JP3543383B2 - β−ケトホスホナ−ト誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、β−ケトホスホナ−ト誘導体の新規な製造方法に関する。β−ケトホスホナ−ト誘導体は、例えば医薬品、特にプロスタグランジン類縁体又は4-ヒドロキシ-3- メチルグルタリル-5- (HMG)Co−Aリダクタ−ゼ阻害作用を持つ血中コレステロ−ル低下剤(例えばコンパクチン)を合成する際に中間体として有用である。
【0002】
本発明の製法により製造されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体において、例えばジメチル2-オキソ-2- フェニルエチルホスホネ−トは、特開昭52−97958号に記載された方法に準じて、2-〔3-α-p- フェニルベンゾイルオキシ-5α- ヒドロキシ-2β-(3-オキソ-3- フェニル- トランス-1- プロペン-1- イル) シクロペント-1α- イル〕酢酸を誘導し、更に13,14 ジヒドロ-15-低級アルキル基-5- フェニル- ω- ペンタノルプロスタグランジン類又は15- 低級アルキル基-5- フェニル- ω- ペンタノルプロスタグランジン類に誘導することができる。
【0003】
また、本発明の製法により製造されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体において、例えば( R)-3-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-5- ジメトキシホスフィニル-5- オキソヘキサン酸は、ジャ−ナル オブ メジシナル ケミストリ−(Journal of Medicinal Chemistry 、1987年、第30巻、No.10 、1858頁〜1873頁) に記載された方法に準じて、4-ヒドロキシ-3- メチルグルタリル-5- (HMG)Co−Aリダクタ−ゼ阻害作用を持つ血中コレステロ−ル低下剤(例えばコンパクチン)に誘導することができる。
【0004】
【従来技術】
従来、β−ケトホスホナ−ト誘導体の製法としては、例えばジャ−ナル オブオルガニック ケミストリ−(Journal of Organic Chemistry、1991年、第56巻、No.11 、3744頁〜 3747 頁)に記載されているように、一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体としてのジメチルメチルホスホナ−トと、−78℃の極低温下、アルカリ金属源としてのブチルリチウムとを反応させて『ジメチルメチルホスホナ−トのリチウム塩』を調製し、該塩と一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体としての(S)-3-tert-ブチルジメチルシリルオキシグルタル酸メチルハ−フエステルとを反応させて、一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体としての(R)-3-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-6- ジメトキシホスフィニル-5- オキソヘキサン酸を得る方法である。
【0005】
しかしながら、この方法は、ホスホラス アンド サルファ−(Phosphorus and Sulfur 、1988年、第40巻、105 頁〜116 頁) に記載されているように、例えばtert- ブチル基、イソプロピル基などの嵩高いアルキル基を持つ特定のメチルホスホナ−ト誘導体を用いる必要があり、例えばメチル基、エチル基などのアルキル基を持つメチルホスホナ−ト誘導体のリチウム塩は、反応温度が0℃の条件下では自己縮合を起こすため目的の反応が進行せず、反応の進行に反応温度が−78℃であることが必要な点で工業的に満足する方法ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記の公知の製法における問題点を改良すべく、鋭意検討した結果、メチルホスホナ−ト誘導体とアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを反応させて、メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩を生成させた後に、カルボン酸誘導体とを反応させた場合、特定の基を持つメチルホスホナ−ト誘導体に限定することなく−78℃の極低温を必要とせず、β−ケトホスホナ−ト誘導体が得られることを見出して本発明を完成した。
【0007】
従って、本発明は、β−ケトホスホナ−ト誘導体を簡便に得ることのできる、工業的に利用可能なβ−ケトホスホナ−ト誘導体の製法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式(1)
【0009】
【化5】
【0010】
(式中、R1 、R2 は、独立して、置換されていてもよい炭化水素置換基を示す)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体と、
一般式(2)
【0011】
【化6】
【0012】
(式中、Mはアルカリ金属を示す)で示されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中にて−30〜0℃で反応させて、生成したメチルホスホナート誘導体のアルカリ金属塩と、
一般式(3)
【0013】
【化7】
【0014】
(式中、R3は、置換されていてもよいアルキル基又はアリール基を示し、Xは脱離基を示す)で表されるカルボン酸誘導体とを−30〜0℃で反応させる、
一般式(4)
【0015】
【化8】
【0016】
(式中、R1 、R2 、R3 は前記と同じ意味を示す)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体の製造方法に関する。
【0017】
本発明の製法は、例えば以下のような反応式(1)で表すことができる。反応式(1)の示す製法は、一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体、一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンと一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体とを反応させて、一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得る製法である。
反応式(1)
【0018】
【化9】
【0019】
前記の製法は、例えば以下に示す工程1および工程2で更に詳しく示すことができる。
