JP3567814B2 - ストリップの巻取方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延機から送り出されたストリップを圧延機の下流側に配置したストリップシャーにより切断して先行ストリップと後行ストリップとに分割し、該ストリップシャーの出側に配置した巻取用ピンチロールを介して前記後行ストリップの先端を先行ストリップを巻き取っているマンドレルとは別のマンドレル側へ送り込むようにしたストリップの巻取方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6に連続熱間圧延ラインの全体概略を示す。従来、ストリップシャーによって所定の長さに切断されたストリップを複数台の巻取装置で交互に巻き取る際の巻取装置の切換えは次のようにして行っていた。例として、下流側巻取装置aから上流側巻取装置bへ切り換える場合を説明すると、仕上圧延機cから送り出されたストリップdを仕上圧延機cの下流側に配置されたストリップシャーeで所定長さに切断して先行ストリップd1 及び後行ストリップd2 とに分割し、先行ストリップd1 及び後行ストリップd2 をそれぞれ下流側巻取装置a及び上流側巻取装置bによって巻き取る。
【0003】
先行ストリップd1 を巻取用ピンチロールkおよび巻取用ピンチロールfを介して下流側巻取装置aで巻き取っている間に、巻取用ピンチロールfの下ピンチロールgを上流側へ移動させ、これにより、上ピンチロールhと下ピンチロールgとをオフセットさせてストリップの搬送方向を予め下流側巻取装置aから上流側巻取装置bに切り換えておき、先行ストリップd1 が巻取用ピンチロールfを抜けた直後に後行ストリップd2 を上流側巻取装置bに誘導し、該後行ストリップd2 を上流側巻取装置bによって巻き取る。このとき、三角ゲートjによって後行ストリップd2 が下流側巻取装置a側に突き抜けていくのを防止する。
【0004】
なお、前記切断を行う前に、上ピンチロールhと下ピンチロールgとをオフセットさせた状態で、該上ピンチロールhと下ピンチロールgによりストリップを挟持した状態としておく。これは、前記切断により生じる先行ストリップd1 の尾端と後行ストリップd2 の先端との間隔をそれほど大きくとることはできないため、前記尾端が上流側巻取用ピンチロールfを通過した後、前記先端が該上流側巻取用ピンチロールf位置に到達するまでの間に、該上流側巻取用ピンチロールfの下ピンチロールgを上流側へとオフセットさせ、前記尾端を上流側巻取装置へと送り込むためのギャップ設定位置にまで上ピンチロールhを押し下げるだけの時間的余裕はないからである。
【0005】
しかしながら、かかる従来のストリップの巻取方法においては、ストリップシャーeによりストリップを切断すると、それまで仕上圧延機cと下流側巻取装置aによりストリップに付与されていた張力が開放されて、先行ストリップの尾端が図7に示すように巻取用ピンチロールfの出側でだぶついてしまう。そして、最悪の場合は、先行ストリップの尾端が三角ゲートgに引っかかって板が破損するという不都合がある。
【0006】
かかる不都合を解消することを目的として、本発明者らは、下流側巻取装置から上流側巻取装置に切り換える際に、下流側巻取装置で巻き取られるストリップの尾端が上流側の巻取用ピンチロールを抜けた後に下流側巻取装置と上流側巻取装置との間でだぶつくことを防止できる巻取用ピンチロールの制御方法を開発し、特願平10−81901号明細書に提案した。該制御方法は、図6に示す巻取設備において、下流側で巻取用ピンチロールkを介して巻取装置aに巻き取られるストリップの尾端を前記ストリツプシャーで切断したときの下流側の巻取用ピンチロールkの目標速度Vp1、上流側の巻取用ピンチロールfの目標速度Vp2、前記切断直前のストリップの目標板速度VS 及び下流側巻取装置aの巻取速度Vm の関係をVm >Vp1>Vp2>VS とすることを特徴とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述のように、下流側で巻取用ピンチロールkを介して巻取装置aに巻き取られるストリップの尾端を前記ストリツプシャーで切断したときの下流側の巻取用ピンチロールkの目標速度Vp1、上流側の巻取用ピンチロールfの目標速度Vp2、前記切断直前のストリップの目標板速度VS 及び下流側巻取装置aの巻取速度Vm の関係をVm >Vp1>Vp2>VS とすれば、ストリップシャーによりストリップを切断した後は、先行ストリップは上記のように速度設定されたピンチロールにより押さえつけられるので、先行ストリップには下流側巻取装置と下流側巻取用ピンチロールkとの間、下流側ピンチロールkと上流側ピンチロールfとの間で張力が付与されて、先行ストリップの下流側巻取装置と上流側巻取装置との間でだぶつきを防止することが可能となる。
