JP3561406B2 - 拡散変調信号受信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、拡散変調信号受信装置に係わり、特に、フーリエ変換したベースバンド拡散変調信号とフーリエ変換した参照信号とを乗算し、乗算信号を逆フーリエ変換して相関信号を発生させるまでの計算量を低減して迅速な同期捕捉を達成することを可能にした拡散変調信号受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、所定領域内を適宜移動する移動体の現在位置を追尾するため、電波を用いた移動体追尾方式が用いられている。この移動体追尾方式は、移動体に電波を送信する送信機を携帯させ、送信機から放射された電波を受ける基地局を所要領域の近傍に設けているもので、基地局は、受けた電波の到来方向等に基づいて移動体の現在位置を知るものである。この移動体追尾方式においては、移動体が携帯する送信機と基地局との間で送受信される信号変調方式として、種々の信号変調方式を用いることが可能であるが、その中の1つにPN符号を用いた拡散変調方式が知られている。
【0003】
ところで、PN符号を用いた拡散変調方式は、送信側において、送信データによってPSK(パルスシフトキーイング)等の1次変調信号を形成し、次に、この1次変調信号にPN(疑似ランダムノイズ)符号を乗算した拡散変調信号(2次変調信号)を形成し、次いで、拡散変調信号を送信信号に変換して電波に載せて送信するものである。一方、受信側において、受信した電波からベースバンド拡散変調信号を抽出し、ベースバンド拡散変調信号と送信側で乗算したPN符号と同じPN符号を用いて形成された参照信号との積和をとることで相関信号を生成する。その後、この相関信号をPSK復調し、受信データを得ている。
【0004】
ここで、図13は、前記PN符号を用いた拡散変調方式に用いられる信号波形の一例を示す波形図であって、イは1次(PSK)変調信号を示すものであり、ロはPN符号を示し、ハはイ及びロに図示の波形を乗算して得られる拡散変調信号を示す。
【0005】
図13に示されるように、1次(PSK)変調信号とPN符号との関係は、1次(PSK)変調信号のそれぞれのビット区間TにPN符号の複数のチップ区間Tcが割り当てられるもので、通常、T≫Tcになるように選ばれる。
【0006】
また、図14は、前記PN符号を用いた拡散変調方式に用いられる信号の周波数スペクトラムを示す特性図であり、曲線イは1次(PSK)変調信号の周波数スペクトラムを示し、曲線ロは拡散変調信号の周波数スペクトラムを示す。
【0007】
図14に示されるように、1次(PSK)変調信号と拡散変調信号との周波数スペクトラム分布の関係は、1次(PSK)変調信号の周波数スペクトラムは比較的狭い範囲内に分布するのに対して、拡散変調信号の周波数スペクトラムは広い範囲にわたって分布する。
【0008】
なお、図14において、この拡散変調信号の周波数スペクトラムが他に妨害を与えるときには、曲線ロに示されるような周波数スペクトラムを、曲線ハに示されるように周波数帯域の制限を行うことがある。このとき、図13に示されるように、曲線ハで示される拡散変調信号の波形は帯域制限され、曲線ニで示されるような波形になる。
【0009】
次いで、図15は、PN符号を用いた拡散変調方式の既知の拡散変調信号受信装置における要部構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
図15に示されるように、拡散変調信号受信装置は、受信部41と、第1フーリエ変換部42と、参照信号発生部43と、第2フーリエ変換部44と、乗算部45と、逆フーリエ変換部46と、復調部47と、制御部48と、アンテナ49と、信号出力端子50とからなっている。この場合、受信部41は、ベースバンド信号発生部51と、アナログ−ディジタル(A/D)変換部52と、メモリ53とからなっている。
【0011】
そして、受信部41は、入力端がアンテナ49に接続され、出力端が第1フーリエ変換部42の入力端に接続される。参照信号発生部43は、出力端が第2フーリエ変換部44の入力端に接続される。乗算部45は、第1入力端が第1フーリエ変換部42の出力端に接続され、第2入力端が第2フーリエ変換部44の出力端に接続され、出力端が逆フーリエ変換部46の入力端に接続される。復調部47は、入力端が逆フーリエ変換部46の出力端に接続され、出力端が信号出力端子50に接続される。制御部48は、受信部41、第1フーリエ変換部42、参照信号発生部43、第2フーリエ変換部44、乗算部45、逆フーリエ変換部46、復調部47にそれぞれ接続される。また、受信部41において、ベースバンド信号発生部51は、入力端が受信部41の入力端に接続され、出力端がA/D変換部52の入力端に接続される。メモリ53は、入力端がA/D変換部52の出力端に接続され、出力端が受信部41の出力端に接続される。
