JP3586148B2 - 非還元性誘電体磁器材料およびその製造方法ならびに積層磁器コンデンサ - Google Patents

非還元性誘電体磁器材料およびその製造方法ならびに積層磁器コンデンサ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、卑金属を内部電極とする積層磁器コンデンサに用いられる温度補償用誘電体磁器材料およびその製造方法と、これを用いた積層磁器コンデンサとに関する。
【0002】
【従来の技術】
積層磁器コンデンサは小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されており、1台の電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型・高性能化にともない、積層磁器コンデンサに対する更なる小型、大容量、低価格、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
【0003】
積層磁器コンデンサは、通常、内部電極用のペーストと誘電体層用のペーストとをシート法や印刷法等により積層し、同時焼成して製造される。
【0004】
ところで、従来の積層磁器コンデンサ等に用いられる誘電体磁器材料は、還元性の雰囲気下で焼成すると、還元されて半導体化するという性質を有していた。このため内部電極の材料として、誘電体磁器材料の焼結する温度で溶融せず、かつ誘電体磁器材料を半導体化しない高い酸素分圧の下で焼成しても酸化されない、Pd等の貴金属が用いられてきた。しかし、Pd等の貴金属は高価なため、積層磁器コンデンサの低価格化、大容量化を図る上での大きな妨げとなっていた。
【0005】
そこで、内部電極材として、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属の使用が検討されつつある。内部電極の導電材として卑金属を用いる場合、大気中で焼成を行なうと内部電極が酸化してしまう。従って、誘電体層と内部電極との同時焼成を、還元性雰囲気中で行なう必要がある。しかし、還元性雰囲気中で焼成すると、上述のように誘電体層が還元され、比抵抗が低くなってしまう。このため、非還元性の誘電体磁器材料が提案されている。
【0006】
非還元性の誘電体磁器材料としては、例えば特開昭63−126117号公報、特開昭63−289709号公報、特開平5−217426号公報、特公平5−51127号公報、特公平5−51122号公報、特公平5−51124号公報に、(Ca,Sr)(Ti,Zr)O系組成にMn酸化物およびSi酸化物を添加したものが記載されている。これら各公報において、Mn酸化物は単独で添加されるか、Mnが(Ca,Sr)サイトを置換する形で添加されており、Si酸化物は、単独で、または複合酸化物の一成分として添加されている。Mn酸化物は、耐還元性付与のための添加成分であり、Si酸化物は焼結助剤として働く。したがって、Ni等の卑金属からなる内部電極を有する磁器コンデンサでは、誘電体にMn酸化物およびSi酸化物を含むものが一般的ということになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
積層磁器コンデンサにおいて、内部電極と誘電体層とは焼成時の収縮率が異なるため、焼成後、コンデンサ素体の側端面に内部電極の端部が露出しないことがある。そのため、素体の側端面に端子電極を形成する前に、バレル研磨等により内部電極を露出させる研磨工程を設ける必要がある。
【0008】
しかし、Mn酸化物およびSi酸化物を含有する誘電体磁器材料を、Ni内部電極と共に還元性雰囲気中で同時焼成し、次いで再酸化処理を施すと、素体内部に閉じこめられたNi内部電極と素体の側端面との間にMn−Ni複合酸化物が析出することが本発明者らの研究により判明した。このMn−Ni複合酸化物はNiMnを主体とし、誘電体磁器に比べ研磨が困難である。そのため、内部電極端面を露出させるための研磨工程が長時間化してしまう。研磨工程の長時間化は、生産性の低下を招くほか、素体に負荷を与えるためにクラック等の欠陥の原因となる。
【0009】
本発明の目的は、Niを含む内部電極を有する積層磁器コンデンサを製造する際に、内部電極端面を露出させるための研磨工程の長時間化を防ぐことである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(9)のいずれかにより達成される。
(1) 主成分として、
式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
(上記式Iにおいて、
0≦X≦1、
0≦Y≦0.10、
0.75≦m≦1.04
である)
で表される複合酸化物を含有し、
副成分として、
式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
(上記式IIにおいて、
0<Z<1
0.5≦V≦4.0
である)
で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
添加成分として、MgOを主成分に対し0.001〜10モル%含有し、
主成分を含有する仮焼物に、添加成分の出発原料を添加し、焼成することにより製造された非還元性誘電体磁器材料。
(2) 副成分として、Al23を主成分に対し10モル%以下含有する上記(1)の非還元性誘電体磁器材料。
(3) 主成分として、
式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
(上記式Iにおいて、
0≦X≦1、
0≦Y≦0.10、
0.75≦m≦1.04
である)
で表される複合酸化物を含有し、
副成分として、
