JP3546742B2 - 内燃機関の吸入空気量制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸入空気量制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用エンジン等の車載内燃機関では、吸気通路を介して燃焼室内に吸入される空気と、燃料噴射弁から噴射される燃料とを混合して混合気を形成し、その混合気を燃焼室内で燃焼させることで駆動力を得ている。こうした内燃機関の吸気通路には、燃焼室に吸入される空気の量を調整するためのスロットルバルブが設けられている。このスロットルバルブは、自動車のアクセルペダルの踏込量に応じて開度調節される。そして、アクセルペダルの踏込量に応じてスロットルバルブの開度を調節して燃焼室へ吸入される空気の量を調整することにより、燃焼室へ充填される混合気の量が変化し、内燃機関の出力が調整されるようになる。
【0003】
そして、近年、自動車用の内燃機関においては、燃費を向上させること及び十分な機関出力を得ることの両立を図るために、機関運転状態に応じて燃焼方式を切り換えるタイプの内燃機関が提案され、実用化されている。
【0004】
こうしたタイプの内燃機関は、低回転低負荷になるほど例えば「均質ストイキ燃焼」、「均質リーン燃焼」、「弱成層燃焼」、「成層燃焼」のように順次のリーン側の空燃比での混合気の燃焼が可能な燃焼方式へと切り換えられる。これは、高出力が要求される高回転高負荷になるほどリッチ側の空燃比にて燃焼が行われる燃焼方式を実行して十分な出力を得るとともに、あまり高出力が要求されない低回転低負荷になるほどリーン側の空燃比での燃焼が可能な燃焼方式を実行して燃費向上を図るためである。
【0005】
上記「均質ストイキ燃焼」においては、例えば内燃機関の吸気圧及び機関回転数に基づき燃料噴射量を算出し、同噴射量に対応した量の燃料を噴射供給することで、内燃機関の吸入空気量に対応した燃料噴射が行われるようになる。こうした吸入空気量に対応した燃料噴射量が行われることにより、燃焼室内の混合気が理論空燃比となった状態で燃焼するようになる。
【0006】
また、上記「均質リーン燃焼」、「弱成層燃焼」、及び「成層燃焼」など、理論空燃比よりもリーンな空燃比での混合気の燃焼(希薄燃焼)が行われる燃焼方式においては、アクセル踏込量に対するスロットルバルブの開度が上記「均質ストイキ燃焼」に比べて開き側の値にされる。更に、アクセル踏込量及び機関回転数に基づき燃料噴射量を算出し、同噴射量に対応した量の燃料を噴射供給する。こうしたスロットル開度制御及び燃料噴射制御により、燃焼室内に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン側の値になる。
【0007】
なお、希薄燃焼時に燃料噴射量の算出を上記アクセル踏込量に基づき行うのは、例えば吸気圧等に基づき燃料噴射量を算出すると、上記希薄燃焼ではスロットル開度が「均質ストイキ燃焼」時よりも開き側の値となることから、同希薄燃焼を行う上で上記算出される燃料噴射量が機関吸入空気量に対し不適切になるためである。
【0008】
ところで、上記内燃機関においてはスロットル開度の調節によって吸入空気量を調整しているが、例えば内燃機関の吸気通路に異物が付着したりすると、同機関の吸入空気量が適正値からずれることとなる。こうした吸入空気量の適正値からのずれをなくすためにスロットル開度を補正する装置が従来より提案されている。このようにスロットル開度の補正を行う装置としては、例えば特開平9−268935号公報に記載された吸入空気量制御装置があげられる。
【0009】
同公報に記載された吸入空気量制御装置では、実際のスロットル開度を機関運転状態に応じて算出される目標スロットル開度に制御することで、実際の吸入空気量が要求される値へと調整される。このようにスロットル開度制御を行っても、例えば吸気通路に異物の付着などが生じると吸入空気量が要求される値からずれることとなる。
【0010】
そこで、同公報に記載の吸入空気量制御装置では、アイドル運転時など所定の機関運転状態のもとで、実際の吸入空気量が要求される値と一致するようにスロットル開度を制御し、そのときの要求吸入空気量に対応したスロットル基準開度と、そのときの実際のスロットル開度とのずれ量を学習値として算出(学習)する。そして、その学習値を加味して上記目標スロットル開度の算出を行い、同目標スロットル開度に基づきスロットル開度を制御することで、実際の吸入空気量と要求吸入空気量とのずれを補償することができるようになる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記学習値の学習はアイドル運転時といった所定の機関運転状態のときに行われる。そのため、内燃機関の全運転領域に亘って上記学習値を目標スロットル開度の補正に用いると、機関運転状態によっては上記学習値に基づくスロットル開度の補正が過度なものになって機関制御性が悪化する。
【0012】
特に、吸入空気量の適正値からのずれが燃焼状態に大きく影響を及ぼす機関運転状態では、上記のようにスロットル開度が学習値に基づき過度に補正されることで機関制御性が一層悪化することとなる。例えば、スロットル開度が比較的小さくなる機関運転状態にあっては、吸入空気量の適正値からのずれ量が全吸入空気量に対して高い割合となるため、燃焼状態に大きく影響を及ぼして機関制御性が一層悪化する。また、希薄燃焼が行われる機関運転状態にあっては、吸入空気量(吸気圧)を計測せずにアクセル踏込量に基づき燃料噴射量の算出が行われるため、上記のようにスロットル開度の補正が過度に行われたときに空燃比が適正値からずれ、それに伴い機関制御性が一層悪化する。
