JP3392312B2 - シフトレバーのシフトロック装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は自動車における自
動変速機の切替操作をするシフトレバーのシフトロック
装置に関するもので、特に簡単な機構で信頼性の高いシ
フトロックを可能にするものである。

【０００２】

【従来の技術】自動変速機の切替操作をするためのシフ
トレバー装置は、ゲート式の多段式変速仕様が普及する
傾向にある中で、Ｐレンジ又はＮレンジからＲレンジへ
のシフトロックを行うことによって自動変速機の不用意
な切替操作を防止する機構が提供されている（特開平７
−１１９８１３号参照）。

【０００３】この公開発明は、その第１実施例では、車
体前後方向及び車体左右方向へ揺動可能なシフトレバー
のゲートにおけるＰレンジとＮレンジの域内に進退する
Ｐ係止部とＮ係止部を有するストッパが車体前後方向へ
揺動するＶ字形をしており、そのストッパが、車両のブ
レーキ操作や設定速度に達した場合に動作するソレノイ
ド（アクチュエータ）で回動することによってシフトロ
ックを行うというものである。

【０００４】またその第２実施例では、ストッパが２体
のリンク構造をしてＰ係止部とＮ係止部が互いに近接又
は離反する方向へ移動するようにして上記第１実施例に
おけるストッパのＰ係止部とＮ係止部が互いに同じ方向
へ移動することによる欠点を解決している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
開発明では、その第１実施例によれば、車両走行中常に
ソレノイドが作動してストッパのＮ係止部がＮレンジに
あってＮレンジシフトロックとなるので、故障等の信頼
性に欠ける面があるとともに、電気系統の故障時にはロ
ックできなくなってしまう欠点がある。また第２実施例
では、ストッパを２体にして実施例１の上記問題を解決
するものの、部品点数が増えて作動精度が悪化すると言
う不都合がある。

【０００６】そこで、この発明は上記事情に鑑みて、構
造簡単にして信頼性の高いシフトロック装置を提供す
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明にかかるシフト
レバーのシフトロック装置は、車体に固定された筐体内
に前後揺動体を車体前後方向へ回動可能に軸支し、該前
後揺動体に揺動基部を車体左右方向へ回動可能に軸支
し、該揺動基部に植設したシフトレバーを車体前後及び
左右方向へ揺動させることにより筐体上面に形成したゲ
ート部を移動し所望のレンジを選択して自動変速機を切
替操作するシフトレバー装置において、前記筐体に、単
一の回転ロック体を軸支部を介して回動可能に軸支する
一方、前記揺動基部に上下一対の突起部を設け、前記回
転ロック体は、前記軸支部を挟んだ両側に、前記一方の
突起部に当接可能なＰ係止部と、他方の突起部に当接可
能なＮ係止部を有し、前記シフトレバーがＰレンジ又は
Ｎレンジに移動したときに、前記回転ロック体を回動さ
せるアクチュエータを前記筐体に固定したことを特徴と
する。

【０００８】したがって、シフトレバーがＰレンジに移
動すると、それを検出したセンサーがアクチュエータを
ＯＦＦ動作させて回転ロック体をロック位置に回動さ
せ、そのＰ係止部がシフトレバーの揺動基部の一方の突
起部に当接してシフトレバーの回動を規制しＰレンジで
のシフトロックを行う。

【０００９】また、イグニッションキーをＯＮしてブレ
ーキを踏むと通電されることによりアクチュエーターが
作動すると、Ｐ係止部が突起部から離れてシフトレバー
の走行レンジへの移動が可能となる。

【００１０】そして、シフトレバーを回動してＤレンジ
で走行中に設定された車速に達すると、車速検出センサ
ーでアクチュエータがＯＦＦ動作し回転ロック体がロッ
ク位置へ回動してそのＮ係止部が回動基部の他方の突起
部に当接してＲインヒビットを行う。

【００１１】車速が設定値以下になると、車速検出セン
サーがアクチュエータをＯＮ動作させ、回転ロック体が
ロック解除位置へ回動してそのＮ係止部が他方の突起部
から離れるので、シフトレバーを所要のレンジへ自由に
移動できるようになる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態につき
図に基づき説明する。図１，２に示すように、車体１に
固定された筐体２に揺動基部３が車体前後方向にはシャ
フト４で、及び、車体左右方向へはシャフト５で回動可
能に支持され、シャフト４は前後揺動体６に一体形成さ
れていて筺体２の下部に一体形成したブラケット部２ｃ
に支承されている。この前後揺動体６にはレバー部６ａ
が車体下方へ延伸して一体的に連結され、そのレバー部
６ａの下端部には変速機操作ロッド又はケーブルが連結
される。

