JP3542123B2 - 極薄容器の射出成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、本体の厚さが極めて薄いケース状の容器の射出成形方法に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
ICモジュールやフラッシュメモリ等を収納して使用されるケース状の容器では、電子機器の小型化に伴い1.0mm以下の極薄のものが要求され、必然的に容積の確保から底面肉厚も薄く成形する必要が生じている。
【0003】
極薄容器の成形としては、本体外面を成形する浅底のキャビティと、そのキャビティ内に圧縮代を残して突設した本体内面を成形する可動コアとからなる金型を用い、そのキャビティに射出充填した樹脂をコアにより圧縮して、本体底面を薄肉化する方法を採用することができる。
【0004】
この成形方法では、射出充填時のコアによる流動抵抗や樹脂流により異なる流動摩擦などの影響が少なく、また充填する樹脂量の制限によって、圧縮前に生じているキャビティ末端部のスペースを、圧縮により生ずる余剰樹脂が埋めるようになるので、底面肉厚が均一な極薄容器が得られるとのことであるが、コアにより押圧されて生じた余剰の樹脂の全てが、下流側のキャビティ末端部に押し出されるものではなく、上流側のゲート側にも逆流するので、下流側の成形が不安定となり易い。
【0005】
またコアがキャビティ内に突出位置し、そのコアに向けてゲートから樹脂の射出充填を行う限り、コアによる流動抵抗や流動摩擦は生じ、コア下側とコア両側の樹脂流の流動速度に差が生ずるので、キャビティ末端部が未充填の状態であっても、コア廻りの樹脂によるウエルドの発生やコア下側の充填遅れによるショートショットは避けられない。
しかも、従来の上記成形方法では、底面積が2cm2 以上の極薄容器の底面肉厚を0.3mm以下の極薄肉に形成することは困難で、出来たとしてもウエルドによる強度低下、残留応力による反りや捩じれによる変形、ガス焼けなどの不良が生じ、良品の成形は望めないものであった。
【0006】
この発明は上記従来の課題を解決するために考えられたものであって、その目的は、コアによる樹脂流の流動速度の差から生じがちな未充填部分を、圧縮により生じた余剰樹脂により補完することにより、本体底面を極薄肉に形成して容器内を深く成形することができる新たな極薄容器の射出成形方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的によるこの発明は、極薄の容器本体を成形する浅底のキャビティと、そのキャビティ内の本体内面を成形するコアとからなる金型を用い、そのコアを本体底面の肉厚の2〜5倍の圧縮代を残してキャビティ内に可動自在に突設して、コア周囲に本体縁辺の成形スペースを形成するとともに、キャビティサイドの中央部に幅広のサイドゲートを設け、そのサイドゲートからキャビティに樹脂を射出充填して、コアにより本体縁辺と厚肉の本体底面とを一次成形し、その樹脂の射出充填を、サイドゲートと反対側の本体底面と本体縁辺の中央部とが未完状態で流動スペースがあるときに停止し、その状態で上記コアにより厚肉の本体底面を極薄肉に圧縮成形すると同時に、余剰樹脂を上記流動スペースに押出して、未完部分の樹脂の補完を行う、というものである。
【0008】
またこの発明は、上記サイドゲートの対向部位にオーバーフロータブを設けててなり、上記コアによる本体底面の圧縮成形は射出圧を零に設定して行い、圧縮力による上流側の樹脂の逆流をサイドゲートから漏れさせて圧抜きを行ったのち、樹脂の再充填を行うというものである。また上記キャビティのコア挿入側の型面周辺を凸条により区画して、キャビティ型面と凸条外側面とにより外縁成形スペースを形成し、その凸条により囲繞形成されたキャビティ開口に、コアを凸条内側面との間に内縁成形スペースを空けて可動自在に挿入し、該コアと凸条により上記本体縁辺を二重縁に形成してなるというものである。さらに、この発明は、上記射出成形をプリプラ式射出成形機により行うというものでもある。
【0009】
【発明の実施の形態】
図中1は、図1(A1)及び(B1)に示すように、分割金型からなるキャビティ金型で、分割金型のパーティング面には、平面形状が四辺形で厚みが1.0mm以下の極薄の容器本体10(図5参照)を成形するキャビティ2の半部がそれぞれ凹設してある。
【0010】
3は本体内面を成形するコアで、キャビティ2の周囲の型面との間に、比較的厚肉の本体縁辺11の成形スペース4を形成する大きさの平断面形状からなり、本体底面12の肉厚の2〜5倍の圧縮代を残して、一方の分割金型から他方の分割金型に向けて、キャビティ2の内部に可動自在に突設してある。
【0011】