▲1▼.工程1:一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体と一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体とを反応させる際、予めメチルホスホナ−ト誘導体と一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中で反応させて、『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』を生成させ、該金属塩を含む有機溶媒溶液を得る。
▲2▼.工程2:この有機溶媒溶液中で得られた『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』のアルカリ金属と一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体とを反応させることによって一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得る。
【0020】
前記の工程1は、例えば反応式(2)で示すことができる。
【0021】
反応式(2)
【0022】
【化10】
【0023】
本発明の工程1で使用される一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体は、後記のようにそのまま工程1に使用することができ,有機溶媒Aに溶解して有機溶媒溶液(以下溶液Aともいう)として使用することもできる。
本発明の工程1で使用される一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンは、テトラヒドロフラン又はヘキサンの溶液として入手できるのでそのまま工程1に使用でき、有機溶媒Bに溶解・希釈して有機溶媒溶液(以下溶液Bともいう)として使用することもできる。
本発明の工程1では、例えば溶液Aと溶液Bとを反応させて、『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』を含む溶液〔溶液(A+B)〕を得る。この反応では、例えば−50〜0℃(好ましくは−30〜0℃)に冷却した溶液Bに、攪拌しながら溶液Aを滴下することにより溶液(A+B)を得ることができる。あるいは、溶液Bを溶液Aに滴下することにより溶液(A+B)を得ても良い。反応時間は10〜120分間が好ましく、30〜60分間が更に好ましい。
【0024】
上記『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』は、有機溶媒中のみで安定であるため、一般にメチルホスホナ−ト誘導体とアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中で反応させて調製される。
【0025】
本発明の工程1に使用される一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体におけるR1 、R2 の示す置換されていてもよい炭化水素置換基は、各々独立して、アルキル基、置換されていてもよいアラアルキル基を表す。
R1 、R2 の示すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができ、メチル基が好ましい。
【0026】
R1 、R2 の示すアラアルキル基としては、置換されていてもよいアラアルキル基は、置換されていないアラアルキル基、置換されているアラアルキル基を表す。
R1 、R2 の示す置換されていないアラアルキル基としては、例えばベンジル基、2−フェニルエチル基のような炭素数7〜8のアラアルキル基を挙げることができ、ベンジル基が好ましい。
R1 、R2 の示す置換されているアラアルキル基の置換基としては、例えばニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。なお、置換基の数および置換位置は任意である。置換されているアラアルキル基の具体例としては、例えば4−フルオロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ニトロベンジル基などを挙げることができ、好ましくは4−クロロベンジル基である。
【0027】
前記の工程1で使用される有機溶媒Aは、反応に不活性な有機溶媒であればよく、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テル、テトラヒドロフラン(以下THFともいう)などのエ−テル系溶媒を挙げることができ、エ−テル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフランが更に好ましい。
【0028】
前記の溶液Aは前記メチルホスホナ−ト誘導体を有機溶媒Aに溶解することにより調製することができる。その場合、メチルホスホナ−ト誘導体は、有機溶媒Aに溶解させて、1〜50%(W/V%)の濃度で使用することが一般的であり、5〜50%の濃度で使用することが好ましく、10〜50%の濃度で使用することが更に好ましい。
【0029】
本発明の工程1に使用される一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンにおけるMはアルカリ金属を示す。アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムを挙げることができ、リチウム、ナトリウムが好ましく、リチウムが更に好ましい。
【0030】
前記の工程1で使用されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンは、通常テトラヒドロフラン又はヘキサンの溶液として入手できるのでそのまま使用できる。また有機溶媒Bに溶解させて溶液Bとしても使用可能である。
有機溶媒Bとしては、例えば前記の有機溶媒Aと同じ有機溶媒を挙げることができ、有機溶媒Aと同一の有機溶媒であっても、異なっていてもよい。
【0031】
一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンは、有機溶媒Bに溶解させて、1〜50%(W/V)の濃度で使用することが一般的であり、5〜45%の濃度で使用することが好ましく、10〜40%の濃度で使用することが更に好ましく、10〜30%の濃度で使用することが特に好ましい。
【0032】
本発明の工程1に使用されるメチルホスホナ−ト誘導体は、その使用量が、使用されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザン1モルに対して、0.8〜2.0モルの割合になる量が一般的であり、0.9〜1.5モルの割合になる量が好ましく、1.0〜1.2の割合になる量が更に好ましい。
【0033】
