JP3617535B2 - 液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は多孔性樹脂シートからなる液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体に関する。詳しくは、電気絶縁性に優れ、高い光反射効率を有し、かつ適度の柔軟性と剛性を有する多孔性樹脂シートからなる液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体に関する。本発明に係わる液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体は、主としてワードプロセッサー、パーソナルコンピュータ、テレビジョン用等に用いられ、液晶表示装置のバックライトユニット中の光源部のランプホルダー用光反射体および導光板の下方に配設される光反射シートであり、両者が一体形成されているものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光反射体は様々な分野で用いられてきており、特に、ワードプロセッサー、パーソナルコンピュータ、テレビジョン等の液晶表示装置の主要部品として数多く使用されている。液晶表示装置は、薄型で省電力が図り得るものであることが重要である。また、液晶表示装置の大面積化、表示品位の向上が望まれており、この為には大容量の光量を液晶部分に供給することが必要とされる。液晶表示装置の省電力化を可能とし、小型化、薄型化を図り、且つバックライトユニットから供給する光量を多くするためには、光反射体の反射効率が高くなければならない。
【0003】
液晶表示装置のバックライトユニットには、光源を直接液晶部の下部に置く方式と、光源を透明な導光板の横に置く方式がある。液晶表示装置を薄型化するためには後者の方式が適している。後者の方式では、光反射体はランプホルダー部および導光板下部の二カ所に用いられている。
ランプホルダー部では光の吸収、およびリーク電流の発生があると液晶表示部への供給光量が少なくなる。従って、導光板の横に置くランプホルダーの素材は光の反射効率が高く、且つ電気絶縁性の高いものが求められている。
【0004】
従来、ランプホルダーの素材として、アルミニウム等の金属板の表面に銀を主成分とする金属薄膜層を有する光反射シート(銀反射シート)を貼り合わせた光反射体、または、特開平2−13925号公報に記載されるような白色顔料を塗工したアルミニウム等の金属板等が用いられていた。しかしながら、これらの光反射体は、電気抵抗が低い為に光源からの誘導電流によるリーク電流が発生するため実際に発光に利用される電流が少なくなり発光効率が悪くなるという問題点があった。
【0005】
最近、リーク電流を抑えるために白色の無機充填剤等を含有するポリエチレンテレフタレートシート(以下、白色PETシートと略す)が光反射体として用いられている。しかし、白色PETシートは、シート自身の剛性が大きいため光源を包み込む形で使用した場合、光源と白色PETシートとの間に隙間が生じ、光が漏洩して液晶表示部に伝わる光量が少なくなる欠点があった。この欠点を解消するために、白色PETシートの厚みを薄くする試みがなされているが、該シートを透過する光が多くなり、その結果、光の反射効率が低下するという新たな問題が生じている。
【0006】
また、導光板の下方に配設される光反射シートとしては従来、特開昭63−161029号公報に記載されたシート、すなわち、ポリエチレンテレフタレートに微粒子状炭酸カルシウムを5〜30重量%含有させたポリマーチップを溶融押出し、二軸延伸したフィルムであって、該ポリマーチップの白色度をa%、二軸延伸後のフィルムのボイド率をb%としたとき、a≧45、7≦b≦30、a×logb≧65、を満足する白色PETシートが使用されている。
また、特開平4−239540号公報には、表面の、400〜700nmの光の波長域における平均反射率が90%以上であり、該波長域の反射率の(最大値−最小値)が10%以下である液晶ディスプレイ反射板用白色PETシートが開示されている。そして、実施例には厚み188μmの白色PETシートが記載されている。
【0007】
しかし、上記のような厚み188μm程度の厚い白色PETシートは、剛性が高いため、液晶表示装置のバックライトユニットのランプホルダー部を形成するには適さない。また、厚みを薄くした場合、ランプホルダー部の形成は容易となるが、導光板の下方に配設される光反射シートとしては厚みが薄すぎて光線透過率が大きくなり、その結果反射効率が低下する。これらの欠点を解消するために、ランプホルダー部と光反射板に厚みが異なるシートを使用する方法もあるが、ランプホルダーをスリットする工程と接着剤をランプホルダーの両端二カ所に付ける工程が必要となり、工程数およびコストが大きくなるという問題があった。また、ランプホルダーはその巾が狭いため、バックライトユニットへの装着が難しいという問題があった。
そこで、ランプホルダーと導光板の下方に配設される光反射シートとが一体形成された反射体が望まれている。しかし、従来の光反射体は、両者を一体形成するために適した剛性および光線反射率を共に有するものがなく、一体形成が困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決し、優れた電気絶縁性と光反射効率を併せもち、しかも適度の剛性と柔軟性を有する液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体であって、液晶表示装置のバックライトユニットを形成する光源部のランプホルダー用光反射体と導光板の下方に配設される光反射シートとが一体形成された液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂に特定量の無機系充填剤を配合して得られた特定の光線反射率を有する多孔性シートが上記問題を解決し得る液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体であることを見出し、本発明に到った。
