JP3562208B2 - 助手席乗員保護装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車など車両に備えられたエアバック装置やシートベルト装置などの乗員保護装置に関し、特に助手席の乗員保護装置の作動制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両などの事故時において、乗員が車両内部の構造体にぶつかることを防止し、乗員を保護する乗員保護装置が実用に供されている。乗員保護装置は、具体的にはエアバック装置、シートベルト装置などがある。エアバック装置は、車両が衝突したときに、乗員と車両内部の構造体の間にエアバッグを展開し、これがクッションとなって乗員を受け止め、乗員が前記の構造体に衝突することを防止するものである。また、シートベルト装置は乗員を座席に固定し、乗員が前記構造体に衝突することを防止するものである。特に、近年車両衝突時にシートベルトを所定の長さ引き込んで、より強固に乗員を座席に固定するプリテンショナ付きのシートベルト装置も実用に供されている。また、これらの乗員保護装置が、運転席のみならず助手席にも装備された車両が実用に供されている。
【0003】
特開平5−270351号公報には、エアバック装置が開示されており、特に、この装置は、乗員の着座位置に応じた最適なタイミングでエアバッグを展開するものである。そして、乗員の着座位置は、乗員の前方のダッシュボードに距離センサを設け、センサから乗員までの距離を測定することにより検出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の助手席乗員保護装置は、ここに乗員が着席していない場合であっても、車両衝突時には実際に作動する。この作動は無意味な作動であり、修理にあたっては、作動した装置の交換はもちろん、助手席用エアバッグが納められたダッシュボードなどの部品も交換する必要が生じ、修理費が増加するという問題があった。
【0005】
前記公報に記載された装置のように、ダッシュボードから乗員までの距離に基づき乗員の存在を検出しようとしても、助手席に荷物が置いてあった場合などこれを乗員と誤検出する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、助手席の乗員の有無に応じて、適切に作動する助手席乗員保護装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の助手席乗員保護装置は、所定条件下において、車両内部構造体への衝突から乗員を保護する保護手段と、車両前後方向における助手席乗員の動きを検出する動き検出手段と、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、前記助手席乗員の動きと前記車両の加速度の相関値を算出する相関値算出手段と、車両がブレーキにより減速していることを判断し、このときの前記動き検出手段の検出値と前記相関値に基づき助手席乗員の有無を判定する乗員有無判定手段と、事前に前記乗員有無判定手段により乗員有りが判定されている場合に、助手席の前記保護手段を作動を制御させる作動制御部と、を有している。また、助手席乗員の有無は、ブレーキ動作に関わらず、前記加速度検出手段の検出値が第1所定値以上の減速度を示したときに、判定するようにすることができる。
【0008】
車両に加速度が生じれば、この加速度により生じる慣性力によって乗員は動くので、この加速度と乗員の動きには相関がある。この相関に基づき助手席に乗員が着席しているか否かが判断できる。乗員が着席していない場合は、助手席用の乗員保護手段の作動を行わないようにすれば、必要ないときに装置が作動することがない。
【0009】
前記保護手段は、車両衝突時に所定の動作を行い、乗員の動きを抑制し、乗員の車両の内部構造体への衝突を防止するものである。具体的には、衝突時に、乗員前方に展開されて、乗員がステアリングポストやダッシュボードに衝突することを防止するエアバッグ装置や、シートベルトを所定長さ引き込んで、乗員を席に強固に固定するプリテンショナ付きシートベルト装置などが前記保護手段に含まれる。本発明は、これらの複数の保護手段が単独で用いられた乗員保護装置についても、また複数種を組み合わせて用いられた乗員保護装置についても適用可能である。
【0010】
前記動き検出手段は、助手席乗員の動き、特に車両前後方向に関する動きを検出するものである。具体的には、車室内の所定の位置に設けられ、助手席乗員までの距離を検出する距離センサと、前記距離の変化に基づき助手席乗員の動きを算出する動き算出部を有するものとすることができる。単に、距離センサの検出した距離に基づき乗員の有無を判定するのではなく、距離の変化すなわち乗員の動きによって判定することで、たとえば助手席上に置かれた大きな荷物などと乗員を区別することができる。
【0011】
相関値算出手段は、車両加速度と車両前後方向の乗員の動きの相関値を算出する。車両に加速度が発生すると、車両内部の物体には慣性力が働く。たとえば、ブレーキ操作が行われたとき、車両進行方向に対し負の加速度(以下、減速度と記す)が発生し、これによって乗員には前方向に慣性力が作用する。この慣性力によって乗員が前方に移動する。このように、車両加速度と乗員の動きには相関があるので、この相関の特徴をあらかじめ調べておくことによって、乗員の有無を判定することができる。この判定を行うのが乗員有無判定手段である。前述のように、乗員が着席しているときには、ブレーキによって減速度が生じたときなど乗員がこれに応じた動きをするので、このような減速度と相関のある動きが検出された場合は、乗員が着席していると判定できる。また、乗員が着席していない場合は、動き検出手段は座席の動きを検出することになる。座席は、車両に強固に固定されているので、慣性力による動きは生じない。したがって、ブレーキによる減速度と相関がなく、このような場合には、乗員が着席していないことを判定することができる。
【0012】
特に、車両加速度と乗員の動きにおいて相関が強いのは、ブレーキ操作による減速時であり、加速度と乗員の動きの相関をとるのは、所定量のブレーキ操作が行われたとき、または所定の減速度が発生したときなどに限定することも好ましい。
【0013】
以上の判定に基づき、保護手段の作動を制御すれば、保護すべき乗員がいない場合に作動することがなくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の概略構成図である。車体10の助手席12に対向するダッシュボード14内には、エアバッグおよびこれを展開させるためのインフレータを含むエアバッグ本体16が備えられている。また、エアバッグの展開はエアバッグECU18により制御される。また、車体10の天井前端には、助手席12に着席した乗員20までの距離を測定する距離センサ22が設置されている。距離センサ22は、本実施形態においては、赤外線ビーム24を照射し、測定対象物からの反射光26がセンサ22に到達するまでの時間に基づき距離を検出するものである。このようなセンサの場合、その設置位置は、乗員20の車両前後方向の位置を検出可能な位置に設けられる必要があり、好ましくは助手席の中心線を通る平面内に設けることが好ましい。これは、後述するように、距離センサ22により測定された距離の変化に基づき乗員の動きを検出するため、距離変化の方向と検出すべき乗員の動きの方向、すなわち車両前後方向が一致することが、精度上望ましいからである。したがって、前述の天井前端のほかに、ダッシュボード14に設けることも可能である。この距離センサ22の出力は、前記エアバッグECU18に送出される。
【0016】
エアバッグECU18には、車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサ28が備えられている。さらに、エアバッグECU18には、前記距離センサ22の出力と加速度センサ28の出力に基づき、あらかじめ記憶されたプログラムに従ってインフレータを作動させ、エアバッグを図中一点鎖線のように展開させるマイクロコンピュータ30が備えられている。
【0017】
図2には、エアバッグの作動を制御するエアバッグECU18の構成ブロック図が示されている。エアバッグECU18には、前述のように加速度センサ28が備えられ、また、あらかじめ記憶されたプログラムに従って以下説明するような動作を行うマイクロコンピュータ30が備えられている。
【0018】
距離センサ22は、所定のサンプリング周期で乗員20との距離を測定し、この結果をマイクロコンピュータ30の動き算出部32に送出する。動き算出部32は、距離センサ22の前回と今回の測定結果から、この間の移動量すなわち乗員の移動速度を検出する。したがって、距離センサ22と動き算出部32が、助手席乗員の前後方向の動きを検出する動き検出手段として機能する。
【0019】
動き算出部32の出力と加速度センサ28の出力は、相関値算出部34に送出され、ここで所定の演算が行われ相関値が算出される。本実施形態においては、相関値は、動き算出部32により算出された乗員の移動速度と、加速度センサ28により検出された車両の減速度との積として算出される。
【0020】
乗員有無判定部36は、この算出された相関値と前記動き算出部の算出結果に基づき乗員の有無を判定する。もし乗員がいなければ、座席は移動しないので、動き算出部32の算出値は0となり、これが所定回数続けて検出されれば、乗員がいないと判断する。また、動き算出値が0ではなく、前記算出された相関値があらかじめ定められた所定値以上となった場合に、乗員がいると判断する。以上の場合以外は、乗員の有無の判断を保留し、前回までの判断結果を維持する。また、本実施形態においては、この判断は、車両の加速度と乗員の動きの相関が比較的強く現れるブレーキによる減速時になされ、これによって検出精度の向上を図っている。ブレーキによる減速時であることを判定するためには、たとえばブレーキランプの点灯をもって判定することができ、また、ブレーキのマスタシリンダ圧力が所定値以上となったことをもって判定することもできる。マスタシリンダ圧の所定値は、あらかじめ調査を行い乗員の動きと減速度が比較的強い相関を示す十分大きな値に設定することが好ましい。また、直接減速度を測定して、この減速度が所定値以上の場合に上記の判定を行うようにすることもできる。この所定値も、前記と同様に減速度と乗員の動きが比較的強い相関を示す値に設定されることが望ましい。
【0021】
作動制御部38は、乗員の有無および減速度に基づきエアバッグの展開の制御を行う。すなわち、加速度センサ28により検出された減速度が所定値以上となり、かつ乗員有無判定部36において乗員有りが判定されている場合に、当該座席のエアバッグの展開をエアバッグ本体16に対し指令する。この指令に基づきエアバッグ本体16は、インフレータを作動させエアバッグを展開させる。これによって、衝突時などの大きな減速度が発生する場合に、この減速度による慣性力によって前方に大きく移動させられる乗員を受け止め、ウインドシールドやダッシュボードへの衝突を回避することができる。
【0022】
以上の動き算出部32、相関値算出部34、乗員有無判定部36および作動制御部38は、実際にはマイクロコンピュータ30そのものであり、各部の機能は、マイクロコンピュータ30があらかじめ記憶されたプログラムに従い動作することで達成される。
【0023】
図3には、本実施形態の制御フローチャートが示されている。車両の電装品の電源がオンされると初期チェックが行われる(S100)。ブレーキが所定量操作されると、距離センサ22から送信された当該センサ22と乗員との距離Sが、前回の距離と比較され、距離の変化の有無が判定される(S104)。距離の変化がない場合、この変化のない状態が所定回数継続しているかが判断され(S106)、所定回数継続している場合助手席(P席)に乗員がいることを示す乗員有りフラグをクリアする(S108)。一方、ステップS106で、所定回数に達していないと判断された場合は、乗員有りフラグを前回までの状態に維持する。
【0024】
ステップS104にて、距離Sに変化があると判断されると、この距離の変化量ΔSと加速度センサにより検出された加速度αの積が、ふたつの量の相関値Xとして算出され、これが所定のしきい値X0と比較される(S110)。相関値Xがしきい値X0以上である場合には、助手席に乗員がいると判断し、乗員有りフラグをセットする(S112)。一方、ステップS110で相関値Xがしきい値X0未満であると判断されると、乗員有りフラグを前回までの状態に維持する。
【0025】
続いて、加速度αとしきい値α0が比較され(S114)、加速度αがしきい値α0以上であれば、まず運転席(D席)のエアバッグに展開指令がなされる(S116)。次に、助手席の乗員有りフラグが立っていれば(S118)、助手席のエアバッグに展開指令がなされる(S120)。ステップS114にて、検出された加速度αがしきい値α0未満であると判断されると、ステップS102に戻り、前述のフローが再び実行される。また、ステップS118で助手席に乗員がいないと判断された場合は、助手席についてはエアバッグの展開をしないで終了する。
【0026】
以上本実施形態においては、乗員保護手段として乗員の正面に展開するエアバッグ装置に関して説明したが、乗員の側方に展開する、いわゆるサイドエアバッグ装置などにも適用できる。さらに、車両衝突時にシートベルトを所定量引き込み、乗員の動きを拘束するプリテンショナ付きのシートベルト装置にも同様に適用することが可能である。
【0027】
また、本実施形態においては、乗員の動き検出手段として、赤外線の到達時間に基づき距離を測定する距離センサを用いたが、公知の他の距離センサを用いることも可能である。たとえば、三角測量の原理に基づき距離を測定するものなどを用いることができる。また、距離センサではなく、座席上の画像に基づき乗員の動きを検出するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の概略構成図である。
【図2】本実施形態のエアバッグの制御するエアバッグECUの構成ブロック図である。
【図3】本実施形態の制御フローチャートである。
【符号の説明】
10 車体、12 助手席、18 エアバッグECU、22 距離センサ、28 加速度センサ、30 マイクロコンピュータ、32 動き算出部(マイクロコンピュータ)、34 相関値算出部(マイクロコンピュータ)、36 乗員有無判定部(マイクロコンピュータ)、38 作動制御部(マイクロコンピュータ)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車など車両に備えられたエアバック装置やシートベルト装置などの乗員保護装置に関し、特に助手席の乗員保護装置の作動制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両などの事故時において、乗員が車両内部の構造体にぶつかることを防止し、乗員を保護する乗員保護装置が実用に供されている。乗員保護装置は、具体的にはエアバック装置、シートベルト装置などがある。エアバック装置は、車両が衝突したときに、乗員と車両内部の構造体の間にエアバッグを展開し、これがクッションとなって乗員を受け止め、乗員が前記の構造体に衝突することを防止するものである。また、シートベルト装置は乗員を座席に固定し、乗員が前記構造体に衝突することを防止するものである。特に、近年車両衝突時にシートベルトを所定の長さ引き込んで、より強固に乗員を座席に固定するプリテンショナ付きのシートベルト装置も実用に供されている。また、これらの乗員保護装置が、運転席のみならず助手席にも装備された車両が実用に供されている。
【0003】
特開平5−270351号公報には、エアバック装置が開示されており、特に、この装置は、乗員の着座位置に応じた最適なタイミングでエアバッグを展開するものである。そして、乗員の着座位置は、乗員の前方のダッシュボードに距離センサを設け、センサから乗員までの距離を測定することにより検出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の助手席乗員保護装置は、ここに乗員が着席していない場合であっても、車両衝突時には実際に作動する。この作動は無意味な作動であり、修理にあたっては、作動した装置の交換はもちろん、助手席用エアバッグが納められたダッシュボードなどの部品も交換する必要が生じ、修理費が増加するという問題があった。
【0005】
前記公報に記載された装置のように、ダッシュボードから乗員までの距離に基づき乗員の存在を検出しようとしても、助手席に荷物が置いてあった場合などこれを乗員と誤検出する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、助手席の乗員の有無に応じて、適切に作動する助手席乗員保護装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の助手席乗員保護装置は、所定条件下において、車両内部構造体への衝突から乗員を保護する保護手段と、車両前後方向における助手席乗員の動きを検出する動き検出手段と、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、前記助手席乗員の動きと前記車両の加速度の相関値を算出する相関値算出手段と、車両がブレーキにより減速していることを判断し、このときの前記動き検出手段の検出値と前記相関値に基づき助手席乗員の有無を判定する乗員有無判定手段と、事前に前記乗員有無判定手段により乗員有りが判定されている場合に、助手席の前記保護手段を作動を制御させる作動制御部と、を有している。また、助手席乗員の有無は、ブレーキ動作に関わらず、前記加速度検出手段の検出値が第1所定値以上の減速度を示したときに、判定するようにすることができる。
【0008】
車両に加速度が生じれば、この加速度により生じる慣性力によって乗員は動くので、この加速度と乗員の動きには相関がある。この相関に基づき助手席に乗員が着席しているか否かが判断できる。乗員が着席していない場合は、助手席用の乗員保護手段の作動を行わないようにすれば、必要ないときに装置が作動することがない。
【0009】
前記保護手段は、車両衝突時に所定の動作を行い、乗員の動きを抑制し、乗員の車両の内部構造体への衝突を防止するものである。具体的には、衝突時に、乗員前方に展開されて、乗員がステアリングポストやダッシュボードに衝突することを防止するエアバッグ装置や、シートベルトを所定長さ引き込んで、乗員を席に強固に固定するプリテンショナ付きシートベルト装置などが前記保護手段に含まれる。本発明は、これらの複数の保護手段が単独で用いられた乗員保護装置についても、また複数種を組み合わせて用いられた乗員保護装置についても適用可能である。
【0010】
前記動き検出手段は、助手席乗員の動き、特に車両前後方向に関する動きを検出するものである。具体的には、車室内の所定の位置に設けられ、助手席乗員までの距離を検出する距離センサと、前記距離の変化に基づき助手席乗員の動きを算出する動き算出部を有するものとすることができる。単に、距離センサの検出した距離に基づき乗員の有無を判定するのではなく、距離の変化すなわち乗員の動きによって判定することで、たとえば助手席上に置かれた大きな荷物などと乗員を区別することができる。
【0011】
相関値算出手段は、車両加速度と車両前後方向の乗員の動きの相関値を算出する。車両に加速度が発生すると、車両内部の物体には慣性力が働く。たとえば、ブレーキ操作が行われたとき、車両進行方向に対し負の加速度(以下、減速度と記す)が発生し、これによって乗員には前方向に慣性力が作用する。この慣性力によって乗員が前方に移動する。このように、車両加速度と乗員の動きには相関があるので、この相関の特徴をあらかじめ調べておくことによって、乗員の有無を判定することができる。この判定を行うのが乗員有無判定手段である。前述のように、乗員が着席しているときには、ブレーキによって減速度が生じたときなど乗員がこれに応じた動きをするので、このような減速度と相関のある動きが検出された場合は、乗員が着席していると判定できる。また、乗員が着席していない場合は、動き検出手段は座席の動きを検出することになる。座席は、車両に強固に固定されているので、慣性力による動きは生じない。したがって、ブレーキによる減速度と相関がなく、このような場合には、乗員が着席していないことを判定することができる。
【0012】
特に、車両加速度と乗員の動きにおいて相関が強いのは、ブレーキ操作による減速時であり、加速度と乗員の動きの相関をとるのは、所定量のブレーキ操作が行われたとき、または所定の減速度が発生したときなどに限定することも好ましい。
【0013】
以上の判定に基づき、保護手段の作動を制御すれば、保護すべき乗員がいない場合に作動することがなくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の概略構成図である。車体10の助手席12に対向するダッシュボード14内には、エアバッグおよびこれを展開させるためのインフレータを含むエアバッグ本体16が備えられている。また、エアバッグの展開はエアバッグECU18により制御される。また、車体10の天井前端には、助手席12に着席した乗員20までの距離を測定する距離センサ22が設置されている。距離センサ22は、本実施形態においては、赤外線ビーム24を照射し、測定対象物からの反射光26がセンサ22に到達するまでの時間に基づき距離を検出するものである。このようなセンサの場合、その設置位置は、乗員20の車両前後方向の位置を検出可能な位置に設けられる必要があり、好ましくは助手席の中心線を通る平面内に設けることが好ましい。これは、後述するように、距離センサ22により測定された距離の変化に基づき乗員の動きを検出するため、距離変化の方向と検出すべき乗員の動きの方向、すなわち車両前後方向が一致することが、精度上望ましいからである。したがって、前述の天井前端のほかに、ダッシュボード14に設けることも可能である。この距離センサ22の出力は、前記エアバッグECU18に送出される。
【0016】
エアバッグECU18には、車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサ28が備えられている。さらに、エアバッグECU18には、前記距離センサ22の出力と加速度センサ28の出力に基づき、あらかじめ記憶されたプログラムに従ってインフレータを作動させ、エアバッグを図中一点鎖線のように展開させるマイクロコンピュータ30が備えられている。
【0017】
図2には、エアバッグの作動を制御するエアバッグECU18の構成ブロック図が示されている。エアバッグECU18には、前述のように加速度センサ28が備えられ、また、あらかじめ記憶されたプログラムに従って以下説明するような動作を行うマイクロコンピュータ30が備えられている。
【0018】
距離センサ22は、所定のサンプリング周期で乗員20との距離を測定し、この結果をマイクロコンピュータ30の動き算出部32に送出する。動き算出部32は、距離センサ22の前回と今回の測定結果から、この間の移動量すなわち乗員の移動速度を検出する。したがって、距離センサ22と動き算出部32が、助手席乗員の前後方向の動きを検出する動き検出手段として機能する。
【0019】
動き算出部32の出力と加速度センサ28の出力は、相関値算出部34に送出され、ここで所定の演算が行われ相関値が算出される。本実施形態においては、相関値は、動き算出部32により算出された乗員の移動速度と、加速度センサ28により検出された車両の減速度との積として算出される。
【0020】
乗員有無判定部36は、この算出された相関値と前記動き算出部の算出結果に基づき乗員の有無を判定する。もし乗員がいなければ、座席は移動しないので、動き算出部32の算出値は0となり、これが所定回数続けて検出されれば、乗員がいないと判断する。また、動き算出値が0ではなく、前記算出された相関値があらかじめ定められた所定値以上となった場合に、乗員がいると判断する。以上の場合以外は、乗員の有無の判断を保留し、前回までの判断結果を維持する。また、本実施形態においては、この判断は、車両の加速度と乗員の動きの相関が比較的強く現れるブレーキによる減速時になされ、これによって検出精度の向上を図っている。ブレーキによる減速時であることを判定するためには、たとえばブレーキランプの点灯をもって判定することができ、また、ブレーキのマスタシリンダ圧力が所定値以上となったことをもって判定することもできる。マスタシリンダ圧の所定値は、あらかじめ調査を行い乗員の動きと減速度が比較的強い相関を示す十分大きな値に設定することが好ましい。また、直接減速度を測定して、この減速度が所定値以上の場合に上記の判定を行うようにすることもできる。この所定値も、前記と同様に減速度と乗員の動きが比較的強い相関を示す値に設定されることが望ましい。
【0021】
作動制御部38は、乗員の有無および減速度に基づきエアバッグの展開の制御を行う。すなわち、加速度センサ28により検出された減速度が所定値以上となり、かつ乗員有無判定部36において乗員有りが判定されている場合に、当該座席のエアバッグの展開をエアバッグ本体16に対し指令する。この指令に基づきエアバッグ本体16は、インフレータを作動させエアバッグを展開させる。これによって、衝突時などの大きな減速度が発生する場合に、この減速度による慣性力によって前方に大きく移動させられる乗員を受け止め、ウインドシールドやダッシュボードへの衝突を回避することができる。
【0022】
以上の動き算出部32、相関値算出部34、乗員有無判定部36および作動制御部38は、実際にはマイクロコンピュータ30そのものであり、各部の機能は、マイクロコンピュータ30があらかじめ記憶されたプログラムに従い動作することで達成される。
【0023】
図3には、本実施形態の制御フローチャートが示されている。車両の電装品の電源がオンされると初期チェックが行われる(S100)。ブレーキが所定量操作されると、距離センサ22から送信された当該センサ22と乗員との距離Sが、前回の距離と比較され、距離の変化の有無が判定される(S104)。距離の変化がない場合、この変化のない状態が所定回数継続しているかが判断され(S106)、所定回数継続している場合助手席(P席)に乗員がいることを示す乗員有りフラグをクリアする(S108)。一方、ステップS106で、所定回数に達していないと判断された場合は、乗員有りフラグを前回までの状態に維持する。
【0024】
ステップS104にて、距離Sに変化があると判断されると、この距離の変化量ΔSと加速度センサにより検出された加速度αの積が、ふたつの量の相関値Xとして算出され、これが所定のしきい値X0と比較される(S110)。相関値Xがしきい値X0以上である場合には、助手席に乗員がいると判断し、乗員有りフラグをセットする(S112)。一方、ステップS110で相関値Xがしきい値X0未満であると判断されると、乗員有りフラグを前回までの状態に維持する。
【0025】
続いて、加速度αとしきい値α0が比較され(S114)、加速度αがしきい値α0以上であれば、まず運転席(D席)のエアバッグに展開指令がなされる(S116)。次に、助手席の乗員有りフラグが立っていれば(S118)、助手席のエアバッグに展開指令がなされる(S120)。ステップS114にて、検出された加速度αがしきい値α0未満であると判断されると、ステップS102に戻り、前述のフローが再び実行される。また、ステップS118で助手席に乗員がいないと判断された場合は、助手席についてはエアバッグの展開をしないで終了する。
【0026】
以上本実施形態においては、乗員保護手段として乗員の正面に展開するエアバッグ装置に関して説明したが、乗員の側方に展開する、いわゆるサイドエアバッグ装置などにも適用できる。さらに、車両衝突時にシートベルトを所定量引き込み、乗員の動きを拘束するプリテンショナ付きのシートベルト装置にも同様に適用することが可能である。
【0027】
また、本実施形態においては、乗員の動き検出手段として、赤外線の到達時間に基づき距離を測定する距離センサを用いたが、公知の他の距離センサを用いることも可能である。たとえば、三角測量の原理に基づき距離を測定するものなどを用いることができる。また、距離センサではなく、座席上の画像に基づき乗員の動きを検出するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の概略構成図である。
【図2】本実施形態のエアバッグの制御するエアバッグECUの構成ブロック図である。
【図3】本実施形態の制御フローチャートである。
【符号の説明】
10 車体、12 助手席、18 エアバッグECU、22 距離センサ、28 加速度センサ、30 マイクロコンピュータ、32 動き算出部(マイクロコンピュータ)、34 相関値算出部(マイクロコンピュータ)、36 乗員有無判定部(マイクロコンピュータ)、38 作動制御部(マイクロコンピュータ)。
Claims (3)
- 所定条件下において、車両内部構造体への衝突から乗員を保護する保護手段と、
車両前後方向における助手席乗員の動きを検出する動き検出手段と、
車両の前後方向加速度を検出する加速度検出手段と、
前記助手席乗員の動きと前記車両の加速度の相関値を算出する相関値算出手段と、
車両がブレーキにより減速していることを判断し、このときの前記動き検出手段の検出値と前記相関値に基づき助手席乗員の有無を判定する乗員有無判定手段と、
事前に前記乗員有無判定手段により乗員有りが判定されている場合に、前記加速度検出手段により所定値以上の減速度が検出されたときに、助手席の前記保護手段を作動させる作動制御部と、
を有する、助手席乗員保護装置。 - 所定条件下において、車両内部構造体への衝突から乗員を保護する保護手段と、
車両前後方向における助手席乗員の動きを検出する動き検出手段と、
車両の前後方向加速度を検出する加速度検出手段と、
前記助手席乗員の動きと前記車両の加速度の相関値を算出する相関値算出手段と、
前記加速度検出手段により検出された加速度に基づき車両が第1所定値以上の減速度で減速中であることを判断し、このときの前記動き検出手段の検出値と前記相関値に基づき助手席乗員の有無を判定する乗員有無判定手段と、
事前に前記乗員有無判定手段により乗員有りが判定されている場合に、前記加速度検出手段により第2所定値以上の減速度が検出されたときに、助手席の前記保護手段を作動させる作動制御部と、
を有する、助手席乗員保護装置。 - 請求項1または2に記載の助手席乗員保護装置であって、
前記動き検出手段は、車室内の所定の位置に設けられ、助手席乗員までの距離を検出する距離センサと、前記距離の変化に基づき助手席乗員の動きを算出する動き算出部を有する、助手席乗員保護装置。
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JP10441597A JP3562208B2 (ja) | 1997-04-22 | 1997-04-22 | 助手席乗員保護装置 |
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