【００１３】揺動基部３にはシフトレバー７が軸方向へ
植設され、シフトレバー７は筐体２の上部に車体前後方
向へ形成されたゲート部８を経て筐体２の上部に摺動可
能に載置されたスライドプレート９及びその上部に固定
されたインディケーター１０の上面にジグザグ状に形成
されているガイド孔から所定高さにて突出し、その上端
部にノブ１１が取り付けられている。

【００１４】そして、前後揺動体６には規制板１２が一
体形成されており、この規制板１２の上端面はシャフト
４を中心とする所定半径の円弧を形成してその端面には
Ｐ，Ｒ，Ｎ，Ｄ，１，２等の変速レンジの数に相当する
略半円形の節度溝１３が形成されている。この節度溝１
３に係合する略円形断面の一端部を有する板ばねからな
る弾性体１４がその他端部を筺体２内で側壁２ａに支持
されている。

【００１５】したがって、ノブ１１を握持してシフトレ
バー７を車体前後及び左右方向へ揺動させながら特定の
変速レンジに移動させると、揺動基部３がシャフト４，
５を中心として回動し、規制板１２が前後揺動体６と共
に回動して節度溝１３が弾性体１４の押圧を押し除けて
移動することによりレンジ変更の節度感を生じさせ、か
つ、レバー部６ａが変速機操作ロッド又はケーブルを操
作して自動変速機を設定した変速レンジに切り替えると
いうものである。

【００１６】そこで、Ｐレンジ及びＮレンジでＲレンジ
へのシフトレバー７のシフトロックを行う為に、図２，
３に示すように、前記揺動基部３には上下に離間した一
対の突起部１５，１６を設けるとともに、これらの突起
部１５，１６に当接しうるＰ係止部２４とＮ係止部２５
を両端面に有する回転ロック体１９を筐体２の一方の側
壁２ａ側に軸支する。突起部１５，１６は前記揺動基部
３に一体成形され、図４に示すように、突起部１５はＰ
係止部２４と当接可能に揺動基部３の上部に配置され、
また、突起部１６はＮ係止部２５と当接可能に揺動基部
３の略中間部に配置される。

【００１７】図１に示すように、筐体３の一方の側壁２
ａに、略Ｚ字形の切欠部２ｂを開設し、その切欠部２ｂ
を塞ぐ形で筐体３の側壁２ａの外部に、図３に示すよう
に支持板２０を固定し、該支持板２０に突設した軸突起
２１に前記回転ロック体１９が回動可能に支承されてい
る。前記軸突起２１は、一対の突起部１５，１６の間で
側壁２ａ側から突出するように配置される。前記支持板
２０には、回転ロック体１９を必要に応じて回転駆動す
るためのアクチュエータ２２を固定してある。アクチュ
エータ２２には、通電時に引き込めるプランジャ２３が
設けられている。

【００１８】前記回転ロック体１９は、Ｐ係止部２４と
Ｎ係止部２５を両端部に一体成形したレバーであって、
図５に示すように、中央部に前記軸突起２１が挿通して
回転中心となる軸支部である軸孔３１が形成され、この
軸孔３１を中心として点対称に形成された一対のＬ形の
端部１７，１８を有し、その端部１７，１８に沿い軸孔
３１に向けて形成されたテーパー部２６，２７が設けら
れ、かつ、軸孔３１の上辺に軸方向に形成した延伸部２
８に筒部２９が形成され、この筒部２９には略楕円形断
面のプランジャー係合穴３０が形成されている。プラン
ジャー係合穴３０には前記アクチュエータ２２のプラン
ジャー２３の直角に曲げた先端部を係合させるものであ
る。

【００１９】また、Ｌ形の端部１７，１８のＰ係止部２
４及びＮ係止部２５の背面には、それぞれストッパー部
１７ａ，１８ａが形成され、このストッパー部１７ａ，
１８ａはＰ係止部２４及びＮ係止部２５に平行にそれぞ
れ形成されている。このストッパー部１７ａ，１８ａ
は、側壁部２ａの切欠部２ｂ内で回動しており、回転ロ
ック体１９がロック位置にあるときには、ストッパー部
１７ａ，１８ａが切欠部２ｂの段部端面２ｄ，２ｅにそ
れぞれ当接可能である。また、回転ロック体１９がロッ
ク解除位置にあるときには、テーパー部２６，２７が水
平になり、このテーパー部２６，２７に沿ってその上下
を一対の突起部１５，１６が移動する。

【００２０】そこで、シフトレバー７をＰレンジに移動
設定したときは図示しないスイッチにより揺動基部３が
Ｐレンジに移動したことが電気的に検出され、この状態
にあっては、アクチュエータ２２に通電がされず、プラ
ンジャー２３は内蔵するばねの力で突出して回転ロック
体１９を回動させ、図９に実線図示のように、そのＰ係
止部２４が揺動基部３の突起部１５に当接し、シフトレ
バー７の後方向への回動が阻止され、Ｐレンジでのシフ
トロックがなされる。