【0010】
すなわち、本発明は、多孔性樹脂シートからなる液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体であって、該光反射体が(1)ランプホルダー部と光反射シート部が一体形成され、(2)熱可塑性樹脂100重量部に対して無機系充填剤100〜300重量部を含み、且つ、(3)波長550nmの光線反射率が95%以上であることを特徴とする液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体である。
【0011】
本発明の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体の特徴は、特定量の熱可塑性樹脂と無機系充填剤を含む多孔性シートであって、特定の光線反射率を有する点にある。本発明の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体は、特定量の熱可塑性樹脂と無機系充填剤を含む多孔性シートであるために電気絶縁性に優れている。また、特定の組成からなる多孔性シートであるために、シート表面およびその内部に反射層を多数含有しており優れた光線反射率を有する。しかも柔軟性に富み、剛性が低いものであるため、シートの厚みを大きくしても光源との間に隙間が生じない。従って、シートの厚みを薄くする必要がないため光の透過を抑えることが出来る。
【0012】
以下、本発明の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体について詳細に説明する。
本発明の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体は、熱可塑性樹脂に特定量の無機系充填剤を添加、混合して樹脂組成物となし、得られた樹脂組成物から例えば溶融押出成形等により未延伸シートを成形し、ついで得られた未延伸シートを一軸または二軸延伸することにより製造される。
【0013】
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である線形低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ4−メチルペンテン系樹脂等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ−p−キシリレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等に代表されるポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等に代表されるポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオルエチレン、ポリクロルトリフルオルエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオルエチレンとヘキサフルオルプロピレンとの共重合体等に代表されるフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニル−n−ブチルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等に代表されるポリビニルエーテル系樹脂、ポリメチルビニルケトン、ポリメチルイソブロペニルケトン、ポリエチルビニルケトン、ポリフェニルビニルケトン、ポリナフチルビニルケトン、ポリ−p−クロルフェニルケトン、ポリオキシアルキルビニルケトン等に代表されるポリビニルケトン系樹脂、ポリアセトアルデヒド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等に代表されるポリエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等に代表されるポリアミド系樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン等に代表されるジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール、芳香族ポリアミド、ポリフェニレン、ポリアリレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリアセン、ポリイミダゾピロロン、ポリキノリン、ポリナフチリジン、ポリキノキサリン等に代表される耐熱性樹脂等が挙げられる。
【0014】
これらの熱可塑性樹脂の内、シートへの成形性、得られたシートの耐熱性および延伸性等を総合的に勘案すると、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂、より好ましくはエチレンとα−オレフィンとの共重合体である線形低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体およびポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂と略す)、更に好ましくはエチレンとα−オレフィンとの共重合体である線形低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体である。
【0015】
