JP3560460B2 - 両軸受リールの発音機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発音機構、特に、両軸受リールのハンドル側でリール本体に螺合してスプールに連動する回転軸を押圧することでスプールを制動する制動つまみとリール本体との間に設けられ、制動つまみが回動すると発音する両軸受リールの発音機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、両軸受リールは、1対の側板とハンドルとを有し釣り竿に装着されるリール本体と、側板間でリール本体に回転自在に支持されたスプールとを備えている。ハンドルはスプールとクラッチを介して連結されている。このクラッチをオンした状態でハンドルを回すことでスプールが回転して釣り糸を巻き取るようにしている。また、クラッチをオフするとハンドルとスプールとが遮断されスプールが自由に回転できるようになる。この状態でキャスティングにより釣り糸をスプールから繰り出すようにしている。
【0003】
このキャスティング時には、釣り糸はその先端に装着された仕掛けの重さによってスプールから繰り出される。この糸繰り出し時に、スプールの回転速度が釣り糸の繰り出し速度より速くなると、いわゆる、バックラッシュ現象が生じる。バックラッシュ現象が生じると釣り糸同士が絡み合ったりスプールとリール本体との間に釣り糸がくい込んだりする。
【0004】
このバックラッシュ現象の発生を防止するために、キャスティングコントロール機構と呼ばれるスプールの制動機構が両軸受リールに設けられている。この制動機構は、スプール軸のハンドル側の端部に面してリール本体に設けられた制動操作のための制動つまみと、制動つまみの回動に応じてスプール軸の一端側を押圧する押圧部材と、押圧されたスプール軸の他端側を受ける受け部材とを有している。
【0005】
この制動機構では、制動つまみの回動量によりスプール軸の押圧力を変化させて制動力を調整している。このような制動機構によってスプールを制動することにより、スプールの回転数が過度に速くならずバックラッシュ現象を防止できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような制動機構において、制動力を操作していることや制動量を知らせるために発音機構を設けることが要望されている。前記従来の制動機構では、制動つまみがハンドル側のスプール軸の端部に設けられているので、制動つまみの大きさをコンパクトなものにする必要がある。これは、リール本体のハンドル側にはハンドル軸やスタードラグが装着されているため、スプール軸のハンドル側端部での軸方向及び径方向の空間が制限されているからである。このため、制動つまみの内部に発音機構を設けると制動つまみの大きさがコンパクトなものにならず、スプール軸のハンドル側端部に発音機構を有する制動つまみを設けるのは困難である。
【0007】
そこで、ハンドルと逆側の比較的制限が少ない空間に発音機構を有する制動つまみを設けることが考えられる。しかし、ハンドルと逆側の空間に制動つまみを配置すると、通常ハンドルと逆側の手で釣り竿を握っているので、制動操作の都度釣り竿を持つ手を持ち替えなければならない。また、リールと釣り竿とを一体的に包み込んで保持するパーミングを行おうとすると、制動つまみがじゃまになり、感触を悪くする場合が多い。
【0008】
本発明の課題は、ハンドル側に装着された制動つまみにも装着できるようなコンパクトな発音機構を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明1に係る両軸受リールの発音機構は、両軸受リールのハンドル側でリール本体に螺合してスプールに連動する回転軸を押圧することでスプールを制動する制動つまみとリール本体との間に設けられ、制動つまみが回動すると発音する機構であって、第1部材と、第2部材と、保持部材とを備えている。第1部材は、回転軸の軸端の周囲に制動つまみに対向して配置されリール本体に対して回転不能な部材である。第1部材はリール本体に回転不能に係止されている。第2部材は、制動つまみの前記第1部材に対向する面に回転不能に設けられ第1部材との相対回転により発音する部材である。保持部材は第1部材を制動つまみに軸方向移動不能かつ回転自在に保持する。
【0010】