式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
(上記式IIにおいて、
0<Z<1
0.5≦V≦4.0
である)
で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
添加成分として、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)酸化物の少なくとも1種を主成分に対し0.01〜10モル%含有し、
Al23を含有しない非還元性誘電体磁器材料。
(4) 主成分として、
式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
(上記式Iにおいて、
0≦X≦1、
0≦Y≦0.10、
0.75≦m≦1.04
である)
で表される複合酸化物を含有し、
副成分として、
式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
(上記式IIにおいて、
0<Z<1
0.5≦V≦4.0
である)
で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
添加成分として、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)酸化物の少なくとも1種を主成分に対し0.01〜10モル%含有し、
副成分として、Al23を主成分に対し0.1モル%未満含有する非還元性誘電体磁器材料。
(5) 主成分として、
式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
(上記式Iにおいて、
0≦X≦1、
0≦Y≦0.10、
0.75≦m≦1.04
である)
で表される複合酸化物を含有し、
副成分として、
式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
(上記式IIにおいて、
0<Z<1
0.5≦V≦4.0
である)
で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
添加成分として、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)酸化物の少なくとも1種を主成分に対し1.5モル%超10モル%以下含有する非還元性誘電体磁器材料。
(6) MgOを含有する上記(3)〜(5)のいずれかの非還元性誘電体磁器材料。
(7) SiO2濃度が10モル%以上であるSiリッチ相を含有する上記(1)〜(6)のいずれかの非還元性誘電体磁器材料。
(8) 主成分として、
式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
(上記式Iにおいて、
0≦X≦1、
0≦Y≦0.10、
0.75≦m≦1.04
である)
で表される複合酸化物を含有し、
副成分として、
式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
(上記式IIにおいて、
0<Z<1
0.5≦V≦4.0
である)
で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
添加成分として、MgOを主成分に対し0.001〜10モル%含有する非還元性誘電体磁器材料を、
主成分を含有する仮焼物に、添加成分の出発原料を添加し、焼成することにより製造する非還元性誘電体磁器材料の製造方法。
(9) 上記(1)〜(7)のいずれかの非還元性誘電体磁器材料を誘電体として有し、少なくともNiを含有する内部電極を有する積層磁器コンデンサ。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の磁器材料は、(Ca,Sr)(Ti,Zr)O系組成を主成分とし、MnOおよびSiOを少なくとも含み、さらに、MgOおよび/または希土類元素酸化物を含む。MgOや希土類元素酸化物を含有することにより、Ni内部電極と素体の側端面との間において前記Mn−Ni複合酸化物の析出が顕著に抑制される。そのため、前記した素体の側端面の研磨工程の長時間化を防ぐことができる。
【0015】
Mn−Ni複合酸化物の析出は、焼成時および再酸化処理時に素体内をMnが移動し、内部電極のNiと結合することにより生じると考えられる。焼成の際には、焼結助剤として添加されるSiOに起因するSiリッチ相が生成する。このSiリッチ相内にはMnが存在するが、Siリッチ相は融点が低いため、焼成や再酸化処理の際にSiリッチ相からMnが移動する。移動したMnは、再酸化処理時に酸化雰囲気に触れて、Niと共に複合酸化物を形成すると考えられる。本発明において添加するMgOおよび希土類元素酸化物は、上記Siリッチ相と結合してその融点を上げることにより、Mnの移動を抑制すると考えられる。したがって、上記Siリッチ相と結合しやすくするために、MgOおよび希土類元素酸化物は、仮焼により主成分を合成した後に添加することが好ましい。特にMgOについては、主成分原料仮焼後の添加が必須である。
【0016】
上記Siリッチ相は、SiOを添加するだけでは生成せず、ある程度以上のMnを添加した場合に生成する。すなわち、Mn酸化物とSi酸化物とを複合添加した場合に生成する。Siリッチ相は、結晶粒界、特に3以上の結晶粒が隣接する箇所(三重点など)に生成しやすいが、結晶粒内にも生成し得る。Siリッチ相は、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)写真において結晶粒や他の相と識別可能な性状を示す。Siリッチ相には、磁器材料全体におけるSiOの平均濃度を超える濃度のSiOが含まれる。具体的には、Siリッチ相中におけるSiO濃度は、通常、10モル%以上である。また、Siリッチ相中には、Si、Mn、Mgおよび希土類元素のほか、磁器材料を構成する他の元素も含まれる。TEM像において認められるSiリッチ相の径は、通常、10〜1000nm程度である。
