JP3605536B2 - 自動車用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はヘッドレストを備えた自動車用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車が追突されたときに乗員のムチ打ち障害を防止するために、自動車用シートのシートバック上方に乗員の頭部を後方から受けるヘッドレストが設けられている。しかし、ヘッドレストを固定的に設けたものでは、追突時の衝撃によるシート全体の加速と乗員の慣性によって、シートバックが後方に傾斜すると共に乗員の体が後方又は斜上後方に移動するため、乗員の頭部がヘッドレストの上方にずれて頸部に大きな負荷が作用し、乗員のムチ打ち障害を確実に防止することは困難であった。
【0003】
この様な問題点に対処するため、本出願人は先に実開平7−1842号公報において、後突時に乗員の上半身の後方への移動によってヘッドレストを前方に移動させ、乗員の頭部に接近させることによりムチ打ち障害を防止するようにしたものを提案した。
【0004】
また、図5に示すように、ヘッドレスト支持フレーム32のサポートパイプ33を上下摺動及び前後回動可能に支持する支承部34aを設けたアッパフレーム34をシートバックフレーム31の上部に配設し、サポートパイプ33の下端部に受圧部35を設けるとともに、その両端に一端がシートバックフレーム31に上下揺動自在に枢支されたリンク36の他端を連結し、かつリンク36を下方に向けて揺動付勢する引張ばね37を設け、受圧部35に矢印の如く後方に向けて荷重が作用した時にヘッドレスト支持フレーム32の下端がリンク36の他端の移動軌跡に沿って上昇するとともにサポートパイプ33が支承部34aによってガイドされることによってヘッドレスト支持フレーム32の上端部に配設されたヘッドレスト(図示せず)が斜め前方上方に移動するように構成し、かつヘッドレストの移動端を、サポートパイプ33に固着したストッパ38が支承部34aの下端に係合することによって規制するようにしたものも知られている。
【0005】
また、特願平11−24200号においては、図6に示すように、ヘッドレスト43を装着したヘッドレスト支持フレーム42の上下方向中間部を、シートバックフレーム41の側辺部の上端から適当距離下方位置で枢支ブラケット44にて前後に回動可能に支持し、ヘッドレスト支持フレーム42の下部にシートバックの前面から加わる荷重を受ける受圧部45を設け、追突時に乗員の上半身の後方移動による受圧部45の移動量に対してヘッドレスト43が前方に大きく移動するようにし、またシートバックフレーム41のヘッドレスト支持フレーム42の下部に対応する部分に配設したガイドブラケット46にヘッドレスト支持フレーム42の枢支軸芯を中心とする円弧状のガイド溝47を形成してヘッドレスト支持フレーム42の下部の回動をガイドするとともに回動端を規制してヘッドレスト43の過大な前方移動を防止するようにし、また引張ばね48にてヘッドレスト支持フレーム42の下部を前方に付勢し、一定の付勢力でヘッドレスト支持フレーム42を初期位置に位置決めするようにしたものを開示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図5に示すような構成においては、図6に示した構成に比してヘッドレストの基本的な支持構成が複雑であるために重量及びコストが高くなるばかりでなく、別部材のストッパ38をサポートパイプ33に溶接固着する必要があって、構成部材数及び組み付け工数が増加してコスト高になるとともに、ストッパ機能を奏する支承部34aとストッパ38がそれぞれ別部材に設けられているので、それらの位置精度を高めるのが困難で、ストッパ機能の作用位置にばらつきが発生する恐れがあるという問題がある。
【0007】
また、図6に示すような構成では、ヘッドレスト支持フレーム42を回動自在に支持する枢支ブラケット44とは別にガイドブラケット46を設けてそのガイド溝47にてストッパ機能を奏するようにしているので、構成部材が多くなりかつ枢支ブラケット44とガイドブラケット46の相対的な位置関係を精度良く規制する必要があるため組み付け工数が多くなってコスト高になり、また重量も大きくなるという問題があり、また回動中心とストッパの相対位置にもばらつきを生じ易く、ストッパ機能の作用位置にばらつきが発生する恐れがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、簡単かつ安価な構成にて後突時にヘッドレストを前方に移動させるとともに所定の移動限位置で精度良く停止させて頭部を適切に支持できる自動車用シートを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車用シートは、ヘッドレストを上部に装着すると共にパイプ材を下向きに開放された略コ字状に曲げて形成したヘッドレスト支持フレームを、その両側部においてシートバックフレームの両側部内側に前後に回動可能に支持し、ヘッドレスト支持フレームの下部にシートバックの前面から加わる荷重を受ける受圧部を設け、ヘッドレストが所定距離前方に回動した状態でヘッドレスト支持フレームのそれ以上の回動を停止するストッパを設けた自動車用シートであって、ヘッドレスト支持フレームを回転自在に支持する支軸が装着される支軸装着部とヘッドレスト支持フレームの側部が当接するストッパとが一体成形された枢支ブラケットをシートバックフレームの両側部のそれぞれに固着したことを特徴とする。
