JP3616056B2 - ロータリ圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和装置及び冷凍装置の冷媒圧縮等に使用されるロータリ圧縮機に係り、特に、ロータリ圧縮機のシリンダ形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、冷凍装置や空気調和装置などにおいては、蒸発器で蒸発したガス冷媒を吸入し、凝縮するために必要な圧力まで圧縮して冷媒回路中に高温高圧のガス冷媒を送り出す圧縮機が使用されている。このような圧縮機の一つとして、ロータリ圧縮機が知られている。
このロータリ圧縮機は、円筒形状のハウジングと、ハウジング内に配設されたモータと、このモータによって駆動されガス冷媒等の被搬送(圧縮)流体を圧縮するロータリ圧縮機構とを備えて構成されている。
【0003】
ロータリ圧縮機構10は、たとえば図7に示すように、モータの駆動シャフトに接合された回転シャフト(主軸)1と、回転シャフト1の偏心部(偏心シャフト)1aに回転自在に嵌合されて軸中心から偏心されたロータ2と、ロータ2の外周面に1箇所で摺接する断面円形の空間を有しこの空間にロータ2を配置した状態でハウジング11の内側に挿嵌されたシリンダ3と、シリンダ3の1カ所に溝を設置し、その中を往復自在に嵌合してロータ2と接触し、シリンダ3とロータ2で形成される空間を2つにわけるブレードと、シリンダ3の上端面に固定されてロータ2の上方で回転シャフト1を回転自在に支持する上部軸受4と、シリンダ3の下端面に固定されてロータ2の下方で回転シャフト1を回転自在に支持する下部軸受6とを備えている。
【0004】
シリンダ3には、シリンダ室6内に形成される吸入室に向けてガスを吸入する吸入ポート7が開通され、上部軸受4には、吸入室から転じて形成される圧縮室からガスを吐出する吐出ポート8が開通されており、ロータ2はシリンダ3が上部軸受4,下部軸受5に上下から閉塞されることによって形成されるシリンダ室6に収容されている。
【0005】
シリンダ室6は、ロータ2の外周面に向けて図示しないブレードが押し出されることによって、ブレードの一側方に設けられて吸入ポート7に連通する吸入室と、ブレードの他方側に設けられて吐出ポート8に連通する圧縮室とに仕切られている。
【0006】
吸入ポート7はシリンダ室6の外周側壁面に開口し、シリンダ3及びハウジング11を貫通して設けられている。この吸入ポート7には、吸入フィティング12を介して吸入管13が接続されている。なお、図中の符号14はハウジング11に溶接されたアウターパイプである。
【0007】
吐出ポート8は上部軸受4を貫通する平面視円形の孔として形成されており、吐出ポート8の上面には所定の大きさ以上の圧力を受けた場合に解放される吐出弁9が設けられている。
【0008】
上述した構成のロータリ圧縮機においては、吸入室側ではロータ2の摺接部が吸入ポート7を通過して吸入室を徐々に拡大しながら離れていき、吸入ポート7から吸入室内にガスを吸入する。一方、圧縮室側ではロータ2の摺動部が吐出ポート8へ圧縮室を徐々に縮小しながら近づいていき、所定圧力以上に圧縮された時点で吐出弁9が開いて吐出ポート8からガスを流出させる。
【0009】
ところで、上述した従来のロータリ圧縮機においては、シリンダ室6の断面形状が真円となるように設計されている。しかしながら、現実には旋盤加工等による加工誤差が避けられないため、正確な真円、すなわち数学的な真円から加工誤差(現状は数μmオーダー)の範囲内でわずかにはずれた非円形となっている。また、ロータ2の回転シャフト1は、上部軸受4,下部軸受5及びピン部軸受2bなど複数の軸受によって支持されている。このため、軸受内で回転する回転シャフト6の軸芯軌跡は、軸受隙間の影響を受けてたとえば図3に示すような非円形となる。従って、回転シャフト6が一回転した時にロータ2の外径(外周面)が描く包絡軌跡についても、軸芯軌跡の影響を受けて概ね数10μmオーダーのずれをもつ非円形となる。