【0017】
ところで、耐還元性誘電体磁器材料が記載されている前記各公報のうち特開昭63−289709号公報には、(Ca,Sr)(Ti,Zr)O系の主成分100重量部に対し、副成分として、MnをMnOに換算して0.01〜4.00重量部、SiOを2.00〜8.00重量部、MgOを0.01〜1.00重量部(主成分に対し0.487〜4.87モル%)含有する磁器組成物が記載されている。この磁器組成物は、MgOを含有する点で本発明の磁器材料と同じである。しかし同公報では、MgOを主成分の原料化合物と同時に仮焼しており、この点が本発明とは異なる。MgOを主成分の原料化合物と同時に焼成すると、前記Siリッチ相と結合しにくくなり、本発明の効果が実現しない。
【0018】
また、前記特公平5−51127号公報には、(Ca,Sr,Mg,Mn)(Ti,Zr)O系の基本組成100重量部と添加成分0.2〜15.0重量部とからなり、前記添加成分が、40〜80モル%のSiOと20〜60モル%のMO(MOはBaO、MgO、ZnO、SrOおよびCaOの少なくとも1種)とからなる誘電体磁器組成物が記載されている。この磁器組成物は、それぞれ仮焼することにより製造した基本成分と添加成分とを混合して焼成したものである。同公報記載の発明は、基本成分原料を仮焼後にMgOを添加して焼成する点で本発明と同じである。しかし、同公報における基本組成は、Tiの0.5〜10%をZrで置換したものとなっており、Zrの10%以下をTiで置換する本発明の主組成とは全く異なっている。本発明の主組成においてTiではなくZrを主体とするのは、容量の温度特性を小さくするためであり、本発明はこの温度特性の良好な組成系において、Ni電極使用によるNi−Mn酸化物の生成を抑えようとするものである。これに対し同公報記載の発明は、1200℃以下の温度で焼成できることを目的とするものであり、誘電率の温度係数を小さく抑えようとするものではない。同公報に記載された磁器組成物の誘電率の温度係数(20〜85℃)は、−600〜−3100ppm/℃と絶対値が大きい。また、同公報の実施例において添加成分がMgO+BaO+CaOを含む場合、同時にZnOおよび/またはSrOが添加されている。すなわち、同公報には、MgO+BaO+CaOだけを添加した実施例は記載されていない。副成分にZnOやSrOが含まれると、MgO添加による効果が減じられてしまう。
【0019】
特公平5−51122号公報に記載された発明は、添加成分としてB、SiOおよび上記MOを用いたほかは上記特公平5−51127号公報記載の発明と同様である。したがって、同公報においても誘電率の温度係数が−600〜−3400ppm/℃と絶対値が大きい。また、同公報の実施例においても、添加成分がMgO+BaO+CaOを含む場合には、同時にZnOおよび/またはSrOが添加されているため、MgO添加による効果が減じられてしまう。
【0020】
特公平5−51124号公報に記載された発明は、添加成分を0.2〜10.0重量部とし、かつ、添加成分としてLiO、SiOおよび上記MOを用いたほかは上記特公平5−51127号公報記載の発明と同様である。したがって、同公報においても誘電率の温度係数が−630〜−3400ppm/℃と絶対値が大きい。しかも、LiOを含有させることにより添加成分の融点が大きく低下するため、MgO添加によるMnの移動抑制効果が不十分となり、本発明の効果は実現しない。
【0021】
特開昭63−126117号公報には、(Ca,Sr)(Ti,Zr)O系の主成分100重量部に対し、MnOを0.5〜8重量部、MgOを含みうるガラス成分を0.5〜8重量部含有する誘電体磁器組成物が記載されている。この誘電体磁器組成物は、主成分原料を仮焼した後に副成分ないし添加成分としてガラス成分を添加して製造される点で本発明の磁器材料と同様である。しかし、同公報におけるガラス成分は、上記特公平5−51124号公報の添加成分と同様にLiOを含むため、融点が低くなりすぎる。そのため、MgO添加によるMnの移動抑制効果が不十分となり、本発明の効果は実現しない。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
本発明は、以下に説明する態様1および態様2を包含する。
【0024】
態様1
この態様の非還元性誘電体磁器材料(以下、単に磁器材料という)は、主成分を含有する仮焼物に、添加成分の出発原料を添加し、焼成することにより製造される。副成分の出発原料および/またはその仮焼物は、主成分の出発原料と共に仮焼してもよく、添加成分の出発原料と共に添加してもよく、一部を主成分の出発原料と共に仮焼し、残部を添加成分の出発原料と共に添加してもよい。
【0025】
主成分は、
式I 〔(CaSr1−X)O〕〔(TiZr1−Y)O
で表される複合酸化物を含む。
【0026】
上記式Iにおいて、
0≦X≦1
である。すなわち、主成分において、CaおよびSrはどちらか一方のみでもよく、その混合比は任意である。Xの最適値は、Yとの関係で決定される。上記式Iにおいて、
0≦Y≦0.10
であり、好ましくは
0≦Y≦0.07
である。Yが大きすぎると、容量およびtanδの周波数依存性が大きくなってしまい、また、静電容量の温度依存性が大きくなってしまう。上記式Iにおいて、
0.75≦m≦1.04
である。mが小さすぎると、容量およびtanδの周波数依存性が大きくなってしまい、mが大きすぎると、焼成温度を高くする必要が生じ、例えば1300℃以下の温度では焼成し難くなる。
