JP3520098B2 - ダイヤモンド被覆切削工具 - Google Patents

ダイヤモンド被覆切削工具

Info

Publication number
JP3520098B2
JP3520098B2 JP16484093A JP16484093A JP3520098B2 JP 3520098 B2 JP3520098 B2 JP 3520098B2 JP 16484093 A JP16484093 A JP 16484093A JP 16484093 A JP16484093 A JP 16484093A JP 3520098 B2 JP3520098 B2 JP 3520098B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diamond
substrate
base material
rake face
cutting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP16484093A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0724655A (ja
Inventor
和之 福本
義昭 斎藤
宗廣 長佐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NGK Spark Plug Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NGK Spark Plug Co Ltd filed Critical NGK Spark Plug Co Ltd
Priority to JP16484093A priority Critical patent/JP3520098B2/ja
Publication of JPH0724655A publication Critical patent/JPH0724655A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3520098B2 publication Critical patent/JP3520098B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ダイヤモンド被覆切
削工具に関し、さらに詳しくは、導電性の基材の刃先部
分に予め特定の加工を施した後、気相法により、刃先部
分に重点的にダイヤモンド被覆を行なうことによって耐
摩耗性著しく向上したダイヤモンド被覆切削工具に関
する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】ダイヤモ
ンドは現存する物質のなかで最も高い硬度を有する。し
たがって、切削工具用基材の表面にダイヤモンド膜を被
覆してなる切削工具が注目されている。
【0003】しかし、より効率的、またはより精密な切
削を可能とするためには、切削工具におけるダイヤモン
ド膜の耐摩耗性を向上させる必要がある。耐摩耗性は、
ダイヤモンドの基材への密着力が十分であるときには、
ダイヤモンド膜の膜質、結晶粒径、結晶方位および膜厚
によって決定される。これらの中でも最も支配的な因子
は膜厚であり、耐摩耗性を向上させ、長寿命化をはかる
ためには、すり減りにくい膜を厚く設けることが最も有
効な手段である。
【0004】しかし、耐摩耗性の向上を目的とし、単純
に全体の膜厚を厚くすると、所謂コーティング時間が長
く必要となり、コーティングコストの上昇を招くので、
好ましくない。そこで、刃先部分に重点的にダイヤをコ
ーティングすることが考えられる。この場合にはチップ
のすくい面の平坦性が損なわれ、この様な刃先(エッ
ヂ)部分での盛り上がりの程度が大きくなりすぎると、
チップをホルダーに取り付けた時に、締付圧によってチ
ップを破損したり、チップの固定が悪くなり切削時にチ
ップに振動(所謂ビビリ)が生じ、仕上面を荒くした
り、チップを欠損させたりする等の問題が生じる。
【0005】また、良く知られているように、超硬合金
製の基材上にマイクロ波プラズマCVD法によってダイ
ヤモンドをコーティングする際には、基材のエッヂ部の
ダイヤモンドが他の部分より厚くなりやすい。換言すれ
ば、刃先部のすくい面上の盛り上りが生じやすいという
問題があった。
【0006】ダイヤモンド被覆切削工具の刃先部分の改
良に関しては、特開昭62ー271605号公報におい
て、基材のすくい面と逃げ面との交線にあたる切刃稜に
幅0.2〜0.8μmの面取りを施すことにより、「慣
らし切削」を必要としない切削工具を得ている。
【0007】しかしながら、この切刃稜の先端のみの面
取りでは、気相法によるダイヤモンド薄膜形成のプラズ
マの集中に伴う刃先部分への過度のダイヤモンド生成に
よる刃先部のダイヤモンドの盛り上がりを解消すること
はできない。
【0008】また、特開昭64ー51202号公報にお
いても、刃先部の母材に0.01〜0.08mmの面取
りをする方法を提案しているが、上記の場合と同様にダ
イヤモンドの刃先部での盛り上がりによる、ホルダーへ
の取り付け不安定性は解消することができない。
【0009】このような事情に基づき本発明者らが鋭意
研究した結果、基材の形状を研削や反りによって予め好
適に変形したのちに、刃先部に重点的にダイヤモンド被
覆を行なうことによって、刃先部を膜厚化でき、しかも
チップ全体としては平坦にダイヤモンド被覆することが
でき、その結果切削寿命の著しく長期化することのでき
たダイヤモンド被覆切削工具の得られることを見出し、
本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明の目的は、切削寿命の著
しく長期化したダイヤモンド被覆切削工具を提供するこ
とにある。
【0011】
【前記課題を解決するための手段】記課題を解決するた
めの請求項1に記載の発明は、超硬合金又はサーメット
からなる基材のすくい面から刃の稜線に向かって下降傾
斜する傾斜面を形成してなり、前記傾斜面の角度が、す
くい面に対して1〜30度であり、かつ前記傾斜面の長
さが0.25〜3mmである基材上に、気相法によるダ
イヤモンド合成を行ってダイヤモンド被覆を形成してな
ことを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具であり、
請求項2に記載の発明は、超硬合金又はサーメットから
なる基材のすくい面から刃の稜線に向かって下降傾斜す
る湾曲面を形成してなり、前記刃の稜線から形成される
前記湾曲面のすくい面に向かう長さが0.25〜3mm
であり、かつその湾曲面のRが以下の式を満たす基材
に、気相法によるダイヤモンド合成を行ってダイヤモン
ド被覆を形成して成ることを特徴とするダイヤモンド被
覆切削工具であり、 △t=R{1−cos(L/R)} (ただし、△tは基材の刃先のすくい面の表面に被覆さ
れるダイヤモンド膜の厚みtと基材すくい面の中央部分
のダイヤモンド膜の厚みt0 との差を示し、Rは湾曲
面の曲率半径を示し、Lは湾曲面における刃先端からの
長さを示す。)請求項3に記載の発明は、前記傾斜面を
面取り加工により形成する請求項1または2に記載の
イヤモンド被覆切削工具であり、請求項4に記載の発明
は、前記傾斜面を反り加工により形成する請求項1〜3
の何れか一項に記載のダイヤモンド被覆切削工具
る。
【0012】
【発明の実施の形態】 本発明は、ダイヤモンド被覆切削
