JP3575400B2 - 連続鋳造鋳片の直送圧延方法 - Google Patents

連続鋳造鋳片の直送圧延方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造機により鋳造された高温鋳片を直接、あるいは表面温度を中心温度と同じにする程度の保温・加熱を行った後に熱間圧延するか、又は、連続鋳造機により鋳造された高温鋳片を加熱炉に装入して加熱した後に熱間圧延するか、何れかの方法(本発明ではこれらをまとめて「直送圧延」と定義する)で鋼板を製造する直送圧延方法に関し、詳しくは、表面性状に優れた鋼板を製造することができる直送圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造機で鋳造された鋳片を直接、あるいは表面温度を中心温度と同じにする程度の保温・加熱を行った後に熱間圧延する、所謂直接圧延(HDRとも云う)や、連続鋳造機で鋳造された高温の鋳片を加熱炉に装入して加熱後に熱間圧延する、所謂ホットチャージ圧延(HCRとも云う)は、工程の大幅な合理化や省エネルギ−及び歩留りの向上が期待でき、今後更に開発が進められ発展が予想される。
【0003】
ところで、連続鋳造鋳片の表層部には、縦割れ、横割れ、ノロカミ、ブローホール等の表面欠陥があり、例えば特開昭61−264135号公報や特開昭62−34602号公報に開示されるように、連続鋳造鋳片を直送圧延して鋼板を製造する場合、鋳片にはこれらの表面欠陥が無いことが必要であり、そのため、表面欠陥を回避する様々な手段を用いて直送圧延が実施されている。
【0004】
具体的な対策例として、縦割れは鋳型内の冷却速度を低下すると減少することが知られており、鋳型内での抜熱を少なくするモールドパウダーが開発され、縦割れ防止に効果をあげている。横割れは鋳片表面温度を鋼の脆化温度範囲外の850℃以上に保持して連続鋳造機の矯正帯を通過させることで防止可能であり、二次冷却強度及び鋳片引き抜き速度の制御により850℃以上の表面温度を確保して横割れが防止されている。ノロカミの低減にはモールドパウダーの性状を最適化すると共に鋳型内の溶鋼流動を制御することが必要であり、鋳造条件毎にその条件に合致するモールドパウダーが開発され、又、電磁力を用いた鋳型内溶鋼の流動制御が行われ、ノロカミ低減に効果をあげている。ブローホールは浸漬ノズル内に吹き込まれるArに起因して発生するため、Arの吹き込み流量を必要最低限に制御してその発生を抑えている。このような対策を積み上げ実施することで直送圧延が実用化している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記対策を実施してもHDRプロセスやHCRプロセスにより製造された鋼板には表面疵の発生が多く、表面品質は再加熱材に比べて劣ると云う問題がある。ここで再加熱材とは、常温まで冷却した鋳片を無手入れのまま加熱炉に装入して圧延温度まで加熱し、次いで、圧延して製造した鋼板である。
【0006】
HDRプロセスやHCRプロセスでは、凝固・冷却後の鋳片をできるだけ高温のまま熱間圧延機に搬送、若しくは加熱炉に装入することにより、鋳片を加熱する燃料を節約するのが狙いである。このようなプロセスにおいては、炭素濃度が0.1質量%以下の炭素鋼を凝固させると、δ−フェライトが初晶として晶出し、更に冷却していくと、δ−フェライト相はオーステナイト(以下「γ」と記す)相に変態する。γ相中の硫黄(S)の溶解度はδ−フェライト相中のSの溶解度よりも小さいため、γ相中ではSはγ粒界に偏析する。そのため、γ粒界ではSとMnが反応して硫化物(MnS)が析出する。粒界でのSの偏析は著しく大きいため、MnSの析出量は粒内に比べて粒界の方が圧倒的に多くなる。又、Mnの拡散はSの拡散に比べて1オーダー小さいので、MnSが生成すると、その周囲にMnの欠乏層が生成する。尚、Sは拡散が早く、欠乏層は生成しない。