【0027】
副成分は、SiOと、BaOおよび/またはCaOと、MnOとである。
【0028】
副成分として含有されるSiOは、焼結助剤として働く。SiOに加えCaOおよび/またはBaOを複合添加することにより、焼結性は著しく向上し、緻密な磁器材料が得られる。また、これらを複合添加することにより、絶縁抵抗の加速寿命時間を長くすることができる。なお、この効果は、誘電体層を薄層化したときに特に顕著である。これらの酸化物を
式II 〔(BaCa1−Z)O〕SiO
で表される複合酸化物と仮定したとき、主成分に対するこの複合酸化物の比率は、0.5〜15モル%、好ましくは1〜5モル%である。この比率が小さすぎると焼結性が不十分となり、大きすぎても焼結性が悪くなってしまう。また、各酸化物の比率は、上記式IIにおいて
0≦Z≦1、
0.5≦V≦4.0
となるものであり、好ましくは
0.5≦Z≦1、
0.55≦V≦3.0
となるものである。上記式IIにおいて、Vが小さすぎると誘電体層を5μm以下としたときにIR加速寿命が短くなってくる。一方、Vが大きすぎると焼結性が低下する。本発明では、上記複合酸化物の構成成分である各酸化物を、上記式IIに示される比率となるように独立して添加してもよいが、実際に上記式IIで表される形の複合酸化物として主成分原料に添加することがより好ましい。この複合酸化物は融点が低いため、主成分に対する反応性が良好であり、かつ、融点が低すぎないため、MgO添加による効果を阻害することがない。
【0029】
副成分として含有されるMnOは、耐還元性付与剤および焼結助剤として働く。主成分に対するMnOの含有量は、0.2〜5モル%、好ましくは0.2〜3モル%である。MnOが少なすぎると、耐還元性が不十分となるほか焼結性が低下する。一方、MnOが多すぎると、誘電率および静電容量の温度係数、誘電正接(tanδ)の周波数依存性が大きくなってくる。
【0030】
この態様では、副成分としてさらにAlを添加してもよい。Alは、耐還元性付与剤および焼結助剤として働く。主成分に対するAlの含有量は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下である。Alが多すぎると、比誘電率が低下してくる。なお、耐還元性および焼結性の向上に関して十分な効果を発揮させるためには、主成分に対するAlの含有量を0.1モル%以上、特に0.2モル%以上とすることが好ましい。
【0031】
添加成分として含有されるMgOは、前述したように内部電極と素体の側端面との間におけるMn−Ni複合酸化物の析出を抑制する。主成分に対するMgOの含有量は、0.001〜10モル%、好ましくは1〜6モル%、より好ましくは3〜6モル%である。MgOが少なすぎると、Mn−Ni複合酸化物の析出を抑制することが実質的に不可能となる。一方、MgOが多すぎると焼結性が悪くなる。
【0032】
なお、本明細書では、副成分および添加成分に含まれる酸化物を化学量論組成で表しているが、これらの酸化物は、磁器材料中において化学量論組成から多少偏倚していてもよい。例えばMn酸化物については、MnOに限らず、MnOや他のMn酸化物であってもよい。
【0033】
態様2
この態様の磁器材料は、主成分が前記式Iで表される複合酸化物であること、副成分としてMnOを含有することにおいて態様1と同じであり、MnOの含有量も態様1と同じである。また、態様2には、副成分としてSiOならびにCaOおよび/またはBaOを、態様1と同範囲の量含む構成も包含されるが、これに加え、SiOだけを含有する構成も包含される。SiOだけを含有する場合、主成分に対するSiOの含有率は0.5〜15モル%、好ましくは1〜5モル%である。
【0034】
この態様では、添加成分として希土類元素の酸化物を少なくとも1種含有する。希土類元素酸化物は、態様1で添加するMgOと同様に、内部電極と素体の側端面との間におけるMn−Ni複合酸化物の析出を抑制する。また、希土類元素酸化物は、静電容量の温度係数を小さくし、誘電正接の周波数依存性を改善する効果も示す。この態様で用いる希土類元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくとも1種である。主成分に対する希土類元素酸化物の含有量は、0.01〜10モル%、好ましくは1〜6モル%である。希土類元素酸化物が少なすぎると、Mn−Ni複合酸化物の析出を抑制することが実質的に不可能となる。一方、希土類元素酸化物が多すぎると焼結性が悪くなる。
【0035】
なお、この態様において、主成分に対する希土類元素酸化物のモル百分率は、各希土類元素酸化物をそれぞれScO3/2、YO3/2、LaO3/2、CeO、PrO11/6、NdO3/2、SmO3/2、EuO3/2、GdO3/2、TbO3/2、DyO3/2、HoO3/2、ErO3/2、TmO3/2、YbO3/2、LuO3/2に換算して求めた値である。
【0036】
希土類元素酸化物を比較的多量に添加すると焼結性が低下することがあるが、その場合には焼成温度をより高くすることにより、緻密な焼結体を得ることができる。
【0037】
この態様でも、副成分としてAlを添加してもよい。Alの好ましい含有量は、態様1と同じである。ただし、Alを主成分に対し0.1モル%以上添加する場合、主成分に対する希土類元素酸化物の含有量は、1.5モル%超とする。
【0038】
なお、この態様では、添加成分の一部としてMgOを添加してもよい。ただし、焼結性の悪化を抑えるために、MgOと希土類元素酸化物とを合わせた含有量は、主成分に対し10モル%を超えないことが好ましい。
【0039】
積層磁器コンデンサ
本発明の積層磁器コンデンサは、誘電体層に本発明の磁器材料を用い、かつ内部電極に卑金属を用いるほかは特に構成は限定されない。