本発明の工程1に使用される有機溶媒は、前記の溶液Aで用いた有機溶媒A又は/および前記の溶液Bで用いた有機溶媒Bが存在するため、新たに加える必要はないが、加えてもよい、その場合、反応に関与しない有機溶媒であれば、前記の有機溶媒A又はBと同じ有機溶媒と同一でも異なっていてもよい。
【0034】
前記の工程2は、例えば反応式(3)で示すことができる。
【0035】
反応式(3)
【0036】
【化11】
【0037】
本発明の工程2に使用される一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体は、そのまま使用することも、有機溶媒Cに溶解して有機溶媒溶液として使用することもできる。
本発明の工程2では、例えば溶液(A+B)(工程1で得られたメチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩を含む溶液)を−50〜0℃の温度範囲に保って、一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体と反応させて、一般式(4)で示されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得る。この反応では、例えば−50〜0℃(好ましくは−30〜0℃)に冷却した溶液(A+B)に、攪拌しながらカルボン酸誘導体の溶液を滴下することにより反応させる。この場合、カルボン酸誘導体の溶液に溶液(A+B)を滴下しても良い。なお、反応終了時に、例えば飽和塩化アンモニウム水溶液のような水溶液を反応停止剤として用いることもできる。反応時間は、10〜600分間が好ましく、30〜300分間が更に好ましい。
【0038】
本発明の工程2に使用される一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体におけるXは脱離基を表す。脱離基としては、例えばハロゲン原子、イミダゾリル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリ−ルカルボニルオキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
一般式(3)におけるXの示すハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子などを挙げることができる。好ましくは塩素原子である。
一般式(3)におけるXの示すアルキルカルボニルオキシ基は、例えばアルキル基部分にメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を含むアルキルカルボニルオキシ基を挙げることができる。
一般式(3)におけるXの示すアリ−ルカルボニルオキシ基としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、チエニル基、フリル基のようなアリ−ル基を含むアリ−ルカルボニルオキシ基を挙げることができる。
一般式(3)におけるXの示すアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(各異性体を含む)、ブトキシ基(各異性体を含む)のような炭素数1〜4のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
【0039】
本発明の工程2に使用される一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体におけるR3 は、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリ−ル基を表す。
【0040】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていてもよいアルキル基は、置換されていないアルキル基、置換されているアルキル基を表す。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていないアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアルキル基の置換基としては、例えばアルコキシ基、シリルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、置換されているフェニル基などを挙げることができる。置換基の数および位置は任意である。
【0041】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアルキル基の置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基(各異性体を含む)、ブチルオキシ基(各異性体を含む)、ペンチルオキシ基(各異性体を含む)のようなアルキル基部分に炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアルキル基の置換基であるシリルオキシ基としては、例えばトリメチルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基、ジフェニル-tert-ブチルシリル基などを挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の表す置換されているアルキル基の置換基であるアルコキシカルボニル基としては、例えばアルキル基部分にメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシカルボニル基を挙げることができる。
【0042】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、ニトロ基、アルキル基、カルボキシル基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基であるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基(各異性体を含む)、ブチルオキシ基(各異性体を含む)、ペンチルオキシ基(各異性体を含む)のようなアルキル基部分に炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基であるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。
【0043】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていてもよいアリ−ル基は、置換されていないアリ−ル基、置換されているアリ−ル基を表す。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていないアリ−ル基としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、チエニル基、フリル基のようなアリ−ル基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、ニトロ基、アルキル基を挙げることができる。置換基の数および位置は任意である。
