロックされた遊星歯車装置G24のリングギヤR24に入力される。ピニオンキャリヤC24からさらに減速された出力が取り出される。
【0042】
図6の(b)の2速では、遊星歯車装置G22が形成した元の2速の減速出力を遊星歯車装置G24でさらに一段と減速する。
ブレーキB1によってサンギヤS22を停止させた遊星歯車装置G22のリングギヤR22に、クラッチK2を通じて入力軸E1の回転が入力される。遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC24からは、リングギヤR22の回転を単純に減速した出力が取り出される。
ピニオンキャリヤC22の回転は、ブレーキB3によってサンギヤS24をロックされた遊星歯車装置G24のリングギヤR24に入力される。ピニオンキャリヤC24からさらに減速された出力が取り出される。
【0043】
図6の(c)の3速では、遊星歯車装置G21の全体を入力軸と一体に回転させる元の3速を遊星歯車速装置G24で減速する。
クラッチK1、K2を通じて入力軸E1の回転が遊星歯車装置G21のリングギヤR21とサンギヤS21に同時入力されると、リングギヤR21とサンギヤS21の相対回転が失われて遊星歯車装置G21の全体が入力軸E1と一体に回転する。ピニオンキャリヤC21から取り出された出力が、ブレーキB3によってサンギヤS24をロックされた遊星歯車装置G24のリングギヤR24に入力される。ピニオンキャリヤC24から一段減速された出力が取り出される。
【0044】
図7の(a)の4速では、遊星歯車装置G21、G24を両方ロックさせて入力軸E1の回転をそのまま出力軸E2に伝達する。クラッチK4を締結してピニオンキャリヤC24とサンギヤS24の相対回転を失わせた遊星歯車装置G24は全体が一体に回転する。遊星歯車装置G21をロックさせて形成した元の3速の回転が、一体に回転する遊星歯車装置G24を経由して出力軸E2にそのまま伝達される。
【0045】
図7の(b)の5速では、遊星歯車装置G21、G22を協働させて形成した元の4速を、一体に回転する遊星歯車装置G24を経由して出力軸E2にそのまま出力させる。ブレーキB1によってサンギヤS22をロックされた遊星歯車装置G22は、出力軸E2の回転を増速してリングギヤR22に出力する。リングギヤR22の増速された回転は、遊星歯車装置G21のサンギヤS21に戻し入力される。第1遊星歯車装置G21のサンギヤS21をリングギヤR21よりも高速回転させることで、ピニオンキャリヤC21からは、変速比1以下のオーバードライブ変速段の回転速度が出力される。
【0046】
図7の(c)の後退では、ブレーキB2によってピニオンキャリヤC23をロックされた遊星歯車装置G23が単純な反転と減速を行うとともに、遊星歯車装置G24がこの反転出力をさらに一段減速する。クラッチK3を通じて入力軸E1の回転が遊星歯車装置G23のサンギヤS23に入力されると、減速された逆方向の回転がリングギヤR23から出力されて、遊星歯車装置G24のリングギヤR24に入力される。ブレーキB3によってサンギヤS24をロックされた遊星歯車装置G24は、リングギヤR24の回転を一段減速してピニオンキャリヤC24に出力する。
【0047】
以上のように構成された第2実施例の遊星歯車式変速装置によれば、副変速装置A22の有無によって、遊星歯車式変速装置の前進4段型と前進5段型を容易に変更できる。従って、前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置の間で最大限の部品共有化が実現できる。そして、前進4段型とした場合には、第1実施例と同様な効果を発揮する。
また、走行中に常用され、長時間に渡って選択され続ける可能性の高い変速比1の変速段やオーバードライブ変速段では、遊星歯車装置G24の噛み合いをロックさせて一体に回転させるため歯面の摩擦や発熱が抑制される。従って、前進4段型とした場合に比較しても燃費が悪化することがない。
【0048】
第2実施例では、遊星歯車装置G21が発明の第1遊星歯車装置、遊星歯車装置G22が発明の第2遊星歯車装置、遊星歯車装置G23が発明の第3遊星歯車装置、遊星歯車装置G24が発明の第4遊星歯車装置にそれぞれ相当し、ブレーキB3が発明の第3ブレーキ、クラッチK4が発明の第4クラッチにそれぞれ相当し、連絡部材N21が発明の第1連絡手段、連絡部材N22が発明の第2連絡手段、連絡部材N23が発明の第3連絡手段にそれぞれ相当する。
なお、第2実施例では、主機構部A21に副変速装置A22を連結する構成としたが、前進5段型に適合させた共通の筐体の内部から、遊星歯車装置G24、ブレーキB3、クラッチK5を除去して前進4段型とする構成としてもよい。
また、遊星歯車装置G24の配置は、出力軸E2の側に限定されず、図4を参照して第1実施例で説明したように種々変更可能である。
また、副変速装置A22における遊星歯車装置G24に対するブレーキB3、クラッチK4の接続を異ならせてもよい。例えば、遊星歯車装置G24のリングギヤR24とサンギヤS24の間にクラッチK4を設けてもよい。
