JP3543478B2 - 皮膚外用保湿剤及びそれを含有する皮膚外用剤 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な皮膚外用保湿剤に関する。
【０００２】
【従来の技術】
皮膚外用保湿剤は、皮膚を構成する表皮、角質層に水分を保留せしめ皮膚に保湿性、柔軟性を保つ作用をなす剤である。従来、皮膚外用剤には、乾燥に起因する皮膚のかさつきや肌荒れを防止し、改善するために種々の皮膚外用保湿剤が配合されている。そして従来から皮膚外用保湿剤として、グリセリン、１，３−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の水溶性多価アルコール、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子、プロリン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アロエ抽出物等が知られている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水溶性多価アルコールや水溶性高分子を用いた場合、保湿効果を有するが、その効果を上げるべく多量に配合するとべたつき感を生じ使用感が劣るというデメリットを有している。また、その他の皮膚外用保湿剤についてもその効果がいまだ充分とは言い難い。そのため、優れた保湿効果を有し、且つ使用感の良好な皮膚外用保湿剤の開発が望まれていた。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記実情に鑑み、本発明者等は鋭意研究の結果、Ｌ−テアニンが皮膚に対し優れた保湿効果を有することを見出した。そして、それを配合した皮膚外用剤が乾燥から皮膚を守り、みずみずしく潤いのある肌を保つことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、Ｌ−テアニンからなる皮膚外用保湿剤である。以下、詳細に説明する。
本発明におけるＬ−テアニンは、下記化学式で表されるものである。
【０００５】
【化１】

【０００６】
このＬ−テアニンは、アミノ酸の一種で、水溶性の白色の結晶性粉末であり、緑茶のうま味の一成分であって、カフェインによる興奮作用に対して抑制効果があることなどが知られているが、保湿効果を有することは知られていなかった。本発明に用いられるＬ−テアニンは、天然品、合成品のいずれをも使用することができる。市販品としては、例えば、サンテアニン（太陽化学社製）等が挙げられる。
【０００７】
本発明の皮膚外用保湿剤は、Ｌ−テアニンをそのまま直接でもよいが、一般にはＬ−テアニンを、適当な液体に溶解もしくは分散させ、或いは適当な粉体と混合もしくはこれに吸着させ、更に所要に応じて乳化剤、分散剤、湿潤剤、安定剤等を添加して、乳剤、油剤、水和剤、粉剤等の製剤として使用するのが好ましい。この製剤用途として特に好ましいのは、スキンケア化粧料、メイクアップ化粧料、洗浄料、外用剤等の化粧料である。
【０００８】
本発明の皮膚外用保湿剤は、皮膚外用剤へ配合することができる。本発明の皮膚外用保湿剤を皮膚外用剤に配合した場合におけるＬ−テアニンの配合量は、特に限定されないが、好ましくは、０．０１〜１０重量％（以下、単に「％」と記す）、より好ましくは、０．０１〜５％である。
【０００９】
また、その場合の皮膚外用剤の形態としては、特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム、パック、洗浄料、メイクアップ化粧料等にすることができ、更に必要に応じて界面活性剤、油剤、粉体、低級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、紫外線吸収剤、防腐剤、色素、香料、各種美容成分等を配合することができる。
【００１０】
【実施例】
次に、実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【００１１】
１．Ｌ−テアニンの製造例
０．３ＭのＬ−グルタミン酸を塩酸存在下で無水エタノールと振り混ぜ、０℃で過量の塩酸とエタノールを除き、析出した塩酸塩をメタノールに溶かした後、その一部を取り滴定を行い、計算量のアンモニアを加えて冷却し、Ｌ−グルタミン酸−γ−エチルエステルを得た。これをクロロカルボキシル酸ベンジルエステルと反応させてＮ−カルボキシベンジル−Ｌ−グルタミン酸−γ−エチルエステルを得た。これをエチルアミンと反応させて、Ｎ−カルボキシルベンジル−Ｌ−グルタミン酸エチルアミドとした後、白金触媒下で水素添加し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、更に再結晶を行い、Ｌ−テアニンを得た。
【００１２】
２．Ｌ−テアニンの保湿能評価（保湿性及び吸湿性評価）
Ｌ−テアニンの５０％水溶液を調製し、これを試験サンプルとして、温度３０℃、湿度４５％の恒温恒湿槽に２７時間放置し、重量変化を測定することにより保湿性を評価した。また、上記重量変化測定後のサンプルを温度３０℃、湿度７５％の恒温恒湿槽に移し、その後の重量変化を測定することにより吸湿性を評価した。
対照サンプルとして、従来から保湿剤として用いられている、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、プロリンも同様に調製し、評価した。
得られた結果を図１に示す。
【００１３】
図１から明らかなように、従来から皮膚外用保湿剤として使用されているピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、プロリンは、湿度４５％の恒温恒湿槽に放置したとき、放置から約１０時間の間に重量が２５％程度急激に減少し、その後は重量減少が緩やかになる。これに対し、本発明に係わるＬ−テアニンは、重量変化が緩やかで且つ一定の割合で減少し、しかもこの重量変化が著しく少なく２７時間放置後でも５％程度減少するだけである。これは、本発明に係わるＬ−テアニンは従来の皮膚外用保湿剤と異なる保湿挙動を示し、良好な保湿効果を有することを示す。
【００１４】
また、一般的に、高湿度下で吸湿性が高い皮膚外用保湿剤はべたつきを生じるとされている。上記の温度３０℃、湿度７５％の恒温恒湿槽に移し、その後の重量変化を測定する試験は、この吸湿性を測定するための試験である。従来のピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、プロリンは、湿度７５％の雰囲気に移され放置されると急速に湿分を吸収して重量増加する。これに対しＬ−テアニンは湿度７５％の雰囲気に移され放置されても穏やかに減少し急速な重量変化は見られなかった。Ｌ−テアニンは高湿度下で吸湿性が従来の皮膚外用保湿剤に比し低いことを示す。
このように、本発明のＬ−テアニンは従来の皮膚外用保湿剤と比較して保湿効果が極めて高く、且つ湿度の影響を受けにくいという優れた効果を有していた。
【００１５】
実施例１〜３及び比較例１〜３． 化粧水
表１に示す組成の化粧水を製造し、その官能特性について評価した。
【００１６】
【表１】