【0044】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基であるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基(各異性体を含む)、ブチルオキシ基(各異性体を含む)、ペンチルオキシ基(各異性体を含む)のようなアルキル基部分に炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基であるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。
【0045】
一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体におけるXがアルコキシ基を示し、R3 が置換されていてもよいアルキル基を示し、該アルキル基の炭素数が3である場合、該アルキル基の置換基は、同時にシリルオキシ基およびカルボキシル基であることはない。
【0046】
前記の一般式(3)のカルボン酸誘導体は、常温において液体である化合物は、そのまま使用することができ、また反応に関与しない有機溶媒Cに溶解して有機溶媒溶液として使用することもできる。
本発明の工程2で使用されるカルボン酸誘導体は、その使用量が、使用されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザン1モルに対して、0.2〜1モルの割合になる量であることが一般的であり、0.3〜0.8モルの割合になる量であることが好ましく、0.4〜0.6モルの割合になる量であることが更に好ましい。
【0047】
本発明の工程2で使用される有機溶媒Cとしては、本発明の工程1における前記の有機溶媒Aと同じ有機溶媒を挙げることができ、有機溶媒Aと同一の有機溶媒であっても、異なっていてもよい。この場合、カルボン酸誘導体の使用濃度(W/W%)は、例えば1〜60%を挙げることができ、5〜50%が好ましく、10〜40%が更に好ましい。
【0048】
本発明の製法において得られる目的化合物である、一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体において、R1 、R2 、R3 は前記と同じ意味を示す。このようなR1 、R2 、R3 を有するβ−ケトホスホナ−ト誘導体は、前記メチルホスホナ−ト誘導体およびカルボン酸誘導体で決められる。
【0049】
本発明においては、反応終了後、得られたβ−ケトホスホナ−ト誘導体を含む反応混合液より、該化合物を分離する方法として、例えば以下の方法を挙げることができる。反応混合液に、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの水溶液を添加して酸性溶液とする。該酸性溶液より、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テルなどのエ−テル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒を用いて、β−ケトホスホナ−ト誘導体を抽出し、その後水洗・乾燥・濃縮を行い、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィ−により分離することができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、上記一般式(1)の表すメチルホスホナ−ト誘導体と一般式(2)の表すアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中で反応させ、得られたメチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩と、一般式(3)の表すカルボン酸誘導体とを反応させる一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体の製法である。本発明を使用すれば、特定の基を持つメチルホスホナ−ト誘導体に限定することなく−78℃のような極低温を必要とせず、短時間でβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得ることができる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を示す。実施例中の収率(%)は〔β−ケトホスホナ−ト誘導体(モル)/カルボン酸誘導体(モル)〕で算出した。
【0052】
実施例1
アルゴンガスを導入した3つ口フラスコに、−5℃に冷却した1.0M−リチウムヘキサメチルジシラザンTHF溶液(9.72mmol)9.72ミリリットルにジメチルメチルホスホナ−ト1.21g(9.76mmol)を滴下して、同温度に保ちながら1時間攪拌して、混合THF溶液を得た。同温度に保った該THF溶液に、安息香酸無水物1.0g(4.42mmol)をTHF5ミリリットルに溶解した安息香酸THF溶液を30分間で滴下し、0℃で20分間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液10ミリリットルを滴下して反応を終了させた。
保温を止めた該反応液に1N−塩酸22ミリリットルを滴下し、酸性反応液を得た。得られた酸性反応液を、酢酸エチル50ミリリットルで分液し、酢酸エチル層を得た。得られた酢酸エチル層を水10ミリリットルで洗浄(X2回)し、洗浄酢酸エチル層を得た。得られた洗浄酢酸エチル層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、減圧濃縮を行って濃縮液を得た。得られ濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(溶離液;酢酸エチル)を用いて精製を行いジメチルベンゾイルメチルホスホナ−ト0.74gを得た。(収率:74%)
得られたジメチルベンゾイルメチルホスホナ−トの分析結果は、ジャ−ナルオブ オルガニック ケミストリ−(Journal of Organic Chemistry、1990年、55巻、No.3 、1080〜1086頁)の記載結果と一致した。
【0053】
実施例2
安息香酸無水物の代わりに安息香酸クロライド0.621g(4.42mmol)を用いた他は、実施例2と同様な操作を行って、ジメチルベンゾイルメチルホスホナ−ト0.980gを得た。(収率:97%)
【0054】
実施例3
安息香酸無水物の代わりに1−ベンゾイルイミダゾ−ル0.761g(4.42mmol)を用いた他は、実施例2と同様な操作を行って、ジメチルベンゾイルメチルホスホナ−ト0.94gを得た。(収率:94%)