工具を製造する際に、予めその刃先部分を面取り加工や
反り加工によって、その厚みが刃先方向に向かうに従っ
て、減少するように加工した基材を用い、この基材上に
ダイヤモンドを被覆する際に、刃先部分に重点的にコー
ティングすることを特長とする。
【0013】(1)基材 本発明に用いる基材としては、導電性を有する基材であ
ればよく、超硬合金またはサーメット等を素材とするも
のを用いることができる。好ましいのは、例えばWC−
5%Co−2.5%TiC組成のJIS SPGN12
0308形状の切削チップである。
【0014】上記の好ましい切削チップの外に、この発
明の方法で使用することのできる前記超硬合金として
は、たとえば、W、Mo、Cr、Co、Ni、Fe、T
i、Zr、Hf、Nb、Ta、Al、B、Ga、Siな
どの一種または二種以上の金属からなる超硬合金類、こ
れらの金属一種または二種以上と、炭素、窒素酸素およ
び/またはホウ素等からなる各種の組成の超硬合金類
(具体的には、たとえば、WC、W−WC、WC−C、
W−WC−C等のW−C系、Co−C系、Co−WC、
Co−W−WC、Co−WC−C、Co−W−WC−C
等のCo−W−C系、TaCx 等のTa−C系、TiC
等のTi−C系、MoCx 、Mo−MoCx、MoCx
−C系等のMo−C系、SiC等のSi−C系、Fe−
FeCx 系等のFe−C系、TiC−Ni系等のTi−
Ni−C系、TiC−Co系等のTi−Co−C系、T
iN系等のTi−N系、TaNx 系等のTa−N系、W
C−TaC−Co−C系等のW−Ta−Co−C系、W
C−TiC−Co−C系等のW−Ti−Co−C系、W
C−TiC−TaC−Co−C系等のW−Ti−Ta−
Co−C系、W−Ti−C−N系、W−Co−Ti−C
−N系など)など多種多様の超硬合金を挙げることがで
きる。これらの中でも、特に好ましい例として、たとえ
ば、切削工具用などに好適なWC系超硬合金(具体的に
は、たとえば、JIS B 4053において使用分類
記号P01、P10、P20、P30、P40、P50
等のP種、M10、M20、M30、M40等のM種、
K01、K10、K20、K30、K40等のK種など
の切削工具用等の超硬合金チップ、V1、V2、V3等
のV種などの線引ダイス用、センタ用、切削工具用等の
超硬合金チップなどのWC−Co系等のW−Co−C系
超硬合金、WC−TiC−TaC−Co系等のW−Ti
−Ta−Co−C系超硬合金、あるいはこれらのTaの
一部をNbに変えたもの等々)などを挙げることができ
る。なお、これらには、上記以外の他の元素や添加成分
を含有しているものであってもよい。どのような材質お
よび形状の超硬合金を採用するかは、使用目的等に応じ
て適宜に選択すればよい。
【0015】上記の中でも好ましい基材としては、周期
律表(IUPAC)の第IVA族、第VA族および第V
IA族に属する金属並びにSiから選択される一種また
は二種以上の金属を含有する炭化タングステン系超硬合
金を挙げることができる。
【0016】好ましい炭化タングステン系超硬合金の具
体例としては、WC、W−WC、WC−C、W−WC−
C等のW−C系、WC−Co、WC−Co−W、WC−
Co−C、WC−Co−W−C等のW−Co系、WC−
TaC−Co、WC−TaC−Co−C等のW−Ta−
Co系、WC−TiC−Co、WC−TiC−Co、W
C−TiCN−Co等のW−Ti−Co系、WC−Ta
C−Co、WC−TiC−TaC−Co−C等のW−T
i−Ta−Co−C系、WC−Nb−Co等の超硬合金
を挙げることができる。炭化タングステン系超硬合金
は、上記のように炭化タングステン、炭化タンタル、炭
化チタン等から得ることができる。本発明に用いられる
炭化タングステン系超硬合金としては、Ti、Co、T
a、Mo、Cr、Ni等の金属を含有しているものが好
ましい。
【0017】本発明において、基材として使用される炭
化タングステン系超硬合金の内、好ましい組成の具体例
としては、WC−TiC−Co、WC−TaC−Co及
びWC−Co、WC−Nbc−Coの超硬合金を挙げる
ことができる。
【0018】WC−TiC−Coの組成を有する超硬合
金としては、炭化タングステン50〜95重量%、好ま
しくは70〜94重量%と、炭化チタン1〜30重量
%、好ましくは2〜20重量%と、コバルト2〜20重
量%、好ましくは4〜10重量%とを有するものを挙げ
ることができる。
【0019】WC−TaC−Coの組成を有する超硬合
金としては、炭化タングステン80〜93重量%、好ま
しくは85〜92重量%と、炭化タンタル1〜20重量
%、好ましくは2〜10重量%と、コバルト3〜10重
量%、好ましくは4〜6重量%とを有するものを挙げる
ことができる。
【0020】WC−Coの組成を有する超硬合金として
は、炭化タングステン90〜98重量%、好ましくは9
4〜97重量%と、コバルト2〜10重量%、好ましく
は3〜6重量%とを有するものを挙げることができる。
【0021】上記炭化タングステンとしては、従来の工
具等に使用されるものなどを使用することができ、具体
的には、WC、WCx(但し、xは1以外の正の実数を
表わし、通常、このxは1より大きいかあるいは1より
小さい数である。)で表わされる定比化合物および不定
比化合物、あるいはこれらに酸素等の他の元素が結合、
置換または侵入したもの等を挙げることができる。これ
らの中でも、通常、WCが特に好適に使用される。
【0022】なお、これらは、一種単独で用いてもよ
く、二種以上を併合してもよく、あるいは二種以上の混
合物、固溶体との組成物等として用いてもよい。
【0023】上記炭化チタンとしては、特に限定はな
く、通常の合金を製造するのに用いられるものを使用す
ることができる。具体的には、TiC、TiCy(但
し、yは1以外の正の実数を表わし、通常、このyは1
より大きいかあるいは1より小さい数である。)で表わ
される定比化合物および不定比化合物、あるいはこれら
に酸素等の他の元素が結合、置換または侵入したもの等
を挙げることができる。これらの中でも、通常、TiC
が特に好適に使用される。
【0024】上記炭化タンタルとしては、特に限定はな
く、通常の合金を製造するのに用いられるものを使用す
ることができる。具体的には、TaC、TaCz(但
し、zは1以外の正の実数を表わし、通常、このzは1
より大きいかあるいは1より小さい数である。)で表わ
される定比化合物および不定比化合物、あるいはこれら
に酸素等の他の元素が結合、置換または侵入したもの等
を挙げることができる。これらの中でも、通常、TaC
が特に好適に使用される。
【0025】上記コバルトとしては、特に制限がない
が、単体金属を好適に使用することができる。
【0026】前記炭化タングステン、前記炭化チタン、
前記炭化タンタルおよび前記コバルトは、特に純粋であ
る必要はなく、本発明の目的を達成するのに支障のない
範囲であれば不純物を含有していてもよい。
【0027】例えば、前記炭化タングステンにおいて
は、微量の過剰炭素、過剰金属、酸化物等の不純物等を
含有していてもよい。
【0028】本発明に用いられるサーメットとしては、
例えば、Ti、W、Mo、Cr、Ta、Nb、V、Z
r、Hf等の炭化物および窒化物に、Co、Ni、C
r、Mo、Fe等の金属を燒結助材として含有している
サーメット材を挙げることができ、一般にサーメット材
として知られているものであれば、特に制限なく用いる
ことができる。