【0012】
ここで、図2は、送信機側で用いられるPN符号及び参照信号発生部43が発生する参照信号の一例を示す信号波形図であり、図16は、図2に図示の参照信号を第2フーリエ変換部44にてフーリエ変換した後に得られる変換信号の信号波形図である。
【0013】
また、図3は、受信部41が出力するベースバンド拡散変調信号の一例を示す信号波形図である。なお、図3で示されるドット(黒色菱形)は、A/D変換部52においてサンプリングされたサンプルポイントを示すものである。図17は、図3に図示のベースバンド拡散変調信号を、第1フーリエ変換部42でフーリエ変換した後に得られる変換信号の特性図である。ここで、受信部41は、図14に示される曲線ハのように、送信機側で帯域制限された拡散変調信号を含む電波信号電波を受信している。
【0014】
さらに、図18は、図16と図17とに示される周波数スペクトラムを乗算部45に入力したとき、逆フーリエ変換部46から出力される相関信号を示す信号波形図である。なお、図18で示されるドット(黒色菱形)は、離散時間での相関値を示す。
【0015】
前記構成による拡散変調信号受信装置の動作を、図2、図3及び図16乃至図18を併用して説明すると、概略、次のとおりである。
【0016】
送信機側で、図2に示されるような、PN符号で拡散変調され、帯域制限された後で送信された信号電波をアンテナ49で捉えると、受信部41のベースバンド信号発生部51は、よく知られているように、受信信号の増幅及び周波数変換等の処理を行ってアナログ形式のベースバンド拡散変調信号を抽出し、A/D変換部52に供給する。A/D変換部52は、アナログ形式のベースバンド拡散変調信号を、図3に示されるようなディジタル形式のベースバンド拡散変調信号に変換し、一定サンプル数だけメモリ53に一時的に記憶する。次いで、メモリ53から読み出されたベースバンド拡散変調信号は、第1フーリエ変換部42においてフーリエ変換されて、図17に示されるような周波数領域信号に変換され、続いて乗算部45の第1入力端に供給される。また、参照信号発生部43は、送信機側で発生される図2に示されるようなPN符号と同一の符号を参照信号として発生する。参照信号は、第2フーリエ変換部44においてフーリエ変換され、図16に示されるような参照周波数領域信号に変換し、この参照周波数領域信号を乗算部45の第2入力端に供給する。このとき、乗算部45は、供給された参照周波数領域信号の複素共役信号と、同じように供給された周波数領域信号とに対して、同一の周波数成分毎に乗算して周波数領域乗算信号を発生し、逆フーリエ変換部46に供給する。周波数領域乗算信号は、逆フーリエ変換部46において逆フーリエ変換され、周波数領域乗算信号を図18に示されるような時間領域乗算信号に変換し、復調部47に供給する。この時間領域乗算信号は、よく知られているように、図3に示されるようなベースバンド拡散変調信号と図2に示されるような参照信号との相関信号である。この相関信号が復調部47に供給され、相関値が最大となる時間にてデータを判別するようなPSK復調を行うと、送信データに対応した受信データが得られ、得られた受信データが信号出力端子50を介して利用回路(図示なし)に供給される。なお、これらの一連の動作は、制御部48の制御の基に行われる。
【0017】
ところで、既知の拡散変調信号受信装置において、逆フーリエ変換部46が出力するような相関信号を得る手段としては、ベースバンド拡散変調信号を1サンプルづつ時間的にシフトさせ、参照信号との積和を計算して相関信号を求めるというマッチト・フィルタが知られている。この場合、参照信号の1周期分に対するベースバンド拡散変調信号のサンプル数をNとすると、1つの相関値を得るためにNサンプルの参照信号とNサンプルのベースバンド拡散変調信号とを掛け合わせて和を求めるので、N回の積和計算が必要になる。以上の計算を、ベースバンド拡散変調信号を0から(N−1)サンプルまで時間的にシフトして、相関値を求めるので、合計N2 回の積和回数となる。また、拡散変調されて送信されるデータが多値PSK変調されている場合、同相チャネルと直交チャネルについてそれぞれ相関値を計算する必要があるので、積和回数は2N2 回となる。
