JP3573013B2 - 成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂などの成形品の成形と塗装を同時に行うために金型内のキャビティに予め塗料を塗布(モールドコート)した後に充填材料を注入するようにした成形品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の成形品として、例えば、車両用のステアリングホイールがある。ステアリングホイールは、芯金を金型キャビティ(成形品形状を作る空洞部)にセットした後に、金型キャビティに樹脂材料を注入し硬化させて成形される。ステアリングホイールの樹脂成形に使用されているウレタン樹脂は、耐光性に劣り黄変する欠点があるため、その樹脂部分の表面に耐光性をもたせるための塗膜を形成する必要がある。
【0003】
この塗膜の形成方法として、金型内のキャビティに予め塗料を塗り、その後、製品の成形を行う方法が適用されている。具体的には、金型を開いてキャビティに塗料溶液をスプレーガンで塗布(モールドコート)する。その後、金型を閉じキャビティに充填材料としてのウレタン材料を混合注入して反応硬化させる。これにより、成形品の表面に塗膜が形成される。なお、金型キャビティに所定の材料を混合注入して反応硬化させる成形方法を反応射出成形(RIM:Reaction Injection Molding)という。また、ここで用いられる塗料溶液は、例えば、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)及びイソプロピルアルコール(IPA)と、耐光性に優れたウレタン樹脂とからなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のようにスプレーガンにより塗料溶液をキャビティに塗布した場合では、金型のキャビティ以外の部分に塗布されたり、金型に塗着せずに空気中に飛散し塗着効率が悪化してしまう。また、キャビティ以外の部分に塗布された塗料は成形後の製品におけるバリ発生の原因となってしまうため、このバリを製品から除去するための処理工程が必要となる。さらに、塗着せずに空気中に飛散した塗料は、作業場を汚すばかりでなく、周囲の環境を悪化させていた。
【0005】
また、スプレーガンで塗料溶液を塗布(モールドコート)した場合では、均一に塗料を塗布することができない。特に、パーティングラインの部分では、十分に塗布することができなかった。そのため、ステアリングホイールの耐光性が十分に確保できないといった問題が生じる。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、金型キャビティに塗料を効率よく塗布(モールドコート)することができる成形品の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、成形品表面に塗膜層が形成された成形品の製造方法において、金型を閉じた状態の金型キャビティ内で溶剤とウレタン樹脂とを含む塗料溶液を沸騰させ、沸騰時の体積増加により塗料を金型キャビティ表面に塗布すると共に気化した溶剤を排気して塗膜層を形成する塗装工程と、その後金型キャビティ内に充填材料を充填する工程とからなることをその要旨としている。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、金型キャビティ内は、減圧状態としたことをその要旨としている。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、金型キャビティ内に塗料溶液を流し込んだ後、金型キャビティ内を減圧させて、塗膜層を金型キャビティに形成したことをその要旨としている。
請求項4に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、金型キャビティを減圧し、その減圧した金型キャビティ内に塗料溶液を注入して塗膜層を金型キャビティに形成したことをその要旨としている。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記充填材料は、金型キャビティ内で反応硬化するウレタン材料であることをその要旨としている。
【0014】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、金型を閉じた状態の金型キャビティ内で溶剤とウレタン樹脂とを含む塗料溶液を沸騰させ、沸騰時の体積増加により塗料が金型キャビティ表面に、効率よく塗布されると共に気化した溶剤が排気されて塗膜層が形成される。その後、金型キャビティ内に充填材料が充填されて、成形と塗装が同時に行われる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、金型キャビティ内を減圧することで金型キャビティ内で塗料溶液を沸騰させ、その沸騰時の体積増加及び破泡により金型キャビティに塗膜層が形成される。
