JP3462129B2 - ポリオレフィン系樹脂多層延伸フィルム - Google Patents

ポリオレフィン系樹脂多層延伸フィルム

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JP3462129B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はストレッチあるいは
ストレッチシュリンク包装等の各種包装用途に好適に用
いられるポリオレフィン系樹脂延伸フィルムに関し、特
に突上型や直線型等の自動包装機によるストレッチある
いはストレッチシュリンク包装に適したポリオレフィン
系樹脂延伸フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ストレッチあるいはストレッチシュリン
ク包装用フィルムに対する要求特性としては、ハンド包
装や自動機械包装(以下、単に機械包装と記す)におけ
る包装適性と、フィルムの光沢性、防曇性、押込回復性
等のディスプレー効果などが挙げられる。このうち包装
適性に関する重要なフィルム物性としては、ストレッチ
性すなわち適度な破断伸びと適度な伸び応力、及び熱シ
ール性すなわちフィルム同士に実用的な融着が起こるシ
ール開始温度(シール下限温度)からフィルムにメルト
ホールが発生する温度までの熱シール温度範囲が広く、
均一かつ十分にシールされ、またトレー下面のシール箇
所が盛り上がらず平滑になることが挙げられる。また、
機械包装においてはフィルムを適正長さに刃を用いカッ
トするためのカット性や送りベルトによるフィルムの搬
送性も挙げられる。また、ストレッチシュリンク包装に
おいてはフィルムの弛みを除去するための適度な熱収縮
率も挙げられる。
【0003】軟質延伸ポリプロピレンフィルムとして、
例えば特開平8−12772号公報や特開平8−323
856号公報では低結晶性すなわちアイソタクティシテ
ィ・インデックスの低いポリプロピレン系延伸フィルム
が開示されている。これにより、耐熱性・柔軟性・透明
性に優れるフィルムが得られるとしている。しかし、こ
れらの従来技術においては以下に記すようにストレッチ
あるいはストレッチシュリンクフィルムとしての要求を
十分に満たしたものであるとは言えない。
【0004】上記従来技術をそのまま応用したときには
柔軟性は確かに発現されるが、特に厚みが約15μm以
下のフィルムにおいて引裂伝播強度を満足させるに至ら
ない。更に熱収縮性においても何ら示唆がなされておら
ず、ストレッチ包装における熱シール時のトレイ側面の
皺の除去のしやすさやシール部位の平滑化やストレッチ
・シュリンク包装によりフィルムを熱収縮させてトレー
上面の皺を除去することに関する工夫が見られない。
【0005】また、多層構造をとることを何ら示唆して
おらず、ここで述べられている耐熱性は単にメルトホー
ルが生じるときの温度が高いことについてだけであり、
ストレッチフィルムにおける熱シール性における熱シー
ル温度下限からフィルムのメルトホール発生温度までの
温度範囲の広さが不十分である。また、ポリプロピレン
系樹脂層が内層に無いときに比べ、特に更なる柔軟性・
引裂伝播強度付与のために他の樹脂を混合したときの光
学特性の悪化が甚だしいものとなる。
【0006】ここで、突上型包装機の包装の工程の一例
を説明する。 (ア)フィルムの両端をフィルムガイドベルトに挟み込
みフィルムロールから縦方向(以下、MDと記す)にフ
ィルムを繰り出す。 (イ)その後、フィルム長さが一定長になったところで
フィルムにカット刃が突き上げるようにしてフィルムの
繰り出し方向に対し直角方向(以下、TDと記す)にミ
シン目を入れ、フィルムをMDに引っ張ることによりミ
シン目をTDに伝播させてカットする。
【0007】(ウ)さらにベルトによりフィルムが被包
装物突き上げ部まで搬送される。 (エ)被包装物(トレー)がフィルムに対し突き上げな
がらフィルムをストレッチ状態にすることによりトレー
の上面の皺を取り除きつつ、トレーの下部にフィルムを
折込み、 (オ)最後に熱板上にトレーの底面を押し付けることに
よって、熱シールを行い包装工程を終了する。
【0008】(カ)更にシュリンク包装させる場合は、
熱風トンネルに包装物を通すことにより、フィルムを熱
収縮させ、包装物のフィルム皺を取り除く。ここで重要
なのはフィルムの引裂伝播強度が弱いと(イ)の工程で
フィルムにミシン目を入れる際、フィルムのMDにもノ
ッチが入る。その時、(エ)の工程でフィルムをストレ
ッチした際、MDのノッチが起点となってノッチが伝播
してフィルムがちぎりとられフィルム屑が発生し、ベル
トに屑が残った状態になってしまう。
【0009】一方、フィルムの引裂伝播強度が強すぎる
場合には、(イ)の工程でミシン目が入らなかったり、
入ったとしても、TDに引裂伝播せず完全にカットでき
ないままフィルムが搬送されてしまうこともある。包装
機械の種類、被包装物の形状や包装条件にも大きく左右
されるが、一般にフィルムのちぎれ屑の抑制とカット性
を両立させるフィルムの引裂伝播強度は縦方向、横方向
ともに10〜200g、好ましくは20〜150g、最
も好ましくは30〜100gである。引裂伝播強度が1
0g未満であるとちぎれ屑量が多くなり、一方、引裂伝
播強度が200gを越えるとカット性が不良となる傾向
にあり、いずれも包装に支障をきたすレベルとなる。ま
た、熱収縮率が小さいと(オ)の工程で熱シール時の熱
により熱シール部やその周辺部の熱収縮が不足し、トレ
ーが下部が膨らんだ感じになる。更に(カ)の工程では
十分にフィルムのたるみを除去できす、皺が残ったまま
になってしまう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ストレッチ
包装やストレッチ・シュリンク包装、特に包装機械によ
るストレッチ包装性に優れるフィルムを提供することに
あり、より具体的には、従来のフィルムの特徴である柔
軟性を維持または更に向上した状態で、フィルムのカッ
ト性やフィルムストレッチ時の耐破れ性の向上すなわち
フィルムのちぎれ屑の発生抑制に優れ、熱収縮性や、熱
シール性、光学特性にも優れたフィルムを提供すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、内層が、プロ
ピレン単独重合体またはプロピレン・αオレフィン(炭
素数2または4〜12)ランダム共重合体からなり、下
記(1)式及び(2)式を満足する、ポリプロピレン系
樹脂を含有し、該内層中には、前記ポリプロピレン系樹
脂10〜90重量%、及びエチレン含量が2〜10mo
l%のブテン−1・エチレン共重合体90〜10重量%
からなり、ポリプロピレン系樹脂を最も多量に含有し、
下記(3)式を満足する、耐熱層を含み、多層フィルム
として、引裂伝播強度が10〜200gで、下記(4)
式を満足することを特徴とするポリオレフィン系樹脂多
層延伸フィルム。 0.5g/10分≦MFR≦20g/10分 (1) 沸騰n−ヘプタン抽出量=20〜90重量% (2) 3%≦Xch≦20% (3) (但しXchとは後述する示差走査熱量法(DSC)で
測定された結晶化度の内、上記耐熱層中のポリプロピレ
ン系樹脂に基づく結晶化度。) 1%≦Xc≦10% (4) (但しXcとは後述する示差走査熱量法(DSC)で測
定されたフィルム全体の結晶化度の内、多層フィルムに
含まれるすべてのポリプロピレン系樹脂に基づく結晶化
度。)以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】一般に延伸フィルムにおいては延伸という
工程によりフィルムに適当な配向が形成され、その結果
フィルムに適度な伸び荷重と引裂伝播強度が付与され
る。本発明においては、この配向に関して高融点樹脂
(耐熱樹脂)であるポリプロピレン系樹脂のアイソタク
ティシティならびに結晶化度に着目し、延伸との関わり
について鋭意検討した結果、包装時のフィルムのちぎれ
屑の抑制と、カット性を両立し、さらに熱収縮率や熱シ
ール性や光学特性に優れる範囲があることをつきとめる
に至ったものである。特にポリプロピレン系樹脂を含有
する層の内、ある一定範囲量以上の最もポリプロピレン
系樹脂を多量に含有する層(耐熱層またはH層と記す)
が物性に大きな影響を与える。
【0013】先ず実施例と比較例を用いて、本発明が従
来技術に比較して優れていることを以下に説明する。本
発明のフィルム(実施例1,実験No.1)は、耐熱層
をTPO5(出光石油化学社製TPO E2700)と
ポリブテン−1(PB)のブレンド物とし、更にスキン
層と中間層をポリエチレン系樹脂としたものであるが、
ちぎれ屑発生抑制やカット性のための指標を示す引裂伝
播強度が縦方向/横方向で示すと20/15gであり、
100パック包装しても屑の発生量が1g未満で許容範
囲であり、カット面も綺麗であった。更に包装後のフィ
ルム皺も無く、熱シール性は良好であり、光沢性等の外
観も優れている。このフィルムの物性を縦方向/横方向
で示すと100℃における熱収縮率は45/30%、1
20℃における熱収縮率は65/55%、破断伸びは5
50/600%であった。
【0014】これに対し従来のフィルム(比較例1の実
験No.2)は上記TPO5の単独単層フィルムとした
ものである。引裂伝播強度が縦方向/横方向で示すと5
/3gであり、同様な包装作業を行うと、5gの屑が発
生した。また包装中に機械が停止することも5回発生し
た。更にフィルム破れによりリパックする必要性の生じ
た被包装物も18個発生した。また熱シール性と光沢性
が大幅に悪いものとなった。このフィルムの物性を縦方
向/横方向で示すと100℃における熱収縮率は40/
30%、120℃における熱収縮率は60/55%、破
断伸びは180/280%であった。
【0015】更に従来のフィルム(比較例1の実験N
o.3)はダイレクトインフレーションにより得られた
TPO5の単独単層フィルムである。引裂伝播強度が縦
方向/横方向で示すと40/100gと大きいが屑は1
g未満の発生であった。また、カット面が綺麗ではな
く、カット性に若干難があった。また包装後のフィルム
皺はかなり残っており、フィルムの張りも不足してい
た。また光沢性に関しては実験No.2以上に悪かっ
た。このフィルムの物性を縦方向/横方向で示すと10
0℃における熱収縮率は20/3%、120℃における
熱収縮率は25/5%、破断伸びは370/480%で
あった。
【0016】以上のことから本発明のフィルムは従来技
術のポリプロピレン系樹脂単独層を単層で用いたフィル
ムに比べストレッチあるいはストレッチシュリンク包装
フィルムとして優れていることが分かる。以下に本発明
のフィルムは、ポリプロピレン系樹脂のMFR(JIS
K7210に準拠して、温度が230℃で、荷重が2.