【産業上の利用分野】
本発明は、β−ケトホスホナ−ト誘導体の新規な製造方法に関する。β−ケトホスホナ−ト誘導体は、例えば医薬品、特にプロスタグランジン類縁体又は4-ヒドロキシ-3- メチルグルタリル-5- (HMG)Co−Aリダクタ−ゼ阻害作用を持つ血中コレステロ−ル低下剤(例えばコンパクチン)を合成する際に中間体として有用である。
【0002】
本発明の製法により製造されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体において、例えばジメチル2-オキソ-2- フェニルエチルホスホネ−トは、特開昭52−97958号に記載された方法に準じて、2-〔3-α-p- フェニルベンゾイルオキシ-5α- ヒドロキシ-2β-(3-オキソ-3- フェニル- トランス-1- プロペン-1- イル) シクロペント-1α- イル〕酢酸を誘導し、更に13,14 ジヒドロ-15-低級アルキル基-5- フェニル- ω- ペンタノルプロスタグランジン類又は15- 低級アルキル基-5- フェニル- ω- ペンタノルプロスタグランジン類に誘導することができる。
【0003】
また、本発明の製法により製造されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体において、例えば( R)-3-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-5- ジメトキシホスフィニル-5- オキソヘキサン酸は、ジャ−ナル オブ メジシナル ケミストリ−(Journal of Medicinal Chemistry 、1987年、第30巻、No.10 、1858頁〜1873頁) に記載された方法に準じて、4-ヒドロキシ-3- メチルグルタリル-5- (HMG)Co−Aリダクタ−ゼ阻害作用を持つ血中コレステロ−ル低下剤(例えばコンパクチン)に誘導することができる。
【0004】
【従来技術】
従来、β−ケトホスホナ−ト誘導体の製法としては、例えばジャ−ナル オブオルガニック ケミストリ−(Journal of Organic Chemistry、1991年、第56巻、No.11 、3744頁〜 3747 頁)に記載されているように、一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体としてのジメチルメチルホスホナ−トと、−78℃の極低温下、アルカリ金属源としてのブチルリチウムとを反応させて『ジメチルメチルホスホナ−トのリチウム塩』を調製し、該塩と一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体としての(S)-3-tert-ブチルジメチルシリルオキシグルタル酸メチルハ−フエステルとを反応させて、一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体としての(R)-3-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-6- ジメトキシホスフィニル-5- オキソヘキサン酸を得る方法である。
【0005】
しかしながら、この方法は、ホスホラス アンド サルファ−(Phosphorus and Sulfur 、1988年、第40巻、105 頁〜116 頁) に記載されているように、例えばtert- ブチル基、イソプロピル基などの嵩高いアルキル基を持つ特定のメチルホスホナ−ト誘導体を用いる必要があり、例えばメチル基、エチル基などのアルキル基を持つメチルホスホナ−ト誘導体のリチウム塩は、反応温度が0℃の条件下では自己縮合を起こすため目的の反応が進行せず、反応の進行に反応温度が−78℃であることが必要な点で工業的に満足する方法ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記の公知の製法における問題点を改良すべく、鋭意検討した結果、メチルホスホナ−ト誘導体とアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを反応させて、メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩を生成させた後に、カルボン酸誘導体とを反応させた場合、特定の基を持つメチルホスホナ−ト誘導体に限定することなく−78℃の極低温を必要とせず、β−ケトホスホナ−ト誘導体が得られることを見出して本発明を完成した。
【0007】
従って、本発明は、β−ケトホスホナ−ト誘導体を簡便に得ることのできる、工業的に利用可能なβ−ケトホスホナ−ト誘導体の製法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式(1)
【0009】
【化5】
【0010】
(式中、R1 、R2 は、独立して、置換されていてもよい炭化水素置換基を示す)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体と、
一般式(2)
【0011】
【化6】
【0012】
(式中、Mはアルカリ金属を示す)で示されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中にて−30〜0℃で反応させて、生成したメチルホスホナート誘導体のアルカリ金属塩と、
一般式(3)
【0013】
【化7】
【0014】
(式中、R3は、置換されていてもよいアルキル基又はアリール基を示し、Xは脱離基を示す)で表されるカルボン酸誘導体とを−30〜0℃で反応させる、
一般式(4)
【0015】
【化8】
【0016】
(式中、R1 、R2 、R3 は前記と同じ意味を示す)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体の製造方法に関する。
【0017】
本発明の製法は、例えば以下のような反応式(1)で表すことができる。反応式(1)の示す製法は、一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体、一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンと一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体とを反応させて、一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得る製法である。
反応式(1)
【0018】
【化9】
【0019】
前記の製法は、例えば以下に示す工程1および工程2で更に詳しく示すことができる。