【0010】
一方、ロータリ圧縮機のようなローリングピストン型流体機械においては、ロータ2の外周面2aとシリンダ室6の側壁面6aとが接触することにより、特にブレード先端において焼き付きや摩耗の問題が発生するという懸念がある。このため、図8に示すように、外周面2aと側壁面6aとの間には微小隙間Wが設けられており、この微小隙間Wとシリンダ室6の高さHとにより求められる漏れ面積Sの大小が圧縮機の効率に影響を及ぼすこととなる。
従って、ロータ2とシリンダ壁面とが互いに接触しないよう両者間の微小隙間Wを大きくすると、焼き付きや摩耗の問題は解消される反面、この微小隙間Wを通って高圧の圧縮室側から低圧の吸入室側へ流出する圧縮流体の量が増加するという問題が生じる。すなわち、せっかく圧縮した被搬送流体が微小隙間Wから漏れることによって損失(以下、「漏れ損失」と呼ぶ)が増すので、流体機械の効率を低下させるという新たな問題が生じてくる。
【0011】
このため、上述した加工精度や回転シャフト6の軸芯軌跡を考慮し、ロータ2とシリンダ室6の壁面とが互いに接触しないような最小の微小隙間Wを確保できる部品が選択されている。
あるいは、ロータ2がシリンダ室6の側壁面6aに最も接近したときに上述した微小隙間Wが最小となるように、軸芯軌跡に基づいて予め軸受の位置をシリンダ室6の中心からずらして組み立てる方法、いわゆる「偏心組立」と呼ばれる組立方法も実用化されている。
【0012】
なお、内燃機関においては、運転による温度上昇でシリンダに熱歪みが生じた時、すなわち定常運転時のシリンダ形状が真円となるようにするため、常温におけるシリンダの断面形状を意図的に非円形に加工することが行われている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来構造のロータリ圧縮機は、シリンダ室6の断面形状及びロータ2の包絡線が共に意図しない非円形となるため、微小隙間Wの設定にはこれらが考慮され、最悪の条件でも接触しないよう安全サイドに定められている。
このため、微小隙間Wは大きくなりがちであり、しかも、微小隙間Wはロータ2が1回転する間に回転角と共に変化する。従って、たとえば偏心組立を採用してロータ2が側壁面6aに最も接近した状態で接触しない微小隙間Wを設定しても、それ以外の回転位置では微小隙間Wが必要以上に大きくなるという問題がある。従って、ロータ2が一回転する間に発生する漏れ量は、最小隙間Wの位置以外では大きくなるため、全体としての漏れ損失も増大して圧縮機の効率を低下させるという解決すべき課題がある。すなわち、シリンダ室6の断面形状を円形断面に設計するロータリ圧縮機では、最も接近した位置が最小の微小隙間Wとなって回転と共に大きくなるのは避けられないため、漏れ損失の低減には限界がある。
【0014】
しかしながら、近年においては圧縮機により冷媒を循環させる空気調和装置等のさらなる高効率化が望まれており、これを達成するためにも圧縮機のさらなる高効率化が重要になっている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、漏れ損失を低減して効率を向上させることができるシリンダ室断面形状としたロータリ圧縮機の提供を目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
請求項1に記載のロータリ圧縮機は、シャフト偏心部に回転自在に嵌合されたロータがシリンダ室内を旋回し、シリンダに溝を設置しその中に往復が可能な隙間をもって嵌合されたブレードとにより密閉空間を形成することにより被搬送流体の吸入及び圧縮を行うシングルブレードのロータリ圧縮機において、前記シリンダ室が、前記ロータの外径の包絡軌跡に任意の設定隙間(δ)を加えた複数の曲率よりなる非円形の断面形状を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