16Kgの条件)が0.5〜15g/10分であること
が必要なことを説明する。
【0017】本発明のフィルムの例として挙げられる実
験No.22は、MFR=12g/10分のポリプロピ
レン系樹脂を用いたものである。本発明の別のフィルム
例であるMFR=1.5g/10分のポリプロピレン系
樹脂を用いた実験No.21に比べ製膜安定性が劣って
いたが許容範囲であった。またカット性も若干悪化した
が許容範囲であった。これに対し比較対照例である実験
No.23はMFR=30g/10分のポリプロピレン
系樹脂としたものであるが、ダイレクトインフレーショ
ンによる製膜が不可能であった。
【0018】以上のことから耐熱樹脂のMFRが0.5
〜15g/10分であることが必要であることが分か
る。すなわち、MFRが0.5g/10分より小さい場
合、得られた延伸フィルムは配向が掛かり過ぎて、結果
としてフィルムは引裂伝播強度が小さくなり、且つ破断
伸びが小さいストレッチ性に劣ったフィルムになる傾向
にある。MFRが20g/10分より大きい場合、ダイ
レクトインフレーションによる製膜が困難になる。ま
た、グロスが悪化し、特にポリプロピレン系樹脂がフィ
ルムのMDに筋状に分散するため、フィルムのTDのグ
ロスが悪化する傾向にある。
【0019】MFRは一般には0.8〜15g/10
分、好ましくは1.2〜10、最も好ましくは2.3〜
8.5g/10分である。次に、本発明が従来技術に対
して包装時のフィルムのちぎれ屑発生の抑制に優れてい
ることを、本発明のフィルムと従来のフィルムとを突上
型包装機による機械包装を行った場合の違いについて詳
細に説明する。本発明のフィルムは、DSC法で測定さ
れた結晶化度の内、ポリプロピレン系樹脂を最も多量に
含有する層中のポリプロピレン系樹脂に基づく結晶化度
をXchとしたときに3%≦Xch≦20%となる耐熱
層を含有することが必要なことを実施例と比較例を用い
て説明する。
【0020】本発明のフィルムのうちXchを7.7%
とした例(実施例1,実験No.1に対応)では引裂伝
播強度が20/15gであったのに対し、Xch=3.
8%とした例(実施例2の実験No.8に対応)は引裂
伝播強度が35/28gであった。この本発明のフィル
ム(実施例2の実験No.8)で包装を行った場合には
100パック包装しても屑の発生量が0.0gであっ
た。製膜安定性は許容できる下限程度となった。
【0021】更にXch=2.8%とした比較対照フィ
ルム(比較例2の実験No.10に対応)は樹脂の配向
張力が不足し、延伸フィルムを得るのが困難であった。
一方、Xch=18.8%とした本発明のフィルム(実
施例2の実験No.5に対応)は引裂伝播強度が15/
10gであった。この本発明のフィルム(実施例2の実
験No.4)で包装を行った場合には100パック包装
しても屑の発生量が1.8gであり屑の発生が若干気に
なるが継続使用が可能なレベルであり、またカット面も
綺麗であった。
【0022】更にXch=30.6%とした比較対照フ
ィルム(比較例2の実験No.9に対応)は引裂伝播強
度が8/7gであり、同様な包装作業を行うと、3gの
屑が発生した。また包装中に機械が停止することも4回
発生し、継続使用が不可能の範囲であった。更にフィル
ム破れによりリパックする必要性の生じた被包装物も1
5個発生した。
【0023】以上のことから耐熱層内の耐熱樹脂に由来
する結晶化度のXchは3〜20%であることが必要で
あることが分かる。すなわち、Xchが3%より小さい
場合、樹脂の配向張力が殆ど掛からなくなり、原反の引
き取りや延伸が困難となる。また、機械のカット性も悪
くなる傾向にある。Xchが20%より大きい場合、得
られた延伸フィルムは配向が掛かり過ぎて、結果として
フィルムは引裂伝播強度が小さくなる。更に破断伸びが
小さいストレッチ性に劣ったフィルムになる傾向にあ
る。
【0024】また、Xchは一般には4〜18%、好ま
しくは5〜16%、最も好ましくは7〜10%である。
次に、本発明のフィルムのフィルム全体の結晶化度の
内、耐熱樹脂に基づく結晶化度をXcと定義したとき、
1%≦Xc≦10%とすることが同時に必要であること
を実施例と比較例を用いて説明する。本発明のフィルム
例のうちXcを2.3%としたもの(実施例1,実験N
o.1に対応)は引裂伝播強度が20/15gであった
のに対し、Xc=1.7%とした本発明のフィルム例
(実施例3の実験No.11に対応)は引裂伝播強度が
35/30gであった。
【0025】この本発明のフィルム(実施例3の実験N
o.11)で包装を行った場合には100パック包装し
ても屑の発生量が0.0gであった。製膜安定性は許容
できる下限程度であった。更にXc=0.9%とした比
較対照フィルム(比較例3の実験No.13に対応)は
樹脂の配向張力が不足し、延伸フィルムを得るのが困難
であった。一方、Xc=9.0%とした本発明のフィル
ム(実施例3の実験No.12に対応)は引裂伝播強度
が15/10gであった。
【0026】この本発明のフィルム(実施例3の実験N
o.12)で包装を行った場合には100パック包装し
ても屑の発生量が1.8gであり屑の発生が若干気にな
るが継続使用が可能なレベルであり、またカット面も綺
麗であった。更にXc=10.5%とした比較対照フィ
ルム(比較例3の実験No.14に対応)は引裂伝播強
度が6/5gであり、同様な包装作業を行うと、3gの
屑が発生した。また包装中に機械が停止することも4回
発生し、継続使用が不可能の範囲であり、フィルム破れ
によりリパックする必要性の生じた被包装物も15個発
生した。
【0027】以上のことからXcは1〜10%であるこ
とが必要であることが分かる。すなわち、Xcが1%よ
り小さい場合、樹脂の配向張力が殆ど掛からなくなり、
原反の引き取りや延伸が困難となる。また、機械のカッ
ト性も悪くなる傾向にある。Xcが10%より大きい場
合、得られた延伸フィルムは配向が掛かり過ぎて、結果
としてフィルムは引裂伝播強度が小さくなり、且つ破断
伸びが小さいストレッチ性に劣ったフィルムになる。X
cは一般には1〜6%、好ましくは1.3〜4.5%、
最も好ましくは2.0〜4.0%である。
【0028】次に本発明のフィルムは、ポリプロピレン
系樹脂のアイソタクティシティと相関がある沸騰n−ヘ
プタン抽出量が20〜90重量%であることが必要なこ
とを実施例と比較例を用いて説明する。Xch=12.