▲1▼.工程1:一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体と一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体とを反応させる際、予めメチルホスホナ−ト誘導体と一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中で反応させて、『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』を生成させ、該金属塩を含む有機溶媒溶液を得る。
▲2▼.工程2:この有機溶媒溶液中で得られた『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』のアルカリ金属と一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体とを反応させることによって一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得る。
【0020】
前記の工程1は、例えば反応式(2)で示すことができる。
【0021】
反応式(2)
【0022】
【化10】
【0023】
本発明の工程1で使用される一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体は、後記のようにそのまま工程1に使用することができ,有機溶媒Aに溶解して有機溶媒溶液(以下溶液Aともいう)として使用することもできる。
本発明の工程1で使用される一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンは、テトラヒドロフラン又はヘキサンの溶液として入手できるのでそのまま工程1に使用でき、有機溶媒Bに溶解・希釈して有機溶媒溶液(以下溶液Bともいう)として使用することもできる。
本発明の工程1では、例えば溶液Aと溶液Bとを反応させて、『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』を含む溶液〔溶液(A+B)〕を得る。この反応では、例えば−50〜0℃(好ましくは−30〜0℃)に冷却した溶液Bに、攪拌しながら溶液Aを滴下することにより溶液(A+B)を得ることができる。あるいは、溶液Bを溶液Aに滴下することにより溶液(A+B)を得ても良い。反応時間は10〜120分間が好ましく、30〜60分間が更に好ましい。
【0024】
上記『メチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩』は、有機溶媒中のみで安定であるため、一般にメチルホスホナ−ト誘導体とアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中で反応させて調製される。
【0025】
本発明の工程1に使用される一般式(1)で表されるメチルホスホナ−ト誘導体におけるR1 、R2 の示す置換されていてもよい炭化水素置換基は、各々独立して、アルキル基、置換されていてもよいアラアルキル基を表す。
R1 、R2 の示すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができ、メチル基が好ましい。
【0026】
R1 、R2 の示すアラアルキル基としては、置換されていてもよいアラアルキル基は、置換されていないアラアルキル基、置換されているアラアルキル基を表す。
R1 、R2 の示す置換されていないアラアルキル基としては、例えばベンジル基、2−フェニルエチル基のような炭素数7〜8のアラアルキル基を挙げることができ、ベンジル基が好ましい。
R1 、R2 の示す置換されているアラアルキル基の置換基としては、例えばニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。なお、置換基の数および置換位置は任意である。置換されているアラアルキル基の具体例としては、例えば4−フルオロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ニトロベンジル基などを挙げることができ、好ましくは4−クロロベンジル基である。
【0027】
前記の工程1で使用される有機溶媒Aは、反応に不活性な有機溶媒であればよく、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テル、テトラヒドロフラン(以下THFともいう)などのエ−テル系溶媒を挙げることができ、エ−テル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフランが更に好ましい。
【0028】
前記の溶液Aは前記メチルホスホナ−ト誘導体を有機溶媒Aに溶解することにより調製することができる。その場合、メチルホスホナ−ト誘導体は、有機溶媒Aに溶解させて、1〜50%(W/V%)の濃度で使用することが一般的であり、5〜50%の濃度で使用することが好ましく、10〜50%の濃度で使用することが更に好ましい。
【0029】
本発明の工程1に使用される一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンにおけるMはアルカリ金属を示す。アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムを挙げることができ、リチウム、ナトリウムが好ましく、リチウムが更に好ましい。
【0030】
前記の工程1で使用されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンは、通常テトラヒドロフラン又はヘキサンの溶液として入手できるのでそのまま使用できる。また有機溶媒Bに溶解させて溶液Bとしても使用可能である。
有機溶媒Bとしては、例えば前記の有機溶媒Aと同じ有機溶媒を挙げることができ、有機溶媒Aと同一の有機溶媒であっても、異なっていてもよい。
【0031】
一般式(2)で表されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンは、有機溶媒Bに溶解させて、1〜50%(W/V)の濃度で使用することが一般的であり、5〜45%の濃度で使用することが好ましく、10〜40%の濃度で使用することが更に好ましく、10〜30%の濃度で使用することが特に好ましい。
【0032】
本発明の工程1に使用されるメチルホスホナ−ト誘導体は、その使用量が、使用されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザン1モルに対して、0.8〜2.0モルの割合になる量が一般的であり、0.9〜1.5モルの割合になる量が好ましく、1.0〜1.2の割合になる量が更に好ましい。
【0033】
本発明の工程1に使用される有機溶媒は、前記の溶液Aで用いた有機溶媒A又は/および前記の溶液Bで用いた有機溶媒Bが存在するため、新たに加える必要はないが、加えてもよい、その場合、反応に関与しない有機溶媒であれば、前記の有機溶媒A又はBと同じ有機溶媒と同一でも異なっていてもよい。