この発音機構では、制動つまみを回動させると、第2部材が回転してリール本体に回転不能な第1部材と相対回転して発音する。ここでは、第1部材が回転軸の軸端の周囲に制動つまみと対向して配置されかつ第2部材が制動つまみに回転不能に設けられているので、発音機構をハンドル側に設けても制動つまみの径方向及び軸方向の寸法を比較的小さく維持できる。このため、発音機構の構成がコンパクトになる。また、第1部材がリール本体と別に設けられているので、制動つまみがリール本体との螺合により軸方向に移動しても第1部材と第2部材とを常に一定の間隔に配置することができる。さらに、第1部材も制動つまみに保持されるので、制動つまみをリール本体から取り外しても発音機構が分解しない。
【0011】
発明2に係る両軸受リールの発音機構は、発明1に記載の機構において、第1部材及び第2部材のいずれか一方は、他方の部材に対向する面に周方向に間隔を隔てて設けられた多数の凹部を有し、他方の部材は、収納部材と収納部材の凹部のいずれかに対向する位置に進退自在かつ凹部に接触可能に装着された音出しピンと、音出しピンを凹部側に付勢する付勢部材とを有している。
【0012】
この場合には、第1部材と第2部材とが相対回転すると付勢部材により凹部側に付勢された音出しピンが凹部に対して衝突を繰り返して発音する。ここでは、音出しピンにより発音させているので、歯切れがよい音が出る。
【0013】
発明3に係る両軸受リールの発音機構は、発明1又は2に記載の機構において、第2部材は、制動つまみに回転不能に装着されている。この場合には、第2部材が制動つまみと別に設けられているので、制動つまみが軸方向に移動しても第1部材と第2部材とを常に一定の間隔に配置することができる。
【0014】
発明4に係る両軸受リールの発音機構は、発明1又は2に記載の機構において、第2部材は制動つまみと一体で設けられている。この場合には、第2部材が制動つまみと一体であるので、発音機構の構成が簡素化する。
【0015】
発明5に係る両軸受リールの発音機構は、発明2から4のいずれかに記載の機構において、凹部は第2部材に設けられ、音出しピンは第1部材に装着されている。この場合には、制動つまみが回転すると凹部が回転して音出しピンが凹部への衝突を繰り返す。
【0016】
発明6に係る両軸受リールの発音機構は、発明1から5のいずれかに記載の機構において、回転軸は、スプールの中心部に固定されたスプール軸であり、第1部材は、スプール軸の端部の周囲に配置されている。この場合には、スプール軸を直接制動しているの、スプールを確実に制動できる。
【0017】
発明7に係る両軸受リールの発音機構は、発明2から6のいずれかに記載の機構において、音出しピンは、先端が滑らかな凸状の頭部と、頭部に連なって形成され頭部より大径の受け部と、受け部に連なって形成され受け部より小径の軸部とを有する。この場合には、音出しピンの頭部が従来のように受け部と同径ではなく受け部より小径である。このため、付勢部材の付勢力を高く維持でき、かつ質量もそれほど低減しないので歯切れがよく軽快なクリック音を発生できる。しかも、頭部が小径になるので、凹部の間隔を小さくすることができ、発音間隔を短くすることができる。
【0018】
発明8に係る両軸受リールの発音機構は、発明7に記載の機構において、頭部は半球状に突出している。この場合には、頭部が半球状であるので、頭部が凹穴に接触しても回転抵抗が少なくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1及び図2において、本発明の一実施形態による両軸受リールは、ベイトキャスト用のロープロフィール型のリールである。このリールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、リール本体1の内部に回転自在かつ着脱自在に装着された糸巻用のスプール12とを備えている。ハンドル2のリール本体1側には、ドラグ調整用のスタードラグ3が設けられている。
【0020】
ハンドル2は、板状のハンドルアーム2aと、ハンドルアーム2aの両端に回転自在に装着された把手部2bとを有するダブルハンドル形のものである。ハンドルアーム2aは、図3に示すように、ナット2dによりハンドル軸30の先端に回転不能に固定された座板2cに2本のビス2eにより固定されている。このナット2dは、ハンドルアーム2aの内部に収納されて回り止めされている。このため、ハンドルアーム2aの外側面つなぎ目がない滑らかな面で構成することができ、釣り糸が絡みにくい構造となっている。
【0021】
図3に示すように、リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bとを有している。また、リール本体1は、図1及び図2に示すように、前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8とを有している。
【0022】