また、遊星歯車装置G24をダブルピニオン型として、そのサンギヤを連絡部材N21に、そのリングギヤを出力軸E2に接続し、ブレーキB3でピニオンキャリヤをロックする構成としてもよい。つまり、順方向の減速出力を取り出し得るように、入力、出力、ブレーキとの接続を調整することによって、遊星歯車装置G24をダブルピニオン型とすることが可能である。
【0049】
図8〜図10を参照して第3実施例の遊星歯車式変速装置を説明する。第3実施例の遊星歯車式変速装置は、第1実施例の遊星歯車式変速装置の出力軸側に副変速装置(1組の遊星歯車装置と1組のクラッチと1組のブレーキ)を追加して前進5段型としたものである。
図8は第3実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図、図9、図10は各変速段における遊星歯車装置の作動図である。図8中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。図9中、(a)は1速、(b)は2速、(c)は3速の作動状態をそれぞれ示す。図10中、(a)は4速、(b)は5速、(c)は後退の作動状態をそれぞれ示す。
【0050】
図8の(a)において、第1実施例と共通な基本構造を持つ主機構部A31に遊星歯車装置G34とブレーキB3と連絡部材N34、N35を追加することにより、前進5段型の遊星歯車式変速装置が構成される。ブレーキB3を締結すると、遊星歯車装置G34が出力軸E2の反転出力を形成して、遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC34に戻し入力する。
【0051】
入力軸E1と同一の回転軸線上に左から3組のクラッチK1、K2、K3、3組のブレーキB1、B2、B3、4組の遊星歯車装置G31、G32、G33、G34および出力軸E2が配置される。筐体D31は、前進5段型と前進4段型に共通なもので、これらの回転要素を格納して回転可能に保持するが、遊星歯車装置G34、ブレーキB3、および連絡部材N34、N35については、取り付け取り外しが容易に形成されている。
【0052】
遊星歯車装置G31は、外周のリングギヤR31と中心のサンギヤS31の間に複数のピニオンギヤP31を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP31をピニオンキャリヤC31で一体に拘束する。遊星歯車装置G32は、外周のリングギヤR32と中心のサンギヤS32の間に複数のピニオンギヤP32を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP32をピニオンキャリヤC32で一体に拘束する。遊星歯車装置G33は、外周のリングギヤR33と中心のサンギヤS33の間に複数のピニオンギヤP33を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP33をピニオンキャリヤC33で一体に拘束する。遊星歯車装置G34は、外周のリングギヤR34と中心のサンギヤS34の間に複数のピニオンギヤP34を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP34をピニオンキャリヤC34で一体に拘束する。
第3実施例における遊星歯車装置G31、G32、G33は、クラッチK1、K2、K3、ブレーキB1、B2との接続状態や対応する変速段における機能については、第1実施例における遊星歯車装置G11、G12、G13と同じである。ただし、歯数比α1 、α2 、α3 を異ならせて、最終的な変速比の分布を調整している。
【0053】
クラッチK1は、入力軸E1を遊星歯車装置G31のリングギヤR31に対して締結可能である。クラッチK2は、入力軸E1を遊星歯車装置G31のサンギヤS31および第2遊星歯車装置G32のリングギヤR32に対して締結可能である。クラッチK3は、入力軸E1を遊星歯車装置G32、G33のサンギヤS32、S33に対して締結可能である。
ブレーキB1は、筐体D31に対して遊星歯車装置G32、G33のサンギヤS32、S33をロックして、サンギヤS32、S33の回転を停止可能である。ブレーキB2は、筐体D31に対して遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33をロックして、ピニオンキャリヤC33の回転を停止可能である。ブレーキB3は、筐体D31に対して遊星歯車装置G34のピニオンキャリヤC34をロックしてピニオンキャリヤC34の回転を停止可能である。
【0054】