【0013】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸気通路への異物の付着等に伴う実際の吸入空気量の適正値に対するずれを、機関運転状態に係わらず適切に補償することのできる内燃機関の吸入空気量制御装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明では、機関運転状態に応じて燃焼方式が切り換えられる内燃機関にあって、同機関の吸気通路に設けられたスロットルバルブを機関運転状態に応じて定められる目標スロットル開度に制御することで同機関の吸入空気量を調整する内燃機関の吸入空気量制御装置において、所定の機関運転状態のときに内燃機関の実際の吸入空気量を要求される値に近づけるべく前記スロットルバルブを開度制御する制御手段と、前記制御手段によるスロットル開度制御が行われるとき、要求される吸入空気量を得るための予め定められたスロットル基準開度と実際のスロットル開度とを基に、それら両者のずれ量を学習値として学習する学習手段と、前記学習値を機関運転状態に基づき補正した値を前記目標スロットル開度の補正量として算出する算出手段と、前記算出手段によって算出される補正量に基づき前記目標スロットル開度を補正する補正手段とを備えた。
【0015】
同構成によれば、学習手段により学習される学習値を機関運転状態に基づき補正して補正量を算出し、同補正量にて目標スロットル開度を補正することにより、吸気通路への異物の付着等に伴う実際の吸入空気量の適正値に対するずれが抑制される。従って、実際の吸入空気量の適正値に対するずれを機関運転状態に係わらず適切に補償することができるようになる。
【0016】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記算出手段は、スロットル開度及び機関回転数に基づき前記学習値を補正して前記補正量を算出するものとした。
【0017】
吸気通路への異物の付着等に伴う吸入吸入空気量の適正値からのずれ量は、スロットル開度及び機関回転数によって大きく変化する。そのため、スロットル開度及び機関回転数に基づき学習値を補正して目標スロットル開度の補正量を算出する同構成によれば、上記吸入空気量の適正値からのずれを的確に補償することができるようになる。
【0018】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記制御手段は内燃機関のアイドル運転時に前記スロットル開度制御を行うものであって、前記算出手段は機関運転状態がアイドル運転以外のとき前記学習値を減少側に補正して前記補正量を算出するものとした。
【0019】
吸気通路への異物の付着等に伴う吸入空気量の適正値からのずれ量は、スロットル開度及び機関回転数が大きくなるほど小さい値になる。また、アイドル運転付近のスロットル開度が比較的小さい機関運転状態にあっては、吸入空気量の適正値からのずれ量が全吸入空気量に対して高い割合となり、学習値に基づくスロットル開度の過度な補正による悪影響を受け易い。しかし、アイドル運転以外のときには学習値を減少側に補正して目標スロットル開度の補正量を算出する同構成によれば、アイドル運転付近の比較的スロットル開度が小さい機関運転状態にあっても、学習値に基づくスロットル開度の過度な補正を的確に抑制することができるようになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を直列4気筒の自動車用ガソリンエンジンに適用した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0021】
図1に示すように、エンジン11は、そのシリンダブロック11a内に往復移動可能に設けられた合計四つのピストン12(図1には一つのみ図示)を備えている。これらピストン12の頭部には、成層燃焼を実行するのに必要な窪み12aが形成されている。また、これらピストン12は、コンロッド13を介して出力軸であるクランクシャフト14に連結されている。そして、ピストン12の往復移動は、上記コンロッド13によってクランクシャフト14の回転へと変換されるようになっている。
【0022】
クランクシャフト14にはシグナルロータ14aが取り付けられている。このシグナルロータ14aの外周部には、複数の突起14bがクランクシャフト14の軸線を中心とする等角度毎に設けられている。また、シグナルロータ14aの側方には、クランクポジションセンサ14cが設けられている。そして、クランクシャフト14が回転して、シグナルロータ14aの各突起14bが順次クランクポジションセンサ14cの側方を通過することにより、同センサ14cからはそれら各突起14bの通過に対応したパルス状の検出信号が出力されるようになる。
【0023】
また、シリンダブロック11aの上端には、シリンダヘッド15が設けられ、シリンダヘッド15とピストン12との間には燃焼室16が設けられている。この燃焼室16には、シリンダヘッド15に設けられた吸気ポート17と排気ポート18とが連通している。こうした吸気ポート17及び排気ポート18には、それぞれ吸気バルブ19及び排気バルブ20が設けられている。
【0024】
