JP3589057B2 - バックドア用ヒンジの取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はバックドア用ヒンジの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のバックドアは車体後部開口の上端に取付けられたヒンジに支持され、該ヒンジを中心にして上開き回動自在になっている(類似技術として、実開昭63−74377号公報参照)。車体後部開口の上端は、ルーフの後端から段下がり形成されたルーフフランジと、リヤルーフレールアッパの後端から段下がり形成されたアッパフランジと、リヤルーフレールロアの後端に形成されたロアフランジの3枚による接合フランジで形成され、この該接合フランジの上部にヒンジを取付けている。この接合フランジにおけるヒンジの取付領域には、接合フランジを構成するフランジの一部にヒンジの取付剛性を高めるためのエンボス部が適宜形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、車体後部開口の上端を形成する接合フランジに、エンボス部を適宜形成しているものの、ヒンジの取付剛性が十分でないため、ヒンジが接合フランジに対する取付点を中心にして前後方向に揺れてしまう。そのため、車両走行時の振動により、バックドアが膜振動を起こし、車室内に「こもり音」を発生させるおそれがある。また、バックドア上端とルーフ後端の隙間が変動するため、同隙間の寸法管理が難しく、バックドアの取付作業(隙間調整作業)が面倒になる。従って、そのための対策として、接合フランジを構成する各パネルの板厚を上げて接合フランジ自体の剛性を高め、そこに取付けられるヒンジの取付剛性を高める必要があるため、車体重量の増加及び各パネルのプレス成形性を悪化させる。
【0004】
この発明はこのような従来の技術に着目してなされたものであり、構成パネルの板厚を上げずにヒンジの取付剛性を向上させることができるバックドア用ヒンジの取付構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、ルーフの後端に縦壁を介して段下がり形成されたルーフフランジと、前記ルーフ後部の下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールアッパの後端に縦壁を介して段下がり形成されたアッパフランジと、前記リヤルーフレールアッパの下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールロアの後端に形成されたロアフランジとを接合して後方へ突出する接合フランジを形成し、該接合フランジの上部にバックドアの上端部を回動自在に支持するヒンジを取付ける構造であって、前記アッパフランジの後寄り位置であるヒンジを取り付ける部位にエンボス部を形成し、該エンボス部から前方の縦壁にかけて各々前後方向に沿う複数のビード部を車幅方向に並設すると共に、エンボス部とロアフランジとの間に補強プレートを介在した。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、アッパフランジの後寄り位置であるヒンジを取り付ける部位に形成されたエンボス部から、前方の縦壁にかけて、各々前後方向に沿う複数のビード部が車幅方向に並設されているため、エンボス部の前方では、アッパフランジの剛性が向上する。すなわち、エンボス部の前方では、ビード部の側面に形成される縦面が、ビード部の2倍の数だけ存在するため、その部分の剛性が向上する。また、アッパフランジの後側のエンボス部には補強プレートが設けられているため、この部分の剛性も向上する。従って、アッパフランジのヒンジを取り付ける部位の剛性が全面的に向上するため、そこに取付けられるヒンジの取付剛性が向上する。
【0007】
請求項2記載の発明は、ルーフの後端に縦壁を介して段下がり形成されたルーフフランジと、前記ルーフ後部の下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールアッパの後端に縦壁を介して段下がり形成されたアッパフランジと、前記リヤルーフレールアッパの下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールロアの後端に形成されたロアフランジとを接合して後方へ突出する接合フランジを形成し、該接合フランジの上部にバックドアの上端部を回動自在に支持するヒンジを取付ける構造であって、前記アッパフランジのヒンジを取り付ける部位に、各々アッパフランジの前後幅に略相応する長さを少なくとも有する前後方向に沿った複数のビード部を車幅方向に並設した。