遊星歯車装置G31、G32のピニオンキャリヤC31、C32と、遊星歯車装置G33のリングギヤR33と、出力部材E2の間に連絡部材N31が配置される。遊星歯車装置G31のサンギヤS31と遊星歯車装置G32のリングギヤR32の間に連絡部材N32が配置される。遊星歯車装置G32、G33のサンギヤS32、S33の間に連絡部材N33が配置される。遊星歯車装置G34のリングギヤR34と連絡部材N31の間に連絡部材N34が配置される。遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33と遊星歯車装置G34のサンギヤS34の間に連絡部材N35が配置される。これらの連絡部材N31、N32、N33、N34、N35は、複数の回転要素の相対回転を固定して、正逆両方向に回転トルクを伝達する。
【0055】
図8の(b)において一覧表として示すように、1速ではクラッチK2とブレーキB3の組み合わせが締結される。2速ではクラッチK2とブレーキB2の組み合わせが締結される。3速ではクラッチK2とブレーキB1の組み合わせが締結される。4速ではクラッチK1、K2の組み合わせが締結される。5速ではクラッチK1とブレーキB1の組み合わせが締結される。そして、後退ではクラッチK3とブレーキB3の組み合わせが締結される。
それぞれの変速段における変速比は、遊星歯車装置G31、G32、G33、G34の歯数比α1 、α2 、α3 、α4 を用いて、右側の数式のように求められる。この数式を用いて歯数比α1 、α2 、α3 、α4 をそれぞれ0.57、0.44、0.54、0.77と定めた場合の具体的な変速比の数値が右端の欄に示される。
【0056】
図8の(a)に示す前進5段型の遊星歯車式変速装置は、遊星歯車装置G34とブレーキB3を除去すれば、直ちに前進4段型となる。連絡部材N34、N35を一緒に除去してもよい。筐体D31の内部には、遊星歯車装置G34やブレーキB3を格納していた空間が残るが、第1実施例のように出力軸E2を交換する必要が無い。主機構部A31は、図1の(a)に示す第1実施例の構成と実質的に同一である。第3実施例の遊星歯車式変速装置を前進4段型とした場合、各変速段における変速動作および変速比の数式表示は第1実施例と同じである。
図1の(b)と図8の(b)の比較から明らかなように、第3実施例の遊星歯車式変速装置では、ブレーキB3を締結した変速段でのみ遊星歯車装置G34が出力に関与する。第1実施例の1速〜4速がそのまま2速〜5速にシフトして、第1実施例の1速の下に遊星歯車装置G34を関与させた新しい1速が追加される。後退でも遊星歯車装置G34による減速が付加される。
【0057】
次に、図9、図10を参照して、前進5段、後退1段の変速各段における遊星歯車装置の具体的な作動状態を説明する。ここでは、主機構部A31のみによる前進4段型の変速段の1速を元の1速、2速を元の2速、3速を元の3速等と呼んでいる。
図9の(a)の1速では、遊星歯車装置G32、G33、G34を協働させて減速を行う。リングギヤR32入力を減速してピニオンキャリヤC32に出力する遊星歯車装置G32に対して遊星歯車装置G33が補助的に機能し、遊星歯車装置G33に対して遊星歯車装置G34が補助的に機能する。
ブレーキB3によってピニオンキャリヤC34を停止させた遊星歯車装置G34のリングギヤR34に対して、遊星歯車装置G32のピニオンキャリヤC32の回転が入力される。遊星歯車装置G34は、リングギヤR34と逆方向の増速された回転をサンギヤS34に出力する。この逆方向の回転が遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33に戻し入力される。
遊星歯車装置G34によってピニオンキャリヤC33を逆回転された遊星歯車装置G33のリングギヤR33に対して、遊星歯車装置G32のピニオンキャリヤC32の回転が入力される。遊星歯車装置G33は、リングギヤR33と逆方向の増速された回転をサンギヤS33に出力させる。サンギヤS33の逆方向の回転速度は、ピニオンキャリヤC33が逆方向に回転しているため、ピニオンキャリヤC33が停止された元の1速の場合よりも高まっている。この回転速度を高められた逆方向の回転が遊星歯車装置G32のサンギヤS32に戻し入力される。サンギヤS32が高い回転速度で逆回転する遊星歯車装置G32のピニオンキャリヤC32からは、サンギヤS32が低い回転速度で逆回転する場合よりも一段と低い回転速度が出力される。
【0058】
図9の(b)の2速、図9の(c)の3速、図10の(a)の4速、図10の(b)の5速では、ブレーキB3を解放した遊星歯車装置G34が空転状態となって出力にまったく関与しない。従って、遊星歯車装置G31、G32、G33を第1実施例の遊星歯車装置G11、G12、G13と同様に機能させて、元の1速、2速、3速、4速と同様な変速が行われる。
【0059】
図10の(c)の後退では、遊星歯車装置G33による反転と減速に遊星歯車装置G34が補助的に機能する。
ブレーキB3によってピニオンキャリヤC34を停止させた遊星歯車装置G34のリングギヤR34に対して、遊星歯車装置G33のリングギヤR33の回転(逆方向)が入力される。遊星歯車装置G34は、リングギヤR34と逆方向の増速された回転(順方向)をサンギヤS34に出力する。この順方向の回転が遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33に戻し入力される。