一方、シリンダヘッド15には、上記吸気バルブ19及び排気バルブ20を開閉駆動するための吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22が回転可能に支持されている。これら吸気及び排気カムシャフト21,22は、タイミングベルト及びギヤ(共に図示せず)等を介してクランクシャフト14に連結され、同ベルト及びギヤ等によりクランクシャフト14の回転が伝達されるようになる。そして、吸気カムシャフト21が回転すると、吸気バルブ19が開閉駆動されて、吸気ポート17と燃焼室16とが連通・遮断される。また、排気カムシャフト22が回転すると、排気バルブ20が開閉駆動されて、排気ポート18と燃焼室16とが連通・遮断される。
【0025】
また、シリンダヘッド15において、吸気カムシャフト21の側方には、同シャフト21の外周面に設けられた突起21aを検出して検出信号を出力するカムポジションセンサ21bが設けられている。そして、吸気カムシャフト21が回転すると、同シャフト21の突起21aがカムポジションセンサ21bの側方を通過する。この状態にあっては、カムポジションセンサ21bから上記突起21aの通過に対応して所定間隔毎に検出信号が出力されるようになる。
【0026】
吸気ポート17及び排気ポート18には、それぞれ吸気管30及び排気管31が接続されている。この吸気管30内及び吸気ポート17内は吸気通路32となっており、排気管31内及び排気ポート18内は排気通路33となっている。吸気通路32の上流部分にはスロットルバルブ23が設けられている。このスロットルバルブ23は、直流(DC)モータからなるスロットル用モータ24の駆動により回動されて開度調節がなされる。そして、スロットルバルブ23の開度は、スロットルポジションセンサ44によって検出される。
【0027】
また、上記スロットル用モータ24の駆動は、自動車の室内に設けられたアクセルペダル25の踏込量(アクセル踏込量)に基づき制御される。即ち、自動車の運転者がアクセルペダル25を踏込操作すると、アクセル踏込量がアクセルポジションセンサ26によって検出され、同センサ26の検出信号に基づきスロットル用モータ24が駆動制御される。このスロットル用モータ24の駆動制御に基づくスロットルバルブ23の開度調節により、吸気通路32の空気流通面積が変化して燃焼室16へ吸入される空気の量が調整されるようになる。
【0028】
吸気通路32においてスロットルバルブ23の下流側に位置する部分には、同通路32内の圧力を検出するバキュームセンサ36が設けられている。そして、バキュームセンサ36は検出した吸気通路32内の圧力に対応した検出信号を出力する。
【0029】
また、シリンダヘッド15には、燃焼室16内に燃料を噴射供給する燃料噴射弁40と、燃焼室16内に充填される燃料と空気とからなる混合気に対して点火を行う点火プラグ41とが設けられている。この点火プラグ41による上記混合気への点火時期は、点火プラグ41の上方に設けられたイグナイタ41aによって調整される。
【0030】
そして、燃料噴射弁40から燃焼室16内へ燃料が噴射されると、同燃料が吸気通路32を介して燃焼室16に吸入された空気と混ぜ合わされ、燃焼室16内で空気と燃料とからなる混合気が形成される。更に、燃焼室16内の混合気は点火プラグ41によって点火がなされて燃焼し、燃焼後の混合気は排気として排気通路33に送り出される。
【0031】
次に、本実施形態におけるエンジン11の吸入空気量制御装置の電気的構成を図2に基づいて説明する。
この吸入空気量制御装置は、燃料噴射量制御、燃料噴射時期制御、点火時期制御、及びスロットル開度制御など、エンジン11の運転状態を制御するための電子制御ユニット(以下「ECU」という)92を備えている。このECU92は、ROM93、CPU94、RAM95及びバックアップRAM96等を備える論理演算回路として構成されている。
【0032】
ここで、ROM93は各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されたメモリであり、CPU94はROM93に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM95はCPU94での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM96はエンジン11の停止時に保存すべきデータを記憶する不揮発性のメモリである。そして、ROM93、CPU94、RAM95及びバックアップRAM96は、バス97を介して互いに接続されるとともに、外部入力回路98及び外部出力回路99と接続されている。
【0033】
外部入力回路98には、クランクポジションセンサ14c、カムポジションセンサ21b、アクセルポジションセンサ26、バキュームセンサ36、及びスロットルポジションセンサ44等が接続されている。一方、外部出力回路99には、スロットル用モータ24、燃料噴射弁40、及びイグナイタ41a等が接続されている。
【0034】
このように構成されたECU92は、クランクポジションセンサ14cからの検出信号に基づきエンジン回転数NEを求める。更に、アクセルポジションセンサ26又はバキュームセンサ36からの検出信号と、上記エンジン回転数NEとに基づきエンジン11の負荷を表す基本燃料噴射量Qbse を求める。ECU92は、図3に示すように、均質ストイキ燃焼領域A、均質リーン燃焼領域B、弱成層燃焼領域C、及び成層燃焼領域Dを備えたマップを参照し、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射量Qbse からエンジン11の燃焼方式を決定する。即ち、ECU92は、エンジン回転数NE及び基本燃料噴射量Qbse が上記領域A〜Dのいずれの領域に位置する状態かにより、エンジン11の燃焼方式を「均質ストイキ燃焼」、「均質リーン燃焼」、「弱成層燃焼」、及び「成層燃焼」に決定する。
