JP3531996B2 - 一方向性電磁鋼帯の製造方法 - Google Patents
一方向性電磁鋼帯の製造方法Info
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Description
に用いられる一方向性電磁鋼帯の製造方法に関し、鋼板
の形状と鉄損特性の有利な改善を図ろうとするものであ
る。 【0002】 【従来の技術】一方向性電磁鋼板は、軟磁性材料として
主にトランスその他の電気機器の鉄心材料に使用されて
いるもので、磁気特性としては励磁特性と鉄損特性が良
好でなくてはならない。この励磁特性を表す指標とし
て、通常は磁束密度B8 (磁場の強さ800 A/mにおけ
る磁束密度)が用いられ、鉄損特性を表す指標として、
W17/50 (50Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位
重量あたりの鉄損)が用いられる。 【0003】一方向性電磁鋼板は、製造工程の最終段階
の900℃以上の温度での仕上焼鈍工程で2次再結晶を
起こさせ、鋼板面に{110}面、圧延方向に<001
>軸をもったいわゆるゴス組織を発達させることによっ
て得られている。そのなかでも、磁束密度B8 が1.8
8T以上の優れた励磁特性をもつものは高磁束密度一方
向性電磁鋼板とよばれている。高磁束密度一方向性電磁
鋼板の代表的製造方法としては、特公昭40−1564
4号公報、特公昭51−13469号公報等があげられ
る。 【0004】現在世界的規模で生産されている高磁束密
度一方向性電磁鋼板は、上記2特許を基本として生産さ
れていると言える。しかし上記特許に基づく製品の磁束
密度B8 は1.88Tから高々1.95T程度であり、
3%Si鋼の飽和磁束密度2.03Tの95%程度の値
を示しているに過ぎない。そして、近年省エネルギー、
省資源への社会的要求は益々厳しくなり、一方向性電磁
鋼板の鉄損低減、磁化特性改善への要求も熾烈になって
きている。 【0005】一方、一般的には、磁束密度B8 が高くな
るとともに製品の結晶粒が大きくなる傾向があり、B8
をある程度大きくしても180°磁区巾が大きくなるた
めに渦電流損が増大し、冶金学的にはこれ以上の鉄損改
善の期待が望まれない。この観点から技術的な鉄損低減
化の手法としてレーザー照射等の磁区制御技術が特公昭
58−5968号公報、特公昭57−2252号公報等
により確立され、これに伴い更なる高磁束密度を有する
素材が鉄損低減への条件として期待されてきている。 【0006】これに対して、本出願人は特公昭57−5
0295号公報等で温度勾配焼鈍法を、また特公昭62
−007252号公報等でその焼鈍装置を提案した。こ
の方法で、初めて安定して磁束密度B8 が1.95T以
上の製品が得られるようになったが、この方法で工場サ
イズのコイルフォームで実施する場合、コイル一端から
加熱し、反対端部は温度勾配をつけるため冷却するとい
う、非常に大きな熱エネルギー的損失を伴うため、工業
生産としては大きな問題をはらんでいた。 【0007】そこで本発明者らは、一方向性電磁鋼板の
溶鋼中にBiを含有させることにより、工業的手段によ
り磁束密度を従来の高磁束密度一方向性電磁鋼板レベル
から超高磁束密度一方向性電磁鋼板レベルまで高める方
法を特開平6−8814号公報、特開平6−88173
号公報等で提案した。この方法により初めて磁束密度B
8 が1.96Tを超える超高磁束密度一方向性電磁鋼板
が工場規模で比較的安定に生産できるようになった。 【0008】ところで、一方向性電磁鋼板の2次再結晶
仕上焼鈍及び純化焼鈍を行う際、一般的にはコイルを縦
穴方向に積み、バッチタイプの焼鈍炉で1150℃以上
で20時間以上の高温長時間焼鈍が施される。そのた
