JP3561766B2 - 新規ポリカーボネート重合体およびその製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は新規なポリカーボネート重合体とその製造方法に関する。本発明のポリカーボネート重合体は、ポリシロキサン構造を連鎖末端に有する、特に耐磨耗性に優れた新規なポリカーボネート重合体であり、各種成形材料やポリマーアロイ材料、添加剤として有用のものである。
【0002】
【従来の技術】現在生産されているポリカーボネート樹脂の大部分は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を原料とするビスフェノールA型ポリカーボネートである。ビスフェノールA型ポリカーボネートはコスト、耐熱性、機械的強度等のバランスのとれたポリカーボネート樹脂であるが、近年ポリカーボネートの用途拡大にともない、市場からはより優れた物性を有するポリカーボネートが要求されており、様々な構造を持つポリカーボネートが開発されている。
【0003】
その一つとして、離型性や流動性を改造したシロキサンブロック共重合ポリカーボネートが開発されている(特開平3-79626、特開平5−155999、特開昭50−29695)。これらのシロキサン共重合ポリカーボネートは耐摩耗性が向上し、表面自由エネルギーが小さくなり、水をはじく性質を持つものである。しかしながら、これらのシロキサンを有する構成単位はランダム共重合体であり、シロキサンの含有量が少なくなると、重合時にポリカーボネートのホモポリマーが生じる可能性が高くなり、特に湿式成形の場合相分離を起こし、表面にシロキサンブロックを有するポリカーボネートのみが集中的に濃縮されることが知られている。この現象自体は、小量の添加でも表面改質ができる利点を有しているが、耐磨耗性に対しては、表面がある程度磨耗してしまうと、急激に耐磨耗性が減少する欠点をも有することになる。また、末端にモノシロキサンを有するポリカーボネートも開発されているが(特開平4−264129)、低分子オリゴマーの時はよいが、高分子量体ではシロキサン含有量が少なく自由度が低いため前記特性を発揮するにはいたっていない。
【0004】
そのため、特に表面コート材などには、長期耐摩耗性を有するポリカーボネートが望まれており、新規なポリカーボネート重合体を開発する必要性があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、末端停止剤としてポリシロキサンを有するポリカーボネート重合体は文献未記載の新規なポリカーボネートであって、各種成形材料やポリマーアロイ原料として有用であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は一般式(1)で表され、極限粘度[η]が2.0[dl/g]以下である末端ポリシロキサン変性ポリカーボネート重合体およびその製造方法を提供するものである。
【0007】
【化7】
【0008】
(式中、R1〜R8はそれぞれ、水素、ハロゲン、アルコキシル基、ニトロ基または置換基を有してもよいアルキル基若しくはアリール基を表す。(A)は
【0009】
【化8】
【0010】
を示し、R9〜R10はそれぞれ、水素、ハロゲン、アルコキシル基、ニトロ基または置換基を有してもよいアルキル基若しくはアリール基を表す。R11〜R12は水素、アルキル基またはアリール基を表す。R13〜R15は少なくとも2つが
【0011】
【化9】
【0012】
で表されるシロキサン基であり、残りがアルキル基またはアリール基を示す。R16〜R18はアルキル基またはアリール基を表す。aは1〜10、nは1〜500、mは5〜200の整数を表す。xは
【0013】
【化10】
【0014】
であり、ここにR19、R20はそれぞれ水素、ハロゲンまたは置換基を有してもよいアルキル基若しくはアリール基を表すか、R19及びR20が一緒に結合して、炭素環または複素環を形成する基を表す。R21、R22はそれぞれアルキル基またはアリール基を表す。bおよびdは0〜500の整数を表す。)
【0015】
本発明の前記一般式(1)で表される末端ポリシロキサン構造を持つポリカーボネート重合体は、一般式(2)
【0016】
【化11】
【0017】
(式中、R1〜R8およびxはそれぞれ一般式(1)中のものと同様の意味を表す。)で表される二価フェノールと一般式(3)
【0018】
【化12】
【0019】
(式中、R9〜R15およびaはそれぞれ一般式(1)の末端組成(A)中のものと同様の意味を表す。)で表される一価フェノールとを炭酸エステル形成性化合物と反応させて製造することが出来る。
【0020】
前記一般式(3)で表される一価フェノールは、公知のヒドロシリル化反応による製造法、例えば不飽和基を持った一価フェノールの片末端にSi−H基を有するポリシロキサンを白金触媒下で付加反応させる方法にて製造される。
【0021】
ヒドロシリル化に使用される触媒は均一系、不均一系のいずれでもよく、具体的には塩化白金酸などに代表される白金錯体、金属白金、オクタカルボニル2コバルト、パラジウム錯体、ロジウム錯体等が挙げられる。反応は、本発明に使用される不飽和基含有二価フェノールが溶解する溶媒中で行われる。具体的には、四塩化炭素、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、モノクロルベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化物、メチルエチルケトン、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、シクロヘキサノン、ピリジン等を挙げることができるが、溶解性や触媒との相性より、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が望ましい。また、反応温度は60℃以上が好ましい。
【0022】
本発明におけるポリシロキサン基としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン等より誘導されたものであり、具体的にはポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。これらは2種類以上併用しても良い。ポリシロキサン基の長さは、一般式(1)の末端組成(A)および一般式(3)中の重合度nで表され、nが1〜1000であり、好適には10〜200である。十分なシロキサンの特性を得るために、ある程度nが大きい方がよいがnが500を越えるようなものでは、不飽和基を有する一価フェノールとの反応性が劣り、あまり実用的ではない。また、ポリシロキサンはポリマーであるためポリマー鎖の短長混ざりあった混合物で、重合度nはあくまで平均重合度であり、通常は重合度は分布をもって存在する。
【0023】
本発明における、ポリシロキサンと反応する不飽和基を有する一価フェノールは、具体的には、p-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、o-アリルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、2,6-ジメチル-4-アリルフェノール、4-(1-ブテニル)フェノール、4-(1-ペンタニル)フェノール、4-(1-ヘキサニル)フェノール、4-(1-オクタニル)フェノール、4-(1-デカニル)フェノール、4-(1-ドデカニル)フェノール、4-(1-テトラデカニル)フェノール、4-(1-ヘキサデカニル)フェノール、4-(1-ノナデカニル)フェノールなどが例示される。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
【0024】
前記一般式(3)で表される一価フェノールは、具体的には、
【0025】
【化13】
【0026】
などが挙げられる。また、上記一価フェノールを2種類以上併用して使用することも可能である。(wは1〜500の整数で、(n+w)≦1000である。)
