JP3542613B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、固体電解コンデンサの製造方法に関し、特に有機導電性化合物を電解質に利用した固体電解コンデンサの製造方法にかかる。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、プリント基板への実装の効率化等の要請から電子部品のチップ化が進められている。これに伴い、電解コンデンサのチップ化、低背化の要請が高まっている。また、電子機器の多様化から電解コンデンサに対して様々な特性が要求されるようになっている。
【0003】
固体電解コンデンサにおいては、二酸化マンガン等の金属酸化物半導体からなる固体電解質以外に、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ポリピロール、ポリアニリン等の有機導電性化合物を固体電解コンデンサに応用したものが提案されている。これらの有機導電性化合物を使用した固体電解コンデンサは、二酸化マンガン等と比較して電導度が高いことから、他の電解コンデンサと比較してESR特性が改善されている。更にポリピロール、ポリアニリン等は電解質がポリマー化しているため、耐熱性にも優れ、チップ化に最適とも言われている。
【0004】
ポリピロール等のポリマーからなる電解質層は、例えば、酸化剤を含有するピロール溶液中に陽極体を浸漬し、この溶液中での重合反応により生成されたポリピロールを陽極体の表面に形成したのち(化学重合)、更にピロールを溶解した電解液中に浸漬しつつ電圧を印加して(電解重合)生成している。
【0005】
このような、化学重合と電解重合という複数の重合工程によってポリピロール膜を生成しているのは、化学重合によるポリピロール膜は非常に脆弱であり、かつ皮膜としての定着性に欠けており、その表面状態も均一ではなかったことがその理由となっている。また、電解重合では、ピロール溶液中において皮膜を生成すべき対象物に通電させる必要があるが、陽極体の表面には絶縁体である酸化皮膜層が形成されているため、電解重合だけでポリピロール膜を生成することも困難であった。そこで、化学重合によるポリピロール膜を生成し、このポリピロール膜に通電することにより強固で定着性に優れた電解重合によるポリピロール膜を生成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機固体電解質を用いて小形の固体電解コンデンサ、例えばチップ形の固体電解コンデンサを製造する場合、陽極体の外観寸法も縮小せざるを得なくなる。特にポリピロールを使用していることから、耐湿性を維持するためにある程度の外装樹脂の厚さが必要となり、そのぶん陽極体が小さくなる。そのため、陽極体の表面積が縮小し、大容量の固体電解コンデンサを実現することが困難となる。そこで、アルミニウム等からなる陽極体の表面積を粗面化するエッチング倍率を上げ、エッチングピットを更に微細にして陽極体の表面積を拡大する必要が出てきた。このような必要性は、箔状の陽極体を用いて、巻回形のコンデンサ素子を形成した場合でも、その箔形状が縮小されるにしたがって顕著になる。
【0007】
ところが、エッチング倍率を上げて、微細なエッチングピットを形成した場合、前記のような化学重合によるポリピロール膜が酸化皮膜層上に充分に密着しないことが判明した。すなわち、高倍率のエッチング処理を施した陽極体/陽極箔に酸化皮膜層及び電解質層を順次生成し、その電気的特性を測定すると、漏れ電流が増加する傾向が見られたほか、耐電圧が著しく低下した。これは、化学重合によって連鎖したポリピロールが、エッチングピットが微細になるにしたがってピット内部に入り込みにくくなり、結果として電解質層と酸化皮膜層との間に隙間が生じるためと推定される。
【0008】
すなわち、電解質層と酸化皮膜層との間に隙間が生じることで、酸化皮膜層の破損部分の修復が行なわれないことになり、漏れ電流の増加を招くことになる。また、ポリピロール膜との隙間に酸化皮膜層の破損がない場合であっても、表面が覆われていないことから、耐電圧特性が低下してしまう不都合があった。
【0009】