め、2次再結晶仕上焼鈍後の鋼帯は、コイルセット、コ
イル自重を主起因とするコイル下端部の側歪とよばれる
歪、冷却分布が不均一なため起こる中伸び等の冷却歪み
等が多く含まれている。そして、製品にこれらの内部歪
みが残留していると鉄損特性や磁歪特性を著しく劣化さ
せる。 【0009】また、鋼板の形状不良については製品歩留
りを低下させるばかりでなく、軽度の形状不良について
もトランスを製造した際に占積率を悪化させる。従って
前記2次再結晶仕上焼鈍後のコイルにおいて、内部歪み
の減少を目的とした歪取焼鈍および形状矯正を目的とし
た平坦化焼鈍が必要である。 【0010】一般には歪取りと平坦化さらには絶縁皮膜
の焼き付けを兼ねた連続張力焼鈍を行っているが、鋼板
の形状矯正のためにはあるレベル以上の張力が必要であ
り、一方鋼板の内部歪みを解放するためには焼鈍時に張
力を極力付与することなく行う必要があり、この両者の
矛盾の中で実操業は行われている。そのため、従来より
前記連続張力焼鈍については種々検討され、例えば特開
昭59−96227号公報では、張力を0.3〜0.7
kg/mm2 に低めて鉄損の低減を図る方法、特開昭61−
159529号公報では鋼板温度が700〜850℃ま
での張力を0.35〜1.0kg/mm2 として形状矯正
し、それ以降の張力を0.35kg/mm2 まで低めて歪取
りを行うことにより形状矯正と歪取りを分割する方法が
記載されている。 【0011】つまり一般的には鋼帯の張力をできるだけ
下げて焼鈍することが常識であった。しかし、前者の方
法では仕上焼鈍後の形状が著しく悪い場合は形状矯正が
不足するという問題があり、後者の方法では高温で張力
を分割するための装置開発が困難であるため、実操業で
は必ずしも満足できる方法ではなかった。また、低張力
で連続焼鈍ラインを通板する場合、鋼帯の蛇行等が発生
しやすく操業上の問題も内在していた。 【0012】そこで、上記連続張力焼鈍において鋼板の
形状と鉄損特性が優れた一方向性電磁鋼帯を安定に製造
する方法の確立が求められていた。 【0013】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる問題
点を回避し、鋼帯の形状と鉄損特性の改善を図ることを
目的としており、その技術思想は、上記連続張力焼鈍に
おいて冶金学的に有利な鋼板を提供するものである。 【0014】 【課題を解決するための手段】本発明の特徴とする処
は、以下のとおりである。 1)重量(以下単に%と記す)で、Si:2.5〜4.
0%、酸可溶性Al:0.010〜0.065%、B
i:0.0005〜0.05%を含有し、残部Fe及び
不可避的不純物からなる電磁鋼板用スラブを熱間圧延
し、1回あるいは中間焼鈍を介入する2回以上の冷間圧
延を施して最終板厚とし、次いで脱炭焼鈍及び2次再結
晶仕上焼鈍、次いで絶縁皮膜を塗布し連続張力焼鈍を施
すことにより、一方向性電磁鋼帯を製造する方法におい
て、上記2次再結晶仕上焼鈍を施した鋼板の2次再結晶
平均粒径が10〜50mmである鋼板に、1.5〜2.0
kg/mm2 の範囲の張力を付与しつつ連続焼鈍を施すこと
を特徴とする一方向性電磁鋼帯の製造方法。 【0015】 【作用】以下、本発明を詳細に説明する。本発明者ら
は、上記連続張力焼鈍における歪取りと平坦化効果の矛
盾点を解決すべく、一方向性電磁鋼板における冶金学的
な有利な条件を探索していた。一般に連続張力焼鈍で
は、コイルの圧延方向に張力を付与しながら連続的に焼
鈍を行っている。一方、鋼板面に{110}面、圧延方
向に<001>軸をもったいわゆるゴス組織を高度に集
積させた一方向性電磁鋼板は、圧延方向が難加工方位で
あるためこの方位へは非常に伸び難い。そのため、上記
張力焼鈍下では結晶粒内の変形はほとんど期待されず、
主として結晶粒界での熱拡散型の変形−いわゆるクリー
