JP3566858B2 - 非水電解質電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の発展に伴って、新しい高性能電池の出現が期待されている。
【0003】
電子機器の電源としては、各種一次電池や二次電池が使用されているが、最近では、非水系電解質を使用した3V以上の高電圧系電池が使用されており、その代表的な電池としていわゆるリチウム電池がある。
【0004】
負極に金属リチウムを使用する二次電池は、金属リチウムのデンドライト析出によって短絡が発生しやすく、寿命が短いという欠点があり、また、金属リチウムの反応性が高いために、安全性を確保することが困難である。そのために、金属リチウムのかわりにグラファイトやカーボンを使用する、いわゆるリチウムイオン電池が考案されたが、リチウムイオン電池においては、その安全性上の問題から活物質の利用率が制限されるために、活物質の充放電可能な容量から期待される電池のエネルギー密度よりも、実用上のエネルギー密度が低下するという問題点がある。
【0005】
リチウム電池およびリチウムイオン電池(以後まとめてリチウム系電池と記述)
においては、電解質に可燃性の有機電解液を使用するために、その安全性上の問題から安全弁、保護回路、ポリスイッチなどの様々な安全化素子が必要となる。
【0006】
さらにリチウム系電池においては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の微孔膜がセパレータとして使用されている。また、熱による微孔性高分子膜の融解によって孔が塞がるシャットダウン効果を利用して、セパレータに電池の安全機構を持たせることが行われている(J.Electrochem.Soc.140(1993)L51)。
【0007】
有機電解液の代わりに、より化学反応性に乏しい固体高分子電解質を用いることによって電池の安全性を向上させることが試みられている(Electrochemca Acta 40(1995)2117)。また、電池形状の柔軟性、製造工程の簡易化、製造コストの削減等の目的においても固体高分子電解質の適用が試みられている。
【0008】
固体高分子電解質としてのイオン伝導性高分子については、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテルとアルカリ金属塩との錯体が多く研究されている。しかしポリエーテルは十分な機械的強度を保ったまま高いイオン伝導性を得ることが困難であり、しかも伝導率が温度に大きく影響されるために室温で十分な伝導率が得られない。
また、ポリエーテル系高分子電解質のように、塩を溶解したイオン伝導性高分子では、カチオンおよびアニオンの両方が移動し、通常室温でのカチオンの輸率は0.5以下である。そこで、−SO3や−COOのようなアニオン基を有するイオン伝導性高分子を合成し、そのリチウムイオンの輸率を1とすることも試みられているが、リチウムイオンが強くアニオン基に束縛されるためにイオン伝導率が非常に低く、リチウム系電池に使用することは非常に困難であった。
【0009】
さらに、高分子に電解液を含浸させることによってゲル状の固体電解質を製作し、リチウム系電池に適用することも試みられている。このゲル状の固体電解質において使用されている高分子には、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルサルフォン、ポリビニルピロリジノン等がある。ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体を用いることによって高分子の結晶化度を低下させ、電解液を含浸し易くして伝導率を向上させることも試みられている(U.S.Pat. No. 5,296,
318)。また、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリビニルピロリドン等のラテックスの乾燥によって高分子膜を製作し、これに電解液を含浸させることによってリチウムイオン伝導性高分子膜を製作することも試みられている(J.Electrochem.Soc. 141(1994)1989、 J.Polym.Sci.A 32(1994)779)。このラテックスを用いた高分子電解質の製作においては二種類の高分子を混合し、電解液が染み込み難く強い機械的強度を保つ高分子相と、電解液が染み込みやすく高いイオン伝導率を示す高分子相との混合系とすることによって機械的強度とイオン伝導性を供与する高分子膜が提案されている。
【0010】
また、高分子電解質膜の機械的強度の増強および扱い易さの向上のために、ポリオレフィンの微孔性膜の孔中に高分子電解質を充填した固体電解質(J.Electrochem.Soc.142(1995)683)や、イオン伝導率向上およびカチオンの輸率の増大等を目的とする無機固体電解質粉末を含む高分子電解質(J.Power Sources 52(1994)261、 Electrochimica Acta 40(1995)2101、 40(1995)2197)についても報告されている。
【0011】
以上のように、種々の高分子電解質が数多く提案されている。しかし、リチウム系電池は、充放電反応において電極反応に関与するリチウムイオンの量の大部分が、電解質に溶解しているものではなく、電極の活物質から放出するリチウムイオンが電解質中を移動して対極に到達するものであるため、その移動距離は長い。しかも、水溶液系電池中のプロトンおよび水酸化物イオンの輸率が1に近い値を示すのに対して、リチウム系電池中の電解質中のリチウムイオンの室温での輸率は通常0.5以下であり、電解質中のイオンの移動速度はその濃度拡散に支配される。したがって、電解液と比較して粘度が高い高分子電解質中においては、
リチウムイオンの濃度拡散が著しく遅くなるために、実用的な高率充放電性能が得られないという問題点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
リチウムイオン電池において、炭素系負極活物質を充電した後に、さらに炭素系負極活物質上に金属リチウムを析出させる充電をおこなう電池設計とした場合には、金属リチウムを析出させない場合と比較して高エネルギー密度の電池となる。
