JP3555412B2 - 磁気抵抗センサ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗センサに関し、例えば磁気抵抗素子を用いて、回転ドラム等の回転周波数を検出するものに利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来の磁気抵抗センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0003】
従来、磁気抵抗センサは、特開平8−5400号公報に記載したものが知られている。
【0004】
図17は従来の磁気抵抗センサの模式図である。
図17において、1は磁気抵抗センサ全体である。2は所定の磁極幅でN極およびS極とを等間隔に複数連続して着磁した磁気スケールである。3は磁気スケール2に面対向して配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子3の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子4、接地端子5が設けられ、この電源電圧Vcc端子4と接地端子5との中点に出力端子6が設けられている。また、7は信号磁界(メイン磁界)の方向を示し、N極から隣接するN極までの距離をλとする。
【0005】
以上のように構成された従来の磁気抵抗センサについて、以下にその動作を説明する。
【0006】
図18は従来の磁気抵抗センサの使用例を説明する模式図である。
図18において、9はN極およびS極とを等間隔で回転ドラムの側面に着磁した磁石でなる磁気スケールである。10は磁気スケール9に面対向に配された磁気抵抗センサの要部である磁気抵抗素子である。11は磁気スケール9と磁気センサの磁気抵抗素子10との距離(以下、「ギャップ長g」と記す。)を示す。
【0007】
以上の構成において、磁気スケール9が回転することによって生じる磁界の変化を磁気センサの磁気抵抗素子10で検出し、この結果得られる出力電圧(以下、MR出力VMR」と記す。)を周波数信号として出力するようになされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように構成された従来の磁気抵抗センサは、磁気抵抗センサを組み立てる際の部品成形精度を向上させなくてはならず、磁気抵抗センサの動作中の温度の変化等が原因で磁気抵抗素子と磁気スケールとの間のギャップ長gが所定ギャップ長に対して狭くなった場合、図19に示すように磁気抵抗センサの磁気抵抗素子3の電極から検出されるMR出力VMRの中心付近の出力波形が湾曲してしまい、湾曲したMR出力VMRと電源電圧Vccの1/2の電圧値との交点でパルスを発生させ、これを位置信号として用いているため、出力波形の中心付近の湾曲はパルスの発生位置の精度をばらつかせてしまうため、磁気抵抗センサとして特性が劣るという課題を有していた。
【0009】
また、従来の磁気抵抗素子ではMR出力VMRの湾曲を防止するために、磁気スケールの磁極幅に対する磁気抵抗素子の検出領域幅を最適化する試みがなされているが、出力電圧の低下を伴うため回路処理上新たな解決手段を講じなければならないという課題を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、磁気抵抗素子と磁気スケールとの間のギャップ長gが所定ギャップ長に対して狭くなった場合でも、出力波形が湾曲せず、またギャップ長gの変化に対して高い出力を安定して得られる磁気抵抗センサを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、磁性層と非磁性層とを交互に複数層積層してなる人工格子膜を使用し、検出方法の最適化を行い、従来に対して良好なる出力を得るものである。
【0012】
以下に従来の磁気抵抗素子と比較しながら人工格子膜の磁気特性について説明する。
【0013】
まず従来の磁気抵抗素子は強磁性金属で形成され、一般の強磁性金属に於いては、電気抵抗は磁化方向と電流方向とが平行の時最大、両者が直交したとき最小となる。異方性磁気抵抗効果の大きさを表す量としては、Δρ=ρ(PARALELL)−ρ(PERPENDICULAR)と印加磁場0のときの抵抗値ρ0との比Δρ/ρ0(磁気抵抗変化率)が用いられる。室温におけるΔρ/ρ0が大きい材料としては、Ni−Co系、Ni−Fe系合金が知られている。これらのΔρ/ρ0は3%程度である。
【0014】
これに対して人工格子膜は、NiFeCo等の強磁性層とCu等の非強磁性金属を交互に積層することにより成り、RKKY的磁気結合により隣接する磁性層が反強磁性的に結合したとき大きな磁性抵抗効果を示す。
【0015】
人工格子膜と従来の強磁性金属膜との最大の違いは、その磁気抵抗変化率の大きさと、磁気異方性と抵抗値変化の方向にある。磁気抵抗変化率は強磁性金属膜の最大3%に対して人工格子膜では少なくとも10%以上である。また磁気異方性と抵抗値変化をする方向に対しては、強磁性金属膜は磁化された方向と電流方向が垂直の場合抵抗値が小さくなるのに対し、人工格子膜では磁化されるとほぼ等方的に抵抗値が小さくなる。このため、磁気抵抗素子の飽和磁界を計算する際、必要な式は
Hk=Ha+4πIs・T/W
Hk:素子の異方性磁界
Ha:磁性膜本来の異方性磁界
Is:飽和磁化
T/W:反磁界定数
で表されるが、強磁性金属膜の場合、電流方向即ちパターン長手方向に対し磁界が垂直のため
T:膜厚、W:パターン幅
であり、人工格子膜の場合は、電流方向即ちパターン長手方向に対し磁界が平行でもよく、このとき
T:パターン幅、W:パターン長
で示される。
【0016】
この為感磁パターン形状も信号磁界を最大限の効率で検出するパターン設計が必要である。人工格子膜の特性を踏まえ、磁界の方向と平行に感磁パターンを配置することにより、従来の強磁性金属膜を用いた磁性抵抗センサより大きい出力を効率よく得ることができる。
【0017】
また中心付近の出力波形の湾曲を防止しようとするには、所定のN極及びS極を等間隔で複数連続して着磁した磁気スケールと磁気抵抗素子を面対向して配置し、磁気スケールと磁気抵抗素子との相対的な位置の移動変化による磁気の変化を磁気抵抗素子で検出し、電圧変化として出力する磁気抵抗センサにおいて、磁気抵抗素子は、磁気スケールのN極及びS極の並び方向に対して平行な方向に伸張し、かつN極及びS極の並び方向にλ/4の0.8〜1.0倍の感磁パターン幅(d)を有する磁気抵抗素子の折り返し帯状パターンが形成された感磁パターンを、磁気スケールの並び方向にλ/4の間隔で並べてなる第1及び第2の感磁パターンをシリーズ接続し、当該第1および第2の感磁部の両端に直流電圧を印加すると共に、第1及び第2の感磁部の接続点を出力端子とするものにより構成するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、所定の磁極幅でN極およびS極とを等間隔に複数連続して着磁した磁気スケールと、磁気抵抗素子とを面対向して配置し、前記磁気スケールと前記磁気抵抗素子との相対的な位置の移動変化による磁界の変化を前記磁気抵抗素子で検出し、電圧の変化として出力する磁気抵抗センサにおいて、前記磁気抵抗素子はNi−Fe−Co合金からなる磁性層とCuからなる非磁性層とを複数層積層してなる人工格子膜からなり、前記磁気抵抗素子である人工格子膜は、概長方形のパターン形状に加工され、前記パターン形状の長手方向が電流の流れる方向と同一であるとともに前記磁気スケールの信号磁界に略平行に配置され、前記磁気スケールのN極およびS極の並び方向に対して前記人工格子膜の長手方向の中心線が一致するように設け、かつ前記人工格子膜のパターンは、「λ/4×0.8<d<λ/4×1.0(ただし、λはN極から隣接するN極までの距離、dは人工格子膜の感磁パターンの磁気スケールのN極およびS極との並び方向の幅)」としたものであり、磁気抵抗素子と磁気スケールとの間のギャップ長gが所定ギャップ長に対して狭くなった場合でも出力波形が湾曲しにくいとともにさらに高いMR出力VMRを得られるという作用を有するものである。