【0007】
Mn欠乏層の生成等によりMn濃度が低くなると、硫化物としてFeリッチな[Fe、Mn]Sが形成・析出してくる。この硫化物組成では、硫化物自体の融点が非常に低く、1100℃〜1200℃程度まで低下する。そのため、Feリッチな[Fe、Mn]Sが析出した鋼の熱間延性は非常に低く、熱間圧延すると割れが発生し易くなる。
【0008】
特に、このような硫化物の析出と低融点化は、鋼成分組成のMn含有量とS含有量との比(Mn/S)が50以下で顕著になるため、Mn/S比が50以下の鋼をHDRプロセス若しくはHCRプロセスで製造すると、鋼板表面の疵発生頻度が高くなる。Mn/S比が50以下の鋼では、Mn含有量がS含有量に較べて相対的に少なく、上記のMn欠乏層の生成に相まって、Feリッチの複合硫化物が生成し易くなるためである。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、炭素濃度が0.1質量%以下の低炭素Alキルド鋼鋼板をHDRプロセスやHCRプロセスにより製造する際に、表面疵を防止して表面性状に優れた鋼板の製造を可能とする連続鋳造鋳片の直送圧延方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明による連続鋳造鋳片の直送圧延方法は、質量%で、C:0.1%以下、P:0.02%以下、S:0.03%以下、solAl:0.01〜0.05%を含有するAlキルド鋼鋳片の直送圧延方法であって、垂直曲げ型連鋳機を用いて2m/min以上の引き抜き速度で鋳造し、鋳片が上部矯正帯を通過後に、凝固率が10〜50%の鋳片を5〜15℃/secの冷却速度で冷却して鋳片表面温度をAr1点以下まで低下させ、次いで、復熱させてAc3点以上の鋳片表面温度で下部矯正帯を通過させ、その後、鋳片表面温度をAc3点以上に保持したまま、切断すると共に熱間圧延機まで搬送して、熱間圧延することを特徴とするものである。
【0011】
第2の発明による連続鋳造鋳片の直送圧延方法は、質量%で、C:0.1%以下、P:0.02%以下、S:0.03%以下、solAl:0.01〜0.05%を含有するAlキルド鋼鋳片の直送圧延方法であって、垂直曲げ型連鋳機を用いて2m/min以上の引き抜き速度で鋳造し、鋳片が上部矯正帯を通過後に、凝固率が10〜50%の鋳片を5〜15℃/secの冷却速度で冷却して鋳片表面温度をAr1点以下まで低下させ、次いで、復熱させてAc3点以上の鋳片表面温度で下部矯正帯を通過させ、その後、鋳片表面温度をAc3点以上に保持したまま、切断すると共に加熱炉まで搬送し、加熱炉で加熱した後に熱間圧延することを特徴とするものである。
【0012】
第3の発明による連続鋳造鋳片の直送圧延方法は、第1の発明又は第2の発明において、Alキルド鋼鋳片のMn含有量とS含有量との比が50以下であることを特徴とするものである。
【0013】
第4の発明による連続鋳造鋳片の直送圧延方法は、第1の発明乃至第3の発明の何れかにおいて、鋳片が上部矯正帯を通過後、少なくとも20秒経過してから鋳片表面温度をAr1点以下に冷却することを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、C:0.1質量%(以下「%」と記す)以下、P:0.02%以下、S:0.03%以下、solAl:0.01〜0.05%を含有するAlキルド鋼を対象とする。直送圧延には強度が低くて加工性が良い鋼が適しており、上記成分組成のAlキルド鋼はこの条件を満たすためである。そして、特に、Mn含有量とS含有量との比(Mn/S)が50以下のAlキルド鋼鋳片を対象とすることが好ましい。前述したように、Mn/Sが50以下の鋼では、析出する硫化物がFeリッチの複合硫化物になり、熱間圧延中に割れ易く、製品欠陥が発生して歩留まりが低下するという問題が大きく、本発明の効果を十分に発揮させることができるからである。