請求項3に記載の発明によれば、金型キャビティ内に塗料溶液を流し込んだ後に、その金型キャビティ内を減圧すると、塗料の溶剤が沸騰し、この沸騰時の体積増加及び破泡により金型キャビティの壁面に塗料が塗着される。つまり、閉じられた金型キャビティにおいて、その壁面に塗料が効率よく均一に塗布される。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、金型キャビティが減圧され、その減圧状態の金型キャビティ内に塗料溶液が注入される。この場合、塗料の溶剤が沸騰し、泡状になった塗料溶液が破泡しながらキャビティ内に流入される。これにより、金型キャビティの壁面に塗料が塗着される。つまり、閉じられた金型キャビティにおいて、その壁面に塗料が効率よく均一に塗布される。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、塗膜層が形成されたキャビティ内にウレタン材料が混合注入されて反応硬化する。つまり、反応射出成形によりウレタン樹脂成形が行われる。この反応射出成形では、一般樹脂の射出成形と比較して、キャビティ内が低温、低圧の条件下で樹脂成形される。従って、キャビティの壁面に形成された塗膜層が成形時の圧力や温度によって壊されることが防止される。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1〜3は、本実施形態における射出成形機の一部断面図であり、図4は同射出成形機により成形される車両用のステアリングホイール1の斜視図である。
図4に示すようにステアリングホイール1は、リング部2、スポーク部3,4,5及びボス部6を有しており、図1〜3に示す射出成形機の金型7(下型8,上型9)は、リング部2及びスポーク部3,4,5の芯金10をウレタン樹脂で被覆するためのものである。なお、本実施形態では、図4に示すステアリングホイール1を裏返した状態で、反応射出成形による樹脂成形が実施される。
【0023】
図1〜図3に示すように、金型7は枠体11と蓋体12とからなるボックス13内に配設されている。詳しくは、枠体11には金型7の下型8が固定され、蓋体12には金型7の上型9が固定されている。また、蓋体12における枠体11との接合部にはシール部材14が配設されている。そして、図1に示すように金型7が開けられている状態から枠体11及び下型8が上方へ移動されて図2に示すように芯金10がセットされた状態で金型7が閉じられ型締めされる。なおこのとき、枠体11と蓋体12とによりボックス13が形成され、シール部材14によりボックス13内が密封される。また、本実施形態の芯金10は、アルミダイカスト、マグネシウムダイカスト、またはそれらからなる合金のダイカスト成形により製造され、芯金10のリング部10aの断面形状は、図2に示すようにU字形状となっている。
【0024】
下型8及び上型9には凹部15,16が形成されており、同凹部15,16が成形品形状を作るためのキャビティ17となる。また、成形時にステアリングホイール1の芯金10を固定するために、下型8の中央部に固定部材18が突設されるとともに、上型9の中央部に固定部材19が突設されている。さらに、上型9の凹部16には、排出孔20(例えば、断面積=4mm2)が形成されて、同排出孔20によりキャビティ17がボックス13内の中空部21に連通される。
【0025】
枠体11の一方の側壁(図の右側の側壁)側に射出ノズル22が配設されており、図示しないウレタン注入装置で混合されたウレタン材料が射出ノズル22からゲート23を介してキャビティ17に注入される。このウレタン材料は、液状であってポリオール成分、イソシアネート成分を含む。また、枠体11の他方の側壁(図の左側の側壁)には排出管31が設けられ、その排出管31は、配管32及びバルブ33を介して真空ポンプ34に接続されている。真空ポンプ34が駆動されると、ボックス13内の空気が排出管31から排出され、ボックス13内が減圧される。
【0026】
次に、本実施形態におけるステアリングホイール1のウレタン樹脂の成形方法を図1〜図3を用いて説明する。
先ず、図1に示すように、金型7を開いてキャビティ17(下型8の凹部15及び上型9の凹部16)の壁面に離型剤を塗布する。この離型剤は、ワックス、シリコンオイル等からなり、金型7に成形品が粘着することを防いで、成形品を取り出し易くする目的で塗布されるものである。
【0027】