【0019】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の磁気抵抗素子である人工格子膜のパターン形状を、磁気スケールのN極およびS極の並び方向に略直交する方向に、つづら折りにして設けたものであり、磁気抵抗素子を限られたスペース内でN極およびS極の並び方向に平行に感磁パターンを描画し、描画面積を増加させることにより、抵抗値を増加させることができるという作用を有するものである。
【0020】
また請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の磁気抵抗素子である磁気抵抗素子の人工格子膜の感磁パターンは、磁気スケールのλ/2の整数倍に隔てて配置されるとともに、すべて直列に接続することにより、一対の感磁パターンのときに対してAM変調率を改善することができるという作用を有するものである。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の磁気抵抗素子である磁気抵抗素子の人工格子膜の感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅を、つづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅より狭くすることにより、漏洩磁界の影響を抑制し、AM変調率を抑制することができるという課題を有するものである。
【0022】
(実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサの模式図である。
図1において、21は磁気抵抗センサ全体である。25はN極およびS極とを等間隔で着磁した磁気スケールである。26は磁気スケール25に面対向するように設けられた磁気を検出する磁気抵抗素子である人工格子膜で、この磁気抵抗素子である人工格子膜26は、Ni−Fe−Co合金からなる磁性層とCuからなる非磁性層とを複数層積層してなるものである(dは人工格子膜の感磁パターンの幅)。この磁気抵抗素子である人工格子膜26は2つの概長方形の短形状の感磁パターン27,28をシリーズ接続して形成され、感磁パターン27,28のパターン形状の長手方向が電流の流れる方向31と同一であるとともに、磁気スケール25の信号磁界(メイン磁界)方向29に略平行に配置されるとともに、この感磁パターン27,28のパターン形状の概長方形の短形部分の中心が磁気スケール25のN極から隣接するS極までの距離である磁極幅λの1/4に設けられて磁気スケール25のN極およびS極との並び方向と磁気抵抗素子である人工格子膜26の長手方向の中心線が一致するように設けられかつ、磁気抵抗素子である人工格子膜26のパターンは、「λ/4×0.8<d<λ/4×1.0(ただし、λは磁気スケールのN極から隣接するN極までの距離、dは人工格子膜の感磁パターン(感磁パターンとは磁気抵抗素子を概長方形のパターン形状に加工された磁界感知部分)の磁気スケールのN極およびS極との方向の幅)」に設けられている。
【0024】
磁気抵抗素子である人工格子膜26の両端には、それぞれ電源電圧Vcc端子24、接地端子22が設けられ、この電源電圧Vcc端子24と接地端子22との中点に出力端子23が設けられている。磁気抵抗センサ21では、矢印30で示される磁気スケール25のN極とS極の磁極との並び方向に対して、感磁パターン27,28の長手方向が略平行に配置され、また所定のギャップ長gを保持して配される。磁気抵抗センサ21は、この磁気抵抗素子である人工格子膜26に電源電圧Vcc(本実施の形態では、Vcc=5V印加)を印加し、磁気スケール25を磁気抵抗素子である人工格子膜26に対して相対的に移動させ、この磁気スケール25の相対的な移動によって生じる磁界の変化を磁気抵抗素子26によって検出し、出力端子23より出力電圧(MR出力VMR)として出力するものである。
【0025】
図2は本発明の一実施の形態における要部である磁気抵抗素子部の断面図である。
【0026】
図2において41はアルミナ等からなる方形の基板である。42は基板41の上面と側面とを覆うように設けられたガラス等からなるグレーズ層である。43はグレーズ層42の上面に設けられた人工格子膜を用いた所望の感磁パターンで、図3に本発明の一実施の形態における要部である磁気抵抗素子である人工格子膜の感磁パターンの拡大した断面を模式した図に示す通り、磁気抵抗素子である人工格子膜43は、Ni−Fe−Co合金からなる磁性層48とCuからなる非磁性層49とを交互に複数層積層して設けられるものである。
【0027】
46は方形の基板41の角部に磁気抵抗素子である人工格子膜26の感磁パターン43と電気的に接続するように設けられた銀パラジウム等からなる電極層である。45は磁気抵抗素子である人工格子膜26の感磁パターン43を覆うように設けられたフェノール形の樹脂等からなる保護膜である。44は第1の保護膜45の上面に設けられ第1の保護膜45よりも面積が小さく、第1の保護膜45より硬いフェノール系の樹脂等からなる第2の保護膜である。47は基板41の下面に電極層46と電気的に接続するように設けられたリン青銅等からなるリード端子である。
【0028】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子部について、以下にその製造方法を図面を参照しながら説明する。
【0029】
図4は本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサの要部である磁気素子部の製造工程図である。
【0030】
まず、図4(a)に示すように、アルミナ等からなる方形の基板41の上面に必要に応じて印刷等の工程でガラスペースト等を塗布してグレーズ層42を形成する。
【0031】
次に、基板41の角部に銀パラジウム等の金属ペーストを用いて電極層46を形成するとともに、グレーズ層42の上面に電極層46と電気的に接続するようにスパッタ装置等で、フォトリソグラフィー等の工法を用いて概長方形の形状に加工した感磁パターンを有する磁気抵抗素子の人工格子膜43を形成する。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、少なくとも磁気抵抗素子の人工格子膜43を覆うように前工程で得られた基板41の上面に、フェノール系の樹脂等を印刷・乾燥させ、第1の保護膜45を形成した後、この第1の保護膜45の上面に第1の保護膜45より面積が小さくなるように、第1の保護膜45よりも硬いフェノール系の樹脂等の第2の保護膜44を形成する。
【0033】
次に、図4(c)に示すように、素子50の下面に電極層46と電気的に接続するようにリン青銅等からなる金属をはんだ付けし、リード端子47を形成し、磁気抵抗素子26を製造する。
【0034】
以下に、磁気抵抗素子26の材料に従来の強磁性金属膜ではなく、人工格子膜を用いる利点の説明を磁気特性を踏まえて説明する。
【0035】
一般に、磁気抵抗センサ21として必要なパターニングによる磁気感度の向上は一般に異方性磁界強度(Hk)を小さくすることにより行う。
【0036】
図5は本発明の一実施の形態における要部である人工格子膜の磁気抵抗変化率と磁気強度の関係(磁気特性)を示す。図で図5(a)は、信号磁界の方向と感磁パターンの長手方向が垂直の時の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を示したもの、図5(b)は平行の時のものである。ここで図5(b)の条件の方が、異方性磁界強度(Hk)が小さく磁気感度が高いのが確認できる。
【0037】
また、図6は従来の磁気センサの要部である強磁性金属膜の磁気抵抗変化率と磁気強度の関係を示したもので、図6(a)は信号磁界30の方向と感磁パターンの長手方向が垂直の時の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を示したもの、図6(b)は平行の時のものである。