【0029】具体例としては、WC、Mo2 C、Cr3
2 、TaC、NbC、VC、TiC、ZrC、Hf
C、TaN、NbN、VN、TiN、ZrN、HfN、
Ta(C,O)、Ti(C,O)、Ti(N,O)、
(W,Ti)C、(W,Ta,Ti)C、(W,Ta,
Nb,Ti)C、Ti(C,N)、Ti(C,N,
O)、(Ti,Zr)C、(Ti,Zr)(C,N)等
に、燒結助材としてCoおよび/またはNiや、Coお
よび/またはNiの他にCr,Mo,Fe等を含有した
もの等を挙げることができる。
【0030】サーメットにつき上記とは別の表現をする
とすれば、次のような記述も可能である。すなわち、本
発明に使用することのできるサーメットとしては、Ti
CにWCやTaCやTiNを添加し、結合相としてNi
やMoを添加したものを言い、例えばTiC−TaC−
Ni、TiC−TaC−Mo、TiC−TaC−Ni−
Mo、TiC−TiN−Ni、TiC−TiN−Mo、
TiC−TiN−Ni−Mo、TiC−TiN−TaC
−WC−Ni、TiC−TiN−TaC−WC−Mo、
TiC−TiN−TaC−WC−Ni−Mo、TiN−
TaN−Ni、TiN−TaN−Mo、TiN−TaN
−Ni−Mo、TiC−TaN−Ni、TiC−TaN
−Mo、TiC−TaN−Ni−Mo、TiC−Ni、
TiC−Mo、TiC−Ni−Mo、TiC−Ni、T
iC−Mo、TiC−Ni−Mo、TiC−TaN−N
i、TiC−TaN−Mo、TiC−TaN−Ni−M
o等を挙げることができる。なお、これらはその他の元
素またはその炭化物を含有していても良い。
【0031】これらの中でも、炭化チタン、炭化タング
ステンおよび窒化チタン系のサーメットが好適に使用さ
れる。特に好ましいものとしては、TiC、TiN、T
iCN等にNi、CoあるいはMoを燒結助材として用
いたサーメット材を挙げることができる。
【0032】(2)基材の加工 この発明においては使用される基材の刃先部分が特殊な
形状に加工される。
【0033】基材の刃先部分の加工は、面取り加工また
は反り加工あるいはこれらの組みあわせにより行なうこ
とができる。
【0034】−面取り加工− 前記面取り加工を、ダイヤモンド被覆前のチップの刃先
部分の断面図である図1を参照して説明する。
【0035】本発明における面取り加工は、基材1のす
くい面2と逃げ面3のなす刃稜部分に所謂チャンファー
ホーニングを施すもので、すくい面に対する角度θ1
が、1〜30°、好ましくは3〜20°であり、かつ、
刃先端からの寸法(図1中、L1で示す。)が0.25
〜3mm、好ましく0.5〜2mmである傾斜面4をす
くい面上に形成する。すくい面に対する角度θ1が1°
未満であると、すくい面の平坦性を保持するためには、
薄いダイヤモンド膜しか被覆することができないために
切削寿命が短くなり、30°を越えると、これを相殺し
て平坦化するには、必要以上に刃先を厚膜化する必要が
あり、そのためコーティングが長時間となるため、製造
コストの上昇を招くため好ましくない。また、刃先部か
らの寸法L1が0.25mm未満であると基材全体とし
ての平坦性を損なわずに刃先のみを厚膜化する場合の厚
膜化できる部位が小さくなりすぎて、刃先厚膜化の効果
が十分に得られないという問題があり、逆に3mmより
大であっても、これ以上の部分を厚膜化しても寿命の延
長効果がそれ以上は得られないため好ましくない。
【0036】面取り加工はすくい面のみでなく、図2に
示す様にすくい面と逃げ面の両方に施してもよい。この
場合、逃げ面に形成した傾斜面5は、逃げ面に対し、
0.05〜15°、好ましくは0.1〜10°の傾きを
もち(図2中角度θ2で表わす。)、かつ刃先端からの
寸法(図2中L2で示す。)が0.05〜1.5mm、
好ましくは0.25〜1mmである傾斜面を形成する。
逃げ面に対する角度が0.05°未満であると面取り加
工するための機械加工が困難であり、15°より大であ
ると基材全体としての逃げ角が変化するので好ましくな
い。また、刃先部からの寸法が0.05mm未満である
とダイヤモンド膜の膜厚化の相殺効果がなくなり、逆に
1.5mmより大であると基材全体としての逃げ角が変
化するため好ましくない。
【0037】また、本発明において、面取りの断面は図
1の様に直線で構成されていなくてもよく、図3に示す
ように、曲線であっても良い。この場合、円弧の長さL
は0.25〜3mmであり、曲率半径Rは被覆するダイ
ヤモンド膜の刃先部での膜厚tによっても異なるが、例
えば△t=R{1ーcos(L/R)}の関係から求め
ることができる(ただし、△tは基材の刃先のすくい面
の表面に被覆されるダイヤモンド膜の厚みtと基材すく
い面の中央部分のダイヤモンド膜の厚みt0 との差を示
し、Rは湾曲面の曲率半径を示し、Lは湾曲面における
刃先端からの長さを示す。)。
【0038】−反り加工− 本発明において、上記の式を満たす湾曲面を刃先のすく
い面に形成する方法としては、前述の面取り加工以外
に、反り加工によるもの、さらにその組み合わせの方法
であってもよい。また本発明において「式を満たす」と
は加工時多少の誤差も生じるため、本発明の技術的効果
に支障のない程度の誤差をも含んだ意味で用いる。
【0039】本発明における反り加工は、基材に反りを
生じさせ、前述の面取り加工と同様な効果を得るもので
る。すなわち、基材の刃先部からの寸法が0.25〜
3.0mmの部分をすくい面に対して、下降傾斜する湾
曲面を形成するが、その際の湾曲面の曲率半径はRが下
記式を満足する値となるように反り加工する。
【0040】△t=R{1ーcos(L/R)} (ただし、△tは基材の刃先のすくい面の表面に被覆さ
れるダイヤモンド膜の厚みtと基材すくい面の中央部分
のダイヤモンド膜の厚みt0 との差を示し、Rは湾曲面
の曲率半径を示し、Lは反り加工により生じた湾曲面に
おける刃先端からの長さを示す。) この反り加工においても、基材の刃先部からの寸法L
が、0.25mm未満であると、基材全体としての平坦
性を損なわずに刃先のみを厚膜化する場合の厚膜化でき
る部位が小さくなりすぎて、刃先厚膜化の効果が十分に
得られなくなり、また、これを3.0mmより大として
も、基材の寿命の延長効果の向上は期待できない。
【0041】反り加工としては、上記条件を満たす傾斜
面を形成しさえすれば、その方法は限定されないが、例
えば熱処理が挙げられる。
【0042】熱処理としては、たとえば、所定の圧力下
の不活性ガス雰囲気下に、耐熱性容器中において、所定
の物質で形成された敷板もしくは粉末の上で、基材を所
定の温度に所定時間加熱する方法を挙げることができ
る。
【0043】前記不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリ
ウムなどの稀ガスおよび窒素ガスなどを挙げることがで
きる。これらの不活性ガス等はその一種単独を使用する
こともできるし、またその二種以上を併用することもで
きる。
【0044】不活性ガスの圧力としては、通常10-3
orr〜2,000気圧(ゲージ圧)であり、好ましく
は1Torr〜100気圧(ゲージ圧)である。
【0045】敷板もしくは粉末を構成する所定の物質と
しては、基材の材質や形状によって好ましい物質が異な
るが、例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、窒
化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、炭