プ変形が支配的である。 【0016】また、このような結晶粒界で発生した内部
歪みは通常の800〜900℃で数分の焼鈍では回復し
難く、鉄損特性を悪化させる主原因となる。そこで、こ
の連続張力焼鈍を効果的に行うためには、鋼板中に存在
する結晶粒界を減らし、クリープが発生する張力限界を
高めることが有効であろうと推定していた。 【0017】本発明者らは、上記のような状況を定量的
に把握するため、Siを3.0〜3.5%を含有する一
方向性電磁鋼板につき、そのインヒビターと製造条件を
種々に変化させて、板厚0.23〜0.35mmの製品の
2次再結晶粒径を意図的に変えた。そして、得られた鋼
板について歪取焼鈍を行った後、0.4〜2.5kg/mm
2 の張力範囲で860℃2分の張力焼鈍を行い、その前
後の鉄損劣化代を測定した。また、鋼板の2次再結晶平
均粒径を画像処理法で算出し、2次再結晶平均粒径と鉄
損悪化代の関係を調査した。その結果を図1に示す。 【0018】ここで、2次再結晶の結晶粒径と平均粒径
の計算方法を述べると、通常の0.23〜0.35mmの
板厚においては、2次再結晶粒は板厚を貫通している。
従って、鋼板の片面についてのみ計算すれば十分であ
る。いま、ひとつの結晶粒の面積をSmmとすれば、この
結晶粒径Dmmは、D=2√(S/π)で計算できる。次
に、多結晶粒の平均粒径は総面積をAmm2 とし、そこに
含まれる結晶粒の個数をNとした時、平均粒径Dmmは、
平均粒径D=2√(A/πN)で計算される。 【0019】図1から明らかなように、2次再結晶平均
粒径と張力焼鈍による鉄損特性劣化の間に相関があるこ
とが判った。2次再結晶平均粒径が10mmより小さい鋼
板は、鋼板張力を高めるにともない鉄損特性が劣化して
いくが、平均粒径が10mm以上の鋼板は2.0kg/mm2
程度まで鋼板張力を高めても鉄損が劣化しない。すなわ
ち、鋼板の2次再結晶平均粒径を10mm以上に制御する
ことにより、形状矯正のための鋼板張力を極めて高く設
定することを可能にならしめることを示している。 【0020】一般的に鋼板の磁束密度B8 を高く制御す
ると、2次再結晶粒径も大きくなるので、高磁束密度化
を狙った公知の技術の多くはそのまま2次再結晶粒径の
制御に適用できる。例えば、インヒビターにAlNとM
nSを用い強圧下冷延を特徴とする特公昭40−156
44号公報や1次再結晶領域と2次再結晶領域の境界に
温度勾配焼鈍を施す特公昭57−50295号公報等の
技術も、2次再結晶結晶粒径を大きくするために有効な
方法である。しかし前述のとおり、工業的に安定して平
均10mm以上の結晶粒径を確保する技術を持っていなか
ったのが実情である。 【0021】ところで、本発明者らは、特開平6−88
14号公報、特開平6−88173公報等に示している
とおり、AlNを主インヒビターとする一方向性電磁鋼
板用の素材に、Biを添加含有せしめることにより、現
在市販されている高磁束密度電磁鋼板のB8 =1.93
T程度をはるかに超える1.95T以上、2Tにおよぶ
超高磁束密度一方向性電磁鋼板を発明している。また、
この鋼板の2次再結晶粒は従来の高磁束密度一方向性電
磁鋼板に比較して著しく大きく、2次再結晶粒径が30
0mmにも及ぶ巨大粒を呈することもある。 【0022】本発明者らは、各公知技術が2次再結晶粒
径に与える効果を定量的に把握するため、Siを3.0
〜3.5%を含有する一方向性電磁鋼板につき、そのイ
ンヒビターと製造条件を種々に変化させて、板厚0.2
3〜0.35mmの製品の結晶粒径を意図的に変えた。こ
れら鋼板の磁束密度B8 と画像処理法で算出した2次再
結晶平均粒径の関係を図2に示す。 【0023】図中の(a)はMnS、MnSe、Sb等
を主インヒビターとし2段冷却法を特徴とする、U.S.P.