【0008】
しかしながら、上流側の巻取用ピンチロールfに着目すると、先行ストリップ尾端が通り抜けた後、非常にわずかな間隔をおいて後行ストリップ先端が通過することとなる。このとき、上流側巻取用ピンチロールの目標速度Vp2は、後行ストリップの通板速度VSより速くしてあるにもかかわらず、図5に示すように後行ストリップの先端が上流側の巻取用ピンチロールを通過する際に、上流側の巻取用ピンチロール入側でだぶついてしまうことがあった。そして、程度が悪いときには、後行ストリップが上流側の巻取用ピンチロールに噛みこまず後行ストリップが巻取り不可能となってしまって、ライン停止する事態に陥ってしまうこともあった。
【0009】
本発明はかかる不都合を解消するためになされたものであり、ストリップを切断した後、後行ストリップ先端が巻取用ピンチロールの入側でだぶつくのを防止できるストリップの巻取方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明に係るストリップの巻取方法は、圧延機から送り出されたストリップを巻取用ピンチロールを介して巻取装置のマンドレルに巻取り中に、該圧延機と該巻取用ピンチロールとの間に配置したストリップシャーにより前記ストリップを切断して先行ストリップと後行ストリップとに分割し、前記巻取用ピンチロールにより前記後行ストリップの先端を先行ストリップを巻き取っているマンドレルとは別のマンドレル側へ送り込むようにしたストリップの巻取方法であって、
前記切断後の前記巻取用ピンチロールの送り速度設定値を前記先行ストリップを巻き取るマンドレルの巻取速度設定値よりも小さく、且つ、前記切断前のストリップの目標板速度より大きくし、前記切断後に前記後行ストリップの先端が前記巻取用ピンチロールに噛み込む際に、該巻取用ピンチロールの送り速度が前記後行ストリップの搬送速度よりも速くなるように、前記巻取用ピンチロールの駆動装置に減速側のトルクリミットを設定したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の一例であるストリップの巻取方法を説明するための説明的概略図、図2はストリップシャー出側の巻取用ピンチロールの駆動機構を説明するための概略斜視図、図3は減速側のトルクリミットを設定した場合のストリップシャー出側の巻取用ピンチロールの回転速度と負荷トルクの経時的変化を示すグラフ図、図4は減速側のトルクリミットを設定しない場合のストリップシャー出側の巻取用ピンチロールの回転速度と負荷トルクの経時的変化を示すグラフ図である。
【0012】
図1は連続熱間圧延ラインのストリップシャーより下流側の部分を概略的に示したものであり、この実施の形態では、仕上圧延機(図示せず。)から送り出されたストリップSを仕上圧延機の下流側に位置するストリップシャー2で所定長さに切断して先行ストリップS1 と後行ストリップS2 とに分割し、先行ストリップS1 を巻取用ピンチロール3を介して下流側巻取装置4によって巻き取るとともに、後行ストリップS2 をストリップシャー2の出側に配置された巻取用ピンチロール5を介して上流側巻取装置1によって巻き取る場合を例に採る。
【0013】
下流側巻取装置4及び上流側巻取装置1は共に、マンドレル7に巻き付いたストリップを所定の巻取張力で引っ張るための手段として、マンドレル7のモータ8のトルクを検出するトルク検出器9と、トルク検出器9によって得られた検出トルク値が目標トルク値に一致するようにモータ8をフィードバック制御してストリップの張力を一定に維持するトルク制御装置10と、モータ8の回転状態を検出するパイロットジェネレータ(PLG)11と、パイロットジェネレータ11によって得られた速度検出値が目標速度に一致するようにモータ8をフィードバック制御する速度制御装置12とを備える。
【0014】
また、巻取用ピンチロール3は、下ピンチロール3aのモータ13のトルクを検出するトルク検出器14と、モータ13の回転状態を検出するパイロットジェネレータ(PLG)15と、パイロットジェネレータ15によって得られた速度検出値が目標速度Vp1に一致するようにモータ13をフィードバック制御する速度制御装置16とを備える。