【0035】
図3に示すマップから明らかなように、エンジン11の運転状態が高回転高負荷へと移行するに従い、エンジン11の燃焼方式は「成層燃焼」、「弱成層燃焼」、「均質リーン燃焼」、「均質ストイキ燃焼」へと順次変化することとなる。このように燃焼方式を変化させるのは、高出力が要求される高回転高負荷時には「均質燃焼」とし混合気の空燃比を小さくしてエンジン出力を高め、あまり高出力を必要としない低回転低負荷時には「成層燃焼」とし空燃比を大きくして燃費の向上を図るためである。
【0036】
ここで、各燃焼方式が実行されるときにECU92を通じて実行される燃焼制御態様について、「均質ストイキ燃焼」、「均質リーン燃焼」、「弱成層燃焼」、及び「成層燃焼」の各燃焼方式毎にそれぞれ説明する。
【0037】
・「均質ストイキ燃焼」
エンジン11の燃焼方式が「均質ストイキ燃焼」に決定されると、ECU92は、バキュームセンサ36からの検出信号に基づき求められる吸気圧PMとエンジン回転数NEとに基づき基本燃料噴射量Qbse を算出する。こうして算出された基本燃料噴射量Qbse は、エンジン回転数NEが高くなるとともに、吸気圧PMが高くなるほど大きい値になる。ECU92は、燃料噴射弁40を駆動制御することにより、上記基本燃料噴射量Qbse に基づき求められる最終燃料噴射量Qfin に対応した量の燃料を、エンジン11の吸気行程中に燃料噴射弁40から噴射させる。また、ECU92は、燃料噴射量の空燃比フィードバック補正を行って混合気の空燃比を理論空燃比へと制御する。
【0038】
また、ECU92は、アクセルポジションセンサ26からの検出信号に基づきアクセル踏込量ACCPを求める。そして、ECU92は、スロットルポジションセンサ44からの検出信号に基づき求められる実際のスロットル開度Trが、アクセル踏込量ACCPに基づき算出される目標スロットル開度TRTに近づくようスロットル用モータ24を駆動制御する。更に、ECU92は、吸気圧PMとエンジン回転数NEとに基づき目標点火時期を算出し、同目標点火時期に応じてイグナイタ41aを駆動制御する。こうしてスロットル開度及び点火時期が「均質ストイキ燃焼」に適したものになる。
【0039】
・「均質リーン燃焼」
エンジン11の燃焼方式が「均質リーン燃焼」に決定されると、ECU92は、アクセル踏込量ACCPとエンジン回転数NEとに基づき基本燃料噴射量Qbse 算出する。こうして算出された基本燃料噴射量Qbse は、エンジン回転数NEが高くなるととともに、アクセル踏込量ACCPが大きくなるほど大きい値になる。ECU92は、燃料噴射弁40を駆動制御することにより、上記基本燃料噴射量Qbse に基づき求められる最終燃料噴射量Qfin 対応した量の燃料をエンジン11の吸気行程中に燃料噴射弁40から噴射させる。こうした燃料噴射により燃焼室16内に形成される混合気においては、空燃比が理論空燃比よりも大きい値(例えば15〜23)とされる。
【0040】
また、ECU92は、実際のスロットル開度Trが基本燃料噴射量Qbse に基づき算出される目標スロットル開度TRTに近づくようスロットル用モータ24を駆動制御する。更に、ECU92は、基本燃料噴射量Qbse とエンジン回転数NEとに基づき目標点火時期を算出し、同目標点火時期に応じてイグナイタ41aを駆動制御する。こうしてスロットル開度及び点火時期が「均質リーン燃焼」に適したものとされる。
【0041】
・「弱成層燃焼」
エンジン11の燃焼方式が「弱成層燃焼」に決定されると、ECU92は、上記と同様にアクセル踏込量ACCP及びエンジン回転数NEから基本燃料噴射量Qbse を算出する。ECU92は、燃料噴射弁40を駆動制御することにより、上記基本燃料噴射量Qbse に基づき算出される最終燃料噴射量Qfin に対応した量の燃料をエンジン11の吸気行程と圧縮行程とに噴射させる。こうした燃料噴射により燃焼室16内に形成される混合気においては、空燃比が「均質リーン燃焼」時の空燃比よりもリーン側の値(例えば20〜23)とされる。
【0042】
また、ECU92は、上記と同様に実際のスロットル開度Trが基本燃料噴射量Qbse とエンジン回転数NEとに基づき算出される目標スロットル開度TRTに近づくようスロットル用モータ24を駆動制御する。更に、ECU92は、上記と同様に基本燃料噴射量Qbse とエンジン回転数NEとに基づき目標点火時期を算出し、同目標点火時期に応じてイグナイタ41aを駆動制御する。こうしてスロットル開度及び点火時期が「弱成層燃焼」に適したものとされる。
【0043】
こうした「弱成層燃焼」時において、吸気行程のときに噴射供給された燃料は空気に対して均等に分散され、圧縮行程のときに噴射供給された燃料はピストン12の頭部に設けられた窪み12aによって点火プラグ41の周りに集められる。上記のように吸気行程と圧縮行程との二回に分けて燃料噴射を行うことで、上記「均質リーン燃焼」と後述する「成層燃焼」との中間の燃焼方式(弱成層燃焼)で混合気の燃焼が行われ、その「弱成層燃焼」によって「均質リーン燃焼」と「成層燃焼」との切り換え時のトルクショックが抑えられる。
【0044】
・「成層燃焼」
エンジン11の燃焼方式が「成層燃焼」に決定されると、ECU92は、上記と同様にアクセル踏込量ACCP及びエンジン回転数NEから基本燃料噴射量Qbse を算出する。ECU92は、上記基本燃料噴射量Qbse に基づき算出される最終燃料噴射量Qfin に対応した量の燃料をエンジン11の圧縮行程中に噴射させる。こうした燃料噴射により燃焼室16内に形成される混合気においては、空燃比が「弱成層燃焼」時の空燃比よりもリーン側の値(例えば25〜50)とされる。