2,158,065及び特公昭49−61019号公報等記載の
方法、(b)はAlNとMnSを主インヒビターとし強
圧下冷延を特徴とする特公昭40−15644号公報記
載の方法、(c)は単体を主インヒビターとし低温スラ
ブ加熱を特徴とする特公昭61−60896号公報記載
の方法をベースとし、温度勾配焼鈍法を含む種々の製造
条件を適用した。また、△印は(a)にBiを、●印は
(b)または(c)にBi添加し温度勾配焼鈍法以外の
製造条件を適用した。 【0024】図2から明らかなように、磁束密度B8 を
上げると2次再結晶粒径は大きくなる傾向にある。ま
た、本発明で必須とされる10mm以上の2次再結晶平均
粒径は、MnS(Se)とSbの複合インヒビターでは
得られず、インヒビターとしてのAlNが必要であるこ
とが判る。さらにAlNを主インヒビターとする素材に
Biを添加することにより、10mm以上の2次再結晶平
均粒径が安定して得られることが判る。 【0025】本発明はかかる観点から、連続焼鈍時にお
いて鉄損特性を損なうことなく張力を高めることを可能
にし、鋼板の形状を効果的に矯正できる。2次再結晶粒
が大きな一方向性電磁鋼板を提供し、またこの一方向性
電磁鋼板をBi添加により安定的に製造する方法を発明
した。 【0026】次に、本発明に必要な製造工程の構成要素
のうち、鋼成分及びその限定理由について述べる。本発
明において、素材が含有する成分としてはSi:2.5
〜4.0%、酸可溶性Al:0.010〜0.065
%、Bi:0.0005〜0.05%を含有 し、残部F
e及び不可避的不純物であり、これらを必須成分として
それ以外は限定しない。 【0027】Siは、2.5%未満では製品の渦電流損
が増大し、また4.0%超では常温での冷延が困難にな
り、いずれも好ましくない。酸可溶性Alは窒化物を形
成し、高磁束密度一方向性電磁鋼板製造のための主イン
ヒビター構成元素であり、図2から判るように本発明の
必須元素である。またインヒビター効果が強いため、2
次再結晶粒径を大きくするための必須元素である。粒径
を大きくするために0.010%未満では量的に不足
し、インヒビター強度が不足する。一方、0.065%
超では析出窒化アルミニウムが粗大化し、結果としてイ
ンヒビター強度を低下させるので好ましくない。 【0028】Biは2次再結晶粒径を粗大化するための
必要元素であり、添加含有量は、0.0005%から
0.05%の範囲が有効である。0.0005%未満で
は2次再結晶粒径の粗大化効果が僅かであり、また0.
05%超では磁束密度向上の効果が飽和するとともに熱
延板の端部に割れが発生するので上限を0.05%に限
定する。更に、薄手製品の2次再結晶を安定化させる元
素として、Sn等を添加することもできるが、2次再結
晶粒径を小さくする作用もあり有効ではない。その他の
インヒビター構成元素として、Mn、S、Se、V、
N、B、Nb、Sn、Cu、Ti、Zr、Ta、Mo等
を複合して添加することができる。 【0029】次に、製造プロセス条件について説明す
る。上記のごとく成分を調整した超高磁束密度一方向性
電磁鋼板用素材は通常の如何なる溶解法、造塊法を用い
た場合でも本発明の素材とすることが出来る。次いでこ
の電磁鋼板用素材は通常の熱間圧延により熱延コイルに
圧延される。 【0030】引き続いて1ステージの冷間圧延または中
間焼鈍を含む複数ステージの冷間圧延によって最終板厚
とするが、2次再結晶粒径が大きく、磁束密度が高い一
方向性電磁鋼板を得ることから最終冷延の圧延率(1ス
テージの冷間圧延の場合はその圧延率)は65〜95%
の強圧下が好ましい。最終圧延以外のステージの圧延率
は特に規定しなくてもよい。また、窒化アルミニウム等
のインヒビターを強化するため、最終冷延前に焼鈍およ
び冷却を行ってもよい。 【0031】最終製品厚に圧延した冷延コイルは、通常
の方法で1次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍が施される。
脱炭焼鈍の条件は特に規定しないが、好ましくは700