このようなロータリ圧縮機によれば、シリンダ室の断面形状をロータ外径の包絡軌跡に任意の設定隙間(δ)を加えた複数の曲率よりなる非円形としたので、軸芯軌跡等の影響によってロータの包絡軌跡が非円形となっても、ロータが一回転する間の微小隙間Wを一定の設定隙間(δ)に保つことが可能になる。
【0017】
請求項2記載のロータリ圧縮機は、シャフト偏心部に回転自在に嵌合されたロータがシリンダ室内を旋回し、シリンダに溝を設置しその中に往復が可能な隙間をもって嵌合されたブレードとにより密閉空間を形成することにより被搬送流体の吸入及び圧縮を行うシングルブレードのロータリ圧縮機において、前記シリンダ室が、前記ロータの外径の包絡軌跡に任意の設定隙間(δ)及び加工誤差(Δδ)を加えた非円形の断面形状であることを特徴とするものである。
【0020】
このようなロータリ圧縮機によれば、シリンダ室の断面形状をロータ外径の包絡軌跡に任意の設定隙間(δ)及び加工誤差(Δδ)を加えた複数の曲率よりなる非円形としたので、軸芯軌跡等の影響によってロータの包絡軌跡が非円形となっても、ロータが一回転する間の微小隙間Wを一定の値(設定隙間δ+加工誤差Δδ)に維持することができる。この場合、加工誤差(Δδ)が反映されているので、全周にわたって最小の微小隙間Wを維持することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るロータリ圧縮機の一実施形態を図1ないし図6に基づいて説明する。
ロータリ圧縮機20は、図1に示すように円筒形状のハウジング21と、ハウジング21内に配設されたモータ22と、モータ22によって駆動されて冷媒のガス(被搬送流体)を圧縮する全密閉型のロータリ圧縮機構23とを備えて構成された単気筒の圧縮機である。
【0024】
ハウジング21は、筒状部21aの上下に底部21b及び蓋部21cが溶接されて閉塞された中空円筒形状を有している。筒部21aには、ロータリ圧縮機構23に吸入フィティング24aを介して接続された吸入管24の一端が貫通状態に配設され、蓋部21cには、図示しない冷却機構(冷凍サイクル)に接続された吐出管25が貫通状態に配設されている。なお、図中の符号21dは吸入フィティング24aを通すアウターパイプであり、筒部21aに溶接されている。
【0025】
モータ22は、固定子22aがハウジング21に固定され、回転子22bが固定された駆動シャフト26の下端を下方に位置するロータリ圧縮機構23に向けて延出させている。
ロータリ圧縮機構23は、中空の駆動シャフト26の下端に圧入された回転シャフト27と、回転シャフト27に対して偏心部(偏心シャフト)27aに固定されたロータ28と、ロータ28の外周面28aと1箇所で直線状に摺接する非円形断面形状の空間(後述するシリンダ室34となる)を有しこの空間にロータ28を配置した状態でハウジング21に溶接されたシリンダ29と、シリンダ29の上端面に固定されてロータ28の上方で回転シャフト27を回転自在に支持する上部軸受30と、シリンダ29の下端面に固定されてロータ28の下方で回転シャフト27を回転自在に支持する下部軸受31とを備えている。
なお、回転シャフト27の偏心部27aと接しているロータ28の内周面をピン部軸受28bと呼ぶ。
【0026】
回転シャフト27は、下部軸受23から下端を突出させた状態で支持されている。この回転シャフト27の下端部には、中空の内部に潤滑油を供給する油ポンプ機構32が設けられ、ハウジング21の底部には潤滑油の油だまり33が形成されている。
【0027】
ロータ28は、シリンダ29に設けられた非円形断面の空間が上部軸受30及び下部軸受31に閉塞されることによって形成されるシリンダ室34に収容されている。なお、シリンダ室34の非円形断面形状については、後に詳細に説明する。