熱可塑性樹脂の分子量はシートへの成形性に影響を及ぼし、分子量が高過ぎても低過ぎても製膜性が低下する。かかる点を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂の場合、分子量のパラメータであるメルトインデックス(以下、MIという)が、ポリエチレン系樹脂の場合には0.5〜7g/10min程度(190℃、荷重2.16kg)、ポリプロピレン樹脂の場合には1〜10g/10min程度(230℃、荷重2.16kg)、ポリ4−メチルペンテン系樹脂の場合には10〜70g/10min程度(260℃、荷重5.0kg)であることが好ましい。また、PET樹脂の場合、分子量のパラメータである固有粘度(IV)は、0.6〜1.1dl/g程度が好ましい。
尚、本発明におけるポリオレフィン系樹脂のMIは、ASTM D−1238に規定される方法により、上記条件で測定した値である。また、PET樹脂の分子量のパラメータである固有粘度は、テトラヒドロフランを溶媒として、ウベローデ粘度計を使用して25℃において測定した溶液粘度である。
【0016】
本発明に用いる無機系充填剤としては、金属塩、金属水酸化物、金属酸化物等が好ましく用いられる。これらのものを例示すると、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属塩、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ等の金属酸化物等が挙げられる。さらに、ケイ酸カルシウム類、セメント類、ゼオライト類、タルク等の粘土類も使用できる。
【0017】
これらの内、熱可塑性樹脂との混合性または分散性、シートの延伸性および得られる多孔性シートの開孔性、開孔率等を総合的に勘案すると、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化マグネシウムが好ましい。さらに好ましくは硫酸バリウム、炭酸カルシウムであり、特に好ましくは硫酸バリウムである。硫酸バリウムを用いる場合には、熱可塑性樹脂との分散性、混合性がよい沈降性硫酸バリウムが好ましい。
また、無機系充填剤の粒度は得られる多孔性シートの表面状態に影響を及ぼすので、0.1〜7μm程度の平均粒子径を有する無機系充填剤が好ましい。さらに好ましくは0.2〜5μmである。
【0018】
無機系充填剤の添加量は得られる多孔性シートの光線反射率に影響を及ぼす。無機系充填剤の添加量が少ないと得られる多孔性シートの開孔率が低くなり、逆に多いと開孔率が高くなる。開孔率が低い多孔性シートは、樹脂層と空気層との界面における光の反射量が減り、高い光線反射率を有する多孔性シートが得られない。従って、光反射体に適する多孔性シートは、適度の開孔率と高い光線反射率を有するものである。また、無機系充填剤の添加量が多いと多孔性シートの開孔率が高くなり光線反射率は増すが、シートの生産性、多孔性シートの強度が低下する。かかる点を総合して考慮すると、無機系充填剤の添加量は熱可塑性樹脂100重量部に対し、100〜300重量部である。
無機系充填剤が硫酸バリウムである場合、好ましい添加量範囲は熱可塑性樹脂100重量部に対し、180〜300重量部である。さらに好ましくは180〜250重量部である。また、それ以外の無機系充填剤である場合、好ましい添加量範囲は熱可塑性樹脂100重量部に対し、120〜200重量部である。
【0019】
本発明の光反射体は、上記熱可塑性樹脂に特定量の上記無機系充填剤を添加、混合した樹脂組成物が用いられるが、本発明の目的を妨げない範囲内で、安定剤、滑剤、分散剤、紫外線吸収剤、白色顔料、蛍光増白剤等の他の添加剤を添加しても良い。
【0020】
これらの他の添加剤の内、紫外線吸収能を有するものを添加することが好ましい。紫外線吸収能を有する添加剤として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン等のベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系化合物等に代表される紫外線吸収剤が挙げられる。また、酸化チタン等も使用できる。
【0021】
これらの添加量は、例えば紫外線吸収剤の場合、熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01〜5重量部であることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜2重量部である。また、酸化チタンの場合、熱可塑性樹脂100重量部に対し1〜30重量部であることが好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂と無機系充填剤、必要に応じて、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、分散剤、白色顔料、蛍光増白剤等の他の添加剤とを混合して樹脂組成物を製造する方法には特に制限はない。例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等を用いて室温またはその近傍の温度において混合する方法が挙げられる。また、混合した後、ストランドダイが装着された一軸または二軸スクリュー型押出機を用いて、用いる熱可塑性樹脂の融点または軟化点以上の温度、好ましくは融点または軟化点+20℃以上、熱可塑性樹脂の分解温度未満の温度範囲において混練、溶融押出して、溶融ストランドとし、冷却した後、切断してペレット状に成形する方法も挙げられる。熱可塑性樹脂に無機系充填剤を均一に分散、混合するためにはペレット状に成形する方法が好ましい。
【0023】
上記のようにして得られた熱可塑性樹脂組成物からシートを成形する方法にも特に制限はない。例えば、Tダイが装着された一軸または二軸スクリュー型押出機を用いる押出成形法、円形ダイが装着された押出機を用いるインフレーション成形法、カレンダー成形法等の公知の方法が挙げられる。