〜900℃の温度範囲で30秒〜30分間湿潤な水素ま
たは水素と窒素の混合雰囲気で行うのが良い。また、脱
炭焼鈍後に窒化アルミニウム等のインヒビターを強化す
るため、アンモニア雰囲気等で窒化処理を施してもよ
い。 【0032】また、脱炭焼鈍後の鋼板表面には、2次再
結晶焼鈍における焼き付きを防止する一方、グラス皮膜
生成のため通常のMgOを主成分とする焼鈍分離剤や、
グラス皮膜のない鏡面材製造のため特開平5−1563
62号公報等に記載するAl2 O3 等を塗布してもよ
い。 【0033】続いて、脱炭焼鈍コイルに対して通常の方
法で2次再結晶仕上げ焼鈍が施される。この2次再結晶
焼鈍後の結晶粒径が大きな鋼板を、その後の連続張力焼
鈍において鉄損特性を劣化させず効果的に形状矯正を行
うことが本発明の主眼とするところである。すなわち、
鋼板の2次再結晶粒径が10〜50mmであることを必須
条件とする。 【0034】図1から明らかなように、2次再結晶平均
粒径が10mmより小さい場合、張力焼鈍時に粒界変形が
多くなり鉄損特性が悪化するので、2次再結晶平均粒径
が10mm以上に限定する。また、2次再結晶粒径は大き
ければ大きいほどよいが、図2から明らかなように、3
%Si鋼の飽和磁束密度の2.03Tで平均結晶粒径が
50mmであり、実質的な限界値と判断し上限を50mm以
下とした。 【0035】2次再結晶仕上焼鈍については、AlNを
主インヒビターとする一方向性電磁鋼板を素材とする場
合、平均粒径が10mm以上の2次再結晶粒を得るため
に、コストアップになるが上記の温度勾配焼鈍法や、特
公昭56−33450号公報等に記載する徐加熱法等を
行うことが好ましい。ただし、本発明のインヒビターと
してBiを含有する場合には、このような特殊な操作を
行う必要がなく、安定して2次再結晶平均粒径が10mm
以上の一方向性電磁鋼板が得られる。 【0036】引き続き余分の焼鈍分離剤を除去後、コイ
ルセット等を矯正するための連続張力焼鈍を行う。本発
明の特徴として、図1から明らかなように、2次再結晶
平均粒径が10mm以上の鋼板は、従来より高い1.5〜
2.0kg/mm2 の範囲の張力を付与しても鉄損特性を損
なうことなく形状矯正を行うことが可能である。張力が
1.5kg/mm2 より小さいと形状矯正効果が少なく、ま
た通常の形状不良の矯正では2.0kg/mm2 超の張力は
必要ない。また通常はこの連続張力焼鈍中に絶縁皮膜を
塗布、焼き付けする。 【0037】更に、必要に応じてレーザー照射等の磁区
細分化処理を施す。本発明は2次再結晶粒径を大きく制
御するものであるため、鉄損特性を改善する意味から磁
区細分化処理は有効である。磁区細分化の方法は特に限
定する必要はない。 【0038】 【実施例】(実施例1) C:0.09%、Si:3.25%、Mn:0.07
%、S:0.025%、酸可溶性Al:0.027%、
N:0.008%、Sb:0.05%を含有する珪素鋼
を溶製し、Bi含有量を0、0.0004、0.000
7、0.0031、0.0306、0.0612%と
し、それぞれ鋳片に分注鋳造後、1350℃に加熱し、
抽出後直ちに2.0mm板厚まで熱延し、熱延後20℃水
冷し550℃で保定した。熱延板については側面の割れ
を観察した。その後熱延板を1120℃の温度で3分間
焼鈍し、直ちに100℃の水中に急冷した。 【0039】次いで酸洗後0.23mmまで途中で250
℃での時効処理を5回はさんで冷延した。引き続き85
0℃で脱炭を行い、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を
塗布した。それから、1200℃まで15℃/hr. で昇
温し、引き続いて1200℃で20時間の純化焼鈍を行
った。水洗乾燥後800℃2時間の歪取り焼鈍を行っ
た。そして1.5、3.0kg/mm2 の張力で860℃2
分間の張力焼鈍を行い、焼鈍前後の磁気特性を測定し、
また2次再結晶平均粒径を測定した。2次再結晶平均粒
径と鉄損劣化代ΔW17/50 及び熱延板の割れの関係を表
1に示す。 【0040】表1より明らかなように、張力1.5kg/
