JP3619040B2 - 内燃機関の燃焼状態検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の燃焼時に生じるイオン量の変化を検出することにより内燃機関の燃焼状態を検出する燃焼状態検出装置に関し、特に検出するイオン電流と相似の複数の電流を生成して検出機能の多様化を図ることができる内燃機関の燃焼状態検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、複数気筒により駆動される内燃機関においては、各気筒の燃焼室内に導入された空気および燃料の混合気をピストンの上昇により圧縮し、燃焼室内に設置された点火プラグに点火用高電圧を印加して電気火花を発生させ、混合気の燃焼時に発生する爆発力をピストン押し下げ力に変換することにより、内燃機関の回転出力として取り出している。
【0003】
このように燃焼室内において燃焼が行われると、燃焼室内の分子が電離(イオン化)するので、燃焼室内に設置されたイオン電流検出用電極(通常、点火プラグの電極が用いられる)にバイアス電圧を印加すると、電荷を有するイオンが点火プラグ間をイオン電流として流れることが知られている。
【0004】
また、イオン電流は、燃焼室内の燃焼状態により敏感に変化するため、イオン電流の発生状態を検出することにより内燃機関の燃焼状態を検出できることが知られている。
【0005】
図6は従来の内燃機関の燃焼状態検出装置の一例を示す構成図である。
図において、点火コイル1の1次巻線1aの一端は電源端子VBに接続され、その他端は、1次電流I1を通電遮断するためのスイッチング素子としてのエミッタ接地のパワートランジスタ2を介してグランドに接続される。
【0006】
点火コイル1の2次巻線1bは、1次巻線1aと共にトランスを構成しており、2次巻線1bの高圧側は、各気筒(図示せず)に対応した点火プラグ3の一端に接続されており、点火制御時に負極性の高電圧を出力する。
【0007】
対向電極からなる点火プラグ3は、点火用高電圧が印加されることにより、放電して各気筒内の混合気を着火する。
なお、点火コイル1および点火プラグ3は、各気筒毎に並設されているが、ここでは、代表的に一組の点火コイル1および点火プラグ3のみを示している。
【0008】
2次巻線1bの低圧側は、電流制限手段を構成する並列接続の抵抗器4およびダイオード5を介してバイアス回路6に接続される。
抵抗器4は、バイアス回路6から2次巻線1bを介して点火プラグ3に流れる放電電流を抑制し、1次巻線1aへの通電開始時に2次巻線1bの高圧側に発生する電圧を抑制する。
【0009】
また、ダイオード5は、点火用高電圧の印加時に流れる2次電流(点火電流)I2の方向が順方向となるように挿入されており、点火制御時における抵抗器4の両端間の電位差を抑制するようになっている。
バイアス回路6は、抵抗器4と2次巻線1bを介して、点火極性とは逆極性すなわち正極性のバイアス電圧を点火プラグ3に印加し、燃焼時に発生するイオン量に対応したイオン電流を実質的に検出する。
【0010】
バイアス回路6は電流−電圧変換回路7に接続され、この電流−電圧変換回路7はバイアス電圧によって流れるイオン電流を電圧変換し、イオン電流検出信号として電圧信号分配回路8に供給する。
電圧信号分配回路8は電圧に変換されたイオン電流検出信号(イオン信号)を分配し、それぞれイオン信号よりノック信号を取り出すノック検出信号発生回路9と、イオン信号より燃焼/失火を判定する信号を生成する燃焼/失火信号発生回路10に供給する。
【0011】
そして、ノック検出信号発生回路9および燃焼/失火信号発生回路10からの出力信号は、ECU(電子制御装置)11に供給され、ECU11は、燃焼/失火信号発生回路10からの出力信号に基づいて内燃機関の燃焼状態を判定し、燃焼状態の悪化を検出した場合には、不都合が生じないように適宜対応制御を行う。
【0012】
また、ECU11は、ノック検出信号発生回路9やクランク角センサ12等各種センサ(図示せず)から得られる運転条件に基づいて点火時期等を演算し、パワートランジスタ2に対する点火信号V1のみならず、各気筒毎のインジェクタ(図示せず)に対する燃料噴射信号や各種アクチュエータ(スロットルバルブやISCバルブ等)に対する駆動信号を出力する。
【0013】
図7は図6のバイアス回路、電流−電圧変換回路および電圧信号分配回路の部分の具体的回路構成の一例を示す回路構成図である。