【0015】
更に、巻取用ピンチロール5も同様に、下ピンチロール5aのモータ17のトルクを検出するトルク検出器18と、モータ17の回転状態を検出するパイロットジェネレータ(PLG)19と、パイロットジェネレータ19によって得られた速度検出値が目標速度Vp2に一致するようにモータ17をフィードバック制御する速度制御装置20とを備える。
【0016】
速度制御装置20は、トルク検出器18によって得られたトルク検出値が減速側に所定値Tを超えないようにモータ17の回転を制御する機能を有している。下ピンチロール5aは下流側巻取装置4から上流側巻取装置1へ切り換える際のオフセット角変更時に上流側ヘパスラインに沿って移動可能とされ、上ピンチロール5bはストリップを押し下げるための圧下手段30が設けられており、該ストリップを所定押し力で押し付け可能とされている。
【0017】
次に、下流側巻取装置4から上流側巻取装置1へ切り換える場合を説明すると、まず、先行ストリップS1 を下流側巻取装置4で巻き取っている間に、巻取用ピンチロール5の下ピンチロール5aを油圧シリンダ(図示せず。)等によって上流側へパスラインに沿って移動させ、これにより、巻取用ピンチロール5のオフセット角を変更してストリップの搬送方向を予め下流側巻取装置4から上流側巻取装置1に切り換えておき、先行ストリップS1 が巻取用ピンチロール5を抜けた直後に後行ストリップS2 を上流側巻取装置1のマンドレル7側に誘導できるようにしておく。なお、図1において符号28は後行ストリップS2 が下流側巻取装置4側に突き抜けていくのを防止するための三角ゲートである。
【0018】
先行ストリップS1 が下流側巻取装置4のマンドレル7に巻き付いている状態で、ストリップシャー2によりストリップを切断する場合、本発明では、前記切断を行う時に、巻取装置4の速度制御装置12による先行ストリップS1 の設定巻取速度Vm 、巻取用ピンチロール5側の速度制御装置20に対する目標速度Vp2、巻取用ピンチロール3側の速度制御装置16に対する目標速度Vp1、及び切断直前の先行ストリップS1 の搬送速度(ストリップの目標板速度)V S を、図示しない上位コンピュータによって、Vm >Vp1>Vp2>VS となるように設定する。
【0019】
このような速度設定を行うことによって、巻取装置4と巻取用ピンチロール3との間及び巻取用ピンチロール3と巻取用ピンチロール5との間で張力が付与されて先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5の出側でだぶつくことを防止でき、三角ゲート28にひっかかることによるストリップS1 の破損も防止できる。
【0020】
ところで、図4に示すように、ストリップが切断されるまではストリップシャー出側の巻取用ピンチロール5はストリップの目標板速度VS (m/s)と同一の速度で回転している。ストリップがストリップシャー2により切断されると、巻取用ピンチロール5の目標速度Vp2(m/s)は切断前のストリップの目標板速度VS よりも大きい値に設定され、先行ストリップS1 の設定巻取速度Vm (m/s)は巻取用ピンチロール5の目標板速度Vp2よりも大きい値に設定される。このため、巻取用ピンチロール5の回転速度はストリップの切断後に上昇する。そして、先行ストリップS1 の板速度は設定巻取速度Vm まで上昇しようとし、巻取用ピンチロール5は先行ストリップS1 を押さえつけているので、該巻取用ピンチロール5の回転速度が先行ストリップS1 の板速度の上昇につられて設定巻取速度Vm に近い値まで上昇することがある。
【0021】
このとき、巻取用ピンチロール5の目標板速度Vp2は設定巻取速度Vm 、すなわち切断後の先行ストリップS1 の板速度よりも小さい値に設定されているため、巻取用ピンチロール5の下ピンチロール5aのモータ17(駆動装置)は、巻取用ピンチロール5を逆回転側(減速させる側)にトルクを発生させる。そのため、切断後にはモータ17の負荷トルクは正回転方向から逆回転方向に転ずる。そして、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けると、巻取用ピンチロール5は減速されるが、板厚大で曲げ剛性が大きいストリップの場合には巻取用ピンチロール5による先行ストリップS1 が押し力が大きいため該巻取用ピンチロール5を先行ストリップS1 が通過するときのモータ17の減速側へのトルクが大きくなり、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けた後の該巻取用ピンチロール5の減速時に、Vp2>VS と速度設定しているにもかかわらず、図4に示すように、巻取用ピンチロール5の回転速度が瞬間的にストリップの目標板速度(後行ストリップの速度)よりも小さい値となり、その後設定板速度Vp2へと安定する。