フレーム5は、図3に示すように所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の側板5a,5bと、これらの側板5a,5bを連結する複数の連結部5c(図5参照)とを有している。下側の2つの連結部5cには、図4及び図5に示すように、リールを釣り竿Rに装着するための前後に長い、たとえばステンレス等の金属製の装着脚部4がネジ止めされている。
【0023】
第1側カバー6aは、スプール12の着脱を可能にするためにフレーム5に揺動自在に装着されフレーム5に対して開閉可能である。第2側カバー6bは、フレーム5にネジ止めされている。前カバー7は、図4及び図5に示すように、リール本体1の前部において側板5a,5b間に装着されている。
【0024】
前カバー7は、その上方に配置されたサムレスト8との間で前部に形成された開口9を有している。開口9は、釣り糸が通過し得るように横長に形成されている。しかし、従来の両軸受リールのようにガイドリング27cが開口9に面して配置されていないので、上下の幅が狭くなっている。開口9の内周面のうち上下面、つまりサムレスト8の前側下部と前カバー7の上面とには、たとえば窒化珪素やジルコニア等の硬質で表面が滑らかなセラミック製の上下のカバー部材10a,10bがそれぞれ装着されている。カバー部材10a,10bは、上下の幅が狭い開口9に釣り糸が接触したときに開口9が傷つかないようにするとともに、接触した釣り糸に作用する抵抗を少なくするために設けられている。カバー部材10a,10bはボルトによりサムレスト8及び前カバー7にそれぞれ固定されている。
【0025】
サムレスト8は、図1、図2及び図4に示すように、平面視コ字状にリール本体1の上部に装着されている。このサムレスト8の前部8aに釣り竿を持つ手H(図1参照)の親指を置くことでパーミングを行える。サムレスト8の上面はそれぞれ上方に凸に湾曲した曲面で構成されている。このサムレスト8の前部の装着脚部4からの高さh(図4参照)は従来の両軸受リールより低くなっている。
【0026】
フレーム5内には、図3に示すように、釣り竿Rと直交する方向に配置されたスプール12と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構15と、サミングを行う場合の親指の当てとなる、クラッチレバー17とが配置されている。またフレーム5と第2側カバー6bとの間には、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構15に伝えるためのギア機構18と、クラッチ機構13と、クラッチ機構13の係脱を行うためのクラッチ係脱機構19と、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構の係脱を制御するための係脱制御機構20と、ドラグ機構21と、スプール12の回転時の抵抗力を調整するためのキャスティングコントロール機構22とが配置されている。また、フレーム5と第1側カバー6aとの間には、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための遠心ブレーキ機構23が配置されている。
【0027】
スプール12は、両側部に皿状のフランジ部12aを有しており、両フランジ部12aの間に筒状の糸巻き胴部12bを有している。また、スプール12は、糸巻き胴部12bの内周側の軸方向の実質的に中央部に一体で形成された筒状のボス部12cを有しており、ボス部12cを貫通するスプール軸16にたとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。この固定方法はセレーション結合に限定されず、キー結合やスプライン結合等の種々の結合方法を用いることができる。
【0028】
スプール軸16は、側板5bを貫通して第2側カバー6bの外方に延びている。その延びた一端は、第2側カバー6bに形成されたボス部6cに軸受24aにより回転自在に支持されている。またスプール軸16の他端は、遠心ブレーキ機構23内で軸受24bにより回転自在に支持されている。これらの軸受24a,24bはシールドボールベアリングである。
【0029】
スプール軸16の大径部分16aの右端は、側板5bの貫通部部分に配置されており、そこにはクラッチ機構13を構成する係合ピン16bが固定されている。係合ピン16bは、直径に沿って大径部分16aを貫通しており、その両端が径方向に突出している。
【0030】
レベルワインド機構15は、図3及び図6に示すように、1対の側板5a,5b間に固定されたガイド筒25と、ガイド筒25内に回転自在に支持されたウォームシャフト26と、ラインガイド27とを有している。
【0031】