シリンダ室34を形成するシリンダ29の内側面には、図2に示すようにスロット孔29aが形成され、このスロット孔29aにはロータ28の厚みとほぼ同じ長さの一辺を有するブレード35がこの一辺をシリンダ室34に対して出没自在となるように嵌挿され、ブレード35の背後にはブレード35をシリンダ室34に向けて押し出すばね体36が配設されている。ブレード35はロータ28の厚み方向の長さとほぼ同じ長さの一辺を有する板状部材であり、ばね体36に付勢されることでその一辺(先端部)をロータ28の外周面に向けて押しつけるようになっている。
【0028】
さらに、シリンダ室34を形成するシリンダ29には、ブレード35からロータ28の回転方向前方に位置して吸入管24に連通する吸入ポート37が開通され、上部軸受30には、ブレード35からロータ28の回転方向後方に位置して吐出管25に通じる吐出ポート38が開通されている。シリンダ室34は、ロータ28の外周面にブレード35の先端部が押しつけられることによって、ブレード35の一側方に設けられて吸入ポート37に連通する吸入室と、ブレード35の他側方に設けられて吐出ポート38に連通する圧縮室とに仕切られている。
【0029】
吐出ポート38は上部軸受30を貫通する平面視円形の孔として形成されており、上部軸受30の上面を覆うカバー39によって形成された上部マフラ室40に連通している。
そして、上部マフラ室40側に開口する吐出ポート38には、所定の大きさ以上の圧力を受けた場合に解放される吐出弁41が設けられている。
【0030】
また、このロータリ圧縮機20には、冷却機構を流通してきたガスから、このガス中に微量に含まれる潤滑油を分離する目的で、アキュムレータ50が設けられている。
このアキュムレータ50は、ガスを流通する配管に接続された筒状容器51を有している。吸入管24の他端は、筒状容器51の内部上方で上向きに開口している。なお、図中の符号52は、アキュムレータ50の内部にガスを導入する配管の接続部である。
【0031】
さて、本発明のロータリ圧縮機20では、上述したシリンダ室34の断面形状を意図的に複数の曲率よりなる非円形断面に設計する。以下では、シリンダ室34の非円形断面形状について具体的に説明する。
図3(a)〜(c)には、上部軸受30及びピン部軸受28bの軸芯軌跡について、荷重条件の異なる3種類(荷重A<荷重B<荷重C)が例示されている。この図では、(a)に上部軸受30の軸芯軌跡が示され、(b)にピン部軸受28bの軸芯軌跡が示され、(c)には原点0及びロータリ圧縮機の回転方向(回転角度θ)の説明図が示されている。
【0032】
図3(a),(b)の軸芯軌跡は、図3(c)に示すように、上部軸受30及び下部軸受31の中心が原点0とされ、ロータ28の回転角度θはブレード35の位置を基準(回転角度θ=0)としている。なお、回転角度θはロータ28が反時計方向へ回転する場合を回転角正とし、x軸の正方向はブレード35の方向(回転角度θ=0の方向)とし、y軸の正方向は回転角度θ=270°の方向とする。
【0033】
ここで、上部軸受30の軸芯軌跡をSu(x(θ),y(θ))とする。
x(θ):回転角度θでのx座標
y(θ):回転角度θでのy座標
この軸芯軌跡Suは、図3(a)に示す例では、荷重が大きい条件になればなるほど、原点0からブレード35とは反対側へずれた位置において非円形の旋回軌跡を描いている。
なお、図3(a)における円R1は上部軸受30の軸受隙間円(軸が上部軸受に接触して回転した場合の最大軌跡円)を示している。
【0034】
続いて、ピン部軸受28bの軸芯軌跡をSp(x(θ),y(θ))とする。この軸芯軌跡は上部軸受30の軸芯軌跡Suを含んでいないピン部軸受28b単独の軌跡である。
x(θ):回転角度θでのx座標
y(θ):回転角度θでのy座標
この軸芯軌跡Spは、図3(b)に示す例では、上述した軸芯軌跡Suと同様に、荷重が大きい条件になればなるほど、原点0からブレード35とは反対側へ最大でδp程度ずれた位置において非円形の旋回軌跡を描いている。
なお、図3(b)における円R2はピン部軸受隙間円を示している。
【0035】