シートの成形温度は、用いる熱可塑性樹脂により異なるが、通常、用いる樹脂の融点または軟化点以上の温度、好ましくは、融点または軟化点+20℃以上、分解温度未満の温度範囲である。
【0024】
得られた未延伸樹脂シートは、ロール法、テンター法等の公知の方法で少なくとも一軸方向に延伸される。延伸は一段で行ってもよいし、多段階に分けて行っても良い。また、二軸方向に延伸しても良い。さらに、延伸後必要に応じて、得られた開孔の形態を安定させるために熱固定処理を行っても良い。
【0025】
延伸中のシートの切断を防止し、且つ均一な延伸を行い、好ましい開孔率を有する多孔性シートを得るためには、延伸温度は、ビカット軟化点(JIS K−6760に規定される方法で測定した値)未満であることが好ましい。また、延伸倍率は、前記の無機系充填剤の添加量と同様に、得られる延伸シートの開孔率に影響を及ぼす。延伸倍率が低いと得られる延伸シートの開孔率が低下し、高いと開孔率が高くなる。しかし、延伸倍率が高過ぎると延伸中にシートが切断することがあるので好ましくない。かかる観点から、一軸延伸の場合には5〜8倍、二軸延伸の場合には一軸方向に4〜7倍、その方向と直角方向に1.1〜3倍程度であることが好ましい。
さらに好ましい延伸倍率は、一軸延伸の場合には5.5〜7.5倍、二軸延伸の場合には一軸方向に4.5〜6.5倍、その方向と直角方向に1.1〜2.5倍程度である。
【0026】
多孔性樹脂シートの厚みが薄いと光の透過率が高くなり光線反射率が低下する傾向にある。また、厚いとシートの生産性が低下する。従って、液晶表示のバックライトユニット用光反射体として用いる本発明の多孔性樹脂シートの厚みは、通常50〜300μmである。好ましくは、70〜300μm、さらに好ましくは100〜300μmである。
【0027】
上記組成および製造条件で得られる多孔性樹脂シートは、40%以上の開孔率を有する多孔性樹脂シートである。多孔性樹脂シートを液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体として用いるには、高い光線反射率を有することが望まれる。多孔性樹脂シートの開孔率が40%未満であると、樹脂層と空気層との界面が減少するため光線反射率が低下する。本発明の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体として用いる多孔性樹脂シートは、少なくとも40%以上の開孔率を有し、波長が550nmの光の光線反射率が95%以上であることが好ましい。液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体として用いる多孔性樹脂シートの開孔率は高いほど好ましいが、延伸シートの成形性、延伸性等を勘案するとその上限は70%程度である。従って、好ましい多孔性樹脂シートは、上記方法で得られる多孔性樹脂シートのうち、開孔率が40〜70%のものである。
【0028】
本発明により得られた多孔性樹脂シートは、液晶表示装置のバックライトユニットを形成する光源部のランプホルダー用光反射体および導光板の下方に配設される光反射シートとして使用され、しかも両者は一体形成される。
【0029】
以下、本発明の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体について、図面を示して説明する。
〔図1〕は、光源部のランプホルダーと導光板の下方に配設される光反射シートとが一体形成された代表的液晶表示装置のバックライトユニットの断面図である。図において、多孔性樹脂シートはランプホルダー2(反射体)と導光板3の下方に配設される光反射シート4として使用され、両者は一体形成されて、導光板3の上部に接着剤5により固定される。一体形成されるとはランプホルダー2と導光板3の下方に配設される光反射シート4とが同一の多孔性樹脂シートから形成されていることを意味する。
光源1から生じた光線は、一体形成されたランプホルダー2と光反射シート4、導光板3および導光板3の上部に配設される光拡散シート6に照射される。一体形成されたランプホルダー2と光反射シート4に照射された光線は、これらにより反射され、導光板3を透過して光拡散シート6を経て液晶表示用に供される。
【0030】
本発明に使用する多孔性樹脂シートは、優れた光線反射率を有するので、これをランプホルダーおよび導光板の下方に配設される光反射シートの資材とすることにより、光源から生じた光線を効率よく反射することができる。また、本発明に使用する多孔性樹脂シートは耐熱性にも優れるので、光源の照射熱にも充分耐え得るものである。
【0031】
本発明により得られる多孔性樹脂シートを1枚で光反射体として用いても良いが、複数枚積層して用いてもよい。また強度を補う等の理由により適宜、本発明により得られる多孔性樹脂シートの非反射側に他のシート等を積層してもよい。また、本発明により得られる多孔性樹脂シートを内外層とし、中間層に他のシートを用いた三層構造にしてもよい。また、積層する場合は必ずしも多孔性シートの全面に積層する必要はなく、一部分のみに積層してもよい。例えば、導光板下部に相当する部分のみに積層してもよい。補強用シートは、電気絶縁性を有するものが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂シート、不織布、紙等が挙げられる。
補強用シートを積層して用いる場合は、多孔性樹脂シートを蛍光管等の光源側に配設するように積層することが重要である。多孔性樹脂シートと他のシートとの積層方法としては、各種接着剤を用い接着する方法、熱接着する方法等が挙げられる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、開孔率、輝度、光線反射率および剛性は下記の方法により測定した値である。
【0033】
(1)開孔率の測定方法(%)