【0018】
これに対して、図15に示されているようにフーリエ変換と逆フーリエ変換を用いて相関を求める場合の積和回数は次のようになる。なお、サンプル数Nは2の整数乗の数とし、フーリエ変換と逆フーリエ変換には、よく知られている高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)のアルゴリズムを用いるものとする。まず、第1フーリエ変換部42と第2フーリエ変換部44ではそれぞれNlog2 N回(複素数換算)、乗算部45ではN回(複素数換算)、逆フーリエ変換部46ではNlog2 N回(複素数換算)の積和回数となる。合計すると、複素数換算で(N+3Nlog2 N)回となり、先のマッチト・フィルタと同様に実数換算にすると、(28N+12Nlog2 N)回となる。なお、多値PSK変調した場合にも同じ積和回数となる。フーリエ変換と逆フーリエ変換を用いて相関を求める場合、Nが大きいとマッチト・フィルタよりも少ない積和回数で相関信号が得られるので、同期捕捉をそれだけ速く実行できるという利点がある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フーリエ変換を用いて相関を求めるという前記既知の拡散変調信号受信装置は、ベースバンド拡散変調信号や参照信号をフーリエ変換するときに使用した周波数帯域(変換周波数帯域)にある全サンプル数を用いて相関を求めるというものであった。従って、図17に示されるようにベースバンド拡散変調信号が帯域制限されている場合、占有周波数帯域以外のサンプルに対しても、フーリエ変換された参照信号との乗算を行わないと、相関信号を求めることができなかった。
【0020】
また、相関信号を求めるまでの積和回数は、変換周波数帯域内のデータ数(N)により決まっているので、上述のようにベースバンド拡散変調信号が帯域制限されている場合であっても、積和回数を減らして同期捕捉を行うことが困難であった。
【0021】
本発明は、このような背景のもとになされたもので、その目的は、フーリエ変換を用いて相関を求める際に、変換対象のサンプルを効果的に使用することで積和回数を削減し、迅速な同期捕捉を行う拡散変調信号受信装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明による拡散変調信号受信装置は、ベースバンド拡散変調信号を発生する受信部、参照信号を発生する参照信号発生部、ベースバンド拡散変調信号及び参照信号を各フーリエ変換する第1及び第2フーリエ変換部、フーリエ変換したベースバンド拡散変調信号とフーリエ変換した参照信号のいずれか一方の複素共役信号との乗算信号を発生する乗算部、乗算信号を逆フーリエ変換して相関信号を発生する逆フーリエ変換部を有し、フーリエ変換したベースバンド拡散変調信号及びフーリエ変換した参照信号の各周波数帯域幅を制限する第1及び第2フィルタ部を設けた手段を具備する。
【0023】
前記手段によれば、第1フィルタ部においてフーリエ変換したベースバンド拡散変調信号の周波数帯域幅を制限し、第2フィルタ部においてフーリエ変換した参照信号の周波数帯域幅を制限し、乗算部でフーリエ変換したベースバンド拡散変調信号とフーリエ変換した参照信号のいずれか一方の複素共役信号との相関を求める際に、これらの信号の周波数帯域幅を制限することにより、データサンプル数を低減しているので、乗算部及び逆フーリエ変換部で使用されるサンプル数も低減されて、乗算部及び逆フーリエ変換部の積和回数が少なくなり、迅速な同期捕捉を行うことが可能になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態において、拡散変調信号受信装置は、PN符号で拡散変調した拡散変調信号を含む電波を受信し、ベースバンド拡散変調信号を発生する信号受信部と、PN符号と相関がある参照信号を発生する参照信号発生部と、ベースバンド拡散変調信号及び参照信号をフーリエ変換する第1及び第2フーリエ変換部と、フーリエ変換したベースバンド拡散変調信号とフーリエ変換した参照信号のいずれか一方の複素共役信号とを乗算し、乗算信号を発生する乗算部と、乗算信号を逆フーリエ変換して相関信号を発生する逆フーリエ変換部とを備え、第1及び第2フーリエ変換部と乗算部との間に、フーリエ変換したベースバンド拡散変調信号及びフーリエ変換した参照信号の周波数帯域幅をそれぞれ制限する第1及び第2フィルタ部を設けているものである。
【0025】
本発明の実施の形態の1つにおいて、拡散変調信号受信装置は、第2フィルタ手段の出力側に第1メモリを設けているものである。
【0026】
本発明の実施の形態の具体例において、拡散変調信号受信装置は、参照信号がPN符号またはPN符号の周波数帯域を制限した信号のいずれかからなるものである。
【0027】
本発明の実施の形態の好適例において、拡散変調信号受信装置は、第1及び第2フィルタ手段がローパスフィルタであって、通過周波数帯域幅の下限がベースバンド拡散変調信号及び記参照信号のレートの1/2になるように選択されているものである。
【0028】
本発明の実施の形態の他の1つのおいて、拡散変調信号受信装置は、受信部がベースバンド拡散変調信号を発生するアナログ−ディジタル変換部を含むものである。
【0029】
本発明の実施の形態の他の具体例において、拡散変調信号受信装置は、受信部がベースバンド拡散変調信号を一時的記憶する第2メモリを含んでいるものである。
【0030】
これらの本発明の実施の形態によれば、まず、第1フーリエ変換部でフーリエ変換したベースバンド拡散変調信号に対して第1フィルタ部でその周波数帯域を制限し、また、第2フーリエ変換部でフーリエ変換した参照信号に対して第2フィルタ部で同様に周波数帯域を制限する。次に、フーリエ変換に続いて帯域制限されたベースバンド拡散変調信号と参照信号とを乗算部にて乗算する。最後に、逆フーリエ変換部にて乗算部から出力された乗算信号を逆フーリエ変換して相関信号を求めるようにしている。このような一連の動作過程において、第1フィルタ部及び第2フィルタ部においてそれぞれ信号帯域を制限することによりデータサンプル数を低減しているので、乗算部及び逆フーリエ変換部において使用されるサンプル数も低減されるようになり、乗算部及び逆フーリエ変換部の積和回数がそれぞれ少なくなり、迅速な同期捕捉を行うことができるものである。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0032】
図1は、本発明による拡散変調信号受信装置の第1実施例の要部構成を示すブロック図である。
【0033】
図1に示されるように、本実施例の拡散変調信号受信装置は、受信部1と、第1フーリエ変換部2と、第1フィルタ手段3と、参照信号発生部4と、第2フーリエ変換部5と、第2フィルタ手段6と、乗算部7と、逆フーリエ変換部8と、復調部9と、制御部10と、アンテナ11と、信号出力端子12とからなっている。また、受信部1は、ベースバンド信号発生部13と、アナログ−ディジタル(A/D)変換部14と、第2メモリ15とからなっている。
【0034】
そして、受信部1は、入力端がアンテナ11に接続され、出力端が第1フーリエ変換部2の入力端に接続される。第1フィルタ手段3は、入力端が第1フーリエ変換部2の出力端に接続され、出力端が乗算部7の第1入力端に接続される。参照信号発生部4は、出力端が第2フーリエ変換部5の入力端に接続される。第2フィルタ手段6は、入力端が第2フーリエ変換部5の出力端に接続され、出力端が乗算部7の第2入力端に接続される。乗算部7は、出力端が逆フーリエ変換部8の入力端に接続される。復調部9は、入力端が逆フーリエ変換部8の出力端に接続され、出力端が信号出力端子12に接続される。制御部10は、受信部1、第1フーリエ変換部2、参照信号発生部4、第2フーリエ変換部5、乗算部7、逆フーリエ変換部8、復調部9にそれぞれ接続される。また、受信部1において、ベースバンド信号発生部13は、入力端が受信部1の入力端に接続され、出力端がA/D変換部14の入力端に接続される。第2メモリ15は、入力端がA/D変換部14の出力端に接続され、出力端が受信部1の出力端に接続される。
【0035】
ここで、図4は、図3に図示されたベースバンド拡散変調信号を、第1フーリエ変換部2にてフーリエ変換した後に得られる変換信号の特性図であり、第1フィルタ手段3が有する周波数帯域幅を合わせて図示している。また、図5は、参照信号発生部4が参照信号として図2に示されるようなPN符号を発生させた場合に、第1フーリエ変換部5にてフーリエ変換した後に得られる変換信号の特性図であり、第2フィルタ手段6が有する周波数帯域幅を合わせて図示している。さらに、図6は、図4と図5に示す周波数スペクトラムを乗算部7に入力して、逆フーリエ変換部8から出力される相関信号を示す波形図である。なお、図6に示されるドット(黒色菱形または白色丸形)は離散時間での相関値を示す。