【0040】
内部電極の導電材には、少なくともNiを含有する卑金属を用いる。このような卑金属としては、NiまたはNi合金が挙げられる。Ni合金としては、Niと、Mn、Cr、CoおよびAlの1種以上との合金が好ましい。なお、Ni合金中のNi含有率は、95重量%以上であることが好ましい。
【0041】
誘電体層中において、磁器材料の平均結晶粒径は好ましくは3μm以下、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下である。平均結晶粒径の下限は特にないが、通常、0.1μm程度である。平均結晶粒径が3μmを超えると、積層磁器コンデンサの誘電体層を5μm以下の厚さとした場合に、IR加速寿命時間が短くなってしまい、高い信頼性が得られにくくなる。
【0042】
製造方法
本発明の積層磁器コンデンサは、従来の積層磁器コンデンサと同様に、通常、ペーストを用いた印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これに内部電極ペーストを印刷した後、外部電極を印刷ないし転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0043】
主成分の出発原料としては、例えば水熱合成法等で合成したCaTiO、SrTiO、CaZrO、SrZrO等を用いることができる。副成分および添加成分の出発原料としては、酸化物ないし焼成により酸化物となる各種化合物、例えばSiO、BaCO、CaCO、Al、MnCO、MgO、MgCO、前記希土類元素の酸化物を用いることができる。
【0044】
本発明では前述したように、まず、少なくとも主成分の出発原料を仮焼して仮焼物を製造し、次いで、この仮焼物に少なくとも添加成分の出発原料を添加して、焼成することが好ましく、特に態様1ではこの方法が必須である。副成分の添加形態は特に限定されない。例えば、副成分の出発原料および/またはその仮焼物を、主成分の出発原料と共に仮焼してもよく、添加成分の出発原料と共に添加してもよく、また、一部を主成分の出発原料と共に仮焼し、残部を添加成分の出発原料と共に添加してもよい。
【0045】
副成分出発原料の仮焼物は、副成分出発原料の2種以上を混合して仮焼することにより製造された複合酸化物である。本発明では、副成分の仮焼物として、通常、前記式IIで表される複合酸化物を用いることが好ましいが、この仮焼物にMnOを含有させてもよい。
【0046】
添加成分の出発原料は、単独で添加してもよく、副成分の出発原料の少なくとも一部と仮焼した状態で添加してもよい。ただし、添加成分の出発原料は単独で添加したほうが、添加成分含有による効果はより高くなる。
【0047】
主成分の出発原料の仮焼は、通常、空気中において、1000〜1300℃で1〜4時間程度行うことが好ましい。副成分出発原料またはこれに添加成分出発原料を添加したものの仮焼は、通常、空気中において800〜1200℃で1〜4時間程度行うことが好ましい。
【0048】
なお、出発原料や仮焼物は、通常、平均粒径が0.1〜3μm 程度の粉末として利用することが好ましい。
【0049】
次に、これらの仮焼物や出発原料を用いて誘電体ペーストを調製する。誘電体ペーストは、粉末と有機ビヒクルとを混練した有機系のものであってもよく、水系のものであってもよい。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。また、誘電体ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、粉末とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0050】
印刷法を用いる場合、誘電体ペーストおよび内部電極材料ペーストを、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップを得る。シート法を用いる場合には、誘電体ペーストを用いてグリーンシートを形成し、このグリーンシート上に内部電極ペーストを印刷して積層し、所定形状に切断してグリーンチップを得る。
【0051】
内部電極ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0052】
得られたグリーンチップは、脱バインダされる。グリーンチップの脱バインダ処理は、好ましくは空気中にて200〜400℃前後で、約0.5〜24時間程度保持する。
【0053】
焼成は、内部電極の酸化を防止するために還元雰囲気(酸素分圧が10−8〜10−12気圧)中で行う。焼成温度は、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1200〜1300℃であり、焼成時間は好ましくは2〜3時間である。
【0054】
焼成後、誘電体の再酸化処理を行い、チップ焼結体を得る。再酸化処理は、酸素分圧10−5〜10−8気圧の雰囲気中で、好ましくは1100℃以下、より好ましくは800〜1100℃で2〜4時間程度行えばよい。
【0055】
このようにして得られたチップ焼結体に、バレル研磨やサンドブラスト等により端面研磨を施して内部電極端面を露出させる。次いで、外部電極ペーストを印刷ないし転写して焼き付けを行い、外部電極を形成する。焼き付けは、例えば窒素ガス中において600〜800℃に0.1〜1時間程度保持することにより行えばよい。また、必要に応じて、外部電極表面にめっきなどによる被覆層を形成することが好ましい。なお、外部電極ペーストは、上記した内部電極ペーストと同様にして調製すればよい。
【0056】
【実施例】
実施例1