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、アッパフランジにエンボス部を形成せず、その代わりに、アッパフランジの前後幅に略相応する長さを少なくとも有する前後方向に沿った複数のビード部を車幅方向に並設したため、アッパフランジのヒンジを取り付ける部位の剛性が全面的に向上し、そこに取付けられるヒンジの取付剛性も向上する。前項に記載した補強プレートが不要になるため、部品点数の削減を図ることができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明に加えて、ビード部を縦壁の上端まで連続形成した。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、ビード部を縦壁の上端まで連続形成したため、アッパフランジの剛性が更に向上し、ヒンジの取付剛性もそれに応じて向上する。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明に加えて、ビード部に挟まれた領域にロアフランジに対するスポット溶接点を設定した。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、ビード部で挟まれた領域にロアフランジに対するスポット溶接点を設定したため、アッパフランジとロアフランジとの接合強度が増し、接合フランジ全体の剛性が向上して、ヒンジの取付剛性がより一層向上する。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明に加えて、リヤルーフレールアッパのヒンジを取り付ける部位に補強ブラケットを下側から接合した。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、リヤルーフレールアッパのヒンジに対応する部分に補強ブラケットが下側から接合されているため、ヒンジを取付ける部位の周辺剛性が向上し、ヒンジの取付剛性が更に向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図5は、この発明の第1実施形態を示す図である。図1は、自動車の後部を示した図であり、1がバックドアである。このバックドア1は上開き自在で、荷物等を車体後方に形成されたラゲッジルームに出し入れすることができる。このバックドア1の上端部は、車体後部開口の上端に取付けられたヒンジ2に対して回動自在に取付けられている。ヒンジ2は、車体後部開口に上端において後向きに形成された接合フランジ3の上面に取付けられている。取付けられたバックドア1の上端と、ルーフ4の後端との間には僅かな隙間Sが形成される。
【0017】
車体後部開口の上部には、閉断面のリヤルーフレール5が車幅方向に沿って形成されており、その左右両端部は、リヤピラーインナ6の上端部に溶接されている。リヤピラーインナ6の上端部にはサイドルーフレールを構成する部材7の後端も溶接される。
【0018】
リヤルーフレール5は、ルーフ4の後部の下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールアッパ8と、該リヤルーフレールアッパ8の下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールロア9とから形成されている。この閉断面のリヤルーフレール5の内部には、ヒンジ2に対応するリヤルーフレールアッパ8の下面に、断面逆ハット形状の補強ブラケット10が予め溶接されている。リヤルーフレールアッパ8の後端には縦壁11を介してアッパフランジ12が段下がり形成されている。リヤルーフレールロア9の後端にはロアフランジ13が形成されており、前記アッパフランジ12に溶接されている。リヤルーフレール5の上方に位置するルーフ4も後端に縦壁14を介してルーフフランジ15が段下がり形成されており、該ルーフフランジ15を、アッパフランジ12とロアフランジ13の接合部の上側に更に溶接することにより、前記接合フランジ3が形成されている。
【0019】
接合フランジ3の最上部を形成するルーフフランジ15の端末には、ウエザストリップ16が取付けられており、接合フランジ3の下方には該ウエザストリップ16に後端を当接させるルーフトリム17が図示せぬクリップ手段により取付けられている。
【0020】