【0022】
先行ストリップS1の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けた後、後行ストリップS2の先端が巻取用ピンチロール5に噛込むまでは0.3秒程度と非常に短いので、上述したように、巻取用ピンチロール5の回転速度が後行ストリップS2 の板速度VSよりも遅いときに後行ストリップS2の先端が巻取用ピンチロール5に噛み込むと、該巻取用ピンチロール5のストリップ送り込み速度が後行ストリップS2の板速度よりも遅くなるため、図5に示すように、巻取用ピンチロール5の入側で後行ストリップS2の先端がだぶついてしまうことになる。
【0023】
そこで、この実施の形態では、巻取用ピンチロール5の駆動装置であるモータ17に減速側のトルクリミットTmin (N・m)を設け、速度制御装置20によってモータ17の負荷トルクが減速側のトルクリミットTmin を超えないようにモータ17を制御している。
ここで、後行ストリップS2 の先端が巻取用ピンチロール5に噛みこむ際に、図3に示すように、該巻取用ピンチロール5の回転速度が後行ストリップS2 の板速度VS よりも小さくならないようにするためのトルクリミットTmin の値は次のようにして予め求めておくことができる。
【0024】
図2を参照して、巻取用ピンチロール5の下ピンチロール5aが駆動される場合を例にとって、該下ピンチロール5aを駆動するモータ17に設定しておくべき減速側のトルクリミツトTmin の値について説明する。
下ピンチロール5aは歯車21,22を介してモータ17により回転駆動される。図2は先行ストリップS1 がピンチロール5により押さえつけられている状態を示しているが、この状態では、先行ストリップS1 の板速度VS は下ピンチロール5aの設定板速度Vp2よりも大きいため、下ピンチロール5aは先行ストリップS1 よりF(N)だけの力を受け、モータ17はこれに対抗してトルクTM (N・m)を発生させる。
【0025】
時間tにおいて、下ピンチロール5aが先行ストリップS1 から受ける力をF(t)(N)、これに対抗してモータ17が発生させるトルク(正回転側(加速側)を正、逆回転側(減速側)を負とする。)をTM (t)(N・m)、下ピンチロール5aと歯車21の慣性モーメントをJ2 (N・m 2)、モータ17と歯車22の慣性モーメントをJ1 (N・ m 2)、下ピンチロール5aの角速度をω2 (rad/sec)、モータ17の角速度をω1 (rad/sec)、歯車22に発生するトルクをT(t)(N・m)、歯車21と歯車22との減速比をi、下ピンチロール5aのロール径をD(m)とすると、次式(1)なる力学方程式が成り立つ。
【0026】
【数1】
【0027】
また、モータ17と歯車22との間には、次式(2)なる力学方程式が成り立つ。
【0028】
【数2】
【0029】
(1)式と(2)式より、T(t)を消去すると、次式(3)が成り立つ。
【0030】
【数3】
【0031】
(3)式を積分すると、次式(4)となる。
【0032】
【数4】
【0033】
ここで、ωt1 ,ωt2 はそれぞれ時刻t1 ,t2 における下ピンチロール5aの角速度である。(4)式において、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けてから、後行ストリップS2 の先端が巻取用ピンチロール5に噛み込むまでの間は、F(t)=0である。従って、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けた時(t=t1 (sec)とする。)から後行ストリップS2 先端が巻取用ピンチロール5に噛み込む時(t=t 2 (sec))までを考えると、(4)式より、次式(5)が成り立つ。ここで、TM(t)は先行ストリップS1 の尾端抜け直前は減速側、即ち負の値であるが、減速側のトルクリミットTmin を設けておくとすると、先行ストリップS1 の尾端抜け時にはTM(t)=Tmin であると考えられる。そして、前記尾端抜け後にTM(t)は上昇していき正となると考えられるが、より厳しい方向に評価するため、t=t1 からt=t 2 まではTM(t)=Tmin とすると、(5)式は次式(6)となる。(6)式を解くと、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けてから、t2 −t1 (sec)時間後の下ピンチロール5aの角速度変化△ω=ωt2 −ωt1 (rad/sec)は、次式(7)により求められる。