2%、Xc=3.2%とし、沸騰n−ヘプタン抽出量=
62wt%,fmmmm=40モル%のTPO1を用い
た本発明のフィルムの一例(実施例4の実験No.19
に対応)は引裂伝播強度が20/15gであった。
【0029】更に上述したXch=18.8%、Xc=
5.6%とし、上記TPO1を用いた本発明のフィルム
(実施例2の実験No.5)も引裂伝播強度が15/1
0gであるが、これらのフィルムで包装を行った場合に
は100パック包装しても屑の発生量が1〜2gであり
屑の発生が若干気になるが継続使用が可能なレベルであ
り、またカット面も綺麗であった。これに対し、Xch
=11.6%、Xc=4.6%とし、沸騰n−ヘプタン
抽出量=9wt%,fmmmm=91モル%のPPを用
いた比較対照フィルム(比較例4の実験No.20に対
応)は引裂伝播強度が9/8gであり、同様な包装作業
を行うと、3gの屑が発生した。また包装中に機械が停
止することも4回発生し、継続使用が不可能の範囲であ
った。更にフィルム破れによりリパックする必要性の生
じた被包装物も15個発生した。またPPの分散不良と
思われる筋がフィルムに見られ、外観に問題があるもの
となった。
【0030】以上のことからポリプロピレン系樹脂の沸
騰n−ヘプタン抽出量=20〜90重量%であることが
必要であることが分かる。すなわち、沸騰ヘプタン抽出
量=20重量%より小さい場合、得られた延伸フィルム
は配向が掛かり過ぎて、結果としてフィルムは引裂伝播
強度が小さくなる。更に破断伸びが小さいストレッチ性
に劣ったフィルムになる傾向にある。また、他樹脂とブ
レンドした場合、相溶性が悪くなり、フィルムに筋が発
生し、光沢が悪化する等のフィルムの外観が悪化する。
一方、沸騰n−ヘプタン抽出量=90重量%より大きい
場合、樹脂の配向張力が殆ど掛からなくなり、原反の引
き取りや延伸が困難となる。また、機械のカット性も悪
くなる。
【0031】また、沸騰n−ヘプタン抽出量は一般には
30〜90重量%、好ましくは55〜90重量%、最も
好ましくは60〜90重量%である。以上のことから本
発明のフィルムが従来のフィルムに比べて包装時のフィ
ルムのちぎれ屑発生の抑制に優れ、カット性も両立して
いることが分かる。なお、本発明のフィルムをストレッ
チフィルムとして使用する場合は必ずしもフィルムの熱
収縮作用を積極的に発現させる必要はないが、本発明の
フィルムは延伸されて得られる故に「耐熱樹脂の融点−
10℃」にフィルムを加熱することにより、少なくとも
一方向に5%以上の熱収縮率を持つフィルムを得ること
ができる。更にストレッチ・シュリンクフィルムとして
使用する場合は、120℃におけるフィルムの縦方向・
横方向が20%以上であることが一般的である。またこ
のようなフィルムはストレッチ包装の際にも底シール部
の盛り上がりがなくなり平滑になる。
【0032】本発明において使用されるポリプロピレン
系樹脂は、具体的にはプロピレン単独重合体、プロピレ
ン・エチレン・ランダム共重合体、プロピレン・エチレ
ン・αオレフィン(炭素数4〜12)・ランダム共重合
体、プロピレン・αオレフィン(炭素数4〜12)・ラ
ンダム共重合体が挙げられる。本発明において使用され
るプロピレン単独重合体(以下、HPPと記す)やプロ
ピレン・エチレンランダム共重合体(以下、RPPと記
す)は、上述のようにそれらのアイソタクティックポリ
プロピレン成分(以下、iPPと記す)のアイソタクテ
ィシティを特定範囲にしたものであり、iPP成分量の
指標となるものにポリプロピレン系樹脂の沸騰n−ヘプ
タン抽出量を挙げられる。一般に、沸騰n−ヘプタン抽
出成分はアイソタクティックPP成分以外の成分(主と
して非晶成分)を主成分とし、延伸したときにアイソタ
クティックPP成分のように強く配向しない傾向にあ
り、本発明の目的を達成を達成するための配向の調整が
容易である。また、沸騰n−ヘプタン抽出成分は低分子
量のアイソタクティック成分も含有されるが、これも高
分子量のアイソタクティック成分とは異なり、延伸した
ときに高分子量のアイソタクティックPP成分のように
強く配向しない傾向にある。
【0033】ポリプロピレン系樹脂の好ましい具体例と
しては「リアクターTPO」と言われているiPPの沸
騰n−ヘプタン抽出量が20〜90重量%である出光石
油化学社製出光TPOの透明タイプ等やハンツマン社製
FPOのWL100番台等のHPPに属するもの、同社
製FPOのWL200番台等のRPPに属するものが挙
げられる。これらは、EPCとiPPが明瞭な海島構造
を持つプロピレン・エチレンブロックコポリマー(以
下、BPPと記す)系リアクターTPOとは異なるもの
であり、このBPP系TPOに比べHPPあるいはRP
P系リアクターTPOは他樹脂とブレンドした際に相溶
性が優れ、その結果、光学特性や引裂伝播強度等に優れ
る。
【0034】なお、沸騰n−ヘプタン抽出量は“新版
高分子分析ハンドブック”,p613−614,株式会
社 紀伊國屋書店(1995)記載の方法に準じて行っ
た。即ちソックスレー抽出器を用い、約3mgのパウダ
ー状もしくはフィルム状サンプルを円筒濾紙に入れ、約
100mlのn−ヘプタンを用いて抽出を8時間行い、
抽出量の割合を求めた。上述の沸騰n−ヘプタン抽出量
が特定範囲のポリプロピレン系樹脂のうち、更に好まし
いポリプロピレン系樹脂はアイソタクティックペンタッ
ド分率(fmmmm)が10〜75モル%であるHPP
系おるいはRPP系のポリプロピレン系樹脂である。こ
のような樹脂としては例えば特公平7−103173号
公報で示されたマグネシウム、4価のチタン、ハロゲン
及び芳香族ジカルボン酸ジエステルを必須成分として含
有する固体触媒、有機アルミニウム化合物、アルコキシ
基含有芳香族化合物を触媒として一段重合で得られるプ
ロピレン重合体、あるいは特許第2912483号公報
で示された特定割合で電子供与剤を加えずに共微粉砕さ
れたハロゲン化マグネシウム担持基材、トリハロゲン化
アルミニウム、テトラハロゲン化チタンと助触媒として
トリアルキルアルミニウムからなる触媒系により一段重
合により得られるプロピレンホモポリマーなどが挙げら
れている。これらのリアクターにより生成されるものは
例えばHPPやRPPとポリプロピレンワックスや低結
晶性あるいは非晶性ポリプロピレンとのブレンドしたも
のとは明確に異なり、このものよりも遙かに両者の分散
性が高くなりことで光学特性が優れ、また、非晶成分が
高分子量で適度な配向張力を持ち、製膜性がはるかに優
れるものとなり、樹脂構成の自由度が大幅に広がる点で
好ましい。更に適当な引裂伝播強度を得るためにも有利
である。
【0035】具体例としては出光石油化学社製出光TP
Oの透明タイプやハンツマン社製FPO(WL100番
台、WL200番台)であり、これらは透過型電子顕微
鏡において非晶成分(主としてアタクティックPP成
分)の海の中に結晶ラメラ(主としてアイソタクティッ
ク成分)が細かく分散して浮いているように観察され
る。また、これらの樹脂の中で一般的にはfmmmmは
20〜75モル%で、更に好ましいfmmmmは25〜
55モル%であり、最も好ましいfmmmmは30〜4
5モル%である。更にこれらの内、耐熱性の観点よりH
PPが好ましい。
【0036】アイソタクティックペンタッド分率はA.