【0045】
また、ECU92は、上記と同様に実際のスロットル開度Trが基本燃料噴射量Qbse とエンジン回転数NEとに基づき算出される目標スロットル開度TRTに近づくようスロットル用モータ24を駆動制御する。更に、ECU92は、上記と同様に基本燃料噴射量Qbse とエンジン回転数NEとに基づき目標点火時期を算出し、同目標点火時期に応じてイグナイタ41aを駆動制御する。こうしてスロットル開度及び点火時期が「成層燃焼」に適したものとされる。
【0046】
こうした「成層燃焼」時において、エンジン11の圧縮行程中に燃料噴射弁40から噴射された燃料は、ピストン12の頭部に設けられた窪み12a内に入り込み、そのピストン12の移動により上記燃料が点火プラグ41の周りに集められる。このように点火プラグ41の周りに燃料を集めることによって、燃焼室16内の混合気全体の平均空燃比を「弱成層燃焼」時より大きくしても、同プラグ41周りの混合気の空燃比が着火に適したものとされて良好な混合気への着火が行われる。
【0047】
上述した「均質リーン燃焼」、「弱成層燃焼」、及び「成層燃焼」など、理論空燃比よりもリーン側の空燃比にて混合気の燃焼が行われる、いわゆる希薄燃焼では、混合気の平均空燃比を理論空燃比よりも大きくすべくスロットルバルブ23が「均質燃焼」の場合に比べて開き側に制御される。そのため、希薄燃焼では、燃料噴射量が少なくなるとともにポンピングロスが低減され、エンジン11の燃費が向上するようになる。
【0048】
ところで、上記エンジン11においては、スロットルバルブ23を目標スロットル開度TRTに制御することでエンジン11の吸入空気量を適正値へと調整している。しかし、このようにスロットル開度制御をおこなったとしても、スロットルバルブ23の個体差や吸気通路32への異物の付着などにより、エンジン11の吸入空気量が適正値からずれる場合がある。ここで、正常状態でのスロットル開度変化に対する吸入空気量の推移、及び吸気通路32に異物が付着した場合でのスロットル開度変化に対する吸入空気量の推移を、それぞれ図4のグラフに実線L1,L2で示す。
【0049】
同図から明らかなように、エンジン回転数NEを一定とした条件のもとでは、所定のスロットル開度にスロットルバルブ23を固定した状態にあっても、正常状態に比べて上記異物の付着が生じた場合には吸入空気量が少なくなる。こうして吸入空気量が少なくなる分(吸入空気量の適正値からのずれ)は、スロットル開度が大きくなるほど小さいものになる。これは、スロットル開度が大きいときにはエンジン11の吸入空気量自体が多くなって、全吸入空気量に対する上記異物の付着に伴う吸入空気量の減少分の割合が小さくなるためである。
【0050】
上記のように吸気通路32への異物の付着に伴い吸入空気量が適正値からずれると、燃焼室16に充填される混合気の量及び空燃比が不適切になって燃焼状態の悪化が生じることとなる。特に、上記希薄燃焼時には「均質ストイキ燃焼」時と異なり吸入空気量(吸気圧PM)に基づく燃料噴射量の算出が行われず、アクセル踏込量ACCPに基づく燃料噴射量の算出が行われる。そのため、上記吸入空気量の適正値からのずれにより空燃比が不適切になって燃焼状態の悪化が一層大きなものとなる。
【0051】
ECU92は、上記吸入空気量の適正値からのずれを補償して燃焼状態の悪化を防止すべくスロットル開度を補正する。即ち、エンジン11の始動完了後のアイドル運転時において燃焼方式を「均質ストイキ燃焼」に固定し、エンジン回転数NEを予め定められた値(アイドル回転数)となるようにスロットルバルブ23の開度をフィードバック制御する。こうしたアイドルスピードコントロール(ISC)を実行することで、上記アイドル時において吸入空気量が要求される値(適正値)に維持されるようになる。
【0052】
正常状態においてスロットル開度が例えば図4のP1点に位置するときに上記アイドル運転時の要求される吸入空気量が得られるとすると、吸気通路32への異物の付着が生じたときには上記ISCによってスロットル開度が所定量θだけ開き側に制御される。これにより、スロットル開度が図4のP2点に位置することとなり、吸気通路32に異物の付着が生じたとしても要求される吸入空気量が得られるようになる。なお、P1点に位置するときのスロットル開度は、正常状態での「均質ストイキ燃焼」中のアイドル運転時において要求される吸入空気量が得られるスロットル基準開度Tbを表すものとなる。また、上記所定量θは、スロットル基準開度Tbに対する実際のスロットル開度Trのずれ量を表すものとなる。
【0053】
ECU92は、上記スロットル基準開度Tbに対する実際のスロットル開度Trのずれ量(上記所定量θ)をスロットル学習値Tgとし、こうして学習した学習値Tgを加味して通常運転時における目標スロットル開度TRTを算出する。そして、スロットル学習値Tgを加味して算出された目標スロットル開度TRTに基づき通常運転時のスロットル開度制御を行うことで、スロットル開度の補正が行われるとともに、要求される吸入空気量(適正値)に対する実際の吸入空気量のずれを補償することが行われる。
【0054】
しかし、上記スロットル学習値Tgの学習は、「均質ストイキ燃焼」中のアイドル運転時に行われる。そのため、エンジン11の全運転領域に亘って上記スロットル学習値Tgをスロットル開度の補正に用いると、機関運転状態によって同補正が過度なものになって機関制御性が悪化する。これは要求される吸入空気量が得られるスロットル基準開度Tbに対する実際のスロットル開度Trのずれ量は、図4に示すようにスロットル開度が大きくなるほど小さい値になるためである。