化ホウ素および炭素等を挙げることができる。具体的な
例としては、基材の材質としてチタンを含む超硬合金を
用いる場合には、敷板の材質にアルミナを用いると変形
量が小さくて適していないが、窒化珪素、窒化ホウ素を
用いると適度な変形が得られ、反り加工に好都合であ
る。
【0046】耐熱性容器としては、前記敷板もしくは粉
末を構成する物質と同様の物質から形成された容器を挙
げることができる。
【0047】加熱温度としては、通常600〜1,80
0℃の範囲から選択され、好ましくは1,000〜1,
600℃の範囲から選択される。
【0048】加熱時間としては、通常30分間〜5時間
程度であるが、これに限らず、基材の種類、大きさ等に
応じて適宜に決定するのが良い。
【0049】好ましい反り加工の条件としては、全圧1
-3〜2,000気圧の窒素とアルゴンの混合ガス(た
だし、窒素ガス1〜760Torr)雰囲気などの不活
性ガス雰囲気中において、BN敷板を用いたBN製のる
つぼ中で1,350〜1,800℃にて、0.5〜5時
間処理する方法が好ましく、好適な反りを生じさせるこ
とができる。
【0050】この反り加工を行うときには、次に説明す
る前処理としての密着性向上処理をする必要はなくな
る。この反り加工によって、同時にダイヤモンド膜の密
着性向上効果が奏されるからである。
【0051】(3)前処理 本発明においては、上記面取り加工または反り加工を施
した基材に、ダイヤモンド被覆を施す前に、以下に示す
前処理をすることが望ましい。
【0052】ー密着性向上処理ー 基材上に形成するダイヤモンド膜の密着性を向上させる
には、基材に対して加熱処理またはエッチング処理を行
うのが好ましい。
【0053】<加熱処理>この加熱処理は、基材を、好
ましくは特定の敷板の上に載置した基材を所定の雰囲気
下で所定の温度に加熱することにより基材自体の表面を
変質させるものであって、所定の雰囲気下で所定の温度
に加熱することにより、基材の表面に凹凸を有する固溶
体が形成される。
【0054】基材の加熱温度範囲は、通常600〜1,
800℃の範囲から選択され、好ましくは1,000〜
1,600℃の範囲から選択される。加熱温度範囲が上
記範囲内にあると、基材表面の改質が十分に促進され
る。なお、加熱温度範囲が1,800℃よりも高いと、
温度を上昇することに見合う基材の改質効果が見られな
いことがある。
【0055】基材を加熱処理するときの圧力は、通常1
-3Torr〜2,000気圧(ゲージ圧)であり、好
ましくは1Torr〜100気圧(ゲージ圧)である。
圧力が前記範囲内にあると基材の改質効果を一段と良く
達成することができる。
【0056】基材を加熱処理するときの雰囲気として、
高真空下であっても良いのであるが、少量の窒素ガスの
存在する減圧下に行うか、あるいは低い窒素ガス分圧と
なるような窒素ガスとアルゴンなどの不活性ガスとの混
合ガス雰囲気下であるのが、基材表面の改質効果殊にこ
の加熱処理後の基材に対するダイヤモンド等の薄膜を形
成させた際のこれらの間の密着性の向上効果が大きいこ
とから、好適である。
【0057】基材とダイヤモンド等の薄膜との密着性向
上に寄与する窒素ガスの量としては、基材の種類や加熱
温度、処理時間などにより好適な量が異なるので、一義
的に決めることはできないが、通常1〜760Torr
の範囲から適宜に選択され、好ましくは1〜200To
rrである。
【0058】基材の加熱処理時間は、通常30分間〜5
時間程度であるが、これに限らず、基材の種類、大きさ
等に応じて適宜に決定するのが良い。
【0059】基材を加熱処理すると、特に、基材を特定
の材質からなる敷板の上に載置して加熱処理をすると、
その理由は明確ではないが、基材自体の変形や寸法変化
を生じることなくダイヤモンドなどの薄膜との密着性が
向上する。
【0060】熱処理の一例としては、全圧10気圧の窒
素およびアルゴン混合ガス(内窒素ガス100Tor
r)雰囲気中において、1,400℃、1時間処理する
のが好ましい。
【0061】<エッチング処理>上記基材の表面をエッ
チング処理する方法としては、例えば、ウェットエッチ
ングやドライエッチングを挙げることができる。
【0062】ウェットエッチングとしては、酸によるエ
ッチング処理や電解エッチングなどを挙げることができ
る。
【0063】酸によるエッチング処理を行なう場合の酸
としては、特に限定はないが、例えば、硝酸、硫酸、塩
酸、フッ酸等を挙げることができる。また、上記酸を、
一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いても
よい。
【0064】上記の酸の中でも、硝酸とフッ酸との混
酸、フッ化水素と硝酸とから得られる混酸が特に好まし
い。
【0065】以下、酸によるエッチング処理の一例とし
て、硝酸とフッ酸との混酸もしくはフッ化水素と硝酸と
から得られる混酸を使用する場合について詳細に記載す
る。ただし、本発明における酸によるエッチング処理
は、これに限定されない。
【0066】フッ化水素と硝酸とから得られる混酸を調
製するときのフッ化水素としては、フッ化水素そのもの
を使用することができるし、フッ化水素の水溶液である
フッ化水素酸の形態で使用することもできる。
【0067】上記混酸を使用する場合においては、フッ
化水素と硝酸とから得られる混酸中、フッ化水素が分解
していないと仮定した場合のそのフッ化水素の含有量
は、通常5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%
である。また、この混液中における硝酸濃度としては、
通常5〜65モル%であり、好ましくは15〜60モル
%ある。上記の範囲内で混酸中にフッ化水素と硝酸とが
含有されていると、そのような混酸で処理した基材層上
に密着性良く被覆層を形成することができる。
【0068】上記した範囲内にフッ化水素が含有される
ようにするには、フッ化水素酸を使用するときには、1
0〜50%、好ましくは20〜46%のフッ化水素を含
有するフッ化水素酸が好ましい。また、硝酸としては、
濃度が30〜70%、特に30〜61%である硝酸が好
ましい。実際的見地からすると、フッ化水素と硝酸とか
ら得られる混酸としては、実質的にフッ化水素酸と硝酸
とからなる混合物が好ましく、必要に応じて他の無機
酸、例えば硫酸等を混合してなる混合物を使用すること
もできる。実質的にフッ化水素酸と硝酸とからなる混合
物を採用する場合、フッ化水素および硝酸が前述した含
有量になるようにフッ化水素酸および硝酸それぞれの濃
度を調製するのがよい。
【0069】酸によるエッチング処理としては、通常、
前記酸中に基材を浸漬する手法、基材の表面に前記酸を
スプレイする手法等、各種の方法を採用することができ
る。要するに、中間層を設けるべき基材の所定表面を前
記酸と接触させることができればよいのである。
【0070】前記酸によるエッチング処理の温度として
は、特に限定はないが、例えば、上記混酸を使用する場
合には、通常20〜100℃が好ましく、特に50〜9
5℃が好ましい。処理温度が20℃より低い場合には、
エッチングに時間がかかるため、Co等が十分にエッチ
ングされないことがある。また、処理温度が100℃よ
り高い場合には、基材の表面のエッチングが激しく進行
するため制御性が悪くなる。
【0071】前記酸によるエッチング処理の時間として
