JP3501294B2 - 密封容器入り高濃度コーヒー飲料 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【産業上の利用分野】本発明は、エスプレッソコーヒー
のような、コーヒー豆由来の可溶性固形分（コーヒー成
分）を多量に含有する高濃度コーヒー飲料に係り、更に
詳しくは、コーヒー成分を多量に含有しているにもかか
わらず、長期に亘ってコーヒー成分に由来する沈殿物の
生じない密封容器入り高濃度コーヒー飲料に関する。 【０００２】 【従来の技術】近年、自動販売機の普及によって、年間
を通じて缶や瓶等の容器に密封されたコーヒー飲料が販
売されている。また、これら密封容器入りコーヒー飲料
は、消費者の嗜好の多様化に伴い、様々な種類のものが
開発され、その種類が増加している。そこで、従来のい
わゆるミルク入りコーヒーや、焙煎豆、焙煎度を調整し
たブレンドコーヒーのようなレギュラーコーヒータイプ
の飲料とは異なるタイプの飲料の開発が望まれている。
このような新しいタイプのコーヒーの１つにエスプレッ
ソコーヒーがある。エスプレッソコーヒーは、コーヒー
豆からのコーヒー成分の抽出濃度が高く、コーヒーの風
味が強い飲料であり、コーヒー専門店等で最近人気を集
めている。しかしながら、エスプレッソコーヒー等の高
濃度コーヒー飲料は、密封容器に入れて長期間保存した
り、自動販売機で加温販売した場合、コーヒー成分が沈
殿し、飲料の風味、外観を損なうという問題があった。 【０００３】従来、このような沈殿の発生を防止する方
法としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸
エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、プロ
ピレングリコール脂肪酸エステル等の乳化剤や、カラギ
ナン、キサンタンガム、カゼインナトリウム等の安定剤
を添加する方法がある。しかしながら、この方法では、
上記コーヒー成分に由来する沈殿発生の遅延効果は若干
得られるものの、エスプレッソコーヒーのようにコーヒ
ー成分が多く、また、その保存が長期間に亘る場合に
は、やはり沈殿が発生してしまう。 【０００４】また、その他の沈殿防止方法としては、コ
ーヒー飲料調合時にアルカリ金属塩を添加し、ｐＨを上
昇させることにより沈殿を防止することが行われている
が、コーヒー成分の量が多い場合、沈殿を防止するのに
必要なアルカリ金属塩の添加量も多くなり、その結果、
風味が悪くなってしまう。また、コーヒー成分の他に、
乳成分を含有する場合、一旦乳化された乳成分中の脂肪
球がアルカリ金属塩の塩折現象によって破壊され、コー
ヒー液表面に油滴が浮遊するという問題があった。この
ため、従来のコーヒー飲料は、コーヒー成分の濃度に限
界があり、コーヒーの風味を強調する場合には、香料等
の添加物によって風味を補っているのが現状であり、コ
ーヒー本来の風味とは程遠いものであった。 【０００５】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情に鑑みなされたものであって、コーヒー成分を多量
に含有するエスプレッソコーヒーのような高濃度コーヒ
ー飲料の沈殿の原因について検討を行った結果、沈殿物
の主成分がコーヒー豆由来のヘミセルロースであり、そ
れらが缶や瓶等の容器の底部に堆積し重合することによ
り、沈殿が起こることを見出した。そして、このヘミセ
ルロースの重合、沈殿を阻害できる因子について更に検
討を重ねた結果、繊維素系粘質を添加すると、繊維素系
粘質の方がヘミセルロースより堆積スピードが速く、後
から堆積するヘミセルロースが繊維素系粘質の分子間に
入り、ヘミセルロース同士が接触する頻度が少なくなっ
て重合が阻害され、その結果、ヘミセルロースがコーヒ
ー飲料中に分散し、沈殿が防止できることを見出し本発
明に到達した。 【０００６】本発明の目的は、コーヒー成分を多量に含
有するコーヒー飲料でありながら、長期保存中や加温流
通販売中に、コーヒー成分に由来する沈殿の発生を生じ
ることのない、コーヒー本来の風味を有する密封容器入
り高濃度コーヒー飲料を提供するにある。 【０００７】 【課題を解決するための手段】上記の目的は、コーヒー
豆由来の可溶性固形分を多量に含む密封容器入りコーヒ
ー飲料であって、繊維素系粘質を含有してなることを特
徴とする密封容器入り高濃度コーヒー飲料によって達成
される。 【０００８】以下、本発明を詳説する。本発明に用いら
れるコーヒー飲料は、コーヒー豆由来の可溶性固形分
（コーヒー成分）を比較的多量に含有するものであり、
通常、コーヒー成分が０．９重量％（以下「％」と記
す）以上含有されているものである。 【０００９】また、本発明に用いられる繊維素系粘質
は、セルロースをアルカリ処理して得られるものであ