図4に示す図は、上述した上部軸受30の軸芯軌跡Suとピン部軸受28bの軸芯軌跡Spとを荷重条件別に合計したものであり、両軸芯軌跡の偏心量が各回転角度θ毎に加算されている。なお、図4における円R3は上部軸受隙間とピン部軸受隙間を足した円を示している。
そして、回転シャフト(主軸)27の偏心量をε、ロータ28のロータ半径をr とすれば、ロータ28の中心が旋回によって描く軌跡線Sro(x(θ),y(θ))は、下記の式で与えられる。
ro=Su+ε+Sp
【0036】
上記の数式は全てベクトル形式で表記したものであり、軌跡線Sroについて、下記〔数1〕のように表すことができる。
【数1】
Figure 0003616056
【0037】
ロータ28の外径による包絡線Se(x(θ),y(θ))は、下記〔数2〕の式で与えられる。
【数2】
Figure 0003616056
ここで、φはピン部中心に対するロータ中心の移動方向角を示している。
【0038】
本発明では、〔数2〕で与えられる複数曲率よりなる非円形(複合円)の包絡線Seの形状に設定隙間δを加えた形状、すなわち、包絡線Seよりも設定隙間δだけシリンダ室34の内径(断面形状)を大きく設計するのが好ましい。このようにすれば、加工誤差が全くない場合には全ての回転角度θにおいて隙間が設定隙間δとなる。なお、設定隙間δは、0以上(δ≧0)の正の値とする。
【0039】
また、実際には加工誤差Δδが発生するため、〔数2〕で与えられる複数曲率よりなる非円形の包絡線Seの形状に対し、設定隙間δ及び加工誤差Δδを共に加算した形状とするのがより好ましい。この結果、シリンダ室34の内径(断面形状)は包絡線Seより設定隙間δ及び加工誤差Δδ分だけ大きく設計され、これにより、加工誤差を考慮してロータ28がシリンダ室34と干渉することのない最適な最小の隙間を全ての回転角度に与えることができる。なお、設定隙間δ及び加工誤差Δδの和は、全ての回転角度で0以上(δ+Δδ≧0)の正の値となるように設定する。
【0040】
図5は、上述した本発明の包絡線Seに基づく複合円シリンダ形状を異なる3つの荷重条件A,B,C毎に算出して示したものであり、基準となる真円シリンダに対する非円形の程度が一目で分かるように例示されている。
図示の例では、90°方向の切削量を真円シリンダよりも意識的に18μm程度多くしてシリンダ室34を広げてあり、換言すれば、90°方向の曲率半径を真円より大きくしたシリンダ形状としてある。また、270°方向については、反対に切削量を真円シリンダよりも意識的に4〜16μm程度少なくしてシリンダ室34を狭めてあり、換言すれば、270°方向の曲率半径を真円より小さくしたシリンダ形状としてある。
なお、他の回転角度方向においても、ロータ28の外径(外周面)による包絡線Seに基づいて、切削量(曲率半径)を適宜変化させてシリンダ室34の形状を定めている。
【0041】
従って、上述した包絡線Seに基づく複合円シリンダ形状は、少なくとも二つの曲率半径よりなる複数曲率の複合円形状となっている。このような複合円形状は、たとえばエンドミル等の工具を用いて加工することができる。
なお、図3及び図4に例示した軸芯軌跡の偏心方向や偏心量、図5に示した真円に対する切削量などの数値はあくまでも一例にすぎず、使用する軸受や運転圧力等の諸条件によって逐次変化するものである。
【0042】
上述した複合円シリンダ形状とすれば、上部軸受30等の軸芯軌跡の影響を受けてロータ28が実際に旋回運動する包絡線Seに合わせたシリンダ室34の断面形状となるため、図6に示すように、回転角度θに対応する複合円シリンダの隙間Waは常に一定となる。この結果、漏れ面積Sを全周にわたって最小に維持することができるので、ロータリ圧縮機20の漏れ損失を低減して効率を向上させることができる。
【0043】
この場合、包絡線Seに設定隙間δを加算した断面形状を採用すれば、
隙間(Wa)=設定隙間(δ)≧0となり、加工誤差がなければ全周にわたってこの隙間Waが維持される。