ZambelliらによってMacromolecul
es,6,925(1973)に発表された方法に従
い、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−N
MR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中の
ペンタッド単位でのアイソタクティック分率である。換
言すれば、アイソタクティックペンタッド分率はプロピ
レンモノマー単位が5個連続してメソ結合したプロピレ
ンモノマー単位の分率である。但し、ピークの帰属に関
してはMacromolecules,8,687(1
975)に記載の上記文献の改正版に基づいて行った。
具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域
の全吸収ピークの強度分率をもってアイソタクティック
ペンタッド単位を測定する。なお、RPPにおいてはこ
のメチル炭素領域においてエチレン単位に隣接するプロ
ピレン単位のメチル炭素のピークがそれ以外のメチル炭
素ピークと重なる。エチレン単位含有量が約3モル%以
内のRPPについてはアイソタクティックペンタッド分
率に与える影響が小さいので、そのピークも含めてHP
Pと同様にRPPのアイソタクティックペンタッド分率
を算出する。
【0037】耐熱樹脂は熱シール性の観点より一般には
融点が140℃以上、好ましくは150℃、最も好まし
くは154℃以上のポリプロピレン系樹脂である。一
方、本発明においてはXchを3〜20%とするため
に、ポリプロピレン系樹脂を10〜90重量%、に対
し、ポリエチレン系樹脂および/又はポリブテン−1系
樹脂を90〜10重量%をブレンドするのが一般的であ
る。また、耐熱層中のポリプロピレン系樹脂の含有量は
一般には10〜90重量%、好ましくは15〜65重量
%、最も好ましくは20〜50重量%である。
【0038】この際、ポリプロピレン系樹脂とブレンド
する樹脂は延伸時の結晶配向が生じにくい樹脂が使用さ
れる。この内、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が良
く、結晶化速度が遅く、その結果出来たフィルムの透明
性を低下させないという観点より、ポリブテン−1系樹
脂(以下、PBと記す)が好ましい例として挙げられ
る。PBとしてはポリブテン−1単独重合体、ブテン−
1・エチレン共重合体、ブテン−1・プロピレン共重合
体、ブテン−1・αオレフィン(炭素数5〜12)共重
合体があげられる。その中でも好ましくはブテン−1・
エチレン共重合体あるいはブテン−1・プロピレン共重
合体であり、さらに好ましくはエチレン含有量が2〜1
0mol%のブテン−1・エチレン共重合体あるいはプ
ロピレン含有量が10〜30mol%のブテン−1・プ
ロピレン共重合体である。この好ましい樹脂の一例とし
ては三井化学社製タフマーBLが挙げられる。PBの好
ましいMI(JISK7210に準拠して、温度が19
0℃で、荷重が2.16Kgの条件)は1.5g/10
分以上で、特に好ましくは3〜6g/10分である。
【0039】またフィルムの押込回復性を向上させるた
めに、耐熱樹脂に密度が0.902g/cm3以下のエ
チレン−αオレフィン共重合体をブレンドしても良い。
好ましくは密度が0.880g/cm3以下、さらに好
ましくは密度が0.865〜0.875g/cm3のも
のである。また、フィルムの押込回復性を向上させるた
めに、非晶質ポリオレフィンブロックと結晶性ポリオレ
フィンブロックからなるブロック共重合体もブレンドし
ても良い。一例としては日本合成ゴム社製DYNARO
N・ CEBC等が挙げられる。
【0040】また、ミネラルオイルやポリオレフィンワ
ックス等を本発明の目的を阻害しない範囲で添加しても
よい。本発明のフィルムは多層構成をとり熱シール特性
や光学特性の観点より耐熱樹脂を含む層(H層)を内層
とすることが必要である。H層にはスキン層(S層)や
中間層(I層)等を積層させることができる。ここで本
発明のフィルムのS層を構成するのに好適な樹脂につい
て説明する。
【0041】S層はフィルムにシール性、光沢、防曇
性、滑り性等のフィルムの表面特性を付与することがで
きる。S層は融点が100℃以下のエチレン系共重合体
が好ましく使用される。具体的には、例えばエチレン・
αオレフィン(C数3〜12)共重合体、又はビニルエ
ステル単量体、脂肪族不飽和モノカルボン酸、該モノカ
ルボン酸・アルキルエステル誘導体から選ばれる単量体
とエチレンとの共重合体でエチレン・酢酸ビニル共重合
体、エチレン・アルキルアクリレート共重合体、エチレ
ン・アルキルメタクリレート共重合体、エチレン・アク
リル酸共重合体等が挙げられる。さらに好ましくは、防
曇剤との相溶性やフィルムのストレッチ性の点で酢酸ビ
ニル含量が10〜20重量%のエチレン・酢酸ビニル共
重合体(以下、EVAと記す)またはメタロセン系触媒
やヴァナジウム触媒等により重合された密度が0.86
5〜0.910g/cm3のエチレン・αオレフィン共
重合体の中から選ばれる。
【0042】また溶融押出時のメルトテンションによる
樹脂の配向バランスから、上記エチレン系共重合体のM
Iは一般に0.5〜20g/10分であり、好ましくは
MIは1〜12g/10分であり、更に好ましくは1.
5〜8g/10分である。また防曇性を付与するため
に、防曇剤として界面活性剤を各層に添加することがで
きるが、一般にはノニオン系界面活性剤あるいはHLB
が12以上のポリオキシエチレン脂肪酸エステルをS層
に対し0.5〜5重量%添加される。具体的にはS層の
樹脂にモノグリセリン脂肪酸エステル及び/又はジグリ
セリン脂肪酸エステルを1〜3重量%及び/又はポリオ
キシエチレン脂肪酸エステルを0.5〜1.5重量%添
加したものが挙げられる。
【0043】また、S層にはミネラルオイルやポリオレ
フィンワックス等の可塑剤、紫外線吸収剤、銀系抗菌
剤、ヒノキチオールやワサビ抽出物及びキトサン等の鮮
度保持剤、脂肪酸アミド等の滑剤等の添加剤を添加でき
る。さらに本発明において、中間層(以下、I層と記
す)を設けることができる。中間層には密度0.865
〜0.910g/cm3のエチレン・αオレフィン共重
合体がフィルムの引裂伝播強度や耐突刺性向上のために
好適に使用される。好ましくはメタロセン系等のシング
ルサイト系触媒で重合されたもので分子量分布(重量平
均分子量/数平均分子量)が3以下のものである。この
場合、該共重合体の融点は耐熱樹脂の融点よりも好まし
くは40℃以上低いもの、最も好ましくは50℃以上低
いものである。耐熱樹脂との融点差を広くとることによ
り熱シール性や製膜性の安定性が増す傾向にある。
【0044】尚、I層のMIは0.5〜15g/10分
が一般に使用される。I層にはS層と同様に防曇剤を添
加してもよく、一般にノニオン系界面活性剤の防曇剤を
I層に対し0.5〜5重量%添加される。具体例として
はモノグリセリン脂肪酸エステル及び/又はジグリセリ
ン脂肪酸エステルをI層の樹脂に1〜3重量%添加した
ものが挙げられる。また、I層にはミネラルオイルやポ
リオレフィンワックス等の可塑剤、紫外線吸収剤、ヒノ
キチオールやワサビ抽出物及びキトサン等の鮮度保持剤
等の添加剤を添加しても良い。
【0045】以上の各層の組合せとしては3層ではS/
H/S、4層ではS/H/I/S、5層ではS/I/H
/I/S,S/H/I/H/S、7層ではS/I/H/
I/H/I/S,S/H/I/H/I/H/S等が挙げ
られる。フィルムのトータルの厚みはフィルムの取り扱
い性、ストレッチ性や引裂伝播強度や突刺強度等の点よ
り一般には5μm〜30μm程度であり、好ましくは8
〜15μmである。
【0046】S層、H層、I層の厚み比率は、一般にS
層は1層につき5〜45%、H層は1層につき10〜9
0%、I層は1層につき0〜80%である。又S層の絶
対厚みは、防曇性及び光学特性より1μm以上であるこ
とが好ましい。又高速包装においても十分なシール強度
を発現させる為に、S層の厚みは3μm以下であり且つ
H層の厚みが2μm以上である場合が好ましい。
【0047】なお、フィルムのトリムロスなどのリサイ