り、具体的には、結晶セルロース、カルボキシメチルセ
ルロースナトリウム（以下「ＣＭＣ」と記す）、メチル
セルロース等が挙げられる。このうち、特に、結晶セル
ロース、ＣＭＣは、沈殿防止の点でより好適である。ま
た、これらは、単品でも２種以上併用してもよい。 【００１０】また、その添加量は、コーヒー飲料全体重
量中、好ましくは０．０１％以上、更に好ましくは０．
１〜０．２％に設定する。添加量が０．０１％未満の場
合、コーヒー成分の沈殿防止効果が得られにくくなる。
逆に、０．２％を超えると、粘性が出て、コーヒー飲料
の風味が悪くなる傾向にある。 【００１１】本発明の密封容器入り高濃度コーヒー飲料
は、常法に従い、製造すればよい。コーヒーの抽出方法
は、コーヒー豆を焙煎、粉砕した後、ドリップ式、サイ
ホン式、ジェット式、あるいはカウンターカレント方式
等の従来用いられている方法が挙げられ、これらの方法
により、コーヒー成分を多量に含有するコーヒー抽出液
を得る。また、上記方法により抽出した抽出液の濃縮
液、乾燥物等を適宜用いてもよい。 【００１２】次に、上記コーヒー抽出液に、繊維素系粘
質と、必要に応じて、甘味料、乳製品、油脂、乳化剤、
安定剤、アルカリ金属塩、着色料、着香料等を適宜添
加、混合し、缶、瓶、紙パック等の容器に充填、密封
し、レトルト殺菌することにより、本発明のコーヒー飲
料が得られる。または、焙煎したコーヒー豆を必要に応
じて粉砕し、密封容器中に水と共に充填・殺菌し、密封
容器中で抽出を行うようにしたものでもよい。上記のよ
うにして得られた密封容器入り高濃度コーヒー飲料は、
繊維素系粘質の添加により、コーヒー成分が飲料中に分
散しており、沈澱を防止することができる。 【００１３】 【発明の効果】以上のように、本発明の密封容器入り高
濃度コーヒー飲料は、コーヒー成分が多量に含有されて
いるにもかかわらず、繊維素系粘質の添加によって、コ
ーヒー成分の沈殿が防止され、長期保存や加温流通販売
によっても沈殿の発生を安定して防止することができ
る。従って、従来、コーヒー専門店等でしか味わうこと
のできなかったエスプレッソコーヒーのようなコーヒー
の風味の強いコーヒー飲料を消費者が手軽に購入するこ
とができる。また、繊維素系粘質がコーヒー飲料の風味
に影響することがないので、コーヒー本来の風味を生か
しつつ、様々な風味に設計することができる。また、従
来の製造方法、製造設備を用いて簡易に製造することが
できる。 【００１４】次に、本発明を実施例を挙げて具体的に説
明する。 （実施例１〜８、比較例１〜３）焙煎したコーヒー豆
を、ドリップ抽出機で常法に従い抽出を行い、可溶性固
形分２．０％の抽出液を得た。この抽出液に表１に示す
原料を添加し、重曹によってｐＨを調製して調合液を得
た。次に、この調合液を６０〜６５℃に加温し、均質機
（イズミフードマシナリー社製）を用い、１５０Ｋｇ／
cm² の圧力で均質化を行った。その後、８５℃に昇温
し、缶に充填、巻き締めを行い、オートクレーブで殺菌
（１２１℃、２５分）してコーヒー飲料を得た。 【００１５】得られたコーヒー飲料を、６０℃もしくは
室温にて保存し、６０℃保存品については１か月後、室
温保存品については６か月後に開缶し、製造直後品をコ
ントロールとして、沈殿物、脂肪の浮遊物の発生有無及
び風味を専門パネラー２０名にて官能評価した。その結
果を表１にあわせて示す。 【００１６】 【表１】【００１７】以上の結果から、実施例品はいずれも加温
していたり、乳成分が添加されていたりするにもかかわ
らず、長期間に亘ってコーヒー成分由来の沈殿物や脂肪
の浮遊物が認められなかった。これに対し、比較例品
は、沈殿が生じた。また、乳成分を含有したもの（比較
例３）は、脂肪の浮遊物が生じた。

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−190166（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−65139（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−311378（ＪＰ，Ａ) 月刊フードケミカル Ｎｏ．３, 1992，ｐ129−135 Ｎｅｗ Ｆｏｏｄ Ｉｎｄｕｓｔｒ ｙ，Ｎｏ．33，Ｎｏ．９，1991，ｐ６− 11 (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A23F 5/00

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 コーヒー豆由来の可溶性固形分を多量に
   含む密封容器入りコーヒー飲料であって、繊維素系粘質
   を含有してなることを特徴とする密封容器入り高濃度コ
   ーヒー飲料。