ピニオンキャリヤC33が順方向に回転する星歯車装置G33のリングギヤR33からは、ピニオンキャリヤC33が停止された元の後退の場合よりも減速された逆方向の回転が出力される。
【0060】
以上のように構成された第3実施例の遊星歯車式変速装置によれば、遊星歯車装置G34とブレーキB3の有無によって、遊星歯車式変速装置の前進4段型と前進5段型を容易に変更できる。従って、前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置の間で最大限の部品共有化が実現できる。そして、前進4段型とした場合には、第1実施例と同様な効果を発揮する。
また、使用される機会の少ない1速と後退の変速段でのみ遊星歯車装置G34を機能させて、その他の変速段では遊星歯車装置G34を空転状態として歯面の摩擦や発熱を抑制しているから、前進4段型とした場合に比較して燃費が悪化しない。
さらに、1速と後退の変速段について変速比を高めているから、ぬかるみの脱出や牽引発進等で強大なパワーを要求されても十分な対応が可能である。
【0061】
第3実施例では、遊星歯車装置G31が発明の第1遊星歯車装置、遊星歯車装置G32が発明の第2遊星歯車装置、遊星歯車装置G33が発明の第3遊星歯車装置、遊星歯車装置G34が発明の第4遊星歯車装置にそれぞれ相当し、ブレーキB3が発明の第3ブレーキに相当し、連絡部材N31が発明の第1連絡手段、連絡部材N32が発明の第2連絡手段、連絡部材N33が発明の第3連絡手段にそれぞれ相当する。
なお、第3実施例では、前進4段型と前進5段型の間で筐体D31を共有する構成としたが、第2実施例のように筐体を分割して、前進4段型に適合させた容量の筐体を使用してもよい。
また、後退の変速段で遊星歯車装置G34を機能させない等、図8の(a)の構成を用いて図8の(b)に示された以外の締結要素の組み合わせを利用することも可能である。
また、遊星歯車装置G34は連絡部材N31の回転から逆方向の戻し出力を形成できるように、回転要素を選択して入力、出力、およびブレーキB3にそれぞれ接続したダブルピニオン型の遊星歯車装置で遊星歯車装置G34を置き換えてもよい。いずれにせよ、「出力軸E2の回転から逆方向の戻し出力を形成して遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33に戻し入力する機能」を満たせるならば、第1実施例の1速の下に新しい変速段を追加できる。
ところで、シングルピニオン型またはダブルピニオン型の遊星歯車装置を使用して「出力軸E2の回転から順方向の戻し出力を形成して遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33に戻し入力させる」場合には、第1実施例の1速よりも出力軸E2が増速される。このようにして、第1実施例の1速と2速の間に新しい変速段を追加することも可能である。
さらに、遊星歯車装置G34の配置は、出力軸E2の側に限定されず、図4を参照して第1実施例で説明したように種々変更可能である。
【0062】
図11は第4実施例の遊星歯車式変速装置の説明図である。図中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。ここでは、第1実施例の連絡部材N13に一方向クラッチを組み込んで不必要なエンジンブレーキを遮断している。
第4実施例の遊星歯車装置G11、G12、G13、クラッチK1、K2、K3、ブレーキB1、B2は、第1実施例と同一に構成され、同一に配置、接続されている。これらの共通する部分については説明を省略する。
【0063】
図1の(a)の連絡部材N13は、ブレーキB1に接続された部材と遊星歯車装置G13のサンギヤS13に接続された部材が途中で合流しており、合流後の端部が遊星歯車装置G12のサンギヤS12まで導かれて接続されている。
図11の(a)において、第4実施例では、この合流部分と遊星歯車装置G12のサンギヤS12の間に一方向クラッチF1を直列に配置し、さらに、一方向クラッチF1に対してクラッチK5を並列に配置している。
一方向クラッチF1は、遊星歯車装置G12のサンギヤS12の片方向の回転について合流点側の部分(ブレーキB1、サンギヤS13)を連動させるが、逆方向の回転に対しては連動させない空転とする。一方向クラッチF1は、図2、図3の該当する部材が実線で示される変速段において出力に関与する。
クラッチK5は、締結されると両方向の回転駆動を伝達して、一方向クラッチF1による動作を不可能にする。
【0064】
図11の(b)において、Kを丸で囲んで駆動時の動作または締結、Eを丸で囲んでエンジンブレーキ時の動作または締結を示す。
一方向クラッチF1は、1速、2速の駆動時に動作して、ブレーキB1または遊星歯車装置G13のサンギヤS13に遊星歯車装置G12のサンギヤS12を連動させて、リングギヤR12からピニオンキャリヤC12への動力伝達(駆動)を可能とするが、1速、2速の惰性走行時(エンジンブレーキが不必要)には、遊星歯車装置G12のサンギヤS12を空転させてピニオンキャリヤC12からリングギヤR12への動力伝達(エンジンブレーキ)を遮断する。