クル樹脂をH層やI層に添加することが出来る。リサイ
クル樹脂をH層やI層に添加すると光沢性が若干悪化す
るが、本発明の目的にかなうことが分かる。但しI層に
リサイクル樹脂を添加した場合、引裂伝播強度がH層に
リサイクル樹脂を添加した場合よりも低下し、それに伴
い、屑が若干多く発生する。また光沢性においてもH層
添加の時よりもI層に添加した方が悪化する傾向があ
る。光沢性不良の原因はフィルム表面の微細な荒れによ
るものである。耐熱樹脂のポリプロピレン系樹脂に対
し、ポリエチレン系樹脂は一般に相溶性が不良で、それ
に伴い、H層あるいはI層の層界面に微少の凹凸が生
じ、それがS層によるマスキング効果をもってしても表
面にその凹凸が反映された結果と考えられ、その観点よ
り、リサイクル樹脂は最内層に添加する方が良い。
【0048】又フィルム表面には滑り性と防曇性の両立
のため、フィルム全面に界面活性剤を塗布したり、フィ
ルム全面あるいはフィルム(製品)の端より所定幅(包
装機械のフィルム押えベルトに接触する部分)のみシリ
コーンオイルあるいはそのエマルジョンを塗布(片面に
つき0.3〜50mg/m3)してもよい。本発明の構
成とすることより得られるフィルムの物性は次のような
ものとなる。すなわち、フィルムの縦方向/横方向で表
すと引裂伝播強度は15/10g以上となり、屑発生抑
制に優れ、ストレッチ性の観点より破断伸びは200/
300%以上となり、外観の観点ではグロスは130/
120%以上、ストレッチシュリンク包装の時のフィル
ム皺除去の観点より120℃における熱収縮率は20/
20%以上と好ましい物性が得られる。更に好ましく
は、引裂伝播強度は20/15g以上、破断伸びは30
0/400%以上、グロスは140/130%以上、1
20℃における熱収縮率は30/30%以上であり、最
も好ましくは引裂伝播強度は25/20g以上、破断伸
びは400/400%以上、グロスは145/140%
以上、120℃における熱収縮率は45/45%以上で
ある。
【0049】次に本発明のフィルムの製造方法について
述べる。本発明の延伸フィルムの製造方法は共押出Tダ
イ〜テンター延伸、ダイレクトインフレーション(以
下、DI法と記す)、ダブルバブルインフレーション
(以下、DB法と記す)等のいずれの方法でも良いが、
その中で好ましい製造方法はDB法である。ここでDB
法の好ましい1例について更に詳細に説明するがこれに
限定されるものではない。
【0050】樹脂組成物を溶融し、サーキュラーダイに
より押出し、冷媒により急冷固化しチューブ状原反とし
ロールで折り畳んで引き取る。この際、チューブ内に防
曇性や滑り性等の特性を向上させる目的で界面活性剤、
シリコーンオイル等を充填してもよい。必要に応じてこ
の原反に電子線等のエネルギー線を照射して架橋処理を
施してもよい。次に原反にエアーを注入してチューブ状
にし2対の差動ニップロール間で原反の延伸開始温度を
ポリプロピレン系樹脂のガラス転移点〜融点の温度範囲
内に調温した後、面積倍率2〜36倍にチューブラー延
伸し、フィルムを冷却し2対のコンバージングロールで
折り畳んだ後ニップロールで引き取り、必要に応じてロ
ールヒートセット装置や熱風オーブン等を用いて熱処理
を行い、最後にフィルムを冷却した状態で巻き取ってフ
ィルムを得る。また、熱処理の後にコロナ放電処理等を
行ってもよい。なお最初に各層の樹脂組成物を別々の押
出機で溶融し、多層サーキュラーダイで合流積層化して
多層フィルムを押出する。
【0051】次に本発明においてDB法における好まし
い温度条件を説明する。なお、以下に示す温度とは全て
フィルムの表面温度である。まず、最初に溶融押出した
原反を急冷固化する際は、ポリプロピレン系樹脂ならび
にポリプロピレン系樹脂以外の主体樹脂の結晶化ピーク
温度以下の温度、通常5〜75℃まで冷却することがフ
ィルムの光学特性および結晶性樹脂の結晶化抑制の為に
好ましい。実験No.1ではエチレン・酢酸ビニル共重
合体(EVA1)やエチレン・オクテン−1共重合体
(VL1)の結晶化ピーク温度である73℃以下の温度
の30℃に積層体を急冷固化した。
【0052】次に延伸前に原反をポリプロピレン系樹脂
の結晶化温度あるいはポリプロピレン系樹脂以外の主体
樹脂の融解温度以上の温度、好ましくは「ポリプロピレ
ン系樹脂の融点−20℃」以下に再加熱する。通常加熱
温度は90〜140℃くらいであり、この温度は延伸開
始温度、すなわちバブルのネック部の温度に相当する。
実験No.1では125℃に加熱し、縦方向に3.8
倍、横方向に3.3倍に延伸した。
【0053】ここで、適正配向を与えるための延伸倍率
は通常面積倍率で2〜36倍である。また、延伸倍率が
2倍未満であると配向不十分やフィルムの部位により配
向度が異なる配向斑、あるいはフィルムの厚み斑が大き
くなる傾向にあり、延伸倍率が36倍よりも大きいと配
向過剰や原反シートが厚くなって、温度コントロールが
困難になり、やはりフィルムの配向斑や厚み斑が大きく
なる傾向にある。次に延伸後にフィルムを少なくともポ
リプロピレン系樹脂以外の主体樹脂の結晶化温度以下す
なわち通常、75℃以下、好ましくは50℃以下、さら
に好ましくは30℃以下に冷却して延伸を終了させ引き
取る。実験No.1では延伸終了点で40℃に冷却した
後に折り畳んで引き取った。
【0054】その後熱処理を行う場合には熱処理温度を
「室温+10℃」〜S層の主体樹脂の結晶化温度の範囲
とするのが好ましい。「室温+10℃」以下の温度では
熱処理の目的である配向緩和や寸法安定性の付与が出来
ず、又S層の主体樹脂の結晶化温度以下で行わないとフ
ィルムは融着する恐れがある。熱風オーブン等で緩和熱
処理を行う場合には熱処理温度を45〜75℃程度にし
て緩和率を縦方向及び横方向にそれぞれ−10〜30%
とするのが一般的である。
【0055】最後にフィルムを巻き取る際の温度はS層
の主体樹脂の結晶化温度以下、すなわち通常、45℃以
下であり、好ましくは35℃以下、さらに好ましくは3
0℃以下である。ここで45℃というのは巻取り時にフ
ィルム同士がブロッキングしたり、縦方向に伸びてしま
ったりするのを防ぐためである。実験No.1では25
℃に冷却して巻き取った。このような温度設定、特に原
反の再加熱温度と延伸温度を上述のように設定すると、
容易に本発明の所望の物性を達成できる上、安定して製
膜ができ、得られたフィルムの横方向・縦方向の偏肉も
少ない物が得られる利点がある。
【0056】ここで、後述する評価方法における「製膜
性の結果」はフィルムの配向性とよく一致した。すなわ
ち、延伸製膜時の延伸バブルの安定させるために、Xc
hは3.0%、Xcは1%以上である必要があり、一般
にはXchは4.0%以上、好ましくはXchは5.0
%以上、Xcは1.3%以上である。最も好ましくはX
chは7%以上、Xcは2.0%以上である。また、D
I法の場合は溶融張力がある程度以上あることが必要な
ため、更にMFRは15g/10分以下である必要があ
り、好ましくは8g/10分以下である。
【0057】なお、DB法とDI法を比較すると本発明
においてDB法の方がDI法に比べ優れる点が幾つか挙
げられる。先ずダイより樹脂を溶融したままの状態でバ
ブルを形成するDI法に比べDB法では溶融押出したチ
ューブ状原反を急冷固化しなおかつ低温雰囲気で延伸す
るため、ダイより樹脂を溶融したままの状態でバブルを
形成するDI法よりもメルトテンションが小さい樹脂を
用いることができメリットがある。
【0058】また、DI法に比べフィルムに配向がかか
るためにDI法よりも厚み斑の少ないフィルムを安定的
に生産することができ、また、DI法では困難である1
0μm以下の極薄フィルムも安定的に得ることができ
る。更にDI法により得られたフィルムについて見てみ
ると、一般に融点150℃以上のポリプロピレン系樹脂
は空冷式DI法では透明フィルムを得るのは困難で、水
冷式DI法では横倍率を広く取れない傾向にある。ここ
で前述したHPPあるいはRPPのアイソタクティック
ペンタッド分率(fmmmm)を10〜75モル%であ
るものは空冷式DI法でも比較的透明なフィルムを得る
のが可能であるが、この場合でも比較例5の実験No.