【0015】
本発明では一旦鋳片の表面温度をAr1点以下まで下げ、鋳片表層部をパーライト変態させ、次いで、鋳片表面をAc3点以上の温度まで復熱させ、再度γ相に変態させる。この2回の相変態により、凝固・冷却段階で最初に形成したγ粒の粒界に沿って析出していた硫化物と新しく生成したγ粒界とが分離される。本発明では、このようにして硫化物析出位置とγ粒界とを分離させるので、鋼の高温脆化を著しく改善でき、熱間圧延時の表面疵を低減させることができる。
【0016】
本発明では、2m/min以上の引き抜き速度で鋳造する必要がある。その理由は、HDRプロセスにおける熱間圧延機の生産量を確保するためには、熱間圧延機の生産量に見合った引き抜き速度で鋳造する必要があるからである。又、圧延前の鋳片温度は、圧延性や省エネルギーの観点から高い方が良く、2m/min以上の引き抜きで鋳造することにより鋳片温度を高めることができるからである。
【0017】
本発明では垂直曲げ型連続鋳造機を用いる。本発明が対象とする鋼種はAlキルド鋼であり、高清浄性が要望される鋼である。Alキルド鋼では溶鋼中に脱酸生成物であるアルミナ性介在物が多数、懸濁しており、これを除去するために様々な対策が採られている。そのひとつに、垂直曲げ型連鋳機を用いて鋳型を含む垂直部でアルミナ性介在物を浮上させ、モールドパウダーに吸収させて除去する方法があり、この方法によるアルミナ性介在物の除去効果は特に優れている。これが本発明で垂直曲げ型連続鋳造機を用いる理由である。
【0018】
垂直曲げ型連続鋳造機では鋳片は2回矯正される。即ち、垂直方向に鋳造された鋳片は上部矯正帯(1点で矯正される場合には上部矯正点と云う)で平板状から円弧状に矯正され、下部矯正帯(1点で矯正される場合には下部矯正点と云う)で円弧状から平板状に矯正されて水平方向に搬出される。
【0019】
鋳片が上部矯正帯を通過する際の鋳片表面温度は高い方が良い。鋳片温度が高くなると、鋳片の強度が低下して小さな矯正力で矯正可能になり、且つ、矯正時の応力緩和が起り易くなるためである。鋳片表面温度が低過ぎると、鋳片強度が高過ぎて矯正できないという問題が起こる。そのため、本発明では鋳片が上部矯正帯を通過してから鋳片表面温度をAr1点以下に冷却することとした。更に、矯正後直後は鋳片に矯正応力が残留するので、矯正終了後少なくとも20秒間は応力緩和させて残留応力を消失させ、その後鋳片表面温度をAr1点以下に冷却することが好ましい。
【0020】
又、下部矯正帯での矯正時に矯正応力により、鋳片に横割れが発生することがある。本発明で対象とする鋼は本来矯正応力による横割れの発生が少ないが、本発明では鋼の脆性域より高温側のAc3点以上の鋳片表面温度に復熱させてから矯正するので、横割れを完全に防止することができる。
【0021】
そして、鋳片表面温度をAc3点以上に保持したまま、切断すると共に熱間圧延機又は加熱炉まで搬送する。これは、HDRプロセスの場合には圧延開始前の鋳片温度はAc3点以上必要であり、又、HCRプロセスの場合も鋳片温度が高い程省エネルギー効果が高くなるからである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。図1は本発明による直送圧延方法のうちHDRプロセスにおける鋳片表面の温度履歴を示す概要図、図2は本発明による直送圧延方法のうちHCRプロセスにおける鋳片表面の温度履歴を示す概要図、図3は本発明の実施の形態の例を示す図であって、垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機の側面概要図である。尚、図1及び図2のT は液相線温度、Tは固相線温度である。
【0023】