【0055】
特に、アイドル運転付近であって図5に斜線で示すような吸入空気量が比較的少なくなるエンジン11の運転領域では、吸入空気量の適正値からのずれによる燃焼状態への悪影響が大きく、上記スロットル開度の過度な補正に伴う燃焼状態の悪化が一層大きなものとなる。なお、上記斜線で示す領域にて吸入空気量の適正値からのずれによる燃焼状態への悪影響が大きくなるのは、吸入空気量が小さい場合には全吸入空気量に対する上記ずれ量の割合が高くなるためである。
【0056】
上記スロットル学習値Tgによるスロットル開度の過度な補正を防止すべく本実施形態では、同学習値Tgをスロットル開度Tr及びエンジン回転数NE等の機関運転状態に基づき補正する。そして、この補正により得られる値をスロットル補正量DTRTとし、目標スロットル開度TRTを同スロットル補正量DTRTに基づき補正することで、機関運転状態に係わらず吸入空気量の適正値に対するずれを的確に補償できるようにする。
【0057】
その結果、例えばエンジン11の排気系からの要求により、混合気の空燃比を一時的に理論空燃比よりもリッチ側の値(例えば12)に強制制御する、いわゆるリッチスパイク制御が行われるとき、混合気の空燃比を的確に上記リッチ側の値へと制御することができる。また、リッチスパイク制御の際に、上記スロットル開度の過度な補正による吸入空気量のずれに伴い、エンジン11の出力トルクに段差が生じるのを防止することもできる。
【0058】
次に、スロットル学習値Tgの算出手順について図6を参照して説明する。図6は、スロットル学習値算出ルーチンを示すフローチャートである。このスロットル学習値算出ルーチンは、ECU92を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0059】
スロットル学習値算出ルーチンにおいて、ステップS101〜S103の処理は上記スロットル学習値Tgの学習条件が成立したか否かを判断するためのものである。また、ステップS104,S108,S109の処理は学習完了フラグFの設定処理を行うためのものであって、ステップS105〜S107の処理は学習値Tgの算出及び記憶するためのものである。
【0060】
ECU92は、ステップS101の処理としてエンジン回転数NE等に基づきエンジン11が始動完了しているか否かを判断し、ステップS102の処理として「均質ストイキ燃焼」中であるか否かを判断する。また、ステップS103の処理として、現在ISCフィードバック制御が実行中であるか否かを判断する。そして、ステップS101〜S103の処理において、全てYESと判断されるとステップS104に進み、いずれか一つの処理でもNOと判断されると当該スロットル学習値算出ルーチンを一旦終了する。
【0061】
ECU92は、エンジン11の始動完了後には燃焼方式を「均質ストイキ燃焼」に固定した状態でアイドル運転を行い、ISCフィードバック制御によりエンジン回転数NEを予め定められたアイドル回転数に近づけるべくスロットル開度をフィードバック制御する。こうしたISCフィードバック制御のスロットル開度制御により、エンジン11の吸入空気量が要求値(適正値)に制御されることとなる。この状態で、スロットル学習値Tgの学習が行われて同学習が完了すると、ECU92は、「均質ストイキ燃焼」から他の燃焼方式への切り換えを許可する。
【0062】
即ち、上記ステップS104に進むエンジン11の運転状況としては、上記のように始動完了後であってスロットル学習値Tgの算出(学習)ために「均質ストイキ燃焼」でのISCフィードバック制御が実行されているとき等があげられる。こうしてステップS104に進むと、ECU92は、学習完了フラグFとして「1」がRAM95の所定領域に記憶されているか否かを判断する。この学習完了フラグFは、スロットル学習値Tgの学習が完了しているか否かを判断するためのものであって、同学習の完了時に「1」に設定されるとともにエンジン11の停止により「0」に設定される。
【0063】
ステップS104の処理において、「F=1」であってスロットル学習値Tgの学習が完了している旨判断されると当該スロットル学習値算出ルーチンを一旦する。また、「F=0」であって同学習が完了していない旨判断されるとステップS105に進み、このステップS105以降の処理によりスロットル学習値Tgの学習が行われる。従って、スロットル学習値Tgの学習は、上記スロットル学習完了フラグFがエンジン停止毎に「0」に設定されることから、エンジン11の始動毎に行われることとなる。
【0064】
ECU92は、ステップS105の処理として、実際のスロットル開度Trからスロットル基準開度Tbを減算してスロットル学習値Tgを算出する。このスロットル基準開度は、このときの要求される吸入空気量に対応した正常状態でのスロットル開度である。なお、上記要求される吸入空気量は、ISCフィードバック制御中であることから現在の吸入空気量と同じ値になる。そして、上記スロットル基準開度Tbは、図7に示すマップを参照してエンジン回転数NE及び吸気圧PMに基づき算出することができる。こうして算出されるスロットル基準開度Tbは、同図から明らかなように、エンジン回転数NE及び吸気圧PMが高くなるほど開き側の値になる。
【0065】