23が製膜できなかったことより明らかなようにポリプ
ロピレン系樹脂のMFRが15g/10分以下でないと
フィルムのメルトテンションが不足し、DI法は困難と
なる。
【0059】DI法によれば引裂伝播強度は比較的強い
ものが得られるが、フィルムのMDよりもTDの方が強
くなる傾向にあり、屑発生抑制とカット性の両立する適
正引裂伝播強度領域が狭くなり、特にカット性が劣るこ
とが見受けられることが多い。また、DI法では配向の
調節が困難で、DB法に比べ適度な配向がかかりにくい
傾向にあるため、加熱時の熱収縮率が小さくなりストレ
ッチシュリンク包装用フィルムとしては不向きな傾向に
ある。このようなものは包装アイテムを加熱トンネルを
通過させるなどをして熱収縮させても収縮が不完全なた
めに、包装アイテムのフィルム皺の除去が不完全である
傾向にある。
【0060】以上のようにDB法はDI法に比べ樹脂の
選択が広くとれ、樹脂の結晶化度や分子量や延伸温度や
冷却条件を変えることによりフィルムの配向度を変え、
結果としてフィルムの物性を容易に調節することができ
る点で好ましい。本発明に用いた測定方法及び評価方法
は次の通りである。先ずフィルム物性の測定法について
示す。
【0061】(1)Xch ここでいうXchとはフィルムのうち、耐熱層の融解熱
量のうちのプロピレン系樹脂に由来する融解熱量(以
下、ΔHhと記す)より算出される、耐熱層におけるプ
ロピレン系樹脂由来の結晶化度である。融解熱量の測定
は示差走査熱量計(DSC)としてパーキンエルマー社
製DSC−7を使用しJIS−K7121に準拠した。
詳細には測定用試料を約10mgDSC装置にセットし
て−10℃で1分保持した後、昇温速度を10℃/分で
185℃まで昇温し、1分保持し、降温速度を10℃/
分で−10℃まで降温し、1分保持し、再度、昇温速度
を10℃/分で185℃まで昇温した際の2回目の昇温
時の融解プロファイルより融解熱量を求める。
【0062】プロピレン系樹脂単独での融解プロファイ
ルより得られる融解熱量がΔHp(J/g)であり、耐
熱層の内のプロピレン系樹脂の重量分率をwh(wt
%)とすると ΔHh=ΔHp・wh/100 ここでプロピレン系樹脂の理論結晶融解熱量をH(J/
g)として次式よりXcを求めた。 Xch(%)=100・ΔHh/H 樹脂の理論結晶融解熱量については“化学便覧応用編
改定2版”,p836−841,丸善株式会社(197
3)を参考にした。なお、ポリプロピレン樹脂の理論融
解熱量については、=219.9J/gであり、各ラン
ダム共重合体の場合は共重合体中の最も多いモノマー単
位の樹脂の理論融解熱量を用いて計算した。また、融点
は2回目の昇温時の融解プロファイルの最も高温に現れ
る融解ピーク温度とした。
【0063】(2)Xc ここでいうXcとはフィルム全体の融解熱量のうちのポ
リプロピレン系樹脂に由来する融解熱量(以下、ΔHと
記す)より算出される、フィルム全体におけるポリプロ
ピレン系樹脂由来の結晶化度である。Xchと同様にし
て、ポリプロピレン系樹脂のフィルム全体に占める重量
分率をw(wt%)とすると ΔH=ΔHp・w/100 Xchと同様にして次式よりXcを求めた。 Xc(%)=100・ΔH/H
【0064】(3)引裂伝播強度 JIS−K−7128に準じて、東洋精機社製軽荷重引
裂強度試験機を用いて、フィルムの縦方向と横方向各々
について測定し、これを引裂伝播強度(g)とした。な
お通常引裂強度は目盛が20〜60の範囲になる様な測
定レンジで測定するが、本発明においては引き裂く速度
を一緒にする為に引裂伝播強度が80g以下を示す領域
では測定レンジは100gにした。また80〜180g
の領域では測定レンジは200gとした。表中には引裂
伝播強度を単に引裂強度と記し、(縦方向の引裂伝播強
度)/(横方向の引裂伝播強度)で表した。次に製膜時
における評価項目について説明する。
【0065】(4)熱収縮率 100mm角の多層フィルムサンプルを切り出し、20
℃刻みの温度に設定した熱風循環恒温槽に自由に収縮す
る状態で30分間入れた後、取り出してフィルムの縦方
向と横方向の収縮率をそれぞれ求めた。熱風温度は10
0℃と120℃の2水準とした。
【0066】(5)破断伸び サンプルフィルムを縦方向(MD)、横方向(TD)各
方向に長さ100mm、幅10mmに切り出し、チャッ
ク間50mmにセットされた引張試験機にて、23℃、
50%RHの条件下で200mm/分の速度で引張り、
破断した時の変形量を元の長さで割って百分率で示し
た。
【0067】(6)延伸開始温度 延伸ゾーンに温度勾配がある場合、延伸開始点での原反
表面温度を延伸開始温度とする。本発明の実施例におい
ては延伸ゾーンにおけるバブルのネック部(横方向の延
伸開始点)のフィルム表面温度を赤外放射非接触式温度
計にて計測し、これを延伸開始温度(℃)とした。なお
放射率は0.90とした。
【0068】(7)製膜性 ・評価方法 評価は、空気を注入してバブルを形成する時に片膨れ等
が発生せずに容易にバブルを形成出来、形成したバブル
の首が揺れずに安定しているかを目視評価した。 ・評価基準 評価尺度 記号 備考 バブルは非常に安定。 ◎ 安定製膜が可能で特に好ましい 首が多少揺れる。 ○ 通常生産が行われるレベル バブルは不安定。 △ ぎりぎり製膜ができるレベル バブルの形成が困難 × 次に包装適性の測定法について示す。
【0069】(8)耐ちぎれ性 ・評価方法 包装機械としてイシダ社製Wmini−zero1を用
い、フィルム幅400mmのフィルムを用いて200g
の粘土を載せた中央化学社製の発泡トレー(SK−20
F:195×155×37(mm)を100個包装した
時、ちぎれたフィルム片を集め、その重さ(g,有効数
字2桁)を測った。包装条件はポリオレフィンフィルム
使用で張り調整:前3,後1,左右7とし、長さは5と
した。表中には「屑」と表示した。 ・評価基準 評価尺度 記号 備考 重さ=0.0 ◎ 特に好ましいもの 0.0<重さ≦1.0 ○ 実用上問題無いレベル 1.0<重さ≦2.0 △ 破れが気になるが継続使用が可能な レベル 2.0<重さ × 商品としての価値無し
【0070】(9)カット性 ・評価方法 フジキカイ社製A−18X自動包装機にて300mm、
330mm、350mm、380mm、400mm、4
30mm、450mm、480mm、500mmのフィ
ルム幅のフィルムをそれぞれ繰り出して、2山の標準カ
ット刃でカット刃のホルダーからカット刃先端までの距
離(刃先長)を14mmとして、カットできた最大幅W
(mm)を測定した。 ・評価基準 評価尺度 記号 備考 450≦W ◎ カット性に優れる 350≦W<450 ○ 以上合格レベル 300≦W<350 △ 最低許容レベル W<300 × 商品価値無し
【0071】(10)皺 ・評価方法 大森機械社製・直線型包装機STC−IIB(熱風式簡
易シュリンクトンネル付き)で包装テストを行った。フ
ィルム幅330mmのフィルムを用いて200gの粘土
を載せた中央化学社製の発泡トレー(C20F(通称サ
ンマトレー):330×98×12(mm))を50パ
ック/分の条件で包装し、トレー上部、及び側面の皺の
有無を観察した。なお熱風温度は120℃とした。 ・評価基準 評価尺度 記号 備考 皺が全く無し ◎ 熱シール性に優れる 2〜3mm程度の極小皺がある ○ 以上合格レベル 1〜2cm程度の皺がある △ 実用上最低許容レベル フィルムが弛んだ状態で張りが無い × 商品価値無し
【0072】(11)熱シール性 ・評価方法 PP製のトレーにそれぞれ30g、150g及び300
gの粘土を載せて、これをフィルムで包んだ。この場
合、トレーの底ではフィルムが1枚の部分、2重に重な
る部分、3枚に重なる部分、5枚に重なる部分ができる
様に包んだ。60℃から10℃刻みの温度に設定してお
いた熱板にトレーの底の部分を1秒及び2秒の時間接触
させた後、ヒートシールの状態を観察した。5枚重なる
部分でも完全にシールされており、また、1枚の部分で
も穴が開かないものを合格とした。上述の測定条件を組
み合わせると42条件となり、このうち合格した条件の
割合を合格率(%)とした。 ・評価基準 評価尺度 記号 備考 合格率≧70% ◎ 熱シール性に優れる 70%>合格率≧55% ○ 以上合格レベル 55%>合格率≧40% △ 実用上最低許容レベル 40%>合格率 × 商品価値無し 次に包装後の実用適性の測定方法について述べる。
【0073】(12)光沢性 ・評価方法 JIS−K7105に準拠して、60度鏡面光沢(GL
OSS、%)を測定した。フィルムの光沢に異方性があ
る場合にはGLOSSの最低値を評価した。 ・評価基準 評価尺度 記号 備考 140≦GLOSS ◎ 光沢性に優れる 130≦GLOSS<140 ○ 通常使用されるレベル 120≦GLOSS<130 △ フィルムの光沢が気になるレベル GLOSS<120 × 実用上不適
【0074】
【発明の実施の形態】以下、実施例及び比較例を用いて
本発明を具体的に説明する。まず、本実施例及び比較例
で用いた樹脂を以下に示す。なお耐熱樹脂として使用し
たプロピレン系樹脂については表1にまとめて記す。 ・PB:ブテン−1・エチレン共重合体[MI=4.0
g/10分、融点98℃(三井化学社製タフマーBL3
450)] ・EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体[酢酸ビニ
ル含量=15重量%、MI=6g/10分、融点92
℃、結晶化温度73℃]に防曇剤としてジグリセリンラ
ウレート(理研ビタミン社製リケマールL71D)とモ
ノグリセリンオレート(理研ビタミン社製リケマールO
L100)を1:2の組成比で混合したものを2重量%
添加したもの。
【0075】・VL1:エチレン・オクテン−1共重合
体[オクテン−1含量:12重量%,密度0.902g
/cm3、MI=3.3g/10分、融点=99℃(ダ
ウケミカル社製PL1850)]に防曇剤としてジグリ
セリンラウレート(理研ビタミン社製リケマールL71
D)とモノグリセリンオレート(理研ビタミン社製リケ
マールOL100)を1:2の組成比で混合したものを
1.6重量%添加したもの。 ・VL2:エチレン・オクテン−1共重合体[オクテン
−1含量:24重量%,密度0.87g/cm3、MI
=1.0g/10分、融点=61℃、結晶化温度42℃
(ダウケミカル社製EG8100)]防曇剤としてジグ
リセリンラウレート(理研ビタミン社製リケマールL7
1D)とモノグリセリンオレート(理研ビタミン社製リ
ケマールOL100)を1:2の組成比で混合したもの
を1.6重量%添加したもの。
【0076】
【実施例1】S層(第1層および第5層)としてEVA
1を、H層(第3層)としてTPO5を25重量%とP
Bを75重量%をブレンドしたものを、I層(第2層お
よび第4層)としてはVL1を、S/I/H/I/S
(厚み比=10%/25%/30%/25%/10%)
の5層構造にサーキュラー多層ダイ(リップ径:200
mm、リップの開度1mm)よりチューブ状に押出した
(押出量15Kg/時間)。押出した積層体を20℃の
冷水で冷却(フィルム表面温度30℃)して折込み、厚
さ140μmの原反を得た。この時、チューブ内に35
℃のオレイン酸ナトリウムの8%水溶液を充填すること
によりチューブ状積層体の内表面に塗布した。オレイン
酸ナトリウムは製品ロールにした状態で塗布しなかった
面にも転写される。このときのオレイン酸ナトリウムの
塗布量はフィルム全重量に対し0.005重量%であっ
た。次いで折り畳んだ原反を延伸機に送り原反内部に空
気を注入して、延伸開始点の原反表面温度を125℃に
加熱して、縦方向(TUR)に.3.8倍、横方向(B
UR)に3.3倍にチューブラー延伸し、20℃のエア
ーで冷却しながらロール式デフレーターで折込み、デフ
レーターのメインピンチロールに対する速度比が0.9
9の引取ロールで巻き取った。延伸終了点のフィルム表
面温度は40℃、引取ロールで巻き取った際のフィルム
表面温度は25℃であった。またフィルム厚みは11μ
mであった。
【0077】得られたフィルムについて、本文記載の測
定法または評価法により各物性測定および評価を行い、
その結果を表3に示した。なお得られたフィルムを用い
て100パック包装したが、屑の発生量が1g未満で許
容範囲であり、カット面も綺麗であった。更に包装後の
フィルム皺も無く、熱シール性は良好であり、光沢性等
の外観も優れている。このフィルムの物性を縦方向/横
方向で示すと100℃における熱収縮率は45/30
%、120℃における熱収縮率は65/55%、破断伸
びは550/600%であった。
【0078】
【比較例1】次に実験No.2として全ての押出機にT
PO5に防曇剤としてジグリセリンラウレート(理研ビ
タミン社製リケマールL71D)とモノグリセリンオレ
ート(理研ビタミン社製リケマールOL100)を1:
2の組成比で混合したものを2重量%添加したもののみ
を入れた他は実験No.1と同様にして、厚み11μm
のH層のみの単層フィルムを得て評価を行った。
【0079】また、実験No.3として全ての押出機に
TPO5に防曇剤としてジグリセリンラウレート(理研
ビタミン社製リケマールL71D)とモノグリセリンオ
レート(理研ビタミン社製リケマールOL100)を
1:2の組成比で混合したものを2重量%添加したもの
のみを入れ、実験No.1と同一のダイを使用し押出量
も同一としてこれを上方向に引き取りながらエアを注入
して、バブルの外側に設置したエアーリングから30℃
のエアーを吹き付けながら引取速度15m/分、BUR
=3.3でダイレクトインフレーション成形を行い、厚
み11μmのH層のみの単層フィルムを得て評価を行っ
た。
【0080】以上の比較例1実験No.2及び実験N
o.3のフィルムの評価結果を表3に示す。実験No.
2のフィルムの引裂伝播強度は、縦方向/横方向で示す
と5/3gであり、このフィルムを用いて100パック
を包装する作業を行うと、5gの屑が発生した。また包
装中に機械が停止することも5回発生した。更にフィル
ム破れによりリパックする必要性の生じた被包装物も1
8個発生した。また熱シール性と光沢性が大幅に悪いも
のとなった。このフィルムの物性を縦方向/横方向で示
すと100℃における熱収縮率は40/30%、120
℃における熱収縮率は60/55%、破断伸びは180
/280%であった。
【0081】更に実験No.3のフィルムは、引裂伝播
強度が縦方向/横方向で示すと40/100gと大きい
が屑は1g未満の発生であった。また、カット面が綺麗
ではなく、カット性に若干難があった。また包装後のフ
ィルム皺はかなり残っており、フィルムの張りも不足し
ていた。また光沢性に関しては実験No.2以上に悪か
った。このフィルムの物性を縦方向/横方向で示すと1
00℃における熱収縮率は20/3%、120℃におけ
る熱収縮率は25/5%、破断伸びは370/480%
であった。
【0082】
【実施例2,比較例2】実験No.4〜実験No.8
(以上実施例)及び実験No.9、実験No.10(以
上比較例)として、実験No.1のH層の樹脂構成を表
4に示すように替えた他は実験No.1と同じ実験を繰
り返した。以上の実験No.4〜実験No.10のフィ
ルムの評価結果を表5に示す。実施例2の実験No.8
のフィルムで包装を行った場合には100パック包装し
ても屑の発生量が0.0gであった。製膜安定性は許容
できる下限程度であった。
【0083】比較例2の実験No.10のフィルムは樹
脂の配向張力が不足し、延伸フィルムを得るのが困難で
あった。実施例2の実験No.5のフィルムで包装を行
った場合には100パック包装しても屑の発生量が1.