【0036】
前記構成による第1実施例の動作を、図2乃至図6を併用して説明すると、概略、次のとおりである。
【0037】
まず、移動体等が携帯する送信機から図2に示されるようなPN符号で拡散変調され、帯域制限がなされた後に電波に載せて送信され、その信号電波がアンテナ11で捉えられる。受信部1のベースバンド信号発生部13においては、よく知られているように、受信信号の増幅や局部発信周波数を用いた周波数変換やその他の処理を行ってアナログ形式のベースバンド拡散変調信号を抽出し、A/D変換部14に供給する。A/D変換部14は、アナログ形式のベースバンド拡散変調信号を、図3に示されるようなディジタル形式のベースバンド拡散変調信号に変換し、一定サンプル数だけ第2メモリ15に一時的に記憶する。次に、第2メモリ15から読み出されたベースバンド拡散変調信号は、第1フーリエ変換部2においてフーリエ変換され、図4に示されるような周波数領域信号に変換されて第1フィルタ手段3に供給される。次いで、この周波数領域信号は、第1フィルタ手段3において周波数帯域が制限され、乗算部7の第1入力端に供給される。
【0038】
この場合、第1フィルタ手段3においては、図4に示されるように、変換周波数帯域内の全サンプル数Nに対し、有効サンプル数がN/4になるように制限した場合、周波数帯域幅がAになる第1フィルタ手段3を用い、また、有効サンプル数がN/8になるように制限した場合、周波数帯域幅がBになる第1フィルタ手段3を用いる。
【0039】
一方、参照信号発生部4は、送信機側で発生されるPN符号と相関がある参照信号、例えば、図2に示されるようなPN符号を参照信号として発生する。参照信号は、第2フーリエ変換部5においてフーリエ変換され、図5に示されるような参照周波数領域信号に変換されて第2フィルタ手段6に供給される。続いて、この参照周波数領域信号は、第2フィルタ手段6において周波数帯域が制限され、乗算部7の第2入力端に供給される。
【0040】
この場合、第2フィルタ手段6においては、図5に示されるように、変換周波数帯域内の全サンプル数Nに対し、有効サンプル数がN/4になるように制限した場合、周波数帯域幅がA’になるような第2フィルタ手段6を用い、また、有効サンプル数がN/8になるように制限した場合、周波数帯域幅がB’になるような第2フィルタ手段6を用いる。
【0041】
なお、第1フィルタ手段3と第2フィルタ手段6は、同じ周波数帯域幅のものが用いられるもので、第1フィルタ手段3の周波数帯域幅がAである場合、第2フィルタ手段6も周波数帯域幅がA’のものが選ばれ、第1フィルタ手段3の周波数帯域幅がBである場合、第2フィルタ手段6も周波数帯域幅がB’のものが選ばれる。
【0042】
次に、乗算部7は、第1入力端に供給される周波数帯域が制限された周波数領域信号と、第2入力端に供給される周波数帯域が制限された参照周波数領域信号の複素共役信号とを乗算し、周波数領域乗算信号を発生し、逆フーリエ変換部8に供給する。この周波数領域乗算信号は、逆フーリエ変換部8において逆フーリエ変換され、図6に示すような相関信号に変換され、復調部9に供給される。
【0043】
ここで、図6において、曲線イは、第1フィルタ手段3の周波数帯域幅がA、第2フィルタ手段6の周波数帯域幅がA’である場合の相関信号を示し、曲線ロは、第1フィルタ手段3の周波数帯域幅がB、第2フィルタ手段6の周波数帯域幅がB’である場合の相関信号を示す。
【0044】
なお、これら曲線上のドット(黒色菱形または白色丸形)は、離散時間の相関値を示し、第1フィルタ手段3及び第2フィルタ手段6が抽出する有効サンプルの数が少なくなるほど、ドットの数も少なく示される。図18に示される従来例による相関信号の曲線に比べると、同じ時間で相関値が最大になるが、逆フーリエ変換部8で相関信号出力するために使用したサンプル数は少なくなっているので、相関信号のサンプル数も少なくなる。
【0045】
このような相関信号が復調部9に入力されると、図15に図示された復調部47と同様のPSK復調が行われて、送信データに対応した受信データが信号出力端子12に出力される。なお、これらの一連の動作は、制御部10の制御の基に行われるものである。
【0046】
第1実施例による積和回数は次のようになる。なお、全サンプル数をN、第1フィルタ手段3及び第2フィルタ手段6が抽出する有効サンプル数をNs(ただし、Ns<N)とし、いずれも2の整数乗の数とする。
【0047】