【0038】
図5と図6とを比較すると、本実施の形態で用いる人工格子膜の方が従来の強磁性金属膜より、磁気抵抗変化率が約5倍以上あり、大きな出力が期待できる。また、信号磁界30と感磁パターンの長手方向が平行な場合、強磁性金属膜では磁気抵抗変化率がほとんどないのに対して人工格子膜は信号磁界30と感磁パターンの長手方向が垂直な場合より磁気感度が高い。
【0039】
以上のように、本実施の形態で用いる人工格子膜と従来の強磁性金属膜とでは磁気特性が大きく異なり、人工格子膜の特徴を最大限に生かすには、独自のパターン形状が必要になるのが確認できる。
【0040】
そこでパターニングによる磁気感度の向上は、人工格子膜の感磁パターン27,28において、S極およびN極の並び方向(信号磁界の方向)に平行に配置することにより磁気感度が向上することができる。
【0041】
以下に、磁気抵抗センサ21の出力波形の湾曲の防止と出力電圧について述べる。
【0042】
まず、磁気抵抗素子である人工格子膜26の「感磁パターン幅d」を変化させ、その結果磁極幅との比「d×4/λ」を変化させることによってMR出力VMRを変化させ得る。以上の時の「d×4/λ」とMR出力VMRとの関係を図7に示す(「ギャップ長g」は、20μmに固定)。
【0043】
図7において、d×4/λ=0.2(A)、d×4/λ=0.4(B)、d×4/λ=0.6(C)、d×4/λ=0.8(d)、d×4/λ=1.0(E)、d×4/λ=1.2(F)とd×4/λの値を大きくするに従ってMR出力VMRの中心部における出力波形の湾曲が少なくなっていき、d×4/λが0.8においては、ギャップ長=20μmにおいても湾曲が見られなくなるのが確認できる。またd×4/λをさらに大きくしても湾曲は現れなくなっているのが確認できる。
【0044】
したがって感磁パターン幅dを0.8λ以上にすれば、ギャップ長gが狭くなった場合でも湾曲が発生せず精度の良い磁気抵抗素子である人工格子膜26を実現することができる。
【0045】
以下に、図8は各々の「d×4/λ」の値におけるギャップ長と出力電圧の値の関係を示す。図8において、横軸は素子面から磁気スケール表面までの距離、縦軸は印加電圧5V時の出力電圧の値である。
【0046】
図7より、「d×4/λ」を0.8以上広げることにより出力の湾曲が防げることが確認できた。しかし、図8に示すように「d×4/λ」の値が大きいほど同じギャップ長での出力電圧は小さくなり、「d×4/λ=1.0以上」の場合はMR出力VMHの減少が著しくなる。出力電圧が小さいと処理回路上で問題点が生じてくるためd×4/λの値は1.0以下に規定することができる。
【0047】
また、出力電圧は大きいほどS/N比の点から有利になることから、「d×4/λ」の最適値は約0.8付近とすることができる。
【0048】
以上の構成によれば、感磁パターンの材料に磁気抵抗素子である人工格子膜を用い、さらに磁気抵抗素子である人工格子膜26と面対向する磁気スケール25とのギャップ長gが狭く出力電圧の中心部分の出力波形に湾曲が発生するような場合、磁気スケール25に面対向する磁気抵抗素子である人工格子膜26の感磁パターン幅dを広げ、感磁パターン幅dと感磁幅λとの比「d×4/λ」を約0.8にすることにより、ギャップ長gが狭い場合でもMR出力VMRの中心付近の出力波形の湾曲が少ない精度の良い、高出力の磁気抵抗センサ21を実現することができる。なお比較のため、図8のAは従来の強磁性金属膜を用いた磁気抵抗素子のMR出力VMRを示すが、これより明らかなように磁気抵抗素子である人工格子膜を用いた方が、従来の強磁性金属膜を用いた時より2〜6倍の出力を得ることができるのを確認できる。
【0049】
図9は本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図である。
【0050】
図9において、61は磁気スケール(本図では、図示せず)に面対向に配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子61の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子62、接地端子64が形成され、この電源電圧Vcc端子62と接地端子64の中点に出力端子63が形成されている。65,66は感磁パターンがつづら折りされた基礎感磁パターンを示す。所定の抵抗値を得るためには、図9のように人工格子膜のパターン形状は、磁気スケールのN極およびS極の並び方向に略直交する方向につづら折りすることにより、磁気抵抗素子61において、限られたスペース内でN極およびS極の並び方向に平行に感磁パターンを描画し、描画面積を増加させることにより所定の抵抗値を得ることができる。
【0051】
さらに上述の実施の形態においては、一対の感磁パターンをシリーズ接続し、その中点に1つの出力端子を形成した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、シリーズ接続した一対の感磁パターンを、λの所定整数倍の間隔を離した位置に複数個接続するようにしても良い。この場合、一対の感磁パターン単体のときに比して一層感度を上げる事ができる。図10はキャプスタンモータに組み込んだ際の出力波形に及ぼすモータの駆動用マグネットの漏洩磁界の影響を調べたものである。横軸は素子面から磁気スケールまでのギャップ長、縦軸は出力電圧のAM変調率(モータの回転子が一回転した時の(最大出力−最小出力)/最小出力の百分率であり値の小さい方が良い)を示す。図のAは一対の感磁パターンの場合、Bは二対の感磁パターンの場合のAM変調率で、両者を比較すると、二対の感磁パターンの方(B)がAM変調率が小さく、漏洩磁界の影響を受け難いのが確認できる。
【0052】
さらに、図11、図12は本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図である。
【0053】
図11において、71は磁気スケールに面対向に配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子71の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子74、接地端子72が形成され、この電源電圧Vcc端子74と接地端子72との中点に出力端子73が形成されている。75,76は感磁パターンがつづら折りされた基礎感磁パターンを示す。またaは感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示し、bはつづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示す。
【0054】
図12において、78は磁気スケールに面対向に配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子78の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子81、接地端子79が形成され、この電源電圧Vcc端子81と接地端子79との中点に出力端子80が形成されている。82,83は感磁パターンがつづら折りされた基礎感磁パターンを示す。またaは感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示し、bはつづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示す。
【0055】
ここで図12はa=bの感磁パターンの磁気抵抗素子78、図11はa=2bにした感磁パターンの磁気抵抗素子71であり、上述の2つの形状の感磁パターンを有する磁気抵抗素子においてのAM変調率とギャップ長との関係を示したのが図13である。
【0056】