主成分の出発原料粉末として、水熱合成法によるCaZrO、SrZrOおよびCaTiO(いずれも堺化学製)を用意し、これらを最終組成が(Ca0.70Sr0.30)(Ti0.03Zr0.97)Oとなるように秤量し、空気中において1200℃で3時間仮焼して、主成分の仮焼物を得た。
【0057】
また、添加成分および副成分の出発原料粉末として、MnCO、BaCO、CaCO、SiO、MgO、Alを用意した。そして、BaCO、CaCOおよびSiOをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃で空気中で仮焼し、さらに、ボールミルにより100時間湿式粉砕することにより、(BaCa)SiO粉末を製造した。
【0058】
主成分の仮焼物、(BaCa)SiO粉末および他の出発原料を湿式混合した後、脱水、乾燥して誘電体原料粉末を得た。なお、MnCOは主成分に対し1モル%とし、(BaCa)SiOは主成分に対し2.8モル%とし、MgOは主成分に対し6モル%とし、Alは主成分に対し0.2モル%とした。比較のために、MgOを添加しない誘電体原料粉末も製造した。
【0059】
次いで、誘電体原料100重量部に、アクリル樹脂5.4重量部、塩化メチレン45重量部、酢酸エチル16重量部、ミネラルスピリット6重量部およびアセトン4重量部を添加してボールミルで混合し、誘電体ペーストを得た。
【0060】
また、平均粒径0.8μmのNi粉末100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)35重量部およびブチルカルビトール7重量部とを混練し、内部電極ペーストを得た。また、平均粒径0.5μmの銅粉末100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)35重量部およびブチルカルビトール7重量部とを混練し、外部電極ペーストを得た。
【0061】
上記誘電体ペーストを用いてPETフィルム上に厚さ7μmのグリーンシートを形成し、この上に内部電極ペーストを印刷した後、PETフィルムからシートを剥離した。このようにして作製したシートを100枚積層し、加圧接着してグリーン積層体を得た。次いで、このグリーン積層体を切断してグリーンチップとし、脱バインダ処理、焼成、再酸化を以下の条件で行い、MgOを含有するチップ焼結体とMgOを含有しないチップ焼結体とを得た。
【0062】
脱バインダ処理条件
保持温度:280℃、
温度保持時間:8時間、
雰囲気:空気中
【0063】
焼成条件
保持温度:1300℃、
温度保持時間:2時間、
雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス、
酸素分圧:8.3×10−11気圧
【0064】
再酸化条件
保持温度:1100℃、
温度保持時間:3時間、
雰囲気ガス:加湿したNガス、
酸素分圧:4.17×10−7気圧
【0065】
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃としたウエッターを用いた。
【0066】
次いで、これらのチップ焼結体を、断面が内部電極に垂直となるように切断し、走査型電子顕微鏡による組成像(反射電子像)およびEDS像の観察を行った。
【0067】
図1に、MgOを含有するチップの内部電極端部付近の組成像を示す。また、図2に、MgOを含有しないチップの組成像を示す。図1および図2において、明度の最も高い領域が内部電極、中間の明度の領域が素体である。すなわち、図1では、チップの側端面から図中左側に内部電極が延びており、図2ではチップの側端面から図中右側に内部電極が延びている。図1では、内部電極がチップの側端面までほぼ達しており、内部電極端面をチップの側端面に露出させるための研磨が容易であることがわかる。これに対し図2では、内部電極端面とチップの側端面との間に暗色の領域が存在していることがわかる。
【0068】
図1および図2にそれぞれ示される領域におけるMn分布を示すEDS像を、図3および図4に示す。これらのEDS像では、明度が高いほどMn濃度が高い。MgOを含有しないチップでは、図4に示されるようにチップの側端面から内側に向かって約2μmの深さまでMnの偏在が認められる。これに対しMgOを含有するチップでは、図3に示されるようにMnの偏在は認められない。
【0069】
次に、図4に示されるMn偏在領域の結晶構造を調べるため、この領域のX線回折を行った。その結果、Mn偏在領域にはNiMnが多量に存在することがわかった。これに対し、MgOを含有するチップでは、内部電極端部付近にNiMnの生成は認められたが、回折ピークの強度からみて極めて少量であった。
【0070】
内部電極端部付近に酸化物であるNiMnが析出することから、その析出には内部電極の酸化が関係していると考えられる。そこで、MgOを添加せず、かつ再酸化処理を行わなかったほかは上記チップと同様にして比較用チップを作製し、これについて組成像を観察したところ、NiMnの析出は確認できなかった。この結果から、再酸化処理時にNi内部電極の端部が酸化性雰囲気と接触し、そこにMnが移動してNiMnが生成したと考えられる。
【0071】
Mn移動の様子を調べるため、素体の結晶粒界に存在するSiリッチ相をEDSにより分析した。その結果、MgOを含有するチップではSiリッチ相中にMnOが0.5モル%存在していたが、MgOを含有しないチップではSiリッチ相中のMnO濃度が0.15モル%にすぎなかった。この結果から、MgOがSiリッチ相中からのMnの移動を阻止することがわかる。なお、このSiリッチ相は、SiO含有量およびCaO含有量が共に素体の平均濃度よりも高いCa−Siリッチ相であり、相内におけるSiO濃度は31.6モル%であった。
【0072】
実施例2