図において、バイアス回路6は、並列接続の抵抗器4およびダイオード5を介して2次巻線1bの低圧側に接続されたコンデンサ6aと、コンデンサ6aとグランドとの間に挿入されたダイオード6bと、コンデンサ6aに並列接続されたバイアス電圧制限用のツェナーダイオード6cとを含む。
【0014】
コンデンサ6aおよびダイオード6bからなる直列回路並びにコンデンサ6aに並列接続されたツェナーダイオード6cは、ダイオード5を介して2次巻線1bの低圧側とグランドとの間に挿入され、点火電流発生時にコンデンサ6aにバイアス電圧を充電するための充電経路を構成している。
【0015】
コンデンサ6aは、パワートランジスタ2のオフ時(1次巻線1aの通電電流の遮断時)において、2次巻線1bから出力される高電圧で放電した点火プラグ3を介して流れる2次電流により充電される。この充電電圧は、ツェナーダイオード6cにより所定のバイアス電圧(たとえば、数100V程度)に制限され、実質的にイオン電流検出用のバイアス手段すなわち電源として機能する。
【0016】
ダイオード6bに並列接続された電流−電圧変換回路7としての抵抗器7aは、バイアス電圧によって流れるイオン電流を電圧変換し、イオン電流検出信号として電圧分配回路8に供給する。
電圧信号分配回路8は複数のバッファ8aと8bを含み、バッファ8aの出力側はノック検出信号発生回路9に接続され、バッファ8bの出力側は燃焼/失火信号発生回路10に接続される。
【0017】
次に、図8を参照しながら、図6および図7に示した従来の内燃機関の燃焼状態検出装置の動作について説明する。
通常、ECU11は、運転条件に応じて点火時期等を演算し、目標制御タイミングでパワートランジスタ2のベースに点火信号V1(図8(a))を印加し、パワートランジスタ2をオンオフ制御する。
【0018】
これにより、パワートランジスタ2は、点火コイル1の1次巻線1aに流れる1次電流I1(図8(b))を通電遮断して1次電圧を昇圧し、さらに2次巻線1bの高圧側に点火用高電圧即ち例えば数10kVの2次電圧V2(図8(c))を発生させる。
【0019】
この2次電圧は、各気筒内の点火プラグ3に印加され、点火制御気筒の燃焼室内に放電火花を発生させて混合気を燃焼させる。このとき、燃焼状態が正常であれば、点火プラグ3の周辺および燃焼室内に所要量のイオンが発生する。
【0020】
そして、前述のように、点火信号V1によりパワートランジスタ2がオンされると、1次巻線1aの電流が通電開始されて、2次巻線1bの高圧側に正極性の電圧が発生する。
【0021】
このとき、コンデンサ6aから2次巻線1bの低圧側への放電電流が抵抗器4によって制限されているので、2次巻線1bに発生する電圧は、バイアス電圧が重畳されずに高圧側および低圧側に分割される。
【0022】
この1次巻線1aの通電開始時において、2次巻線1bの高圧側に正極性の電圧が発生しても、前述のように、コンデンサ6aから2次巻線1bの低圧側への放電電流が抵抗器4によって制限されるので、2次巻線1bの高圧側に発生する正極性の電圧は抑制され、点火プラグ3が放電することはない。
【0023】
続いて、1次電流の遮断時において、2次巻線1bの高圧側に点火用高電圧が発生して点火プラグ3が放電すると、2次電流I2(図8(d))が点火プラグ3→2次コイル1b→ダイオード5→コンデンサ6a→ダイオード6b→グランドの経路で流れ、コンデンサ6aを所定電圧V3(図8(e))に充電する。
コンデンサ6aの充電電圧がツエナーダイオード6cの所定電圧値に達すると、2次電流はコンデンサ6aには流れ込まずにツエナーダイオード6cを流れ、これにより所定のバイアス電圧が保持される。
【0024】
点火フラグ3で放電が終了すると、コンデンサ6aの充電電圧は抵抗器4→2次コイル1bの経路を介して点火プラグ3に印加され、コンデンサ6a→抵抗器4→2次コイル1b→点火プラグ3(点火プラグギヤツプ間のイオン)→グランド→抵抗器7a→コンデンサ6aの経路でイオン電流が流れる。このイオン電流は抵抗器7aで電圧に変換されイオン信号SI(図8(f))となる。
【0025】
このイオン信号は、電圧信号分配回路8のバッファ8a、8bにより分配され、バッファ8aからのイオン信号はノック検出信号発生回路9に供給され、ここでノック信号が生成される。また、バッファ8bからのイオン信号は燃焼/失火信号発生回路10に供給され、ここで燃焼/失火信号を生成される。
【0026】