用いた樹脂組成物の真比重(A)と得られた多孔性樹脂シートの嵩比重(B)から数式(1)〔数1〕
【0034】
【数1】
により開孔率(C)を算出する。
【0035】
(2)輝度の測定方法(相対値)
〔図1〕に示したような形式の、光源、ランプホルダー、光反射シート、導光板および光拡散シートから形成された液晶表示装置のバックライトユニット(富士通化成(株)製)のランプホルダーおよび光反射シートとして本発明の実施例または比較例で得られた多孔性樹脂シートを装着し、導光板上での輝度を輝度計(ミノルタカメラ(株)製、形式:LS−110型)を用いて測定する。尚、輝度は、厚み113μmの白色PETシート((株)きもと製、商品名:レフホワイトRW75C)の輝度を100とした時の相対値で示す。
【0036】
(3)光線反射率の測定方法(%)
JIS K−7105 測定法Bに準拠して、分光光度計((株)日立製作所製、形式:U−3400)を用いて波長550nmの光の反射率を測定する。尚、標準反射板として酸化アルミニウム板を用いた時の反射率を100とした時の相対値で示す。
【0037】
(4)剛性の測定方法(mm)
JIS L−1096に規定される方法(カンチレバー法)に準拠して測定する。
【0038】
実施例1〜3
密度0.920g/cm3、メルトインデックス(MI)2.0g/10minの線形低密度ポリエチレン(三井石油化学工業(株)製、商品名:ウルトゼックス2021L:以下、LLDPEという)100重量部に対し、平均粒子径0.94μmの沈降性硫酸バリウム(バライト工業(株)製、商品名:HD)230重量部、紫外線吸収剤(アデカアーガス(株)製、商品名:MARK LA−36)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム3重量部をタンブラーミキサーを用いて混合して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をベント型二軸押出機を用いてペレット状に加工した。このペレットをTダイが装着された押出機を用いて、230℃において溶融押出して未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを85℃に加熱した予熱ロールと延伸ロールとの間で6.5倍の延伸倍率で一軸延伸し、〔表1〕に示した厚みを有する多孔性樹脂シートを得た。得られた多孔性樹脂シートの開孔率、輝度、光線反射率および剛性を前述の方法で評価した。シートの組成(重量部)および評価結果を〔表1〕に示す。
【0039】
実施例4
線形低密度ポリエチレン(LLDPE)と硫酸バリウムの配合割合をそれぞれ〔表1〕に示す重量割合とした以外、実施例2と同様の方法で多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表1〕に示す。
【0040】
実施例5
密度0.900g/cm3、MI1.5g/10minのプロピレンホモポリマー(三井東圧化学(株)製、商品名:FO−50F:以下、PPという)を用いた以外、実施例1と同様の方法で厚さ125μmの多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表1〕に示す。
【0041】
実施例6
密度0.900g/cm3、MI1.5g/10minのエチレン−プロピレンコポリマー(三井東圧化学(株)製、商品名:MJS−G:以下、EPという)を用いた以外,実施例1と同様の方法で厚さ125μmの多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表1〕に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例7
実施例2で用いた紫外線吸収剤に代えて、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR−670)を線型低密度ポリエチレン100重量部に対し16重量部を加えた以外、実施例2と同様の方法で多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表2〕に示す。
【0044】
実施例8
実施例2で用いた紫外線吸収剤、および実施例7で用いた酸化チタンを線型低密度ポリエチレン100重量部に対し、それぞれ0.5重量部および16重量部用いた以外、実施例2と同様の方法で多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表2〕に示す。
【0045】
実施例9
実施例2と同様の方法で得られた多孔性樹脂シートの片面全面に厚み38μmの白色PETシート(東レ(株)製、商品名:E−20)を接着剤(大日精化工業(株)製、商品名:セイカボンドE−295/C−75N)を用いて接着し、多孔性樹脂シート積層体を得た。得られた積層体の評価結果を〔表2〕に示す。尚、〔表2〕中のシート厚み、光線反射率および剛性は積層体としての値、また開孔率は多孔性樹脂シート部のみの値である。
【0046】
実施例10
実施例2と同様の方法で得られた多孔性樹脂シートの片面の導光板下に相当する部分のみに厚み38μmの白色PETシート(東レ(株)製、商品名:E−20)を接着剤(大日精化工業(株)製、商品名:セイカボンドE−295/C−75N)を用いて接着し、多孔性樹脂シート積層体を得た。得られた積層体の評価結果を〔表2〕に示す。尚、〔表2〕中のシート厚みおよび光線反射率は積層体としての値、また開孔率および剛性は多孔性樹脂シート部のみの値である。
【0047】
実施例11