従って、1速、2速でエンジンブレーキが必要な場合には、クラッチK5を締結して第1実施例のような両方向の伝達とし、ブレーキB1または遊星歯車装置G13のサンギヤS13に遊星歯車装置G12のサンギヤS12を両方向に連動させて、遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12からリングギヤR12への動力伝達(エンジンブレーキ)も可能にする。
一方、4速では遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12からリングギヤR12への動力伝達するから、図2の(b)と図3の(b)の比較で明らかなようにサンギヤS12への負荷状態が1速、2速とは逆となる。そこで、クラッチK5を締結して、遊星歯車装置G11のサンギヤS11への戻し回転を有効にすることによって、リングギヤR11(入力軸E1)からピニオンキャリヤC11(出力軸E2)への動力伝達を可能にしている。
【0065】
以上のように構成された第4実施例の遊星歯車式変速装置によれば、不必要なエンジンブレーキが遮断されて車体の速度振動が無くなり、第1実施例に比較して自動車の運転性が向上する。一方、下り坂等でエンジンブレーキが必要な場合にはクラッチK5を締結して有効なエンジンブレーキを利用できる。
第4実施例におけるクラッチK5は発明の第5クラッチ、一方向クラッチF1は発明の一方向クラッチに相当する。
【0066】
図12は第4実施例の変形例の説明図である。ここでは、図4の(b)に示す構成と同様に、遊星歯車装置G13を最も入力軸E1側に配置して、クラッチK1、K2、K3とブレーキB1、B2をひとまとめに配置している。そして、回転要素の相対的な連絡関係は図11の(a)と同一である。従って、各速各段における遊星歯車装置G11、G12、G13の動作や変速比は、第4実施例で説明したとおりである。
【0067】
図13は第5実施例の遊星歯車式変速装置の説明図である。図中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。ここでは、第2実施例の連絡部材N23に一方向クラッチを組み込んで不要なエンジンブレーキを遮断している。
第5実施例の遊星歯車装置G21、G22、G23、G24、クラッチK1、K2、K3、K4、ブレーキB1、B2、B3は、第2実施例と同一に構成され、同一に配置、接続されている。また、主機構部A23は、図5の(a)の主機構部A21に一方向クラッチF1およびクラッチK5を追加した構成、副変速装置A24は、図5の(a)の副変速装置A22に一方向クラッチF2を追加した構成である。これらの共通する部分については説明を省略する。
【0068】
図5の(a)の連絡部材N23は、ブレーキB1に接続された部材と遊星歯車装置G23のサンギヤS23に接続された部材が途中で合流しており、合流後の端部が遊星歯車装置G22のサンギヤS22まで導かれて接続されている。
図13の(a)において、第5実施例では、この合流部分と遊星歯車装置G22のサンギヤS22の間に一方向クラッチF1を直列に配置し、さらに、一方向クラッチF1に対してクラッチK5を並列に配置している。また、ブレーキB3と並列に一方向クラッチF2を配置している。
【0069】
一方向クラッチF1は、遊星歯車装置G22のサンギヤS22の順方向の回転についてはブレーキB1とサンギヤS23を連動させるが、逆方向の回転については空転する。一方向クラッチF1は、図6、図7の該当する部材が実線で示される変速段において出力に関与する。
クラッチK5は、締結されると両方向の回転駆動を伝達する。
一方向クラッチF2は、ブレーキB3を解放した状態でも遊星歯車装置G24のサンギヤS24の片方向の回転をロックし、反対方向の回転を空転させる。
【0070】
図13の(b)において、Kを丸で囲んで駆動時の動作または締結、Eを丸で囲んでエンジンブレーキ時の動作または締結を示す。
一方向クラッチF1は、1速、2速の駆動時に動作して、ブレーキB1または遊星歯車装置G23のサンギヤS23に遊星歯車装置G22のサンギヤS22を連動させて、リングギヤR22からピニオンキャリヤC22への動力伝達(駆動)を可能とするが、1速、2速の惰性走行時(エンジンブレーキが邪魔)には、遊星歯車装置G22のサンギヤS22を空転させてピニオンキャリヤC22からリングギヤR22への動力伝達(エンジンブレーキ)を遮断する。
従って、1速、2速でエンジンブレーキが必要な場合には、クラッチK5を締結して第2実施例のような両方向の伝達とし、ブレーキB1または遊星歯車装置G23のサンギヤS23に遊星歯車装置G22のサンギヤS22を両方向に連動させて、遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC22からリングギヤR22への動力伝達(エンジンブレーキ)も可能にする。
