JP3575896B2 - ポリ塩化ビニル用滑剤組成物 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩化ビニルの成形加工時に添加して成形加工を容易にし且つビルドアップ現象を改善するポリ塩化ビニル用滑剤組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリ塩化ビニルは、成形温度とポリマーの分解温度が近接しているので、樹脂混練時の摩擦発熱制御と金属壁面とのすべり性を高める為に、一般的にエステルＷＡＸ系滑剤と固形炭化水素系滑剤が組み合わされて使用されている。さらに滑剤の他にも、熱安定性や物性を高める目的で、安定剤や充填材等の副配合剤も数多く使用されている。
【０００３】
そして、これらの副配合成分全体のバランスから生じるロングラン性の良し悪しの問題が近年クローズアップされている。特にビルドアップ現象−すなわち主として無機配合成分の一部（ＣａＣＯ３ やＣａステアレート）がコンパウンドより遊離し、押出機のスクリューやダイスの隅に滞り、時間経過とともにその量が増し、不連続的に成形物に伴われて排出され、製品表面を傷付け汚染すること−によるロングラン性の低下が、大きな問題点となっている。
【０００４】
ビルドアップ防止に有効として従来から知られていた物質にステアリン酸、１２−ヒドロキシステアリン酸がある。が、最近の安定剤の主流である錫メルカプト／Ｃａステアレート系では効果不足が指摘されている。従ってこれらの物質以上に効果を有するビルドアップ防止物質あるいは滑剤組成物の発見が望まれている。
【０００５】
本発明の目的は、上記ポリ塩化ビニル成形時の問題点に関し、特にビルドアップ現象を改善する滑剤組成物を提供することである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を解決すべき鋭意検討を行った結果、これまでポリ塩化ビニル用に使用例のない新規な滑剤組成物を使用することによって、本質的な滑性・熱安定性・物性を損ねることなく且つビルドアップ現象を大幅に低減できることを発見し、本発明を完成した。
【０００７】
本発明の滑剤組成物は、脂肪族多塩基酸／固形炭化水素及び（又は）エステルＷＡＸ＝５〜３５重量％／９５〜６５重量％からなる。脂肪族多塩基酸の組成比は５〜３５％の範囲である。５％より少ないとビルドアップ防止性が出ない。３５％より多いとゲル化遅延性を落とし良好な成形品ができない。固形炭化水素及び（又は）エステルＷＡＸの構成比は９５〜６５％の範囲である。固形炭化水素とエステルＷＡＸの比率は，通常２５〜７５％／７５〜２５％の範囲であるが、数種の固形炭化水素をうまく組合せれば固形炭化水素だけでよい場合や逆エステルＷＡＸだけでよい場合もあり、固形炭化水素とエステルＷＡＸの比率については特に制限はない。
【０００８】
本発明で用いられる脂肪族多塩基酸は、その炭素数が６〜１２であり、具体例として、アジピン酸、チオジプロピオン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等を挙げることができる。脂肪族系多塩基酸で炭素数が６より小さいもの及び芳香族系の多塩基酸は、ビルドアップ改善効果がわすがで且つ滑剤の本質的効果である金属すべり性を阻害し、製品外観を損なうので本発明には適さない。
【０００９】
本発明で用いられる固形炭化水素系滑剤は、低分子量ポリエチレン、低分子量酸化ポリエチレン、マイクロクリスタリンＷＡＸの中から選ばれた１種又は２種以上である。これらの固形炭化水素はゲル化遅延性と発熱防止性に優れている。
【００１０】
本発明で用いられるエステルＷＡＸは、ペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール長鎖脂肪酸・二塩基酸複合エステル、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸・二塩基酸複合エステル、ポリグリセリン長鎖脂肪酸エステルの中から選ばれた１種又は２種以上である。これらのエステルＷＡＸは金属滑り性とゲル化遅延性に優れている。長鎖脂肪酸の炭素数は１６〜２２の範囲である。１６より小さいとゲル化遅延効果・金属滑り性が不足する。２２より多い脂肪酸は生産量が希少且つ高価で工業的に利用できない。複合エステルに用いられる二塩基酸としては、フタル酸、アジピン酸、コハク酸等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【００１１】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の効果を説明する。
パイプ配合を用い、プラストグラフでゲル化遅延効果と発熱防止効果を評価した。続いて、小型二軸異方向押出機で、ホッパー内でのコンパウンド粉末流れ性、樹脂圧、樹脂温、成形品の表面特性及び６０分稼働した後機械を分解して、スクリュー部とダイス部の付着物量からビルドアップ防止性を評価した。
評価用ＰＶＣ配合、プラストグラフ条件及び押出機運転条件を表１〜３に示した。
性能評価基準を表４そして滑剤組成を表５、評価結果を表６に示した。
【００１２】
【表１】

【００１３】
【表２】

【００１４】
【表３】

【００１５】
【表４】

【００１６】
【表５】

【００１７】
【表６】

【００１８】
【発明の効果】
表６のデータ比較でわかるように、本発明品１〜１３のビルドアップ性は、比較品１〜７に比べ明らかに優れる。また比較品８はビルドアップ防止性はよいものの樹脂圧が異常に高く、その結果として成形物の表面性と着色性に劣り、滑剤組成物として不適切である。
比較品１〜８は、ビルドアップ以外の評価項目すなわち粉末特性、樹脂圧、表面性のいずれかの項目で欠陥があり、滑剤組成物として不適切なのはあきらかである。それに対して本発明品１〜１３は、いずれの評価項目においてもバランスのよい結果を示し、本発明の進歩性は明らかである。

Claims (4)

1. 脂肪族多塩基酸／固形炭化水素及び（又は）エステルＷＡＸ＝５〜３５重量％／９５〜６５重量％からなるポリ塩化ビニル用滑剤組成物。
2. 脂肪族多塩基酸の構成炭素数が６〜１２である請求項１記載のポリ塩化ビニル用滑剤組成物。
3. 固形炭化水素が、低分子量ポリエチレン、低分子量酸化ポリエチレン、マイクロクリスタリンＷＡＸの中から選ばれた１種又は２種以上である請求項１又は２記載のポリ塩化ビニル用滑剤組成物。
4. エステルＷＡＸが、ペンタエリスリトール長鎖脂肪酸（Ｃ１６〜２２）エステル、ペンタエリスリトール長鎖脂肪酸・二塩基酸複合エステル、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸・二塩基酸複合エステル、ポリグリセリン長鎖脂肪酸エステルの中から選ばれた１種又は２種以上である請求項１〜３までのいずれか１項記載のポリ塩化ビニル用滑剤組成物。