C:0.1%以下、P:0.02%以下、S:0.03%以下、solAl:0.01〜0.05%を含有する溶鋼を転炉や二次精錬炉等により溶製し、この溶鋼を図3に示すように連続鋳造機にて鋳造する。前述したように本発明は、これら成分に加えて、更に、Mn含有量とS含有量との比(Mn/S)が50以下の鋼に適用することが好ましい。その他の成分は特に限定する必要はないが、通常、直送圧延される薄鋼板用のAlキルド鋼では、およそSi:0.1%以下、Mn:0.4%以下である。直送圧延には強度が低くて加工性が良い鋼が適しており、このような薄鋼板用のAlキルド鋼は、合金成分が少なく、この条件を満たすため、直送圧延には最適である。
【0024】
浸漬ノズル5を介して鋳型6内に鋳造された溶鋼は、鋳型6内で冷却されて凝固殻3を形成し、内部に未凝固相2を有する鋳片1として、鋳型6の下方に設けたサポートロール7、ガイドロール8、及びピンチロール9に支持されつつ、ピンチロール9の駆動力により鋳型6の下方に、2.0m/min以上の引き抜き速度で連続的に引き抜かれる。この間鋳片1は複数のガイドロール8からなる上部矯正帯10で平板状から円弧状に曲げられ、又、複数のガイドロール8からなる下部矯正帯11で円弧状から平板状に曲げ戻される。鋳片1は、これらのロール間に設けられた水スプレー又はエアーミストスプレーから構成される二次冷却帯(図示せず)で冷却され、下方に引き抜かれつつ凝固殻3の厚みを増大する。尚、上部矯正帯10では鋳片表面温度を700℃以上に保持して矯正するのが一般的であるが、フェライト相とγ相が共存すると、脆弱なフェライト相が優先的に矯正変形を起こし、フェライト部分に割れが発生する可能性があるので、γ単相の温度域で矯正することが望ましい。
【0025】
上部矯正帯10と下部矯正帯11との間には、鋳片表層部を強冷却するための強冷却装置4が設置されている。強冷却装置4は、通常の二次冷却帯に較べて鋳片表面を急速に冷却することが可能な装置であり、3〜15℃/sec、好ましくは5℃/sec以上の冷却速度で冷却可能な装置である。そのためには、例えば水プレーノズルで冷却する場合は、鋳片表面1m 当たりの1分間の冷却水量を200〜2000lとし、噴射圧力を2〜100kg/cm とすれば良い。但し、強冷却装置4は水スプレーノズルに限るものではなく、例えば鋳片表面に層流の冷却水を流すような冷却方法としても良い。
【0026】
又、強冷却装置4の設置位置は、鋳片1が上部矯正帯10を通過して少なくとも20秒経過した時点から強冷却されるように、上部矯正帯10との設置間隔を設定することが好ましい。上部矯正帯10から強冷却装置4までの鋳片1の通過時間は鋳片引き抜き速度により決定されるので、採用する引き抜き速度の最速値において通過時間が20秒以上となるように強冷却装置4を配置すれば良い。
【0027】
この強冷却装置4を用いて鋳片表面を急速に冷却し、鋳片表面温度がAr1点以下となるまで冷却する。Ar1点以下となる保持時間は10秒間以上であれば上限値は特に限定されないが、冷却し過ぎると鋳片1の温度が下がり、直送圧延の省エネルギー効果が低下するので60秒程度で十分である。このように急速冷却する理由は、上部矯正帯10の通過後から下部矯正帯11に入るまでに、鋳片表面温度を一旦Ar1点以下に下げ、少なくとも10秒以上Ar1点以下に保持した後、復熱させて鋳片表面温度をAc3点以上に保持する必要があるからである。10秒間以上保持する理由は、パーライト変態を十分に起こさせるためである。短すぎると変態が完全に終了せずに復熱してしまい、γ粒界と硫化物析出位置との分離が完全には実現しない可能性があるからである。急速冷却しても鋼の熱拡散が小さいために凝固殻3の内部は温度低下せず、表面から深さ方向15mm程度にしか熱拡散が及ばない。この結果、鋳片1の有する顕熱はほとんど失われることがない。ゆっくり冷却すると、表層がAr1点以下になるまでに凝固殻3の内部も冷却され、結果的に顕熱が失われてしまう。急速に冷却することで顕熱を失わず、効果的に復熱させることが可能となる。
【0028】