次いで、金型7を水平に保ちつつ液状の塗料M(本実施形態では、150g)を下型8の凹部15に注ぎ込む。本実施の形態における塗料Mの溶液は、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)及びイソプロピルアルコール(IPA)と、固形分としてのウレタン樹脂を含む。なお、塗料Mにおける各成分の割合を重量%で示すと、MEK=約85%、IPA=約10%、ウレタン樹脂=2.5%となる。そして、図2に示すように金型7内に芯金10をセットして金型7を閉じ型締めする。なおこのとき、枠体11と蓋体12とがシール部材14を介して接合されボックス13内は密閉状態となる。
【0028】
その後、真空ポンプ34を駆動し排出管31からボックス13内の空気を排出することでボックス13内を減圧する。このとき、キャビティ17内の空気が排出孔20を介してボックス13内の中空部21に吸い出されてキャビティ17内も減圧される。キャビティ17内が減圧されると、塗料Mの溶剤(MEK,IPA)の沸点が低下する。これにより、塗料Mは体積増加を伴いつつ沸騰して破泡する。具体的には、金型7の温度が55℃に保たれており、キャビティ17内が300torr以下に減圧されると溶剤は沸騰する。この沸騰時の体積増加及び破泡により、塗料Mがキャビティ17の壁面に塗布される。
【0029】
そして、塗料Mの溶剤が気化して、塗料Mのウレタン樹脂がキャビティ17の壁面に塗着される。つまり、塗膜層がキャビティ17の壁面に形成される。またこのとき、キャビティ17内における芯金10の表面が塗料Mの溶剤により洗浄されるとともに、接着剤の役割を果たす塗料Mが芯金10の表面に塗着される。なお、溶剤は約60秒で気化し、気化した溶剤は排出孔20からボックス13内の中空部21及び排出管31等を介して真空ポンプ34から排気される。
【0030】
次いで、所定の減圧状態を保ちつつ図示しないウレタン注入装置で混合された液状のウレタン材料が射出ノズル22からゲート23を介してキャビティ17に注入されて、図3に示すように同材料がキャビティ17内で反応硬化する。つまり、ポリオール成分とイソシアネート成分との反応(ウレタン反応)によりウレタン樹脂の発泡成形が実施される。なお、減圧状態のキャビティ17にウレタン材料を注入すると、特許第2518481号公報に開示されているように、表面に緻密なスキン層が形成されるとともに、その内部は高発泡のコア部が形成される。
【0031】
このようにして、ステアリングホイール1のリング部2及びスポーク部3,4,5のウレタン樹脂の成形と塗装が同時に実施される。つまり、充填材料としてのウレタン樹脂U2の表面に耐光性のあるウレタン樹脂U1の塗膜がほぼ均一な厚さ(例えば、10μm)で形成される。また、ウレタン材料を用いた反応射出成形は、液状のウレタン材料をキャビティ17に注入して発泡成形させるものであるため、一般的な熱可塑性樹脂の射出成形と比較して、キャビティ17内が低温、低圧の条件下で樹脂成形が実施される。従って、キャビティ17の壁面に形成された塗膜層が成形時の圧力や温度によって壊されることが防止される。
【0032】
その後、金型7が開けられて、図4に示すようにリング部2及びスポーク部3,4,5がウレタン樹脂U1,U2で被覆されたステアリングホイール1が取り出されて成形工程が終了する。なお、本実施形態では、ステアリングホイール1を裏返した状態で樹脂成形が行われるので、ステアリングホイール1において耐光性が必要となる上側ほど厚いウレタン樹脂U1の塗膜が形成される。
【0033】
ここで、ステアリングホイール1の樹脂表面における塗膜(ウレタン樹脂U1)の形成状態を色差計を用いて確認した結果を表1に示す。表1では、上記方法により成形した開発品と、塗料Mをスプレーガンで塗布(モールドコート)して成形した従来品との測定結果を示している。なお、実際のステアリングホイール1では、ウレタン樹脂U1とウレタン樹脂U2は同色のものが用いられるが、ウレタン樹脂U1の形成状態を色差計を用いて確認するために、発泡成形されるウレタン樹脂U2の着色成分を除いて確認用ステアリングホイールを成形している。また、表1は、それぞれの確認用ステアリングホイールのリング部における各部位の測定結果を示すものであり、塗膜が厚く形成される最上部の色を基準色として他の部位との色差ΔEを示している。つまり、色差ΔEが「0」であれば、最上部と同じ膜厚が形成されていることを意味し、色差ΔEが大きいほど、最上部との膜厚差が大きいことを意味する。また、ここでの測定部位としては、最上部とパーティングライン部(PL部)との中間位置(上中間部)、PL部、PL部と最下部との中間位置(下中間部)、最下部である。
【0034】
表1に示すように、従来品では、各部位とも色差ΔEが大きく、特にPL部で大きくなっている。この理由は、スプレーガンで塗料溶液を塗布した場合では、形成される塗膜の厚さが各部位で不均一となり、特に型割り面と直交する面を有するPL部の厚さが最上部と比較して薄くなるためである。これに対し、開発品では、色差ΔEが小さく、ぼほ均一な厚さで塗膜が形成されていることが分かる。また、PL部においても色差ΔEが小さく、最上部とほぼ同程度の厚さの塗膜が形成されていることが分かる。