【００２１】このロック状態において無理矢理にシフト
レバー７を移動しようとした場合には、回転ロック体１
９のストッパー部１７ａが切欠部２ｂの段部端面２ｄに
当接して回転ロック体１９の回動を阻止する。これによ
り、シフトレバー７を移動しようとする荷重は、突起部
１５から回転ロック体１９を介して筺体２に入力される
ため、軸突起２１やアクチュエータ２２に入力されるの
を防止できる。

【００２２】ついで、車両走行のためにイグニッション
スイッチがＯＮされてエンジンが始動した状態で、ブレ
ーキを踏むことによりアクチュエータ２２が通電される
と、図９に仮想線図示のように、プランジャー２３が内
蔵するばねの力に抗して引き込まれて回転ロック体１９
を反時計方向へ回動させるから、揺動基部３の突起部１
５は回転ロック体１９のテーパー部２６の上を通過して
車体後方側へ、すなわち、Ｒレンジ及びＮレンジ側へ移
動できるようになる。そこで、シフトレバー７をＤレン
ジに移動させて走行する。

【００２３】そして、車両走行速度が設定値以上になる
と、アクチュエータ２２の通電が断たれ、プランジャー
２３が再び突出して回転ロック体１９は再びロック状態
に復帰し、図１０に示すように、そのＮ係止部２５が揺
動基部３の突起部１６と当接可能な位置に回動して静止
する。したがって、誤ってシフトレバー７をＲレンジに
シフトしようとすることがあっても、揺動基部３の突起
部１６がＮ係止部２５に当接して前方向へ回動すること
がなく、シフトレバー７のＮレンジへのシフトは阻止さ
れる。

【００２４】このロック状態において、無理矢理にシフ
トレバー７をＲレンジ側へ移動しようとした場合には、
回転ロック体１９のストッパー部１８ａが切欠部２ｂの
段部端面２ｅに当接して回転ロック体１９が回動を阻止
する。これにより、シフトレバー７を移動しようとする
荷重は、突起部１６から回転ロック体１９を介して筺体
２に入力されるため、軸突起２１やアクチュエータ２２
に入力されるのを防止できる。

【００２５】車両走行速度が設定値以下になると、アク
チュエータ２２が再び通電されることにより、プランジ
ャー２３が再び引き込まれて回転ロック体１９がロック
解除位置に回動し、突起部１６はテーパー部２７の下面
を通過できる状態となるから、シフトレバー７をＲレン
ジ又はＰレンジ側へ移動できるようになる。

【００２６】すなわち、この発明の実施の第１形態によ
れば、回転ロック体１９はコンパクトで作動スペースが
狭く、しかも、シフトレバー７から回転ロック体１９を
介して入力される荷重は筺体２の側壁２ａに入力され、
軸突起２１やアクチュエータ２２に入力しないため、高
強度部材で成形する必要がなく、軽量化が図れ、信頼性
が向上し、シフトロックの位置が確実になる。また、シ
フトレバー７の前後方向の移動を規制する構造であるた
め、ゲート式のシフトレバー装置だけでなく、車体左右
方向への揺動がないストレート式のシフトレバー装置に
おけるシフトロック装置として用いることもできる。

【００２７】次にこの発明の実施の第２形態を図１１，
１２に基づき説明する。この例では、回転ロック体１９
ａを板状としてその両端部側面に円柱形のＰ係止部１７
ａとＮ係止部１８ａ及び裏面側に軸３４を一体形成した
ものである。また、揺動基部３ａには同じく上下に離間
して円柱形の一対の突起部１５ａ，１６ａを一体形成し
てある。軸３４は筐体２の側壁２ａに穿設した軸孔に挿
入して回動可能に支持する。そして、アクチュエータ２
２のプランジャー２３の直角に曲げた先端部は、筐体２
の側壁２ａに形成した長孔を経て筐体２の内部に入り、
回転ロック体１９ａのＰ係止部１７ａ側に透孔を穿設し
てその透孔に挿入する。

【００２８】また、揺動基部３ａには前記規制板１２に
代えて中空円筒体３５を一体形成し、その中空円筒体３
５にコイルスプリングを挿入してその弾力で突出するボ
ールを挿入し、かつ、そのボールが圧接する断面波形の
節度板を筐体２内に設けたものである。その他の構成は
前記第１形態と同じである。したがって、この第２形態
ではシフトレバー７のＰレンジ及びＮレンジにおける左
右方向の移動を規制することでＲレンジのシフトを阻止
するものであり、シフトレバーを移動しようとする荷重
は、突起部１５ａ，１６ａから回転ロック体１９を介し
て側壁２ａに入力されるため、軸３４及びアクチュエー
タ２２に荷重が入力されることが防止できる。その他の
作用は前記第１形態と同じである。この第２形態では回
転ロック体１９ａとその揺動基部３が第１形態のものに
比べ、きわめて単純な構造となるので、一層コンパクト
でコスト安価になる。