【0034】
前記の工程2は、例えば反応式(3)で示すことができる。
【0035】
反応式(3)
【0036】
【化11】
【0037】
本発明の工程2に使用される一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体は、そのまま使用することも、有機溶媒Cに溶解して有機溶媒溶液として使用することもできる。
本発明の工程2では、例えば溶液(A+B)(工程1で得られたメチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩を含む溶液)を−50〜0℃の温度範囲に保って、一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体と反応させて、一般式(4)で示されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得る。この反応では、例えば−50〜0℃(好ましくは−30〜0℃)に冷却した溶液(A+B)に、攪拌しながらカルボン酸誘導体の溶液を滴下することにより反応させる。この場合、カルボン酸誘導体の溶液に溶液(A+B)を滴下しても良い。なお、反応終了時に、例えば飽和塩化アンモニウム水溶液のような水溶液を反応停止剤として用いることもできる。反応時間は、10〜600分間が好ましく、30〜300分間が更に好ましい。
【0038】
本発明の工程2に使用される一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体におけるXは脱離基を表す。脱離基としては、例えばハロゲン原子、イミダゾリル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリ−ルカルボニルオキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
一般式(3)におけるXの示すハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子などを挙げることができる。好ましくは塩素原子である。
一般式(3)におけるXの示すアルキルカルボニルオキシ基は、例えばアルキル基部分にメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を含むアルキルカルボニルオキシ基を挙げることができる。
一般式(3)におけるXの示すアリ−ルカルボニルオキシ基としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、チエニル基、フリル基のようなアリ−ル基を含むアリ−ルカルボニルオキシ基を挙げることができる。
一般式(3)におけるXの示すアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(各異性体を含む)、ブトキシ基(各異性体を含む)のような炭素数1〜4のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
【0039】
本発明の工程2に使用される一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体におけるR3 は、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリ−ル基を表す。
【0040】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていてもよいアルキル基は、置換されていないアルキル基、置換されているアルキル基を表す。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていないアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアルキル基の置換基としては、例えばアルコキシ基、シリルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、置換されているフェニル基などを挙げることができる。置換基の数および位置は任意である。
【0041】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアルキル基の置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基(各異性体を含む)、ブチルオキシ基(各異性体を含む)、ペンチルオキシ基(各異性体を含む)のようなアルキル基部分に炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアルキル基の置換基であるシリルオキシ基としては、例えばトリメチルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基、ジフェニル-tert-ブチルシリル基などを挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の表す置換されているアルキル基の置換基であるアルコキシカルボニル基としては、例えばアルキル基部分にメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシカルボニル基を挙げることができる。
【0042】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、ニトロ基、アルキル基、カルボキシル基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基であるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基(各異性体を含む)、ブチルオキシ基(各異性体を含む)、ペンチルオキシ基(各異性体を含む)のようなアルキル基部分に炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す「アルキル基に置換している置換されているフェニル基」の置換基であるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。
【0043】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていてもよいアリ−ル基は、置換されていないアリ−ル基、置換されているアリ−ル基を表す。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されていないアリ−ル基としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、チエニル基、フリル基のようなアリ−ル基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、ニトロ基、アルキル基を挙げることができる。置換基の数および位置は任意である。