また、包絡線Seに設定隙間δ及び加工誤差Δδを共に加算した断面形状を採用すると、隙間(Wa)=設定隙間(δ)+加工誤差(Δδ)≧0となり、最も厳しい条件の加工誤差Δδを考慮した場合でも最低限隙間Waを確保してロータ28の干渉を防止することができる。
【0044】
また、この図6によれば、従来の真円シリンダでは回転角度θが180°を過ぎたあたりで最も隙間が小さくなり、前後の回転角度θでは隙間が大きくなっているので、従来の問題点として説明したように、漏れ損失の面で不利になっていることが分かる。
【0045】
以下、上記のように構成されたロータリ圧縮機20を作動させ、ガスを圧縮、搬送する過程について説明する。
まず、モータ22を作動させると、駆動シャフト26に連結された回転シャフト27が回転してロータ28も回転を開始する。ロータ28はシリンダ室34内で偏心回転運動を行い、これに伴って吸入管24から吸入室にガスが吸入されると同時に圧縮室内に既に吸入されたガスが除々に圧縮される。この時、ロータ28の包絡線Seに合わせた断面形状のシリンダ室34となっているので、回転角度θが0〜360°の全周にわたって漏れ面積Sが小さくなっており、結果として漏れ損失が抑制される。
【0046】
圧縮室内で圧縮されたガスは、吐出ポート38から吐出弁41を押し上げて上部マフラ室40に流入し、その脈動成分が除去される。上部マフラ室40に流入したガスはカバー39に穿設された図示しない透孔を通過し、モータ22の下方に流入して膨張することによってその脈動成分がさらに除去される。モータ22の下方に流入したガスは、固定子22aと回転子22bとのエアギャップおよび固定子22aとハウジング21との間に形成されたガス通路を通過し、モータ22の上方に流入して膨張することによってその脈動成分がさらに除去される。
こうしてモータ22の上方に流入したガスは吐出管25に流入し、図示しない冷却機構に向けて搬送される。
【0047】
一方、冷却機構を流通してきたガスはアキュムレータ50に流入し、微細な油滴(ミスト状)となってガス中に散在している潤滑油が分離される。
また、油だまり33に溜まった潤滑油は、油ポンプ機構32の回転運動によって生じるポンプ作用に促されて回転シャフト27の内部を上方に向けて移動し、図示しない供給路からシリンダ室34内のロータ28とシリンダ29との摺動箇所に供給されるとともに回転シャフト27の上端から噴出してロータリ圧縮機構23を冷却する。
【0048】
ところで、上述した複数の曲率よりなる非円形断面のロータリ圧縮機20は、特にシリンダ室34の断面形状が非円形であるため、その加工及び組立を正確に実施するための基準が必要となる。図2に示す例では、シリンダ29の上面に、シリンダ室34を挟んだ対角位置にドリル加工した2箇所の基準位置加工部60を設けてある。
このような基準位置加工部60を設けることにより、たとえば図示省略の位置決めピンを基準位置加工部60に挿入してシリンダ29に対する上部軸受30等の位置決めをするなど、加工基準や組立基準として利用することができる。
【0049】
上述した基準位置加工部60は、上述した例に限定されることはなく、たとえば基準位置加工部60として矩形状の溝部または突起部を設けることも可能である。この場合、正方形を除く矩形状は2方向の位置決めが可能なため、適当な1箇所に設けた基準位置加工部60とすることができる。
なお、基準位置加工部60の設置位置、形状及び数については、特に限定されるものではない。
【0050】
以上説明したように、本発明のロータリ圧縮機20は、特に回転シャフト27を支持する軸受の軸芯軌跡が真円を描かないことに起因し、ロータ28の包絡線が非円形となって漏れ損失を大きくしているという課題の解決を主目的として複数の曲率よりなる非円形断面を採用するものである。
また、上述したロータリ圧縮機20においては、軸芯軌跡の影響に比べるとかなり小さな値となるものの、高温となる高圧側(圧縮室側)と温度の低い低圧側(吸入室側)との温度差による熱歪みや、シリンダ29をハウジング21に溶接して固定する際の溶接歪みの影響もあるため、これらを含めてシリンダ室34に最適な非円形断面形状を決めることも可能である。