8gであり屑の発生が若干気になるが継続使用が可能な
レベルであり、またカット面も綺麗であった。比較例2
の実験No.9のフィルムは100パックの包装作業を
行うと、3gの屑が発生した。また包装中に機械が停止
することも4回発生し、継続使用が不可能の範囲であっ
た。更にフィルム破れによりリパックする必要性の生じ
た被包装物も15個発生した。
【0084】
【実施例3,比較例3】実験No.11、実験No.1
2(以上実施例)及び実験No.13、実験No.14
(以上比較例)として、実験No.1の層構成及びH層
の樹脂構成を表6に示すように替えた他は実験No.1
と同じ実験を繰り返した。以上の実験No.11〜実験
No.14のフィルムの評価結果を表7に示す。実施例
3の実験No.11のフィルムで包装を行った場合には
100パック包装しても屑の発生量が0.0gであっ
た。製膜安定性は許容できる下限程度であった。
【0085】比較例3の実験No.13のフィルムは樹
脂の配向張力が不足し、延伸フィルムを得るのが困難で
あった。一方、実施例3の実験No.12は引裂伝播強
度が15/10gであった。実施例3の実験No.12
のフィルムで包装を行った場合には100パック包装し
ても屑の発生量が1.8gであり屑の発生が若干気にな
るが継続使用が可能なレベルであり、またカット面も綺
麗であった。比較例3の実験No.14のフィルム、同
様な包装作業を行うと、3gの屑が発生した。また包装
中に機械が停止することも4回発生し、継続使用が不可
能の範囲であり、フィルム破れによりリパックする必要
性の生じた被包装物も15個発生した。
【0086】
【実施例4,比較例4】実験No.15〜実験No.1
9(以上実施例)及び実験No.20(以上比較例)と
して、実験No.1の層構成及び樹脂構成を表8に示す
ように替えた他は実験No.1と同じ実験を繰り返し
た。但し実験No.18については製法をバブルの外側
に設置したエアーリングから15℃のエアーを吹き付け
たこと以外は実験No.3と同様に行った。以上の実験
No.15〜実験No.20のフィルムの評価結果を表
11に示す。
【0087】比較例4の実験No.20のフィルムを用
いて100パックの包装作業を行うと、3gの屑が発生
した。また包装中に機械が停止することも4回発生し、
継続使用が不可能の範囲であった。更にフィルム破れに
よりリパックする必要性の生じた被包装物も15個発生
した。またPPの分散不良と思われる筋がフィルムに見
られ、外観に問題があるものとなった。
【0088】また、実施例4の実験No.15〜実験N
o.18のフィルムはリサイクル樹脂を全層あたり20
重量%H層に添加、また実験No.19はI層に添加し
たものを想定したものである。実験No.19において
引裂伝播強度が下がっているという事実は、I層に使用
した、エチレン・オクテン−1共重合体が引裂伝播強度
の向上に影響を与えていることを示唆するものである。
なお、実験No.15のフィルムの物性を縦方向/横方
向で示すと100℃における熱収縮率は50/40%、
120℃における熱収縮率は65/60%、破断伸びは
650/680%であった。
【0089】
【実施例5,比較例5】実験No.21、実験No.2
2(以上実施例)及び実験No.23(以上比較例)と
して、実験No.1のH層の樹脂構成を表10に示すよ
うに替え、製法を実験No.18と同様にした他は実験
No.18と同じ実験を繰り返した。以上の実験No.
21〜実験No.23のフィルムの評価結果を表11に
示す。
【0090】実験No.22は、MFR=12g/10
分のポリプロピレン系樹脂としたものであるがMFR=
1.5g/10分のポリプロピレン系樹脂の実験No.
21のものに比べ製膜安定性が劣っていたが許容範囲で
あった。またカット性も若干悪化した。これに対し比較
対照の実験No.23はMFR=30g/10分のポリ
プロピレン系樹脂としたものであるが、ダイレクトイン
フレーションによる製膜が不可能であった。
【0091】
【実施例6】実験No.24、実験No.27として、
実験No.1の樹脂構成を表12に示すように替えた他
は実験No.1と同じ実験を繰り返した。また、実験N
o.25、実験No.26として、実験No.1のH層
の樹脂構成を表12に示すように替え、製法を実験N
o.18にならった他は実験No.1と同じ実験を繰り
返した。
【0092】以上の実験No.24〜実験No.27の
フィルムの評価結果を表13に示す。実験No.24は
I層に超低密度エチレン系エラストマーを使用したもの
である。実験No.25はH層のポリプロピレン系樹脂
にブレンドする樹脂をポリブテン−1樹脂から低密度エ
チレン系樹脂に替えDI法で製膜したもの、実験No.
26はさらに超低密度エチレン系エラストマーに替えた
ものである。実験No.27は実験No.26をDB法
で製膜したものである。
【0093】実験No.24は実験No.7に比べ引裂
伝播強度が若干劣るもののほぼ同等の性能を発現でき、
I層のエラストマー成分により押込回復性が若干優れる
ものとなった。実験No.25はポリブテン−1樹脂か
ら低密度エチレン系樹脂に替えたため、光沢性が悪化し
た。超低密度エチレン系エラストマーを使用した実験N
o.26は、実験No.25よりも若干光沢性が改良さ
れた。これは超低密度エチレン系樹脂の方が低密度エチ
レン系樹脂に比べ結晶化度が小さいこと、ならびに結晶
化速度が遅いことによると思われる。このものをDB法
で製膜したものは、光沢性は更に改善された。これは延
伸時の急冷効果によるものと思われる。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
【表8】
【0102】
【表9】
【0103】
【表10】
【0104】
【表11】
【0105】
【表12】
【0106】
【表13】
【0107】
【発明の効果】本発明は上述の構成を持つことにより、
従来のフィルムの特徴である柔軟性を維持または更に向
上した状態で、フィルムのカット性やフィルムストレッ
チ時の耐破れ性の向上すなわちフィルムのちぎれ屑の発
生抑制に優れ、熱収縮性や、熱シール性、光学特性にも
優れたストレッチ包装やストレッチ・シュリンク包装性
に優れたフィルムを得ることが出来る。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内層が、プロピレン単独重合体またはプ
    ロピレン・αオレフィン(炭素数2または4〜12)ラ
    ンダム共重合体からなり、下記(1)式及び(2)式を
    満足する、ポリプロピレン系樹脂を含有し、該内層中に
    は、前記ポリプロピレン系樹脂10〜90重量%、及び
    エチレン含量が2〜10mol%のブテン−1・エチレ
    ン共重合体90〜10重量%からなり、ポリプロピレン
    系樹脂を最も多量に含有し、下記(3)式を満足する、
    耐熱層を含み、多層フィルムとして、引裂伝播強度が1
    0〜200gで、下記(4)式を満足することを特徴と
    するポリオレフィン系樹脂多層延伸フィルム。 0.5g/10分≦MFR≦20g/10分 (1) 沸騰n−ヘプタン抽出量=20〜90重量% (2) 3%≦Xch≦20% (3) (但しXchとは後述する示差走査熱量法(DSC)で
    測定された結晶化度の内、上記耐熱層中のポリプロピレ
    ン系樹脂に基づく結晶化度。) 1%≦Xc≦10% (4) (但しXcとは後述する示差走査熱量法(DSC)で測
    定されたフィルム全体の結晶化度の内、多層フィルムに
    含まれるすべてのポリプロピレン系樹脂に基づく結晶化
    度。)
  2. 【請求項2】上記ポリプロピレン系樹脂の13C−NM
    Rにより求められたアイソタクティックペンタッド分率
    (fmmmm)が10〜75モル%である請求項1記載
    のポリオレフィン系樹脂多層延伸フィルム。
  3. 【請求項3】フィルムの縦方向及び横方向の120℃に
    おける熱収縮率が20%以上である請求項1〜請求項2
    のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂多層延伸フィ
    ルム。
  4. 【請求項4】フィルムの縦方向の破断伸びが200%以
    上及び横方向の破断伸びが300%以上である請求項1
    〜請求項3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂多
    層延伸フィルム。
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