Ar1点は冷却速度により影響を受ける。即ち、パーライト変態を開始する際には過冷却が必要となるので、Ar1点は冷却速度の影響を受けて低下する。冷却速度とAr1点との関係を調べた結果、上記成分範囲の鋼種のAr1点は、冷却速度10℃/minでは約550℃となるので、この温度を目安として冷却するのが良い。
【0029】
又、強冷却中の鋳片1の凝固率を10〜50%の範囲に制御することが好ましい。内部に未凝固相2を有し、その凝固率が10〜50%である鋳片1を強冷却すると、未凝固相2の潜熱及び顕熱により復熱時の温度上昇量を大きくさせること、換言すれば、高温の鋳片1を得ることができるからである。この条件を満足させるために、鋳片引き抜き速度及び鋳型6直下から強冷却装置4入り口までの二次冷却強度を制御し、凝固殻3の厚みを調整することが必要である。尚、凝固率とは鋳片1の厚みの半分に対する凝固殻3の厚みの比率を百分率で表示したものである。
【0030】
鋳片1が強冷却装置4を通過したならば、二次冷却強度を調整して鋳片表面を復熱させる。鋳片1は、多量の未凝固相2を内部に有しているので、二次冷却強度を調整することで、未凝固相2の凝固潜熱及び顕熱により容易に復熱する。そして、連続鋳造機の湾曲部で鋳片表面温度がAc3点以上となるまで復熱させ、次いで、下部矯正帯11で鋳片1を矯正する。
【0031】
上部矯正帯10の出口から下部矯正帯11の入り口までの距離は、例えば半径10mの円弧状に鋳片1を矯正する場合には15.7mとなる。図3に示すように、通常の連続鋳造機では、複数本のガイドロール8による逐次矯正が採用されているので、実質的には約12〜13mの長さの間で上述した冷却・復熱を実施する必要がある。引抜き速度は少なくとも2m/min以上であるので、この湾曲部を通過する時間は最大6.5分となる。復熱速度は鋼の熱拡散率によって支配され、連鋳機内にある鋳片1では最大で約20℃/secであるので、強冷却装置4の設置位置及び冷却速度を考慮することが重要である。
【0032】
そして、鋳片表面温度をAc3点以上に保持したまま、鋳片中心部まで完全に凝固させ、凝固した鋳片1を連続鋳造機出側に設置した切断機(図示せず)で所定長さに切断し、Ac3点以上の高温の鋳片1を搬送台車等により熱間圧延機に搬送して熱間圧延するか、若しくは加熱炉で加熱後に熱間圧延する。
【0033】
鋳片温度を高めるためには、連続鋳造機の出口(機端)付近まで未凝固相2を残し、連続鋳造機の出口直前で鋳片1の凝固を完了させることが効果的である。溶鋼が凝固する際には潜熱を放出するため、この潜熱により凝固殻3を復熱させることができる。尚、HDRプロセスの場合、鋳片1を熱間圧延機で圧延する前に必要に応じて表面温度を中心温度と同じにする程度の保温・加熱を行っても、又、同調カッターの切断時に形成されるバリを除去しても良い。
【0034】
このようにして直送圧延を行うことで、表面疵が極めて少なく、表面性状に優れた鋼板を直送圧延により製造することが可能となる。又、一旦鋳片表面をAr1点以下まで低下させるが、その後の復熱により鋳片は容易にAc3点以上となり、鋳造後の鋳片加熱を必要としない程度まで鋳片温度を高めることができる。
【0035】
【実施例】
[実施例1]
図3に示す垂直曲げ型スラブ連続鋳造機を用いて、引き抜き速度及び冷却強度を変更したHDR試験を実施し、鋳片表面温度と薄鋼板での疵発生率との関係を調査した。用いた連続鋳造機は、鋳型長さが0.9m、鋳型上端から上部矯正帯出口までの長さが3.5m、湾曲半径が10m、鋳型上端から下部矯正帯入り口までの長さが17.5m、鋳型上端から下部矯正帯出口までの長さが19.5m、連続鋳造機の機長(鋳型上端から機端まで)が45mであり、急速冷却装置は鋳型上端から4.5〜6.5mの範囲に設置した。鋳片厚みが220m、鋳片幅が1000mmであり、C:0.1%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.4%以下、P:0.02%以下、S:0.03%以下、solAl:0.01〜0.05%を含有し、Mn/Sが35〜38のAlキルド鋼の鋳片を1.8〜3.2m/minの引き抜き速度で鋳造した。