は、十分にエッチングが施される限り特に限定はない
が、例えば、上記混酸を使用する場合には、通常0.5
秒〜300秒が好ましく、特に1秒〜120秒が好まし
い。処理時間が0.5秒より短い場合には、エッチング
処理が不十分になる場合がある。また、300秒より長
い場合には、エッチング処理が進み過ぎて基板の強度が
低下する場合がある。
【0072】一方、電解エッチングを行なう場合の電解
液としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸などの無
機酸およびアルコールなどを挙げることができる。これ
らは単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いて
もよい。
【0073】上記電解液の中でも、フッ化水素と硫酸と
アルコールとを有する溶液が本発明の方法には好適であ
る。
【0074】フッ化水素と硫酸とアルコールとを含有す
る溶液を調製するときのフッ化水素としては、フッ化水
素そのものを使用することができるし、フッ化水素の水
溶液であるフッ化水素酸の形態で使用することもでき
る。
【0075】実際的見地からすると、フッ化水素と硫酸
とアルコールとを含有する溶液としては、アルコールに
フッ化水素酸と硫酸とを混合してなる混合物が好まし
く、必要に応じて他の無機酸、例えば硝酸、塩酸等を混
合することもできる。
【0076】以下、電解エッチングの一例として、電解
液をフッ化水素と硫酸とアルコールとを含有する溶液と
した場合について詳細に記載する。ただし、本発明の方
法において採用される電解エッチングは、これに限定さ
れない。
【0077】上記フッ化水素と硫酸とアルコールとを含
有する溶液におけるフッ化水素の濃度は、通常1〜3モ
ル%であり、好ましくは、1〜2モル%である。
【0078】実質的にフッ化水素酸を用いてフッ化水素
と硫酸とアルコールとからなる溶液を調製する場合、混
合後のフッ化水素の濃度が上記濃度範囲になるようにフ
ッ化水素酸を調製して用いるのがよい。
【0079】上記フッ化水素と硫酸とアルコールとから
なる溶液における硫酸濃度としては、通常5〜10モル
%であり、好ましくは6〜8モル%である。
【0080】前記アルコールとしては、この発明の目的
を阻害しない限りにおいては特に制限はないが、例え
ば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル等を挙げることができる。その中でも、特にメタノー
ルが好ましい。
【0081】この場合においては、前記フッ化水素と硫
酸とアルコールとからなる溶液中に、前記基材が正極
に、対向電極が負極になるように、対向電極を設けて前
記基材の表面の電解エッチングを行なう。
【0082】上記電極の材質としては、電解エッチング
中に基材の表面を阻害するような物質例えばガスを発生
するものでなければよく、特に制限はないが、例えば、
ステンレス等を挙げることができる。
【0083】前記電解エッチングにおける電圧は、通常
3〜10Vが好ましく、特に、4〜10Vが好ましい。
電圧が3Vよりも低い場合には、エッチングの速度が遅
く非能率的である。また、電圧が10Vより高い場合に
は、エッチングの速度が早くなり過ぎて制御性が悪く、
必要以上にエッチングすることがある。
【0084】前記電解エッチングにおける電流は、単位
面積当たりの電流が0.01〜5A/cm2 であるのが
好ましく、特に、0.1〜1A/cm2 が好ましい。単
位面積当たりの電流が0.01A/cm2 より小さい場
合には、エッチングが十分に行われない。また、単位面
積当たりの電流が5A/cm2 より大きい場合には、エ
ッチングが進み過ぎて基板の強度の低下を招くことがあ
る。
【0085】前記電解エッチングにおける処理時間は、
前記基材の形状および前記電流の大きさ等により一概に
決定することはできないが、通常0.1〜60分である
のが好ましく、特に1〜30分であるのが好ましい。
【0086】ドライエッチングとしては、例えば、プラ
ズマによるエッチング処理を挙げることができる。
【0087】前記プラズマによるエッチング処理におい
ては、例えば、アルゴン、窒素ガス等の不活性ガス、四
フッ化炭素、水素ガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二
酸化炭素ガス、メタノールガス、水蒸気、あるいはこれ
らの混合物等のプラズマを挙げることができる。そのな
かでも、特にアルゴン、水素ガスおよび酸素ガスが好ま
しい。
【0088】プラズマ化する方法としては、特に制限は
なく、一般的なダイヤモンドあるいはダイヤモンド膜の
気相合成法に利用されるプラズマ化法等の各種の方法に
よるプラズマ処理法が適用可能である。具体的には、例
えば、マイクロ波プラズマCVD法、高周波プラズマC
VD法、熱フィラメント法、ECR法等、あるいこれら
の組み合わせ法等を挙げることができる。これらの中で
も、特に、マイクロ波プラズマCVD法、高周波プラズ
マCVD法等が好ましい。また、後述するダイヤモンド
の気相合成に際して採用されるCVD法と同じCVD法
を採用すると、装置構成上便利である。
【0089】プラズマによりエッチング処理を行なう場
合の反応条件としては、従来通りの条件によって行うこ
とができる。例えば、処理圧力としては、10〜100
torrの範囲内が好ましい。圧力が前記の範囲より高
いと処理の制御性が悪く、また、低いと処理に時間がか
かる。中間層の表面の温度としては、500〜1,10
0℃の範囲内、好ましくは700〜900℃である。温
度が前記の範囲より高いと処理の制御性が悪く、再現性
が悪いし、また、低いと処理に時間がかかる。処理時間
は、1分〜200分、好ましくは60分である。
【0090】本発明の方法においては、上記のようなエ
ッチング処理を行なうことにより、基材上にダイヤモン
ド膜を形成する際に有害な結合相を作る原因になるコバ
ルト等の金属が除去され、しかも基材の表面に凹凸や細
孔が生じる。その結果、後述する気相法によるダイヤモ
ンド膜の合成時に、生成するダイヤモンド膜が表面の凹
凸や細孔に入り込み、基材への密着性に優れたダイヤモ
ンド膜を合成することができるのである。
【0091】ー基材傷付け処理ー 傷付処理としては、基板の表面上に傷を付けることが可
能な方法であれば特に制限はないが、例えば、研磨剤を
アセトン等の有機溶媒中に分散させ、その溶液に基板を
入れて超音波洗浄を行なう方法、研磨剤を塗布した支持
台上に基板を置き、手動で基板と研磨剤とを擦り合せる
手研磨法等を挙げることができる。
【0092】前記傷付処理に用いられる研磨剤として
は、例えば、ダイヤモンド粉、SiC粉等を挙げること
ができる。その中でも、特にダイヤモンド粉が好まし
い。
【0093】上記超音波洗浄を行なう場合、有機溶媒中
における前記研磨剤の分散濃度としては、0.05〜1
0g/100ccであるのが好ましい。研磨剤の分散濃
度が0.05g/100ccより小さい場合には、傷付
の効果が十分ではない。また、研磨剤の分散濃度を10
g/100ccより大きくしても、それ以上の効果は得
られない。
【0094】上記超音波洗浄を行なうときの洗浄時間
は、通常15秒〜2時間が好ましく、特に30秒〜60
分が好ましい。洗浄時間が15秒よりも短い場合には、
基板の表面を十分に傷付けることができないことがあ
る。また、洗浄時間が2時間より長い場合には、その効
果が2時間洗浄を行なった場合に得られる効果と同等で