【００１７】
（製造方法）
成分１〜成分８を均一に混合し、化粧水を得た。
（評価方法）
専門評価パネル１０名にて、官能検査を行った。使用後のしっとり感及びべたつきのなさについて表２に示すごとく５段階評価し、さらにその平均点から判定した。判定の基準を同じく表２に示す。
【００１８】
【表２】

【００１９】
表２評価方法によって得られた結果を表１に示した。表１から明らかなように、本発明に係わる実施例１〜３は、使用後のしっとり感が良好で保湿性に優れ、且つ、べたつき感を生じることのないものであった。
【００２０】
参考例１． 乳液
（成分） （％）
１．スクワラン ５．０
２．セタノール １．０
３．ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート ２．０
（２０Ｅ．Ｏ．）
４．セスキオレイン酸ソルビタン ０．８
５．グリセリン ５．０
６．１，３−ブチレングリコール １０．０
７．Ｌ−テアニン １．０
８．カルボキシビニルポリマー ０．２
９．水酸化カリウム ０．１
１０．防腐剤 適量
１１．香料 適量
１２．精製水 残量
【００２１】
（製造方法）
Ａ：成分１〜４を均一に加熱溶解する。
Ｂ：成分５〜１０及び１２を均一に加熱溶解し、これにＡを添加して乳化混合す る。
Ｃ：Ｂを冷却後、成分１１を添加混合して乳液を得た。
この得られた乳液は、皮膚の潤いを保ち、保湿性に優れ、べたつきのない使用感の良好な乳液であった。
【００２２】
参考例２． クリーム
（成分） （％）
１．セタノール ３．０
２．スクワラン ２５．０
３．ミツロウ ３．０
４．還元ラノリン ５．０
５．ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミレート ２．０
（２０Ｅ．Ｏ．）
６．ステアリン酸モノグリセリド ２．０
７．グリセリン １０．０
８．１，３−ブチレングリコール １０．０
９．Ｌ−テアニン ２．０
１０．防腐剤 適量
１１．香料 適量
１２．精製水 残量
【００２３】
（製造方法）
Ａ：成分１〜６を均一に加熱混合する。
Ｂ：成分７〜１０及び１２を均一に加熱混合し、Ａに添加して乳化混合する。
Ｃ：Ｂを冷却後、成分１１を添加混合してクリームを得た。
得られたクリームは、保湿性に優れ、肌にみずみずしさを賦与する使用感の良好なクリームであった。
【００２４】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の皮膚外用保湿剤は保湿性に優れ、しかも高湿度下における吸湿性が小さい特性を有する。したがって、本発明の皮膚外用保湿剤を含有させた皮膚外用剤は、優れた保湿効果を有し、且つべたつき感がなく、使用感の良好なものである。そして、この皮膚用外用剤は皮膚の潤いを保ち、肌にみずみずしさを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】保湿剤の保湿性並びに吸湿性を示した図。

Claims (1)

1. Ｌ−テアニンからなる皮膚外用保湿剤。

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