エンジン11の吸気系が正常状態であるときには、実際のスロットル開度Trがスロットル基準開度Tbと同じになるため、上記スロットル学習値Tgが「0」になる。これに対し、吸気通路32に異物の付着等が生じた場合には、要求される吸入空気量を得るためにISCフィードバック制御により実際のスロットル開度Trがスロットル基準開度Tbよりも大きい値(開き側の値)になる。そのため、この場合には上記スロットル学習値Tgが「0」よりも大きくなる。また、スロットルバルブ23の個体差等により燃焼室16に多めの空気が吸入されることもあるが、この場合には要求される吸入空気量を得るために上記ISCフィードバック制御により実際のスロットル開度Trがスロットル基準開度Tbよりも小さい値(閉じ側の値)になる。そのため、この場合には上記スロットル学習値Tgが「0」よりも小さい値になる。
【0066】
ECU92は、続くステップS106の処理として上記スロットル学習値Tgの急な変動を取り除くための徐変処理を同学習値Tgに施し、ステップS107の処理として上記徐変処理後のスロットル学習値TgをRAM95の所定領域に記憶する。ECU92は、続くステップS108の処理として、例えば上記学習値Tgの変化量が所定値以下であるか否かに基づき、同スロットル学習値Tgが安定しているか否かを判断する。そして、上記スロットル学習値Tgが安定していない旨判断されると、ECU92は、このスロットル学習値算出ルーチンを一旦終了する。
【0067】
また、上記ステップS108の処理において、スロットル開度Tgが安定している旨判断されると、ステップS109に進む。ECU92は、ステップS109の処理で、学習完了フラグとして「1」をRAM95の所定領域に記憶した後、このスロットル学習値算出ルーチンを一旦終了する。このように学習完了フラグFが「1」に設定されることにより、スロットル学習値Tgの学習が完了する。そして、「F=1」であることから上記ステップS104の処理でNOと判断されるようになり、ステップS105〜S107の処理によるスロットル学習値Tgの学習が行われることはなくなる。
【0068】
次に、目標スロットル開度TRTの算出手順について図8を参照して説明する。図8は、目標スロットル開度算出ルーチンを示すフローチャートである。この目標スロットル開度算出ルーチンは、ECU92を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0069】
この目標スロットル開度算出ルーチンにおいては、ステップS206の処理で、後述する基本スロットル開度TRTBにスロットル補正量DTRTを加算することによって目標スロットル開度TRTが算出される。こうして目標スロットル開度TRT算出されると、ECU92は、実際のスロットル開度Trが目標スロットル開度TRTに近づくようスロットル用モータ24を駆動制御する。なお、上記スロットル補正量DTRTは、スロットル学習値算出ルーチン(図6)によって学習されたスロットル学習値Tgに、後述する学習値補正係数Kを乗算して得られる値である。
【0070】
目標スロットル開度算出ルーチンにおいて、ECU92は、ステップS201の処理として、「均質ストイキ燃焼」中であるか否かを判断する。そして、「均質ストイキ燃焼」中であれば、ステップS202の処理としてアクセル踏込量ACCP及びエンジン回転数NEに基づき基本スロットル開度TRTBを算出する。また、「均質ストイキ燃焼」中でなければ、ステップS203の処理として基本燃料噴射量Qbse 及びエンジン回転数NEに基づき基本スロットル開度TRTBを算出する。
【0071】
ECU92は、続くステップS204の処理として、上記スロットル学習値Tgをスロットル開度Tr及びエンジン回転数NEなどの機関運転状態に応じて補正するための学習値補正係数Kを算出する。この学習値補正係数Kは、スロットル開度Tr及びエンジン回転数NEに基づき算出され、アイドル運転時には「1.0」になるとともに、スロットル開度Tr及びエンジン回転数NEが大きくなほど小さい値になる。
【0072】
ECU92は、ステップS205の処理として、スロットル学習値算出ルーチンのステップS107(図6)の処理によって記憶されたスロットル学習値Tgを読み出し、同スロットル学習値Tgに上記学習値補正係数Kを乗算することでスロットル補正量DTRTを算出する。従って、このスロットル補正量DTRTは、学習値補正係数Kによってスロットル開度Tr及びエンジン回転数NEに基づき補正され、それらスロットル開度Tr及びエンジン回転数NEが大きくなるほど「0」に近い値になる。
【0073】
ECU92は、ステップS206の処理として、基本スロットル開度TRTBにスロットル補正量DTRTを加算することで目標スロットル開度TRTを算出する。こうして算出される目標スロットル開度TRTは、スロットル補正量DTRTによる補正が行われ、同補正によって吸気通路32への異物の付着やスロットルバルブ23の個体差等による吸入空気量の適正値からのずれが抑制される。目標スロットル開度TRTを算出した後、ECU92は、この目標スロットル開度算出ルーチンを一旦終了する。
【0074】
以上詳述した処理が行われる本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)スロットル学習値Tgをスロットル開度Tr及びエンジン回転数NEに基づき算出される学習値補正係数Kにより補正してスロットル補正量DTRTを算出し、このスロットル補正量DTRTに基づき目標スロットル開度TRTの補正を行うようにした。そのため、上記スロットル学習値Tgがアイドル運転時に学習されたものであっても、アイドル運転以外のときに同スロットル学習値Tgに基づくスロットル開度の補正が過度なものになるのを防止することができる。従って、スロットルバルブ23の個体差や吸気通路32への異物の付着に伴う吸入空気量の適正値からのずれを、スロットル開度Tr及びエンジン回転数NEといった機関運転状態に係わらず、上記スロットル補正量DTRTに基づく目標スロットル開度TRTの補正によって的確に補償することができる。そのため、上記スロットル開度の過度な補正に伴う燃焼状態の悪化及び機関制御性の悪化を防止することができる。