図13において、横軸は素子面から磁気スケールまでのギャップ長、縦軸は出力電圧のAM変調率を示し、Aは図12の磁気抵抗素子78の場合のAM変調率、Bは図11の磁気抵抗素子71の場合のAM変調率を示す。図13が示すようにA,Bを比較するとBの方がZM変調率が小さく、漏洩磁界の影響を受け難いのが確認できる。
【0057】
なお、本実施の形態では、人工格子膜の磁気抵抗素子のパターン形状の基本模式図を図1,図9,図11に示したが図14に示すようなパターン形状にすると図1,図9,図11の特長を生かした、狭いギャップでも波形に歪みが生じず、ヒステリシスをおさえ、所定の抵抗値を有し、AM変調率が小さいという特性がさらに得られる。図14において、80は磁気抵抗素子を示し、磁気抵抗素子80にはそれぞれ電源電圧Vcc端子81、接地端子82が形成され、この電源電圧Vcc端子81と接地端子82との中点に出力端子83,84が形成されている。また85は感磁パターンをつづら折りして形成された基礎感磁パターンであり、86はその基礎感磁パターンを電気的に導通させ、直列接続させるための引き回し部分である。またlは基礎感磁パターンの磁気スケールの並び方向に対して垂直な方向の長さを示す。
【0058】
また、比較のために従来例として強磁性金属膜のパターン形状を図15に示す。90は磁気抵抗素子を示し、磁気抵抗素子90にはそれぞれ電源電圧Vcc端子91、接地端子92が形成され、この電源電圧Vcc端子91と接地端子92との中点に出力端子93,94が形成されている。95は感磁パターンをつづら折りして形成された基礎感磁パターンであり、96はその基礎感磁パターンを電気的に導通させ、直列接続させるための引き回し部分である。
【0059】
ここで上述の図14と図15の磁気抵抗素子の出力電圧とギャップ長との関係を図16に示す。
【0060】
図16において、横軸は素子面から磁気スケール表面までの距離、縦軸は印加電圧5V時の出力電圧の値である。またAは図14の形状の磁気抵抗素子で材料は人工格子膜を用いた場合の出力特性で、Bは図15の形状の磁気抵抗素子で材料は強磁性金属膜を用いた場合の出力特性である。
【0061】
AとBを比較するとAの方が倍以上の出力が確認できる。
また図14の磁気抵抗素子80のように、lの長さを従来より短くし、漏洩磁界の影響の少ない方向に、基礎感磁パターン85を配置することにより、AM変調率が小さくなる。
【0062】
さらに上述の実施の形態においては、本発明を一相の磁気抵抗センサについて述べたが、本発明はこれに限らず、二相、三相等、多相の磁気抵抗センサに対して用いれば、出力の中心付近の直線性が改善され、検出精度を一層向上させ得る。
【0063】
さらに上述の実施の形態においては、磁気スケールと磁気抵抗素子との相対的な位置移動を発生させるのに、回転ドラムでなる磁気スケールを回転させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばリニアモータにおける場合のように、直線運動による相対的な位置移動から、磁界の変化を検出するようにしても良い。また磁気スケールと磁気抵抗素子との位置移動は相対的なものではないので、磁気スケール又は磁気抵抗素子のどちらかが位置移動しても良い。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明の請求項1に記載の発明は、人工格子膜を用い、なおかつ磁気抵抗素子の感磁パターンを磁気スケールの一定の磁極幅(λ/4)の0.8〜1.0倍の間に設定することにより、磁気抵抗素子と磁気スケールとの対向間隔を狭めても、出力波形に湾曲が発生せず安定した高出力を得ることができる磁気抵抗センサを提供できるものである。
【0065】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、所定の抵抗値を得るためには、磁気抵抗素子である人工格子膜のパターン形状をつづら折りすることにより、磁気抵抗素子を限られたスペース内でN極およびS極の並び方向に平行に感磁パターンを描画し、描画面積を増加させることにより、所定の抵抗値を得ることができる磁気センサを提供できるものである。
【0066】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、シリーズ接続した一対の感磁パターンを、λ/4の所定整数倍の間隔を離した位置に複数個接続することにより、一対の感磁パターン単体のときに比してAM変調率を改善した磁気センサを提供できるものである。
【0067】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅を、つづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅より狭くすることにより、AM変調率を改善した磁気センサを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサの模式図
【図2】同要部である磁気抵抗素子部の断面図
【図3】同要部である人工格子膜を拡大した断面図
【図4】同要部である磁気抵抗素子部の工程図
【図5】同要部である人工格子膜の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を説明する図
【図6】従来の強磁性金属膜の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を説明する図
【図7】本発明の一実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の感磁パターン幅とMR出力VMRに発生する中心付近の湾曲との関係を示す信号波形図
【図8】本発明の一実施の形態に磁気センサおよび従来の磁気センサの要部である磁気抵抗素子のギャップ長と出力電圧との関係を説明する図
【図9】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図10】同要部である磁気抵抗素子におけるギャップ長と出力電圧との関係を説明する図
【図11】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図12】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図13】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子のギャップ長とAM変調率との関係を説明する図
【図14】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図15】従来の磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図16】本発明の他の実施の形態における磁気センサおよび従来の磁気センサの要部である磁気抵抗素子のギャップ長と出力電圧の関係を説明する図
【図17】従来の磁気抵抗センサの模式図
【図18】同使用例を説明する模式図
【図19】同信号波形図
【符号の説明】
25 磁気スケール
26 人工格子膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗センサに関し、例えば磁気抵抗素子を用いて、回転ドラム等の回転周波数を検出するものに利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来の磁気抵抗センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0003】
従来、磁気抵抗センサは、特開平8−5400号公報に記載したものが知られている。
【0004】
図17は従来の磁気抵抗センサの模式図である。