無機系充填剤として平均粒子径1.1μmの炭酸カルシウム(同和カルファイン(株)製、商品名:SST−40)を〔表2〕に示す重量割合で用い、ステアリン酸カルシウムの代わりにヒマシ油(伊藤製油(株)製、商品名:菱形特A)を樹脂100重量部に対し、7.5重量部用いた以外は、実施例2と同様の方法で多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表2〕に示す。
【0048】
実施例12
密度1.34g/cm3、固有粘度(IV)0.76dl/gのポリエチレンテレフタレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:ダイヤナイトPA−500、以下、PETという)を用い、押出成形温度を280℃、延伸予熱ロール温度を100℃とした以外は、実施例2と同様の方法で多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表2〕に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
比較例1
光反射体として厚さ113μmの白色PETシート((株)きもと製、商品名:レフホワイトRW75C)について上記方法により評価し、その結果を〔表3〕に示す。このシートは光線反射率が低いため、輝度が低かった。
【0051】
比較例2
光反射体として厚さ188μmの白色PETシート(東レ(株)製、商品名:E−60)について上記方法により評価し、その結果を〔表3〕に示す。このシートは剛性が大きいため、光源を包み込む時に光源とシートとの間に隙間が生じてしまった。
【0052】
比較例3
厚み125μmに未延伸シートを製造してそれを延伸しなかった以外、実施例2と同様の方法でポリオレフィンシートを得た。得られたシートの評価結果を〔表3〕に示す。このシートは開孔率が低く、光線反射率が低いため、輝度が低かった。
【0053】
比較例4
線形低密度ポリエチレン(LLDPE)と硫酸バリウムの配合割合を〔表3〕に示す重量比とした以外、実施例2と同様の方法で多孔性樹脂シートを得た。得られたシートの評価結果を〔表3〕に示す。このシートは開孔率が低く、光線反射率が低いため、輝度が低かった。
【0054】
【表3】
【0055】
【発明の効果】
本発明の多孔性樹脂シートからなる光反射体は、特定量の熱可塑性樹脂と無機系充填剤を含む多孔性シートであるために優れた電気絶縁性と光線反射率を有する。しかも柔軟性に富み、剛性が低いものである。
これを液晶表示装置のバックライトユニットを形成するランプホルダー用光反射体、および導光板の下方に配設される光反射シートとして一体形成して用いることにより、蛍光管等の光源とランプホルダーの間のリーク電流発生を防止することが可能であり、さらに、適度の剛性と柔軟性を有するので蛍光管等の光源を密封することが容易で、ランプホルダーから光の漏れを防止することが可能である。また、光線反射率が高いため、従来のバックライトユニットに比べて輝度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、光源部のランプホルダーと導光板の下方に配設される光反射シートとが一体形成された代表的液晶表示装置のバックライトユニットの断面図である。
【符号の説明】
1.光源
2.ランプホルダー
3.導光板
4.光反射シート
5.接着剤
6.光拡散シート
Claims (8)
- 多孔性樹脂シートからなる液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体であって、該光反射体が(1)ランプホルダー部と光反射シート部が一体形成され、(2)熱可塑性樹脂100重量部に対して無機系充填剤100〜300重量部を含み、且つ、(3)波長550nmの光線反射率が95%以上であり、(4)該多孔性樹脂シートの開孔率が40〜70%であることを特徴とする液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体。
- 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体。
- 無機系充填剤が、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナおよび水酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも一種の充填剤であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体。
- 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、且つ、無機系充填剤として硫酸バリウムを180〜300重量部含むことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体。
- 多孔性樹脂シートが他の添加剤として、熱可塑性樹脂100重量部に対して、紫外線吸収剤0.01〜5重量部および酸化チタン1〜30重量部から選ばれた少なくとも一種類の該量の添加剤を含むことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体。
- 多孔性樹脂シートの厚みが100〜300μmであることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置のバックライトユニット用光反射体。
- 熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜300重量部の無機充填剤を添加して得られた組成物のシートを成形し、延伸することを特徴とする開孔率が40〜70%である多孔性樹脂シートの製造方法。
- JIS L-1096に準拠して測定した剛性が38〜88mmであることを特徴とする請求項1記載の多孔性樹脂シート。
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