【0027】
前記一般式(2)で表される二価フェノールとしては、具体的にはビフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノ-ルA;BPA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノ-ルZ;BPZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、α,ω-ビス[2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンなどが例示される。これらは、2種類以上併用して用いてもよい。また、これらの中でも特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイドから選ばれることが、反応性から好ましい。
【0028】
一方、炭酸エステル形成性化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、ジ-p-クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリルカーボネートが挙げられる。
【0029】
本発明の重合体の製法としては、ビスフェノールAからポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えば二価フェノールとホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいは二価フェノールとビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。
【0030】
ホスゲン法とエステル交換法では、一般式(3)の一価フェノールの耐熱性やエステル交換率を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。またホスゲン法においては、一般式(3)の一価フェノールの溶解性や反応性の観点から一般式(3)の一価フェノールは全フェノールに対し50wt%以下使用することが好ましい。
【0031】
前者のホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下において、一般式(2)で表される二価フェノールおよび一般式(3)で表される一価フェノールとホスゲンを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられ、また溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレンなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を、また重合度を調節には、一般式(3)の一価フェノールが分子量調節剤としての役割を果たす。また、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノールなど分岐化剤を小量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0032】
一方後者のエステル交換法においては、前記一般式(2)の二価フェノールと一般式(3)の一価フェノールとビスアリールカーボネートとを混合し、減圧下において高温で反応させる。反応温度は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終で好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜4時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、また、所望に応じ、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
【0033】
これらの反応で合成されたポリカーボネート重合体は、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、湿式成形など公知の成形法で成形可能であるが、容易に成形加工できるためには、極限粘度[η]が2.0[dl/g]以下が望ましい。
【0034】
また、前記極限粘度を有するポリカーボネート重合体は、重合度mと末端基(A)のモル比がm/(A)≦150であることが望ましい。
【0035】
また、本発明のポリカーボネート重合体を合成する際には、ポリシロキサン一
価フェノールの不純物や重合時の未反応物等があり、100%一般式(1)のポリカーボネートが合成される訳ではない。しかし、不純物の残量や反応率から考え、少なくとも80%以上が一般式(1)の重合物として得られる上、さらに少なくとも末端に1つ以上のシロキサンを有するものは90%以上得られると考えられる。
【0036】
【実施例】次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0037】
(参考例1)8.8%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液600mlに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)91.2gとハイドロサルファイト0.5gを加え溶解した。これに、メチレンクロライド360mlを加え攪拌し、溶液温度を15℃に保ちつつ、ホスゲン50gを60分かけて吹き込んだ。吹き込み終了後、下記構造
【0038】
【化14】
【0039】
のポリシロキサン一価フェノールを46.5g添加し、激しく攪拌して、反応液を乳化させ、乳化後0.2mlのトリエチルアミンを加え、約1時間攪拌し重合させた。重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHを中性になるまで水洗を繰り返した後、イソプロパノール470mlを加え、重合物を沈澱させた。沈澱物を濾過後、乾燥して粉末状重合体を得た。この重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃における極限粘度[η]は0.73[dl/g]であった。得られた重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、図1に示すように1770cm-1の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有することが確認された。また、3650〜3200cm-1の位置に水酸基由来の吸収はほとんど認められなかった。しかも、1100〜1020cm-1のシロキサン由来のピークも確認された。吸光光度法による残存フェノール性OH量は92ppmであった。また、蛍光X線分析(Cr管球)により、この重合体中にはシリコン元素が含まれていることが確認された。よって、この重合体は下記構造を有するポリカーボネート重合体と判断された。
【0040】
【化15】
【0041】
(参考例2)参考例1のポリシロキサン一価フェノールの代わりに、下
記構造
【0042】
【化16】
【0043】
のポリシロキサン含有一価フェノール46.8gを用いた以外は、参考例1と同様に行った 。得られた重合体の極限粘度[η]は0.69[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は下記構造を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は108ppmであった。
【0044】
【化17】
【0045】
(参考例3)水酸化ナトリウム水溶液620ml、ホスゲン52g、ポリシロキサン含有一価フェノール93gに変更した以外は参考例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.40[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は参考例1と同様な構造を有し、ビスフェノールAから誘導される単位はm=40である。また、残存フェノール性OH量は130ppmであった。