ガイド筒25は、後部周面が全長にわたり切り欠かれた円筒状の部材であり、ラインガイド27をスプール軸16の軸方向(釣り竿Rと直交する方向)に案内する。
【0032】
ウォームシャフト26は、ラインガイド27をスプール軸16の軸方向に往復移動させるための軸である。ウォームシャフト26の端部には、ギア機構18を構成するギア28aが固定されている。またウォームシャフト26には交差する螺旋状の溝26aが形成されている。
【0033】
ラインガイド27は、ガイド本体27aと、ガイド本体27aに回転自在に装着された係止軸27bと、ガイド本体27aの上部に上方に突出して配置されたガイドリング27cとを有している。ガイド本体27aにはガイド筒25が貫通するU字状の貫通孔がスプール軸16に平行に形成されており、ガイド本体27aは、ガイド筒25に軸方向に移動自在に支持されている。係止軸27bは、ガイド本体27aの後部にほぼ前後に沿って配置され先端がウォームシャフト26の溝26aに係止されている。係止軸27bは、ウォームシャフト26の回動により溝26aに沿って回動しガイド本体27aを往復移動させる。ガイドリング27cは、たとえばステンレス製の線材を上部を凸にヘアピン状に曲げて形成されており、内周側に長孔が形成されている。ガイドリング27cは、下部がガイド本体27aの後部上面に差し込まれて固定されている。ガイドリング27cの表面は、たとえば窒化チタン等の金属やSiC等のセラミックでコーティングされており、表面が滑らかで硬くなっている。なお、このガイドリング27cは、開口9とスプール12との間にスプール12に近接して配置されている。ガイドリング27cの上部は、下部にガイド溝が形成されたガイド軸25aによりスプール軸16に平行に案内されている。このガイド軸25aは、ガイド筒25の上方にガイド筒25と平行に配置されており、両端が側板5a,5bに固定されている。このように高さが高いガイドリング27cをスプール12に近接して配置することで、サムレスト8の前部8aの高さHを低くすることででき、パーミングしやすくなる。
【0034】
このレベルワインド機構15では、ギア機構18を介してウォームシャフト26が回転させられることにより、ラインガイド27がガイド筒25に沿って往復動する。このラインガイド27のガイドリング27c内に釣り糸が挿通されて釣り糸がスプール12に均一に巻き付けられる。ギア機構18は、ハンドル軸30と、ハンドル軸30に固定されたメインギア31と、メインギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32と、前述のウォームシャフト26端部に固定されたギア28aと、ハンドル軸30に回転不能に固定され、ギア28aに噛み合うギア28bとを有している。このギア機構18のハンドル軸30の上下位置は、サムレスト8の高さを低くするために、従来の位置より低い。このため、ギア機構18を収納する側板5b及び第2側カバー6bの下部は、側板5a及び第1側カバー6aの下部より下方に位置している。ハンドル軸30の先端部は縮径されており、先端部の大径部及び小径部には平行な面取り部30aと雄ネジ部30bとがそれぞれが形成されている。
【0035】
ピニオンギア32は、図3に示すように、側板5bの外方から内方に延び、中心にスプール軸16が貫通する筒状部材であり、スプール軸16に軸方向に移動自在に装着されている。また、ピニオンギア32の図3左端部は、軸受43により側板5bに回転自在かつ軸方向移動自在に支持されている。この軸受43もシールドボールベアリングである。
【0036】
ピニオンギア32は、図3右端側外周部に形成されメインギア31に噛合する歯部32aと、他端側に形成された噛み合い部32bと、歯部32aと噛み合い部32bとの間に形成されたくびれ部32cとを有している。噛み合い部32bは、ピニオンギア32の端面に直径に沿って形成された凹溝からなり、そこにスプール軸16を貫通して固定された係合ピン16bが係止される。ここではピニオンギア32が外方に移動してその噛み合い部32bとスプール軸16の係合ピン16bとが離脱すると、ハンドル軸30からの回転力はスプール12に伝達されない。この噛み合い部32bと係合ピン16bとによりクラッチ機構13が構成される。係合ピン16bと噛み合い部32bとが係合すると、スプール軸16より大径のピニオンギア32からスプール軸16にトルクが直接伝達されるので、ねじれ変形がより少なくなり、トルク伝達効率が向上する。
【0037】
クラッチレバー17は、図2に示すように、1対の側板5a,5b間の後部でスプール12後方に配置されている。フレーム5の側板5a,5bには長孔(図示せず)が形成されており、クラッチレバー17の回転軸17aがこの長孔に回転自在に支持されている。このため、クラッチレバー17は長孔に沿って上下方向にスライドすることも可能である。
