JP3601228B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、非圧縮性流体が封入された流体室を備えており、該流体室における内圧や内圧変化に伴う流体流動をコントロールすることによって防振特性を適当に調節することの出来る流体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等としての防振装置の一種として、特開昭60−8540号公報,特開昭61−2939号公報等に記載されているように、互いに離隔配置された第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、それら第一の取付部材と第二の取付部材の間への振動入力時に本体ゴム弾性体の変形によって内圧変動が生ぜしめられる、非圧縮性流体が封入された主液室を設けると共に、かかる主液室の壁部の一部を可動部材で構成し、防振すべき振動に対応した適当な周波数で可動部材を加振せしめて主液室の内圧をコントロールすることにより、防振特性を適当に調節するようにした流体封入式防振装置が、知られている。
【0003】
また、実開昭61−191543号公報等には、振動入力時に内圧変化が生ぜしめられる主液室に対してオリフィス通路を通じて連通された副液室を形成し、それら主液室と副液室をオリフィス通路を通じて相互に連通すると共に、副液室の壁部の一部を可動部材で構成し、該可動部材を加振することにより副液室に内圧変化が生ぜしめられるようにした流体封入式防振装置が、提案されている。かかる防振装置においては、振動入力時に主液室に惹起される内圧変動を考慮して、可動部材の加振によって副液室に生ぜしめられる内圧変化を調節することにより、オリフィス通路を通じての流体の流動を制御することが出来るのであり、それ故、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用を利用したり、或いは副液室の内圧をオリフィス通路を通じて及ぼして主液室の内圧を制御したりすること等によって、防振効果を有利に得ることが出来るのである。
【0004】
ところで、このような流体封入式防振装置において、目的とする防振効果を有効に得るためには、入力振動に対応した大きさと周波数で流体室の圧力制御を行う必要があり、入力される振動荷重が大きい場合には、流体室に大きな圧力変化を生ぜしめるために、可動部材に対して大きな加振力を及ぼしめることが必要となる。
【0005】
ところが、従来の流体封入式防振装置では、可動部材に及ぼされる加振力を大きくしようとすると、可動部材に加振力を及ぼす加振装置ひいては防振装置全体のサイズや重量の増大が避けられないために、要求される防振特性の実現が難しい場合があった。
【0006】
また、従来では、可動部材に加振力を及ぼす加振装置として、一般に、電磁駆動手段が採用されているが、かかる電磁駆動手段の出力を増大させて大きな加振力を得ようとすると、コイルへの通電時の発熱に起因する温度上昇や、消費電力の増大等も問題となるために、要求される防振特性の達成がより難しかったのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、請求項1乃至10に記載の発明は、何れも、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、可動部材の加振によって流体室に大きな内圧変化を効率的に生ぜしめることが可能であり、それによって、要求される防振特性が有利に実現され得る、構造が簡単でコンパクトな流体封入式防振装置を提供することにある。
【0008】
また、請求項1乃至10に記載の発明は、何れも、周波数域が異なる複数種の入力振動や広い周波数域に亘る入力振動等に対しても、流体室の内圧制御に基づいて有効な防振効果を得ることが出来る流体封入式防振装置を提供することも、目的とする。
【0009】
【解決手段】
そして、このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明の特徴とするところは、互いに離隔配置された第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、非圧縮性流体が封入された流体室を形成すると共に、該流体室の壁部の一部を可動部材で構成せしめて、該可動部材を加振することにより、該流体室の内圧を制御せしめて防振特性を調節するようにした流体封入式防振装置において、複数のマス部材を弾性板によって相互に連結して前記第一の取付部材または前記第二の取付部材に対して弾性的に支持せしめることにより、前記可動部材を実質的に複数の振動系を含んで構成し、それらの振動系に対して加振力を及ぼしめるようにすると共に、前記流体室を、前記本体ゴム弾性体により壁部が構成されて振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる主液室と、前記可動部材で壁部の一部が構成されて、オリフィス通路を通じて、該主液室に連通せしめられるようにされた副液室とを含んで構成し、該可動部材の加振によって該副液室に内圧変化が生ぜしめられるようにしたことにある。
【0010】
このような請求項1に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、可動部材において複数の振動系が構成されていることから、可動部材を加振する場合に、各振動系の固有振動数域での加振時には、かかる振動系の共振現象が生ぜしめられ、その共振作用に基づき、小さな加振力によって可動部材が有利に加振駆動されて、流体室に大きな内圧変化が生ぜしめられることとなる。
【0011】
なお、弾性板は、適当なばね定数を発揮し得るものであれば良く、材質等は特に限定されるものでないが、例えば、ゴム弾性板や金属製板ばね等が採用される。また、各振動系は、防振すべき振動に対応した固有振動数を有するように、マス部材の質量と弾性板のばね定数が、それぞれ設定される。更に、各振動系が、弾性板によって相互に連結されて連続的に形成されている場合には、かかる振動系に対する加振力を、少なくとも一つの振動系に対して直接に及ぼすことにより、他の振動系を、弾性板を介して間接的に加振せしめることが出来る。
【0012】
