JP3567826B2 - 窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法に係り、特に窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板上に窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化ガリウム系化合物半導体を用いた素子は、極めて高輝度な青色・緑色発光ダイオードが実用化され、従来のものに比べて短い波長の青・青紫色の半導体レーザ素子が数千時間超の連続発振に成功し、光ディスクの読み込み・書き込み用の光源として応用が期待されている。さらには、窒化ガリウム系化合物半導体の特性を活かし、今まで実現が困難であったもの応用に向けて、過酷な条件かで駆動が可能なダイオード素子など、そのほかの素子への応用も期待されている。
【0003】
しかし、その窒化ガリウム系化合物半導体の成長基板としては、そのほとんどがサファイア、スピネル基板、SiCなどの異種材料であり、窒化ガリウム系化合物半導体との格子定数差などの問題から良好な窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な状況下にあった。このような問題を解決する方法として、Epitaxial Lateral OverGrowth(以下、ELOGと記す)により基板上に下地層を導入する方法が提案されている。このELOGによる下地層は、上記異種基板若しくはその基板上に成長させた窒化ガリウム系化合物半導体上に、SiO2などのマスク若しくは表面に段差を所定のパターン状に設けて、選択的に横方向に成長させて成膜するものである。
【0004】
このようなELOGによる下地層を素子構造の形成前に導入することで、結晶性の良好な窒化ガリウム系化合物半導体の成長が可能となり、素子特性の向上に大きく寄与するものとなった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このELOGによる窒化ガリウム系化合物半導体の形成は、複雑なプロセスを必要とすることから、製造コストが増大し、複数の工程を経ることから歩留まり向上を困難なものとしていた。
【0006】
具体的には、異種基板上に成長させた窒化ガリウム系化合物半導体層の表面に、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難若しくは不可能な性質を有するマスクをパターン(例えばストライプ状)に形成して、ほぼ非マスク領域からのみ窒化ガリウム系化合物半導体を縦方向(基板の主面に垂直な方向)にある程度の膜厚で成長した後、この縦方向の成長に優先してマスク上方に向かう横方向の成長がなされ、成膜するものである。しかし、マスクの形成、パターンの形成工程を必要とし、またそれらはそれぞれ窒化ガリウム系化合物半導体の成長装置とは異なる装置で行われるため、煩雑な工程を必要する。すなわち、異種基板上に、ELOG成長の下地層となる窒化ガリウム系化合物半導体層を形成した後、反応容器から取り出し、マスクを設け、さらに反応容器に戻してELOG成長させることになり、異種基板上に、素子構造を形成するための基板となる窒化ガリウム系化合物半導体層を形成が、反応容器内で連続して形成することができない。
【0007】
また、別の方法として、異種基板上に形成した窒化ガリウム系化合物半導体の表面に凹凸を所定のパターン(例えばストライプ状)に設けて、凹部側面から上述の窒化ガリウム系化合物半導体の横方向の成長を発生させる方法でも、窒化ガリウム系化合物半導体を成長後に凹凸を設ける加工を施さなければならず、上述の方法と同様な問題が発生する。
【0008】
このように、従来の横方向の成長を伴う窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、一度、異種基板上に下地となる窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させた後、上述のようなマスクの形成、凹凸の形成など、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる反応容器からウエハを取り出さなければならず、窒化ガリウム系化合物半導体の汚染に関して注意を要する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであり、従来必要とされる窒化ガリウム系化合物半導体成長後のELOG成長させるための準備工程を必要とせず、比較的簡便な方法によりELOG成長を実現ししうる窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を提供するものである。
【0010】
本発明は、窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法であって、窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板の表面に部分的にマスク領域と非マスク領域を有し、マスク領域として溝を形成する工程と、前記異種基板に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な材料からなる埋込膜を前記溝深さ以上の厚みで異種基板上に設ける工程と、前記非マスク領域の異種基板表面が露出する深さまで埋込膜を除去して平坦化して、異種基板表面が露出した非マスク領域と、該埋込膜が露出したマスク領域とを形成する工程と、選択的に前記非マスク領域から窒化ガリウム系化合物半導体を成長させ、前記マスク領域の上部を覆うように成膜してなる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する工程とを順に有することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体成長方法であります。
【0011】
本発明の請求項2に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、前記第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する工程において、前記非マスク領域に単結晶成長困難な温度で成長されたバッファ層、及び/又は、単結晶膜の下地層の窒化ガリウム系化合物半導体を形成する工程を経た後、該バッファ層、及び/又は、下地層上に第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させて形成する窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法であります。
【0012】
本発明の請求項3に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、前記埋込膜が、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム又はこれらの多層膜である窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法であります。
【0013】
本発明の請求項4に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の成長方法は、前記請求項1乃至3記載の第1の窒化ガリウム系化合物半導体層上に、窒化ガリウム系化合物半導体からなる層を複数積層して素子構造を形成することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子の製造方法であります。
【0014】
本発明の請求項5に記載の窒化ガリウム系化合物半導体は、窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板表面に、部分的にマスク領域と非マスク領域とを有し、該マスク領域の異種基板表面には溝を有し、該溝部には前記異種基板に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な材料からなる埋込膜を有すると共に、前記非マスク領域の異種基板は平坦な表面が露出され、前記異種基板には、非マスク領域にのみ窒化ガリウム系化合物半導体のバッファ層、及び/又は、下地層と、該隣り合う非マスク領域のバッファ層、及び/又は、下地層から選択的に成長されて、かつ、マスク領域を覆って結合して形成される第1の窒化ガリウム系化合物半導体層と、が順に積層されていることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体であります。