【0051】
以上の説明では、単気筒のロータリ圧縮機20について説明したが、本発明は単気筒に限定されることはなく、2気筒以上の複数気筒を有するロータリ圧縮機への適用も可能なことはいうまでもない。
また、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【0052】
【発明の効果】
上述した本発明のロータリ圧縮機によれば、ロータリ室の断面形状を複数の曲率よりなる非円形としたので、全周にわたって隙間を最小とし、漏れ面積S及び漏れ損失を低減することができる。このようにして漏れ損失が低減されると、定格及び中間性能条件における運転効率が数%向上し、特に、漏れ損失の比率が大きくなる高圧力差条件では、より一層の運転効率向上が期待できる。
【0053】
また、ロータ外径の包絡軌跡に任意の設定隙間δを加えた断面形状とすれば、全周にわたって所望の隙間δを維持することができるので、良好な運転効率を得ることができる。そして、設定隙間δに加工誤差Δδをさらに加えた断面形状とすれば、加工誤差を反映してロータと干渉することがなく、しかも、漏れ損失の小さい最適な断面形状となってより一層良好な運転効率を得ることができる。
【0054】
そして、基準位置加工部を設けたことにより、非円形断面としたシリンダ室の加工、そして、上部軸受等を所定位置に組み込む作業を容易かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るロータリ圧縮機の一実施形態を示す側方断面図である。
【図2】ロータリ圧縮機構の構成例を示す横断面図である。
【図3】軸芯軌跡の一例を示す図で、(a)は上部軸受の軸芯軌跡を示す図、(b)はピン部軸受の軸芯軌跡を示す図、(c)は軸受の原点及びロータの回転角度θに関する説明図である。
【図4】図3(a)及び(b)に示した上部軸受及びピン部軸受の軸芯軌跡を合計して示した図である。
【図5】本発明による非円形(複合円)断面のシリンダ形状例を示す図である。
【図6】図5に示した複合円シリンダ及び従来の真円シリンダについて、ロータの回転角度θと隙間との関係を示す図である。
【図7】ロータリ圧縮機構の従来例を示す要部断面図である。
【図8】漏れ面積Sを示す説明図である。
【符号の説明】
20 ロータリ圧縮機
21 ハウジング
22 モータ
23 ロータリ圧縮機構
24 吸入管
25 吐出管
27 回転シャフト
27a 偏心部(偏心シャフト)
28 ロータ
28a 外周面
28b ピン部軸受
29 シリンダ
30 上部軸受
31 下部軸受
34 シリンダ室
35 ブレード
37 吸入ポート
38 吐出ポート
60 基準位置加工部
S 漏れ面積
H シリンダ高さ

Claims (2)

  1. シャフト偏心部に回転自在に嵌合されたロータがシリンダ室内を旋回し、シリンダに溝を設置しその中に往復が可能な隙間をもって嵌合されたブレードとにより密閉空間を形成することにより被搬送流体の吸入及び圧縮を行うシングルブレードのロータリ圧縮機において、
    前記シリンダ室が、前記ロータ外径の包絡軌跡に任意の設定隙間(δ)を加えた複数の曲率よりなる非円形の断面形状を備えていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  2. シャフト偏心部に回転自在に嵌合されたロータがシリンダ室内を旋回し、シリンダに溝を設置しその中に往復が可能な隙間をもって嵌合されたブレードとにより密閉空間を形成することにより被搬送流体の吸入及び圧縮を行うシングルブレードのロータリ圧縮機において、
    前記シリンダ室が、前記ロータ外径の包絡軌跡に任意の設定隙間(δ)及び加工誤差(Δδ)を加えた非円形の断面形状を備えていることを特徴とするロータリ圧縮機。
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