【0036】
鋳型上端から6.6m、17.4m、機端、及び熱間圧延機直前の合計4箇所の位置に2色温度計設置し、鋳片幅方向中央の表面温度を測定した。上部矯正帯を通過時の鋳片表面温度は900℃以上になるように冷却強度を制御し、上部矯正帯通過後急速に冷却した。その後、二次冷却強度を調整して1000℃を目標に復熱させ、下部矯正帯を通過させた。鋳造した鋳片は直ちに所定長さ(約9m)にガスカッターで切断し、鋳片コーナー部はガスバーナー式のヒーターで1000℃以上になるように加熱した後、ローラーテーブルにより熱間圧延機まで高速搬送した。HDRが可能な温度は経験的に熱間圧延前の鋳片表面温度が930℃以上であるので、930℃以上を確保できるかどうかをHDR可否の判断基準とした。表1に試験条件及び試験結果を示す。これら鋼種のAr1点は約550℃、Ac3点は900℃である。
【0037】
【表1】
Figure 0003575400
【0038】
引き抜き速度が1.8m/minの試験No.1では、熱間圧延前の鋳片表面温度が880℃となり、HDR可否の判断基準である930℃を確保できなかった。一方、引き抜き速度が2.0m/min以上の試験では、熱間圧延前の鋳片表面温度は、930℃以上であった。これらの結果から、HDRを行うためには引き抜き速度を2.0m/min以上とする必要があることが分かった。
【0039】
鋳片表面温度がAr1点以下にならないように冷却した試験No.9では、HDRは問題なく実施できたが、熱間圧延後の薄鋼板に表面疵が多数発生した。又、強冷却装置でAr1点以下に冷却した後、下部矯正帯をAc3点以下で通過させた試験No.10では、連鋳機出口での鋳片温度が低くなり、そのため、熱間圧延機直前での鋳片温度も低く、圧延荷重が高まると同時に圧延後の疵の発生も多かった。
【0040】
引き抜き速度が3.2m/minの試験No.8では、鋳片下面コーナー部にコーナー割れが発生し、薄鋼板の疵発生率が若干高くなった。急速冷却すると鋳片表面には引張り応力が作用する。従って、上部矯正から急速冷却開始までの時間が短かいと、急速冷却による引張り応力に加えて矯正時の残留応力が作用し、鋳片下面コーナー部に引き抜き方向に直交する割れが発生する。これが試験No.8における鋳片下面コーナー部のコーナー割れの発生原因である。一方、上部矯正から強冷却開始までの時間が20秒以上の他の全ての試験ではコーナー割れは発生しなかった。これらの結果から、上部矯正から強冷却開始までの時間を20秒以上にすれば、コーナー割れを防止できることが分かった。
【0041】
上部矯正から強冷却開始までの時間を20秒以上とし、更に、引き抜き速度及び鋳片表面温度を本発明の範囲内に制御した試験No.2〜7では薄鋼板の表面疵が少なく、且つ、安定してHDRを実施することができた。
【0042】
[実施例2]
実施例1と同一の連続鋳造機を用い、実施例1と同一のAlキルド鋼を鋳造してHCRを実施した。連続鋳造機の鋳造量と熱間圧延機の生産量とを一致させるために、連続鋳造機の引き抜き速度を2.4m/minとして厚みが220mm、幅が1000mmの鋳片を鋳造した。
【0043】
強冷却装置による急速冷却をした後の鋳片表面温度は、450〜520℃の範囲であった。その後、復熱させて下部矯正帯を通過時の鋳片表面温度を950〜1020℃の範囲に制御した。連鋳機出口の鋳片表面温度は980〜1020℃であり、ガスカッターで切断後に鋳片コーナーを加熱せずに加熱炉に装入した。加熱炉温度は1150℃に設定した。加熱炉からの抽出時間を30分、60分、90分、120分、150分、180分に設定して、この時間で抽出し、熱間圧延を実施して薄鋼板の表面疵の発生率を調査した。表2に試験条件及び試験結果を示す。これら鋼種のAr1点は約550℃、Ac3点は900℃である。表2に示す加熱燃料原単位指数は、加熱時間が3時間以上の燃料原単位の平均値を基準(1.0)としたものである。