図17において、1は磁気抵抗センサ全体である。2は所定の磁極幅でN極およびS極とを等間隔に複数連続して着磁した磁気スケールである。3は磁気スケール2に面対向して配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子3の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子4、接地端子5が設けられ、この電源電圧Vcc端子4と接地端子5との中点に出力端子6が設けられている。また、7は信号磁界(メイン磁界)の方向を示し、N極から隣接するN極までの距離をλとする。
【0005】
以上のように構成された従来の磁気抵抗センサについて、以下にその動作を説明する。
【0006】
図18は従来の磁気抵抗センサの使用例を説明する模式図である。
図18において、9はN極およびS極とを等間隔で回転ドラムの側面に着磁した磁石でなる磁気スケールである。10は磁気スケール9に面対向に配された磁気抵抗センサの要部である磁気抵抗素子である。11は磁気スケール9と磁気センサの磁気抵抗素子10との距離(以下、「ギャップ長g」と記す。)を示す。
【0007】
以上の構成において、磁気スケール9が回転することによって生じる磁界の変化を磁気センサの磁気抵抗素子10で検出し、この結果得られる出力電圧(以下、MR出力VMR」と記す。)を周波数信号として出力するようになされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように構成された従来の磁気抵抗センサは、磁気抵抗センサを組み立てる際の部品成形精度を向上させなくてはならず、磁気抵抗センサの動作中の温度の変化等が原因で磁気抵抗素子と磁気スケールとの間のギャップ長gが所定ギャップ長に対して狭くなった場合、図19に示すように磁気抵抗センサの磁気抵抗素子3の電極から検出されるMR出力VMRの中心付近の出力波形が湾曲してしまい、湾曲したMR出力VMRと電源電圧Vccの1/2の電圧値との交点でパルスを発生させ、これを位置信号として用いているため、出力波形の中心付近の湾曲はパルスの発生位置の精度をばらつかせてしまうため、磁気抵抗センサとして特性が劣るという課題を有していた。
【0009】
また、従来の磁気抵抗素子ではMR出力VMRの湾曲を防止するために、磁気スケールの磁極幅に対する磁気抵抗素子の検出領域幅を最適化する試みがなされているが、出力電圧の低下を伴うため回路処理上新たな解決手段を講じなければならないという課題を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、磁気抵抗素子と磁気スケールとの間のギャップ長gが所定ギャップ長に対して狭くなった場合でも、出力波形が湾曲せず、またギャップ長gの変化に対して高い出力を安定して得られる磁気抵抗センサを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、磁性層と非磁性層とを交互に複数層積層してなる人工格子膜を使用し、検出方法の最適化を行い、従来に対して良好なる出力を得るものである。
【0012】
以下に従来の磁気抵抗素子と比較しながら人工格子膜の磁気特性について説明する。
【0013】
まず従来の磁気抵抗素子は強磁性金属で形成され、一般の強磁性金属に於いては、電気抵抗は磁化方向と電流方向とが平行の時最大、両者が直交したとき最小となる。異方性磁気抵抗効果の大きさを表す量としては、Δρ=ρ(PARALELL)−ρ(PERPENDICULAR)と印加磁場0のときの抵抗値ρ0との比Δρ/ρ0(磁気抵抗変化率)が用いられる。室温におけるΔρ/ρ0が大きい材料としては、Ni−Co系、Ni−Fe系合金が知られている。これらのΔρ/ρ0は3%程度である。
【0014】
これに対して人工格子膜は、NiFeCo等の強磁性層とCu等の非強磁性金属を交互に積層することにより成り、RKKY的磁気結合により隣接する磁性層が反強磁性的に結合したとき大きな磁性抵抗効果を示す。
【0015】
人工格子膜と従来の強磁性金属膜との最大の違いは、その磁気抵抗変化率の大きさと、磁気異方性と抵抗値変化の方向にある。磁気抵抗変化率は強磁性金属膜の最大3%に対して人工格子膜では少なくとも10%以上である。また磁気異方性と抵抗値変化をする方向に対しては、強磁性金属膜は磁化された方向と電流方向が垂直の場合抵抗値が小さくなるのに対し、人工格子膜では磁化されるとほぼ等方的に抵抗値が小さくなる。このため、磁気抵抗素子の飽和磁界を計算する際、必要な式は
Hk=Ha+4πIs・T/W
Hk:素子の異方性磁界
Ha:磁性膜本来の異方性磁界
Is:飽和磁化
T/W:反磁界定数
で表されるが、強磁性金属膜の場合、電流方向即ちパターン長手方向に対し磁界が垂直のため
T:膜厚、W:パターン幅
であり、人工格子膜の場合は、電流方向即ちパターン長手方向に対し磁界が平行でもよく、このとき
T:パターン幅、W:パターン長
で示される。
【0016】
この為感磁パターン形状も信号磁界を最大限の効率で検出するパターン設計が必要である。人工格子膜の特性を踏まえ、磁界の方向と平行に感磁パターンを配置することにより、従来の強磁性金属膜を用いた磁性抵抗センサより大きい出力を効率よく得ることができる。
【0017】
また中心付近の出力波形の湾曲を防止しようとするには、所定のN極及びS極を等間隔で複数連続して着磁した磁気スケールと磁気抵抗素子を面対向して配置し、磁気スケールと磁気抵抗素子との相対的な位置の移動変化による磁気の変化を磁気抵抗素子で検出し、電圧変化として出力する磁気抵抗センサにおいて、磁気抵抗素子は、磁気スケールのN極及びS極の並び方向に対して平行な方向に伸張し、かつN極及びS極の並び方向にλ/4の0.8〜1.0倍の感磁パターン幅(d)を有する磁気抵抗素子の折り返し帯状パターンが形成された感磁パターンを、磁気スケールの並び方向にλ/4の間隔で並べてなる第1及び第2の感磁パターンをシリーズ接続し、当該第1および第2の感磁部の両端に直流電圧を印加すると共に、第1及び第2の感磁部の接続点を出力端子とするものにより構成するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、所定の磁極幅でN極およびS極とを等間隔に複数連続して着磁した磁気スケールと、磁気抵抗素子とを面対向して配置し、前記磁気スケールと前記磁気抵抗素子との相対的な位置の移動変化による磁界の変化を前記磁気抵抗素子で検出し、電圧の変化として出力する磁気抵抗センサにおいて、前記磁気抵抗素子はNi−Fe−Co合金からなる磁性層とCuからなる非磁性層とを複数層積層してなる人工格子膜からなり、前記磁気抵抗素子である人工格子膜は、概長方形のパターン形状に加工され、前記パターン形状の長手方向が電流の流れる方向と同一であるとともに前記磁気スケールの信号磁界に略平行に配置され、前記磁気スケールのN極およびS極の並び方向に対して前記人工格子膜の長手方向の中心線が一致するように設け、かつ前記人工格子膜のパターンは、「λ/4×0.8<d<λ/4×1.0(ただし、λはN極から隣接するN極までの距離、dは人工格子膜の感磁パターンの磁気スケールのN極およびS極との並び方向の幅)」としたものであり、磁気抵抗素子と磁気スケールとの間のギャップ長gが所定ギャップ長に対して狭くなった場合でも出力波形が湾曲しにくいとともにさらに高いMR出力VMRを得られるという作用を有するものである。
【0019】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の磁気抵抗素子である人工格子膜のパターン形状を、磁気スケールのN極およびS極の並び方向に略直交する方向に、つづら折りにして設けたものであり、磁気抵抗素子を限られたスペース内でN極およびS極の並び方向に平行に感磁パターンを描画し、描画面積を増加させることにより、抵抗値を増加させることができるという作用を有するものである。
【0020】
