JP3541570B2 - エンジン用筒内圧センサ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの燃費向上と排気ガス浄化を目的として、燃焼室内の圧力いわゆる筒内圧を検出する筒内圧センサと、該筒内圧センサを用いた筒内圧の検出方法、およびエンジンの燃焼状態を制御する方法及びそのエンジンシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
筒内圧センサとしては、一般的に、点火プラグの周辺に取り付けて燃焼圧を直接計測する方法が採られており、この筒内圧センサからの検出信号により、エンジン本体の失火やノッキング発生状態を検出する方式が開発されている。
【0003】
しかし、エンジンを多弁化したり、シリンダ上部に複数の動弁機構(カムシャフト)を設けるなど、エンジンを高出力化する目的で、より複雑構造となっているシリンダヘッドに、上記のような筒内圧センサを配置することが極めて難しくなっている。
【0004】
この欠点を補うために、燃焼圧を間接的に計測する方法として、特開平2−157631号公報にみられるように、シリンダガスケット内に筒内圧センサ本体の装着部を設け、この装着部に着脱可能な圧電素子を組み込んだ筒内圧センサが開発されている。しかしこの従来方法では、柔らかいガスケット材からなる広い面積のシリンダガスケットと、高剛性の狭い受圧面積をもつ圧電素子が並列に並んだ構成となっている。このため、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に、この筒内圧センサを組み込んだシリンダガスケットを挾んで締結するとき、圧縮代は大部の面積を占めるガスケット材によって決定されるので、圧電素子を最適な圧縮代で締結することが極めて困難であった。そのため、圧縮代が不足の場合には、圧電素子が両者間で振動するなどして精度の良い検出信号、とくに高周波帯域での検出信号が得られない一方、締め代が過大な場合には、圧電素子が破損してしまうといった欠点があった。
【0005】
さらにこの従来方式の筒内圧センサでは、
▲1▼シリンダガスケットや圧電素子の厚さ寸法のばらつきをある程度許容しなければならない、
▲2▼とくに複数個の圧電素子を用いる多気筒エンジンの筒内圧センサにあっては、圧電素子相互間の厚さばらつきも許容しなければならない、
▲3▼筒内圧センサを装着したシリンダガスケットをシリンダブロックとシリンダヘッド間に組み立てるに際して、結合ボルトの締め付けトルクを高精度に管理しなければならない、
▲4▼エンジンの温度上昇に伴う締め付け力の変化を吸収することができず、検出信号の変動をきたしていた、
など、生産し実用化する上で大きな障害となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来技術による筒内圧センサでは、検出性能を高めようとすると、生産上の障害をきたすという、性能面と生産面が相入れないという問題を有していた。
【0007】
すなわち、筒内圧センサ本体を、1mmないし1.5mmといった薄さのシリンダガスケットに内臓する場合に、筒内圧センサ本体およびガスケット材のわずかな厚さのばらつきが、シリンダブロックとシリンダヘッドの間にシリンダガスケットを締め付けるに際し、予期しない締め付け力の大きな変動となって表れ、上述したような好ましからざる事態を引き起こしていた。
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明では、これら厚さばらつきがあってもこれらを許容し、量産に適した筒内圧センサの構造と検出システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の基本となる動作原理は、ミクロにみた場合、測定対象となるエンジンが弾性体であり、シリンダヘッドにかかる燃焼圧に呼応して、シリンダブロックとシリンダヘッド間が、シリンダガスケットの厚さ方向に膨張・収縮を繰り返すこと、すなわちシリンダガスケットの厚さ変動を来すことを利用して、この厚さ変動を検出して、シリンダ内の燃焼圧、すなわち筒内圧を測定することにある。
【0010】
ちなみに、燃焼圧に伴うシリンダガスケットの厚さ変動は、エンジンやシリンダガスケットの種類にもよるが、例えば参考文献1)に記載されているように、8ないし12μm程度であり、この燃焼圧の変動を、圧電素子による圧電効果を利用して、電気量の変動として検出するものである。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の筒内圧センサは、
(1)シリンダ内の燃焼圧を伝えるためのパッドと、圧力を電気信号に変換する圧電素子と、電気信号をチャージアンプに送る端子と導線で構成しており、
(2)シリンダガスケット内のパッドと筒内圧センサ本体を装着するための取り付け穴と導線または導線の通り溝に、パッドと筒内圧センサ本体を装着し、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に筒内圧センサを搭載したシリンダガスケットを結合ボルトで所定の締め付け圧力で締結している。
【0012】
(3)圧電素子からの電気信号をチャージアンプで増幅し、エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)に取り込み、エンジン制御用コンピュ−タから適切な指令を出し、エンジンの燃焼圧を正常な状態に制御する。
【0013】
(4)このとき使用するパッドは、シリンダガスケットのばね定数をk、パッドのばね定数をk1とするとき、パッドのばね定数k1はkよりも大きく、かつ、シリンダガスケット内に筒内圧センサを装着して、シリンダブロック・シリンダブロック間に締結したとき、筒内圧センサ本体が破損しない範囲でなければならない。
【0014】
(5)これらの構成からなる筒内圧センサにおいては、1個の筒内圧センサで2気筒以上の燃焼圧を検出することが可能になる。
【0015】
図3、図4に、筒内圧センサを使用したエンジンとその制御システムの構成を示し、図5に筒内圧センサを使用したときの効果を示す。燃焼室13内の燃焼圧の変動を、ガスケット内に装着しているパッドにより筒内圧センサ本体に伝え、圧電素子でパッドの圧力変化を電気信号として検出する。この得られる電気信号は、比較的高電圧であるが電流値が小さいため、その信号を端子と導線を介して入力インピーダンスの高いチャージアンプに伝え、インピーダンス変換を行ってエンジン制御用コンピュ−タ(ECU)に取り込む。
【0016】
例えば、シリンダ内においてノッキング発生などの異常な圧力変動がある場合に、エンジン制御用コンピュ−タから適切な指令を出し、燃料噴射のタイミング、独立ヘリカル吸気ポ−トの開閉、電子制御EGRバルブなどを制御し、エンジンの燃焼を正常な状態に維持してトルク変動を防止し、最適な空燃比を確保して、燃料消費量を最少にして、排ガスをクリーンにする。
【0017】
ところで、本発明の筒内圧センサでは、燃焼室内の圧力変動を、上述したようにエンジンのミクロな弾性変形を利用して間接的に計測するために、燃焼圧を伝えるパッドが極めて重要な役割を果たす。
【0018】
すなわち、結合ボルトによって所定の締め付け圧力状態でシリンダヘッドとシリンダブロックの間に、パッドと筒内圧センサ本体の圧電素子を装着したシリンダガスケットを固定する。このとき、
(1)ガスケット厚さ方向に、μm単位の高精度で筒内圧センサ本体の圧電素子を取り付けることができれば、燃焼圧に呼応したシリンダガスケットの厚さ変動を圧電素子からの電気信号として高感度に検出できる。しかし、耐熱性の高い圧電素子は、セラミックスなどのいわゆる硬脆材でできており、圧縮代がわずかでも許容値を超えると、圧電素子を破壊させてしまう。
【0019】
(2)シリンダの気密を保つため、シリンダガスケットに弾性に富んだガスケット材を用いており、きわめて変形しやすい。このため、シリンダブロックとシリンダヘッド間に締め付けた状態で、シリンダガスケットの厚さ寸法を高精度に維持することができず、上記(1)の条件を満たすことができない。
【0020】