そして、このような請求項1に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、大型化や重量化を回避しつつ、流体室に大きな内圧変化を生ぜしめることが可能であり、それによって、流体室の内圧制御に基づく防振効果が有効に発揮されるのである。
【0013】
また、かかる流体封入式防振装置においては、可動部材が複数の振動系を含んで構成されていることから、それら各振動系の固有振動数を異ならせることによって、複数の或いは広い周波数域に亘る入力振動に対して、それぞれ、流体室の内圧制御に基づく防振効果を、各振動系の共振作用を利用して有利に得ることが出来るのである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記複数のマス部材が、互いに同心的に離隔配置されていることを、特徴とする。
【0015】
このような請求項2に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置にあっては、可動部材において複数の振動系が有利に且つ効率的に配置されて構成されると共に、各振動系が、その固有振動数域で有利に加振せしめられる。それによって、各振動系の固有振動数域で、流体室における内圧変化がより効率的に生ぜしめられて、各振動系の固有振動数域の入力振動に対して、流体室の内圧制御に基づく防振効果がより有効に発揮されることとなる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記可動部材を挟んで前記流体室とは反対側に密閉された作用空気室を形成し、該作用空気室に外部から及ぼされる空気圧変化に基づいて、前記振動系に対して加振力が及ぼされるようにしたことを、特徴とする。
【0017】
このような請求項3に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、作用空気室に空気圧変動を及ぼすことによって、かかる空気圧の作用によって振動系が加振せしめられるのであり、それ故、装置内部に電磁駆動手段等を組み込む必要がなく、装置の構造の簡略化や、更なる小型,軽量化が有利に達成され得る。加えて、このような流体封入式防振装置においては、長時間に亘る連続的な使用に際しても、発熱による高温化や消費電力の確保等が問題となるようなことがないのであり、特に自動車用防振装置等に用いる場合には、内燃機関において負圧力を容易に得ることが可能であることから、特別な空気圧源等を新たに設ける必要もない。
【0018】
しかも、作用空気室を、可動部材の背後の略全体に亘って形成すれば、複数の振動系に対して、何れも、加振力を有効に且つ直接的に作用せしめることが可能となり、各振動系に対して加振力を効率的に及ぼすことが出来る。
【0019】
なお、請求項3に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、請求項4に記載されているように、前記作用空気室に及ぼされる空気圧を、防振すべき振動の周波数に同期して変化せしめる空気圧制御装置が、好適に採用され、それによって、入力振動に対して有効な防振効果が安定して発揮される。ここにおいて、防振すべき振動の周波数に同期して作用空気室の空気圧を変動させるためには、例えば、作用空気室を、切換弁の操作によって負圧等の空気圧源と大気中とに択一的に切換接続すること等によって、有利に為され得る。また、その際、切換弁としては、制御が容易で切り換えを高速で行うことが出来るように、例えば電磁切換弁等が好適に採用され得、例えば、加速度センサ等によって検出された防振対象の振動信号に基づいて、該防振対象の振動が小さくなるように、作用空気室への空気圧制御を行う切換弁を、公知の適応制御やマップ制御等で切換制御すること等によって、各作用空気室の空気圧制御が有利に実施され得る。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記流体室が、前記本体ゴム弾性体により壁部の一部が構成されて振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる主液室を含んで構成されていると共に、該主液室の壁部の別の部分が前記可動部材にて構成されて、該可動部材における前記振動系の加振によって該主液室に直接に内圧変化が及ぼされるようになっていることを、特徴とする。
【0021】
このような請求項5に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、振動系の加振により主液室の内圧を直接的にコントロールせしめて防振特性を制御することが出来るのである。
【0022】
また、前記請求項に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記流体室が、前記本体ゴム弾性体により壁部が構成されて振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる主液室と、前記可動部材で壁部の一部が構成されてオリフィス通路を通じて該主液室に連通せしめられた副液室を含んで構成されており、該可動部材における前記振動系の加振によって該副液室に内圧変化が生ぜしめられるようにされていることを、特徴とする。
【0023】
このような構造とされた流体封入式防振装置においては、振動系の加振によって副液室に圧力変化が及ぼされることから、振動入力による主液室の圧力変動を考慮して、入力振動に対する適当な位相差で振動系を加振して副液室の内圧をコントロールすることにより、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の流動作用やオリフィス通路を通じての主液室の内圧制御に基づいて、目的とする防振特性を得ることが出来るのである。
【0024】
また、請求項7に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記副液室が互いに独立して複数形成されており、且つそれら各副液室の壁部の一部が、それぞれ前記可動部材における前記複数の振動系の何れかによって構成されていると共に、それら各副液室を前記主液室に連通せしめる複数のオリフィス通路が形成されていることを、特徴とする。
【0025】