5はキャビティ2のゲートで、キャビティサイドの中央部に幅広に設けられ、そのサイドゲート5からキャビティ2に射出充填された溶融状態の樹脂6は、コア3の下側と両側とに別れて流れ、ゲートとは反対側のキャビティ末端まで充填されてゆく。
【0012】
この樹脂流は、コア3により流動間隙が小さく制限されたコア下側と、制限を受けないコア両側とでは流動摩擦に差があることから、コア下側の樹脂流6aの流動速度がコア両側の樹脂流6b,6bよりも遅くなり、図1(A2)及び(B2)に示すよう、両方の樹脂流の先端位置(フロントフロー)に差が生ずる。
【0013】
この状態で、従来のように樹脂の充填を続けると、コア両側の樹脂流6b,6bがキャビティ2の末端部で先に合流してウエルドラインが生じたり、あるいはコア下流側に空気が取り込まれた未充填部分が生じて、図7に示すような窓孔aが本体底面12に生ずるようになる。
【0014】
そこで樹脂6の射出充填を、図1(A3)及(B3)に示すように、不完全ながらコア3により厚肉に一次成形された本体底面のコア下側の下流側と、コア両側の樹脂流6b,6bの先端間とに流動スペース7,8が残存して共に未完の状態にあるときに停止し、そして樹脂が流動性を失う前に、コア3を圧縮作動して、本体底面12を底面肉厚が0.5mm以下の極薄肉に圧縮成形する。
【0015】
この射出充填の停止のタイミングは、成形に用いた射出成形機の射出スクリュやプランジャ位置で制御するのがよく、また圧縮成形タイムは精度1/1000秒のタイマーを採用して行うのがよい。
【0016】
好ましくは圧縮成形時に一旦射出圧を零に設定して、圧縮力による上流側の樹脂6の逆流を、サイドゲート5からランナースプル、ノズル(図4参照)を経て成形機側に漏れさせ、これにより圧抜きを行って残留応力の影響を低減し、圧縮後に再充填を行うのがよい。これにより極薄の容器であっても反りや捩じれが生じ難いものとなる。
【0017】
上記コア3の圧縮によって、厚肉であった本体底面12の肉厚は、極薄肉(例えば0.3mm以下)に形成されるようになり、同時に流動性を有する余剰樹脂がコア3の周囲に押出されるようになる。下流側には流動スペース7,8が残されているので、圧縮と同時に余剰樹脂はコア両側の樹脂6b,6bを内部から押圧して流動スペース8へと押し出すと同時に、凹所のコア下側の流動スペース7を埋め、さらに狭められた流動スペース8を内側から埋めて両側からの樹脂6b,6bの先端間を補完する。
【0018】
これにより、一次的に形成された本体底面の下流側の未充填が解消されて、本体底面12の肉厚が極薄肉でありながら、肉厚分布は±1/100に収まり、図1(A4)及び(B4)に示すように、コア両側の樹脂流の先端相互の合流によるウエルドの課題も解消された極薄容器が得られるようになる。
【0019】
図2は、上記キャビティ2のサイドゲート4の対向部位にオーバーフロータブ9を設け、コア3による圧縮により生じた余剰樹脂を、さらにオーバーフロータブ9まで押出して、余剰樹脂の流れをスムーズにし、これにより未完部位の補完とウエルドの強度向上とを確実なものとなすともに、残留応力による反りや捩じれの発生を防止してなるものである。
【0020】
図3は、図6に示す二重縁の薄肉容器10の金型1を示すもので、キャビティ2のコア挿入側の型面周辺を凸条2aにより区画して、キャビティ型面と凸条外側面とにより外縁成形スペース4aを形成し、その凸条2aにより囲繞形成されたキャビティ開口に、コア3を凸条内側面との間に内縁成形スペース4bを空けて可動自在に挿入し、凸条2aと共にキャビティ2に突設した構造からなる。
このような金型1では、凸条2aを境に薄肉容器10の外縁11aと内縁11bが同時に成形でき、また凸条2aの配置によって本体縁辺11を部分的に二重縁に成形することもできる。
【0021】
図4は、この発明による射出成形方法をプリプラ式射出成形機を採用して行う場合の1例を示すものである。
プリプラ式射出成形機は、射出用のプランジャ21を進退自在に内装した射出シリンダ22の後部に、プランジャ移動装置23を備えた射出装置24と、可塑化用のスクリュ25を回転自在に内装した可塑化シリンダ26の後部に、スクリュ移動及び回転装置27を備えた可塑化装置28とを、射出シリンダ先端部のプランジャ前進限に当たる部分の流入路と、可塑化シリンダ先端の流出路とにわたり設けた開閉バルブ付き樹脂路29により連通し構成からなる。
【0022】
ここに例示したプリプラ式射出成形機は、上記スクリュ25の先端を開閉バルブ30に形成して、そのスクリュ25を回転かつ進退自在に可塑化シリンダ26に内装し、スクリュ25の進退移動により樹脂路29を開閉するものであるが、樹脂路29に回動バルブを取付けて開閉操作を行う構造であっても、同様に採用することができる。
【0023】
このプリプラ式射出成形機では、スクリュ回転により可塑化した樹脂を樹脂路29から射出シリンダ22のプランジャ前部内に充填して計量を行い、計量後にスクリュ前進によりバルブ30を閉じて可塑化装置側と遮断したのち、プランジャ21の前進移動すると、プランジャ前部の計量樹脂が、ノズル31からスプル32及びランナー33を通過して、型閉じされた上記金型1のサイドゲート5からキャビティ2に射出充填される。
【0024】
金型内では、射出充填の終了と殆ど同時に圧縮用の油圧シリンダ34が作動して、ラム35により押圧板36に固設した上記コア3がキャビティ内に押出され、図では省略したが、一次的に射出成形された厚肉の本体底面の薄肉化が行われて、ICモジュール等の収容が可能な極薄容器10が成形されるようになる。
【0025】
このような射出手段では、樹脂の計量誤差が極めて僅かで、射出時の計量樹脂の漏れも殆どないことから、樹脂の可塑化と射出充填とを射出シリンダ内に回転かつ進退自在に内装した射出スクリュにより行うインラインスクリュ式射出成形機を採用したときよりも、射出途中の停止時点での射出充填量が安定するので、製品も肉厚分布が整った成形精度の高いものとなる。
【0026】
【実施例】
材料樹脂 PC、PC+ABSアロイ、PBT等
成形機 FN1000/TM3UH(日精樹脂工業(株)製)
容器面積 3.2×2.4cm2 厚さ1.2mm 容積0.6cm3
底面積 2.7×2.2cm2 底面肉厚 0.15mm
キャビティ容積 0.3cm3 圧縮代 0.50mm
樹脂量 0.3g
射出速度 1000mm/sec
射出圧力 1200Kgf
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の射出成形方法を工程順に示す説明図で、(A)は金型の略示平面図、(B)は金型の略示縦断面図である。
【図2】この発明の他の実施形態の金型の略示平面図(A)と金型の略示縦断面図(B)である。
【図3】この発明を図6に示す二重縁の極薄容器の成形に適用し得る金型の略示平面図(A)と金型の略示縦断面図(B)である。
【図4】この発明の射出成形方法の実施に用いられるプリプラ式射出成形機と金型の縦断面図である。
【図5】この発明の射出成形対象となる極薄容器の斜視図である。
【図6】この発明の射出成形対象となる二重縁の極薄容器の斜視図である。
【図7】従来の射出成形方法による極薄容器の斜視図である。
【符号の説明】
1 金型
2 キャビティ
3 本体内面成形用のコア
4 本体縁辺の成形スペース
5 サイドゲート
6 樹脂
6a コア下側の樹脂流
6b コア両側の樹脂流
7 本体底面下流側の流動スペース
8 キャビティ末端部の流動スペース
9 オーバーフロータブ
10 極薄容器
11 本体縁辺
12 本体底面
21 射出用のプランジャ
24 射出装置
25 可塑化用のスクリュ
27 可塑化装置
29 樹脂路
Claims (5)
- 極薄の容器本体を成形する浅底のキャビティと、そのキャビティ内の本体内面を成形するコアとからなる金型を用い、
そのコアを本体底面の肉厚の2〜5倍の圧縮代を残してキャビティ内に可動自在に突設して、コア周囲に本体縁辺の成形スペースを形成するとともに、キャビティサイドの中央部に幅広のサイドゲートを設け、
そのサイドゲートからキャビティに樹脂を射出充填して、コアにより本体縁辺と厚肉の本体底面とを一次成形し、
その樹脂の射出充填を、サイドゲートと反対側の本体底面と本体縁辺の中央部とが未完状態で流動スペースがあるときに停止し、その状態で上記コアにより厚肉の本体底面を極薄肉に圧縮成形すると同時に、余剰樹脂を上記流動スペースに押出して、未完部分の樹脂の補完を行うことを特徴とする極薄容器の射出成形方法。 - 上記キャビティのサイドゲートの対向部位にオーバーフロータブを設けてなることを特徴とする請求項1記載の極薄容器の射出成形方法。
- 上記コアによる本体底面の圧縮成形は射出圧を零に設定して行い、圧縮力による上流側の樹脂の逆流をサイドゲートから漏れさせて圧抜きを行ったのち、樹脂の再充填を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の極薄容器の射出成形方法。
- 上記キャビティのコア挿入側の型面周辺を凸条により区画して、キャビティ型面と凸条外側面とにより外縁成形スペースを形成し、その凸条により囲繞形成されたキャビティ開口に、コアを凸条内側面との間に内縁成形スペースを空けて可動自在に挿入し、該コアと凸条により上記本体縁辺を二重縁に形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の極薄容器の射出成形方法。
- 上記射出成形はプリプラ式射出成形機により行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の極薄容器の射出成形方法。
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