あり、長く行なったことによる更なる効果は得られない
ことがある。
【0095】上記超音波洗浄を行なう場合、上記超音波
洗浄を行なった後、基板をアセトン等の有機溶媒で数分
間洗浄し、基板上に付着した研磨剤を除去するのが良
い。
【0096】また、上記手研磨法においては、一般的に
は、水もしくはアルコール等の有機溶媒に研磨剤を分散
させ、得られた分散溶液をガラス等の支持台上に塗布す
る。その後、前記分散溶液が塗布された支持台上に基板
をのせ、手動により基板と分散溶液とを擦りあわせて研
磨する。
【0097】上記手研磨法においては、研磨時間は、通
常10秒〜5分が好ましい。研磨時間が10秒より短い
場合には、十分な表面処理を行なうことができない。研
磨時間が5分より長い場合には、必要以上に基板の表面
が傷つき、基板が削りとられることがある。
【0098】(4)ダイヤモンド合成 本願発明においては、基材の表面に、ダイヤンモンド類
の薄層を被覆する。
【0099】ここでいうダイヤモンド類とは、ダイヤモ
ンドの他に、ダイヤモンド状炭素を一部において含有す
るダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素を含む。
【0100】ダイヤモンド類の薄層の形成方法として
は、従来から各種の方法が知られており、特に限定はな
いが、本発明の方法においては、以下に示すように、炭
素源ガスを使用する気相合成法を好適に採用することが
できる。
【0101】上記炭素源ガスとしては、例えば、メタ
ン、エタン、プロパン、ブタン等のパラフィン系炭化水
素;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン系
炭化水素;アセチレン、アリレン等のアセチレン系炭化
水素;ブタジエン、アレン等のジオレフィン系炭化水
素;シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、
シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;シクロブタジエ
ン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳
香族炭化水素;アセトン、ジエチルケトン、ベンゾフェ
ノン等のケトン類;メタノール、エタノール等のアルコ
ール類;このほかの含酸素炭化水素;トリメチルアミ
ン、トリエチルアミン等のアミン類;このほかの含窒素
炭化水素;炭酸ガス、一酸化炭素、過酸化炭素等を挙げ
ることができる。また前記各種の化合物を混合して使用
することもできる。
【0102】これらの中でも、好ましいのはメタン、エ
タン、プロパン等のパラフィン系炭化水素、エタノー
ル、メタノール等のアルコール類、アセトン、ベンゾフ
ェノン等のケトン類、トリメチルアミン、トリエチルア
ミン等のアミン類、炭酸ガス、一酸化炭素であり、特に
一酸化炭素が好ましい。
【0103】なお、これらは一種単独で用いても良く、
二種以上を混合ガス等として併用してもよい。
【0104】また、これらは水素等の活性ガスやヘリウ
ム、アルゴン、ネオン、キセノン、窒素等の不活性ガス
と混合して用いても良い。
【0105】前記ダイヤモンド類の薄層の形成には、公
知の方法、例えば、CVD法、PVD法、PCVD法、
あるいはこれらを組み合わせた方法等、各種のダイヤモ
ンド類薄層気相合成法を使用することができ、これらの
中でも、通常、EACVD法を含めた各種の熱フィラメ
ント法、熱プラズマ法を含めた各種の直流プラズマCV
D法、熱プラズマ法を含めたマイクロ波プラズマCVD
法等を好適に使用することができる。
【0106】ダイヤモンド類の薄層の形成条件として
は、特に制限はなく、前記の気相合成法に通常用いられ
る反応条件を適用することができる。
【0107】例えば、反応圧力としては、通常、10-6
〜103 Torrが好ましく、特に1〜800Torr
の範囲内であるのが好ましい。
【0108】反応圧力が10-6Torrよりも低い場合
には、ダイヤモンド類の薄層の形成速度が遅くなること
がある。また、103 Torrより高い場合には、10
3 Torrの時に得られる効果に比べて、それ以上の効
果がない。
【0109】前記基材の表面温度としては、前記原料ガ
スの活性化手段等により異なるので、一概に規定するこ
とはできないが、通常、300〜1,000℃、好まし
くは、450〜950℃の範囲内にするのがよい。
【0110】この温度が300℃よりも低い場合には、
結晶性のダイヤモンド類の薄層の形成が不十分になるこ
とがある。また、温度が1,000℃を超える場合にお
いては、炭素源ガスの濃度等にもよるが、形成されたダ
イヤモンド類の薄層のエッチングおよびダイヤモンドの
グラファイト化が生じ易くなる。
【0111】反応時間としては、特に限定はなく、ダイ
ヤモンド類の薄層が所望の厚みとなるように、ダイヤモ
ンド類の薄層の形成速度に応じて適宜に設定するのが好
ましい。
【0112】前記基材の表面に形成させるダイヤモンド
類の薄層の厚みは、ダイヤモンド類被覆部材の使用目的
等により異なるので一律に定めることはできないが、工
具の場合、通常は5μm以上、好ましくは、10〜50
μm以上が適当である。ダイヤモンド類の薄層が薄すぎ
る場合には、基材の表面を十分に被覆することができな
いことがある。
【0113】以上のようにして、本発明の方法により、
ダイヤモンド類被覆部材を製造することができる。
【0114】
【実施例】
(実施例1〜3、比較例)WC−5%Co−2.5%T
iC組成のJIS SPGN120308シャープエッ
ヂ形状の切削チップを基材として、実施例1〜3および
比較例についてそれぞれ基材加工および密着性改良処理
を施した。
【0115】すなわち、実施例1については、基材の刃
先部分を機械加工することにより、基材の刃先部分にお
いてすくい面に対して2度の角度で下降するところの、
刃先先端からの寸法(L1)が2mmの傾斜平坦面を形
成し、窒素とアルゴンとを含有する不活性ガス雰囲気
(N2 とArとの混合ガス。ただし、N2 100Tor
r。全圧10気圧)で1,400℃に1時間かけて密着
性向上のための加熱処理をした。
【0116】実施例2については、基材の刃先部分を機
械加工することにより、基材の刃先部分においてすくい
面に対して2度の角度で下降するところの、刃先先端か
らの寸法(L1)が、1mmの傾斜平坦面と、基材の刃
先部分において逃げ面に対して5度の角度で傾斜すると
ころの、刃先先端からの寸法(L2)が1mmの傾斜面
とを形成し、窒素とアルゴンとを含有する不活性ガス雰
囲気(N2 とArとの混合ガス。ただし、N2 100T
orr。全圧10気圧)で1,400℃に1時間かけて
密着性向上処理をした。
【0117】実施例3においては、基材の刃先部分を機
械加工せず、BNのるつぼ中に載置したBN敷板上に前
記基材を収容し、窒素とアルゴンとを含有する不活性ガ
ス雰囲気(N2 とArとの混合ガス。ただし、N2 70
Torr。全圧10気圧)で1,400℃に1時間かけ
て加熱し、刃先からの寸法Lが19.7mmの部分に曲
率半径が5,000mmとなるように反り加工を施し
た。比較例1においては、基材に特に加工をせず、窒素
とアルゴンとを含有する不活性ガス雰囲気(N2 とAr
との混合ガス。ただし、N2 100Torr。全圧10
気圧)で1,400℃に1時間かけて密着性向上処理を
した。