【0038】
クラッチ係脱機構19は、図3に示すように、クラッチヨーク40を有している。クラッチヨーク40は、スプール軸16の外周側に配置されており、2本のピン41(一方のみ図示)によってスプール軸16の軸心と平行に移動可能に支持されている。なお、スプール軸16はクラッチヨーク40に対して相対回転が可能である。すなわち、スプール軸16が回転してもクラッチヨーク40は回転しないようになっている。またクラッチヨーク40はその中央部にピニオンギア32のくびれ部32cに係合する係合部40aを有している。またクラッチヨーク40を支持する各ピン41の外周で、クラッチヨーク40と第2側カバー6bとの間にはスプリング42が配置されており、クラッチヨーク40はスプリング42によって常に内方に付勢されている。
【0039】
このような構成で、通常状態では、ピニオンギア32は内方のクラッチ係合位置に位置しており、その噛み合い部32bとスプール軸16の係合ピン16bとが係合してクラッチオン状態となっている。一方、クラッチヨーク40によってピニオンギア32が外方に移動した場合には、噛み合い部32bと係合ピン16bとの係合が外れクラッチオフ状態となる。
【0040】
ドラグ機構21は、ドラグ力を調整操作するためのスタードラグ3と、メインギア31に押圧される摩擦プレート45と、スタードラグ3の回転操作によって摩擦プレート45をメインギア31に所定の力で押圧するための押圧プレート46とを有している。
【0041】
スタードラグ3は、図6に示すように、ハンドル軸30に螺合する調整操作部33と、調整操作部33がハンドル軸30に対して相対回転すると発音する第1発音機構34とを有している。調整操作部33は、操作部本体35と、操作部本体35の内周部に回転不能かつ軸方向移動自在に装着されハンドル軸30に螺合するナット部36とを有している。
【0042】
操作部本体35は、図7に示すように、筒状部35aと筒状部35aの外周面から放射状に延びるアーム部35bとを有している。筒状部35aの内部には、中心部に貫通する角孔35cが形成されており、この角孔35cにナット部36が収納されている。また、筒状部35aの角孔35cの外周側には、ハンドル2側に開口する軸方向に沿った丸穴35dが形成されている。筒状部35aのハンドル2側には薄肉の筒部35eが形成されており、その内周面には環状溝35fが形成されている。
【0043】
ナット部36の中心部にはハンドル軸30の大径部の雄ネジ部30bに螺合するネジ孔36aが形成され、ネジ孔36aの周囲においてハンドル2側側面には環状溝36bが形成されている。
【0044】
第1発音機構34は、調整操作部33に回転自在かつ軸方向移動不能に装着されハンドル軸に回転不能な音出し部材37と、音出し部材37との相対回転により発音する発音動作部38とを有している。
【0045】
音出し部材37は、略円板状の部材であり、操作部本体35の環状溝35fにはめ込まれた六角形状のばね部材39により軸方向に移動不能に操作部本体35の筒部35eに装着されている。音出し部材37の操作部本体35側の側面において丸穴35dに対向する位置には周方向に間隔を隔てて多数の音出し穴37aが形成されている。音出し穴37aの内周側において環状溝36bに対向する位置には環状溝37c(図3参照)が形成されている。音出し部材37の中心部には、ハンドル軸30の大径部側の面取り部30aに係合する小判状孔37bが形成されている。この小判状孔37bによりハンドル軸30に音出し部材37が回転不能に係止される。
【0046】
ナット部36の環状溝36bと音出し部材37の環状溝37cには、コイルばね29が圧縮状態で収納されている。このコイルばね29は、操作部本体35をハンドル2側に接近させるために設けられている。このコイルばね29により操作部本体35は、ナット部36が軸方向に移動してもつねにハンドル2側の所定位置で回転可能である。
【0047】
発音動作部38は、調整操作部33と一体で回転しかつ音出し部材37により脱落が防止された状態で調整操作部33に装着されている。発音動作部38は、筒状部35aの丸穴35d内に進退自在に装着された音出しピン47と、音出しピン47を音出し穴37a側に付勢するコイルばね48とを有している。
【0048】