【0035】
【表1】
次いで、本実施形態の成形方法において、塗料溶液における各成分の配合量を変え、希釈性、塗布性及び乾燥性で評価した結果を表2に示す。なお、表2に示す固形分は、塗膜層を形成するためのウレタン樹脂である。
【0036】
詳しくは、No2の塗料溶液は、No1の塗料溶液に対してIPAを100g減量させたものであり、No3の塗料溶液は、No1の塗料溶液に対して、IPA及びMEKを各400g増量させたものである。また、No4の塗料溶液は、No1の塗料溶液に対してMEKを400g増量させたものであり、同様に、No1の塗料溶液に対してMEKを、No5の塗料溶液は800g、No6の塗料溶液は1200g、No7の塗料溶液は1600g増量させたものである。
【0037】
表2に示されるように、No1の塗料溶液では、希釈性及び塗布性は良好であるが、乾燥時間が長くなってしまうため、評価は「△」となる。そして、MEKの配合量に対してIPAの割合が少ない塗料溶液(No2,No6,No7)では、固形分が凝集し、沈殿する。つまり希釈性が悪いため、評価は「×」となる。また、固形分が凝集しない程度にMEKを増量させた場合、つまり、No1→No4→No5の順にMEKの配合量を増加させると、乾燥時間が短くなり乾燥性が向上する。従って、No4及びNo5の塗料溶液の評価は「○」となる。なお、No3の塗料溶液のようにMEKだけでなくIPAも同様に増量させた場合、乾燥時間が長くなってしまうため、評価は「△」となる。また、希釈性の良好な塗料溶液(No1,No3,No4,No5)における塗布性は何れも良好である。一方、希釈性の悪い塗料溶液(No2,No6,No7)では、塗布が困難であった。
【0038】
このように、凝集が起こらない程度にMEKを加えて希釈すると、塗布性を確保しつつ乾燥性が向上される。従って、本実施形態では、No1の塗料溶液(400g)に対して2倍のMEK(800g)を加えて希釈したNo5の塗料溶液がステアリングホイール1の樹脂成形に使用されている。
【0039】
【表2】
因みに、従来技術のようにスプレーガンにて塗料Mを塗布した場合、キャビティ17内への塗着効率は約20%であった。これに対し本実施の形態のように、閉じられたキャビティ17内で塗料Mを塗布した場合では、キャビティ17内への塗着効率を約50%〜70%へ高めることが可能となる。
【0040】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)閉じた金型7内において、塗料Mの塗布が実施されるので、スプレーガンで塗料Mを塗布した場合に比べて塗着効率を高めることができ、塗料Mの材料費を低減できる。また、塗料Mはキャビティ17外に塗布されることがなく、成形時におけるバリの発生を防止できる。従って、従来技術で必要であったバリを除去するための処理工程が不要となる。その結果、製造コストを低く抑えることができる。さらに、塗料Mが外部に飛散することが防止され、作業場をきれいに保つことができ、周囲の環境の悪化を防止することができる。
【0041】
(2)塗料Mは、その溶剤が沸騰して体積増加及び破泡することによりキャビティ17の壁面に均一に塗布される。つまり、塗布むらが無くなり成形後においてステアリングホイール1の樹脂部の表面に耐光性に優れるウレタン樹脂U1の塗膜がほぼ均一な厚さで形成される。従って、耐光性がどの場所でも均一に得られ、製品性能の悪化を防止できる。また、製品表面の色むらがなく外観不良を低減できる。さらに、塗料Mの溶液をキャビティ17に流し込む際に、塗料Mの量を調整するだけで、所望の厚さの塗膜を形成することができる。つまり、従来のように塗料をスプレーガンで塗布(モールドコート)した場合、型割り面と直交する面を有するパーティングライン部(PL部)では十分に塗布することができず、その部分の塗膜を厚くすることは困難であるが、本実施形態のステアリングホイール1では、パーティングライン部に適正な厚さの塗膜を形成できる。よって、耐光性や耐摩耗性等の製品性能を高めることができ、実用上好ましいものとなる。また、塗膜表面は、金型表面が転写されるため、金型7により容易に表面意匠を与えることができる。具体的には、例えば、平滑面やシボ面(凸凹面)等の意匠を与えることができる。
【0042】
(3)芯金10の表面は、塗料Mの溶剤により洗浄され、その芯金10の表面に接着性に優れるウレタン樹脂系の塗料Mが塗布されているため芯金10とウレタン樹脂が強固に固着できる。
【0043】