Siリッチ相内におけるMnの挙動をより詳細に調べるために、(BaCa)SiO、MnCOおよびMgOそれぞれの添加量を下記表1に示す値としたほかは実施例1と同様にして、チップを作製した。表1に示す添加量は、いずれも主成分に対するモル百分率である。
【0073】
これらのチップについて、Siリッチ相におけるSiO濃度およびMnO濃度をTEM−EDS分析により測定し、また、内部電極端部付近におけるNiMn析出の有無を調べた。結果を表1に示す。なお、表1においてSiリッチ相内のSiO濃度が10モル%未満と表示してあるチップは、Siリッチ相が生成しなかったものである。Siリッチ相が生成しなかったものでは、SiO濃度を結晶粒内で測定した。
【0074】
【表1】
Figure 0003586148
【0075】
表1から、一定以上の(BaCa)SiOおよびMnCOを添加したときに、Siリッチ相が生成することがわかる。そして、Siリッチ相が生成する条件下においてNiMnの析出を抑えるためには、MgOの添加が必要であることがわかる。表1において、チップ全体へのMnCO添加量に対するSiリッチ相内のMnO濃度の比率で比較すると、MgOを添加したチップでは、添加しなかったチップに比べ前記比率が相対的に高くなることがわかる。したがって、MgO添加によりSiリッチ相からのMnOの移動が抑制され、その結果、NiMnの析出が抑えられたと考えられる。なお、チップNo.1、2は、(BaCa)SiOまたはMnCOの添加量が少なかったため、焼結不足であった。
【0076】
Siリッチ相の性状を代表的に示すために、表1に示すチップNo.7のTEM写真を図5に示す。また、図5中におけるSiリッチ相の存在箇所を、図5のトレース図である図6に示す。図5中の逆三角マークは、TEM−EDSによる組成分析箇所を示すものであり、組織構造とは関係しない。図5では、結晶粒界および結晶粒内にSiリッチ相が存在している。図5中のSiリッチ相には、一部にラメラ構造が認められるが、Siリッチ相には無構造のものもある。電子線回折による解析では、無構造のものもラメラ構造を有するものも結晶質であることが確認された。
【0077】
なお、希土類元素酸化物を添加した場合でも、Siリッチ相からのMnOの移動が抑制されることが確認できた。
【0078】
実施例3
主成分に対するMgOおよびAlの各比率を下記表2に示す値とし、主成分に対する(BaCa)SiOの比率を2モル%としたほかは実施例1と同様にして、チップを作製した。これらのチップについて、NiMn析出の有無を調べた。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
Figure 0003586148
【0080】
表2から、MgO添加によりNiMnの析出が抑制されることがわかる。なお、主成分に対するMgOの比率を20モル%としたチップも作製したが、このチップは焼結不足であった。また、主成分に対するAlの比率を20モル%としたチップも作製したが、このチップは誘電率が著しく低くなってしまった。
【0081】
実施例4
希土類元素酸化物を主成分に対し下記表3に示す比率で添加し、主成分に対するAlの比率を表3に示す値とし、主成分に対する(BaCa)SiOの比率を2モル%とし、MgOを添加しなかったほかは実施例1と同様にして、チップを作製した。これらのチップについて、NiMn析出の有無を調べた。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
Figure 0003586148
【0083】
表3から、希土類元素酸化物の添加によりNiMnの析出が抑制されることがわかる。なお、表3に示される組成のうち希土類元素酸化物を含む組成にさらにMgOを加えてチップを作製したところ、これらのチップにおいてもNiMnの析出は認められなかった。
【0084】
【発明の効果】
本発明では、Niを含む内部電極を有する積層磁器コンデンサを製造する際に、内部電極端面を露出させるための研磨工程の長時間化を防ぐことができ、生産性を向上させることができる。また、研磨が短時間で済むことにより、素体にクラック等の欠陥が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セラミック材料の組織を示す図面代用写真であって、MgOを含有する積層磁器コンデンサにおける内部電極端部付近の走査型電子顕微鏡による組成像である。
【図2】セラミック材料の組織を示す図面代用写真であって、MgOを含有しない積層磁器コンデンサにおける内部電極端部付近の走査型電子顕微鏡による組成像である。
【図3】セラミック材料の組織を示す図面代用写真であって、MgOを含有する積層磁器コンデンサにおける内部電極端部付近の走査型電子顕微鏡によるEDS像である。
【図4】セラミック材料の組織を示す図面代用写真であって、MgOを含有しない積層磁器コンデンサにおける内部電極端部付近の走査型電子顕微鏡によるEDS像である。
【図5】セラミック材料の組織を示す図面代用写真であって、積層磁器コンデンサの透過型電子顕微鏡写真である。
【図6】図5の透過型電子顕微鏡写真のトレース図である。

Claims (9)

  1. 主成分として、
    式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
    (上記式Iにおいて、
    0≦X≦1、
    0≦Y≦0.10、
    0.75≦m≦1.04
    である)
    で表される複合酸化物を含有し、
    副成分として、
    式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
    (上記式IIにおいて、
    0<Z<1