【0034】
【数5】
【0035】
【数6】
【0036】
【数7】
【0037】
そして、後行ストリップS2 先端の搬送速度VS が次式(8)を満たすようになっていれば、下ピンチロール5aの入側で後行ストリップS2 にだぶつきを発生させることはなくなる。
【0038】
【数8】
【0039】
ここで、ωt1 は下ピンチロール5aの設定角速度ωP2よりも小さくはならないから、ωt1 ≒ωP2と近似しても問題なく、したがって、巻取用ピンチロール5の入側で後行ストリップS2 の先端にだぶつきを発生きせないためのTmin は上記(7)式と(8)式から、次式(9)の関係を満たせばよい。
【0040】
【数9】
【0041】
(9)式において、ωP2・D/2=Vp2であるから、次式(10)の関係を満たせば良いこととなる。
【0042】
【数10】
【0043】
ここで、Vp2>VS と速度設定しているので、(10)式中の右辺は負の値であるから、Tmin としては負の所定値以上であればよい。即ち、減速側のトルクリミットを設ければ良いこととなる。
後行ストリップS2 先端の搬送速度VS 、モータ17と歯車22の慣性モーメントJ1 、下ピンチロール5aと歯車21との慣性モーメントJ2 、下ピンチロール径D、減速比i、下ピンチロール5aの設定速度Vp2は予め判っており、また、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けてから後行ストリップS2 の先端が巻取用ピンチロール5に噛み込むまでの時間t2 についても、後行ストリップS2 の搬送速度VS と先行ストリップS1 の巻取速度Vm との関係から予め判っているので、上記(10)式を満たすTmin の値を設定しておけばよい。
【0044】
なお、Tmin の上限値については、Tmin が“0”を超える値としておくと、下ピンチロール5aに常に加速側のトルクを発生させることとなるので、先行ストリップS1 に張力を付与することができなくなる。従って、トルクリミットTmin の上限値は“0”であることは言うまでもない。
このように巻取用ピンチロール5の駆動モータ17に減速側のトルクリミットTmin を設定しておけば、ストリップを切断後に巻取用ピンチロール5が先行ストリップS1 を押さえつけている間に、先行ストリップS1 の目標巻取速度Vm (下流側巻取装置4の設定巻取速度)と巻取用ピンチロールの目標速度Vp2との速度差に基づいて生じるモータ17の減速側の負荷トルクが過大とならず、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けた直後も、巻取用ピンチロール5の回転速度が後行ストリップS2 の板速度VS よりも小さくなることはない。
【0045】
図1及び図2に示す設備を用いて、巻取用ピンチロール5によりストリップを押さえつけた状態でストリップの下流側巻取装置4のマンドレル7に巻き取っている間に、ストリップシャー2によりストリップの切断を行って先行ストリップS1 と後行ストリップS2 とに分割し、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜けた後、後行ストリップS2 の先端を巻取用ピンチロール5により上流側巻取装置1のマンドレル7側へと送り込む際に、切断から後行ストリップS2 の先端が噛み込むまでの間、巻取用ピンチロール5の下ピンチロール5aのモータ17に、上述の(10)式を満たす減速側のトルクリミットTmin を設けた場合の、下ピンチロール5aの回転速度および負荷トルクの経時変化を、図3に示す。
【0046】