(4)ウレタン材料を用いた反応射出成形では、熱可塑性樹脂の射出成形と比べて、キャビティ17内が低温、低圧の条件下で樹脂成形が行われるので、キャビティ17の壁面に塗布された塗膜層が壊れることを防止できる。つまり、製品の歩留まりを向上できる。
【0044】
(5)本実施形態では、表2に示すNo5の配合割合(MEK=約85%、IPA=約10%、ウレタン樹脂=2.5%)の塗料溶液(150g)を使用した。この場合、固形分の凝集がなく希釈性が良好で、塗布性及び乾燥性も好適なものとなる。
【0045】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態は、塗料注入装置を備える点が第1実施形態と相違する。なお、キャビティ17の形状、真空ボックス13等の構成は、第1実施形態と同一であるので、図面及びその詳細な説明を省略する。
【0046】
図5は、本実施形態における射出成形機の概略構成を示す模式図であり、同図では、金型7内に形成されるキャビティ17及びゲート23を点線で示している。図5に示すように、塗料注入装置40からの塗料Mがゲート23を介して金型7のキャビティ17に注入される。また、ウレタン注入装置41で混合されたウレタン材料がゲート23を介して金型7のキャビティ17に注入される。つまり、本実施形態では、共通のゲート23から塗料溶液及びウレタン材料がキャビティ17に注入される。このように射出成形機を構成した場合、金型7を閉じた状態で塗料溶液をキャビティ17に注入できる。
【0047】
具体的には、金型7のキャビティ17に離型剤を塗布した後に、金型7内に芯金10をセットして型締めする。そして、真空ポンプ34を駆動して金型キャビティ17内を減圧させ、所定圧力以下にキャビティ17内の圧力が低下したとき、キャビティ17内に塗料注入装置40から塗料Mを注入する。このとき、塗料Mの溶剤が沸騰し、泡状になった塗料Mが破泡しながらキャビティ17内を排出孔20に向かって流動する。これにより、塗料Mがキャビティ17の壁面に塗布される。そして、塗料Mの溶剤が気化して、塗料Mのウレタン樹脂がキャビティ17の壁面に形成される。
【0048】
このように、塗膜層がキャビティ17の壁面に形成された後、ウレタン注入装置41で混合されたウレタン材料をゲート23を介してキャビティ17に注入する。そして、同材料がキャビティ17内で反応硬化することで、ステアリングホイール1のウレタン樹脂成形が実施される。
【0049】
以上記述したように、本実施の形態によれば、前記第1実施形態の(1)〜(5)の効果に加えて以下の効果を奏する。
(1)キャビティ17を減圧しながら塗料Mを注入できるので、短時間でステアリングホイール1の樹脂成形を実施できる。また、閉じた金型7内のキャビティ17に塗料Mが注入されるので、塗料Mの溶剤が射出成形機の外部に漏れることを防止でき、作業環境を改善できる。
【0050】
(2)塗料注入装置40により塗料溶液の注入量を的確に制御することで、成形品の表面に所望の厚さの塗膜を形成できる。これにより、塗料Mの注入量に基づく製品バラツキを低減できる。
【0051】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
○上記第2実施形態では、減圧状態のキャビティ17内に塗料Mを注入するものであったが、減圧する前、つまり常圧状態のキャビティ17内に塗料注入装置40から塗料Mを注入してもよい。
【0052】
○上記第2実施形態では、ウレタン材料を注入するためのゲート23から塗料溶液を注入する構成であったが、このゲート23以外の場所から塗料溶液をキャビティ17に注入してもよい。また、複数箇所からキャビティ17に塗料溶液を注入する構成としてもよい。この場合も、塗料Mをキャビティ17の壁面に効率よく塗布できる。
【0053】
○上記実施形態では、ウレタン材料を用いた反応射出成形により樹脂成形を行うものであったがこれに限定するものではなく、他の樹脂材料、或いはゴム材料等を用いて射出成形するものでもよい。但し、上述のように、キャビティ17内でウレタン材料が反応硬化する反応射出成形に適用した方が、低圧、低温の条件下で成形できるので実用上好ましい。
【0054】
また、成形品は、ステアリングホイール1に限定されず、例えば、インストルメントパネル、コンソールボックス、グローボックス、ヘッドレスト、アームレスト、ドアカバー、エアスポイラー、バンパー等の他の部品にも適用できる。勿論、自動車部品以外に家電製品等の成形品に適用してもよい。
【0055】
○塗料Mの成分を適宜変更して実施してもよい。具体的には、ウレタン樹脂に代えて、他の熱硬化性樹脂を用いてもよい。また、塗料Mの溶剤として、メチルエチルケトン(MEK)及びイソプロピルアルコール(IPA)以外の溶剤を用いてもよい。つまり、溶剤は、固形分を分散できるものであればよく、例えば水でもよい。実用的には、沸点が常圧で約160℃以下の溶剤を用いるものであればよい。但し、上記実施形態のように、ケトン系の溶媒にアルコール系の溶媒を加えた方が固形分の分散が向上されるので実用上好ましい。