【0013】
しかし、有機電解液を使用した従来のリチウムイオン電池においては、炭素系負極活物質上に金属リチウムがデンドライト状に析出するため、金属リチウムと電解液との皮膜形成反応および金属リチウムの負極からの脱落によって、充放電のサイクルに伴って容量が大きく低下したり、デンドライト状の金属リチウムの高い活性度のために電池の安全性が低下するという問題点があった。そのため、従来のリチウムイオン電池においては、サイクル寿命性能および安全性上の問題から、炭素系負極活物質上に金属リチウムの析出を抑制する電池設計となっていたが、その結果炭素系負極活物質の容量を超えて充電することができず、高エネルギー密度電池とはならなかった。
【0014】
また、リチウムイオン伝導性高分子を備えた従来のリチウムイオン電池においては、電解質中のリチウムイオンの拡散速度が電解液の場合と比較して大幅に遅くなるため、充電時に負極にリチウムイオンが十分に供給されずに過電圧が大幅に増大して、炭素系負極活物質が十分に充電される前に金属リチウムがデンドライト状に析出し、充放電のサイクルに伴って容量が大きく低下したり、充電または放電率の増加に伴って著しく放電容量が低下して、二次電池として実用的な性能が得られないという問題点があった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、負極に金属リチウムを用いた従来の電池よりも寿命性能および安全性に優れ、高分子電解質を用いた従来の電池よりも寿命性能および高率充放電性能に優れ、炭素系負極上に金属リチウムを析出させないように設計された従来のリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度となる非水電解質電池を提供するものである。
【0016】
そこで、下記発明によって上記課題を解決するものである。
【0017】
コバルト酸リチウムを含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるコバルト原子に対してモル比で0.15以上4.5以下である、第1の発明になる非水電解質電池。
【0018】
ニッケル酸リチウムを含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるニッケル原子に対してモル比で0.2以上6以下である、第2の発明になる非水電解質電池。
【0019】
ニッケル酸リチウムのニッケル原子の20%以下をコバルト原子に置き換えた化合物を含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるコバルトおよびニッケル原子のモル数の和に対してモル比で0.2以上6以下である、第3の発明になる非水電解質電池。
【0020】
リチウムマンガンスピネルを含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるマンガン原子に対してモル比で0.1以上3以下である、第4の発明になる非水電解質電池。
【0021】
第1、2、3又は4の発明にかかり、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を正極又は負極の少なくとも一方に備えたことを特徴とする、第5の発明になる非水電解質電池。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明による非水電解質電池は、正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子とを備え、かつ充電によって炭素系負極活物質上に金属リチウムが析出するように正極と負極との容量比を設計することによって上記の問題を解決する。金属リチウムは、炭素系負極活物質と比較して体積および重量当たりの容量密度が高いために、本発明による非水電解質電池は、金属リチウムを析出させない場合と比較して高エネルギー密度の電池となる。
【0023】
本発明における有孔性リチウムイオン伝導性高分子とは、孔以外の高分子の部分がリチウムイオン伝導性を示すものである。その高分子材料としては、非水電解液で湿潤または膨潤してゲル状となることによってリチウムイオン伝導性が得られる高分子、またはポリエチレンオキシドなどのように有機溶媒を使用しないでリチウムイオンが移動可能な高分子などが用いられる。リチウムイオン伝導性高分子中は、遊離の電解液と比較してイオンの拡散速度が遅いために、負極活物質層の孔中に有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備えた場合には、電解液のみを使用した場合と比較して負極内のリチウムイオンの移動のし易さが適度に低下する。したがって、負極において電流集中に伴う分極が増大するために、電流集中が生じにくくなって負極全体を均一に充電することができる。結果として、炭素系負極活物質上への金属リチウムの析出がデンドライト状ではなく均一に生じるために、充放電のサイクルによる寿命性能の低下を抑制することができる。加えて、均一に析出した金属リチウムはデンドライト状の析出と比較して活性度が低いために、電池の安全性も向上する。また、本発明による非水電解質電池のリチウムイオン伝導性高分子は有孔性であるために、孔中に含まれた遊離の電解液中をリチウムイオンが高速に拡散することができ、連通孔を有さないリチウムイオン伝導性高分子を用いた従来の電池と異なって、二次電池として実用的な充放電性能が得られる。さらに、炭素系負極を用いずに金属リチウムのみを負極活物質として用いた場合と異なって、炭素系負極上に金属リチウムを析出させた場合には、炭素系負極が充放電の繰り返しによって形状変化しないために優れた寿命性能が得られる。従って、本発明によって、電池の安全性および優れた寿命性能を維持したまま、非常にエネルギー密度が高くて実用的な充放電性能を示す非水電解質電池が得られる。
【0024】
本発明において、電解液で膨潤又は湿潤するリチウムイオン伝導性高分子を正極と負極との間、電極内などに備えることによって、電池への注液量が少ない場合であっても、有孔性リチウムイオン伝導性高分子が電解液を吸収するために、電解液を電極および正極と負極との間の全体に均一に行き渡らせることができる。
【0025】
従って、リチウムイオン伝導性高分子の孔及び、電極の孔などの孔のすべてを占めるのに十分な電解液量よりも少量の電解液を電池に保持させることによって、リチウムイオン伝導性高分子の孔中又は、電極の孔中などに気体の部分が残るようにした場合であっても、電解液を電極および正極と負極との間の全体に行き渡らせて十分な電池性能を得ることができる。従って、釘刺し等の安全性試験をおこなった場合、内部短絡箇所の発熱によってその近辺の電解液が気化した場合であっても、局所的な圧力上昇が大幅に緩和され、発熱連鎖反応の発端となる反応が生じ難くなり、その安全性が向上する。また、電極内にリチウムイオン伝導性高分子を備えた場合には、電極内において高分子の体積分の遊離の電解液を減少させることができる。したがって、発熱連鎖反応のトリガーとなる電解液と活物質との間の反応による発熱量を減少させることができ、発熱連鎖反応を防止することができる。また、電極内にリチウムイオン伝導性高分子を備えた場合には、内部短絡などによって電池が異常発熱した際に、電極内の有孔性高分子が溶解して電解液の粘性が高くなってリチウムイオンの拡散速度が低下する。したがって、
その後の電極反応が抑止されて発熱量が減少し電池の温度上昇が抑えられ、電池の安全性が保たれる。結果として、本発明における非水電解質電池においては、炭素系負極活物質上に金属リチウムが析出している場合であっても、十分な安全性が確保される。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を用いて説明する。
【0027】
(実施例1)下記の手順にしたがって、実施例1の非水電解質電池を製作した。
【0028】
まず、本発明による電池(A)の製作法を記述する。
【0029】
LiCoO70Wt%、アセチレンブラック6Wt%、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)9Wt%、n−メチルピロリドン(NMP)15Wt%を混合したものを幅20mm、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布し、150℃で乾燥してNMPを蒸発させた。以上の操作をアルミニウム箔の両面におこなった後にプレスをして正極とした。
【0030】
グラファイト粉末81Wt%、PVDF9Wt%、NMP10Wt%を混合したものを幅21mm、厚さ14μmのニッケル箔上に塗布し、150℃で乾燥してNMPを蒸発させた。以上の操作をニッケル箔の両面に対しておこなった後に、プレスをおこない負極とした。
【0031】
NMPと分子量約100,000のポリアクリロニトリル(PAN)とを重量比率10:1で混合したものを上記の正極および負極の両面の全面に真空中で塗布して、PANを活物質層の孔中に吸収させた後、80℃で30分間加熱してPANをNMPに溶解させた。この負極を水中に浸漬してNMPを除去することによって、PANを溶媒抽出法による連通孔を有する高分子とした後に、65℃で10時間真空乾燥して水分を除去した。
【0032】
分子量約100,000のPAN10wt%をNMPに溶解したペーストを、ポリプロピレンコートした離型紙上に塗布した後に水中に浸漬させることによって、溶媒抽出法による連通孔を有する厚さ30μm、多孔度50%のPAN膜を製作した。
【0033】
上記のようにして製作した正極と負極とを、間に上記のようにして製作した多孔性PAN膜を介在させて重ねて巻き、高さ47.0mm、幅22.2mm、厚さ7.0mmの角形のステンレスケース中に挿入した。エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を体積比率1:1で混合し、1mol/lのLiPF6を加えた電解液を注液して、本発明による電池(A)を製作した。
【0034】
なお、本発明による電池(A)は、正極および負極の厚さ、および負極の多孔度を変化させることによって、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるCo原子に対するモル比が0.15、0.45、1.5、3および4.5である5種類を製作した。これらの電池の設計容量は、それぞれ1471、1375、1060、799、634mAhとなった。注液によって、正極および負極中、および正極と負極との間のPANは電解液で膨潤し、孔中の電解液のみでなくゲル状となったPANもリチウムイオン伝導性を示す多孔性高分子電解質となった。電解液量は少ない方が電池の安全性が向上するが、少なすぎると正・負極および正極と負極との間の全体に電解液が行き渡らなくなるために十分な充放電性能が得られなくなる。したがって、製作直後の電池において、37mAで4.2Vに達するまでの定電流充電および4.2Vでの10時間の定電圧充電を実施した後に、37mAでの3.0Vまでの定電流放電をおこなった場合の放電容量が750mAh以上となる必要最小量を電解液の注液量とした。なお、多孔性高分子の多孔度は、溶媒であるNMPの量を変えることによって制御できる。上記ステンレスケースには溝を堀り(いわゆる非復帰式の安全弁)、電池の内圧が上昇するとその溝の部分に亀裂が生じて電池内部のガスが放出されるようにし、電池ケースが破裂しないようにした。
【0035】
正極および負極の中にPANを挿入せず、正極と負極との間に多孔性PAN膜の代わりに厚さ30μm、多孔度50%のポリエチレンセパレータを用いたこと以外は、本発明による電池(A)と同様にして、高分子電解質を備えていない従来から公知の電池(B)を製作した。電池(B)においては、有孔性リチウムイオン伝導性高分子を使用していないので、十分な放電容量を得るために、電池(A)よりも多量の電解液が必要となった。また、正極および負極中へのPANの充填時、および正極と負極との間に用いるPANの製膜時において、PANをNMPに溶解させた後に水中に浸漬せずに、そのまま65℃で10時間真空乾燥してNMPを除去して乾式でPANを固化したこと以外は、本発明による電池(A)と同様にして、従来から公知の電池(C)を製作した。電池(C)においては、乾式でPANを固化したことによって、溶媒抽出法を用いた場合と異なり、
連通孔を有さない高分子電解質となった。(B)および(C)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるCo原子に対するモル比が0.15、0.45、1.5、3および4.5である場合に加えて、前記モル比が5および5.5である電池も併せて製作した。
【0036】
本発明による電池(A)および従来から公知である電池(B)および(C)を用いて、500サイクルの寿命試験を実施した。寿命試験においては、630mAで4.2Vに達するまでの定電流充電の後の4.2Vでの2時間の定電圧充電および630mAでの3.0Vまでの定電流放電を1サイクルとした。この寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるCo原子に対するモル比と500サイクルの平均放電容量との関係を図1に示す。平均放電容量とは、500サイクルの充放電試験における放電容量の和を500で割った値である。図1から、本発明による電池(A)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるCo原子に対するモル比が0.15から4.5の範囲内のすべての場合において、従来から公知である電池(B)および(C)の平均放電容量の最高値よりも高い平均放電容量が得られていることがわかる。この結果から、本発明による電池(A)は従来から公知である電池(B)および(C)と比較して、著しくサイクル寿命性能に優れることがわかる。
【0037】
負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるCo原子に対するモル比を小さくすることによって容量密度の高い電池設計が可能となるが、充電時に炭素系負極上に析出する金属リチウム量が増加するために、サイクルに伴う放電容量の低下率が高くなる。本発明における電池(A)および従来から公知である電池(B)および(C)における寿命試験において、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるCo原子に対するモル比が大きすぎても、また小さすぎても平均放電容量が低下するのは、上記の理由によるものである。
【0038】
上記の寿命試験とは別に、本発明による電池(A)および従来から公知である電池(B)を、630mAの定電流で4.2Vに達するまで充電してから4.2Vの定電圧で2時間の定電圧充電をおこなった後に、3mm径の釘を電池に刺して貫通させた場合の安全性試験をおこなった。表1にその結果を示す。この表の結果から、本発明による電池(A)は、従来から公知である電池(B)と比べて安全性に優れていることがわかる。
【0039】
【表1】
Figure 0003566858
コバルト酸リチウムをリチウムイオン二次電池の正極活物質に使用する場合、良好な寿命性能を得るために4.35V vs.Li/Liで充電を終了させると、充電終了時の正極活物質の組成はLi0.25CoOとなり、その場合の正極活物質の利用率は75%となる。グラファイト負極の理論的充電状態はLiCであり、その炭素原子数に対するリチウムイオン数の比は0.166である。しかし、実用的な充放電率におけるグラファイト負極の実容量は理論容量よりも少なくなるために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数が計算上で0.166に達するまで充電した場合には、実際には負極上に金属リチウムが析出する。
【0040】
従って、従来の非水系電解液を用いた電池においては、寿命性能および安全性上の問題から負極に金属リチウムが析出することを防止するために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比が計算上で0.166未満の範囲内で充放電する必要があった。そのために、負極活物質中に含まれるC原子を正極活物質中に含まれるCo原子に対してモル比で4.5よりも多くする必要があった。
【0041】
そのC原子のCo原子に対するモル比(4.5)は次式によって計算される。
【0042】
/R=0.75/0.166=4.5
ここで、Rは寿命性能および安全性に問題のあった従来の電池(B)における炭素系負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比の下限である。Rは、正極活物質において吸蔵および放出されるリチウムイオン数のCo原子数に対する比において、良好な寿命性能が得られる上限である。本発明においては、上記モル比が4.5以下においても充放電サイクルによる寿命性能および安全性に優れる、エネルギー密度の高い電池を得ることができる。
【0043】
(実施例2)正極活物質として、LiCoOの代わりにLiNiOを用いたこと以外は、実施例1の本発明による電池(A)と同様にして、実施例2の本発明による電池(D)を製作した。なお、電池(D)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるNi原子に対するモル比が0.2、0.6、2、4および6である5種類を製作した。これらの電池の設計容量は、それぞれ1633、1526、1177、887、704mAhとなった。また、正極および負極の中にPANを挿入せず、正極と負極との間に多孔性PAN膜の代わりに厚さ30μm、多孔度50%のポリエチレンセパレータを用いたこと以外は、本発明による電池(D)と同様にして、高分子電解質を備えていない従来から公知の電池(E)を製作した。電池(E)においては、有孔性リチウムイオン伝導性高分子を使用していないので、十分な放電容量を得るために、電池(D)よりも多量の電解液が必要となった。また、正極および負極中へのPANの充填時、および正極と負極との間に用いるPANの製膜時において、PANをNMPに溶解させた後に水中に浸漬せずに、そのまま65℃で10時間真空乾燥してNMPを除去して乾式でPANを固化したこと以外は、本発明による電池(D)と同様にして、従来から公知の電池(F)を製作した。電池(F)においては、乾式でPANを固化したことによって、溶媒抽出法を用いた場合と異なり、連通孔を有さない高分子電解質となった。(E)および(F)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるNi原子に対するモル比が0.2、0.6、2、4および6である場合に加えて、前記モル比が6.5および7である電池も併せて製作した。
【0044】
本発明による電池(D)および従来から公知である電池(E)および(F)を用いて、500サイクルの寿命試験を実施した。寿命試験においては、700mAで4.2Vに達するまでの定電流充電の後の4.2Vでの2時間の定電圧充電および700mAでの3.0Vまでの定電流放電を1サイクルとした。この寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるNi原子に対するモル比と500サイクルの平均放電容量との関係を図2に示す。平均放電容量とは、500サイクルの充放電試験における放電容量の和を500で割った値である。図2から、本発明による電池(D)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるNi原子に対するモル比が0.2から6の範囲内のすべての場合において、従来から公知である電池(E)および(F)の平均放電容量の最高値よりも高い平均放電容量が得られていることがわかる。この結果から、本発明による電池(D)は従来から公知である電池(E)および(F)と比較して、著しくサイクル寿命性能に優れることがわかる。
【0045】
負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるNi原子に対するモル比を小さくすることによって容量密度の高い電池設計が可能となるが、充電時に炭素系負極上に析出する金属リチウム量が増加するために、サイクルに伴う放電容量の低下率が高くなる。本発明における電池(D)および従来から公知である電池(E)および(F)における寿命試験において、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるNi原子に対するモル比が大きすぎても、また小さすぎても平均放電容量が低下するのは、上記の理由によるものである。
【0046】
上記の寿命試験とは別に、本発明による電池(D)および従来から公知である電池(E)を、700mAの定電流で4.2Vに達するまで充電してから4.2Vの定電圧で2時間の定電圧充電をおこなった後に、3mm径の釘を電池に刺して貫通させた場合の安全性試験をおこなった。表2にその結果を示す。この表の結果から、本発明による電池(D)は、従来から公知である電池(E)と比べて安全性に優れていることがわかる。
【0047】
【表2】
Figure 0003566858
ニッケル酸リチウムをリチウムイオン二次電池の正極活物質に使用する場合、良好な寿命性能を維持させた場合の正極活物質の使用可能な率の極限値は100%である。グラファイト負極の理論的充電状態はLiC6であり、その炭素原子数に対するリチウムイオン数の比は0.166である。しかし、実用的な充放電率におけるグラファイト負極の実容量は理論容量よりも少なくなるために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数が計算上で0.166に達するまで充電した場合には、実際には負極上に金属リチウムが析出する。従って、従来の非水系電解液を用いた電池においては、寿命性能および安全性上の問題から負極に金属リチウムが析出することを防止するために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比が計算上で0.166未満の範囲内で充放電する必要があった。そのために、負極活物質中に含まれるC原子を正極活物質中に含まれるNi原子に対してモル比で6よりも多くする必要があった。そのC原子のNi原子に対するモル比(6)は次式によって計算される。
【0048】
/R=1/0.166=6.0
ここで、Rは寿命性能および安全性に問題のあった従来の電池(E)における炭素系負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比の下限である。Rは、正極活物質において吸蔵および放出されるリチウムイオン数のNi原子数に対する比において、良好な寿命性能が得られる上限である。本発明においては、上記モル比が6以下においても充放電サイクルによる寿命性能および安全性に優れる、エネルギー密度の高い電池を得ることができる。
【0049】
(実施例3)
正極活物質として、LiCoOの代わりにLiNi0.9Co0.1を用いたこと以外は、実施例1の本発明による電池(A)と同様にして、実施例3の本発明による電池(G)を製作した。なお、電池(G)においては、負極活物質中に含まれるC原子のモル数の正極活物質中に含まれるCoおよびNi原子のモル数の和に対する比が0.2、0.6、2、4および6である5種類を製作した。これらの電池の設計容量は、それぞれ1633、1526、1177、887、704mAhとなった。また、正極および負極の中にPANを挿入せず、正極と負極との間に多孔性PAN膜の代わりに厚さ30μm、多孔度50%のポリエチレンセパレータを用いたこと以外は、本発明による電池(G)と同様にして、高分子電解質を備えていない従来から公知の電池(H)を製作した。電池(H)においては、有孔性リチウムイオン伝導性高分子を使用していないので、十分な放電容量を得るために、電池(G)よりも多量の電解液が必要となった。また、正極および負極中へのPANの充填時、および正極と負極との間に用いるPANの製膜時において、PANをNMPに溶解させた後に水中に浸漬せずに、そのまま65℃で10時間真空乾燥してNMPを除去して乾式でPANを固化したこと以外は、本発明による電池(G)と同様にして、従来から公知の電池(I)を製作した。電池(I)においては、乾式でPANを固化したことによって、溶媒抽出法を用いた場合と異なり、連通孔を有さない高分子電解質となった。(H)および(I)においては、負極活物質中に含まれるC原子のモル数の正極活物質中に含まれるCoおよびNi原子のモル数の和に対する比が0.2、0.6、2、4および6である場合に加えて、前記モル比が6.5および7である電池も併せて製作した。
【0050】
本発明による電池(G)および従来から公知である電池(H)および(I)を用いて、500サイクルの寿命試験を実施した。寿命試験においては、700mAで4.2Vに達するまでの定電流充電の後の4.2Vでの2時間の定電圧充電および700mAでの3.0Vまでの定電流放電を1サイクルとした。この寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれるC原子のモル数の正極活物質中に含まれるCoおよびNi原子のモル数の和に対する比と500サイクルの平均放電容量との関係を図3に示す。平均放電容量とは、500サイクルの充放電試験における放電容量の和を500で割った値である。図3から、本発明による電池(G)においては、負極活物質中に含まれるC原子のモル数の正極活物質中に含まれるCoおよびNi原子のモル数の和に対する比が0.2から6の範囲内のすべての場合において、従来から公知である電池(H)および(I)の平均放電容量の最高値よりも高い平均放電容量が得られていることがわかる。この結果から、本発明による電池(G)は従来から公知である電池(H)および(I)と比較して、著しくサイクル寿命性能に優れることがわかる。
【0051】
負極活物質中に含まれるC原子のモル数の正極活物質中に含まれるCoおよびNi原子のモル数の和に対する比を小さくすることによって容量密度の高い電池設計が可能となるが、充電時に炭素系負極上に析出する金属リチウム量が増加するために、サイクルに伴う放電容量の低下率が高くなる。本発明における電池(G)および従来から公知である電池(H)および(I)における寿命試験において、負極活物質中に含まれるC原子のモル数の正極活物質中に含まれるCoおよびNi原子のモル数の和に対する比が大きすぎても、また小さすぎても平均放電容量が低下するのは、上記の理由によるものである。
【0052】
上記の寿命試験とは別に、本発明による電池(G)および従来から公知である電池(H)を、700mAの定電流で4.2Vに達するまで充電してから4.2Vの定電圧で2時間の定電圧充電をおこなった後に、3mm径の釘を電池に刺して貫通させた場合の安全性試験をおこなった。表3にその結果を示す。この表の結果から、本発明による電池(G)は、従来から公知である電池(H)と比べて安全性に優れていることがわかる。
【0053】
【表3】
Figure 0003566858
ニッケル酸リチウムのNi原子の20%以下をCo原子に置き換えた正極活物質をリチウムイオン二次電池の正極活物質に使用する場合、良好な寿命性能を維持させた場合の正極活物質の使用可能な率の極限値は100%である。グラファイト負極の理論的充電状態はLiC6であり、その炭素原子数に対するリチウムイオン数の比は0.166である。しかし、実用的な充放電率におけるグラファイト負極の実容量は理論容量よりも少なくなるために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数が計算上で0.166に達するまで充電した場合には、実際には負極上に金属リチウムが析出する。従って、従来の非水系電解液を用いた電池においては、寿命性能および安全性上の問題から負極に金属リチウムが析出することを防止するために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比が計算上で0.166未満の範囲内で充放電する必要があった。そのために、負極活物質中に含まれるC原子のモル数を正極活物質中に含まれるCoおよびNi原子のモル数の和に対する比で6よりも多くする必要があった。そのC原子のモル数のCoおよびNi原子のモル数の和に対する比(6)は次式によって計算される。
【0054】
/R=1/0.166=6.0
ここで、Rは寿命性能および安全性に問題のあった従来の電池(H)における炭素系負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比の下限である。Rは、正極活物質において吸蔵および放出されるリチウムイオン数のCoおよびNi原子数の和に対する比において、良好な寿命性能が得られる上限である。本発明においては、上記モル比が6以下においても充放電サイクルによる寿命性能および安全性に優れる、エネルギー密度の高い電池を得ることができる。
【0055】
なお、上記の実施例3においては、正極活物質としてLiNi0.9Co0.1を用いた場合の結果について記述しているが、これ以外にLiNi0.99Co0.01を用いた場合、さらにLiNi0.8Co0.2を用いた場合においても実施例3と同じ電池製作および試験を実施した結果、同様の結果となった。
【0056】
(実施例4)正極活物質として、LiCoOの代わりにLiMnを用いたこと以外は、実施例1の本発明による電池(A)と同様にして、実施例4の本発明による電池(J)を製作した。なお、電池(J)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるMn原子に対するモル比が0.1、0.3、1、2および3である5種類を製作した。これらの電池の設計容量は、それぞれ1470、1373、1059、634mAhとなった。また、正極および負極の中にPANを挿入せず、正極と負極との間に多孔性PAN膜の代わりに厚さ30μm、多孔度50%のポリエチレンセパレータを用いたこと以外は、本発明による電池(J)と同様にして、高分子電解質を備えていない従来から公知の電池(K)を製作した。電池(K)においては、有孔性リチウムイオン伝導性高分子を使用していないので、十分な放電容量を得るために、電池(J)よりも多量の電解液が必要となった。また、正極および負極中へのPANの充填時、および正極と負極との間に用いるPANの製膜時において、PANをNMPに溶解させた後に水中に浸漬せずに、そのまま65℃で10時間真空乾燥してNMPを除去して乾式でPANを固化したこと以外は、本発明による電池(J)と同様にして、従来から公知の電池(L)を製作した。電池(L)においては、乾式でPANを固化したことによって、溶媒抽出法を用いた場合と異なり、連通孔を有さない高分子電解質となった。(K)および(L)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるMn原子に対するモル比が0.1、0.3、1、2および3である場合に加えて、前記モル比が3.25および3.5である電池も併せて製作した。
【0057】
本発明による電池(J)および従来から公知である電池(K)および(L)を用いて、500サイクルの寿命試験を実施した。寿命試験においては、630mAで4.2Vに達するまでの定電流充電の後の4.2Vでの2時間の定電圧充電および630mAでの3.0Vまでの定電流放電を1サイクルとした。この寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるMn原子に対するモル比と500サイクルの平均放電容量との関係を図4に示す。平均放電容量とは、500サイクルの充放電試験における放電容量の和を500で割った値である。図4から、本発明による電池(J)においては、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるMn原子に対するモル比が0.1から3の範囲内のすべての場合において、従来から公知である電池(K)および(L)の平均放電容量の最高値よりも高い平均放電容量が得られていることがわかる。この結果から、本発明による電池(J)は従来から公知である電池(K)および(L)と比較して、著しくサイクル寿命性能に優れることがわかる。
【0058】
負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるMn原子に対するモル比を小さくすることによって容量密度の高い電池設計が可能となるが、充電時に炭素系負極上に析出する金属リチウム量が増加するために、サイクルに伴う放電容量の低下率が高くなる。本発明における電池(J)および従来から公知である電池(K)および(L)における寿命試験において、負極活物質中に含まれるC原子の正極活物質中に含まれるMn原子に対するモル比が大きすぎても、また小さすぎても平均放電容量が低下するのは、上記の理由によるものである。
【0059】
上記の寿命試験とは別に、本発明による電池(J)および従来から公知である電池(K)を、700mAの定電流で4.2Vに達するまで充電してから4.2Vの定電圧で2時間の定電圧充電をおこなった後に、3mm径の釘を電池に刺して貫通させた場合の安全性試験をおこなった。表4にその結果を示す。この表の結果から、本発明による電池(J)は、従来から公知である電池(K)と比べて安全性に優れていることがわかる。
【0060】
【表4】
Figure 0003566858
リチウムマンガンスピネルをリチウムイオン二次電池の正極活物質に使用する場合、良好な寿命性能を維持させた場合の正極活物質の使用可能な率の極限値は100%である。グラファイト負極の理論的充電状態はLiCであり、その炭素原子数に対するリチウムイオン数の比は0.166である。しかし、実用的な充放電率におけるグラファイト負極の実容量は理論容量よりも少なくなるために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数が計算上で0.166に達するまで充電した場合には、実際には負極上に金属リチウムが析出する。従って、従来の非水系電解液を用いた電池においては、寿命性能および安全性上の問題から負極に金属リチウムが析出することを防止するために、負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比が計算上で0.166未満の範囲内で充放電する必要があった。そのために、負極活物質中に含まれるC原子を正極活物質中に含まれるMn原子に対してモル比で3よりも多くする必要があった。そのC原子のMn原子に対するモル比(3)は次式によって計算される。
【0061】
/R=0.5/0.166=3.0
ここで、Rは安全性に問題のあった従来の電池(K)における炭素系負極活物質の炭素原子数に対するリチウムイオン数の比の下限である。Rは、正極活物質において吸蔵および放出されるリチウムイオン数のMn原子数に対する比において、良好な寿命性能が得られる上限である。本発明においては、上記モル比が3以下においても充放電サイクルによる寿命性能および安全性に優れる、エネルギー密度の高い電池を得ることができる。
【0062】
本発明による電池(A)、(D)、(G)および(J)においては、炭素系負極活物質としてグラファイトを使用しているが、これに限定されるものではなく、本発明における炭素系負極活物質は、低結晶性カーボンであっても、ポリアセン系活物質であってもよい。低結晶性カーボンおよびポリアセン系活物質においては、低い充電および放電率では炭素原子数に対するリチウムイオン数の比の変化量が0.166を越えて充放電することが可能である。しかし、二次電池として実用的な充電および放電率においては、充放電における炭素原子数に対するリチウムイオン数の比の変化量はグラファイトと同等あるいはそれ以下である。したがって、グラファイトの代わりに低結晶性カーボンまたはポリアセン系活物質を用いた場合であっても、実施例1、2、3および4と同じ結果が得られる。
【0063】
本発明による電池(A)、(D)、(G)および(J)においては、有孔性リチウムイオン伝導性高分子に用いる高分子材料としてはポリアクリロニトリルを使用したが、これ以外にもポリ塩化ビニル、ポリビニリデンフルオライドまたは重量比88:12のビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーを用いた場合にも実施例1、2、3および4と同様の結果となった。なお、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライドおよびポリ塩化ビニルはホモポリマーである必要はなく、前記の各ポリマー成分がモル比で50%以上であるコポリマーをも含むものである。
【0064】
本発明による電池(A)、(D)、(G)および(J)においては、高分子電解質中の高分子としてポリアクリロニトリルを使用しているが、その他に、次のような高分子を単独で、あるいは混合して用いてもよい:ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレンおよびこれらの誘導体。また、上記高分子を構成する各種モノマーを共重合させた高分子を用いてもよい。
【0065】
本発明による電池(A)、(D)、(G)および(J)における有孔性リチウムイオン伝導性高分子では、リチウムイオン伝導性を向上させるために高分子中に含浸させる非水系電解液として、またリチウムイオン伝導性高分子の孔中に含有させる電解液として、ECとDMCとの混合溶液を用いているが、その他に次の溶媒を使用してもよい:エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート等の極性溶媒およびこれらの混合物。リチウムイオン伝導性高分子において、高分子中に含有させる電解液と、孔中に含有させる電解液とが異なっていてもよい。
【0066】
本発明による電池(A)、(D)、(G)および(J)においては、リチウムイオン伝導性高分子中および非水系電解液に含有させるリチウム塩としてLiPFを使用しているが、その他に、LiBF、LiAsF、LiClO、LiSCN、LiI、LiCFSO、LiCl、LiBr、LiCFCO等のリチウム塩およびこれらの混合物を用いてもよい。イオン伝導性高分子中と非水系電解液中で異なる塩を用いてもよい。
【0067】
【発明の効果】
本発明なる非水電解質電池においては、炭素系材料を含む負極上に金属リチウムが析出するため、高エネルギー密度電池が得られる。また、負極中に孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備えることにより、負極上への金属リチウムの析出がデンドライト状ではなく均一に生ずるために、充放電サイクルによる容量の劣化を抑制することができ、また、均一に析出したリチウムの活性度が小さく、電池の安全性を向上させることができる。さらに、炭素系材料を含む負極上にリチウムを析出させると、充放電サイクルによる負極の形状変化がなく、そのために優れた寿命性能が得られる。
【0068】
また、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子が電解液を吸収するため、電解液量が少ない場合でも、電解液を正極や負極あるいは両電極間に均一に行き渡らせ、優れた電池特性を示す。さらに、電極内に孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備えた場合、内部短絡等で異常発熱が起こった場合、電極内の有孔性リチウムイオン伝導性高分子が溶解して電解液の粘度が高くなり、リチウムイオンの拡散速度が低下し、反応が抑制されて、電池の安全性が保たれる。
【0069】
以上述べたように、本発明によって電池の安全性および優れた寿命性能を維持したまま、非常にエネルギー密度が高くて実用的な充放電性能を示す非水電解質電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる電池(A)および従来から公知である(B)および(C)の寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれる炭素原子の正極活物質中に含まれるコバルト原子に対するモル比と500サイクルの平均放電容量との関係を示す図。
【図2】本発明になる電池(D)および従来から公知である(E)および(F)の寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれる炭素原子の正極活物質中に含まれるニッケル原子に対するモル比と500サイクルの平均放電容量との関係を示す図。
【図3】本発明による電池(G)および従来から公知である(H)および(I)の寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれる炭素原子のモル数の正極活物質中に含まれるコバルトおよびニッケル原子のモル数の和に対する比と500サイクルの平均放電容量との関係を示す図。
【図4】本発明による電池(J)および従来から公知である(K)および(L)の寿命試験における、各電池の負極活物質中に含まれる炭素原子の正極活物質中に含まれるマンガン原子に対するモル比と500サイクルの平均放電容量との関係を示す図

Claims (5)

  1. コバルト酸リチウムを含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるコバルト原子に対してモル比で0.15以上4.5以下であることを特徴とする、非水電解質電池。
  2. ニッケル酸リチウムを含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるニッケル原子に対してモル比で0.2以上6以下であることを特徴とする、非水電解質電池。
  3. ニッケル酸リチウムのニッケル原子の20%以下をコバルト原子に置き換えた化合物を含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるコバルトおよびニッケル原子のモル数の和に対してモル比で0.2以上6以下であることを特徴とする、非水電解質電池。
  4. リチウムマンガンスピネルを含む正極と、炭素系材料を含む負極と、孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を備え、負極に含まれる炭素原子が正極に含まれるマンガン原子に対してモル比で0.1以上3以下であることを特徴とする、非水電解質電池。
  5. 孔内に電解液を含む有孔性リチウムイオン伝導性高分子を正極又は負極の少なくとも一方に備えたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の非水電解質電池。
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