mm2 の場合、比較例のBi含有量が0.0005%より
少ない材料は、2次再結晶平均粒径が10mmより小さく
鉄損の劣化も0.02W/kg以上と大きいのに対して、
実施例のBi含有量が0.0005%以上の材料は、1
0mm以上の2次再結晶平均粒径が安定して鉄損の劣化が
0.005W/kg以下と極めて小さい。しかし、張力を
2.0kg/mm2 超まで高めると、鉄損の劣化は大きくな
る。なお、Bi含有量が0.05%を超えるものは、熱
延板の側面の割れが著しく大きかった。 【0041】 【表1】 【0042】(実施例2) C:0.05%、Si:3.25%、Mn:0.10
%、S:0.007%、P:0.025%、酸可溶性A
l:0.029%、N:0.007%、Cr:0.12
%を含有する珪素鋼を溶製し,Bi含有量を0、0.0
083、0.0353%とし、それぞれ鋳片に分注鋳造
後、1150℃に加熱し、抽出後直ちに2.3mm板厚ま
で熱延し、熱延後20℃水冷し550℃で保定した。そ
の後熱延板を1120℃の温度で30秒900℃で90
秒焼鈍し、750℃まで空冷後80℃の水中に急冷し
た。次いで酸洗後0.23mmまで途中で250℃での時
効処理を5回はさんで冷延した。引き続き1次再結晶平
均粒径が23μmになるように脱炭・1次再結晶焼鈍を
行い、引き続いてNH3 雰囲気でN含有量が200ppm
になるよう窒化焼鈍を行った。Al2 O3 を主成分とす
る焼鈍分離剤を塗布後60mmの曲率に曲げた。 【0043】それから、1200℃まで15℃/hr. で
昇温し、引き続いて1200℃で20時間の純化焼鈍を
行った。水洗乾燥後0.5、1.5、2.5kg/mm2 の
張力で860℃2分間の張力焼鈍を行い、焼鈍前後の磁
気特性を測定し、また2次再結晶平均粒径と圧延方向3
00mmの鋼板の反り量を測定した。2次再結晶平均粒径
と鉄損劣化代ΔW17/50 及び反り量の関係を表2に示
す。 【0044】表2より明らかなように、比較例のBi含
有量が0.0005%より少ない材料は、2次再結晶平
均粒径が10mmより小さく鉄損の劣化も0.02W/kg
以上と大きいのに対して、実施例のBi含有量が0.0
005%以上の材料は、10mm以上の2次再結晶平均粒
径が安定して鉄損の劣化が0.005W/kg以下と極め
て小さい。しかし、張力を2.5kg/mm2 まで高める
と、鉄損の劣化は大きくなる。また、鋼板張力を1.5
kg/mm2 以上にすることにより、鋼板の反り量は0mmと
なり、曲率60mmのコイルセットが可能であった。 【0045】 【表2】 【0046】 【発明の効果】本発明は、連続焼鈍時において鉄損特性
を損なうことなく張力を高めることを可能にし、鋼板の
形状を効果的に矯正できる、2次再結晶粒が大きな一方
向性電磁鋼板を提供し、またこの一方向性電磁鋼板をB
i添加により安定的に製造する方法を発明した。この方
法により形状と鉄損特性が極めて良好な一方向性電磁鋼
帯が安定に製造でき、工業的に極めて価値が高いものと
言える。
悪化量の関係を示す図表。 【図2】各種インヒビターにおける磁束密度B8 と2次
再結晶平均粒径の関係を示す図表。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量比で、 Si:2.5〜4.0%、 酸可溶性Al:0.010〜0.065%、Bi:0.0005〜0.05% を含有し、 残部Fe及び不可避的不純物からなる電磁鋼
板用スラブを熱間圧延し、1回あるいは中間焼鈍を介入
する2回以上の冷間圧延を施して最終板厚とし、次いで
脱炭焼鈍及び2次再結晶仕上焼鈍、次いで絶縁皮膜を塗
布し連続張力焼鈍を施すことにより、一方向性電磁鋼帯
を製造する方法において、上記2次再結晶仕上焼鈍を施
した鋼板の2次再結晶平均粒径が10〜50mmである鋼
板に、1.5〜2.0kg/mm2 の範囲の張力を付与しつ
つ連続焼鈍を施すことを特徴とする一方向性電磁鋼帯の
製造方法。
Priority Applications (1)
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