この発明の目的は、上記のような状態に鑑み、安定した電気的特性を有する固体電解コンデンサを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回したコンデンサ素子からなり、前記陽極箔は誘電体となる酸化皮膜層が形成された固体電解コンデンサの製造方法において、ポリアニリン溶液をコンデンサ素子に含浸して酸化皮膜層の表面にポリアニリン膜を形成した後、ピロール溶液と酸化剤溶液とをコンデンサ素子に含浸して化学重合によりポリピロール膜を順次生成して電解質層を設けることを特徴としている。
【0011】
この発明において陽極箔は、アルミニウム、タンタル等の弁作用金属からなり、その表面には予めエッチング処理が施されている。そして、セパレータとして例えばガラスペーパーを用い、陰極箔とともに巻回してコンデンサ素子を形成している。また、酸化皮膜層上に生成するポリアニリン膜は、N−メチルピロリドンに溶解した5〜20%のポリアニリン溶液をコンデンサ素子に含浸し、乾燥処理を施したのち、0.1〜1mol/lの過硫酸アンモン及び0.5〜3mol/lの濃度のp−トルエンスルホン酸の水溶液からなる酸化剤溶液に10〜20分浸漬して生成すると好適である。また、化学重合により生成されるポリピロール膜は、ピロール溶液にコンデンサ素子を3〜10分含浸したのち、0.1〜0.5mol/lの過硫酸アンモン水溶液からなる酸化剤溶液に1〜10分浸漬して生成すると好適である。
【0012】
【作用】
この発明による固体電解コンデンサでは、図面に示すように、酸化皮膜層2が形成された陽極箔1の表面に、ポリアニリン膜からなる電解質層3aが生成され、更にこの電解質層3aの表面に化学重合により生成されたポリピロール膜からなる電解質層3bが形成されている。そして、ポリアニリン膜は、ポリアニリン溶液にコンデンサ素子6を含浸したのち、溶媒を除去することで生成されるため、微細なエッチングピット内にも形成されることになり、その表面状態が均一かつ綿密になる。
【0013】
このように、陽極箔1の酸化皮膜層2の表面に、均一で綿密な電解質層3aを生成することにより、酸化皮膜層2の破損が抑制され、またこの電解質層3a上に生成されるポリピロール膜(電解質層3b)とともに、破損した酸化皮膜層2を修復することが容易になる。
【0014】
【実施例】
以下、この発明の実施例を図面にしたがい説明する。図1は、この発明の実施例による固体電解コンデンサの概念構造を示す部分断面図、図2は実施例の固体電解コンデンサを製造する工程を示す説明図である。
【0015】
陽極箔1は、箔状のアルミニウムからなり、その表面はエッチング処理により粗面化されている。そして、図2(A)に示したように、粗面化された表面には、化成処理により酸化皮膜層2が形成されている。この酸化皮膜層2は、アルミニウムの表層が酸化したもので、コンデンサの誘電体となる。酸化皮膜層2が形成された陽極箔1は、ガラスペーパーからなるセパレータ5を介して陰極箔4と共に巻回されてコンデンサ素子6を形成する。なお、陰極箔4は、陽極箔1と同様にアルミニウム箔を用いた。
【0016】
陽極箔1の表面には、ポリアニリン膜からなる電解質層3aが生成されている。この電解質層3aは、コンデンサ素子6を、N−メチルピロリドンに溶解した10%の濃度のポリアニリン溶液に10分間含浸して乾燥処理を施した後、0.3mol/lの濃度の過硫酸アンモン及び1mol/lのパラトルエンスルホン酸水溶液からなる酸化剤溶液に10分間含浸して生成している。
【0017】
そして、この電解質層3aの表面には、ポリピロール膜からなる電解質層3bが生成されている。電解質層3bは、化学重合により生成されており、この実施例では、エタノール等の溶媒にピロールを溶解させたピロール溶液にコンデンサ素子6を常圧で5分間含浸したのち、0.3mol/lの過硫酸アンモン水溶液からなる酸化剤溶液に5分浸漬して形成した。
【00018】
なお、陽極箔1及び陰極箔4には予め外部接続用の端子7が電気的に接続されている。このコンデンサ素子6は、例えば有底筒状の外装ケースに収納し、その開口部を封口体で密封してもよく、あるいは図3に示したように、コンデンサ素子6の周囲を外装樹脂8で覆うとともに、外部端子9を外装樹脂8の端面から底面に沿って設置して、チップ形の固体電解コンデンサとしてもよい。
【0019】
前記のように、化学重合による生成されたポリピロール膜は、一般的にその表面状態が粗く、均一な皮膜を生成することは困難である。特に高倍率のエッチング処理を施して微細なエッチングピットを設けた陽極箔1では、そのエッチングピット内にポリピロール膜を生成することは困難である。しかしながら、この実施例によれば、少なくとも陽極箔1の表面に形成された酸化皮膜層2には、ポリアニリン溶液の溶媒を除去して生成したポリアニリンからなる電解質層3aによって綿密に、隙間なく覆われる。そのため、この実施例による固体電解コンデンサでは、電解質層3aで覆われた酸化皮膜層2の破損が少なくなるとともに、酸化皮膜層2の破損部分を修復する再化成工程が簡略になって、漏れ電流特性が向上する。