【0075】
(2)スロットルバルブ23の個体差や吸気通路32への異物の付着に伴う吸入空気量の適正値からのずれ量は、スロットル開度Tr及びエンジン回転数NEが大きくなるほど小さくなる。また、アイドル運転付近の図5に斜線で示すエンジン11の運転領域においては、上記吸入空気量の適正値からのずれ量が全吸入空気量に対して高い割合となり、上記スロットル開度の過度な補正によって燃焼状態が悪影響を受け易い。しかし、上記スロットル補正量DTRTは、スロットル開度Tr及びエンジン回転数NEが大きくなるほど上記学習値補正係数Kによって減少側の値とされるため、アイドル運転以外のときの値が同アイドル運転時の値よりも小さくなる。そのため、図5の斜線で示すようなアイドル運転付近であって、比較的スロットル開度Trが小さく吸入空気量が少ないエンジン11の運転状態にあっても、上記スロットル補正量DTRTに基づく目標スロットル開度TRTの補正により、スロットル開度の過度な補正を的確に抑制することができる。
【0076】
(3)「成層燃焼」、「弱成層燃焼」、及び「均質リーン燃焼」などの希薄燃焼が行われるときには、吸入空気量(吸気圧PM)に関係なくアクセル踏込量ACCP等に基づき燃料噴射量が決定される。そのため、上記のような吸入空気量の適正値に対するずれに基づく燃焼状態の悪化を、吸気圧PMに基づく燃料噴射量の調整によって抑制することはできない。しかし、上記のようにスロットル補正量DTRTに基づき目標スロットル開度TRTを補正し、そのスロットル補正量DTRTを機関運転状態(Tr,NE)に応じて可変とした。そのため、機関運転状態に係わらすスロットル開度を適切なものとし、希薄燃焼中であってもスロットル開度の過度な補正による燃焼状態の悪化を的確に抑制することができる。
【0077】
なお、本実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・本実施形態では、希薄燃焼として「成層燃焼」、「弱成層燃焼」、及び「均質リーン燃焼」を行うエンジン11に本発明を適用したが、例えば上記「弱成層燃焼」を行わないエンジン11に本発明を適用してもよい。
【0078】
・本実施形態では、学習値補正係数Kをスロットル開度Tr及びエンジン回転数NEに応じて可変としたが、エンジンの高負荷高回転領域においては学習補正係数Kが固定値となるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における吸入空気量制御装置が適用されたエンジン全体を示す断面図。
【図2】同吸入空気量制御装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】燃焼方式を切り換える際に参照されるマップ。
【図4】スロットル開度の変化に対する吸入空気量(吸気圧)の推移を示すグラフ。
【図5】吸入空気量の適正値からのずれが燃焼状態に大きく影響を及ぼすエンジンの運転領域を示す図。
【図6】スロットル学習値の算出手順を示すフローチャート。
【図7】学習値補正係数を算出する際に参照されるマップ。
【図8】目標スロットル開度の算出手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
11…エンジン、14c…クランクポジションセンサ、16…燃焼室、23…スロットルバルブ、24…スロットル用モータ、25…アクセルペダル、26…アクセルポジションセンサ、36…バキュームセンサ、40…燃料噴射弁、44…スロットルポジションセンサ、92…電子制御ユニット(ECU)。
Claims (3)
- 機関運転状態に応じて燃焼方式が切り換えられる内燃機関にあって、同機関の吸気通路に設けられたスロットルバルブを機関運転状態に応じて定められる目標スロットル開度に制御することで同機関の吸入空気量を調整する内燃機関の吸入空気量制御装置において、
所定の機関運転状態のときに内燃機関の実際の吸入空気量を要求される値に近づけるべく前記スロットルバルブを開度制御する制御手段と、
前記制御手段によるスロットル開度制御が行われるとき、要求される吸入空気量を得るための予め定められたスロットル基準開度と実際のスロットル開度とを基に、それら両者のずれ量を学習値として学習する学習手段と、
前記学習値を機関運転状態に基づき補正した値を前記目標スロットル開度の補正量として算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出される補正量に基づき前記目標スロットル開度を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の吸入空気量制御装置。 - 前記算出手段は、スロットル開度及び機関回転数に基づき前記学習値を補正して前記補正量を算出する
請求項1記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。 - 前記制御手段は内燃機関のアイドル運転時に前記スロットル開度制御を行うものであって、前記算出手段は機関運転状態がアイドル運転以外のとき前記学習値を減少側に補正して前記補正量を算出する
請求項2記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。
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