【0044】
【表2】
Figure 0003575400
【0045】
加熱時間が30分の試験No.11では、鋳片コーナー部分の温度が上がりきらず、熱間圧延後の薄鋼板に表面疵が若干発生したが、60分以上加熱すると鋳片温度が均一化して表面疵の発生率は少なくなった。一方、加熱時間が長くなるほど加熱燃料の原単位は増加した。省エネルギーと表面疵防止の観点からは加熱時間は60〜120分とすることが望ましい。
【0046】
【発明の効果】
本発明では、Mn/Sが50以下のAlキルド鋼鋳片の直送圧延において、硫化物の析出形態を制御しながら、且つ、直送圧延が可能な温度まで連鋳機内で復熱させるので、鋳片の凝固組織に起因する熱延コイルの表面疵を完全に防止することが可能となると共に、省エネルギー効果を増大させることができ、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるHDRプロセスにおける鋳片表面の温度履歴を示す図である。
【図2】本発明によるHCRプロセスにおける鋳片表面の温度履歴を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の例を示す図であって、垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機の側面概要図である。
【符号の説明】
1 鋳片
2 未凝固相
3 凝固殻
4 強冷却装置
5 浸漬ノズル
6 鋳型
7 サポートロール
8 ガイドロール
9 ピンチロール
10 上部矯正帯
11 下部矯正帯

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.1%以下、P:0.02%以下、S:0.03%以下、solAl:0.01〜0.05%を含有するAlキルド鋼鋳片の直送圧延方法であって、垂直曲げ型連鋳機を用いて2m/min以上の引き抜き速度で鋳造し、鋳片が上部矯正帯を通過後に、凝固率が10〜50%の鋳片を5〜15℃/secの冷却速度で冷却して鋳片表面温度をAr1点以下まで低下させ、次いで、復熱させてAc3点以上の鋳片表面温度で下部矯正帯を通過させ、その後、鋳片表面温度をAc3点以上に保持したまま、切断すると共に熱間圧延機まで搬送して、熱間圧延することを特徴とする連続鋳造鋳片の直送圧延方法。
  2. 質量%で、C:0.1%以下、P:0.02%以下、S:0.03%以下、solAl:0.01〜0.05%を含有するAlキルド鋼鋳片の直送圧延方法であって、垂直曲げ型連鋳機を用いて2m/min以上の引き抜き速度で鋳造し、鋳片が上部矯正帯を通過後に、凝固率が10〜50%の鋳片を5〜15℃/secの冷却速度で冷却して鋳片表面温度をAr1点以下まで低下させ、次いで、復熱させてAc3点以上の鋳片表面温度で下部矯正帯を通過させ、その後、鋳片表面温度をAc3点以上に保持したまま、切断すると共に加熱炉まで搬送し、加熱炉で加熱した後に熱間圧延することを特徴とする連続鋳造鋳片の直送圧延方法。
  3. Alキルド鋼鋳片のMn含有量とS含有量との比が50以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連続鋳造鋳片の直送圧延方法。
  4. 鋳片が上部矯正帯を通過後、少なくとも20秒経過してから鋳片表面温度をAr1点以下に冷却することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の連続鋳造鋳片の直送圧延方法。
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