3速では、主機構部A23の遊星歯車装置G21、G22が一体に回転して入力軸E2の回転がそのまま遊星歯車装置G24のリングギヤR24に入力されており、一方向クラッチF1ではエンジンブレーキを遮断できない。そこで、副変速装置A24に一方向クラッチF2を設けて、遊星歯車装置G24を一方向について空転可能にしている。すなわち、リングギヤR24がピニオンキャリヤC24を順方向に駆動する駆動状態では、サンギヤS24をロックするが、ピニオンキャリアC24がリングギヤR24を順方向に駆動する惰性走行状態(エンジンブレーキが不必要)ではサンギアS24を空転させる。これにより、エンジンブレーキは、主機構部A23には伝達されず、入力軸E2にエンジンブレーキの負荷が及ばない。
【0071】
以上のように構成された第5実施例の遊星歯車式変速装置によれば、不必要なエンジンブレーキが遮断されて車体の速度振動が無くなり、第2実施例に比較して自動車の運転性が向上する。一方、下り坂等でエンジンブレーキが必要な場合にはクラッチK5を締結して有効なエンジンブレーキを利用できる。
【0072】
図14は第6実施例の遊星歯車式変速装置の説明図である。図中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。ここでは、第3実施例の連絡部材N33に一方向クラッチを組み込んで不必要なエンジンブレーキを遮断している。
第6実施例の遊星歯車装置G31、G32、G33、G34、クラッチK1、K2、K3、ブレーキB1、B2、B3は、第3実施例と同一に構成され、同一に配置、接続されている。また、主機構部A33は、図8の(a)の主機構部A31に一方向クラッチF1およびクラッチK5を追加した構成である。従って、これらの共通する部分については説明を省略する。
【0073】
図8の(a)の連絡部材N33は、ブレーキB1に接続された部材と遊星歯車装置G33のサンギヤS33に接続された部材が途中で合流しており、合流後の端部が遊星歯車装置G32のサンギヤS32まで導かれて接続されている。
図14の(a)において、第6実施例では、この合流部分と遊星歯車装置G32のサンギヤS32の間に一方向クラッチF1を直列に配置し、さらに、一方向クラッチF1に対してクラッチK5を並列に配置している。また、ブレーキB3と並列に一方向クラッチF2を配置している。
【0074】
一方向クラッチF1は、遊星歯車装置G32のサンギヤS32の片方向の回転についてはブレーキB3とサンギヤS33を連動させるが、逆方向の回転については空転する。一方向クラッチF1は、図9、図10の該当する部材が実線で示される変速段において出力に関与する。
クラッチK5は、締結されると両方向の回転駆動を伝達する。
一方向クラッチF2は、ブレーキB3を解放した状態でも遊星歯車装置G24のサンギヤS24の片方向の回転をロックし、反対方向の回転を空転させる。
【0075】
図14の(b)において、Kを丸で囲んで駆動時の動作または締結、Eを丸で囲んでエンジンブレーキ時の動作または締結を示す。
一方向クラッチF1は、1速、2速、3速の駆動時に動作し、ブレーキB1または遊星歯車装置G33のサンギヤS33に遊星歯車装置G32のサンギヤS32を連動させて、リングギヤR32からピニオンキャリヤC32への動力伝達(駆動)を可能とするが、1速、2速、3速の惰性走行時(エンジンブレーキが不必要)には、遊星歯車装置G32のサンギヤS32を空転させて、ピニオンキャリヤC32からリングギヤR32への動力伝達(エンジンブレーキ)を遮断する。
従って、1速、2速、3速でエンジンブレーキが必要な場合には、クラッチK5を締結して第3実施例のような両方向の伝達とし、ブレーキB1または遊星歯車装置G33のサンギヤS33に遊星歯車装置G32のサンギヤS32を両方向に連動させて、遊星歯車装置G32のピニオンキャリヤC32からリングギヤR32への動力伝達(エンジンブレーキ)も可能にする。
ところで、1速の駆動時には、ブレーキB3を解放して一方向クラッチF2による片方向の締結としている。1速では、遊星歯車装置G34で形成した出力を遊星歯車装置G33に戻し入力しており、出力軸E2が入力軸E1を駆動するエンジンブレーキの状態では、ピニオンキャリヤC34を空転させて、この戻し入力を遮断している。
【0076】
以上のように構成された第6実施例の遊星歯車式変速装置によれば、不必要なエンジンブレーキが遮断されて車体の速度振動が無くなり、第3実施例に比較して自動車の運転性が向上する。一方、下り坂等でエンジンブレーキが必要な場合にはクラッチK5を締結して有効なエンジンブレーキを利用できる。
【0077】
【発明の効果】