【0056】
○上記実施形態では、真空ポンプ34を駆動してキャビティ17内を300torr以下に減圧するものであったが、これに限定するものではない。
例えば、金型7の温度が常温(約20℃)であれば、キャビティ17内を約70torrに減圧する。また、塗料Mの溶剤を変更した場合その沸点が変化するので、この場合もキャビティ17内の減圧時の圧力を変更する。つまり、キャビティ17内の減圧時の圧力は、金型7の温度及び用いられる溶剤の種類により適宜変更して実施する。
【0057】
○上記実施形態では、キャビティ17内を減圧して、塗料Mを沸騰させるものであったが、これに限定するものではなく、大気圧時に金型7を溶剤の沸点まで昇温することによりキャビティ17内の塗料Mを沸騰させるものでもよい。この場合も、沸騰時の体積増加及び破泡により塗料Mをキャビティ17に効率よく塗布できる。
【0058】
さらに、上記実施形態により把握される請求項以外の技術的思想について、以下にそれらの効果とともに記載する。
(イ)請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形品の製造方法において、前記塗料溶液は、溶剤としてのメチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールと、ウレタン樹脂とを含むことを特徴とする成形品の製造方法。この場合、キャビティ内で溶剤としてのメチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールを沸騰させ、その沸騰時の体積増加及び破泡によってウレタン樹脂の塗膜層をほぼ均一な厚さでキャビティに形成できる。
【0059】
(ロ)請求項1に記載の成形品の製造方法において、金型を昇温したことを特徴とする成形品の製造方法。この場合、金型を昇温することによりキャビティ内の塗料溶液が沸騰する。この沸騰時の体積増加及び破泡により塗料Mをキャビティの壁面に効率よく塗布できる。
【0060】
(ハ)成形と塗装とを同時に行うべく予め金型キャビティに塗膜層を塗布した後に充填材料を注入して成形される成形品において、前記充填材料の表面にほぼ均一な厚さの塗膜が形成されることを特徴とする成形品。この場合、成形品の耐光性や耐摩耗性を向上できる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、金型キャビティに塗料を効率よく塗布し、成形品の表面にほぼ均一な厚さの塗膜を形成することができる。従って、成形品の表面の耐光性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のステアリングホイールの成形方法を説明するための図。
【図2】第1実施形態のステアリングホイールの成形方法を説明するための図。
【図3】第1実施形態のステアリングホイールの成形方法を説明するための図。
【図4】第1実施形態のステアリングホイールの斜視図。
【図5】第2実施形態の射出成形機の概略構成を示す模式図。
【符号の説明】
1…ステアリングホイール、7…金型、17…キャビティ、M…塗料、U1…塗膜としてのウレタン樹脂、U2…充填材料としてのウレタン樹脂。
Claims (5)
- 成形品表面に塗膜層が形成された成形品の製造方法において、
金型を閉じた状態の金型キャビティ内で溶剤とウレタン樹脂とを含む塗料溶液を沸騰させ、沸騰時の体積増加により塗料を金型キャビティ表面に塗布すると共に気化した溶剤を排気して塗膜層を形成する塗装工程と、その後金型キャビティ内に充填材料を充填する工程とからなることを特徴とする成形品の製造方法。 - 請求項1に記載の成形品の製造方法において、
金型キャビティ内は、減圧状態としたことを特徴とする成形品の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の成形品の製造方法において、
金型キャビティ内に塗料溶液を流し込んだ後、金型キャビティ内を減圧させて、塗膜層を金型キャビティに形成したことを特徴とする成形品の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の成形品の製造方法において、
金型キャビティを減圧し、その減圧した金型キャビティ内に塗料溶液を注入して塗膜層を金型キャビティに形成したことを特徴とする成形品の製造方法。 - 請求項1に記載の成形品の製造方法において、
前記充填材料は、金型キャビティ内で反応硬化するウレタン材料であることを特徴とする成形品の製造方法。
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