【0118】前記各処理をした後に、下記の条件にてマ
イクロ波プラズマCVD法により、基材の表面にダイヤ
モンド被覆を行なった。マイクロ波プラズマCVD法の
条件を以下に示す。
【0119】時間;8時間 ガス;CO/H2 =30/40、100SCCM リアクター圧力;40Torr 刃先温度;950℃ 基板位置;アプリケター中心からチップすくい面を2m
m下げる。
【0120】得られたダイヤモンド被覆切削チップにつ
いてすくい面の盛り上がりの分布、ダイヤモンド膜の厚
みおよび切削寿命について評価した。以下各評価項目に
ついて説明する。
【0121】ーすくい面の盛り上がりの分布ー ダイヤモンドの被覆により生じた刃先部すくい面の盛り
上がりの高さが、全く同じであるとしても、その分布が
異なれば切削寿命に及ぼす影響は同じではない。
【0122】以下、図4および図5を参照して説明す
る。
【0123】図4および図5は、いづれも刃先部のすく
い面に同じ高さの盛り上がりが生じたダイヤモンド被覆
切削チップの断面図である(図面の表示を簡潔にする目
的でダイヤモンド膜と基材との断面の区別は省略してあ
る。また、ダイヤモンド膜の盛り上がりは、説明のため
に、チップに比べ誇張して示してある。さらに、図4お
よび図5中には、説明のため平坦な板6を示してあ
る)。
【0124】両図のダイヤモンド被覆切削チップを比較
すると、図4のチップの方が明らかに図5のチップに比
べ、より欠けやすいなどの問題を有するため好ましくな
い。
【0125】そのため、この盛り上がりの分布を定量的
に評価するために次式で示される平坦度率を定義し、盛
り上がりの分布を評価した。
【0126】 平坦度率;F=a(S/S0 )×100 (%) ここで、各パラメータは以下のとおりである。Sは、感
圧紙に、すくい面を下にして、チップを押し付けたとき
の変色域の面積であり、SO は、すくい面が平坦なチッ
プを押し付けたときの変色域の面積で代用することので
きるすくい面の面積の計算値である。aは正負の符合を
付けるために用いたパラメータであり、変色域が中心部
の外側にあるとき、すなわちエッヂが中央より盛り上が
っている場合には+1とし、変色域が中心部にある場
合、すなわちが、中心部がエッヂより盛り上がっている
場合にはー1とした。なお、完全に平坦な場合はときに
は、平坦度率100%とした。
【0127】評価結果を表1中にすくい面の平坦度率と
して示した。
【0128】ー刃先部のダイヤモンド膜の厚みー ダイヤモンドカッターにより、チップ断面を切りだし、
SEM観察によりチップ刃先部のダイヤの膜厚を測定し
た。結果を表1中に刃先ダイヤ膜厚として示した。
【0129】ー切削寿命ー 作成したダイヤモンド被覆チップの切削寿命の評価をす
るため、ダイヤモンド被覆チップを工具ホルダーに取り
付け、アルミ合金の円筒長手方向旋削を行なった。切削
速度760m/分、送り0.2mm/rev、切込み
0.7の条件で切削し、逃げ面摩耗幅が最大である30
0μmに達したときの切削距離を測定した。
【0130】切削チップの各コーナーで切削を行ない、
その4つの切削距離の平均値を切削寿命として表1中に
示した。
【0131】
【表1】
【0132】
【発明の効果】本発明によると、導電性を有する基材の
刃先部を、予め特定な形状に加工しておくことにより、
気相法によるダイヤモンド被覆に際し、刃先部のすくい
面に盛り上がりを生じさせることなく、刃先部に重点的
にダイヤモンド被覆をすることができる。その結果、耐
摩耗性およびホルダー等への取り付け安定性に優れ、切
削寿命が著しく向上したダイヤモンド被覆切削工具を得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における面取り加工を示す説明
図である。
【図2】図2は、本発明における面取り加工の一例を示
す説明図である。
【図3】図2は、本発明における面取り加工の他の例を
示す説明図である。
【図4】図4は、本発明における実施例および比較例の
評価方法の説明図である。
【図5】図5は、本発明における実施例および比較例の
評価方法の説明図である。
【符合の説明】
1・・・基材、2・・・すくい面、3・・・逃げ面、4
・・・すくい面に形成した面取り、5・・・逃げ面に形
成した面取り、6・・・板、7・・・ダイヤモンド被覆
切削チップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長佐 宗廣 千葉県袖ケ浦市上泉1660番地 出光マテ リアル株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−271605(JP,A) 特開 昭64−51202(JP,A) 特開 平4−146005(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超硬合金又はサーメットからなる基材の
    すくい面から刃の稜線に向かって下降傾斜する傾斜面を
    形成してなり、前記傾斜面の角度が、すくい面に対して
    1〜30度であり、かつ前記傾斜面の長さが0.25〜
    3mmである基材上に、気相法によるダイヤモンド合成
    を行ってダイヤモンド被覆を形成して成ることを特徴と
    するダイヤモンド被覆切削工具。
  2. 【請求項2】 超硬合金又はサーメットからなる基材の
    すくい面から刃の稜線に向かって下降傾斜する湾曲面を
    形成してなり、前記刃の稜線から形成される前記湾曲面
    のすくい面に向かう長さが0.25〜3mmであり、か
    その湾曲面のRが以下の式を満たす基材に、気相法に
    よるダイヤモンド合成を行ってダイヤモンド被覆を形成
    して成ることを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。 △t=R{1−cos(L/R)} (ただし、△tは基材の刃先のすくい面の表面に被覆さ
    れるダイヤモンド膜の厚みtと基材すくい面の中央部分
    のダイヤモンド膜の厚みt0 との差を示し、Rは湾曲
    面の曲率半径を示し、Lは湾曲面における刃先端からの
    長さを示す。)
  3. 【請求項3】 前記傾斜面を面取り加工により形成する
    請求項1または2に記載のダイヤモンド被覆切削工具
  4. 【請求項4】 前記傾斜面を反り加工により形成する請
    項1〜3の何れか一項に記載のダイヤモンド被覆切削
    工具
JP16484093A 1993-07-02 1993-07-02 ダイヤモンド被覆切削工具 Expired - Fee Related JP3520098B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16484093A JP3520098B2 (ja) 1993-07-02 1993-07-02 ダイヤモンド被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16484093A JP3520098B2 (ja) 1993-07-02 1993-07-02 ダイヤモンド被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0724655A JPH0724655A (ja) 1995-01-27
JP3520098B2 true JP3520098B2 (ja) 2004-04-19