    0.5≦V≦4.0
    である)
    で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
    副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
    添加成分として、MgOを主成分に対し0.001〜10モル%含有し、
    主成分を含有する仮焼物に、添加成分の出発原料を添加し、焼成することにより製造された非還元性誘電体磁器材料。
  2. 副成分として、Al23を主成分に対し10モル%以下含有する請求項1の非還元性誘電体磁器材料。
  3. 主成分として、
    式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
    (上記式Iにおいて、
    0≦X≦1、
    0≦Y≦0.10、
    0.75≦m≦1.04
    である)
    で表される複合酸化物を含有し、
    副成分として、
    式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
    (上記式IIにおいて、
    0<Z<1
    0.5≦V≦4.0
    である)
    で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
    副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
    添加成分として、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)酸化物の少なくとも1種を主成分に対し0.01〜10モル%含有し、
    Al23を含有しない非還元性誘電体磁器材料。
  4. 主成分として、
    式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
    (上記式Iにおいて、
    0≦X≦1、
    0≦Y≦0.10、
    0.75≦m≦1.04
    である)
    で表される複合酸化物を含有し、
    副成分として、
    式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
    (上記式IIにおいて、
    0<Z<1
    0.5≦V≦4.0
    である)
    で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
    副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
    添加成分として、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)酸化物の少なくとも1種を主成分に対し0.01〜10モル%含有し、
    副成分として、Al23を主成分に対し0.1モル%未満含有する非還元性誘電体磁器材料。
  5. 主成分として、
    式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
    (上記式Iにおいて、
    0≦X≦1、
    0≦Y≦0.10、
    0.75≦m≦1.04
    である)
    で表される複合酸化物を含有し、
    副成分として、
    式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
    (上記式IIにおいて、
    0<Z<1
    0.5≦V≦4.0
    である)
    で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
    副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
    添加成分として、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)酸化物の少なくとも1種を主成分に対し1.5モル%超10モル%以下含有する非還元性誘電体磁器材料。
  6. MgOを含有する請求項3〜5のいずれかの非還元性誘電体磁器材料。
  7. SiO2濃度が10モル%以上であるSiリッチ相を含有する請求項1〜6のいずれかの非還元性誘電体磁器材料。
  8. 主成分として、
    式I 〔(CaXSr1-X)O〕m〔(TiYZr1-Y)O2
    (上記式Iにおいて、
    0≦X≦1、
    0≦Y≦0.10、
    0.75≦m≦1.04
    である)
    で表される複合酸化物を含有し、
    副成分として、
    式II 〔(BaZCa1-Z)O〕VSiO2
    (上記式IIにおいて、
    0<Z<1
    0.5≦V≦4.0
    である)
    で表される複合酸化物を主成分に対し0.5〜15モル%含有し、
    副成分として、MnOを主成分に対し0.2〜5モル%含有し、
    添加成分として、MgOを主成分に対し0.001〜10モル%含有する非還元性誘電体磁器材料を、
    主成分を含有する仮焼物に、添加成分の出発原料を添加し、焼成することにより製造する非還元性誘電体磁器材料の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかの非還元性誘電体磁器材料を誘電体として有し、少なくともNiを含有する内部電極を有する積層磁器コンデンサ。
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