【0010】
このような構成により、後突等にて後方に向けて大きな加速度が作用した場合には、乗員の胸部が後方に移動して受圧部に当たり、受圧部が後方に移動することによってヘッドレストが前方に回動し、頭部がヘッドレストにて適切に支持され、その状態でヘッドレスト支持フレームの回動がストッパにて停止するので、ヘッドレストが過大に移動して頭部を強く押圧する恐れがなく、しかもそのストッパをヘッドレスト支持フレームの支持部(支軸装着部)と同一部材(枢支ブラケット)に一体成形して設けているので、別部材が必要でなく、構成部材数を少なくできるとともに組み付け工数も少なくできて重量及びコストの低下を図ることができ、また同一部材に設けているのでストッパ手段の作用位置精度を容易に高くでき、ヘッドレストを所定の移動限位置でばらつきなく精度良く停止させて頭部を適切に支持することができる。
【0011】
また、機種毎にシートバックフレームが異なる場合でもそのシートバックフレームの所定位置に枢支ブラケットを取付けるだけでヘッドレスト支持フレームを支持できるとともに回動限を適正に規制することができ、さらにストッパを枢支ブラケットの取付時の治具に対する位置決め部として利用することもでき、組み付け作業性を向上することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動車用シートの一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0013】
図1において、1は自動車用シートのシートバックであり、シートクッション(図示せず)にリクライニング可能に取付けられている。2はシートバック1の左右両側と上側を取り囲む骨格構造を構成する全体正面形状が略倒立U字状のシートバックフレームである。シートバックフレーム2は、板材のプレス成形品から成る両側の側辺枠板3と、パイプ材を下向きに開放された略コ字状に曲げた上部パイプ4とからなり、上部パイプ4の両側の下端部を側辺枠板3の上端部に一体固着して構成されている。
【0014】
上部パイプ4の両側部の上端から適当距離下方位置の内側に枢支ブラケット5が配設され、上部パイプ4に溶接にて固着されている。この枢支ブラケット5は、図1〜図4に示すように、外側縁が上部パイプ4の前端に接する前面板部6とその内側縁から後方に向けてL字状に延出された内側板部7とから成る横断面略L字状の部材にて構成され、内側板部7の後部下端近傍に軸穴8が形成され、軸穴8の斜め前方上方に適当距離の位置にストッパ9が切り起こしによって一体形成されている。9aはストッパ9の基部のコーナーに突出形成された三角形状の補強ビードである。
【0015】
11はヘッドレスト(図示せず)を支持するヘッドレスト支持フレームで、パイプ材を下向きに開放された略コ字状に曲げて構成したパイプフレーム12にて構成され、その上辺部のヘッドレストから垂下された一対のステー10に対応する部分には前面を扁平にプレス成形した扁平部13が形成されている。この扁平部13に角筒状のステー保持筒14の下部が溶接固着され、ステー保持筒14にてヘッドレストを高さ調整可能に支持できるように構成されている。
【0016】
パイプフレーム12は、シートバックフレーム2の上部パイプ4の内側に丁度嵌まり込む大きさに構成されるとともにその上辺部が上部パイプ4の上辺部の直下に位置するように配設され、ステー保持筒14の上部が上部パイプ4の上辺部の前端に当接するように構成されている。上部パイプ4の上辺部のステー保持筒14が当接する部分にはクッションゴム15が装着されている。
【0017】
そして、パイプフレーム12には、上記のように配設された状態で枢支ブラケット5の軸穴8と一致するように貫通穴16が形成され、この貫通穴16を通して軸穴8に頭付きの支軸17が挿通され、支軸17の先端部に枢支ブラケット5の内側板部7に係合する係止リング18が嵌着されている。これによってヘッドレスト支持フレーム11は、図2に実線で示すようにステー保持筒14がクッションゴム15に当接して停止した後方回動限と、図2に仮想線で示すようにパイプフレーム12がストッパ9に当接して停止した前方回動限との間で前後に回動自在に支持されている。
【0018】
パイプフレーム12の両下端部は受圧部材19にて連結され、この受圧部材19が後突時に乗員の胸部の慣性によってシートバック1の前面に作用する荷重を受ける受圧部20が構成されている。また、受圧部材19の両側下端部とシートバックフレーム2の側辺枠板3の前方の立ち上げ鍔3aの間に引張ばね21が介装され、受圧部20に一定以上の荷重が作用しないとヘッドレスト支持フレーム11の下部が後方に回動しないように構成されている。
【0019】
また、シートバックフレーム2の下部両側の側辺枠板3、3間には、乗員の腰部を弾性的に支持するSばね22が上下2段に配設されている。側辺枠板3には、これらSばね22の両端を係止する係止部23、24が形成されている。
【0020】
また、両側辺枠板3、3の下端部間は連結パイプ25にて相互に連結され、下端にはリクライニング機構(図示せず)に締結固定するナット部材28と補強板27を固着した連結板部26が設けられている。