音出しピン47は、図3に示すように、先端が滑らかな半球凸状の頭部47aと、頭部47aに連なって形成され頭部47aより大径の受け部47bと、受け部47bに連なって形成され受け部47bより小径の軸部47cとを有している。この頭部47aがコイルばね48により付勢されて音出し穴37aに接触可能である。コイルばね48は、軸部47cの外周側に配置され一端が頭部47aに他端が丸穴35dの底壁にそれぞれ当接している。このように、音出しピン47の頭部47aを従来のように受け部と同径ではなく受け部より小径にすると、コイルばね48の付勢力を高く維持でき、かつ質量もそれほど低減しないので歯切れがよく軽快なクリック音を発生できる。しかも、頭部47aが小径になるので、音出し穴37aの間隔を小さくすることができ、発音間隔を短くすることができる。
【0049】
ここで、音出し部材37は操作部本体35に軸方向移動不能に装着され、音出しピン47は音出し部材37により閉塞された丸穴35d内に収納されている。このため、スタードラグ3を分解しても第1発音機構34が分解しない。しかも第1発音機構34がハンドルアーム2a側に設けられていないので、ハンドルアーム2aを第1発音機構34による影響を受けずに自由にデザインできる。このため、前述のようにハンドルアーム2aの外側面を滑らかな曲面で構成できる。
【0050】
キャスティングコントロール機構22は、図3に示すように、スプール軸16の両端を挟むように配置された複数の摩擦プレート51と、摩擦プレート51によるスプール軸16の挟持力を調節するための制動キャップ52と、制動キャップ52内に収納された第2発音機構53とを有している。右側の摩擦プレート51は、制動キャップ52内に装着され、左側の摩擦プレート51は、ブレーキケース65内に装着されている。
【0051】
制動キャップ52は、第2側カバー6bのボス部6cの外周に形成された雄ネジ部6dに螺合している。制動キャップ52の先端部とボス部6cとの間にはOリング54が装着されており、内部への液体の侵入を防止している。制動キャップ52の底面には丸孔52aが形成されている。第2発音機構53は、筒部図6及び図8に示すように、制動キャップ52の回動により発音する機構であり、制動キャップ52に回転不能に装着された音出し部材55と、スプール軸16の軸端の周囲に制動キャップ52に対向して配置された発音動作部56とを有している。
【0052】
音出し部材55は、制動キャップ52の底面内側において摩擦プレート51の外周側に装着された円環状の部材である。音出し部材55の発音動作部56側の側面には、円周方向に間隔を隔てて多数の音出し穴55aが形成されている。音出し部材55の制動キャップ52側の側面には丸孔52aに係合する突起部55bが形成されている。この突起部55bを丸孔52aに挿入することで音出し部材55が制動キャップ52に回転不能に装着される。
【0053】
発音動作部56は、制動キャップ52に回転自在に装着され、かつボス部6cに回転不能に係止された収納部材57と、収納部材57を制動キャップ52に軸方向移動不能に装着するためのネジ部材58と、収納部材57に進退自在に収納された音出しピン59と、音出しピン59を音出し部材55側に付勢するコイルばね60とを有している。
【0054】
収納部材57は大径の鍔部57aがハンドル2側に形成された円筒状の部材である。収納部材57の中心部にはスプール軸16が貫通する貫通孔57bが形成され、貫通孔57bの外周側には、ボス部6cの先端にハンドル2側に突出して形成された扇形の突出部6eに係合する扇形の係止孔57cが形成されている。また、係止孔57cと略中心対称な貫通孔57bの外周側には丸穴57dが形成されている。
【0055】
ネジ部材58は、リング状の部材であり、外周面に雄ネジ部6dと同寸の雄ネジ部58aが形成されている。ネジ部材58の内周面には、鍔部57aより小径で鍔部57aに当接する押圧部58bが形成されている。
【0056】
音出しピン59は、第1発音機構34の音出しピン47と同様な構成であり、丸穴57d内に進退自在に収納されている。音出しピン59は、先端が滑らかな半球凸状の頭部59aと、頭部59aに連なって形成され頭部59aより大径の受け部59bと、受け部59bに連なって形成され受け部59bより小径の軸部59cとを有している。この頭部59aがコイルばね60により付勢されて音出し穴55aに接触可能である。コイルばね60は、軸部59cの外周側に配置され一端が頭部59aに他端が丸穴57dの底壁にそれぞれ当接している。
【0057】
ここでは、収納部材57に音出しピン59及びコイルばね60を収納した状態で音出し部材55及び収納部材57を制動キャップ52に収納し、ネジ部材58を制動キャップ52にねじ込むことで、音出し部材55が制動キャップ52内に回転不能かつ軸方向移動不能に装着され、かつ収納部材57が制動キャップ52に回転自在かつ軸方向移動不能に装着される。しかも、音出しピン59は、音出し部材55により閉塞されて脱落しない。このため、制動キャップ52をボス部6cから外しても第2発音機構53は分解しない。