まず、第1フーリエ変換部2と第2フーリエ変換部5の積和回数は、従来例と同じく、それぞれNlog2 N回(複素数換算)となる。次に、乗算部7では、入力するサンプル数が第1フィルタ手段3及び第2フィルタ手段6によりNsに低減されるので、ここでの積和回数はNs回(複素数換算)となる。同様に、逆フーリエ変換部8では、Nslog2 Ns回(複素数換算)となる。合計で、2Nlog2 N+Ns+Nslog2 Ns回(複素数換算)または、16N+8Nlog2 N+12Ns+4Nslog2 Ns回(実数換算)となる。
【0048】
このように、第1実施例では、乗算部7と逆フーリエ変換部8での積和回数が低減できるので、その分、迅速な同期捕捉を行うことができる。
【0049】
ここで、図7は、第1実施例における全サンプル数と積和計算の回数との関係を示す特性図である。
【0050】
図7において、曲線イは有効サンプル数Nsを、Ns=N/2に低減した際の特性であり、曲線ロは同サンプル数Nsを、Ns=N/8に低減した際の特性である。また、曲線ハは、比較のために挙げた第1フィルタ手段3及び第2フィルタ手段6を用いていない既知の拡散変調信号受信装置の特性であり、曲線ニは同じく比較のために挙げたマッチト・フィルタを用いた既知の拡散変調信号受信装置の特性である。
【0051】
図7の曲線イに示されるように、有効サンプル数Nsを、Ns=N/2に低減した第1実施例の拡散変調信号受信装置は、曲線ハに示されている既知の拡散変調信号受信装置に比べて、積和回数を示す計算量が約81%に低減し、また、曲線ロに示されるように、有効サンプル数Nsを、Ns=N/8に低減した第1実施例の拡散変調信号受信装置は、曲線ハに示されている既知の拡散変調信号受信装置に比べて、積和回数を示す計算量が約68%に低減している。
【0052】
次に、図8は、本発明による拡散変調信号受信装置の第2実施例の要部構成を示すブロック図である
図8において、図1に図示された構成要素と同一の構成要素については同じ符号を付けている。
【0053】
第2実施例と前記第1実施例とを比較すると、第2実施例は、第2フィルタ手段6の出力を乗算器7に供給する際に第1メモリ16を介していること、及び、制御部17は、図1に示された制御部10が制御する各構成部分に加えて第1メモリ16の制御も行っている点において第1実施例と異なっているが、その他の点には相違がない。
【0054】
図8に示される第2実施例の動作について、図1に示される第1実施例の動作と異なる点について説明する。
【0055】
まず、制御部17は、参照信号発生部4及び第2フーリエ変換部5を動作させて、参照周波数領域信号を発生させ、その結果、第2フィルタ手段6を介して帯域制限された有効サンプルが第1メモリ16に出力される。このとき、制御部17は、第1メモリ16に対して、第2フィルタ手段6から出力されるサンプルを第1メモリ16に書き込むと同時に、同じサンプルを乗算器7で出力するように制御する。続く、乗算部7と逆フーリエ変換部8の動作は、第1実施例における動作と同じであるので、逆フーリエ変換部8からは第1実施例で得られた相関信号と同じ相関信号が出力される。制御部17は、以上のような制御を1周期分の参照信号が出力されるまで繰り返す。なお、この場合の積和回数は、第1実施例における積和回数と同じである。
【0056】
1周期分の参照信号が出力された後、同じ参照信号を用いる場合、制御部17は、参照信号発生部4及び第2フーリエ変換部5の動作を停止させて、今度は第1メモリ16に記憶されている有効サンプルを乗算器7に出力させる。このとき、第1メモリ16から出力されるサンプルは、参照信号発生部4及び第2フーリエ変換部5を動作させた場合に、第2フィルタ手段6から出力されるサンプルと同じであるので、逆フーリエ変換部8からは第1実施例で得られた相関信号と同じ相関信号が出力される。このとき、第2フーリエ変換部5は動作していないので、この分の積和回数が第1実施例における積和回数よりも少なくて済む。この場合、合計の積和回数は、Nlog2 N+Ns+Nslog2 Ns回(複素数換算)または、8N+4Nlog2 N+12Ns+4Nslog2 Ns回(実数換算)となる。
【0057】
ここで、図9は、第2実施例における全サンプル数と積和回数との関係を示す特性図であり、第1実施例における図7に対応するものである。なお、図9中における各曲線の符号は図7に示された各曲線の符号と同じである。
【0058】