【0021】
以上の構成において、後突前の通常状態ではヘッドレスト支持フレーム11の下端部が引張ばね21にて前方に付勢されており、ステー保持筒14の上部が上部パイプ4に装着したクッションゴム15に当接した状態でヘッドレストが静止している。
【0022】
次に、自動車が後突された時には、シートが前方に向けて衝撃的に押され、その反動で乗員の上半身が後方に移動し、シートバック1の前面に後方に向けて大きな荷重が作用し、乗員の背中で受圧部20が後方に向けて強く押圧され、ヘッドレスト支持フレーム11の下部が引張ばね21の付勢力に抗して枢支ブラケット5における支軸17回りに後方に回動し、ヘッドレスト支持フレーム11の上部が前方に向けて回動し、ヘッドレストが前方に移動する。その際、受圧部20の後方への移動量に対してヘッドレストは、ヘッドレストと支軸17間の距離と、支軸17と受圧部20間の距離の比だけ拡大して前方に移動するため、枢支ブラケット5を下方に配置することによってヘッドレストの前方移動量を大きく確保することができて、乗員の頭部をヘッドレストによって確実に受け止めることができ、乗員の頸部を保護してむち打ち傷害を防止することができる。
【0023】
また、ヘッドレスト支持フレーム11の上部が前方に回動してヘッドレストにて頭部を適切に支持した状態で、ヘッドレスト支持フレーム11のパイプフレーム12が枢支ブラケット5に設けられたストッパ9に係合し、ヘッドレスト支持フレーム11の回動が停止する。こうしてヘッドレスト支持フレーム11が所定回動位置でストッパ9にて回動停止することにより、高速で後突して非常に大きな加速度が作用した場合でも、ヘッドレストが所定の頭部支持位置よりも前方に移動するのが防止され、ヘッドレストが過大に前方に移動して頭部を強く押し付けるのを防止できる。
【0024】
また、ヘッドレスト支持フレーム11がシートバックフレーム2の側辺部に配設した枢支ブラケット5にて枢支されているので、衝撃に十分に耐える剛性を持ち、また乗員の背中の背部には受圧部20が位置するだけであるので、動作の安定性が高く所望の性能を確保できる。
【0025】
さらに、ストッパ9はヘッドレスト支持フレーム11を回転自在に支持する枢支ブラケット5に設けているので、ストッパ手段として別部材が必要でなく、構成部材数を少なくできるとともに組み付け工数も少なくできて重量及びコストの低下を図ることができ、また同一の部材に設けているのでストッパ9の作用位置精度を容易に高くでき、ヘッドレストを所定の移動限位置でばらつきなく精度良く停止させて頭部を適切に支持することができる。
【0026】
また、ヘッドレスト支持フレーム11を回転自在に支持する支軸17が装着されるとともにストッパ9が突設された枢支ブラケット5をシートバックフレーム2に固着するように構成しているので、機種毎にシートバックフレーム2が異なる場合でもそのシートバックフレーム2の所定位置に枢支ブラケット5を取付けるだけでヘッドレスト支持フレーム11を支持できるとともに回動限を適正に規制することができる。
【0027】
また、枢支ブラケット5をシートバックフレーム2に取付ける時に、ストッパ9を枢支ブラケット5の取付治具に対する位置決め部として利用することもでき、組み付け作業性を向上することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の自動車用シートによれば、構成部材数を少なくできるとともに組み付け工数も少なくできて重量及びコストの低下を図ることができ、またストッパ手段の作用位置精度を容易に高くでき、ヘッドレストを所定の移動限位置で精度良く停止させて頭部を適切に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用シートの一実施形態におけるフレーム構成の全体正面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1のB−B矢視断面図である。
【図4】同実施形態における枢支ブラケットを示し、(a)は正面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図5】従来例の自動車用シートの斜視図である。
【図6】他の従来例の自動車用シートの斜視図である。
【符号の説明】
1 シートバック
2 シートバックフレーム
5 枢支ブラケット
9 ストッパ
11 ヘッドレスト支持フレーム
17 支軸
20 受圧部
Claims (1)
- ヘッドレストを上部に装着すると共にパイプ材を下向きに開放された略コ字状に曲げて形成したヘッドレスト支持フレームを、その両側部においてシートバックフレームの両側部内側に前後に回動可能に支持し、ヘッドレスト支持フレームの下部にシートバックの前面から加わる荷重を受ける受圧部を設け、ヘッドレストが所定距離前方に回動した状態でヘッドレスト支持フレームのそれ以上の回動を停止するストッパを設けた自動車用シートであって、ヘッドレスト支持フレームを回転自在に支持する支軸が装着される支軸装着部とヘッドレスト支持フレームの側部が当接するストッパとが一体成形された枢支ブラケットをシートバックフレームの両側部のそれぞれに固着したことを特徴とする自動車用シート。
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