また請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の磁気抵抗素子である磁気抵抗素子の人工格子膜の感磁パターンは、磁気スケールのλ/2の整数倍に隔てて配置されるとともに、すべて直列に接続することにより、一対の感磁パターンのときに対してAM変調率を改善することができるという作用を有するものである。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の磁気抵抗素子である磁気抵抗素子の人工格子膜の感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅を、つづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅より狭くすることにより、漏洩磁界の影響を抑制し、AM変調率を抑制することができるという課題を有するものである。
【0022】
(実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサの模式図である。
図1において、21は磁気抵抗センサ全体である。25はN極およびS極とを等間隔で着磁した磁気スケールである。26は磁気スケール25に面対向するように設けられた磁気を検出する磁気抵抗素子である人工格子膜で、この磁気抵抗素子である人工格子膜26は、Ni−Fe−Co合金からなる磁性層とCuからなる非磁性層とを複数層積層してなるものである(dは人工格子膜の感磁パターンの幅)。この磁気抵抗素子である人工格子膜26は2つの概長方形の短形状の感磁パターン27,28をシリーズ接続して形成され、感磁パターン27,28のパターン形状の長手方向が電流の流れる方向31と同一であるとともに、磁気スケール25の信号磁界(メイン磁界)方向29に略平行に配置されるとともに、この感磁パターン27,28のパターン形状の概長方形の短形部分の中心が磁気スケール25のN極から隣接するS極までの距離である磁極幅λの1/4に設けられて磁気スケール25のN極およびS極との並び方向と磁気抵抗素子である人工格子膜26の長手方向の中心線が一致するように設けられかつ、磁気抵抗素子である人工格子膜26のパターンは、「λ/4×0.8<d<λ/4×1.0(ただし、λは磁気スケールのN極から隣接するN極までの距離、dは人工格子膜の感磁パターン(感磁パターンとは磁気抵抗素子を概長方形のパターン形状に加工された磁界感知部分)の磁気スケールのN極およびS極との方向の幅)」に設けられている。
【0024】
磁気抵抗素子である人工格子膜26の両端には、それぞれ電源電圧Vcc端子24、接地端子22が設けられ、この電源電圧Vcc端子24と接地端子22との中点に出力端子23が設けられている。磁気抵抗センサ21では、矢印30で示される磁気スケール25のN極とS極の磁極との並び方向に対して、感磁パターン27,28の長手方向が略平行に配置され、また所定のギャップ長gを保持して配される。磁気抵抗センサ21は、この磁気抵抗素子である人工格子膜26に電源電圧Vcc(本実施の形態では、Vcc=5V印加)を印加し、磁気スケール25を磁気抵抗素子である人工格子膜26に対して相対的に移動させ、この磁気スケール25の相対的な移動によって生じる磁界の変化を磁気抵抗素子26によって検出し、出力端子23より出力電圧(MR出力VMR)として出力するものである。
【0025】
図2は本発明の一実施の形態における要部である磁気抵抗素子部の断面図である。
【0026】
図2において41はアルミナ等からなる方形の基板である。42は基板41の上面と側面とを覆うように設けられたガラス等からなるグレーズ層である。43はグレーズ層42の上面に設けられた人工格子膜を用いた所望の感磁パターンで、図3に本発明の一実施の形態における要部である磁気抵抗素子である人工格子膜の感磁パターンの拡大した断面を模式した図に示す通り、磁気抵抗素子である人工格子膜43は、Ni−Fe−Co合金からなる磁性層48とCuからなる非磁性層49とを交互に複数層積層して設けられるものである。
【0027】
46は方形の基板41の角部に磁気抵抗素子である人工格子膜26の感磁パターン43と電気的に接続するように設けられた銀パラジウム等からなる電極層である。45は磁気抵抗素子である人工格子膜26の感磁パターン43を覆うように設けられたフェノール形の樹脂等からなる保護膜である。44は第1の保護膜45の上面に設けられ第1の保護膜45よりも面積が小さく、第1の保護膜45より硬いフェノール系の樹脂等からなる第2の保護膜である。47は基板41の下面に電極層46と電気的に接続するように設けられたリン青銅等からなるリード端子である。
【0028】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子部について、以下にその製造方法を図面を参照しながら説明する。
【0029】
図4は本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサの要部である磁気素子部の製造工程図である。
【0030】
まず、図4(a)に示すように、アルミナ等からなる方形の基板41の上面に必要に応じて印刷等の工程でガラスペースト等を塗布してグレーズ層42を形成する。
【0031】
次に、基板41の角部に銀パラジウム等の金属ペーストを用いて電極層46を形成するとともに、グレーズ層42の上面に電極層46と電気的に接続するようにスパッタ装置等で、フォトリソグラフィー等の工法を用いて概長方形の形状に加工した感磁パターンを有する磁気抵抗素子の人工格子膜43を形成する。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、少なくとも磁気抵抗素子の人工格子膜43を覆うように前工程で得られた基板41の上面に、フェノール系の樹脂等を印刷・乾燥させ、第1の保護膜45を形成した後、この第1の保護膜45の上面に第1の保護膜45より面積が小さくなるように、第1の保護膜45よりも硬いフェノール系の樹脂等の第2の保護膜44を形成する。
【0033】
次に、図4(c)に示すように、素子50の下面に電極層46と電気的に接続するようにリン青銅等からなる金属をはんだ付けし、リード端子47を形成し、磁気抵抗素子26を製造する。
【0034】
以下に、磁気抵抗素子26の材料に従来の強磁性金属膜ではなく、人工格子膜を用いる利点の説明を磁気特性を踏まえて説明する。
【0035】
一般に、磁気抵抗センサ21として必要なパターニングによる磁気感度の向上は一般に異方性磁界強度(Hk)を小さくすることにより行う。
【0036】
図5は本発明の一実施の形態における要部である人工格子膜の磁気抵抗変化率と磁気強度の関係(磁気特性)を示す。図で図5(a)は、信号磁界の方向と感磁パターンの長手方向が垂直の時の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を示したもの、図5(b)は平行の時のものである。ここで図5(b)の条件の方が、異方性磁界強度(Hk)が小さく磁気感度が高いのが確認できる。
【0037】
また、図6は従来の磁気センサの要部である強磁性金属膜の磁気抵抗変化率と磁気強度の関係を示したもので、図6(a)は信号磁界30の方向と感磁パターンの長手方向が垂直の時の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を示したもの、図6(b)は平行の時のものである。
【0038】
図5と図6とを比較すると、本実施の形態で用いる人工格子膜の方が従来の強磁性金属膜より、磁気抵抗変化率が約5倍以上あり、大きな出力が期待できる。また、信号磁界30と感磁パターンの長手方向が平行な場合、強磁性金属膜では磁気抵抗変化率がほとんどないのに対して人工格子膜は信号磁界30と感磁パターンの長手方向が垂直な場合より磁気感度が高い。
【0039】
以上のように、本実施の形態で用いる人工格子膜と従来の強磁性金属膜とでは磁気特性が大きく異なり、人工格子膜の特徴を最大限に生かすには、独自のパターン形状が必要になるのが確認できる。
【0040】