本発明の遊星歯車式変速装置によれば、前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置に1組の遊星歯車装置と1〜2組の締結要素を追加して、前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置が得られる。従って、前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置間で最大限の部品共通化が可能となり、製作コストの低減や信頼性の向上が容易となる。そして、前進4段型とした場合でも、必要な遊星歯車装置数が3、クラッチ数が3、ブレーキ数が2にとどまり、従来の専用の前進4段型に比較してこれらの必要数を増さないで済む。また、前進4段型とした場合には、不要な遊星歯車装置とブレーキが除去されるから、無駄な部品を内部に抱え込んだり、無駄な部品が空転して損失を高めたりする心配が無い。従って、遊星歯車式変速装置の小型化、軽量化、高い伝達効率と低燃費の確保が容易となり、製作コストもさらに低減される。
また、常用される変速段では遊星歯車装置がリングギヤ入力であるから、歯の大きさを縮小して歯数比の自由度を高めたり、遊星歯車装置を小型化して自動変速機の小型化、軽量化が実現される。
さらに、常用される変速段では、変速に関与する遊星歯車装置の数が1〜2と少ないため、伝達効率が高く騒音レベルも抑制される。
【0078】
一方向クラッチとクラッチを並列に配置した連絡手段を採用して不要なエンジンブレーキを遮断する構成とした場合、入力部材側の出力変動に起因するエンジンブレーキ効果が遮断されて車体速度に影響せず、車体が不愉快な速度振動を起こさないで快適な惰性走行が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図2】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図3】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図4】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図5】第2実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図6】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図7】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図8】第3実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図9】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図10】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図11】第4実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図12】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図13】第4実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図14】第4実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【符号の説明】
B1、B2、B3 ブレーキ
K1、K2、K3、K4、K5 クラッチ
E1 入力軸
E2 出力軸
D1、D21、D31 筐体
A21、A23、A31、A33 主機構部
A22、A24 副変速装置
C11、C12、C13、C21、C22、C23、C24、C31、C32、C33、C34 ピニオンキャリヤ
G11、G12、G13、G21、G22、G23、G31、G32、G33 遊星歯車装置
N11、N12、N13、N21、N22、N23、N31、N32、N33、N34、N35 連絡部材
P11、P12、P13、P21、P22、P23、P24、P31、P32、P33、P34 ピニオンギヤ
R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R34 リングギヤ

Claims (4)

  1. 入力部材および出力部材の回転軸線上に配置されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、および第3遊星歯車装置を有する遊星歯車式変速装置において、
    前記出力部材はその内側に他の軸を囲まない中心軸として前記回転軸線上に配置され、
    第1遊星歯車装置のリングギヤを前記入力部材に対して締結可能な第1クラッチと、
    第1遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第2クラッチと、
    第2遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第3クラッチと、
    第2遊星歯車装置のサンギヤの回転を停止可能な第1ブレーキと、
    第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転を停止可能な第2ブレーキと、