そして、ノック検出信号発生回路9および燃焼/失火信号発生回路10からの出力信号は、ECU11に供給され、ECU11は、これらの出力信号やクランク角センサ12等各種センサ(図示せず)からの検出信号に基づいて上述の点火信号や駆動信号等各種の制御信号を生成して出力する。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の内燃機関の燃焼状態検出装置は以上のように構成され、イオン電流を電圧に変換するときに、イオン電流が流れる経路に抵抗器を入れて電圧変換しているため、その抵抗器によりイオン信号のダイナミックレンジが1つに決ってしまうが、イオン電流量は内燃機関の運転状態により大きく異なり、イオン電流のピーク値は数μA〜数百μAの範囲にあるため、1つのダイナミックレンジしか持たない信号源で、ノッキング検出や燃焼/失火検出、更には他の燃焼状態検出を行うための信号処理をすることが非常に困難であり、更に後段での信号処理回路が非常に複雑になる等の問題点があった。
【0028】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、イオン電流と相似な電流を複数得ることで、様々な燃焼状態検出が可能になり、また、それぞれの燃焼状態検出に対し適切なダイナミックレンジを設定でき、ノック検出性や燃焼/失火検出性等様々な燃焼状態検出の検出性の向上が図れる内燃機関の燃焼状態検出装置を得ることを目的とする。
【0029】
請求項1の発明に係る内燃機関の燃焼状態検出装置は、内燃機関の気筒に設置された点火プラグにイオン電流検出用の電圧を印加するイオン電流検出用電圧発生手段と、該イオン電流検出用電圧発生手段からの電圧に基づいてイオン電流を検出するイオン電流検出手段とを備え、前記イオン電流検出手段はイオン電流と相似となる電流を複数生成するものである。
また、前記イオン電流検出手段で生成されたイオン電流と相似となる複数の電流は、それぞれのダイナミックレンジが個々に設定されるものである。
【0030】
請求項2の発明に係る内燃機関の燃焼状態検出装置は、請求項1の発明において、前記イオン電流検出用電圧発生手段は外部からの電流により充電され、電圧を保持するコンデンサと、該コンデンサの充電電圧を制限する電圧制限素子と、前記コンデンサの低電位側の電極とグランド間に設けられ、前記コンデンサからの電流を流出させる整流素子とを含み、前記イオン電流検出手段は、カレントミラー回路で構成されたものである。
【0032】
請求項3の発明に係る内燃機関の燃焼状態検出装置は、請求項1または2の発明において、前記イオン電流検出手段で生成されたイオン電流と相似となる複数の電流を用い、ノッキング検出および燃焼/失火検出を行うものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の一例を示す構成図である。
図において、図6と対応する部分には同一符号を付し、その重複説明を省略する。
【0035】
本実施の形態では、イオン電流検出用電圧発生手段としてのバイアス回路6の後段にイオン電流信号を分配するイオン電流信号分配回路20を設け、このイオン電流信号分配回路20で分配されたイオン電流信号をそれぞれ電圧に変換する電流一電圧変換回路21および22を介してノック検出信号発生回路9および燃焼/失火信号発生回路10に供給するようにする。なお、イオン電流信号分配回路20と電流一電圧変換回路21および22はイオン電流検出手段を構成する。その他の構成は図6と同様である。
【0036】
図2は図1のイオン電流信号分配回路および電流−電圧変換回路の部分の具体的回路構成の一例を示す回路構成図である。
図において、イオン電流信号分配回路20はトランジスタ20a〜20dおよび抵抗器20e〜20gを含むカレントミラー回路で構成される。トランジスタ20aおよび20bの各エミッタはそれぞれ抵抗器20eおよび20fを介して電源端子VBに接続され、各ベースは共通接続されてトランジスタ20cのエミッタに接続される。
【0037】
トランジスタ20aのコレクタはトランジスタ20cのベースと共通接続されてバイアス回路6の出力側即ちコンデンサ6aと整流素子としてのダイオード6bおよび電圧制限素子としてのツエナーダイオード6cの各アノードとの接続点Pに接続され、トランジスタ20cのコレクタは接地される。
トランジスタ20bのコレクタは電流−電圧変換回路22の抵抗器22aの一端に接続され、この接続点が燃焼/失火信号発生回路10の入力側に接続され、また、抵抗器22aの他端は接地される。
【0038】
トランジスタ20dのエミッタは抵抗器20gを介して所定の電圧源VRに接続され、そのベースはトランジスタ20cのエミッタに接続される。また、トランジスタ20dのコレクタは電流−電圧変換回路21の抵抗器21aの一端に接続され、この接続点がノック検出信号発生回路9の入力側に接続され、また、抵抗器21aの他端は接地される。
【0039】
次に、図3を参照しながら、動作について説明する。
通常、ECU11は、運転条件に応じて点火時期等を演算し、目標制御タイミングでパワートランジスタ2のベースに点火信号V1(図3(a))を印加し、パワートランジスタ2をオンオフ制御する。
【0040】
これにより、パワートランジスタ2は、点火コイル1の1次巻線1aに流れる1次電流I1(図3(b))を通電遮断して1次電圧を昇圧し、さらに2次巻線1bの高圧側に点火用高電圧即ち例えば数10kVの2次電圧V2(図3(c))を発生させる。
【0041】
この2次電圧は、各気筒内の点火プラグ3に印加され、点火制御気筒の燃焼室内に放電火花を発生させて混合気を燃焼させる。このとき、燃焼状態が正常であれば、点火プラグ3の周辺および燃焼室内に所要量のイオンが発生する。
【0042】
そして、前述のように、点火信号V1によりパワートランジスタ2がオンされると、1次巻線1aの電流が通電開始されて、2次巻線1bの高圧側に正極性の電圧が発生する。
【0043】
このとき、コンデンサ6aから2次巻線1bの低圧側への放電電流が抵抗器4によって制限されているので、2次巻線1bに発生する電圧は、バイアス電圧が重畳されずに高圧側および低圧側に分割される。
【0044】
この1次巻線1aの通電開始時において、2次巻線1bの高圧側に正極性の電圧が発生しても、前述のように、コンデンサ6aから2次巻線1bの低圧側への放電電流が抵抗器4によって制限されるので、2次巻線1bの高圧側に発生する正極性の電圧は抑制され、点火プラグ3が放電することはない。
【0045】
続いて、1次電流の遮断時において、2次巻線1bの高圧側に点火用高電圧が発生して点火プラグ3が放電すると、2次電流I2(図2(d))が点火プラグ3→2次コイル1b→ダイオード5→コンデンサ6a→ダイオード6b→グランドの経路で流れ、コンデンサ6aを所定電圧V3(図2(e))に充電する。
コンデンサ6aの充電電圧がツエナーダイオード6cの所定電圧値に達すると、2次電流はコンデンサ6aには流れ込まずにツエナーダイオード6cを流れ、これにより所定のバイアス電圧が保持される。
【0046】
点火フラグ3で放電が終了すると、イオン電流はトランジスタ20aのコレクタ→コンデンサ6a→抵抗器4→2次コイル1bの経路で点火プラグ3に向かって流れる。
【0047】
トランジスタ20aは実質的にカレントミラー回路の基準電流発生素子であり、接続点Pより流出した電流と同等の電流がトランジスタ20aを流れる。そして、トランジスタ20b,20dにはトランジスタ20aを流れる電流を基準として電流が流れる。このようにして、1つのイオン電流を基準に、それと相似な複数の電流を生成することができる。
【0048】
このトランジスタ20b,20dを流れる電流はそれぞれ電流−電圧変換回路22の抵抗器22aおよび電流−電圧変換回路21の抵抗器21aで電圧に変換され、それぞれイオン信号SI1(図3(f))およびSI2(図3(g))として取り出される。
そして、抵抗器21aからのイオン信号SI2はノック検出信号発生回路9に供給され、ここでノック信号が生成される。また、抵抗器22aからのイオン信号SI1は燃焼/失火信号発生回路10に供給され、ここで燃焼/失火信号を生成される。
【0049】
そして、ノック検出信号発生回路9および燃焼/失火信号発生回路10からの出力信号は、ECU11に供給され、ECU11は、これらの出力信号やクランク角センサ12等各種センサ(図示せず)からの検出信号に基づいて上述の点火信号や駆動信号等各種の制御信号を生成して出力する。
【0050】
なお、図3において、イオン電流信号分配回路20であるカレントミラー回路から分配されて出力されるイオン信号SI1とSI2のレベルの大きさは相互に異なる場合であるが、同じレベルでもよい。
【0051】
このように、本実施の形態では、1つのイオン電流を基準にイオン電流と相似な複数の電流を生成することができ、それらの複数の電流を用いて、様々な燃焼状態検出が可能になる。また、イオン電流と相似な複数の電流が生成できるので、1つのイオン信号に対して複数のダイナミックレンジ持った信号源を実質的に得ることができ、これによりノッキング検出や燃焼/失火検出、更には他の燃焼状態検出を行うための信号処理をすることが容易となり、また、更に後段での信号処理回路を簡略化できる。
【0052】
実施の形態2.
上記実施の形態1において、イオン電流信号分配回路20であるカレントミラー回路のトランジスタ20b,20dに流れる電流は、トランジスタ20aを流れる電流に対し、そのチップサイズに比例して流れる。そこで、それぞれのトランジスタのチップサイズを変えることによりダイナミックレンジを複数設定することができる。また、それぞれの電流に対し、個々に電流一電圧変換を行うため、電流一電圧変換段階でも個々にダイナミックレンジを設定できる。
【0053】
従って、トランジスタのチップサイズまたは電流一電圧変換段階でイオン電流のダイナミックレンジを変えることにより、図3に示すようなイオン信号SI1、SI2のように、実質的にイオン電流のレベルの大きさの異なる電流波形を得ることができる。
【0054】
このように、本実施の形態では、1つのイオン電流を基準に、それぞれの燃焼状態検出に対し適切なダイナミックレンジを設定することができ、ノック検出性や燃焼/失火検出性等様々な燃焼状態検出の検出性が向上する。
【0055】
実施の形態3.
また、上記実施の形態1において、イオン電流信号分配回路20であるカレントミラー回路で分配したそれぞれ個別のイオン信号を用いて、ノッキング検出や燃焼/失火検出を行うわけであるが、例えば、燃焼/失火を確実に判定するためには、イオン電流の発生が非常に小さい数μAでも検出する必要があるため、イオン電流のレベルが大きくなるようダイナミックレンジを設定する。
【0056】
また、ノックを検出するためには、イオン電流波形が飽和しないようダイナミックレンジを設定する。
そして、この設定には、例えば細かい設定が可能な電流一電圧変換段階でのダイナミックレンジの設定、即ち抵抗器21a、22aの抵抗値を調整して行えばよい。
【0057】
このように、本実施の形態では、1つのイオン電流を基準に、それぞれの燃焼状態検出に対し適切なダイナミックレンジを細かく設定することができ、ノック検出性や燃焼/失火検出性等様々な燃焼状態検出の検出性が更に向上する。
【0058】
実施の形態4.
図4はこの発明の実施の形態4の一例を示す構成図である。
図において、図1と対応する部分には同一符号を付し、その重複説明を省略する。
本実施の形態では、バイアス回路6の低電圧側即ち出力側の電圧をゼロボルトに帰還制御する電圧制御回路23を用いる。その他の構成は図6と同様である。
【0059】
図5は図1の電圧制御回路の部分の具体的回路構成の一例を示す回路構成図である。
図において、電圧制御回路23はオペアンプ23aと、その反転入力端子および出力端子に接続されたコンデンサ23bと、その一端がオペアンプ23aの反転入力端子に接続された抵抗器23cとを含み、オペアンプ23aの非反転入力端子は接地され、その出力端子はカレントミラー回路の抵抗器20e〜20gの共通接続点に接続され、そして、抵抗器23cの他端が接続点Pに接続される。
【0060】
次に、動作について説明する。
上述と同様に、接続点Pより流出した電流と同等の電流がトランジスタ20aを流れ、これにより、トランジスタ20b,20dにはトランジスタ20aを流れる電流を基準として電流が流れる。このようにして、1つのイオン電流を基準に、それと相似な複数の電流が生成される。
そして、電圧制御回路23はバイアス回路6のコンデンサ6aの低電圧側即ち接続点Pの電圧を常にゼロボルトになるように帰還制御する。その他の動作は実施に形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
このように、本実施の形態では、イオン電流と同等な電流を正確にカレントミラー回路に流すことができ、ノック検出性や燃焼/失火検出性等様々な燃焼状態検出の検出性を更に向上できる。
【0062】
実施の形態5.
なお、上記の各実施の形態では、この発明をノッキング検出や燃焼/失火検出に適用した場合であるが、同様の信号処理を要するその他の場合例えば燃焼/失火信号発生回路の出力をECUに取り込んで行うEGR制御やA/F制御等に用いてもよい。また、実施の形態2および3の手法は実施の形態4の回路にも同様に適用できるものである。
【0063】
以上のように請求項1の発明によれば、内燃機関の気筒に設置された点火プラグにイオン電流検出用の電圧を印加するイオン電流検出用電圧発生手段と、該イオン電流検出用電圧発生手段からの電圧に基づいてイオン電流を検出するイオン電流検出手段とを備え、前記イオン電流検出手段はイオン電流と相似となる電流を複数生成するので、様々な燃焼状態検出が可能になり、1つのイオン信号に対して実質的に複数のダイナミックレンジ持った信号源を得ることができ、以てノッキング検出や燃焼/失火検出、更には他の燃焼状態検出を行うための信号処理をすることが容易となり、更に後段での信号処理回路を簡略化できるという効果がある。
また、前記イオン電流検出手段で生成されたイオン電流と相似となる複数の電流は、それぞれのダイナミックレンジが個々に設定されるので、それぞれの燃焼状態検出に対し適切なダイナミックレンジを設定することができ、ノック検出性や燃焼/失火検出性等様々な燃焼状態検出の検出性を向上できるという効果がある。
【0064】
また、請求項2の発明によれば、前記イオン電流検出用電圧発生手段は外部からの電流により充電され、電圧を保持するコンデンサと、該コンデンサの充電電圧を制限する電圧制限素子と、前記コンデンサの低電位側の電極とグランド間に設けられ、前記コンデンサからの電流を流出させる整流素子とを含み、前記イオン電流検出手段は、カレントミラー回路で構成されたものであるので、イオン電流と相似となる複数の電流を確実に生成でき、簡単な回路構成で様々な燃焼状態検出が可能になるとう効果がある。
【0066】
請求項3の発明によれば、前記イオン電流検出手段で生成されたイオン電流と相似となる複数の電流を用い、ノッキング検出および燃焼/失火検出を行うので、簡単な回路構成でノッキング検出や燃焼/失火検出を効率よく行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】図1の一部の具体的回路構成の一例を示す回路構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1における動作説明に供するための図である。
【図4】この発明の実施の形態4を示す構成図である。
【図5】図4の一部の具体的回路構成の一例を示す回路構成図である。
【図6】従来の内燃機関の燃焼状態検出装置を示す構成図である。
【図7】図6の一部の具体的回路構成の一例を示す回路構成図である。
【図8】従来の内燃機関の燃焼状態検出装置における動作説明に供するための図である。
【符号の説明】
1 点火コイル、 2 パワートランジスタ、 3 点火プラグ、 6 バイアス回路、 9 ノック検出信号発生回路、 10 燃焼/失火信号発生回路、20 イオン電流信号分配回路、 21,22 電流−電圧変換回路、 20a〜20d トランジスタ。
Claims (3)
- 内燃機関の気筒に設置された点火プラグにイオン電流検出用の電圧を印加するイオン電流検出用電圧発生手段と、
該イオン電流検出用電圧発生手段からの電圧に基づいてイオン電流を検出するイオン電流検出手段と
を備え、前記イオン電流検出手段はイオン電流と相似となる電流を複数生成し、
前記イオン電流検出手段で生成されたイオン電流と相似となる複数の電流は、それぞれのダイナミックレンジが個々に設定されることを特徴とする内燃機関の燃焼状態検出装置。 - 前記イオン電流検出用電圧発生手段は外部からの電流により充電され、電圧を保持するコンデンサと、該コンデンサの充電電圧を制限する電圧制限素子と、前記コンデンサの低電位側の電極とグランド間に設けられ、前記コンデンサからの電流を流出させる整流素子とを含み、前記イオン電流検出手段はカレントミラー回路で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記イオン電流検出手段で生成されたイオン電流と相似となる複数の電流を用い、ノッキング検出および燃焼/失火検出を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
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