そこでパターニングによる磁気感度の向上は、人工格子膜の感磁パターン27,28において、S極およびN極の並び方向(信号磁界の方向)に平行に配置することにより磁気感度が向上することができる。
【0041】
以下に、磁気抵抗センサ21の出力波形の湾曲の防止と出力電圧について述べる。
【0042】
まず、磁気抵抗素子である人工格子膜26の「感磁パターン幅d」を変化させ、その結果磁極幅との比「d×4/λ」を変化させることによってMR出力VMRを変化させ得る。以上の時の「d×4/λ」とMR出力VMRとの関係を図7に示す(「ギャップ長g」は、20μmに固定)。
【0043】
図7において、d×4/λ=0.2(A)、d×4/λ=0.4(B)、d×4/λ=0.6(C)、d×4/λ=0.8(d)、d×4/λ=1.0(E)、d×4/λ=1.2(F)とd×4/λの値を大きくするに従ってMR出力VMRの中心部における出力波形の湾曲が少なくなっていき、d×4/λが0.8においては、ギャップ長=20μmにおいても湾曲が見られなくなるのが確認できる。またd×4/λをさらに大きくしても湾曲は現れなくなっているのが確認できる。
【0044】
したがって感磁パターン幅dを0.8λ以上にすれば、ギャップ長gが狭くなった場合でも湾曲が発生せず精度の良い磁気抵抗素子である人工格子膜26を実現することができる。
【0045】
以下に、図8は各々の「d×4/λ」の値におけるギャップ長と出力電圧の値の関係を示す。図8において、横軸は素子面から磁気スケール表面までの距離、縦軸は印加電圧5V時の出力電圧の値である。
【0046】
図7より、「d×4/λ」を0.8以上広げることにより出力の湾曲が防げることが確認できた。しかし、図8に示すように「d×4/λ」の値が大きいほど同じギャップ長での出力電圧は小さくなり、「d×4/λ=1.0以上」の場合はMR出力VMHの減少が著しくなる。出力電圧が小さいと処理回路上で問題点が生じてくるためd×4/λの値は1.0以下に規定することができる。
【0047】
また、出力電圧は大きいほどS/N比の点から有利になることから、「d×4/λ」の最適値は約0.8付近とすることができる。
【0048】
以上の構成によれば、感磁パターンの材料に磁気抵抗素子である人工格子膜を用い、さらに磁気抵抗素子である人工格子膜26と面対向する磁気スケール25とのギャップ長gが狭く出力電圧の中心部分の出力波形に湾曲が発生するような場合、磁気スケール25に面対向する磁気抵抗素子である人工格子膜26の感磁パターン幅dを広げ、感磁パターン幅dと感磁幅λとの比「d×4/λ」を約0.8にすることにより、ギャップ長gが狭い場合でもMR出力VMRの中心付近の出力波形の湾曲が少ない精度の良い、高出力の磁気抵抗センサ21を実現することができる。なお比較のため、図8のAは従来の強磁性金属膜を用いた磁気抵抗素子のMR出力VMRを示すが、これより明らかなように磁気抵抗素子である人工格子膜を用いた方が、従来の強磁性金属膜を用いた時より2〜6倍の出力を得ることができるのを確認できる。
【0049】
図9は本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図である。
【0050】
図9において、61は磁気スケール(本図では、図示せず)に面対向に配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子61の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子62、接地端子64が形成され、この電源電圧Vcc端子62と接地端子64の中点に出力端子63が形成されている。65,66は感磁パターンがつづら折りされた基礎感磁パターンを示す。所定の抵抗値を得るためには、図9のように人工格子膜のパターン形状は、磁気スケールのN極およびS極の並び方向に略直交する方向につづら折りすることにより、磁気抵抗素子61において、限られたスペース内でN極およびS極の並び方向に平行に感磁パターンを描画し、描画面積を増加させることにより所定の抵抗値を得ることができる。
【0051】
さらに上述の実施の形態においては、一対の感磁パターンをシリーズ接続し、その中点に1つの出力端子を形成した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、シリーズ接続した一対の感磁パターンを、λの所定整数倍の間隔を離した位置に複数個接続するようにしても良い。この場合、一対の感磁パターン単体のときに比して一層感度を上げる事ができる。図10はキャプスタンモータに組み込んだ際の出力波形に及ぼすモータの駆動用マグネットの漏洩磁界の影響を調べたものである。横軸は素子面から磁気スケールまでのギャップ長、縦軸は出力電圧のAM変調率(モータの回転子が一回転した時の(最大出力−最小出力)/最小出力の百分率であり値の小さい方が良い)を示す。図のAは一対の感磁パターンの場合、Bは二対の感磁パターンの場合のAM変調率で、両者を比較すると、二対の感磁パターンの方(B)がAM変調率が小さく、漏洩磁界の影響を受け難いのが確認できる。
【0052】
さらに、図11、図12は本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図である。
【0053】
図11において、71は磁気スケールに面対向に配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子71の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子74、接地端子72が形成され、この電源電圧Vcc端子74と接地端子72との中点に出力端子73が形成されている。75,76は感磁パターンがつづら折りされた基礎感磁パターンを示す。またaは感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示し、bはつづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示す。
【0054】
図12において、78は磁気スケールに面対向に配置される磁気抵抗素子である。この磁気抵抗素子78の両端にはそれぞれ電源電圧Vcc端子81、接地端子79が形成され、この電源電圧Vcc端子81と接地端子79との中点に出力端子80が形成されている。82,83は感磁パターンがつづら折りされた基礎感磁パターンを示す。またaは感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示し、bはつづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向の距離を示す。
【0055】
ここで図12はa=bの感磁パターンの磁気抵抗素子78、図11はa=2bにした感磁パターンの磁気抵抗素子71であり、上述の2つの形状の感磁パターンを有する磁気抵抗素子においてのAM変調率とギャップ長との関係を示したのが図13である。
【0056】
図13において、横軸は素子面から磁気スケールまでのギャップ長、縦軸は出力電圧のAM変調率を示し、Aは図12の磁気抵抗素子78の場合のAM変調率、Bは図11の磁気抵抗素子71の場合のAM変調率を示す。図13が示すようにA,Bを比較するとBの方がZM変調率が小さく、漏洩磁界の影響を受け難いのが確認できる。
【0057】
なお、本実施の形態では、人工格子膜の磁気抵抗素子のパターン形状の基本模式図を図1,図9,図11に示したが図14に示すようなパターン形状にすると図1,図9,図11の特長を生かした、狭いギャップでも波形に歪みが生じず、ヒステリシスをおさえ、所定の抵抗値を有し、AM変調率が小さいという特性がさらに得られる。図14において、80は磁気抵抗素子を示し、磁気抵抗素子80にはそれぞれ電源電圧Vcc端子81、接地端子82が形成され、この電源電圧Vcc端子81と接地端子82との中点に出力端子83,84が形成されている。また85は感磁パターンをつづら折りして形成された基礎感磁パターンであり、86はその基礎感磁パターンを電気的に導通させ、直列接続させるための引き回し部分である。またlは基礎感磁パターンの磁気スケールの並び方向に対して垂直な方向の長さを示す。