【0044】
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基であるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基(各異性体を含む)、ブチルオキシ基(各異性体を含む)、ペンチルオキシ基(各異性体を含む)のようなアルキル基部分に炭素数1〜5のアルキル基を含むアルコキシ基を挙げることができる。
カルボン酸誘導体におけるR3 の示す置換されているアリ−ル基の置換基であるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(各異性体を含む)、ブチル基(各異性体を含む)、ペンチル基(各異性体を含む)のような炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができる。
【0045】
一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体におけるXがアルコキシ基を示し、R3 が置換されていてもよいアルキル基を示し、該アルキル基の炭素数が3である場合、該アルキル基の置換基は、同時にシリルオキシ基およびカルボキシル基であることはない。
【0046】
前記の一般式(3)のカルボン酸誘導体は、常温において液体である化合物は、そのまま使用することができ、また反応に関与しない有機溶媒Cに溶解して有機溶媒溶液として使用することもできる。
本発明の工程2で使用されるカルボン酸誘導体は、その使用量が、使用されるアルカリ金属ヘキサメチルジシラザン1モルに対して、0.2〜1モルの割合になる量であることが一般的であり、0.3〜0.8モルの割合になる量であることが好ましく、0.4〜0.6モルの割合になる量であることが更に好ましい。
【0047】
本発明の工程2で使用される有機溶媒Cとしては、本発明の工程1における前記の有機溶媒Aと同じ有機溶媒を挙げることができ、有機溶媒Aと同一の有機溶媒であっても、異なっていてもよい。この場合、カルボン酸誘導体の使用濃度(W/W%)は、例えば1〜60%を挙げることができ、5〜50%が好ましく、10〜40%が更に好ましい。
【0048】
本発明の製法において得られる目的化合物である、一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体において、R1 、R2 、R3 は前記と同じ意味を示す。このようなR1 、R2 、R3 を有するβ−ケトホスホナ−ト誘導体は、前記メチルホスホナ−ト誘導体およびカルボン酸誘導体で決められる。
【0049】
本発明においては、反応終了後、得られたβ−ケトホスホナ−ト誘導体を含む反応混合液より、該化合物を分離する方法として、例えば以下の方法を挙げることができる。反応混合液に、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの水溶液を添加して酸性溶液とする。該酸性溶液より、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テルなどのエ−テル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒を用いて、β−ケトホスホナ−ト誘導体を抽出し、その後水洗・乾燥・濃縮を行い、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィ−により分離することができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、上記一般式(1)の表すメチルホスホナ−ト誘導体と一般式(2)の表すアルカリ金属ヘキサメチルジシラザンとを有機溶媒中で反応させ、得られたメチルホスホナ−ト誘導体のアルカリ金属塩と、一般式(3)の表すカルボン酸誘導体とを反応させる一般式(4)で表されるβ−ケトホスホナ−ト誘導体の製法である。本発明を使用すれば、特定の基を持つメチルホスホナ−ト誘導体に限定することなく−78℃のような極低温を必要とせず、短時間でβ−ケトホスホナ−ト誘導体を得ることができる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を示す。実施例中の収率(%)は〔β−ケトホスホナ−ト誘導体(モル)/カルボン酸誘導体(モル)〕で算出した。
【0052】
実施例1
アルゴンガスを導入した3つ口フラスコに、−5℃に冷却した1.0M−リチウムヘキサメチルジシラザンTHF溶液(9.72mmol)9.72ミリリットルにジメチルメチルホスホナ−ト1.21g(9.76mmol)を滴下して、同温度に保ちながら1時間攪拌して、混合THF溶液を得た。同温度に保った該THF溶液に、安息香酸無水物1.0g(4.42mmol)をTHF5ミリリットルに溶解した安息香酸THF溶液を30分間で滴下し、0℃で20分間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液10ミリリットルを滴下して反応を終了させた。
保温を止めた該反応液に1N−塩酸22ミリリットルを滴下し、酸性反応液を得た。得られた酸性反応液を、酢酸エチル50ミリリットルで分液し、酢酸エチル層を得た。得られた酢酸エチル層を水10ミリリットルで洗浄(X2回)し、洗浄酢酸エチル層を得た。得られた洗浄酢酸エチル層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、減圧濃縮を行って濃縮液を得た。得られ濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(溶離液;酢酸エチル)を用いて精製を行いジメチルベンゾイルメチルホスホナ−ト0.74gを得た。(収率:74%)
得られたジメチルベンゾイルメチルホスホナ−トの分析結果は、ジャ−ナルオブ オルガニック ケミストリ−(Journal of Organic Chemistry、1990年、55巻、No.3 、1080〜1086頁)の記載結果と一致した。
【0053】
実施例2
安息香酸無水物の代わりに安息香酸クロライド0.621g(4.42mmol)を用いた他は、実施例2と同様な操作を行って、ジメチルベンゾイルメチルホスホナ−ト0.980gを得た。(収率:97%)
【0054】
実施例3
安息香酸無水物の代わりに1−ベンゾイルイミダゾ−ル0.761g(4.42mmol)を用いた他は、実施例2と同様な操作を行って、ジメチルベンゾイルメチルホスホナ−ト0.94gを得た。(収率:94%)
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