第2実施例のように、第1メモリ16から有効サンプルを出力させるようにした場合、曲線イに示されているように、Ns=N/2としたとき、曲線ハに示されている既知の拡散変調信号受信装置に比べて、積和回数が約72%に低減し、また、曲線ロに示されているように、Ns=N/8としたとき、曲線ハに示されている既知の拡散変調信号受信装置に比べて、積和回数が約54%に低減する。
【0059】
なお、前記第1及び第2実施例においては、参照信号発生部4では送信機側で発生されるPN符号を参照信号として発生させたが、図10に示されように、PN符号を帯域制限した信号を参照信号として発生させるようにしてもよい。ここで、図10に図示されるような参照信号を参照信号発生部4から発生させ、第2フーリエ変換部5に入力すると、図11に示すような参照周波数領域信号が出力される。続いて、第1実施例の場合と同様に、第2フィルタ手段6の周波数帯域幅を、図11に図示された範囲A’またはB’になるように設定して動作させると、逆フーリエ変換部8から、図12に示されるような相関信号が出力される。なお、図12中における各曲線の符号は図6に示される各曲線の符号と同じである。このような帯域制限されたPN符号を参照信号に用いたとしても、PN符号を用いた場合と同様に、図6に示されるような相関信号が得られる。
【0060】
また、前記実施例においては、参照信号として送信機側で発生されるPN符号または帯域制限されたPN符号を用いたものであるが、本発明による参照信号はこのような符号または信号に限られるものではなく、送信機側で使用されたPN符号と相関が高い符号または信号であれば他の符号または信号であってもよい。
【0061】
さらに、前記第1及び第2実施例においては、第1フィルタ手段3及び第2フィルタ手段6により、図4、図5、図11に示されるように周波数帯域を制限して有効サンプルを抽出している。このとき、第1及び第2実施例の説明で述べたように、直流を中心とした通過周波数帯域幅を1/Tcまで狭帯域化して有効サンプルを抽出しても、図6または図12に示されるように同じ時間で相関値が最大となる相関信号が得られる。上述のようなフィルタは、よく知られているように、ベースバンド拡散変調信号及び参照信号のレートの1/2(=1/2Tc)を通過周波数帯域幅の下限として設定したローパスフィルタによって実現することができる。
【0062】
また、前記実施例においては、1次変調方式にPSK変調を用いた例を挙げて説明したが、本発明による1次変調方式はPSK変調である場合に限られるものでなく、他のディジタル変調方式を用いてもよいことは勿論である。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、第1フーリエ変換部でフーリエ変換したベースバンド拡散変調信号に対し、第1フィルタ手段を用いてその周波数帯域を制限し、また、第2フーリエ変換部でフーリエ変換した参照信号に対し、第2フィルタ手段を用いて同様にその周波数帯域を制限し、乗算部においてはフーリエ変換して周波数帯域を制限したベースバンド拡散変調信号と、フーリエ変換して周波数帯域を制限した参照信号の複素共役信号とを乗算し、逆フーリエ変換部において乗算部から出力された乗算信号を逆フーリエ変換して相関信号を求めるようにしているので、乗算部における乗算信号の発生時及び逆フーリエ変換部における乗算信号の逆フーリエ変換による相関信号の発生時に、それぞれ対象とするサンプル数が大幅に低減され、その結果、相関信号を得るまでの計算量が低減されることになって、迅速に同期捕捉を行うことが可能になるという効果がある。
【0064】
なた、本発明によれば、第2フィルタ手段に第1メモリを設けたことにより、同一の参照信号を繰り返し使用する場合に、フーリエ変換されて周波数帯域が制限された参照信号を第1メモリから読み出すことが可能になり、これによって第2フーリエ変換部の積和の計算量がさらに低減され、より迅速に同期捕捉を行うことが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による拡散変調信号受信装置の第1実施例の要部構成を示すブロック図である。
【図2】送信機側で用いられるPN符号及び本発明の拡散変調信号受信装置側で参照信号として用いられるPN符号の一例を示す波形図である。
【図3】受信部が出力するベースバンド拡散変調信号の一例を示す信号波形図である。
【図4】第1フーリエ変換部でフーリエ変換されたベースバンド拡散変調信号の一例を示す周波数スペクトラムと、第1フィルタ手段が有する周波数帯域幅を合わせて示す特性図である。