【００２９】かくして、Ｐレンジシフトロック及びＮレ
ンジシフトロックを、常にアクチュエータの通電解除時
に行うようにしたので、アクチュエータ２２の負担が軽
減され、また、回転ロック体１９がコンパクトであるか
らアクチュエータ２２の作動力は小さくて足りるため小
型化ができる。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したこの発明によれば、単一の
回転ロック体をアクチュエータの通電解除時に回動させ
てＰレンジシフトロック又はＮレンジシフトロックを行
うので、アクチュエータの負担を軽減できる。また、単
一の回転ロック体であることから、コンパクトで移動ス
ペースが狭いため、アクチュエータの作動力を低減で
き、シフトロック装置の小型化、コストの低減を図るこ
とができる。さらに、シフトレバーから回転ロック体を
介して入力される荷重は筺体の側壁に入力され、回転ロ
ック体の軸やアクチュエータに入力されることがないの
で、回転ロック体やその軸を高強度部材で成形する必要
がなく、小型化、軽量化が図れるとともに、その信頼性
が向上し、シフトロックが確実になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施の第１形態を示す側面図一部切
欠側面図

【図２】図１の断面正面図

【図３】図１の要部断面平面図

【図４】シフトレバーと揺動基部の側面図（Ａ）、平面
図（Ｂ）及び正面図（Ｃ）

【図５】回転ロック体の斜視図

【図６】図５の正面図

【図７】図５の平面図

【図８】図５の側面図

【図９】Ｐレンジシフトロックの作用説明図

【図１０】Ｎレンジシフトロックの作用説明図

【図１１】この発明の実施の第２形態を示す一部省略側
面図

【図１２】図１１の要部斜視図

【符号の説明】

１…車体 ２…筐体 ２ａ…側壁 ２ｂ…切欠部 ３…揺動基部 ４…シャフト ７…シフトレバー ８…ゲート部 １０…ガイド孔 １５，１６，１５ａ，１６ａ…突起部 １７，１８…端部 １９，１９ａ…回転ロック体 ２２…アクチュエータ ２３…プランジャー ２４，２４ａ…Ｐ係止部 ２５，２５ａ…Ｎ係止部 ２６，２７…テーパー部 ３０…プランジャー係合穴

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車体に固定された筐体内に前後揺動体を
   車体前後方向へ回動可能に軸支し、該前後揺動体に揺動
   基部を車体左右方向へ回動可能に軸支し、該揺動基部に
   植設したシフトレバーを車体前後及び左右方向へ揺動さ
   せることにより筐体上面に形成したゲート部を移動し所
   望のレンジを選択して自動変速機を切替操作するシフト
   レバー装置において、前記筐体に、単一の回転ロック体を軸支部を介して回動
   可能に軸支する一方、前記揺動基部に上下一対の突起部
   を設け、前記回転ロック体は、前記軸支部を挟んだ両端
   部に、前記一方の突起部に当接可能なＰ係止部と、他方
   の突起部に当接可能なＮ係止部を有し、 前記シフトレバーがＰレンジ又はＮレンジに移動したと
   きに、前記回転ロック体を回動させるアクチュエータを
   前記筐体に固定したことを特徴とするシフトレバーのシ
   フトロック装置。
2. 【請求項２】 前記回転ロック体は、前記Ｐ係止部とＮ
   係止部を両端部に形成したレバーであって、中央部に回
   転中心となる軸孔が形成され、前記一対の突起部の間で
   筺体の側壁側から突出する軸突起に軸孔を中心として回
   転可能に支持されており、 この回転ロック体がロック解除位置にあるときには一対
   の突起部の間を回転ロック体が通過し、回転ロック体が
   ロック位置にあるときには突起部の一方が回転ロック体
   のＰ係止部又はＮ係止部に当接してシフトレバーのＰレ
   ンジ又はＮレンジからの移動を規制することを特徴とす
   る請求項１記載のシフトレバーのシフトロック装置。
3. 【請求項３】 前記回転ロック体は、前記軸孔を中心と
   して点対称に形成された一対のＬ形を有し、前記筐体の
   側壁には、前記Ｌ形の端部に設けたＰ係止部及びＮ係止
   部の背面にそれぞれ当接可能なストッパー部が形成され
   るとともに、この回転ロック体と中心を同じくする略相
   似形の切欠部が形成されており、前記 回転ロック体はこの切欠部内で回転可能に支持さ
   れ、回転ロック体がロック位置にあるときには、ストッ
   パー部が切欠部の段部端面に当接可能としたことを特徴
   とする請求項１記載のシフトレバーのシフトロック装
   置。