このような請求項7に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、各オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて、互いに異なる周波数域の入力振動に対する有効な防振効果を得ることが可能となり、広い周波数域に亘って優れた防振効果が発揮され得る。
【0026】
なお、複数のオリフィス通路を形成する場合には、各副液室を主液室に対して、それぞれ直接的に連通せしめるように各オリフィス通路を形成することも可能であるが、副液室間に跨がってオリフィス通路を形成することにより、副液室を主液室に対して、他の副液室を介して、間接的に連通せしめるようにしても良い。
【0027】
そして、そのように副液室を主液室に対して、他の副液室を介して、間接的に連通せしめるようにオリフィス通路を形成する場合には、例えば、請求項8に記載されているように、複数のオリフィス通路を、複数の副液室と主液室を互いに直列的に接続するように形成すると共に、該主液室に近いオリフィス通路ほど高周波側にチューニングすることが望ましい。このような請求項8に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、特別なオリフィス通路の切換手段等を設けることなく、各オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果を、何れも、有効に得ることが出来るのである。
【0028】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記流体室が、前記本体ゴム弾性体により壁部の一部が構成されて振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる主液室を含んで構成されている一方、該主液室とは独立して、壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室が設けられ、該平衡室に前記非圧縮性流体が封入されていると共に、該平衡室を前記主液室に連通する流体連通路が形成されていることを、特徴とする。
【0029】
このような請求項9に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、振動入力時に主液室に圧力変動が生ぜしめられることにより、主液室と平衡室の間に圧力差が生じて、それら両室間で、流体連通路を通じての流体流動が生ぜしめられるのであり、そして、この流体連通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて、有効な防振効果が発揮されることとなる。
【0030】
それ故、例えば、かかる流体連通路を前記オリフィス通路と併せて採用し、該流体連通路に対してオリフィス通路とは異なるチューニングを施せば、オリフィス通路による防振効果が発揮される入力振動とは異なる振動に対して、有効な防振効果を得ることが出来、防振性能の更なる向上が図られ得る。
【0031】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れかに記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記可動部材を構成する前記弾性板が、弾性に基づく一定形状への復元力を有していることを、特徴とする。
【0032】
このような請求項10に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、可動部材を構成する各振動系に対する外力(加振力)を解除した状態下で、各振動系が略一定位置に復帰,保持されることから、流体室の内圧コントロールが容易となる。また、特に、請求項3に記載の発明に従って、空気圧により振動系の加振力を得る場合には、作用空気室に及ぼされる空気圧を解除した際、振動系が所定位置に復帰せしめられることから、例えば、作用空気室に及ぼされる空気圧として、負圧または正圧の何れか一方の側だけで変動する空気圧や、或いは一定の大きさの負圧または正圧の一方と大気圧との交互の切り換えによる変動空気圧等を採用して、可動部材を有利に加振せしめることが可能となる。
【0033】
なお、弾性板の弾性に基づく一定形状への復元力を補助するために、弾性板に対して特定方向の付勢力を常時及ぼす付勢手段を設けることも可能であり、例えば、付勢手段としてコイルスプリング等を採用すれば、弾性板の一定形状への復元性を有利に且つ長期間に亘って安定して得ることが出来る。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0035】
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が、示されている。このエンジンマウント10は、互いに所定距離を隔てて対向配置された第一の取付部材および第二の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付金具14を有していると共に、それら両取付金具12,14が本体ゴム弾性体16によって連結されており、第一の取付金具12と第二の取付金具14の各一方が、パワーユニット側とボデー側の何れかに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、かかるエンジンマウント10においては、自動車への装着時にパワーユニット荷重が及ぼされることにより、本体ゴム弾性体16が圧縮変形せしめられる。また、そのような装着状態下、防振すべき振動が、第一の取付金具12と第二の取付金具14の略対向方向(図1中の上下方向)に入力されることとなる。なお、以下の説明中、上方および下方とは、原則として、図1中の上方および下方をいうものとする。
【0036】
より詳細には、第一の取付金具12は、それぞれ略有底円筒形状の上金具18と下金具20が、各開口側で互いに軸方向に重ね合わされてボルト連結されることにより、中空構造をもって形成されている。なお、上金具18の底壁部には、外方に突出する取付ボルト22が固設されており、この取付ボルト22によって、第一の取付金具12がパワーユニット側またはボデー側に取り付けられるようになっている。
【0037】
また、第一の取付金具12の中空内部には、可撓性膜としての変形容易な薄肉の略円板形状を有するゴム弾性膜23が収容配置されており、外周縁部を上下金具18,20間で挟持されることによって、第一の取付金具12の中空内部が、ゴム弾性膜23を挟んで、上金具18側と下金具20側とに流体密に仕切られている。これにより、ゴム弾性膜23と下金具20の間には、非圧縮性流体が封入されてゴム弾性膜23の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室24が形成されていると共に、ゴム弾性膜23と上金具18の間には、外部空間に連通されてゴム弾性膜23の変形を許容する空気室25が形成されている。なお、封入流体としては、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が何れも採用可能であるが、流体の共振作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の粘度を有するものが望ましい。
【0038】
さらに、第一の取付金具12を構成する下金具20の底壁部には、円板形状の通路形成金具26が重ね合わされてボルト固定されている。そして、これら下金具20と通路形成金具26の重ね合わせ面間において、周方向に一周弱の長さで延びる流体連通路27が形成されており、該流体連通路27の一方の端部が、平衡室24に連通せしめられている。
【0039】
また一方、第二の取付金具14は、円環ブロック形状の支持金具28と円板形状の底金具29が、互いに軸方向に重ね合わされてボルト連結されることにより構成されており、全体として、上面中央部に開口する凹所30を備えた厚肉の有底円筒形状を有している。なお、底金具29には、下方に突出する取付ボルト33が立設されており、この取付ボルト33によって、第二の取付金具14がボデー側またはパワーユニット側に取り付けられるようになっている。
【0040】
そして、この第二の取付金具14が、第一の取付金具12に対して、軸方向下方に所定距離を隔てて対向位置せしめられており、それらの間に介装された本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
【0041】
かかる本体ゴム弾性体16は、厚肉のテーパ筒形状を有しており、その小径側開口部が、第一の取付金具12を構成する下金具20の外周面に加硫接着されて固着されている一方、その大径側開口部に連結リング31が加硫接着されており、かかる連結リング31が第二の取付金具14を構成する支持金具28の上面に重ね合わされてボルト固定されることにより、大径側開口部が第二の取付金具14に固着されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の対向面間において、周囲を本体ゴム弾性体16で画成されて外部空間に対して流体密に閉塞された内部空所が形成されている。なお、本体ゴム弾性体16の軸方向中間部分には、弾性変形の安定化を図り座屈等を防止するための拘束リング32が加硫接着されている。
【0042】
また、第二の取付金具14に形成された凹所30の内部には、全体として略円板形状を有する可動部材34が収容配置されており、この可動部材34によって、第一の取付金具12と第二の取付金具14の対向面間に形成された内部空所が、第一の取付金具12側と第二の取付金具14側とに、流体密に仕切られている。そして、可動部材34を挟んで、第一の取付金具12側には、非圧縮性流体が封入されて流体室36が形成されている一方、第二の取付金具14側には、作用空気室38が形成されており、第二の取付金具14(底金具29)を貫通して形成された空気給排路39を通じての作用空気室38への空気の給排によって、可動部材34に及ぼされる空気圧が可変されるようになっている。なお、流体室36の封入流体としては、第一の取付金具12内に形成された平衡室24の封入流体と同じものが採用される。
【0043】
ここにおいて、可動部材34は、略円板形状を有するゴム弾性板40を有しており、このゴム弾性板40の中央部分に対して、円板形状の第一のマス金具42が加硫接着されていると共に、ゴム弾性板40の径方向中間部分に対して、円環形状の第二のマス金具44が加硫接着されている。換言すれば、第二のマス金具44は、第一のマス金具42の径方向外方に所定距離を隔てて同心的に配設されており、これら第一及び第二のマス金具42,44が、ゴム弾性板40で弾性的に連結されている。そして、ゴム弾性板40は、その外周面が支持金具28の内周面に加硫接着されることにより、第二の取付金具14で支持されて、底金具29から上方に所定距離だけ離れて配設されている。
【0044】
また、可動部材34には、全体として略厚肉の円板形状を有する第一の仕切部材46が上方から重ね合わされ、外周縁部を第二のマス金具44の上面に載置された状態で、該第二のマス金具44に対してボルト固定されている。そして、この第一の仕切部材46の中央部分が、第一のマス金具42が加硫接着された可動部材34の中央部分から上方に所定距離だけ離隔位置せしめられていることにより、第二のマス金具44よりも径方向内方において、可動部材34と第一の仕切部材46の対向面間に、第一の副液室48が形成されている。
【0045】
更にまた、可動部材34の上方には、薄肉の金属板にて形成された略ハット形状の第二の仕切部材50が配設されており、外周鍔部を支持金具28と連結リング31の間で挟持されることにより、第二の取付金具14に対して固定されている。そして、この第二の仕切部材50が、第一の仕切部材46が装着された可動部材34から上方に所定距離だけ離隔位置せしめられていることにより、第一の仕切部材46が装着された可動部材34と第二の仕切部材50の対向面間に、第二の副液室52が形成されている。
【0046】
また一方、第二の仕切部材50を挟んで、第二の副液室52と反対側には、第一の取付金具12と第二の仕切部材50の対向面間に、主液室53が形成されている。この主液室53は、周壁部が本体ゴム弾性体16で構成されており、振動入力時に、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて内圧変動が生ぜしめられるようになっている。また、かかる主液室53は、第一の取付金具12の内部に形成された平衡室24に対して、流体連通路27を通じて連通されている。そして、振動入力時に、主液室53と平衡室24の間に惹起される内圧差によって流体連通路27を通じての流体流動が生ぜしめられることにより、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。なお、流体連通路27のチューニング周波数は何等限定されるものでないが、特に本実施形態では、流体連通路27が低周波数域にチューニングされており、該流体連通路27を通じての流体流動作用に基づいて、例えばシェイク等の低周波振動に対して有効な防振効果が発揮されるように、流体連通路27の長さや断面積等が設定されている。
【0047】
要するに、上述の如き第一の仕切部材46と第二の仕切部材50によって、第一の取付金具12と可動部材34の間に形成された流体室36が三つに仕切られており、以て、第一の副液室48,第二の副液室52および主液室53が形成されているのである。また、第一の副液室48および第二の副液室52は、何れも、壁部の一部が可動部材34によって構成されている。そして、可動部材34のうち、第一の副液室48の壁部を構成する部分が、第一のマス金具42と、該第一のマス金具42を第二のマス金具44に対して弾性的に連結するゴム弾性板40における環状の第一の弾性連結部54とによって形成されて、第一の振動系55が構成されている。また、可動部材34のうち、第二の副液室52の壁部を構成する部分が、第一の仕切部材46が取り付けられた第二のマス金具44と、該第二のマス金具44を第二の取付金具14に対して弾性的に連結するゴム弾性板40における環状の第二の弾性連結部56とによって形成されて、第二の振動系57が構成されている。
【0048】
さらに、第一の仕切部材46は、厚肉の下板金具58の上面に薄肉の上板金具59が重ね合わされることによって構成されており、下板金具58に設けられた所定長さの凹溝60が上板金具59で覆蓋されることにより、第一の副液室48と第二の副液室52を相互に連通する第一のオリフィス通路62が形成されている。また、第二の仕切部材50には、中央部分を軸方向に貫通して延び、第二の副液室52と主液室53を相互に連通する第二のオリフィス通路64が形成されている。要するに、第一のオリフィス通路62および第二のオリフィス通路64は、第一の副液室48と第二の副液室52と主液室53を、互いに直列的に接続連通せしめるようにして、第一の副液室48と第二の副液室52の間および第二の副液室52と主液室53の間に跨がってそれぞれ形成されているのである。
【0049】
そして、これら第一のオリフィス通路62と第二のオリフィス通路64を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて、所定の防振効果が発揮されるようになっている。なお、これら第一及び第二のオリフィス通路62,64のチューニング周波数は何等限定されるものでないが、特に本実施形態では、第一のオリフィス通路62が、第一の取付金具12に形成された流体連通路27よりも高周波数域に、また第二のオリフィス通路64が第一のオリフィス通路62よりも更に高周波数域に、それぞれチューニングされている。具体的には、例えば、第一のオリフィス通路62を流通せしめられる流体の共振作用に基づいてアイドリング振動等の中周波振動に対して有効な防振効果が発揮されるように、また第二のオリフィス通路64を流通せしめられる流体の共振作用に基づいてこもり音等の高周波振動に対して有効な防振効果が発揮されるように、各オリフィス通路62,64の通路長さや断面積等が設定されている。
【0050】
また、ここにおいて、第一の副液室48の壁部を構成する第一の振動系55は、その固有振動数が、第一のオリフィス通路62のチューニング周波数に対応するように設定されていると共に、第二の副液室52の壁部を構成する第二の振動系57は、その固有振動数が、第二のオリフィス通路64のチューニング周波数に対応するように設定されている。なお、第一の振動系55では、第一のマス金具42の質量と第一の弾性連結部54のばね定数を調節することによって固有振動数をチューニングすることが出来る。また、第二の振動系57では、第二のマス金具44と第一の仕切部材46の質量と第二の弾性連結部56のばね定数を調節することによって固有振動数をチューニングすることが出来る。なお、第二の振動系57のチューニングに際しては、必要に応じて、第一のオリフィス通路62の実質的な閉塞化に伴う第一の副液室48の封入流体等の質量の影響なども考慮される。
【0051】
上述の如き構造とされたエンジンマウント10は、自動車への装着状態下において、空気給排路39に固着されたポート66に空気圧管路68が接続せしめられ、この空気圧管路68と空気給排路39を通じて、作用空気室38が、切換バルブ70に接続される。そして、この切換バルブ70の切換作動に従って、作用空気室38が負圧タンク72と大気中とに択一的に連通せしめられるようにされる。要するに、切換バルブ70の切換操作によって、作用空気室38には、負圧と大気圧とが、択一的に及ぼされることとなり、切換バルブ70を、適当な周期で切換作動せしめることによって、作用空気室38に周期的な空気圧変動が生ぜしめられるようにされる。
【0052】
それ故、切換バルブ70を防振すべき振動に対応した周波数で切り換えれば、作用空気室38の空気圧変動が可動部材34に及ぼされて、可動部材34が、ゴム弾性板40の弾性変形に基づいて変形加振されることにより、この可動部材34にて壁部の一部が構成された第一の副液室48および第二の副液室52に対して、防振すべき振動に対応した周波数で内圧変化が生ぜしめられることとなる。その結果、かかる第一及び第二の副液室48,52と、振動入力によって内圧変動が惹起される主液室53の間に、内圧差が有利に惹起されて、かかる内圧差に基づき、第一のオリフィス通路62や第二のオリフィス通路64を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、以て、流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が発揮されるのである。
【0053】
なお、切換バルブ70の切換作動による可動部材34の加振制御に際しては、加速度センサ等で検出された入力振動に対応した基準信号を用いて、制振対象における振動を出来るだけ小さくする適応制御等のフィードバック制御やマップ制御等が、何れも採用され得、要求される防振効果が有利に発揮されるように、周期や位相差,加振力等が決定されることとなる。また、このことから明らかなように、本実施形態では、切換バルブ70および該切換バルブ70の切換作動制御系を含んで、作用空気室38に及ぼされる空気圧を防振すべき振動の周波数に同期して変化せしめる空気圧制御装置が構成される。
【0054】
そこにおいて、可動部材34によって構成された第一の副液室48の壁部では、第一のオリフィス通路62のチューニング周波数に対応した固有振動数を有する第一の振動系55が構成されていることから、その固有振動数の領域において、第一の振動系55自体の共振現象に基づき、作用空気室38での小さな空気圧変動による加振力によって、第一の副液室48に大きな内圧変動を効率的に生ぜしめることが出来る。それ故、かかる第一の振動系55の固有振動数に対応してチューニングされた第一のオリフィス通路62において、そのチューニング周波数域での流体流動量が一層有利に確保されることとなり、以て、第一のオリフィス通路62を通じて流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果が一層有効に発揮されるのである。
【0055】
また、可動部材34によって構成された第二の副液室52の壁部では、第二のオリフィス通路64のチューニング周波数に対応した固有振動数を有する第二の振動系57が構成されていることから、その固有振動数の領域において、第二の振動系57自体の共振現象に基づき、作用空気室38での小さな空気圧変動による加振力によって、第二の副液室52に大きな内圧変動を効率的に生ぜしめることが出来る。それ故、かかる第二の振動系57の固有振動数に対応してチューニングされた第二のオリフィス通路64において、そのチューニング周波数域での流体流動量が一層有利に確保されることとなり、以て、第二のオリフィス通路64を通じて流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果が一層有効に発揮されるのである。
【0056】
なお、第二のオリフィス通路64は第一のオリフィス通路62よりも高周波数域にチューニングされているから、第一の振動系55の共振周波数域では、第一及び第二のオリフィス通路62,64の何れも流体流通抵抗が小さく維持されて、第一のオリフィス通路62を通じて第一の副液室48から流出入せしめられる流体が、第二のオリフィス通路64を介して、主液室53との間で有利に流動せしめられるのであり、また、第二の振動系57の共振周波数域では、第一のオリフィス通路62の流体流通抵抗が著しく大きくなって実質的に閉塞状態となるために、第二の副液室52の内圧変化に伴って、該第二の副液室52と主液室53の間で第二のオリフィス通路64を通じて流動せしめられる流体量が有利に確保されることとなる。それ故、オリフィス通路の切換手段等を設けなくても、第一のオリフィス通路62および第二のオリフィス通路64の何れにおいても、各チューニング周波数域での流体流通量が有利に確保されることとなり、流体の共振作用等に基づく防振効果が、それぞれ、極めて有効に発揮されるのである。
【0057】
また、本実施形態のエンジンマウント10においては、それ自体に電磁駆動手段等のアクチュエータ部材を組み込む必要がないことから、構造が極めて簡単で製作で容易であり、軽量でコンパクト且つ安価であるといった大きな利点がある。しかも、構造が簡単であることから、耐久性や信頼性にも優れており、故障した場合でも対処が容易であるといった利点もある。
【0058】
さらに、本実施形態のエンジンマウント10においては、負圧力を利用して可動部材34に加振力が及ぼされることから、特に内燃機関を利用した自動車等において、吸気系に生ずる負圧を有効に活用することが出来、特別な駆動エネルギの発生手段が必要ないことに加えて、連続的な作動に際しても、電磁駆動手段等を採用した場合に問題となり易い通電発熱や電力消費等が問題とされることなく、長時間に亘って安定した性能が発揮されるのである。
【0059】
しかも、負圧力を利用して可動部材34に加振力を及ぼすことにより、可動部材34の全体に加振力を及ぼすことが可能であり、それによって、第一及び第二の振動系55,57に対して、何れも、直接的に加振力が及ぼされることから、第一及び第二の振動系55,57の加振制御を容易且つ有利に行うことが出来るといった利点もある。
【0060】
また、本実施形態のエンジンマウント10においては、可動部材34において第一のマス金具42と第二のマス金具44が互いに同心的に離隔配置されていると共に、第一の取付金具12と可動部材34の間に、第二のマス金具44で支持された第一の仕切部材46と、第二の取付金具14で支持された第二の仕切部材50が、所定距離を隔てて配設されて流体室36が仕切られていることから、それぞれ可動部材34にて壁部の一部が構成された第一及び第二の副液室48,52と主液室53が、簡単な構造と効率的な配置形態をもって有利に形成され得るのである。
【0061】
更にまた、本実施形態のエンジンマウント10においては、第一のオリフィス通路62と第二のオリフィス通路64が、第一の副液室48,第二の副液室52および主液室53の間に跨がって直列的に形成されていることから、第一及び第二のオリフィス通路62,64を、簡単な構造をもって、且つコンパクトに形成することが出来るといった利点もある。
【0062】
また、本実施形態のエンジンマウント10においては、ゴム弾性板40の弾性による復元力に基づいて、作用空気室54が大気中に接続された状態下で、可動部材34が略平板形状に保持されることから、作用空気室38に対して所定大きさの負圧を断続的に及ぼすことによって、第一及び第二の振動系55,57に対して加振力を容易に且つ有利に作用せしめることが出来るのである。
【0063】
なお、圧縮エアが容易に得られる場合には、負圧力に代えて正圧力を利用してゴム弾性板40を変形変位させても良く、また、負圧乃至は正圧の範囲内で圧力を増減させることによってゴム弾性板40を変形変位させることも、勿論可能である。
【0064】
また、本実施形態の如く、負圧力と正圧力の何れか一方だけを用いて、ゴム弾性板40を変形変位させる場合には、ゴム弾性板40自体の弾性による復元変位力を補助するために、ゴム弾性板40と第二の取付金具14(底金具29)の間に、コイルスプリング等の付勢手段を配設することも、有効である。
【0065】
更にまた、流体連通路27や平衡室24は、マウント要求特性に応じて採用されるものであって、必ずしも設ける必要はない。また、マウント要求特性によっては、互いに異なるチューニングが施された流体連通路27を複数設けることも可能である。
【0066】
さらに、可動部材34における振動系55,57に対して加振力を及ぼす加振手段として、本実施形態の如き空気圧機構以外のものも、適宜に採用され得る。具体的には、例えば、図2に示されているように、第一の振動系55を構成する第一のマス金具42に対して、コイル74が巻回装着されたボビン76をボルト固定する一方、支持金具28に対して、永久磁石78とヨーク部材80,82をボルト固定せしめて、コイル74の周りに磁路を形成することにより、コイル74への交番電流の通電にて生ぜしめられる電磁力を利用して第一のマス金具42に加振力を及ぼす電磁駆動手段を採用することも可能である。なお、かかる構造の電磁駆動手段において、第二の振動系57には、ゴム弾性板40を介して、加振力が伝達されることとなる。また、ヨーク部材80,82は、支持金具28と協働して第二の支持金具14を構成しており、ヨーク部材82に形成されたボルト穴79によって、かかる第二の取付金具14がボデー側またはパワーユニット側に取り付けられるようになっている。なお、図2に示されたエンジンマウント83では、その理解を容易とするために、前記第一実施形態と同様な構造とされた部材および部位に対して、それぞれ、図中に、第一実施形態と同一の符号を付しておく。
【0067】
また、前記第一実施形態のエンジンマウント10においては、可動部材34における第一の振動系55および第二の振動系57によって、第一の副液室48および第二の副液室52の壁部の一部が構成されており、それら第一及び第二の振動系55,57の加振によって、第一及び第二の副液室48,52の内圧を変化せしめて、第一及び第二のオリフィス通路62,64を通じての流体流動を積極的に生ぜしめることにより、それらのオリフィス通路62,64における流体流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっていたが、主液室53の壁部の一部を可動部材34における振動系で構成せしめて、該振動系を加振し、主液室53の内圧を直接的に制御することによって目的とする防振特性を得ることも可能である。その具体的構成例が、図3に示されている。なお、図3においては、特徴的部分だけを示すものとし、第一実施形態と同一構造とされた部分については図示を省略すると共に、第一実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、第一実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0068】
すなわち、図3に示されたエンジンマウント84においては、第一の実施形態としてのエンジンマウント(10)に比して、第二の仕切部材(50)が採用されておらず、流体室36が、第一の仕切部材46によって仕切られた第一の副液室48と主液室53とから構成されている。これにより、主液室53の壁部の一部が、第一の仕切部材46が装着された可動部材34にて構成されている。そして、可動部材34のうち、主液室53の壁部を構成する部分が、第一の仕切部材46が取り付けられた第二のマス金具44と、該第二のマス金具44を第二の取付金具14に対して弾性的に連結するゴム弾性板40における環状の第二の弾性連結部56とによって形成された第二の振動系57とされているのである。
【0069】
従って、このような構造とされたエンジンマウント84においては、第一のオリフィス通路62および第一の振動系55がチューニングされた中周波数域の入力振動に対しては、その振動周波数に対応した周期で作用空気室38に空気圧変化を及ぼして第一の振動系55を加振することにより、第一のオリフィス通路62を通じて第一の副液室48と主液室53の間を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて、前記第一実施形態と同様な防振効果が有効に発揮され得る一方、高周波数域の入力振動に対しては、その振動周波数に対応した周期で作用空気室38に空気圧変化を及ぼして第二の振動系57を加振することにより、主液室53の内圧を積極的に制御することが出来るのであり、主液室53の内圧制御に基づく防振効果を得ることが出来るのである。
【0070】
そこにおいて、第二の振動系57の固有振動数を、主液室53の内圧制御に基づいて防振しようとする入力振動の周波数に対応してチューニングすることにより、第二の振動系57の共振作用を利用して、主液室53に大きな内圧を積極的に生ぜしめて、極めて有効な内圧制御効果を効率的に得ることが出来るのである。
【0073】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの具体的な実施形態の記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0074】
例えば、可動部材は、複数の振動系を有するものであれば良く、その具体的構造は何等限定されず、例えば、三つ以上のマス部材を採用したり、三つ以上の振動系を構成したりすることも可能であり、また、必ずしも複数のマス部材を同心的に配設する必要もない。
【0075】
また、上記実施形態では、何れも、自動車用エンジンマウントを例示したが、その他、自動車用ボデーマウントやデフマウント,サスペンションブッシュ、或いは自動車以外の各種装置用の防振装置等に対しても、同様に、本発明が有利に適用され得る。
【0076】
更にまた、互いに径方向に所定距離を隔てて配設された軸部材と外筒部材によって、第一の取付部材と第二の取付部材を構成すると共に、それら軸部材と外筒部材を、それら両部材の径方向対向面間に介装された本体ゴム弾性体で連結せしめた筒形の防振装置に対しても、本発明は適用可能である。
【0077】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0078】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、請求項1乃至10に記載の発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、何れも、各振動系の共振作用に基づいて、小さな加振力により、流体室の壁部を構成する可動部材を有利に加振することが出来るから、流体室における積極的な内圧変化が効率的に生ぜしめられて、流体室の内圧制御に基づく防振効果が極めて有効に発揮されるのである。
【0079】
そして、可動部材が複数の振動系を有していることから、かくの如き可動部材の共振作用を利用した流体室の内圧制御に基づく優れた防振効果が、各振動系がチューニングされた複数の周波数域の入力振動に対して、それぞれ有効に発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面説明図である。
【図2】本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面説明図である。
【図3】本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
10,83,84,86 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
34 可動部材
36 流体室
38 作用空気室
40 ゴム弾性板
42 第一のマス金具
44 第二のマス金具
46 第一の仕切部材
48 第一の副液室
50 第二の仕切部材
52 第二の副液室
53 主液室
54 第一の弾性連結部
55 第一の振動系
56 第二の弾性連結部
57 第二の振動系
62 第一のオリフィス通路
64 第二のオリフィス通路
70 切換バルブ

Claims (10)

  1. 互いに離隔配置された第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、非圧縮性流体が封入された流体室を形成すると共に、該流体室の壁部の一部を可動部材で構成せしめて、該可動部材を加振することにより、該流体室の内圧を制御せしめて防振特性を調節するようにした流体封入式防振装置において、
    複数のマス部材を弾性板によって相互に連結して前記第一の取付部材または前記第二の取付部材に対して弾性的に支持せしめることにより、前記可動部材を実質的に複数の振動系を含んで構成し、それらの振動系に対して加振力を及ぼしめるようにすると共に、前記流体室を、前記本体ゴム弾性体により壁部が構成されて振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる主液室と、前記可動部材で壁部の一部が構成されて、オリフィス通路を通じて、該主液室に連通せしめられるようにされた副液室とを含んで構成し、該可動部材の加振によって該副液室に内圧変化が生ぜしめられるようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記複数のマス部材が、互いに同心的に離隔配置されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記可動部材を挟んで前記流体室とは反対側に密閉された作用空気室が形成せしめられ、該作用空気室に外部から及ぼされる空気圧変化に基づいて、前記振動系に対して加振力が及ぼされる請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記作用空気室に及ぼされる空気圧を、防振すべき振動の周波数に同期して変化せしめる空気圧制御装置が設けられている請求項3に記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記流体室が、前記本体ゴム弾性体により壁部の一部が構成されて振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる主液室を含んで構成されていると共に、該主液室の壁部の別の部分が前記可動部材にて構成されて、前記振動系の加振によって該主液室に直接に内圧変化が及ぼされるようになっている請求項1乃至4の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記主液室と前記副液室とが、仕切部材にて前記流体室を仕切ることによって形成されていると共に、該仕切部材に対して、前記オリフィス通路が形成されている請求項1乃至5の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  7. 前記副液室が互いに独立して複数形成されており、且つそれら各副液室の壁部の一部が、それぞれ前記可動部材における前記複数の振動系の何れかによって構成されていると共に、それら各副液室を前記主液室に連通せしめる複数のオリフィス通路が形成されている請求項1乃至請求項6の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  8. 前記複数のオリフィス通路が、前記複数の副液室と前記主液室を互いに直列的に接続するように形成されていると共に、該主液室に近いオリフィス通路ほど高周波側にチューニングされている請求項7に記載の流体封入式防振装置。
  9. 前記流体室が、前記本体ゴム弾性体により壁部の一部が構成されて振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる主液室を含んで構成されている一方、該主液室とは独立して、壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室が設けられ、該平衡室に前記非圧縮性流体が封入されていると共に、該平衡室を前記主液室に連通する流体連通路が形成されている請求項1乃至8の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  10. 前記可動部材を構成する前記弾性板が、弾性に基づく一定形状への復元力を有している請求項1乃至9の何れかに記載の流体封入式防振装置。
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