【0015】
本発明の請求項6に記載の窒化ガリウム系化合物半導体は、前記埋込膜が、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム又はこれらの多層膜である窒化ガリウム系化合物半導体であります。
【0016】
本発明の請求項7に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子は、前記請求項5又は6記載の第1の窒化ガリウム系化合物半導体層上に、窒化ガリウム系化合物半導体からなる層を複数有することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子であります。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の成長方法において、基板に溝を設ける方法としては、スクライバー、ダイサーなどを用いてもよく、そのほかにもRIE(反応性イオンエッチング)などのエッチングによる方法でも良く、さらにレーザによる方法でも良く、用いる基板により適宜選択される。この時、溝の深さは、特に限定されないが、後に続く窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難若しくはほば成長不可能な膜の形成が、容易になる深さに調整することが好ましい。具体的な溝の深さとしては、1μm程度あればよく、具体的には0.3μm以上1μm以下の範囲である。
【0018】
また、本発明の成長方法において、異種基板に設ける溝の形状としては、格子状、碁盤目状など、ELOG成長を実現するのに知られたマスクパターンにかなうように、溝を形成すれば足りるが、好ましくは、ストライプ状に形成することである。なぜなら、複雑な形状のマスクパターンでは、基板への溝の形成が困難なものとなるからであり、さらにまたストライプ状であるとELOG成長の制御が他のパターンに比して容易であることも重要な要因である。具体的には、基板上への窒化ガリウム系化合物半導体の成長が主面内で異方性を有する場合には、成長の容易な方向にほぼ垂直に上述のマスク(若しくはその前段階である溝)をストライプ状に設けることで、成長容易方向とELOG成長における横方向の成長がほほ一致して、良好な成膜がなされ、その制御も容易なものとなる。
【0019】
以下、具体例を挙げて説明すると、サファイア基板であれば、主面をC面、オリエンテーションフラット面(以下オリフラ面と記す)をA面とする基板の場合には、窒化ガリウム系化合物半導体を非マスク領域から選択成長させると、基板面内でオリフラ面に平行な方向に成長の容易な方向をとる傾向にある。このため、溝(マスク領域)のストライプ方向をオリフラ面(A面)に対してほぼ垂直にとることで、良好な横方向の成長を実現し、窒化ガリウム系化合物半導体の成長に有利な表面状態の基板が得られるやすくなる。さらには、主面がA面でオリフラ面がR面である場合には、上記場合と同様に、基板面内でオリフラ面にほぼ平行な方向が良好な選択成長をなすため、溝(マスク領域)のストライプ方向をオリフラ面にほぼ垂直にすることが良い。また、基板材料がスピネル(MgAl2O4)で、主面が(111)面でオリフラ面が(110)面であると、窒化ガリウム系化合物半導体は基板面内でオリフラ面に平行な方向に成長しやすい傾向にあるため、このオリフラ面にほぼ垂直に溝(マスク領域)を設けることで、好ましい窒化ガリウム系化合物半導体基板が得られる。
【0020】
この時、溝の形状(基板表面のマスク領域の形状)がストライプ状である場合に、基板に設ける溝の幅、すなわち、基板表面のマスク領域の幅としては、具体的には1μm以上20μm以下の範囲、好ましくは1μm以上10μm以下の範囲である。加えて、ストライプ間隔(マスク領域のピッチ、非マスク領域の幅)としては、具体的に3μm以上20μm以下の範囲、好ましくは10μm以上19μm以下の範囲でる。このように、基板に設ける溝(マスク領域)が上記具体的な範囲内にあると、第1の窒化ガリウム系化合物半導体の横方向の成長により隣接する窒化ガリウム系化合物半導体が接合し、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成できる。さらに上記好ましい範囲内であると、第1の窒化ガリウム系化合物半導体の横方向の良好な成長が実現される傾向にあり、前記横方向の成長不足からくる結合不良の発生を低く抑え、このことにより第1の窒化ガリウム系化合物半導体層表面に亀裂などのない、良好な表面状態を実現することができる。
【0021】
さらにまた、異種基板に設ける溝の断面形状において、本発明は限定されるものでない。図3に示すようにV字溝であってもよく、図4に示すように矩形状、U字溝、半円状であっても良い。
【0022】
また異種基板は、オフ角が0.1°以上0.5°以下、好ましくは0.1°以上0.2°以下の範囲のステップ状にオフした基板を用いても良い。なぜなら、オフ角を上記範囲とすると、エピタキシャル成長層表面(第1の窒化ガリウム系化合物半導体3表面)は波状のモフォロジーとなり、この基板を用いて得られる窒化ガリウム系化合物半導体素子は平滑で、特性も長寿命、高効率、高出力、歩留まりの向上したものが得られる傾向にあるためである。
【0023】
異種基板に設けた溝に埋め込む埋込膜としては、特に限定されず、埋込膜表面(マスク領域)が、非マスク領域(異種基板表面)に比べて、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難であること、さらに好ましくは、非マスク領域に比べて窒化ガリウム系化合物半導体がほぼ成長できない材料を適用する。具体的には、酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜、金属等を用いることができる。好ましい埋込膜材料としては、SiO2及びSiNが挙げられ、これらを用いることでその他の材料に比べて良好な選択成長が実現される。
【0024】
また、マスク領域、非マスク領域を有する異種基板を形成する方法としては、上述のように、所望のパターン状に溝を形成した異種基板上に、上記埋込膜を、スパッタ法、蒸着法などにより成膜した後、エッチバック技術により平坦な異種基板表面を形成する。具体的には、異種基板上に設けた溝の深さ以上の膜厚で、埋込膜を形成し、その上にさらに表面の段差をなくすために塗布膜を設けて、埋込膜とエッチングレートがほぼ同じ状態でエッチングすることで、マスク領域と非マスク領域を表面に有する異種基板が形成できる。ここで、塗布膜としては、特に限定されず、埋込膜の材料、エッチング条件などにより、平坦な異種基板表面ができるように、適宜選択されるものである。さらにまた、実施例で示すように、埋込膜を形成後に、研磨により平坦な基板表面を形成しても良い。図2は、マスク領域と非マスク領域を異種基板に設ける具体的な方法を説明するものである。図2(a)に示すように、異種基板1にマスク領域となる溝5を所望のパターン状に形成し(図ではストライプ状)、続いて、基板表面に溝5の深さ以上の埋込膜4を基板のほぼ全面に形成する(図2(b))。次に、エッチバック技術による場合には、図2(c)に示すように、埋込膜4の上に塗布膜6を形成してある程度平坦化した後、図2(d)に示すように、塗布膜6、埋込膜4のエッチグレートが同じとなる条件で、異種基板表面11(非マスク領域となる)が露出する深さでエッチングして、異種基板1の表面に、マスク領域10、非マスク領域11とを形成する。研磨による場合には、塗布膜6を設けずに、図2(b)のう状態から直接研磨して、異種基板1の表面を露出させ、マスク領域10、非マスク領域11とを表面に有する異種基板を形成する(図2(d))。
【0025】
以上説明したように、本発明における異種基板表面は、窒化ガリウム系化合物半導体が選択的に成長する非マスク領域と、マスク領域とを有するもので、具体的には異種基板に設けた所定のパターン状の溝に埋め込まれた埋込膜表面をマスク領域とし、異種基板表面が露出した非マスク領域に比べて、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な埋込膜を用いて、前述した窒化ガリウム系化合物半導体の選択的な成長を実現するものである。この時、異種基板表面に非マスク領域とマスク領域とを有することで、窒化ガリウム系化合物半導体の成長を基板面内で部分的(非マスク領域)に成長させるため、すなわち選択的に成長(選択成長)させるものであるため、埋込膜表面より異種基板表面に優先的に形成されるように、埋込膜が機能するものである。従って、後述する横方向の成長を伴う窒化ガリウム系化合物半導体層(後述する第1の窒化ガリウム系化合物半導体層)の形成時に、窒化ガリウム系化合物半導体層からなる下地層を有する場合には、ほぼ非マスク領域に形成された下地層にのみ窒化ガリウム系化合物半導体の成長を許すように、マスク領域の埋込膜は、この下地層に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長がほぼなされないようにする必要がある。本発明において、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難なマスク領域とはこのような態様を含むものであり、ほぼ窒化ガリウム系化合物半導体が成長しない先に示した材料により実現できる。
【0026】
本発明の製造方法において、窒化ガリウム系化合物半導体とは、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表されるものであり、また成長させる窒化ガリウム系化合物半導体とは、素子構造を形成するため積層する窒化ガリウム系化合物半導体の成長基板となるものであり、その成長基板として必要な表面モフォロジーを有し、転位の極めて少ないものを、提供するものでである。
【0027】
本発明において、異種基板上に形成する窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法としては、特に限定されず一般的に知られている成長方法により形成される。具体的には、MOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)等、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚が100μm以下ではMOCVD法を用いると成長速度をコントロールし易い。また100μm以下の膜厚でHVPEを用いると、成長速度が速くてコントロールが難しい。
【0028】
本発明において、異種基板上に、上述した横方向の成長を伴う第1の窒化ガリウム系化合物半導体を形成する前に、下地層として、後述するバッファ層より高い温度で成長させる窒化ガリウム系化合物半導体を設けても良い。この窒化ガリウム系化合物半導体からなる下地層としては、アンドープ(不純物をドープしない状態、undope)のGaN、Si、Ge、Sn、及びS等のn型不純物をドープしたGaNを用いることができる。この時の成長温度としては、バッファ層よりも高い温度、具体的には900℃以上1100℃以下の温度範囲で、好ましくは1050℃で成長させる。このような温度範囲で成長させることにより、良好な窒化ガリウム系化合物半導体の単結晶膜が、非マスク領域に形成される。さらに膜厚としては、特に限定されないが、次に続く横方向の成長を良好にする表面を形成できる程度であればよく、具体的には500Å(オングストローム)以上の膜厚であり、横方向の成長が発生しない程度、すなわちほぼ非マスク領域にのみ形成される程度の膜厚に留めておく。以上説明したように、横方向の成長を伴う第1の窒化ガリウム系化合物半導体に先んじて、下地層を形成すること、すなわち、このような下地層を介して横方向の成長を伴う第1の窒化ガリウム系化合物半導体を成長されることで、下地層を用いない場合に比べて良好な第1の窒化ガリウム系化合物半導体の成長が実現できる傾向にあり、またその結晶性も向上する。
【0029】
また、異種基板上に選択成長により、横方向への成長をさせる第1の窒化ガリウム系化合物半導体を形成する前に、さらには上記下地層の前にバッファ層を形成しても良い。このバッファ層は、後に続く窒化ガリウム系化合物半導体(下地層若しくは第1の窒化ガリウム系化合物半導体層)の成長温度より低い温度で形成される。具体的にバッファ層としては、AlN、GaN、AlGaN、InGaN等が用いられ、成長温度は900℃以下300℃以上の範囲で、膜厚は0.5μm〜10オングストロームで成長させる。このようなバッファ層を、異種基板上に有することにより、後に続いてバッファ層よりも高い温度で成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体若しくは下地層と、異種基板との格子不整合を緩和し、高温で成長させる、若しくは横方向への成長をさせる窒化ガリウム系化合物半導体の結晶欠陥を低く抑える傾向にあり、結果として第1の窒化ガリウム系化合物半導体の成長に好ましいものとなる。
【0030】
以上のように、バッファ層、下地層は横方向の成長を伴わない(若しくはほとんど横方向に成長しない)条件で形成されるものであり、下地層を形成した段階では、異種基板上の非マスク領域の上部にのみ形成されるか、それよりもわずかに大きな領域で形成される。このため、横方向の成長により、マスク領域に覆い被さり、基板面のほぼ全面に成長して成膜される第1の窒化ガリウム系化合物半導体層とは、異なる。すなわち、図1(b)に示すように、上述のバッファ層(図示せず)、下地層は、マスク領域には形成されずに、非マスク領域に形成されるものであり、選択成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層の下地となるものである。
【0031】
本発明における第1の窒化ガリウム系化合物半導体としては、前記下地層に用いられる窒化ガリウム系化合物半導体と同様のものを用いてもよく、別のものであっても良い。具体的な組成としては、上記下地層と同様に、アンドープ(不純物をドープしない状態、undope)のGaN、Si、Ge、Sn、及びS等のn型不純物をドープしたGaNを用いることができる。第1の窒化ガリウム系化合物半導体の成長温度は、上記下地層を成長させる場合と同様であり、このような温度で成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体は単結晶となる。この時、下地層に第1の窒化ガリウム系化合物半導体を有していない場合には、前記バッファ層を形成した後、昇温して形成することになる。
【0032】
また、第1の窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる際に、上記不純物(若しくはそれに加えて、Be、Zn、Mn、Cr、及びMg等)をドープして成長させる、または窒化ガリウム系化合物半導体の原料となるIII族とV族の成分のモル比(III/Vのモル比)を調整して成長させることにより、横方向に成長が、縦方向の成長に比べて促進させる点、転位を低減させる点で好ましく働き、さらに第1の窒化ガリウム系化合物半導体の表面の面状態を良好にする傾向にある。
【0033】
このように、本発明で成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体とは、に、異種基板面上に部分的に形成された非マスク領域から成長させ、すなわち横方向への成長を伴う成長(上述のELOG成長)により、マスク領域を覆うように成長して、結果として異種基板面のほぼ全面に形成される膜となる。具体的には、図1(c)、及びそれを一部拡大した図1(d)にその成長形態を示すように、第1の窒化ガリウム系化合物半導体3は、縦方向(図1(c)中の白抜きの矢印方向)に成長すると共に、図1(c),(d)の矢印に示す方向である横方向へも成長し、図1(c)の点線部で示すように第1の窒化ガリウム系化合物半導体層が形成される。また、図3は、その横方向の成長により、窒化ガリウム系化合物半導体層が成膜される様子を示しており、非マスク領域状の下地層2から成長して、横方向の成長を伴うことで、図3(a)の矢印で示すように、隣り合う非マスク領域からの成長層が、結合して、成膜される(図3(b))。このようにして得られる第1の窒化ガリウム系化合物半導体は、表面モフォロジーの良好な成長基板として機能し、後に続く素子構造の形成において、良好な窒化ガリウム系化合物半導体の成長を実現できるものである。
【0034】
【実施例】
[実施例1]
まず、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる異種基板として、C面を主面とし、A面をオリフラ面とする2インチφのサファイア基板を用意し、図2(a)に示すように、スクライバーで幅10μm、深さ約0.5μmの溝5をオリフラ面にほぼ垂直に、10μmのピッチ(溝と溝との間隔)で基板表面のほぼ全面に形成した。次に、ウエハをCVD装置に移し、SiO2からなる膜を約0.6μmの膜厚で形成した(図2(b))。続いて、ウエハを研磨装置にセットし、SIO2の膜の一部を研磨により除去し、異種基板表面を露出させ、平坦な表面を形成する(図2(d))。この時、露出されるウエハ表面は、図2(d)のようにSiO2が溝に埋め込まれたマスク領域と、サファイア基板表面が露出した非マスク領域とが交互にストライプ状に混在する異種基板表面が形成される。
【0035】
このようにして形成されたサファイア基板をMOCVDの反応容器内にセットし、温度を510℃にして、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、サファイア基板1上にGaNよりなるバッファ層(図示せず)を約200オングストロームの膜厚で成長させる。バッファ層を成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、図1(b)に示すように、下地層2としてアンドープのGaNよりなる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を2μmの膜厚で成長させる。このような下地層2は、図1(b)に観るように、ほぼ非マスク領域上にのみ形成され、次に続くELOG成長層である第1の窒化ガリウム系化合物半導体層の成長に備えるものである。
【0036】
下地層2を形成した後、原料ガスにTMG、アンモニアを用いて、温度1050℃で、アンドープGaNからなる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を15μmの膜厚で、図1(c),(d)に示すように、横方向の成長を伴った非マスク領域からの選択成長により形成する。
【0037】
このようにして得られたウエハを反応容器から取り出し、表面を観察したところ、平坦な窒化ガリウム系化合物半導体表面が形成されており、また表面モフォロジーも良好なものであり、この上に成長させる窒化ガリウム系化合物半導体にとって、良好な基板表面が形成されていた。さらに、CL(カソードルミネセンス)方法によりウエハ表面(第1の窒化ガリウム系化合物半導体層表面)を観察したところ、マスク領域上部の表面には、転位が多く観られる傾向にあり、非マスク領域上部では転位がほとんど観られない良好な表面を呈していた。
【0038】
[実施例2]マスク幅とピッチ変更
異種基板に設ける溝を、幅5μm、溝と溝との間隔10μmとする他は、実施例1と同様にしてサファイア基板上にストライプ状の溝を形成した後、CVD装置にウエハをセットしてSiNからなる埋込膜形成し、研磨して、ストライプ状のマスク領域を表面に有する異種基板を得る。次に、実施例1と同様に、ウエハをMOCVD装置にセットして、膜厚500ÅのアンドープGaNからなるバッファ層を形成してこのバッファ層のみを下地層とし、次に横方向への成長をさせる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層(膜厚15μmのアンドープGaN)を実施例1と同様にして形成する。この時、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層は、下地層の有無に違いはあるものの実施例1とほぼ同様に、膜厚方向への成長に加えて、横方向への成長がなされて成膜される。この時、実施例1に比べると、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層の成長は、安定した横方向の成長にやや劣るものの、良好な成長膜を形成できる。
【0039】
得られたウエハを観察したところ、良好な基板表面の形成が観られ、また転位の面内分布もほぼ同等のものであった。
【0040】
[実施例3]ダイサー用いる
異種基板にダイサーを用いて溝を設け、溝の幅20μm、溝と溝との間隔を15μmとする他は、実施例1と同様にして、図4(a)に示すようなサファイア基板上にストライプ状の溝を形成する。さらに、実施例1と同様に、CVD装置にてウエハのほぼ全面にSiO2よりなる埋込膜を形成し、研磨により、ストライプ状のマスク領域と非マスク領域が交互に混在する基板を形成する。以下、実施例1と同様にして、バッファ層、下地層、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層をMOCVD装置により成長させ、窒化ガリウム系化合物半導体基板を得る。この時、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層は、ほぼ実施例1と同様な成長形態で、成膜される。
【0041】
このようにして得られた基板は、実施例1と同様に、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させるために良好な表面状態を実現するものであり、また第1の窒化ガリウム系化合物半導体層内部の転位の分布もほぼ実施例1同様であった。
【0042】
[実施例4]
実施例1と同様に、第1の窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、LEDの素子構造となるn型窒化ガリウム系化合物半導体層、活性層、p型窒化ガリウム系化合物半導体層とを積層して、青色発光素子を形成する。得られる青色発光素子は、良好な発行特性を有するものであった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、従来の方法に比べて、極めて容易に横方向の成長を含む成長により形成された窒化ガリウム系化合物半導体層を形成することができる。また、装置からウエハを取り出すことなく基板となる窒化ガリウム系化合物半導体層の形成、素子構造の形成を連続的に行うことが可能になり、ウエハを装置外に取り出すことによる窒化ガリウム系化合物半導体の汚染を防ぎ、素子特性に優れた窒化ガリウム系化合物半導体素子を、良好な歩留まりで形成できる。
【0044】
さらに、窒化ガリウム系化合物半導体基板の製造工程が従来に比べて大幅に短縮されているため、大幅な製造コストの削減につながり、あらゆる窒化ガリウム系化合物半導体を用いた素子の製造に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を説明する模式的な斜視図。
【図2】本発明に用いる異種基板を説明する模式的斜視図。
【図3】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を説明する模式的断面図。
【図4】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を説明する模式的断面図。
【符号の説明】
1・・・・異種基板
2・・・・下地層
3・・・・第1の窒化ガリウム系化合物半導体層
4・・・・埋込膜
5・・・・異種基板に設ける溝
6・・・・塗布膜
10・・・・マスク領域
11・・・・非マスク領域
【産業上の利用分野】
本発明は窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法に係り、特に窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板上に窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化ガリウム系化合物半導体を用いた素子は、極めて高輝度な青色・緑色発光ダイオードが実用化され、従来のものに比べて短い波長の青・青紫色の半導体レーザ素子が数千時間超の連続発振に成功し、光ディスクの読み込み・書き込み用の光源として応用が期待されている。さらには、窒化ガリウム系化合物半導体の特性を活かし、今まで実現が困難であったもの応用に向けて、過酷な条件かで駆動が可能なダイオード素子など、そのほかの素子への応用も期待されている。
【0003】
しかし、その窒化ガリウム系化合物半導体の成長基板としては、そのほとんどがサファイア、スピネル基板、SiCなどの異種材料であり、窒化ガリウム系化合物半導体との格子定数差などの問題から良好な窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な状況下にあった。このような問題を解決する方法として、Epitaxial Lateral OverGrowth(以下、ELOGと記す)により基板上に下地層を導入する方法が提案されている。このELOGによる下地層は、上記異種基板若しくはその基板上に成長させた窒化ガリウム系化合物半導体上に、SiO2などのマスク若しくは表面に段差を所定のパターン状に設けて、選択的に横方向に成長させて成膜するものである。
【0004】
このようなELOGによる下地層を素子構造の形成前に導入することで、結晶性の良好な窒化ガリウム系化合物半導体の成長が可能となり、素子特性の向上に大きく寄与するものとなった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このELOGによる窒化ガリウム系化合物半導体の形成は、複雑なプロセスを必要とすることから、製造コストが増大し、複数の工程を経ることから歩留まり向上を困難なものとしていた。
【0006】
具体的には、異種基板上に成長させた窒化ガリウム系化合物半導体層の表面に、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難若しくは不可能な性質を有するマスクをパターン(例えばストライプ状)に形成して、ほぼ非マスク領域からのみ窒化ガリウム系化合物半導体を縦方向(基板の主面に垂直な方向)にある程度の膜厚で成長した後、この縦方向の成長に優先してマスク上方に向かう横方向の成長がなされ、成膜するものである。しかし、マスクの形成、パターンの形成工程を必要とし、またそれらはそれぞれ窒化ガリウム系化合物半導体の成長装置とは異なる装置で行われるため、煩雑な工程を必要する。すなわち、異種基板上に、ELOG成長の下地層となる窒化ガリウム系化合物半導体層を形成した後、反応容器から取り出し、マスクを設け、さらに反応容器に戻してELOG成長させることになり、異種基板上に、素子構造を形成するための基板となる窒化ガリウム系化合物半導体層を形成が、反応容器内で連続して形成することができない。
【0007】
また、別の方法として、異種基板上に形成した窒化ガリウム系化合物半導体の表面に凹凸を所定のパターン(例えばストライプ状)に設けて、凹部側面から上述の窒化ガリウム系化合物半導体の横方向の成長を発生させる方法でも、窒化ガリウム系化合物半導体を成長後に凹凸を設ける加工を施さなければならず、上述の方法と同様な問題が発生する。
【0008】
このように、従来の横方向の成長を伴う窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、一度、異種基板上に下地となる窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させた後、上述のようなマスクの形成、凹凸の形成など、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる反応容器からウエハを取り出さなければならず、窒化ガリウム系化合物半導体の汚染に関して注意を要する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであり、従来必要とされる窒化ガリウム系化合物半導体成長後のELOG成長させるための準備工程を必要とせず、比較的簡便な方法によりELOG成長を実現ししうる窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を提供するものである。
【0010】
本発明は、窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法であって、窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板の表面に部分的にマスク領域と非マスク領域を有し、マスク領域として溝を形成する工程と、前記異種基板に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な材料からなる埋込膜を前記溝深さ以上の厚みで異種基板上に設ける工程と、前記非マスク領域の異種基板表面が露出する深さまで埋込膜を除去して平坦化して、異種基板表面が露出した非マスク領域と、該埋込膜が露出したマスク領域とを形成する工程と、選択的に前記非マスク領域から窒化ガリウム系化合物半導体を成長させ、前記マスク領域の上部を覆うように成膜してなる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する工程とを順に有することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体成長方法であります。
【0011】
本発明の請求項2に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、前記第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する工程において、前記非マスク領域に単結晶成長困難な温度で成長されたバッファ層、及び/又は、単結晶膜の下地層の窒化ガリウム系化合物半導体を形成する工程を経た後、該バッファ層、及び/又は、下地層上に第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させて形成する窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法であります。
【0012】
本発明の請求項3に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、前記埋込膜が、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム又はこれらの多層膜である窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法であります。
【0013】
本発明の請求項4に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の成長方法は、前記請求項1乃至3記載の第1の窒化ガリウム系化合物半導体層上に、窒化ガリウム系化合物半導体からなる層を複数積層して素子構造を形成することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子の製造方法であります。
【0014】
本発明の請求項5に記載の窒化ガリウム系化合物半導体は、窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板表面に、部分的にマスク領域と非マスク領域とを有し、該マスク領域の異種基板表面には溝を有し、該溝部には前記異種基板に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な材料からなる埋込膜を有すると共に、前記非マスク領域の異種基板は平坦な表面が露出され、前記異種基板には、非マスク領域にのみ窒化ガリウム系化合物半導体のバッファ層、及び/又は、下地層と、該隣り合う非マスク領域のバッファ層、及び/又は、下地層から選択的に成長されて、かつ、マスク領域を覆って結合して形成される第1の窒化ガリウム系化合物半導体層と、が順に積層されていることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体であります。
【0015】
本発明の請求項6に記載の窒化ガリウム系化合物半導体は、前記埋込膜が、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム又はこれらの多層膜である窒化ガリウム系化合物半導体であります。
【0016】
本発明の請求項7に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子は、前記請求項5又は6記載の第1の窒化ガリウム系化合物半導体層上に、窒化ガリウム系化合物半導体からなる層を複数有することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子であります。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の成長方法において、基板に溝を設ける方法としては、スクライバー、ダイサーなどを用いてもよく、そのほかにもRIE(反応性イオンエッチング)などのエッチングによる方法でも良く、さらにレーザによる方法でも良く、用いる基板により適宜選択される。この時、溝の深さは、特に限定されないが、後に続く窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難若しくはほば成長不可能な膜の形成が、容易になる深さに調整することが好ましい。具体的な溝の深さとしては、1μm程度あればよく、具体的には0.3μm以上1μm以下の範囲である。
【0018】
また、本発明の成長方法において、異種基板に設ける溝の形状としては、格子状、碁盤目状など、ELOG成長を実現するのに知られたマスクパターンにかなうように、溝を形成すれば足りるが、好ましくは、ストライプ状に形成することである。なぜなら、複雑な形状のマスクパターンでは、基板への溝の形成が困難なものとなるからであり、さらにまたストライプ状であるとELOG成長の制御が他のパターンに比して容易であることも重要な要因である。具体的には、基板上への窒化ガリウム系化合物半導体の成長が主面内で異方性を有する場合には、成長の容易な方向にほぼ垂直に上述のマスク(若しくはその前段階である溝)をストライプ状に設けることで、成長容易方向とELOG成長における横方向の成長がほほ一致して、良好な成膜がなされ、その制御も容易なものとなる。
【0019】
以下、具体例を挙げて説明すると、サファイア基板であれば、主面をC面、オリエンテーションフラット面(以下オリフラ面と記す)をA面とする基板の場合には、窒化ガリウム系化合物半導体を非マスク領域から選択成長させると、基板面内でオリフラ面に平行な方向に成長の容易な方向をとる傾向にある。このため、溝(マスク領域)のストライプ方向をオリフラ面(A面)に対してほぼ垂直にとることで、良好な横方向の成長を実現し、窒化ガリウム系化合物半導体の成長に有利な表面状態の基板が得られるやすくなる。さらには、主面がA面でオリフラ面がR面である場合には、上記場合と同様に、基板面内でオリフラ面にほぼ平行な方向が良好な選択成長をなすため、溝(マスク領域)のストライプ方向をオリフラ面にほぼ垂直にすることが良い。また、基板材料がスピネル(MgAl2O4)で、主面が(111)面でオリフラ面が(110)面であると、窒化ガリウム系化合物半導体は基板面内でオリフラ面に平行な方向に成長しやすい傾向にあるため、このオリフラ面にほぼ垂直に溝(マスク領域)を設けることで、好ましい窒化ガリウム系化合物半導体基板が得られる。
【0020】
この時、溝の形状(基板表面のマスク領域の形状)がストライプ状である場合に、基板に設ける溝の幅、すなわち、基板表面のマスク領域の幅としては、具体的には1μm以上20μm以下の範囲、好ましくは1μm以上10μm以下の範囲である。加えて、ストライプ間隔(マスク領域のピッチ、非マスク領域の幅)としては、具体的に3μm以上20μm以下の範囲、好ましくは10μm以上19μm以下の範囲でる。このように、基板に設ける溝(マスク領域)が上記具体的な範囲内にあると、第1の窒化ガリウム系化合物半導体の横方向の成長により隣接する窒化ガリウム系化合物半導体が接合し、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成できる。さらに上記好ましい範囲内であると、第1の窒化ガリウム系化合物半導体の横方向の良好な成長が実現される傾向にあり、前記横方向の成長不足からくる結合不良の発生を低く抑え、このことにより第1の窒化ガリウム系化合物半導体層表面に亀裂などのない、良好な表面状態を実現することができる。
【0021】
さらにまた、異種基板に設ける溝の断面形状において、本発明は限定されるものでない。図3に示すようにV字溝であってもよく、図4に示すように矩形状、U字溝、半円状であっても良い。
【0022】
また異種基板は、オフ角が0.1°以上0.5°以下、好ましくは0.1°以上0.2°以下の範囲のステップ状にオフした基板を用いても良い。なぜなら、オフ角を上記範囲とすると、エピタキシャル成長層表面(第1の窒化ガリウム系化合物半導体3表面)は波状のモフォロジーとなり、この基板を用いて得られる窒化ガリウム系化合物半導体素子は平滑で、特性も長寿命、高効率、高出力、歩留まりの向上したものが得られる傾向にあるためである。
【0023】
異種基板に設けた溝に埋め込む埋込膜としては、特に限定されず、埋込膜表面(マスク領域)が、非マスク領域(異種基板表面)に比べて、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難であること、さらに好ましくは、非マスク領域に比べて窒化ガリウム系化合物半導体がほぼ成長できない材料を適用する。具体的には、酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜、金属等を用いることができる。好ましい埋込膜材料としては、SiO2及びSiNが挙げられ、これらを用いることでその他の材料に比べて良好な選択成長が実現される。
【0024】
また、マスク領域、非マスク領域を有する異種基板を形成する方法としては、上述のように、所望のパターン状に溝を形成した異種基板上に、上記埋込膜を、スパッタ法、蒸着法などにより成膜した後、エッチバック技術により平坦な異種基板表面を形成する。具体的には、異種基板上に設けた溝の深さ以上の膜厚で、埋込膜を形成し、その上にさらに表面の段差をなくすために塗布膜を設けて、埋込膜とエッチングレートがほぼ同じ状態でエッチングすることで、マスク領域と非マスク領域を表面に有する異種基板が形成できる。ここで、塗布膜としては、特に限定されず、埋込膜の材料、エッチング条件などにより、平坦な異種基板表面ができるように、適宜選択されるものである。さらにまた、実施例で示すように、埋込膜を形成後に、研磨により平坦な基板表面を形成しても良い。図2は、マスク領域と非マスク領域を異種基板に設ける具体的な方法を説明するものである。図2(a)に示すように、異種基板1にマスク領域となる溝5を所望のパターン状に形成し(図ではストライプ状)、続いて、基板表面に溝5の深さ以上の埋込膜4を基板のほぼ全面に形成する(図2(b))。次に、エッチバック技術による場合には、図2(c)に示すように、埋込膜4の上に塗布膜6を形成してある程度平坦化した後、図2(d)に示すように、塗布膜6、埋込膜4のエッチグレートが同じとなる条件で、異種基板表面11(非マスク領域となる)が露出する深さでエッチングして、異種基板1の表面に、マスク領域10、非マスク領域11とを形成する。研磨による場合には、塗布膜6を設けずに、図2(b)のう状態から直接研磨して、異種基板1の表面を露出させ、マスク領域10、非マスク領域11とを表面に有する異種基板を形成する(図2(d))。
【0025】
以上説明したように、本発明における異種基板表面は、窒化ガリウム系化合物半導体が選択的に成長する非マスク領域と、マスク領域とを有するもので、具体的には異種基板に設けた所定のパターン状の溝に埋め込まれた埋込膜表面をマスク領域とし、異種基板表面が露出した非マスク領域に比べて、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な埋込膜を用いて、前述した窒化ガリウム系化合物半導体の選択的な成長を実現するものである。この時、異種基板表面に非マスク領域とマスク領域とを有することで、窒化ガリウム系化合物半導体の成長を基板面内で部分的(非マスク領域)に成長させるため、すなわち選択的に成長(選択成長)させるものであるため、埋込膜表面より異種基板表面に優先的に形成されるように、埋込膜が機能するものである。従って、後述する横方向の成長を伴う窒化ガリウム系化合物半導体層(後述する第1の窒化ガリウム系化合物半導体層)の形成時に、窒化ガリウム系化合物半導体層からなる下地層を有する場合には、ほぼ非マスク領域に形成された下地層にのみ窒化ガリウム系化合物半導体の成長を許すように、マスク領域の埋込膜は、この下地層に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長がほぼなされないようにする必要がある。本発明において、窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難なマスク領域とはこのような態様を含むものであり、ほぼ窒化ガリウム系化合物半導体が成長しない先に示した材料により実現できる。
【0026】
本発明の製造方法において、窒化ガリウム系化合物半導体とは、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表されるものであり、また成長させる窒化ガリウム系化合物半導体とは、素子構造を形成するため積層する窒化ガリウム系化合物半導体の成長基板となるものであり、その成長基板として必要な表面モフォロジーを有し、転位の極めて少ないものを、提供するものでである。
【0027】
本発明において、異種基板上に形成する窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法としては、特に限定されず一般的に知られている成長方法により形成される。具体的には、MOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)等、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚が100μm以下ではMOCVD法を用いると成長速度をコントロールし易い。また100μm以下の膜厚でHVPEを用いると、成長速度が速くてコントロールが難しい。
【0028】
本発明において、異種基板上に、上述した横方向の成長を伴う第1の窒化ガリウム系化合物半導体を形成する前に、下地層として、後述するバッファ層より高い温度で成長させる窒化ガリウム系化合物半導体を設けても良い。この窒化ガリウム系化合物半導体からなる下地層としては、アンドープ(不純物をドープしない状態、undope)のGaN、Si、Ge、Sn、及びS等のn型不純物をドープしたGaNを用いることができる。この時の成長温度としては、バッファ層よりも高い温度、具体的には900℃以上1100℃以下の温度範囲で、好ましくは1050℃で成長させる。このような温度範囲で成長させることにより、良好な窒化ガリウム系化合物半導体の単結晶膜が、非マスク領域に形成される。さらに膜厚としては、特に限定されないが、次に続く横方向の成長を良好にする表面を形成できる程度であればよく、具体的には500Å(オングストローム)以上の膜厚であり、横方向の成長が発生しない程度、すなわちほぼ非マスク領域にのみ形成される程度の膜厚に留めておく。以上説明したように、横方向の成長を伴う第1の窒化ガリウム系化合物半導体に先んじて、下地層を形成すること、すなわち、このような下地層を介して横方向の成長を伴う第1の窒化ガリウム系化合物半導体を成長されることで、下地層を用いない場合に比べて良好な第1の窒化ガリウム系化合物半導体の成長が実現できる傾向にあり、またその結晶性も向上する。
【0029】
また、異種基板上に選択成長により、横方向への成長をさせる第1の窒化ガリウム系化合物半導体を形成する前に、さらには上記下地層の前にバッファ層を形成しても良い。このバッファ層は、後に続く窒化ガリウム系化合物半導体(下地層若しくは第1の窒化ガリウム系化合物半導体層)の成長温度より低い温度で形成される。具体的にバッファ層としては、AlN、GaN、AlGaN、InGaN等が用いられ、成長温度は900℃以下300℃以上の範囲で、膜厚は0.5μm〜10オングストロームで成長させる。このようなバッファ層を、異種基板上に有することにより、後に続いてバッファ層よりも高い温度で成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体若しくは下地層と、異種基板との格子不整合を緩和し、高温で成長させる、若しくは横方向への成長をさせる窒化ガリウム系化合物半導体の結晶欠陥を低く抑える傾向にあり、結果として第1の窒化ガリウム系化合物半導体の成長に好ましいものとなる。
【0030】
以上のように、バッファ層、下地層は横方向の成長を伴わない(若しくはほとんど横方向に成長しない)条件で形成されるものであり、下地層を形成した段階では、異種基板上の非マスク領域の上部にのみ形成されるか、それよりもわずかに大きな領域で形成される。このため、横方向の成長により、マスク領域に覆い被さり、基板面のほぼ全面に成長して成膜される第1の窒化ガリウム系化合物半導体層とは、異なる。すなわち、図1(b)に示すように、上述のバッファ層(図示せず)、下地層は、マスク領域には形成されずに、非マスク領域に形成されるものであり、選択成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層の下地となるものである。
【0031】
本発明における第1の窒化ガリウム系化合物半導体としては、前記下地層に用いられる窒化ガリウム系化合物半導体と同様のものを用いてもよく、別のものであっても良い。具体的な組成としては、上記下地層と同様に、アンドープ(不純物をドープしない状態、undope)のGaN、Si、Ge、Sn、及びS等のn型不純物をドープしたGaNを用いることができる。第1の窒化ガリウム系化合物半導体の成長温度は、上記下地層を成長させる場合と同様であり、このような温度で成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体は単結晶となる。この時、下地層に第1の窒化ガリウム系化合物半導体を有していない場合には、前記バッファ層を形成した後、昇温して形成することになる。
【0032】
また、第1の窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる際に、上記不純物(若しくはそれに加えて、Be、Zn、Mn、Cr、及びMg等)をドープして成長させる、または窒化ガリウム系化合物半導体の原料となるIII族とV族の成分のモル比(III/Vのモル比)を調整して成長させることにより、横方向に成長が、縦方向の成長に比べて促進させる点、転位を低減させる点で好ましく働き、さらに第1の窒化ガリウム系化合物半導体の表面の面状態を良好にする傾向にある。
【0033】
このように、本発明で成長させる第1の窒化ガリウム系化合物半導体とは、に、異種基板面上に部分的に形成された非マスク領域から成長させ、すなわち横方向への成長を伴う成長(上述のELOG成長)により、マスク領域を覆うように成長して、結果として異種基板面のほぼ全面に形成される膜となる。具体的には、図1(c)、及びそれを一部拡大した図1(d)にその成長形態を示すように、第1の窒化ガリウム系化合物半導体3は、縦方向(図1(c)中の白抜きの矢印方向)に成長すると共に、図1(c),(d)の矢印に示す方向である横方向へも成長し、図1(c)の点線部で示すように第1の窒化ガリウム系化合物半導体層が形成される。また、図3は、その横方向の成長により、窒化ガリウム系化合物半導体層が成膜される様子を示しており、非マスク領域状の下地層2から成長して、横方向の成長を伴うことで、図3(a)の矢印で示すように、隣り合う非マスク領域からの成長層が、結合して、成膜される(図3(b))。このようにして得られる第1の窒化ガリウム系化合物半導体は、表面モフォロジーの良好な成長基板として機能し、後に続く素子構造の形成において、良好な窒化ガリウム系化合物半導体の成長を実現できるものである。
【0034】
【実施例】
[実施例1]
まず、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる異種基板として、C面を主面とし、A面をオリフラ面とする2インチφのサファイア基板を用意し、図2(a)に示すように、スクライバーで幅10μm、深さ約0.5μmの溝5をオリフラ面にほぼ垂直に、10μmのピッチ(溝と溝との間隔)で基板表面のほぼ全面に形成した。次に、ウエハをCVD装置に移し、SiO2からなる膜を約0.6μmの膜厚で形成した(図2(b))。続いて、ウエハを研磨装置にセットし、SIO2の膜の一部を研磨により除去し、異種基板表面を露出させ、平坦な表面を形成する(図2(d))。この時、露出されるウエハ表面は、図2(d)のようにSiO2が溝に埋め込まれたマスク領域と、サファイア基板表面が露出した非マスク領域とが交互にストライプ状に混在する異種基板表面が形成される。
【0035】
このようにして形成されたサファイア基板をMOCVDの反応容器内にセットし、温度を510℃にして、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、サファイア基板1上にGaNよりなるバッファ層(図示せず)を約200オングストロームの膜厚で成長させる。バッファ層を成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、図1(b)に示すように、下地層2としてアンドープのGaNよりなる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を2μmの膜厚で成長させる。このような下地層2は、図1(b)に観るように、ほぼ非マスク領域上にのみ形成され、次に続くELOG成長層である第1の窒化ガリウム系化合物半導体層の成長に備えるものである。
【0036】
下地層2を形成した後、原料ガスにTMG、アンモニアを用いて、温度1050℃で、アンドープGaNからなる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を15μmの膜厚で、図1(c),(d)に示すように、横方向の成長を伴った非マスク領域からの選択成長により形成する。
【0037】
このようにして得られたウエハを反応容器から取り出し、表面を観察したところ、平坦な窒化ガリウム系化合物半導体表面が形成されており、また表面モフォロジーも良好なものであり、この上に成長させる窒化ガリウム系化合物半導体にとって、良好な基板表面が形成されていた。さらに、CL(カソードルミネセンス)方法によりウエハ表面(第1の窒化ガリウム系化合物半導体層表面)を観察したところ、マスク領域上部の表面には、転位が多く観られる傾向にあり、非マスク領域上部では転位がほとんど観られない良好な表面を呈していた。
【0038】
[実施例2]マスク幅とピッチ変更
異種基板に設ける溝を、幅5μm、溝と溝との間隔10μmとする他は、実施例1と同様にしてサファイア基板上にストライプ状の溝を形成した後、CVD装置にウエハをセットしてSiNからなる埋込膜形成し、研磨して、ストライプ状のマスク領域を表面に有する異種基板を得る。次に、実施例1と同様に、ウエハをMOCVD装置にセットして、膜厚500ÅのアンドープGaNからなるバッファ層を形成してこのバッファ層のみを下地層とし、次に横方向への成長をさせる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層(膜厚15μmのアンドープGaN)を実施例1と同様にして形成する。この時、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層は、下地層の有無に違いはあるものの実施例1とほぼ同様に、膜厚方向への成長に加えて、横方向への成長がなされて成膜される。この時、実施例1に比べると、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層の成長は、安定した横方向の成長にやや劣るものの、良好な成長膜を形成できる。
【0039】
得られたウエハを観察したところ、良好な基板表面の形成が観られ、また転位の面内分布もほぼ同等のものであった。
【0040】
[実施例3]ダイサー用いる
異種基板にダイサーを用いて溝を設け、溝の幅20μm、溝と溝との間隔を15μmとする他は、実施例1と同様にして、図4(a)に示すようなサファイア基板上にストライプ状の溝を形成する。さらに、実施例1と同様に、CVD装置にてウエハのほぼ全面にSiO2よりなる埋込膜を形成し、研磨により、ストライプ状のマスク領域と非マスク領域が交互に混在する基板を形成する。以下、実施例1と同様にして、バッファ層、下地層、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層をMOCVD装置により成長させ、窒化ガリウム系化合物半導体基板を得る。この時、第1の窒化ガリウム系化合物半導体層は、ほぼ実施例1と同様な成長形態で、成膜される。
【0041】
このようにして得られた基板は、実施例1と同様に、窒化ガリウム系化合物半導体を成長させるために良好な表面状態を実現するものであり、また第1の窒化ガリウム系化合物半導体層内部の転位の分布もほぼ実施例1同様であった。
【0042】
[実施例4]
実施例1と同様に、第1の窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、LEDの素子構造となるn型窒化ガリウム系化合物半導体層、活性層、p型窒化ガリウム系化合物半導体層とを積層して、青色発光素子を形成する。得られる青色発光素子は、良好な発行特性を有するものであった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、従来の方法に比べて、極めて容易に横方向の成長を含む成長により形成された窒化ガリウム系化合物半導体層を形成することができる。また、装置からウエハを取り出すことなく基板となる窒化ガリウム系化合物半導体層の形成、素子構造の形成を連続的に行うことが可能になり、ウエハを装置外に取り出すことによる窒化ガリウム系化合物半導体の汚染を防ぎ、素子特性に優れた窒化ガリウム系化合物半導体素子を、良好な歩留まりで形成できる。
【0044】
さらに、窒化ガリウム系化合物半導体基板の製造工程が従来に比べて大幅に短縮されているため、大幅な製造コストの削減につながり、あらゆる窒化ガリウム系化合物半導体を用いた素子の製造に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を説明する模式的な斜視図。
【図2】本発明に用いる異種基板を説明する模式的斜視図。
【図3】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を説明する模式的断面図。
【図4】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法を説明する模式的断面図。
【符号の説明】
1・・・・異種基板
2・・・・下地層
3・・・・第1の窒化ガリウム系化合物半導体層
4・・・・埋込膜
5・・・・異種基板に設ける溝
6・・・・塗布膜
10・・・・マスク領域
11・・・・非マスク領域
Claims (7)
- 窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板の表面に部分的にマスク領域と非マスク領域を有し、マスク領域として溝を形成する工程と、前記異種基板に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な材料からなる埋込膜を前記溝深さ以上の厚みで異種基板上に設ける工程と、前記非マスク領域の異種基板表面が露出する深さまで埋込膜を除去して平坦化して、異種基板表面が露出した非マスク領域と、該埋込膜が露出したマスク領域とを形成する工程と、選択的に前記非マスク領域から窒化ガリウム系化合物半導体を成長させ、前記マスク領域の上部を覆うように成膜してなる第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する工程とを順に有することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体成長方法。
- 前記第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する工程において、前記非マスク領域に単結晶成長困難な温度で成長されたバッファ層、及び/又は、単結晶膜の下地層の窒化ガリウム系化合物半導体を形成する工程を経た後、該バッファ層、及び/又は、下地層上に第1の窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させて形成する請求項1記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
- 前記埋込膜が、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム又はこれらの多層膜である請求項1又は2記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
- 前記請求項1乃至3記載の第1の窒化ガリウム系化合物半導体層上に、窒化ガリウム系化合物半導体からなる層を複数積層して素子構造を形成することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子の製造方法。
- 窒化ガリウム系化合物半導体とは異なる材料よりなる異種基板表面に、部分的にマスク領域と非マスク領域とを有し、
該マスク領域の異種基板表面には溝を有し、該溝部には前記異種基板に比べて窒化ガリウム系化合物半導体の成長が困難な材料からなる埋込膜を有すると共に、前記非マスク領域の異種基板は平坦な表面が露出され
前記異種基板には、非マスク領域にのみ窒化ガリウム系化合物半導体のバッファ層、及び/又は、下地層と、
該隣り合う非マスク領域のバッファ層、及び/又は、下地層から選択的に成長されて、かつ、マスク領域を覆って結合して形成される第1の窒化ガリウム系化合物半導体層と、が順に積層されていることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体。 - 前記埋込膜が、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム又はこれらの多層膜である請求項5記載の窒化ガリウム系化合物半導体。
- 前記請求項5又は6記載の第1の窒化ガリウム系化合物半導体層上に、窒化ガリウム系化合物半導体からなる層を複数有することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子。
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