【0020】
次に、従来の固体電解コンデンサとの電気的特性の比較を行なう。比較例1として、先の実施例において用いたものと同じように、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔をセパレータ及び陰極箔とともに巻回したコンデンサ素子を用意した。そして、このコンデンサ素子を、N−メチルピロリドンに溶解した10%の濃度のポリアニリン溶液に10分間含浸して乾燥処理を施した後、0.3mol/lの濃度の過硫酸アンモン及び1mol/lのパラトルエンスルホン酸水溶液からなる酸化剤溶液に10分間浸漬した。更に比較例2として、比較例1と同様の構成からなるコンデンサ素子を、ピロール溶液に5分間含浸し、次いで0.3mol/lの過硫酸アンモン水溶液からなる酸化剤溶液に5分含浸して陽極箔の表面にホリピロール膜を生成し、実施例と共に静電容量、損失角の正接及びESR特性の値を測定した。なお、実施例、比較例共に定格電圧は10V、定格静電容量は4.7μFとした。以下にその結果を示す。
【0021】
【0022】
そして、これの試料についてそれぞれ10V、16V、25Vの電圧を印加し、その漏れ電流を測定した。その結果以下に示す。
【0023】
これらの結果からも明らかなように、この発明の実施例による固体電解コンデンサは、静電容量、その他の電気的特性において、従来例と比較してほぼ同等の電気的特性を示しており、漏れ電流においては優れた特性を示している。特に、定格電圧以上の電圧を印加すると、高い耐電圧特性を示して、陽極箔表面の酸化皮膜層と電解質層との密着性が向上していることが理解される。
【0024】
【発明の効果】
以上のようにこの発明は、陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回したコンデンサ素子からなり、前記陽極箔は誘電体となる酸化皮膜層が形成された固体電解コンデンサの製造方法において、ポリアニリン溶液をコンデンサ素子に含浸して酸化皮膜層の表面にポリアニリン膜を形成した後、ピロール溶液と酸化剤溶液とをコンデンサ素子に含浸して化学重合によりポリピロール膜を順次生成して電解質層を設けることを特徴としているので、電解質層と酸化皮膜層との密着性が向上して酸化皮膜層の破損を抑制し、破損部分の修復が容易となる。そのため、漏れ電流、耐電圧特性等において優れた電気的特性を実現することができる。
【0025】
また、化学重合によるポリピロール膜自体は定着性に欠けるものの、この発明による固体電解コンデンサでは、巻回形のコンデンサ素子を用いているため、巻回されたセパレータがポリピロール膜を押圧することになり、安定した表面状態を維持することができる。
【0026】
更に、陽極箔の単位当たりの容量が増加することで、コンデンサ素子を小形化できるため、コンデンサ素子の周囲を外装樹脂等で覆ってチップ形の固体電解コンデンサとすることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例による固体電解コンデンサの概念構造を示す断面図
【図2】実施例の固体電解コンデンサを製造する工程を示す説明図
【図3】実施例による固体電解コンデンサを示す断面図
【符号の説明】
1 陽極箔
2 酸化皮膜層
3 電解質層
4 陰極箔
5 セパレータ
6 コンデンサ素子
7 端子
8 外装樹脂
9 外部端子
Claims (1)
- 陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回したコンデンサ素子からなり、前記陽極箔は誘電体となる酸化皮膜層が形成された固体電解コンデンサの製造方法において、ポリアニリン溶液をコンデンサ素子に含浸して酸化皮膜層の表面にポリアニリン膜を形成した後、ピロール溶液と酸化剤溶液とをコンデンサ素子に含浸して化学重合によりポリピロール膜を順次生成して電解質層を設けることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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