次に、接合フランジ3の構造を詳細に説明する。ルーフフランジ15、アッパフランジ12、ロアフランジ13には、それぞれヒンジ2を取付ける部位にエンボス部18、19、20が形成されている。ルーフフランジ15のエンボス部18は、ルーフフランジ15の前後幅にわたって形成されており、アッパフランジ12及びロアフランジ13のエンボス部19、20は、それぞれ後寄り位置に形成されている。そして、各エンボス部18、19、20には、ヒンジ2を取付けるための取付孔21がそれぞれ形成されている。
【0021】
そして、アッパフランジ12におけるエンボス部19からは、エンボス部19の左右両側から、エンボス部19と同一上面を有する2本のビード部22が、前側へ向むけて形成されている。このビード部22は縦壁11を経てリヤルーフレールアッパ8の上面まで連続形成されている。左右のビード部22の間の領域には、アッパフランジ12とロアフランジ13とを接合するスポット溶接点Pが設けられている。
【0022】
また、エンボス部19の車幅方向内側には、別のビード部23が所定間隔ごとに複数形成されている。このビード部23はアッパフランジ12の途中位置から縦壁11を経てリヤルーフレールアッパ8の上面まで連続形成されている。この別のビード部23は、アッパフランジ12の全体剛性を高めるために車幅方向にわたって形成されているものである。
【0023】
アッパフランジ12のエンボス部19とロアフランジ13のエンボス部20との間には、長方形の補強プレート24が介在されており、エンボス部19と同様の取付孔21が形成されている。この補強プレート24は、アッパフランジ12とロアフランジ13とを接合する際に一緒に溶接されている。
【0024】
ロアフランジ13のエンボス部20の下面には溶接ナット25が予め取付けられており、ルーフフランジ15のエンボス部18の上面に載せたヒンジ2から通したボルト26をこの溶接ナット25に螺合し、図示せぬ工具によりボルト26を締結することにより、ヒンジ2を取付状態にする。
【0025】
この実施形態によれば、アッパフランジ12の後寄り位置にエンボス部19が形成され、そのエンボス部19に対応する部分に、補強プレート24が設けられているため、アッパフランジ12の後側の剛性が向上する。また、アッパフランジ12の前側には、前後方向に沿う2本のビード部22が形成されているため、ビード部22の側面に形成される縦面22aが、ビード部22の2倍の数だけ存在するため、エンボス部19の前側の剛性も向上する。従って、アッパフランジ12のヒンジ2に対応する部位(ヒンジを取り付ける部位)の剛性が全面的に向上するため、そこに取付けられるヒンジ2の取付剛性が向上する。特に、ビード部22が縦壁11からリヤルーフレールアッパ8の上面まで達する長さで形成されているため、アッパフランジ12にヒンジ2を取付ける部位の周辺剛性が全体的に向上する。また、ビード部22で挟まれた領域にロアフランジ13に対するスポット溶接点Pを設定したため、アッパフランジ12とロアフランジ13との接合強度が増し、接合フランジ3全体の剛性が向上して、ヒンジ2の取付剛性がより一層向上する。更に、リヤルーフレールアッパ8のヒンジ2に対応する部位に、補強ブラケット10が下側から接合されているので、ヒンジ2を取付ける部位の周辺剛性が向上し、ヒンジ2の取付剛性が更に向上する。そのため、ヒンジ2がボルト26による取付点を中心に前後方向に揺れることがなく、車両走行時の振動を受けても、バックドア1が膜振動を起こさず、車室内に「こもり音」等が発生しない。また、バックドア1の上端と、ルーフ4の後端の隙間Sが一定になるため、この隙間Sの寸法管理が容易で、バックドア1の取付作業性が向上する。
【0026】
図6及び図7は、この発明の第2実施形態を示す図である。尚、先の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。この実施形態では、アッパフランジ27に「エンボス部」を形成する代わりに、アッパフランジ27のヒンジを取り付ける部位に、アッパフランジ27の前後幅に相応するだけでなく、そのまま縦壁28を経てリヤルーフレールアッパ29の上面まで達する3本のビード部30が車幅方向に並設されている。また、先の実施形態の「補強プレート」も省略されている。各ビード部30の間の領域に取付孔21とスポット溶接点Pがそれぞれ設けられている。
【0027】
この実施形態によれば、アッパフランジ27の前後幅にわたってビード部30が形成されているため、アッパフランジ27の後寄り位置においてもビード部30の縦面30aが存在し、その部分に「エンボス部」がなくても、ヒンジを取り付ける部位の剛性が全面的に向上する。従って、そこに取付けられるヒンジの取付剛性が向上する。また、先の実施形態で示したような「補強プレート」が不要になるため、部品点数の削減を図ることもできる。