【0058】
しかも、第2発音機構53をスプール軸16の外周側にボス部6cに連続して配置しかつ音出し部材55が制動つまみ52に回転不能に設けられているので、キャスティングコントロール機構22の径方向及び軸方向の寸法を小さく維持できる。このため、発音機能を有する制動つまみ52をスタードラグ3やハンドル軸30により制限された比較的狭い空間に配置することができる。
【0059】
遠心ブレーキ機構23は、図3に示すように、ブレーキケース65と、ブレーキケース65内に設けられた回転部66と、回転部66に周方向に間隔を隔てて配置され径方向に移動自在に装着された摺動子67とを有している。ブレーキケース65の内周面には摺動子67に接触可能な筒状のブレーキライナー65aが固定されている。ブレーキケース65は、側板5aに形成された円形の開口5dに着脱自在に装着されており、第1側カバー6aとともに揺動する。
【0060】
次にリールの操作方法について説明する。
通常の状態では、クラッチヨーク40はスプリング42によって内方(図3左方)に押されており、これによりピニオンギア32は、係合位置に移動させられている。この状態ではピニオンギア32の噛み合い部32bとスプール軸16の係合ピン16bとが噛み合ってクラッチオン状態となっており、ハンドル2からの回転力は、ハンドル軸30、メインギア31、ピニオンギア32及びスプール軸16を介してスプール12に伝達され、スプール12が糸巻き取り方向に回転する。
【0061】
キャスティングを行う場合には、バックラッシュを抑えるために制動力を調整する。ここでは、たとえばルアー(仕掛け)の質量に応じて制動力を調整するのが好ましい。具体的には、ルアーの質量が大きい場合には制動力を大きくし、小さい場合には小さくする。バックラッシュを抑えるための制動力の調整は、キャスティングコントロール機構22又は遠心ブレーキ機構23で行う。キャスティングコントロール機構22で制動力を調整する場合、制動キャップ52をたとえば時計回りに回転させる。すると雄ネジ部6dに螺合する制動キャップ52が図6左側に前進し、両摩擦プレート51の間隔が狭くなりスプール軸16への制動力が強くなる。また、逆に反時計回りに回転させると制動力が弱くなる。このように制動キャップ52を回動させると、音出し部材55が制動キャップ52とともに回転する。一方、ボス部6cに係止された収納部材57に収納された音出しピン59は回転しないので、音出しピン59が音出し穴55aへの衝突を繰り返して発音する。
【0062】
制動力を調整し終わると、クラッチレバー17を下方に押す。ここでは、クラッチレバー17は、側板5a,5bの長孔に沿って下方の離脱位置に移動する。そしてクラッチレバー17の移動により、クラッチヨーク40が外方に移動し、クラッチヨーク40に係合したピニオンギア32も同方向に移動させられる。この結果、ピニオンギア32の噛み合い部32bとスプール軸16の係合ピン16bとの噛み合いが外れ、クラッチオフ状態となる。このクラッチオフ状態では、ハンドル軸30からの回転はスプール12及びスプール軸16に伝達されず、スプール12は自由回転状態になる。クラッチオフ状態として、クラッチレバー17においた親指でスプールをサミングしながらスプール軸16が鉛直面に沿うようにリールを軸方向に傾けて釣り竿を振ると、ルアーが投げられスプール12が糸繰り出し方向に勢いよく回転する。
【0063】
このような状態では、スプール12の回転によりスプール軸16が糸繰り出し方向に回転し、その回転が回転部材66に伝達される。回転部材66が回転すると、摺動子67がブレーキライナー65aに摺接して遠心ブレーキ機構23によりスプール12が制動される。同時に、スプール軸16がキャスティングコントロール機構22により制動されバックラッシュを防止できる。
【0064】
仕掛けが着水すると、ハンドル2を回転させる。すると図示しないリターン機構によりクラッチオン状態になる。この状態でたとえばリトリーブを繰り返して魚の当たりを待つ。魚がヒットするとハンドル2を回転させて釣り糸を巻き取る。このとき、魚の大きさによりドラグ力を調整する必要が生じることがある。このときには、スタードラグ3を時計回り又は反時計回りに回転させてドラグ力を調整する。スタードラグ3を回転させるとナット部36が軸方向に前後進してドラグ力が変化する。このとき音出し部材37は、ハンドル軸30に係止されているので回転しない。このため、音出しピン47が音出し穴37aへの衝突を繰り返し発音する。
【0065】