Family

ID=15800925

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP16484093A Expired - Fee Related JP3520098B2 (ja) 1993-07-02 1993-07-02 ダイヤモンド被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3520098B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011162857A (ja) * 2010-02-10 2011-08-25 Nagoya Univ コーティング前処理方法、ダイヤモンド被膜のコーティング方法、および脱膜処理方法
JP5925492B2 (ja) * 2012-01-11 2016-05-25 株式会社Uacj銅管 鋤起こし加工方法及びこの方法に用いる鋤起こし加工用バイト
KR20190060993A (ko) * 2016-09-29 2019-06-04 스미또모 덴꼬오 하드메탈 가부시끼가이샤 절삭 공구

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0724655A (ja) 1995-01-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5363445B2 (ja) 切削工具
RU2111846C1 (ru) Инструмент с алмазным покрытием и способ его изготовления
WO1996034131A1 (fr) Articles possedant un revetement en diamant forme par synthese en phase vapeur
JPWO2008026700A1 (ja) 切削工具及びその製造方法並びに切削方法
KR100193546B1 (ko) 초경질막 피복부재 및 그 제조방법
JPH06158325A (ja) 硬質被覆層の耐摩耗性が向上した表面被覆サーメット製切削工具
EP1253124B2 (en) Highly adhesive surface-coated cemented carbide and method for producing the same
JP4142955B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP3520098B2 (ja) ダイヤモンド被覆切削工具
JP4184712B2 (ja) 被覆された切削工具
JP4880976B2 (ja) 表面被覆切削工具の製造方法
JP3353239B2 (ja) ダイヤモンド類被覆部材の製造方法
EP1175949B1 (en) Coated cemented carbide
JPH0818163B2 (ja) アルミナコ−テイング工具およびその製造方法
JPH0617252A (ja) ダイヤモンド類被覆部材およびその製造方法
JP3212057B2 (ja) ダイヤモンド被覆基体およびその製造方法
JPH04280974A (ja) 窒化ホウ素被覆硬質材料
JPH05220604A (ja) 硬質被覆層の密着性にすぐれた表面被覆切削工具
JP2001341007A (ja) 被覆切削工具
JP2001179504A (ja) 硬質炭素膜被覆工具
JP2000297342A (ja) 表面調質超硬合金、被覆表面調質超硬合金およびその製法
JP2002028803A (ja) 硬質被覆層がすぐれた層間密着性を有する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製スローアウエイ切削チップ
JP2003145312A (ja) 被覆超硬合金工具
JPH0623431B2 (ja) 硬質被膜被覆切削工具部材
JPH0625853A (ja) ダイヤモンド被覆部材の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20020712

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040202

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090206

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090206

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100206

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100206

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110206

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110206

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees