JP3590291B2 - 磁気抵抗素子 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は回転検出および位置検出に使用される強磁性薄膜の磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、磁気抵抗効果を有する強磁性体の薄膜を用いて、非接触で精密な位置検出が可能な磁気センサーの開発が急速に進展している。この磁気センサーは、数十Oe程度の低磁界における出力電圧値が大きいことが特徴であり、使用される強磁性体の薄膜の材料としてはパーマロイやNiCoが主流である。ここで、パーマロイとはNiを主成分としたNiFe合金であり、場合によっては30〜80重量%のNiを含むNiFe合金のみを指す場合もある。従来、大きな出力電圧を得るためには、パーマロイより高い磁気抵抗変化率を有するNiCoのような磁性薄膜材料が主として用いられてきた。このような材料の組成としては、たとえばNi80重量%、Co20重量%の合金を挙げることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、大きな出力電圧値を得られる材料を用いた場合には、位置検出の時などに障害となるヒステリシスも大きくなる欠点を伴うようになる。これに対して、NiFeは磁気抵抗変化率はNiCoほど大きくないが、ヒステリシスが小さいことが特徴であり、出力電圧値を大きくとれるようになれば位置検出に最適な材料として考えられてきた。磁気抵抗素子の感度を向上させる観点に立てば、低磁界での出力電圧値が大きいこと、およびヒステリシスが小さいことが重要である。現状において、この問題に対して、特公平4−62476号公報に記載されているように、Ni、Fe、Coの3元系の材料を用いること、あるいは特開平5−291646号公報に記載されているような素子に特別なバイアス磁石を設けることなどが検討されている。
【0004】
しかしながら、上記の文献に記載されているような方法は、2元系(NiFeまたはNiCo等)を用いた場合に比べて、高コストになるか、あるいは量産性に問題点が生じる。
【0005】
磁気抵抗素子を磁気センサーとして使用する場合において、その素子にヒステリシス値が存在すると、変化する磁界が反復して印加される位置検出などの用途で、このヒステリシス値が誤差の原因となる。たとえば、磁石の接近を感知する近接センサーにおいては、一定の磁界を有する磁石を用いて、出力電圧値がある一定のしきい値を越えた場合にON状態になり、それ以外をOFF状態になるように動作する。この際にヒステリシス値が存在すれば、実際の接近より早くおよび/または遅くON状態にスイッチングされることになる。この傾向は、特に精密な制御を必要するセンサーにおいて、重要な問題である。すなわち、磁気抵抗素子は、外部磁界が0であるときに、磁界の履歴にかかわらず出力電圧値が一定値になることが望ましく、もしそうでなければ誤差の大きな素子となる。
【0006】
本発明は、NiおよびFeの2元系の材料を用いて、低磁界での大きな出力電圧値、およびより小さなヒステリシスを有する磁気抵抗素子、および該素子の製造法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために、特にNi84〜86重量%およびFe14〜16重量%の組成を有する強磁性薄膜の形成時の基板温度を350℃より高く設定することにより、低磁界での大きな出力電圧値、およびより小さなヒステリシスを有する磁気抵抗素子の供給を可能にし、本発明に至った。
【0008】
本発明の第1の実施の態様は、強磁性体の薄膜を用いた4つの抵抗エレメントを絶縁基板上に形成した磁気抵抗素子において、前記4つの抵抗エレメントは、前記絶縁基板上に、基板ヒーターを取りつけた電子ビーム(EB)真空蒸着法を使用して、350℃以上450℃以下の基板温度においてNiFe合金である強磁性体の薄膜を形成し、続いてエッチングにより作製されており、該磁気抵抗素子は、印加磁界30Oe(エルステッド)において駆動電圧を5Vとしたときに出力電圧値が30mV以上得られ、かつ初め無磁界状態から1つのエレメントに直交する方向に150Oe以上の磁界を印加した後に無磁界にした時に第1の出力電圧値を示し、さらに前記磁界に直交する方向に150Oe以上の磁界を印加した後に再び無磁界にした時に第2の出力電圧値を示し、前記第1の出力電圧値と前記第2の出力電圧値の差の絶対値(ヒステリシス値)が3mV以下となる特性を有することを特徴とする磁気抵抗素子である。
【0010】
本発明の第2の実施の態様は、前記基板温度を350℃以上400℃以下にして得られたことを特徴とする第1の実施の態様に記載の磁気抵抗素子である。
【0011】
本発明の第3の実施の態様は、前記強磁性体の薄膜がNi84〜86重量%およびFe14〜16重量%の組成を有することを特徴とする第1または第2の実施の態様のいずれかに記載の磁気抵抗素子である。
【0012】
本発明の第4の実施の態様は、前記強磁性体の薄膜が(111)面配向を有するNiFe合金である第1〜3の実施の態様のいずれかに記載の磁気抵抗素子である。
【0013】
本発明の第5の実施の態様は、磁気抵抗素子の製造法において、電子ビーム真空蒸着法を用い、基板温度を350℃より高く450℃以下に加熱しながら該基板上に強磁性体の薄膜を形成する工程、および前記強磁性体の薄膜をパターニングする工程を備えた磁気抵抗素子の製造法である。
【0014】
本発明の第6の実施の態様は、前記基板温度を350℃より高く400℃以下にすることを特徴とする第5の実施の態様に記載の磁気抵抗素子の製造法である。
【0015】
本発明の第7の実施の態様は、前記強磁性体の薄膜が、Ni84〜86重量%およびFe14〜16重量%の組成を有することを特徴とする第5または第6の実施の態様に記載の磁気抵抗素子の製造法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の磁気抵抗素子は、強磁性体の磁気抵抗効果を利用するものである。本発明における磁気抵抗効果とはいわゆる異方性磁気抵抗効果であり、電流の流れる強磁性体に磁界が印加されたときに、その抵抗値が変化する性質を意味する。NiFeのような多くの強磁性体において、その抵抗値は磁界の印加により低下する。この効果は、一般的に電流と磁界の方向が平行の時に抵抗値の変化がほとんど無い。一方、電流と磁界の方向が直交したときには、抵抗値の変化が最大となる、すなわち抵抗値が最小になる。その抵抗値の最大の変化量は、材料の磁気抵抗変化率に依存し、ある磁界強度まで(すなわち、材料中の全ての磁化の方向がそろうまで)は印加する磁界の強度に依存して変化する。その磁界強度がある範囲を越えて大きくなった場合には、強磁性体内の磁化が飽和し、抵抗値変化はなくなる。先にも述べたように、この抵抗率の変化は印加する磁界の方向に依存する。
【0017】
本発明の4端子の磁気抵抗素子の概略の上面図を図1に示す。図1中の1および3は出力端子であり、2および4は入力端子であり、および5〜8は強磁性体で作製された抵抗エレメントである。5と7は、構成する強磁性体導線の大部分の方向が一致しており、その方向は6および8のものと直交する方向である。この磁気抵抗素子の等価回路を図2に示す。R 、R 、R およびR は、それぞれ抵抗エレメント5,6、7および8に相当する抵抗である。
【0018】
図3に、図1のA−A’線で切断した本発明の磁気抵抗素子の断面図を示す。図3中、11は基板、12は絶縁膜、13は強磁性体の薄膜、すなわち抵抗エレメントであり、14は電極、15は第1保護膜、16は第2保護膜を示す。
【0019】
基板11は、当該技術において知られている半導体および絶縁体の基板を用いることができる。ここで絶縁体の基板を用いる場合には絶縁膜12は不要である。ここで、好ましい半導体はSiを含む。好ましい絶縁体の基板は、ガラス、セラミック、ガラスグレーズセラミック、サファイアおよび石英ガラスを含む。最も好ましい基板はSiである。
【0020】
電極14は、図1中の1〜4に相当する。これは低抵抗であることが好ましく、したがって膜厚はできる限り厚くすることが好ましい。また、使用する材料も低抵抗率であり、かつ腐食されにくい金属材料が好ましい。そのような金属材料は、たとえば、Cu、Au、Mo、W、Ta、Ti、Ni、Fe、Co、Crおよびこれらの合金を含む。電極は前記金属の多層構造であってもよい。
【0021】
強磁性体の薄膜(抵抗エレメント)13は、図1中の5〜8に相当する。この抵抗エレメントは、高感度、高出力、低消費電力を実現するために、高抵抗であることが好ましい。したがってその膜厚を薄くすることが望ましく、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、25nm〜100nmの範囲内にあることが最も好ましい。さらには、高抵抗を実現するために抵抗エレメントの幅は、できる限り小さくすることが望ましい。その材質は、磁気抵抗変化率が大きい磁性材料であること、および後述するヒステリシスが小さいことから、NiFe合金である。好ましくはNi80〜90重量%およびFe10〜20重量%の合金であり、より好ましくはNi84〜86重量%およびFe14〜16重量%の合金である。
【0022】
絶縁膜12は、本発明の素子に絶縁性を与えるものであり、その材質は当該技術で知られているものを用いることができる。好ましくは、Al 、Si 、SiO ,SiN、リンケイ酸ガラスおよびそれらの多層膜を用いることができる。基板としてSiを用いた場合には、その熱酸化により形成されるSiO 膜を用いることができる。その膜厚は、絶縁性を付与するために必要な厚さで用いられる。
【0023】
第1保護膜15は、本発明の素子の感磁部(抵抗エレメント)の汚染および腐食を防止する機能を有し、その材質は当該技術で知られているものを用いることができる。好ましくは、Al 、Si 、SiO 、SiO,SiN、リンケイ酸ガラスおよびそれらの多層膜を用いることができる。その膜厚は、感磁部を保護するために必要な厚さで用いられる。
【0024】
第2保護膜16は、本発明の素子の感磁部および電極部の汚染および腐食を防止する機能に加え、電極部との密着を良好にする機能を有する。その材質は、当該技術において知られている無機質の絶縁膜であり、たとえば、Al 、Si 、SiO 、SiO,SiN、リンケイ酸ガラスおよびそれらの多層膜を用いることができる。
【0025】
本発明の素子は、当該技術においてよく知られている方法でリードフレームを用いて外部接続することができ、たとえば、ハンダによりボンディングされてもよく、あるいはワイヤボンディングされてもよい。さらに、本発明の素子は、必要に応じて、樹脂によりモールドされてもよい。このモールドに用いられる樹脂は、一般に耐熱性および耐湿性に優れたものが用いられ、たとえばエポキシ樹脂を用いることができる。また、素子全体がモールドされてもよいし、あるいは素子の一部のみがリード線の補強等でモールドされてもよい。この樹脂モールドを、当該技術においてよく知られている方法を用いて施すことができる。
【0026】
4つの抵抗エレメント5〜8は無磁界の状態において、それぞれ等しい抵抗値を有するように製作することが好ましい。図2に示した等価回路により自明であるが、この磁気抵抗素子はブリッジを組んでおり、入力端子2および4に駆動電圧が印加されたときに、無磁界および図1に示したθ=0゜の方向に磁界が印加されている場合は、各抵抗エレメントの抵抗値が等しいために、出力端子1と3との間の電位差は0である。次に、たとえば、図1に示したθ=45゜の方向に磁界が印加された場合には、抵抗エレメント5および7の抵抗値R およびR は無磁界の場合とほとんど変化がない。一方、抵抗エレメント6および8の抵抗値R およびR が磁気抵抗効果により、最小の抵抗値を有する。その結果、ブリッジが非平衡になり、したがって出力端子1と3との間に電位差、すなわち出力電圧が発生する。
【0027】
磁界の強度が一定である条件においては、このθ=45゜の方向に磁界が印加されたときに、最大の出力電圧が発生する。θ=−45゜の方向に磁界が印加されたときにも、θ=45゜の場合と比較して正負が逆転するが、絶対値として最大の出力電圧値を示す。また、磁界の印加方向が変化したとき(−180゜〜180゜の範囲)に、この素子の出力電圧は変化する。
【0028】
出力電圧の大きさは、抵抗エレメント内の磁化が飽和されない範囲内で、印加磁界の磁界強度にほぼ比例して変化する。
【0029】
また、出力電圧の大きさは、抵抗エレメントの抵抗値の変化量のみならず、駆動電圧にも影響される。駆動電圧が高いほど出力電圧は高くなるが、磁気抵抗素子は駆動電圧印加時に電流が流れて電力を消費すること、それに伴う抵抗エレメントの温度上昇による抵抗値変化を考慮して駆動電圧を決定する必要がある。駆動電圧は一般的に、2〜12Vの範囲内であり、好ましくは3〜10Vの範囲内であり、最も好ましくは4〜6Vの範囲内である。
【0030】
さらに、印加磁界と相互作用する強磁性体の長さを長くすることにより、低い磁界の印加による抵抗値変化の絶対値を大きくすることができる。このために、抵抗体エレメントを構成する強磁性体を、ジグザグ状にすることが好ましい。
【0031】
強磁性体の磁気抵抗素子には、磁性体の性質により経過依存性すなわちヒステリシスが存在することが知られている。磁気抵抗素子におけるヒステリシスは、磁界の印加前後でその出力電圧値が異なるという現象として現れる。本発明の磁気抵抗素子においては、1)抵抗エレメント5および7の抵抗値変化が最大になる方向に磁界を印加して磁界を取り去った場合と、2)前記磁界と直交する方向の磁界を印加して磁界を取り去った場合とにおいて、出力端子1および3の間の電位差が異なる。本明細書中の「ヒステリシス値」とは、所定の磁界強度で前記1)および2)の操作を連続して行った場合の、それぞれの操作後の出力電圧値の差の絶対値を意味する。この操作を図7の模式的グラフを用いて説明する。
【0032】
図1の磁気抵抗素子に、電極2が(+)極、および電極4が(−)極となるように駆動電圧を印加して初期値(点P )を確認する。最初に、たとえば150Oeのθ=45゜の方向の磁界を印加する(点P )。この時に抵抗エレメント6および8の磁化は飽和している。次に、印加した磁界を取り除いたときには、ヒステリシスにより出力電圧が初期値(点P )とは異なる値(点P )となり、この時の出力電圧値をV1とする。さらに、たとえば150Oeのθ=−45゜の方向の磁界を印加すると、出力電圧値の極性が変化し、点P に至る。この時には、抵抗エレメント5および7の磁化が飽和している。最後に、この磁界を除去したときに、出力電圧は点P に至り、この時の出力電圧値をV2とする。ここで、|V2−V1|が、本明細書中の「ヒステリシス値」である。本発明の磁気抵抗素子のヒステリシス値は、好ましくは3mV以下であり、より好ましくは2mV以下である。
【0033】
強磁性薄膜を作製する方法としては、真空蒸着、スパッタ等の方法が知られているが、本発明においては、組成比の制御が非常に容易である電子ビーム真空蒸着を用い、絶縁基板の裏面上に取り付けた基板ヒーターにより、絶縁基板を加熱することが好ましい。その際に、絶縁基板を350℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下に加熱して、NiFe合金を電子ビーム蒸着することにより、出力電圧値が大きく、かつヒステリシス値の小さい素子を作製することができる。
【0034】
図4に絶縁基板を400℃に加熱して電子ビーム真空蒸着により形成したNiFe合金薄膜の、図5に絶縁基板を加熱したスパッタ法により形成したNiFe合金薄膜の、および図6に一般的な多結晶のパーマロイ(NiFe合金)のX線回折データを示す。図6に示す一般的な多結晶のパーマロイは、(111)面(2θ=44゜)および(200)面(2θ=51゜)に起因するピークを有する。また、図5に示すスパッタ法による薄膜は、(111)面および(200)面に加えて、(220)面に由来するピークをも示す。これらに対して、図4に示す本発明の方法により作製した薄膜のX線回折においては、(111)面に起因するピークのみが認められ、(200)面に起因するピークはほとんど認められなかった。このことから、本発明の磁気抵抗素子の抵抗エレメントのNiFe薄膜は、強い配向性を有した単結晶に近い状態であることがわかる。
【0035】
【実施例】
(実施例1) 基板温度の出力電圧およびヒステリシスに対する効果
(100)シリコン単結晶基板を、常圧下で800〜1000℃に加熱して、その表面前面に500nmの厚さのSiO 膜を形成した。電子ビーム真空蒸着装置を用い、1.0×10−6torr(1.3×10−4Pa)の排気到達真空度、2.0×10−5torr(2.6×10−3Pa)以下の成膜真空度、10kVの加速電圧、および200mAのイオン化電流の条件を用いて、Ni85重量%およびFe15重量%から成る強磁性体膜を、20nm/minの成膜速度で、厚さ55nmになるように蒸着した。その際に基板ヒーターを用いて、絶縁基板を350℃に加熱した。次にフォトエッチングプロセスにより、強磁性体膜を図1に示すようなパターンにエッチングした。この時の抵抗エレメント部の強磁性体膜の幅は10μm であり、各抵抗エレメントの有効長は4000μm とした。次に、前記強磁性体膜の一部に、TiおよびAuを蒸着して厚さ400nmの電極とした。次に電極部を除いて、プラズマCVD法により厚さ500nm のSiO 第1保護膜を形成した。さらに、電極部を除いてプラズマCVD法により厚さ300nmのSiN膜を形成し、これを第2保護膜とした。
【0036】
この素子の入力端子に、無磁界の状態で5Vの駆動電圧を印加した時の出力電圧は1.1mV(図7の点P )であった。次に、5Vの駆動電圧を印加しながら、一つの抵抗エレメントに直交する方向の30Oeの磁界(A)を印加し、この時の出力電圧32.18mVを確認した。その後、磁界(A)の強度を150Oeにした。その後、この磁界(A)を除去した。この時の出力電圧値V1は3.8mVであった。次に、磁界(A)に直交する方向に150Oeの磁界(B)を印加し、そして除去したときの出力電圧値V2が2.0mV(図7の点P )となり、ヒステリシス値(|V1−V2|=|3.8−2.0|)は1.8mVであった。
【0037】
以下に、強磁性体膜形成時の基板温度を変化させた場合の、30Oeでの出力電圧値およびヒステリシス値を表1にまとめた。
【0038】
【表1】
Figure 0003590291
【0039】
この結果は、強磁性体膜形成時の基板温度に、ヒステリシス値が大きく影響されることが明らかとなった。特に、350℃および400℃の基板温度で強磁性体薄膜を形成した場合に、大きな出力電圧値と小さなヒステリシス値を両立することができた。
【0040】
(比較例1) 出力電圧およびヒステリシスに対する、基板種および強磁性体膜形成法の効果
マグネトロンスパッタ装置を用いて、ガラス基板および500nm の厚さのSiO 酸化膜を形成した(100)シリコン基板上に強磁性体膜を作製することを除いて、実施例1と同様の方法で磁気抵抗素子を作製し、そして試験した。用いた基板、強磁性体膜形成時の基板温度、および作製した素子の30Oeでの出力電圧値およびヒステリシス値を表2にまとめた。
【0041】
【表2】
Figure 0003590291
【0042】
この結果から、電子ビーム真空蒸着法により作製した磁気抵抗素子が、スパッタ法により作製したものよりも小さいヒステリシス値を示した。
【0043】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、出力電圧が大きく、かつヒステリシス値の小さい磁気抵抗素子を作製することができる。その磁気抵抗素子は、回転検出、位置検出等に有用であり、さらにオペアンプ等の信号処理回路を組み合わせることにより磁気センサーICとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気抵抗素子の概略の上面図である。
【図2】本発明の磁気抵抗素子の等価回路の図である。
【図3】本発明の磁気抵抗素子の断面図である。
【図4】絶縁基板を400℃に加熱した電子ビーム真空蒸着を用いて形成したNiFe合金薄膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【図5】絶縁基板の温度を変化させたスパッタ法を用いて形成したNiFe合金薄膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【図6】一般的な多結晶パーマロイのX線回折スペクトルを示す図である。
【図7】磁気抵抗素子のヒステリシス特性を示す模式的グラフを示す図である。
【符号の説明】
1 出力端子
2 入力端子
3 出力端子
4 入力端子
5〜8 抵抗エレメント
11 基板
12 絶縁膜
13 抵抗エレメント
14 電極
15 第1保護膜
16 第2保護膜

Claims (7)

  1. 強磁性体の薄膜を用いた4つの抵抗エレメントを絶縁基板上に形成した磁気抵抗素子において、
    前記4つの抵抗エレメントは、前記絶縁基板上に、基板ヒーターを取りつけた電子ビーム(EB)真空蒸着法を使用して、350℃以上450℃以下の基板温度においてNiFe合金である強磁性体の薄膜を形成し、続いてエッチングにより作製されており、
    該磁気抵抗素子は、印加磁界30Oe(エルステッド)において駆動電圧を5Vとしたときに出力電圧値が30mV以上得られ、かつ初め無磁界状態から1つのエレメントに直交する方向に150Oe以上の磁界を印加した後に無磁界にした時に第1の出力電圧値を示し、さらに前記磁界に直交する方向に150Oe以上の磁界を印加した後に再び無磁界にした時に第2の出力電圧値を示し、前記第1の出力電圧値と前記第2の出力電圧値の差の絶対値(ヒステリシス値)が3mV以下となる特性を有する
    ことを特徴とする磁気抵抗素子。
  2. 前記基板温度を350℃以上400℃以下にして得られたことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
  3. 前記強磁性体の薄膜がNi84〜86重量%およびFe14〜16重量%の組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気抵抗素子。
  4. 前記強磁性体の薄膜が(111)面配向を有するNiFe合金であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
  5. 磁気抵抗素子の製造法において、電子ビーム真空蒸着法を用い、基板温度を350℃より高く450℃以下に加熱しながら該絶縁基板上に強磁性体の薄膜を形成する工程、および前記強磁性体の薄膜をパターニングする工程を備えたことを特徴とする磁気抵抗素子の製造法。
  6. 前記基板温度を350℃より高く400℃以下にすることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗素子の製造法。
  7. 前記強磁性体の薄膜が、Ni84〜86重量%およびFe14〜16重量%の組成を有することを特徴とする請求項5または6に記載の磁気抵抗素子の製造法。
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