【図5】第2フーリエ変換部でフーリエ変換された参照信号(PN符号)の一例を示す周波数スペクトラムと、第2フィルタ手段が有する周波数帯域幅を合わせて示す特性図である。
【図6】参照信号発生部が参照信号(PN符号)を発生する場合に逆フーリエ変換部の出力に得られる相関信号の一例を示す特性図である。
【図7】図1に図示された第1実施例における全サンプル数と積和計算回数との関係を示す特性図である。
【図8】本発明による拡散変調信号受信装置の第2実施例の要部構成を示すブロック図である。
【図9】図8に図示された第2実施例における全サンプル数と積和計算回数との関係を示す特性図である。
【図10】参照信号発生部が参照信号として帯域制限されたPN符号を発生する場合の信号の一例を示す信号波形図である。
【図11】第2フーリエ変換部でフーリエ変換された参照信号(帯域制限されたPN符号)の一例を示す周波数スペクトラムと、第2フィルタ手段が有する周波数帯域幅を合わせて示す特性図である。
【図12】参照信号発生部が参照信号(帯域制限されたPN符号)を発生する場合に逆フーリエ変換部の出力に得られる相関信号の一例を示す特性図である。
【図13】PN符号を用いた拡散変調方式に用いられる信号波形の一例を示す信号波形図である。
【図14】1次(PSK)変調信号、拡散変調信号及び帯域制限された拡散変調信号の周波数スペクトラム分布を示す特性図である。
【図15】PN符号を用いた拡散変調方式の既知の拡散変調信号受信装置における要部構成を示すブロック図である。
【図16】既知の拡散変調信号受信装置における第2フーリエ変換部でフーリエ変換された参照信号(PN符号)の一例を示す周波数スペクトラムを示す特性図である。
【図17】既知の拡散変調信号受信装置における第1フーリエ変換部でフーリエ変換されたベースバンド拡散変調信号の一例を示す周波数スペクトラムを示す特性図である。
【図18】既知の拡散変調信号受信装置における逆フーリエ変換部お出力に得られる相関信号の一例を示す信号波形図である。
【符号の説明】
1 受信部
2 第1フーリエ変換部
3 第1フィルタ手段
4 参照信号発生部
5 第2フィルタ手段
6 第2フーリエ変換部
7 乗算部
8 逆フーリエ変換部
9 復調部
10、17 制御部
11 アンテナ
12 信号出力端子
13 ベースバンド信号発生部
14 アナログ−ディジタル(A/D)変換部
15 第2メモリ
16 第1メモリ
Claims (6)
- PN符号で拡散変調した拡散変調信号を含む電波を受信し、ベースバンド拡散変調信号を発生する受信部と、前記PN符号と相関がある参照信号を発生する参照信号発生部と、前記ベースバンド拡散変調信号及び前記参照信号をフーリエ変換する第1及び第2フーリエ変換部と、前記フーリエ変換したベースバンド拡散変調信号と前記フーリエ変換した参照信号のいずれか一方の複素共役信号と他方の信号とを乗算し、乗算信号を発生する乗算部と、前記乗算信号を逆フーリエ変換して相関信号を発生する逆フーリエ変換部とを備え、前記第1及び第2フーリエ変換部と前記乗算部との間に、前記フーリエ変換したベースバンド拡散変調信号及び前記フーリエ変換した参照信号の周波数帯域幅をそれぞれ制限する第1及び第2フィルタ手段を設けることを特徴とする拡散変調信号受信装置。
- 前記第2フィルタ手段の出力側に第1メモリを設けたことを特徴とする請求項1に記載の拡散変調信号受信装置。
- 前記参照信号は、前記PN符号または前記PN符号の周波数帯域を制限した信号のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の拡散変調信号受信装置。
- 前記第1及び第2フィルタ手段は、通過周波数帯域幅の下限を前記ベースバンド拡散変調信号及び前記参照信号のレートの1/2になるように選択されているローパスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の拡散変調信号受信装置。
- 前記受信部は、前記ベースバンド拡散変調信号を発生するアナログ−ディジタル変換部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の拡散変調信号受信装置。
- 前記受信部は、前記ベースバンド拡散変調信号を一時的記憶する第2メモリを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の拡散変調信号受信装置。
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