【0058】
また、比較のために従来例として強磁性金属膜のパターン形状を図15に示す。90は磁気抵抗素子を示し、磁気抵抗素子90にはそれぞれ電源電圧Vcc端子91、接地端子92が形成され、この電源電圧Vcc端子91と接地端子92との中点に出力端子93,94が形成されている。95は感磁パターンをつづら折りして形成された基礎感磁パターンであり、96はその基礎感磁パターンを電気的に導通させ、直列接続させるための引き回し部分である。
【0059】
ここで上述の図14と図15の磁気抵抗素子の出力電圧とギャップ長との関係を図16に示す。
【0060】
図16において、横軸は素子面から磁気スケール表面までの距離、縦軸は印加電圧5V時の出力電圧の値である。またAは図14の形状の磁気抵抗素子で材料は人工格子膜を用いた場合の出力特性で、Bは図15の形状の磁気抵抗素子で材料は強磁性金属膜を用いた場合の出力特性である。
【0061】
AとBを比較するとAの方が倍以上の出力が確認できる。
また図14の磁気抵抗素子80のように、lの長さを従来より短くし、漏洩磁界の影響の少ない方向に、基礎感磁パターン85を配置することにより、AM変調率が小さくなる。
【0062】
さらに上述の実施の形態においては、本発明を一相の磁気抵抗センサについて述べたが、本発明はこれに限らず、二相、三相等、多相の磁気抵抗センサに対して用いれば、出力の中心付近の直線性が改善され、検出精度を一層向上させ得る。
【0063】
さらに上述の実施の形態においては、磁気スケールと磁気抵抗素子との相対的な位置移動を発生させるのに、回転ドラムでなる磁気スケールを回転させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばリニアモータにおける場合のように、直線運動による相対的な位置移動から、磁界の変化を検出するようにしても良い。また磁気スケールと磁気抵抗素子との位置移動は相対的なものではないので、磁気スケール又は磁気抵抗素子のどちらかが位置移動しても良い。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明の請求項1に記載の発明は、人工格子膜を用い、なおかつ磁気抵抗素子の感磁パターンを磁気スケールの一定の磁極幅(λ/4)の0.8〜1.0倍の間に設定することにより、磁気抵抗素子と磁気スケールとの対向間隔を狭めても、出力波形に湾曲が発生せず安定した高出力を得ることができる磁気抵抗センサを提供できるものである。
【0065】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、所定の抵抗値を得るためには、磁気抵抗素子である人工格子膜のパターン形状をつづら折りすることにより、磁気抵抗素子を限られたスペース内でN極およびS極の並び方向に平行に感磁パターンを描画し、描画面積を増加させることにより、所定の抵抗値を得ることができる磁気センサを提供できるものである。
【0066】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、シリーズ接続した一対の感磁パターンを、λ/4の所定整数倍の間隔を離した位置に複数個接続することにより、一対の感磁パターン単体のときに比してAM変調率を改善した磁気センサを提供できるものである。
【0067】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅を、つづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅より狭くすることにより、AM変調率を改善した磁気センサを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における磁気抵抗センサの模式図
【図2】同要部である磁気抵抗素子部の断面図
【図3】同要部である人工格子膜を拡大した断面図
【図4】同要部である磁気抵抗素子部の工程図
【図5】同要部である人工格子膜の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を説明する図
【図6】従来の強磁性金属膜の磁気抵抗変化率と磁界強度との関係を説明する図
【図7】本発明の一実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の感磁パターン幅とMR出力VMRに発生する中心付近の湾曲との関係を示す信号波形図
【図8】本発明の一実施の形態に磁気センサおよび従来の磁気センサの要部である磁気抵抗素子のギャップ長と出力電圧との関係を説明する図
【図9】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図10】同要部である磁気抵抗素子におけるギャップ長と出力電圧との関係を説明する図
【図11】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図12】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図13】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子のギャップ長とAM変調率との関係を説明する図
【図14】本発明の他の実施の形態における磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図15】従来の磁気センサの要部である磁気抵抗素子の模式図
【図16】本発明の他の実施の形態における磁気センサおよび従来の磁気センサの要部である磁気抵抗素子のギャップ長と出力電圧の関係を説明する図
【図17】従来の磁気抵抗センサの模式図
【図18】同使用例を説明する模式図
【図19】同信号波形図
【符号の説明】
25 磁気スケール
26 人工格子膜
Claims (4)
- 所定の磁極幅でN極およびS極とを等間隔に複数連続して着磁した磁気スケールと、磁気抵抗素子とを面対向して配置し、前記磁気スケールと磁気抵抗素子との相対的な位置の移動変化による磁界の変化を前記磁気抵抗素子で検出し、電圧の変化として出力する磁気抵抗センサにおいて、前記磁気抵抗素子はNi−Fe−Co合金からなる磁性層とCuからなる非磁性層とを複数層積層してなる人工格子膜からなり、前記磁気抵抗素子である人工格子膜は、概長方形のパターン形状に加工され、前記パターン形状の長手方向が電流の流れる方向と同一であるとともに前記磁気スケールの信号磁界方向に略平行に配置され、前記磁気スケールのN極およびS極との並び方向に対して前記人工格子膜の長手方向の中心線が一致するように設け、かつ前記人工格子膜のパターンは、「λ/4×0.8<d<λ/4×1.0(ただし、λは磁気スケールのN極から隣接するN極までの距離、dは人工格子膜の感磁パターン(感磁パターンとは磁気抵抗素子である人工格子膜を概長方形のパターン形状に加工された磁界感知部分)の磁気スケールのN極およびS極との並び方向の幅)」である磁気抵抗センサ。
- 磁気抵抗素子である人工格子膜のパターン形状は、磁気スケールのN極およびS極の並び方向に略直交する方向に、つづら折りにして設けた請求項1記載の磁気抵抗センサ。
- 磁気抵抗素子である人工格子膜の感磁パターンは、磁気スケールのλ/2の整数倍に隔てて配置されるとともに、すべて直列に接続される請求項1記載の磁気抵抗センサ。
- 磁気抵抗素子である人工格子膜の感磁パターンの電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅を、つづら折りの折り返し部分の電流の流れる方向に対して略直交する方向のパターン幅より狭くした請求項1または2記載の磁気抵抗センサ。
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