【0046】
(参考例4)ポリシロキサン含有一価フェノール23.3gに変更した以外は参考例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は1.16[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は参考例1と同様な構造を有し、ビスフェノールAから誘導される単位はm=160である。また、残存フェノール性OH量は33ppmであった。
【0047】
(参考例5)BPAを1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン107.2gに変更した以外は参考例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.57[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は、下記構造を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は88ppmであった。
【0048】
【化18】
【0049】
(参考例6)BPAを2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン102.5gに変更した以外は参考例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.70[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は、下記構造を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は90ppmであった。
【0050】
【化19】
【0051】
(参考例7)参考例1のポリシロキサン含有一価フェノールの代わりに、下記構造
【0052】
【化20】
【0053】
のポリシロキサン含有一価フェノール24.1gに変更した以外は参考例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.77[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は、下記構造式を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は75ppmであった。
【0054】
【化21】
【0055】
(実施例1)参考例1のポリシロキサン含有一価フェノールの代わりに、下記構造
【0056】
【化22】
【0057】
のポリシロキサン含有一価フェノール33.5gを用いた以外は、参考例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.71[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は下記構造式を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は96ppmであった。
【0058】
【化23】
【0059】
(比較例1)参考例1のポリシロキサン含有一価フェノールをp-t-ブチルフェノール1.5gに変更した以外は参考例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.63[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析よりシロキサン基は認められず、この重合体は下記構造式を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は85ppmであった。
【0060】
【化24】
【0061】
(比較例2)8.8%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液620ml、ホスゲン51g、BPA91.2g、α,ω-ビス〔2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル〕ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製重合度n=60)47.5gを用いた以外は比較例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.70[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は下記構造式を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は70ppmであった。
【0062】
【化25】
【0063】
(比較例3)BPA91.2g、α,ω-ビス〔2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル〕ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製重合度n=60)23.5gを用いた以外は比較例2と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.65[dl/g]であった。赤外吸収スペクトル分析および蛍光X線分析より、この重合体は下記構造式を有するポリカーボネート重合体と認められた。また、残存フェノール性OH量は75ppmであった。
【0064】
【化26】
【0065】
(比較例4)比較例1の重合体に参考例1で使用した一価フェノールを10wt%添加し、ブレンドした。このブレンド物の極限粘度[η]は0.33[dl/g]であった。また、残存フェノール性OH量は446ppmであった。
【0066】
(比較例5)比較例1の重合体に参考例1で使用した一価フェノールを1wt%添加し、ブレンドした。このブレンド物の極限粘度[η]は0.55[dl/g]であった。また、残存フェノール性OH量は138ppmであった。
【0067】
(比較例6)一価フェノールを用いなかった以外は参考例1と同様に行った。得られた重合体は、ゲルとなり、ジクロロメタンに不溶のため極限粘度測定はできず、超高分子量体の性質を示した。
【0068】
参考例1〜7、実施例1、比較例1〜6までの結果を表1に、参考例1および参考例4との比較例1〜5までの重合物をキャスト成形したものについて磨耗性試験の結果を表2に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【発明の効果】本発明のポリカーボネート重合体は末端にポリシロキサン構造を有する文献未記載の新規なポリマーであって、また各種成形材料やポリマーアロイ原料に使用する新規なポリカーボネート重合体を提供することができる。特に、本発明のポリカーボネート重合体は、従来のポリシロキサンランダムブロック共重合ポリカーボネートに比べ、1分子中にポリシロキサン基を含有する確率が非常に高く、組成がより均一になり、相溶性が増す。そのため、従来のものに比べ長時間にわたる耐磨耗性が高く、レンズ、照明カバー、軸受け等の耐摩耗性が要求される成形品に応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1の重合体の赤外吸収スペクトル
Claims (3)
- 下記一般式(1)で表され、極限粘度[η]が2.0[dl/g]以下である末端ポリシロキサン変性ポリカーボネート重合体。
- 一般式(1)のポリカーボネート重合体が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイドより誘導された請求項1記載の末端ポリシロキサン変性ポリカーボネート重合体。
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