【0028】
【発明の効果】
この発明によれば、アッパフランジの後寄り位置であるヒンジを取り付ける部位に形成されたエンボス部から、前方の縦壁にかけて、各々前後方向に沿う複数のビード部が車幅方向に並設されているため、エンボス部の前方では、アッパフランジの剛性が向上する。すなわち、エンボス部の前方では、ビード部の側面に形成される縦面が、ビード部の2倍の数だけ存在するため、その部分の剛性が向上する。また、アッパフランジの後側のエンボス部には補強プレートが設けられているため、この部分の剛性も向上する。従って、アッパフランジのヒンジを取り付ける部位の剛性が全面的に向上するため、そこに取付けられるヒンジの取付剛性が向上する。
【0029】
別の発明によれば、アッパフランジにエンボス部を形成せず、その代わりに、アッパフランジの前後幅に略相応する長さを少なくとも有する前後方向に沿った複数のビード部を車幅方向に並設したため、アッパフランジのヒンジを取り付ける部位の剛性が全面的に向上し、そこに取付けられるヒンジの取付剛性も向上する。前項に記載した補強プレートが不要になるため、部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係るバックドアを示す自動車後部の斜視図。
【図2】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図3】バックドアの取付構造を示す分解斜視図。
【図4】ヒンジの取付部位を示す平面図。
【図5】図4中矢示SB−SB線に沿う断面図。
【図6】この発明の第2実施形態に係るアッパフランジ及びロアフランジを示す斜視図。
【図7】図6中矢示SC−SC線に沿う断面図。
【符号の説明】
1 バックドア
2 ヒンジ
3 接合フランジ
4 ルーフ
5 リヤルーフレール
8、29 リヤルーフレールアッパ
9 リヤルーフレールロア
10 補強ブラケット
11、14、28 縦壁
12、27 アッパフランジ
13 ロアフランジ
15 ルーフフランジ
18、19、20 エンボス部
22、30 ビード部
22a、30a 縦面
24 補強プレート
S 隙間
P スポット溶接点
Claims (5)
- ルーフの後端に縦壁を介して段下がり形成されたルーフフランジと、前記ルーフ後部の下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールアッパの後端に縦壁を介して段下がり形成されたアッパフランジと、前記リヤルーフレールアッパの下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールロアの後端に形成されたロアフランジとを接合して後方へ突出する接合フランジを形成し、該接合フランジの上部にバックドアの上端部を回動自在に支持するヒンジを取付ける構造であって、
前記アッパフランジの後寄り位置であるヒンジを取り付ける部位にエンボス部を形成し、該エンボス部から前方の縦壁にかけて各々前後方向に沿う複数のビード部を車幅方向に並設すると共に、エンボス部とロアフランジとの間に補強プレートを介在したことを特徴とするバックドア用ヒンジの取付構造。 - ルーフの後端に縦壁を介して段下がり形成されたルーフフランジと、前記ルーフ後部の下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールアッパの後端に縦壁を介して段下がり形成されたアッパフランジと、前記リヤルーフレールアッパの下側で車幅方向に延びるリヤルーフレールロアの後端に形成されたロアフランジとを接合して後方へ突出する接合フランジを形成し、該接合フランジの上部にバックドアの上端部を回動自在に支持するヒンジを取付ける構造であって、
前記アッパフランジのヒンジを取り付ける部位に、各々アッパフランジの前後幅に略相応する長さを少なくとも有する前後方向に沿った複数のビード部を車幅方向に並設したことを特徴とするバックドア用ヒンジの取付構造。 - ビード部を縦壁の上端まで連続形成した請求項1又は請求項2記載のバックドア用ヒンジの取付構造。
- ビード部に挟まれた領域にロアフランジに対するスポット溶接点を設定した請求項1〜3のいずれか1項に記載のバックドア用ヒンジの取付構造。
- リヤルーフレールアッパのヒンジ対応部位に補強ブラケットを下側から接合した請求項1〜4のいずれか1項に記載のバックドア用ヒンジの取付構造。
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