(3)したがって、圧電素子とシリンダヘッドあるいはシリンダブロックの間に、弾性に富んだパッドを挿入することになる。
【0021】
(4)しかし、パッドの弾性が過度になると、燃焼圧に呼応したシリンダガスケットの厚さ変動があっても、圧電素子には力がほとんど作用しなくなり、高感度の電気信号が得られない。このため、このパッドの弾性についての配慮が必要になる。
【0022】
この点について、図6を用いて説明する。
【0023】
まず、圧電素子はガスケット材やパッド材よりも剛性が相対的に高いので、その弾性変形は無視できると仮定する。またシリンダガスケット3の受圧面積が広いので、シリンダヘッド4とシリンダブロック5の間にシリンダガスケット3が所定の締結力で締め付けられるとき、シリンダガスケット3の圧縮代によって、筒内圧センサ本体とパッドの圧縮代が決定される。
【0024】
シリンダガスケット3の厚さが、公称のシリンダガスケット厚さtgと(1−α)tgの間をばらつくとして、締結後のパッドの締め代は、公称のパッドの圧縮代ΔとΔ+α・tgの間をばらつく。したがって、パッド2のバネ定数をk1、該パッドの受圧面積をA、該パッドの破壊限界応力をσp、圧電素子の破壊限界応力をσcとすると、
σc < k1(Δ+α・tg)/A ・・・ (1)
σp < k1(Δ+α・tg)/A ・・・ (2)
でなければならない。
【0025】
またパッド2に等しい面積のシリンダガスケット3のばね定数kよりも、パッドのばね定数k1が小さくなると、著しく検出感度が劣化するので好ましくない。したがって、パッド2のばね定数k1は
k ≦ k1 < σc・A/(Δ+α・tg) ・・・ (3)
k ≦ k1 < σp・A/(Δ+α・tg) ・・・ (4)
でなければならない。
【0026】
またこの条件範囲で、パッドのばね定数k1を大きくとるほど、力振幅λ(=f1−f2)が増大し、圧電素子への入力が大きくなり筒内圧センサの感度が良くなるので、 Δ>0 なる範囲で、k1を可能な限り大きくした方がよい。
【0027】
さらに、このような特徴のあるパッド2を筒内圧センサ本体に使用することで、1個の筒内圧センサで2気筒以上のシリンダ内の燃焼圧を検知することが可能である。
【0028】
シリンダガスケットの厚み方向の収縮及び結合ボルトの伸びと燃焼圧変動の関係を図12を用いて説明する。
【0029】
エンジンに燃焼圧が作用するときの結合ボルトの伸びとシリンダガスケットの緩み(伸び)の関係を示したもので、シリンダガスケットの伸縮から燃焼圧変動を測定することを特徴とするが、シリンダガスケットの締め付け寸法のばらつきが問題となる。
【0030】
なぜならば、締結ボルトの伸びが同じであっても、シリンダガスケットの締め付け寸法がばらつくことにより、シリンダガスケットの伸びに対して、適切な燃焼圧変動を検出することができない。ゆえに、シリンダガスケットに直接圧電素子を挿入して使用することは困難である。
【0031】
また、燃焼圧変動を測定する場合、図13に示すように、燃焼圧の大半をシリンダガスケットで受ける系の燃焼圧(燃焼圧力)に測定系を挿入して並列測定することになる。測定系のばね定数が柔らかければ別に問題ないが、センサ本体(圧電素子)は硬脆材であり、ばね定数が大きいためセンサ単独では、結合ボルトの締結力のわずかな変動によりセンサ本体が破壊し、測定が困難である。
【0032】
そこで、微小変位を力として圧電素子に伝えるパッドが必要になる。このパッドは、シリンダガスケットの締め付け寸法ばらつきを吸収できること、また、シリンダガスケットの微小伸縮を力として圧電素子に伝えることが必要で、このような、両者を満たす最適なパッドのばね定数でなければならない。
【0033】
シリンダガスケットによる伸縮が支配的なため、測定系の挿入による全体系への影響は考慮しなくてもよい。しかし、パッドはただ単にクッションの効いた柔らかいものを挿入すればよいというようなものではなく、パッドのばね定数が小さいと、シリンダガスケットの微小伸縮を力として圧電素子に伝えることができず、ばね定数が大きいと力が大きすぎて、圧電素子が破壊する。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の筒内圧センサの第1の実施例を図1ないし図2を参照して説明する。図1および図2は、図3に示すようなエンジン本体10における、シリンダヘッド4とシリンダブロック5との間に介在している燃焼ガスの漏れを防止するシリンダガスケット3の部分拡大図である。図3中で、11はシリンダブロック内に形成されたシリンダ、12はシリンダ11内に配設されたピストン、13はシリンダヘッド4内に形成された燃焼室である。
【0035】
この場合、シリンダガスケット3には、図1に示すようにシリンダ11に対応する部分にシリンダ11の内径寸法と略同径の筒穴(シリンダ用開口部)14が形成されているとともに、シリンダヘッド4に図示しない固定ボルト15の挿入穴および冷却水や潤滑油の流通穴がそれぞれ形成されている。
【0036】
またシリンダガスケット3の外周面および内周面には、図2に示すように、例えば金属等の導体によって形成されたカバ−部材であるグロメット9が配設されている。このグロメット9の内部には、例えば低密度グラファイト等の柔らかい材質の一対のガスケット材3a、3bが配設されているとともに、これらのガスケット材3a、3bの間には中間板3cが配設されている。このシリンダガスケット3には、各筒穴14の周囲に、略リング状の筒内圧センサ本体装着穴16と電気信号を伝える導線7の通り溝17が形成されている。このときの導線7は、シリンダガスケット3と一体構造となっていても構わない。また、筒内圧センサ本体装着穴16は、図2に示すガスケット材3aと中間板3c、およびその下側にあるガスケット材3bの一部も取り除き形成されている。
【0037】
さらに、このシリンダガスケット3の筒内圧センサ本体装着穴16内には略リング状の筒内圧センサ本体18が着脱可能に取付けられている。このときの筒内圧センサ本体18には、ガスケット材3a、3bの単位面積あたりのばね定数kよりも大きいばね定数k1の発泡金属製のパッド2と一対の圧電素子1が組み込まれている。また圧電素子1の外面には、正電極と負電極にそれぞれ端子6を装着し、導線7によりチャージアンプ8につながっている。
【0038】
エンジン稼働時には、シリンダヘッド4、シリンダブロック5及びシリンダガスケット3の温度は、燃焼室13から伝導してくる熱により250℃から300℃近くにまで上昇する。そのため、図14に示す筒内圧センサ本体18の製作、組立において、圧電素子1のキュリー点は300℃以上のもので、圧電素子1と端子6及び端子6と導線7の材料においても300℃以上の耐熱性のあるものを用いている。また圧電素子1と端子6をはんだを用いて接合する場合、はんだには300℃以上で溶融する高温はんだを使用し、また、導線7に使用している同軸ケ−ブルにも、300℃まで耐熱性のある被覆を使用している。
【0039】
圧電素子1からの電気信号が、端子6、導線7を通りアンプ8で増幅するまでの配線経路では、圧電素子1と端子6及び導線7を接合した状態で、PIQ(ポリイミド材)などの耐熱性の高い絶縁材でコ−ティングし、電気的に絶縁しており、他の導通部の影響を受けない構成としている。その後、圧電素子1及び端子6、導線7とパッド2を、筒内圧センサ本体装着穴16及び導線7の通り溝17が加工されたシリンダガスケット3に装着し、シリンダヘッド4とシリンダブロック5の間に筒内圧センサ本体を搭載したシリンダガスケット3を、結合ボルト15で所定の締め付け力で締結する。
【0040】
これにより、従来より筒内圧センサ本体18の取付け位置が燃焼室13から離れた場所であっても、筒内圧センサのパッド2の作用によってシリンダ11の軸方向の圧力変化を圧電素子1で検出することにより、高感度で燃焼圧を検知することが可能になり、燃焼室13からの熱による温度の影響を抑えることができ、信頼性が向上する。
【0041】
パッド2の最適化事例を、図6、図7を用いて下記に述べる。
【0042】
いま公称の初期シリンダガスケット3の厚さtgを1.45mm、その厚さ変動αを±5%とすれば、α・tsを±0.073mmとなる。シリンダガスケットの圧力シールド有効面積を200cm2、これを有効径10mm、10本の抗張力60kgf/mm2の締結用ボルト15を用いて、その65%の張力でシリンダガスケットをシリンダヘッド4とシリンダブロック5の間にパッド2を挟んで締め付けたとき、シリンダガスケット3の厚さtsが、t=0.15mm圧縮されて1.30mmになったとする。
【0043】
このときのシリンダガスケットのばね定数は204kgf/μmとなる。
【0044】
またシリンダボア80mm、燃焼圧の最高値50kgf/cm2とすると、これによる負荷の最大値は2520kgf、このときのシリンダヘッドの弾性変位は12.3μmとなる。
【0045】
ここでパッドの破壊限界応力σpおよび圧電素子の破壊限界応力σcを30kgf/mm2、安全率を2、圧電素子の直径を6mm2にとると、Δ=0.1mmでは、とりうるばね定数k1は、
k1=2.45kgf/μm
で、センサに働く力の変動は、30.8kgf、面圧の変動に換算すると、109kgf/cm2となる。
【0046】
Δを限界の0.08mmにとると、それぞれ
k1=2.78kgf/μm、34.8kgf、123kgf/cm2
と求まる。このときの圧電素子の検出感度は最大値を示す。
【0047】
なお、パッドの初期厚さtp−tcとパッドのばね定数k1との間には、
tp−tc ∝ k1
なる関係がある。
【0048】
一方、パッド材として、シリンダガスケットと同じ材質を用いると、シリンダガスケットの1cm2あたりのばね定数は、0.98kgf/μmとなり、直径6mmの受圧面積をもつパッドのばね定数kは、0.36kgf/μmと求まる。しかしこの場合の検出感度は、前者の13%に過ぎない。
【0049】
次に、上記構成の作用について、図1から図3において説明する。
【0050】
エンジン本体10の組立時に、シリンダガスケット3は結合ボルト15によって所定の締め付け圧力状態でシリンダヘッド4とシリンダブロック5の間に挟んで固定されている。この場合には、シリンダガスケット3とシリンダガスケット3内のパッド2と筒内圧センサ本体18の圧電素子1は通常の締め付け圧力状態で押圧された基準状態で保持されている。
【0051】
また、エンジン本体10の動作中は各シリンダ11内の燃焼室13で爆発による燃焼によって、シリンダヘッド4にはシリンダブロック5側より離間する方向に押圧力が発生する。そしてこの押圧力によって、シリンダヘッド4とシリンダブロック5との間のシリンダガスケット3のシ−ルしている面に面圧変動が生じるとともにパッド2も同様に面圧変動が生じる。筒内圧センサ本体装着穴17には、ガスケット材3a、3bに替わって、それらのばね定数kよりも大きいばね定数k1のパッド2と圧電素子1が組み込まれているので、シリンダガスケット3のシ−ルしている面の面圧変動よりも、より大きな面圧変動が得られる。この場合、従来よりも燃焼室から離れた位置に筒内圧センサ本体18を配置して、温度の影響などの外乱の影響を小さくすることもできる。このパッド2の変形による面圧変動に応じてシリンダガスケット4内の各筒内圧センサ本体18の圧電素子1から電気信号が検出され、端子6、導線7を順次通ってアンプ8で増幅し、エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)19に入力され、このエンジン制御用コンピュ−タにより各シリンダ11内の圧力変動が個別に検出できる。例えば、シリンダ11内の燃焼室13においてノッキング発生などの異常な圧力変動がある場合に、エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)19から適正な命令を出し、EFI(独立噴射)20、独立ヘリカル吸気ポ−ト21、電子制御EGRバルブ22などを制御し、エンジンの燃焼圧を正常な状態にしてトルク変動を防止し、図5に示す最適な空燃比にする。
【0052】
上記実施例で構成した筒内圧センサにおいては、各シリンダ11毎におのおの1個ずつ筒内圧センサを装着した場合について述べたが、さらに、1個の筒内圧センサには、出力信号のレベルが下がるものの、複数のシリンダ11の燃焼圧の出力信号が含まれている。そのため、後述するような出力信号の分離により、1個の筒内圧センサから複数の気筒の燃焼圧信号を検出することが可能である。図8には、1個の筒内圧センサで2気筒の燃焼圧信号を検出している実施例である。
【0053】
すなわち、4気筒エンジンの場合、図8に示すシリンダガスケット3のシリンダ11と対応する部分にシリンダ11の内径寸法と略同径の筒穴14が形成されている。この略同径の筒穴14aと略同径の筒穴14bから等距離にある中間部に、筒内圧センサ本体装着穴16を設け、中にはパッド2と略リング状の筒内圧センサ本体18が着脱可能に取付けられている。この1個の筒内圧センサで2つのシリンダ11の燃焼圧を検出する。同様に、略同径の筒穴14cと略同径の筒穴14dから等距離にある中間部に、筒内圧センサを設け、1個の筒内圧センサで2つのシリンダ11の燃焼圧を検出する。例えば、図6に示すシリンダ11内の燃焼室13において、ノッキング現象などにより異常な圧力変動がある場合に、1個の筒内圧センサで2つのシリンダ11の燃焼圧を圧電素子1で電気信号として検出し、端子6、導線7を順次通ってアンプ8で増幅し、その電気信号をエンジン制御用コンピュ−タ19に送り、エンジン制御用コンピュ−タ19から適正な命令を出し、EFI(独立噴射)20、独立ヘリカル吸気ポ−ト21、電子制御EGRバルブ22などを制御し、エンジンの燃焼圧を正常な状態にしてトルク変動を防止し、図5に示す最適な空燃比にする。
【0054】
このように、本発明では、従来の筒内圧センサでは不可能であった複数のシリンダ11の燃焼圧を1個ないし複数個の筒内圧センサで検出することが可能である。このため、高価な筒内圧センサの使用個数を削減できるセンサフュージョンを構築でき、エンジンのコストを下げる効果がある。
【0055】
各気筒の筒内圧の算出について、4気筒エンジンの実施例について次に述べる。
【0056】
第1気筒から第4気筒までの各気筒に対応するガスケット内の4か所に、第1から第4までの合計4個のセンサを取り付け、これらのセンサからの出力をx1、x2、x3、x4とすると、第1気筒における気筒内圧は、第1センサの出力に影響を与えるだけでなく、第2、第3、第4センサの出力に影響を与える、いわゆるクロストークを生じる。このように、第1気筒から第4気筒の気筒内圧は、第1から第4までのセンサ出力に影響を与えるので、これら4個のセンサ出力から各気筒内圧を算出する必要がある。
【0057】
この各気筒内圧を分離する演算手法として、時間領域で行う方法と、周波数領域で行う方法がある。
【0058】
まず最初に、周波数領域で行う実施例について説明する。
【0059】
時間領域において、第1気筒から第4気筒までの各気筒の燃焼圧を、f1(t)、f2(t)、f3(t)、f4(t)、これら気筒の燃焼圧によって得られる第1から第4までのセンサの出力信号を、x1(t)、x2(t)、x3(t)、x4(t)とする。これらの個々を、それぞれラプラス変換する。
【0060】
F1(s)=ζ[f1(t)] F2(s)=ζ[f2(t)]
F3(s)=ζ[f3(t)] F4(s)=ζ[f4(t)] ・・・ (5)
X1(s)=ζ[x1(t)] X2(s)=ζ[x2(t)]
X3(s)=ζ[x3(t)] X4(s)=ζ[x4(t)] ・・・ (6)
sはラプラス演算子で、j=平方根(−1)、ωを円振動数とすると、s=jωで与えられる。
【0061】
ここで、第1のセンサ出力X1(s)には、第1気筒の内圧F1(s)の影響のほか、第2気筒、第3気筒、第4気筒のそれぞれの内圧F2(s)、F3(s)、F4(s)の影響を受ける。これらの影響度合い、すなわち伝達関数G11(s)、G12(s)、G13(s)、G14(s)とすると、
で与えられる。同様にX2(s)、X3(s)、X4(s)は
と求まる。あるいは
【0062】
【数9】
【0063】
と書き替えることもできる。
【0064】
これより、他の気筒内圧の影響が取り除かれた各気筒内圧は
【0065】
【数10】
【0066】
と求められる。
【0067】
ここで、各気筒の吸・排気弁が完全に個別制御できるエンジンにあっては、第2気筒から第4気筒までの吸・排気弁を開放して、第2気筒、第3気筒、第4気筒の気筒内圧を0として、第1気筒のみを動作させたときのセンサ出力信号から、それぞれの伝達関数G11(s)、G21(s)、G31(s)、G41(s)が求まる。同様にして、順次、第2気筒、第3気筒、第4気筒のみを動作させて、Gij(s)(i=1〜4、j=2〜4)も求まる。
【0068】
このようにして、Gij(s)は既知となるので、各センサの出力信号X1(s)、X2(s)、X3(s)、X4(s)を式(10)に代入することにより、各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)が求まる。
【0069】
ところで、このような各気筒間の吸・排気弁が完全に個別制御できないエンジン、すなわち各気筒間の吸・排気弁が完全に連動して運転されるエンジンにあっては、第1気筒のみを燃焼させ、第2気筒から第4気筒は断熱圧縮・膨張のみさせて、各センサの出力信号X1(s)、X2(s)、X3(s)、X4(s)を求める。ここで、F2(s)、F3(s)、F4(s)の間には、吸・排気弁の開閉タイミングに対応した時間遅れの相似波形を持つとすると、
F3(s)=exp(−τ23・s)・F2(s) ・・・ (11)
F4(s)=exp(−τ24・s)・F2(s) ・・・ (12)
となる。τ23、τ24は、4気筒、4サイクルエンジンにおいては、大略π、2π、3πといった値である。
【0070】
同じように、第2気筒、第3気筒、第4気筒のみを燃焼させて、Gij(s)(i=1〜4、j=1〜4)を求めることができる。これらより同様に、各センサの出力信号X1(s)、X2(s)、X3(s)、X4(s)を入力として、式(10)を用いて、各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)を求めることができる。
【0071】
以上、周波数領域における各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)の求め方について述べたが、時間領域における各気筒内圧についても、同様に求めることができる。すなわち、各センサからの出力信号x1(t)、x2(t)、x3(t)、x4(t)を基に、これら相互の記述関数(describing function)wij(t)(i=1〜4、j=1〜4)を求め、これら各センサからの出力信号と記述関数のコンボリューションを求めることにより、各気筒内圧f1(t)、f2(t)、f3(t)、f4(t)が求まる。
【0072】
あるいは、さきに述べた周波数領域における各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)を、逆ラプラス変換することにより、時間領域における各気筒内圧f1(t)、f2(t)、f3(t)、f4(t)を求めることができる。
【0073】
図9は、このようにして分離した、4サイクルエンジンの1気筒内の燃焼圧の測定例である。
【0074】
パッド材質としては、バネ性に富んだ金属材料にこだわる必要はなく、カーボン材や樹脂系の材料であっても、先述のバネ定数k1の条件を満足すればよい。しかしカーボン材や樹脂系の材料では、応力弛緩やクリープ現象といった経時変化を生じやすく、パッドに予め加えられた締め付け力が時間とともに減少していき、筒内圧センサとしての特性が劣化していく傾向にある。
【0075】
図10は、筒内圧センサのもう一つの実施例で、パッド2’を金属製のばね構成としたもので、所定の予荷重が圧電素子1に与えられた状態で組み立てられており、同様の効果が得られる。
【0076】
またパッド材質が、圧電素子よりも圧縮破壊応力がいくぶん小さく、過度の圧縮代に対して降伏するが、それ以下の条件範囲ではバネ特性をもつ材質であっても構わない。すなわちパッド材の圧縮破壊応力をσpとするとき、 σp<σcを満足する。また σpよりも大きな応力が作用し塑性変形した後、σp以下の応力に対して弾性を保ち、またクリープ変形を起こさない、といった2条件を満足すればよい。たとえば軟質金属は、クリープ変形の徴候があるが、厳しい検出精度や性能保証期間が問われなければ、使用可能である。
【0077】
以上、カーボン製のシリンダガスケットに本発明を適用した実施例についてのべたが、図11に示すように、金属製のシリンダガスケットに本発明を適用しても、同様の効果が得られる。この場合パッド28は、金属ガスケットの上当て板26の一部に突起形状に形成され、先述のばね定数が得られるばね性をもたせている。
【0078】
さらにその他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施しても同様の効果が得られる。例えば、チャージアンプの替わりに、電気信号のインピーダンス変換ができる増幅器であれば、他の種類の増幅器であっても、同様の効果が得られるなどである。
【0079】
【発明の効果】
本発明により、燃焼室内にセンサまたはセンサの一部を取り付けることなく、またシリンダブロックやシリンダヘッドに特別な細工を施すことなく、シリンダ内の燃焼圧を検出することができるので、センサ実装部のスペ−スが十分でないエンジン環境で複雑な構造にしなくてよい。
【0080】
とくに寸法ばらつきがあっても、十分に感度よく燃焼圧が検出できる特徴があり、安定した性能の筒内圧センサが生産できる。
【0081】
また、パッドの効果により、従来の筒内圧センサよりも燃焼室から十分離れたところに筒内圧センサを取り付けることが可能なので、圧電素子の温度変化による出力変動を最小限にし、かつ、外乱による振動の影響も受けにくい。さらに、図10に示すように、1個の筒内圧センサで2気筒以上の燃焼室内の燃焼圧を検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の筒内圧センサの一実施例を示すエンジンのシリンダ部、分解図である。
【図2】図1の筒内圧センサの詳細部断面図である。
【図3】本発明の筒内圧センサを使用したエンジンの一例である。
【図4】制御システムの構成図を示す。
【図5】図3の制御を行ったときの効果の説明である。
【図6】本発明のシリンダガスケットの厚さ方向の関係を示す説明図である。
【図7】図6に対応した数値関係を示す図である。
【図8】1個の筒内圧センサで2気筒のシリンダの燃焼圧を検出する一実施例である。
【図9】本発明の筒内圧センサによる燃焼圧の測定の一例である。
【図10】本発明の筒内圧センサの別の実施例である。
【図11】本発明の筒内圧センサを金属製のシリンダガスケットに適用した実施例である。
【図12】結合ボルトの伸び及びシリンダガスケット厚の収縮と燃焼圧変動の関係を示す図である。
【図13】シリンダガスケットの全体系とパッド及び圧電素子の測定系の関係を示す図である。
【図14】本発明の筒内圧センサの製作、組立の一例を示すブロック線図である。
【符号の説明】
1、25…圧電素子、2、2’…パッド、3…シリンダガスケット、3a、3b…ガスケット材、3c、24…中間板、4…シリンダヘッド、5…シリンダブロック、6…端子、7…導線、8…チャージアンプ、9、23…グロメット、10…エンジン本体、11…シリンダ、12…ピストン、13…燃焼室、14、14a、14b、14c、14d…筒穴、15…結合ボルト、16…筒内圧センサ本体装着穴、17…通り溝、18…筒内圧センサ本体、19…エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)、20…EFI(独立噴射)、21…独立ヘリカル吸気ポ−ト、22…電子制御EGRバルブ、26…上当て板、27…下当て板、28…パッド
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの燃費向上と排気ガス浄化を目的として、燃焼室内の圧力いわゆる筒内圧を検出する筒内圧センサと、該筒内圧センサを用いた筒内圧の検出方法、およびエンジンの燃焼状態を制御する方法及びそのエンジンシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
筒内圧センサとしては、一般的に、点火プラグの周辺に取り付けて燃焼圧を直接計測する方法が採られており、この筒内圧センサからの検出信号により、エンジン本体の失火やノッキング発生状態を検出する方式が開発されている。
【0003】
しかし、エンジンを多弁化したり、シリンダ上部に複数の動弁機構(カムシャフト)を設けるなど、エンジンを高出力化する目的で、より複雑構造となっているシリンダヘッドに、上記のような筒内圧センサを配置することが極めて難しくなっている。
【0004】
この欠点を補うために、燃焼圧を間接的に計測する方法として、特開平2−157631号公報にみられるように、シリンダガスケット内に筒内圧センサ本体の装着部を設け、この装着部に着脱可能な圧電素子を組み込んだ筒内圧センサが開発されている。しかしこの従来方法では、柔らかいガスケット材からなる広い面積のシリンダガスケットと、高剛性の狭い受圧面積をもつ圧電素子が並列に並んだ構成となっている。このため、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に、この筒内圧センサを組み込んだシリンダガスケットを挾んで締結するとき、圧縮代は大部の面積を占めるガスケット材によって決定されるので、圧電素子を最適な圧縮代で締結することが極めて困難であった。そのため、圧縮代が不足の場合には、圧電素子が両者間で振動するなどして精度の良い検出信号、とくに高周波帯域での検出信号が得られない一方、締め代が過大な場合には、圧電素子が破損してしまうといった欠点があった。
【0005】
さらにこの従来方式の筒内圧センサでは、
▲1▼シリンダガスケットや圧電素子の厚さ寸法のばらつきをある程度許容しなければならない、
▲2▼とくに複数個の圧電素子を用いる多気筒エンジンの筒内圧センサにあっては、圧電素子相互間の厚さばらつきも許容しなければならない、
▲3▼筒内圧センサを装着したシリンダガスケットをシリンダブロックとシリンダヘッド間に組み立てるに際して、結合ボルトの締め付けトルクを高精度に管理しなければならない、
▲4▼エンジンの温度上昇に伴う締め付け力の変化を吸収することができず、検出信号の変動をきたしていた、
など、生産し実用化する上で大きな障害となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来技術による筒内圧センサでは、検出性能を高めようとすると、生産上の障害をきたすという、性能面と生産面が相入れないという問題を有していた。
【0007】
すなわち、筒内圧センサ本体を、1mmないし1.5mmといった薄さのシリンダガスケットに内臓する場合に、筒内圧センサ本体およびガスケット材のわずかな厚さのばらつきが、シリンダブロックとシリンダヘッドの間にシリンダガスケットを締め付けるに際し、予期しない締め付け力の大きな変動となって表れ、上述したような好ましからざる事態を引き起こしていた。
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明では、これら厚さばらつきがあってもこれらを許容し、量産に適した筒内圧センサの構造と検出システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の基本となる動作原理は、ミクロにみた場合、測定対象となるエンジンが弾性体であり、シリンダヘッドにかかる燃焼圧に呼応して、シリンダブロックとシリンダヘッド間が、シリンダガスケットの厚さ方向に膨張・収縮を繰り返すこと、すなわちシリンダガスケットの厚さ変動を来すことを利用して、この厚さ変動を検出して、シリンダ内の燃焼圧、すなわち筒内圧を測定することにある。
【0010】
ちなみに、燃焼圧に伴うシリンダガスケットの厚さ変動は、エンジンやシリンダガスケットの種類にもよるが、例えば参考文献1)に記載されているように、8ないし12μm程度であり、この燃焼圧の変動を、圧電素子による圧電効果を利用して、電気量の変動として検出するものである。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の筒内圧センサは、
(1)シリンダ内の燃焼圧を伝えるためのパッドと、圧力を電気信号に変換する圧電素子と、電気信号をチャージアンプに送る端子と導線で構成しており、
(2)シリンダガスケット内のパッドと筒内圧センサ本体を装着するための取り付け穴と導線または導線の通り溝に、パッドと筒内圧センサ本体を装着し、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に筒内圧センサを搭載したシリンダガスケットを結合ボルトで所定の締め付け圧力で締結している。
【0012】
(3)圧電素子からの電気信号をチャージアンプで増幅し、エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)に取り込み、エンジン制御用コンピュ−タから適切な指令を出し、エンジンの燃焼圧を正常な状態に制御する。
【0013】
(4)このとき使用するパッドは、シリンダガスケットのばね定数をk、パッドのばね定数をk1とするとき、パッドのばね定数k1はkよりも大きく、かつ、シリンダガスケット内に筒内圧センサを装着して、シリンダブロック・シリンダブロック間に締結したとき、筒内圧センサ本体が破損しない範囲でなければならない。
【0014】
(5)これらの構成からなる筒内圧センサにおいては、1個の筒内圧センサで2気筒以上の燃焼圧を検出することが可能になる。
【0015】
図3、図4に、筒内圧センサを使用したエンジンとその制御システムの構成を示し、図5に筒内圧センサを使用したときの効果を示す。燃焼室13内の燃焼圧の変動を、ガスケット内に装着しているパッドにより筒内圧センサ本体に伝え、圧電素子でパッドの圧力変化を電気信号として検出する。この得られる電気信号は、比較的高電圧であるが電流値が小さいため、その信号を端子と導線を介して入力インピーダンスの高いチャージアンプに伝え、インピーダンス変換を行ってエンジン制御用コンピュ−タ(ECU)に取り込む。
【0016】
例えば、シリンダ内においてノッキング発生などの異常な圧力変動がある場合に、エンジン制御用コンピュ−タから適切な指令を出し、燃料噴射のタイミング、独立ヘリカル吸気ポ−トの開閉、電子制御EGRバルブなどを制御し、エンジンの燃焼を正常な状態に維持してトルク変動を防止し、最適な空燃比を確保して、燃料消費量を最少にして、排ガスをクリーンにする。
【0017】
ところで、本発明の筒内圧センサでは、燃焼室内の圧力変動を、上述したようにエンジンのミクロな弾性変形を利用して間接的に計測するために、燃焼圧を伝えるパッドが極めて重要な役割を果たす。
【0018】
すなわち、結合ボルトによって所定の締め付け圧力状態でシリンダヘッドとシリンダブロックの間に、パッドと筒内圧センサ本体の圧電素子を装着したシリンダガスケットを固定する。このとき、
(1)ガスケット厚さ方向に、μm単位の高精度で筒内圧センサ本体の圧電素子を取り付けることができれば、燃焼圧に呼応したシリンダガスケットの厚さ変動を圧電素子からの電気信号として高感度に検出できる。しかし、耐熱性の高い圧電素子は、セラミックスなどのいわゆる硬脆材でできており、圧縮代がわずかでも許容値を超えると、圧電素子を破壊させてしまう。
【0019】
(2)シリンダの気密を保つため、シリンダガスケットに弾性に富んだガスケット材を用いており、きわめて変形しやすい。このため、シリンダブロックとシリンダヘッド間に締め付けた状態で、シリンダガスケットの厚さ寸法を高精度に維持することができず、上記(1)の条件を満たすことができない。
【0020】
(3)したがって、圧電素子とシリンダヘッドあるいはシリンダブロックの間に、弾性に富んだパッドを挿入することになる。
【0021】
(4)しかし、パッドの弾性が過度になると、燃焼圧に呼応したシリンダガスケットの厚さ変動があっても、圧電素子には力がほとんど作用しなくなり、高感度の電気信号が得られない。このため、このパッドの弾性についての配慮が必要になる。
【0022】
この点について、図6を用いて説明する。
【0023】
まず、圧電素子はガスケット材やパッド材よりも剛性が相対的に高いので、その弾性変形は無視できると仮定する。またシリンダガスケット3の受圧面積が広いので、シリンダヘッド4とシリンダブロック5の間にシリンダガスケット3が所定の締結力で締め付けられるとき、シリンダガスケット3の圧縮代によって、筒内圧センサ本体とパッドの圧縮代が決定される。
【0024】
シリンダガスケット3の厚さが、公称のシリンダガスケット厚さtgと(1−α)tgの間をばらつくとして、締結後のパッドの締め代は、公称のパッドの圧縮代ΔとΔ+α・tgの間をばらつく。したがって、パッド2のバネ定数をk1、該パッドの受圧面積をA、該パッドの破壊限界応力をσp、圧電素子の破壊限界応力をσcとすると、
σc < k1(Δ+α・tg)/A ・・・ (1)
σp < k1(Δ+α・tg)/A ・・・ (2)
でなければならない。
【0025】
またパッド2に等しい面積のシリンダガスケット3のばね定数kよりも、パッドのばね定数k1が小さくなると、著しく検出感度が劣化するので好ましくない。したがって、パッド2のばね定数k1は
k ≦ k1 < σc・A/(Δ+α・tg) ・・・ (3)
k ≦ k1 < σp・A/(Δ+α・tg) ・・・ (4)
でなければならない。
【0026】
またこの条件範囲で、パッドのばね定数k1を大きくとるほど、力振幅λ(=f1−f2)が増大し、圧電素子への入力が大きくなり筒内圧センサの感度が良くなるので、 Δ>0 なる範囲で、k1を可能な限り大きくした方がよい。
【0027】
さらに、このような特徴のあるパッド2を筒内圧センサ本体に使用することで、1個の筒内圧センサで2気筒以上のシリンダ内の燃焼圧を検知することが可能である。
【0028】
シリンダガスケットの厚み方向の収縮及び結合ボルトの伸びと燃焼圧変動の関係を図12を用いて説明する。
【0029】
エンジンに燃焼圧が作用するときの結合ボルトの伸びとシリンダガスケットの緩み(伸び)の関係を示したもので、シリンダガスケットの伸縮から燃焼圧変動を測定することを特徴とするが、シリンダガスケットの締め付け寸法のばらつきが問題となる。
【0030】
なぜならば、締結ボルトの伸びが同じであっても、シリンダガスケットの締め付け寸法がばらつくことにより、シリンダガスケットの伸びに対して、適切な燃焼圧変動を検出することができない。ゆえに、シリンダガスケットに直接圧電素子を挿入して使用することは困難である。
【0031】
また、燃焼圧変動を測定する場合、図13に示すように、燃焼圧の大半をシリンダガスケットで受ける系の燃焼圧(燃焼圧力)に測定系を挿入して並列測定することになる。測定系のばね定数が柔らかければ別に問題ないが、センサ本体(圧電素子)は硬脆材であり、ばね定数が大きいためセンサ単独では、結合ボルトの締結力のわずかな変動によりセンサ本体が破壊し、測定が困難である。
【0032】
そこで、微小変位を力として圧電素子に伝えるパッドが必要になる。このパッドは、シリンダガスケットの締め付け寸法ばらつきを吸収できること、また、シリンダガスケットの微小伸縮を力として圧電素子に伝えることが必要で、このような、両者を満たす最適なパッドのばね定数でなければならない。
【0033】
シリンダガスケットによる伸縮が支配的なため、測定系の挿入による全体系への影響は考慮しなくてもよい。しかし、パッドはただ単にクッションの効いた柔らかいものを挿入すればよいというようなものではなく、パッドのばね定数が小さいと、シリンダガスケットの微小伸縮を力として圧電素子に伝えることができず、ばね定数が大きいと力が大きすぎて、圧電素子が破壊する。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の筒内圧センサの第1の実施例を図1ないし図2を参照して説明する。図1および図2は、図3に示すようなエンジン本体10における、シリンダヘッド4とシリンダブロック5との間に介在している燃焼ガスの漏れを防止するシリンダガスケット3の部分拡大図である。図3中で、11はシリンダブロック内に形成されたシリンダ、12はシリンダ11内に配設されたピストン、13はシリンダヘッド4内に形成された燃焼室である。
【0035】
この場合、シリンダガスケット3には、図1に示すようにシリンダ11に対応する部分にシリンダ11の内径寸法と略同径の筒穴(シリンダ用開口部)14が形成されているとともに、シリンダヘッド4に図示しない固定ボルト15の挿入穴および冷却水や潤滑油の流通穴がそれぞれ形成されている。
【0036】
またシリンダガスケット3の外周面および内周面には、図2に示すように、例えば金属等の導体によって形成されたカバ−部材であるグロメット9が配設されている。このグロメット9の内部には、例えば低密度グラファイト等の柔らかい材質の一対のガスケット材3a、3bが配設されているとともに、これらのガスケット材3a、3bの間には中間板3cが配設されている。このシリンダガスケット3には、各筒穴14の周囲に、略リング状の筒内圧センサ本体装着穴16と電気信号を伝える導線7の通り溝17が形成されている。このときの導線7は、シリンダガスケット3と一体構造となっていても構わない。また、筒内圧センサ本体装着穴16は、図2に示すガスケット材3aと中間板3c、およびその下側にあるガスケット材3bの一部も取り除き形成されている。
【0037】
さらに、このシリンダガスケット3の筒内圧センサ本体装着穴16内には略リング状の筒内圧センサ本体18が着脱可能に取付けられている。このときの筒内圧センサ本体18には、ガスケット材3a、3bの単位面積あたりのばね定数kよりも大きいばね定数k1の発泡金属製のパッド2と一対の圧電素子1が組み込まれている。また圧電素子1の外面には、正電極と負電極にそれぞれ端子6を装着し、導線7によりチャージアンプ8につながっている。
【0038】
エンジン稼働時には、シリンダヘッド4、シリンダブロック5及びシリンダガスケット3の温度は、燃焼室13から伝導してくる熱により250℃から300℃近くにまで上昇する。そのため、図14に示す筒内圧センサ本体18の製作、組立において、圧電素子1のキュリー点は300℃以上のもので、圧電素子1と端子6及び端子6と導線7の材料においても300℃以上の耐熱性のあるものを用いている。また圧電素子1と端子6をはんだを用いて接合する場合、はんだには300℃以上で溶融する高温はんだを使用し、また、導線7に使用している同軸ケ−ブルにも、300℃まで耐熱性のある被覆を使用している。
【0039】
圧電素子1からの電気信号が、端子6、導線7を通りアンプ8で増幅するまでの配線経路では、圧電素子1と端子6及び導線7を接合した状態で、PIQ(ポリイミド材)などの耐熱性の高い絶縁材でコ−ティングし、電気的に絶縁しており、他の導通部の影響を受けない構成としている。その後、圧電素子1及び端子6、導線7とパッド2を、筒内圧センサ本体装着穴16及び導線7の通り溝17が加工されたシリンダガスケット3に装着し、シリンダヘッド4とシリンダブロック5の間に筒内圧センサ本体を搭載したシリンダガスケット3を、結合ボルト15で所定の締め付け力で締結する。
【0040】
これにより、従来より筒内圧センサ本体18の取付け位置が燃焼室13から離れた場所であっても、筒内圧センサのパッド2の作用によってシリンダ11の軸方向の圧力変化を圧電素子1で検出することにより、高感度で燃焼圧を検知することが可能になり、燃焼室13からの熱による温度の影響を抑えることができ、信頼性が向上する。
【0041】
パッド2の最適化事例を、図6、図7を用いて下記に述べる。
【0042】
いま公称の初期シリンダガスケット3の厚さtgを1.45mm、その厚さ変動αを±5%とすれば、α・tsを±0.073mmとなる。シリンダガスケットの圧力シールド有効面積を200cm2、これを有効径10mm、10本の抗張力60kgf/mm2の締結用ボルト15を用いて、その65%の張力でシリンダガスケットをシリンダヘッド4とシリンダブロック5の間にパッド2を挟んで締め付けたとき、シリンダガスケット3の厚さtsが、t=0.15mm圧縮されて1.30mmになったとする。
【0043】
このときのシリンダガスケットのばね定数は204kgf/μmとなる。
【0044】
またシリンダボア80mm、燃焼圧の最高値50kgf/cm2とすると、これによる負荷の最大値は2520kgf、このときのシリンダヘッドの弾性変位は12.3μmとなる。
【0045】
ここでパッドの破壊限界応力σpおよび圧電素子の破壊限界応力σcを30kgf/mm2、安全率を2、圧電素子の直径を6mm2にとると、Δ=0.1mmでは、とりうるばね定数k1は、
k1=2.45kgf/μm
で、センサに働く力の変動は、30.8kgf、面圧の変動に換算すると、109kgf/cm2となる。
【0046】
Δを限界の0.08mmにとると、それぞれ
k1=2.78kgf/μm、34.8kgf、123kgf/cm2
と求まる。このときの圧電素子の検出感度は最大値を示す。
【0047】
なお、パッドの初期厚さtp−tcとパッドのばね定数k1との間には、
tp−tc ∝ k1
なる関係がある。
【0048】
一方、パッド材として、シリンダガスケットと同じ材質を用いると、シリンダガスケットの1cm2あたりのばね定数は、0.98kgf/μmとなり、直径6mmの受圧面積をもつパッドのばね定数kは、0.36kgf/μmと求まる。しかしこの場合の検出感度は、前者の13%に過ぎない。
【0049】
次に、上記構成の作用について、図1から図3において説明する。
【0050】
エンジン本体10の組立時に、シリンダガスケット3は結合ボルト15によって所定の締め付け圧力状態でシリンダヘッド4とシリンダブロック5の間に挟んで固定されている。この場合には、シリンダガスケット3とシリンダガスケット3内のパッド2と筒内圧センサ本体18の圧電素子1は通常の締め付け圧力状態で押圧された基準状態で保持されている。
【0051】
また、エンジン本体10の動作中は各シリンダ11内の燃焼室13で爆発による燃焼によって、シリンダヘッド4にはシリンダブロック5側より離間する方向に押圧力が発生する。そしてこの押圧力によって、シリンダヘッド4とシリンダブロック5との間のシリンダガスケット3のシ−ルしている面に面圧変動が生じるとともにパッド2も同様に面圧変動が生じる。筒内圧センサ本体装着穴17には、ガスケット材3a、3bに替わって、それらのばね定数kよりも大きいばね定数k1のパッド2と圧電素子1が組み込まれているので、シリンダガスケット3のシ−ルしている面の面圧変動よりも、より大きな面圧変動が得られる。この場合、従来よりも燃焼室から離れた位置に筒内圧センサ本体18を配置して、温度の影響などの外乱の影響を小さくすることもできる。このパッド2の変形による面圧変動に応じてシリンダガスケット4内の各筒内圧センサ本体18の圧電素子1から電気信号が検出され、端子6、導線7を順次通ってアンプ8で増幅し、エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)19に入力され、このエンジン制御用コンピュ−タにより各シリンダ11内の圧力変動が個別に検出できる。例えば、シリンダ11内の燃焼室13においてノッキング発生などの異常な圧力変動がある場合に、エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)19から適正な命令を出し、EFI(独立噴射)20、独立ヘリカル吸気ポ−ト21、電子制御EGRバルブ22などを制御し、エンジンの燃焼圧を正常な状態にしてトルク変動を防止し、図5に示す最適な空燃比にする。
【0052】
上記実施例で構成した筒内圧センサにおいては、各シリンダ11毎におのおの1個ずつ筒内圧センサを装着した場合について述べたが、さらに、1個の筒内圧センサには、出力信号のレベルが下がるものの、複数のシリンダ11の燃焼圧の出力信号が含まれている。そのため、後述するような出力信号の分離により、1個の筒内圧センサから複数の気筒の燃焼圧信号を検出することが可能である。図8には、1個の筒内圧センサで2気筒の燃焼圧信号を検出している実施例である。
【0053】
すなわち、4気筒エンジンの場合、図8に示すシリンダガスケット3のシリンダ11と対応する部分にシリンダ11の内径寸法と略同径の筒穴14が形成されている。この略同径の筒穴14aと略同径の筒穴14bから等距離にある中間部に、筒内圧センサ本体装着穴16を設け、中にはパッド2と略リング状の筒内圧センサ本体18が着脱可能に取付けられている。この1個の筒内圧センサで2つのシリンダ11の燃焼圧を検出する。同様に、略同径の筒穴14cと略同径の筒穴14dから等距離にある中間部に、筒内圧センサを設け、1個の筒内圧センサで2つのシリンダ11の燃焼圧を検出する。例えば、図6に示すシリンダ11内の燃焼室13において、ノッキング現象などにより異常な圧力変動がある場合に、1個の筒内圧センサで2つのシリンダ11の燃焼圧を圧電素子1で電気信号として検出し、端子6、導線7を順次通ってアンプ8で増幅し、その電気信号をエンジン制御用コンピュ−タ19に送り、エンジン制御用コンピュ−タ19から適正な命令を出し、EFI(独立噴射)20、独立ヘリカル吸気ポ−ト21、電子制御EGRバルブ22などを制御し、エンジンの燃焼圧を正常な状態にしてトルク変動を防止し、図5に示す最適な空燃比にする。
【0054】
このように、本発明では、従来の筒内圧センサでは不可能であった複数のシリンダ11の燃焼圧を1個ないし複数個の筒内圧センサで検出することが可能である。このため、高価な筒内圧センサの使用個数を削減できるセンサフュージョンを構築でき、エンジンのコストを下げる効果がある。
【0055】
各気筒の筒内圧の算出について、4気筒エンジンの実施例について次に述べる。
【0056】
第1気筒から第4気筒までの各気筒に対応するガスケット内の4か所に、第1から第4までの合計4個のセンサを取り付け、これらのセンサからの出力をx1、x2、x3、x4とすると、第1気筒における気筒内圧は、第1センサの出力に影響を与えるだけでなく、第2、第3、第4センサの出力に影響を与える、いわゆるクロストークを生じる。このように、第1気筒から第4気筒の気筒内圧は、第1から第4までのセンサ出力に影響を与えるので、これら4個のセンサ出力から各気筒内圧を算出する必要がある。
【0057】
この各気筒内圧を分離する演算手法として、時間領域で行う方法と、周波数領域で行う方法がある。
【0058】
まず最初に、周波数領域で行う実施例について説明する。
【0059】
時間領域において、第1気筒から第4気筒までの各気筒の燃焼圧を、f1(t)、f2(t)、f3(t)、f4(t)、これら気筒の燃焼圧によって得られる第1から第4までのセンサの出力信号を、x1(t)、x2(t)、x3(t)、x4(t)とする。これらの個々を、それぞれラプラス変換する。
【0060】
F1(s)=ζ[f1(t)] F2(s)=ζ[f2(t)]
F3(s)=ζ[f3(t)] F4(s)=ζ[f4(t)] ・・・ (5)
X1(s)=ζ[x1(t)] X2(s)=ζ[x2(t)]
X3(s)=ζ[x3(t)] X4(s)=ζ[x4(t)] ・・・ (6)
sはラプラス演算子で、j=平方根(−1)、ωを円振動数とすると、s=jωで与えられる。
【0061】
ここで、第1のセンサ出力X1(s)には、第1気筒の内圧F1(s)の影響のほか、第2気筒、第3気筒、第4気筒のそれぞれの内圧F2(s)、F3(s)、F4(s)の影響を受ける。これらの影響度合い、すなわち伝達関数G11(s)、G12(s)、G13(s)、G14(s)とすると、
で与えられる。同様にX2(s)、X3(s)、X4(s)は
と求まる。あるいは
【0062】
【数9】
【0063】
と書き替えることもできる。
【0064】
これより、他の気筒内圧の影響が取り除かれた各気筒内圧は
【0065】
【数10】
【0066】
と求められる。
【0067】
ここで、各気筒の吸・排気弁が完全に個別制御できるエンジンにあっては、第2気筒から第4気筒までの吸・排気弁を開放して、第2気筒、第3気筒、第4気筒の気筒内圧を0として、第1気筒のみを動作させたときのセンサ出力信号から、それぞれの伝達関数G11(s)、G21(s)、G31(s)、G41(s)が求まる。同様にして、順次、第2気筒、第3気筒、第4気筒のみを動作させて、Gij(s)(i=1〜4、j=2〜4)も求まる。