一方、清掃等の理由によりスタードラグ3を分解する際には、まず、ビス2eを外してハンドルアーム2aをハンドル軸から取り外す。続いてナット2dをハンドル軸30から取り外して座板2cを取り外す。座板2cを取り外すとスタードラグ3のうち、操作部本体35をハンドル軸30から取り外すことができる。このとき、音出し部材37がばね部材39により操作部本体35から脱落しないように装着されているので、第1発音機構34が分解することがない。なお、第1発音機構34を分解するには、ばね部材39を操作部本体35から取り外せばよい。
【0066】
また、キャスティングコントロール機構22を分解する際には、まず、制動キャップ52を反時計回りに回転させてボス部6cから取り外す。この状態では、ネジ部材58により収納部材57が制動キャップ52から脱落しないように装着されているので、第2発音機構53が分解することがない。なお、第2発音機構53を分解するには、ネジ部材58を制動キャップ52から取り外せばよい。
【0067】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、手動の両軸受リールを例に説明したが、電動の両軸受リールにも本発明を適用できる。
【0068】
(b) 音出しピンと音出し部材の配置は前記実施形態に限定されるものではない。
【0069】
(c) 発音機構の構成は、音出しピンと音出し穴を有する音出し部材とに限定されるものではなく、2つの部材の相対回転により発音する構成であればどのような構成でもよい。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、第1部材が回転軸の軸端の周囲に制動つまみと対向して配置されかつ第2部材が制動つまみに回転不能に設けられているので、発音機構をハンドル側に設けても制動つまみの径方向及び軸方向の寸法を比較的小さく維持できる。このため、発音機構の構成がコンパクトになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による両軸受リールの斜視図。
【図2】その平面図。
【図3】その横断面図。
【図4】その正面図。
【図5】図4のV−V断面図。
【図6】ハンドル軸端部の断面拡大図。
【図7】スタードラグの分解斜視図。
【図8】キャスティングコントロール機構の分解斜視図。
【符号の説明】
1 リール本体
2 ハンドル
52 制動キャップ
53 第2発音機構
55 音出し部材
55a 音出し穴
56 発音動作部
57 収納部材
58 ネジ部材
59 音出しピン
59a 頭部
59b 受け部
59c 軸部
60 コイルばね
Claims (8)
- 両軸受リールのハンドル側でリール本体に螺合してスプールに連動する回転軸を押圧することで前記スプールを制動する制動つまみと前記リール本体との間に設けられ、前記制動つまみが回動すると発音する両軸受リールの発音機構であって、
前記回転軸の軸端の周囲に前記制動つまみに対向して配置され前記リール本体に対して回転不能に係止された第1部材と、
前記制動つまみの前記第1部材に対向する面に回転不能に設けられ前記第1部材との相対回転により発音する第2部材と、
前記第1部材を前記制動つまみに軸方向移動不能かつ回転自在に保持する保持部材と、
を備えた両軸受リールの発音機構。 - 前記第1部材及び第2部材のいずれか一方は、他方の部材に対向する面に周方向に間隔を隔てて設けられた多数の凹部を有し、
前記他方の部材は、収納部材と、前記収納部材の前記凹部のいずれかに対向する位置に進退自在かつ前記凹部に接触可能に装着された音出しピンと、前記音出しピンを前記凹部側に付勢する付勢部材とを有する、請求項1に記載の両軸受リールの発音機構。 - 前記第2部材は、前記制動つまみに回転不能に装着されている、請求項1又は2に記載の両軸受リールの発音機構。
- 前記第2部材は、前記制動つまみと一体で設けられている、請求項1又は2に記載の両軸受リールの発音機構。
- 前記凹部は前記第2部材に設けられ、前記音出しピンは前記第1部材に装着されている、請求項2から4のいずれかに記載の両軸受リールの発音機構。
- 前記回転軸は、前記スプールの中心部に固定されたスプール軸であり、前記第1部材は、前記スプール軸の端部の周囲に配置されている、請求項1から5のいずれかに記載の両軸受リールの発音機構。
- 前記音出しピンは、先端が滑らかな凸状の頭部と、前記頭部に連なって形成され前記頭部より大径の受け部と、前記受け部に連なって形成され前記受け部より小径の軸部とを有する、請求項2から6のいずれかに記載の両軸受リールの発音機構。
- 前記頭部は半球状に突出している、請求項7に記載の両軸受リールの発音機構。
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