前述の図4の場合と同様に、ストリップを切断と同時に、下ピンチロール5aの回転速度は上昇し、それに伴って負荷トルクは小さくなり、負の値、即ち逆回転側(減速側)に転ずる。逆回転側にはトルクリミットが設けられているので、負荷トルクは該トルクリミットの値より小さくはならない。そのため、下ピンチロール5aの回転速度は先行ストリップS1 に引きずられて設定巻取速度Vm まで上昇する。そして、先行ストリップS1 の尾端がピンチロール5を抜けると、下ピンチロール5aには逆回転側のトルクが負荷されているので、下ピンチロール5aの回転速度は減速していく。ここで、先行ストリップS1 の尾端が巻取用ピンチロール5を抜ける時点での逆回転側に生じている負荷トルクの絶対値は、トルクリミットの値であるので、前述の図3における場合の負荷トルクの絶対値よりも小さい値となっているため、巻取用ピンチロール5が急減速されて、後行ストリップS2 の搬送速度VS よりも小さくなることはない。したがって、後行ストリップS2 が巻取用ピンチロール5の入側でだぶつくことはない。
【0047】
なお、上記実施の形態では、先行ストリップを下流側巻取装置で巻取り、後行ストリップを上流側巻取装置に巻き取るように切り換える場合を例にして説明しているが、本発明は、先行ストリップを上流側巻取装置で巻取り、後行ストリップを下流側巻取装置で巻き取るように切り換える場合にも適用できる。
また、上記の実施の形態においては、ダウンコイラーと呼ばれる巻取装置2機により、先行ストリップと後行ストリップとを交互に巻き取る場合の例であるが、図8に示すような巻取用ピンチロール5の下流側に、複数のマンドレル7を回転フレーム50に設置したカローゼルリール40を配置し、ピンチロールの入側のストリップシャー2により切断した後の後行ストリップS2 を、先行ストリップを巻き取っているマンドレルとは別のマンドレルに巻き付ける場合にも適用できる。
【0048】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明によれば、ストリップを切断した後に先行ストリップの尾端が巻取用ピンチロールの出側でだぶつくのを防止することができると共に、後行ストリップの先端が巻取用ピンチロールの入側でだぶつくのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例であるストリップの巻取方法を説明するための説明的概略図である。
【図2】ストリップシャー出側の巻取用ピンチロールの駆動機構を説明するための概略斜視図である。
【図3】減速側のトルクリミットを設定した場合のストリップシャー出側の巻取用ピンチロールの回転速度と負荷トルクの経時的変化を示すグラフ図である。
【図4】減速側のトルクリミットを設定しない場合のストリップシャー出側の巻取用ピンチロールの回転速度と負荷トルクの経時的変化を示すグラフ図である。
【図5】巻取用ピンチロールの入側の後行ストリップ先端のだぶつきを説明するための説明図である。
【図6】熱間圧延ラインのストリップシャー出側に配置された巻取設備の概略を示す図である。
【図7】巻取用ピンチロールの出側の先行ストリップ尾端のだぶつきを説明するための説明図である。
【図8】本発明を適用可能な巻取り設備の例を示す概略図である。
【符号の説明】
S…ストリップ
S1 …先行ストリップ
S2 …後行ストリップ
1…上流側巻取装置
2…ストリップシャー
4…下流側巻取装置
5…巻取用ピンチロール
7…マンドレル
17…モータ(巻取用ピンチロール5の駆動装置)
40…巻取装置(カローゼルリール)
Claims (1)
- 圧延機から送り出されたストリップを巻取用ピンチロールを介して巻取装置のマンドレルに巻取り中に、該圧延機と該巻取用ピンチロールとの間に配置したストリップシャーにより前記ストリップを切断して先行ストリップと後行ストリップとに分割し、前記巻取用ピンチロールにより前記後行ストリップの先端を先行ストリップを巻き取っているマンドレルとは別のマンドレル側へ送り込むようにしたストリップの巻取方法であって、
前記切断後の前記巻取用ピンチロールの送り速度設定値を前記先行ストリップを巻き取るマンドレルの巻取速度設定値よりも小さく、且つ、前記切断前のストリップの目標板速度より大きくし、前記切断後に前記後行ストリップの先端が前記巻取用ピンチロールに噛み込む際に、該巻取用ピンチロールの送り速度が前記後行ストリップの搬送速度よりも速くなるように、前記巻取用ピンチロールの駆動装置に減速側のトルクリミットを設定したことを特徴とするストリップの巻取方法。
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JP26867799A JP3567814B2 (ja) | 1999-09-22 | 1999-09-22 | ストリップの巻取方法 |
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