【0068】
このようにして、Gij(s)は既知となるので、各センサの出力信号X1(s)、X2(s)、X3(s)、X4(s)を式(10)に代入することにより、各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)が求まる。
【0069】
ところで、このような各気筒間の吸・排気弁が完全に個別制御できないエンジン、すなわち各気筒間の吸・排気弁が完全に連動して運転されるエンジンにあっては、第1気筒のみを燃焼させ、第2気筒から第4気筒は断熱圧縮・膨張のみさせて、各センサの出力信号X1(s)、X2(s)、X3(s)、X4(s)を求める。ここで、F2(s)、F3(s)、F4(s)の間には、吸・排気弁の開閉タイミングに対応した時間遅れの相似波形を持つとすると、
F3(s)=exp(−τ23・s)・F2(s) ・・・ (11)
F4(s)=exp(−τ24・s)・F2(s) ・・・ (12)
となる。τ23、τ24は、4気筒、4サイクルエンジンにおいては、大略π、2π、3πといった値である。
【0070】
同じように、第2気筒、第3気筒、第4気筒のみを燃焼させて、Gij(s)(i=1〜4、j=1〜4)を求めることができる。これらより同様に、各センサの出力信号X1(s)、X2(s)、X3(s)、X4(s)を入力として、式(10)を用いて、各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)を求めることができる。
【0071】
以上、周波数領域における各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)の求め方について述べたが、時間領域における各気筒内圧についても、同様に求めることができる。すなわち、各センサからの出力信号x1(t)、x2(t)、x3(t)、x4(t)を基に、これら相互の記述関数(describing function)wij(t)(i=1〜4、j=1〜4)を求め、これら各センサからの出力信号と記述関数のコンボリューションを求めることにより、各気筒内圧f1(t)、f2(t)、f3(t)、f4(t)が求まる。
【0072】
あるいは、さきに述べた周波数領域における各気筒内圧F1(s)、F2(s)、F3(s)、F4(s)を、逆ラプラス変換することにより、時間領域における各気筒内圧f1(t)、f2(t)、f3(t)、f4(t)を求めることができる。
【0073】
図9は、このようにして分離した、4サイクルエンジンの1気筒内の燃焼圧の測定例である。
【0074】
パッド材質としては、バネ性に富んだ金属材料にこだわる必要はなく、カーボン材や樹脂系の材料であっても、先述のバネ定数k1の条件を満足すればよい。しかしカーボン材や樹脂系の材料では、応力弛緩やクリープ現象といった経時変化を生じやすく、パッドに予め加えられた締め付け力が時間とともに減少していき、筒内圧センサとしての特性が劣化していく傾向にある。
【0075】
図10は、筒内圧センサのもう一つの実施例で、パッド2’を金属製のばね構成としたもので、所定の予荷重が圧電素子1に与えられた状態で組み立てられており、同様の効果が得られる。
【0076】
またパッド材質が、圧電素子よりも圧縮破壊応力がいくぶん小さく、過度の圧縮代に対して降伏するが、それ以下の条件範囲ではバネ特性をもつ材質であっても構わない。すなわちパッド材の圧縮破壊応力をσpとするとき、 σp<σcを満足する。また σpよりも大きな応力が作用し塑性変形した後、σp以下の応力に対して弾性を保ち、またクリープ変形を起こさない、といった2条件を満足すればよい。たとえば軟質金属は、クリープ変形の徴候があるが、厳しい検出精度や性能保証期間が問われなければ、使用可能である。
【0077】
以上、カーボン製のシリンダガスケットに本発明を適用した実施例についてのべたが、図11に示すように、金属製のシリンダガスケットに本発明を適用しても、同様の効果が得られる。この場合パッド28は、金属ガスケットの上当て板26の一部に突起形状に形成され、先述のばね定数が得られるばね性をもたせている。
【0078】
さらにその他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施しても同様の効果が得られる。例えば、チャージアンプの替わりに、電気信号のインピーダンス変換ができる増幅器であれば、他の種類の増幅器であっても、同様の効果が得られるなどである。
【0079】
【発明の効果】
本発明により、燃焼室内にセンサまたはセンサの一部を取り付けることなく、またシリンダブロックやシリンダヘッドに特別な細工を施すことなく、シリンダ内の燃焼圧を検出することができるので、センサ実装部のスペ−スが十分でないエンジン環境で複雑な構造にしなくてよい。
【0080】
とくに寸法ばらつきがあっても、十分に感度よく燃焼圧が検出できる特徴があり、安定した性能の筒内圧センサが生産できる。
【0081】
また、パッドの効果により、従来の筒内圧センサよりも燃焼室から十分離れたところに筒内圧センサを取り付けることが可能なので、圧電素子の温度変化による出力変動を最小限にし、かつ、外乱による振動の影響も受けにくい。さらに、図10に示すように、1個の筒内圧センサで2気筒以上の燃焼室内の燃焼圧を検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の筒内圧センサの一実施例を示すエンジンのシリンダ部、分解図である。
【図2】図1の筒内圧センサの詳細部断面図である。
【図3】本発明の筒内圧センサを使用したエンジンの一例である。
【図4】制御システムの構成図を示す。
【図5】図3の制御を行ったときの効果の説明である。
【図6】本発明のシリンダガスケットの厚さ方向の関係を示す説明図である。
【図7】図6に対応した数値関係を示す図である。
【図8】1個の筒内圧センサで2気筒のシリンダの燃焼圧を検出する一実施例である。
【図9】本発明の筒内圧センサによる燃焼圧の測定の一例である。
【図10】本発明の筒内圧センサの別の実施例である。
【図11】本発明の筒内圧センサを金属製のシリンダガスケットに適用した実施例である。
【図12】結合ボルトの伸び及びシリンダガスケット厚の収縮と燃焼圧変動の関係を示す図である。
【図13】シリンダガスケットの全体系とパッド及び圧電素子の測定系の関係を示す図である。
【図14】本発明の筒内圧センサの製作、組立の一例を示すブロック線図である。
【符号の説明】
1、25…圧電素子、2、2’…パッド、3…シリンダガスケット、3a、3b…ガスケット材、3c、24…中間板、4…シリンダヘッド、5…シリンダブロック、6…端子、7…導線、8…チャージアンプ、9、23…グロメット、10…エンジン本体、11…シリンダ、12…ピストン、13…燃焼室、14、14a、14b、14c、14d…筒穴、15…結合ボルト、16…筒内圧センサ本体装着穴、17…通り溝、18…筒内圧センサ本体、19…エンジン制御用コンピュ−タ(ECU)、20…EFI(独立噴射)、21…独立ヘリカル吸気ポ−ト、22…電子制御EGRバルブ、26…上当て板、27…下当て板、28…パッド
Claims (1)
- シリンダヘッドとシリンダブロックの間に筒内圧センサ本体の装着部を設けたシリンダガスケットと、
燃焼室内の筒内圧変化を伝えるためのパッドと、
該パッドの圧力変化を検出するための圧電素子とを有し、
前記パッドのばね定数をk1、パッドの面積に等しいシリンダガスケットのばね定数をk、シリンダガスケット内に筒内圧センサを組み込んで締結したときのパッドの圧縮代をΔ、圧電素子の受圧面積をA、圧電素子の破壊限界応力をσc、シリンダガスケットの初期厚さばらつきをα・tgとするとき、パッドのばね定数k1が、k ≦ k1 < σc・A/(Δ+α・tg)を満たし、
筒内圧の変動によるシリンダガスケットの厚さ方向の弾性変形を圧電素子の電気信号として検出できるようにしたことを特徴とするエンジン用筒内圧センサ。
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