    第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第3遊星歯車装置のリングギヤと前記出力部材の間を回転連絡する第1連絡手段と、
    第1遊星歯車装置のサンギヤと第2遊星歯車装置のリングギヤの間を回転連絡する第2連絡手段と、
    第2遊星歯車装置のサンギヤと第3遊星歯車装置のサンギヤの間を回転連絡する第3連絡手段と、を有することを特徴とする前進4段、後退1段の変速が可能な遊星歯車式変速装置。
  2. 入力部材および出力部材の回転軸線上に配置されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、および第3遊星歯車装置を有する遊星歯車式変速装置において、
    第1遊星歯車装置のリングギヤを前記入力部材に対して締結可能な第1クラッチと、
    第1遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第2クラッチと、
    第2遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第3クラッチと、
    第2遊星歯車装置のサンギヤの回転を停止可能な第1ブレーキと、
    第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転を停止可能な第2ブレーキと、
    第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第3遊星歯車装置のリングギヤの間を回転連絡する第1連絡手段と、
    第1遊星歯車装置のサンギヤと第2遊星歯車装置のリングギヤの間を回転連絡する第2連絡手段と、
    第2遊星歯車装置のサンギヤと第3遊星歯車装置のサンギヤの間を回転連絡する第3連絡手段と、を有し、
    第1連絡手段の回転を入力して減速し、前記出力部材に出力する副変速装置を設け、
    前記副変速装置は、前記回転軸線上に配置されたシングルピニオン型またはダブルピニオン型の第4遊星歯車装置と、
    第4遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤのうち1つの回転を停止可能な第3ブレーキと、
    第4遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤのうち2つの相対回転をロック可能な第4クラッチと、を有することを特徴とする前進5段、後退1段の変速が可能な遊星歯車式変速装置。
  3. 入力部材および出力部材の回転軸線上に配置されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、および第3遊星歯車装置を有する遊星歯車式変速装置において、
    第1遊星歯車装置のリングギヤを前記入力部材に対して締結可能な第1クラッチと、
    第1遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第2クラッチと、
    第2遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第3クラッチと、
    第2遊星歯車装置のサンギヤの回転を停止可能な第1ブレーキと、
    第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転を停止可能な第2ブレーキと、
    第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第3遊星歯車装置のリングギヤと前記出力部材の間を回転連絡する第1連絡手段と、
    第1遊星歯車装置のサンギヤと第2遊星歯車装置のリングギヤの間を回転連絡する第2連絡手段と、
    第2遊星歯車装置のサンギヤと第3遊星歯車装置のサンギヤの間を回転連絡する第3連絡手段と、を有し、
    第1連絡手段の回転から戻し出力を形成して、第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤに入力する副変速装置を設け、
    前記副変速装置は、前記回転軸線上に配置されたシングルピニオン型またはダブルピニオン型の第4遊星歯車装置と、
    第4遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤのうち1つの回転を停止可能な第3ブレーキと、を有することを特徴とする前進5段、後退1段の変速が可能な遊星歯車式変速装置。
  4. 第3連絡手段は、第3遊星歯車装置のサンギヤおよび第1ブレーキを一体に回転させる連結部材と第2遊星歯車装置のサンギヤとの間に直列に配置した一方向クラッチと、
    前記一方向クラッチと並列に配置した第5クラッチと、を有することを特徴とする請求項1、2、または3記載の遊星歯車式変速装置。
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