JP3351860B2 - 履帯用ブッシングおよびその製造方法 - Google Patents

履帯用ブッシングおよびその製造方法

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JP3351860B2 JP14253993A JP14253993A JP3351860B2 JP 3351860 B2 JP3351860 B2 JP 3351860B2 JP 14253993 A JP14253993 A JP 14253993A JP 14253993 A JP14253993 A JP 14253993A JP 3351860 B2 JP3351860 B2 JP 3351860B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、履帯用ブッシングおよ
びその製造方法に係わり、特に建設機械などの機械的特
性が要求される部位に適用するに好適な履帯用ブッシン
グおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、建設機械などに使用され、耐摩耗
性、強度など機械的特性が要求される履帯用ブッシング
あるいはその製造方法は次のものが知られている。 (イ)中炭素低合金鋼の圧延素材に機械加工などを施
し、電気炉などで約850℃加熱後油焼入れを行い、次
に600℃前後で焼戻しを行うことで、履帯用ブッシン
グ粗加工材の素地硬さをロックウェル硬さのCスケ−ル
HRCで30程度に調整している。その後、外周面およ
び内周面にそれぞれ高周波焼入れを施し、履帯用ブッシ
ング粗加工材の内外周側に硬さHRCが45程度以上の
硬化層を形成させ、内部の肉厚心部は前記焼戻しの硬さ
を維持した素地硬さ部である。次に電気炉などで200
℃程度の低温焼戻しを行い、仕上げ加工を施して履帯用
ブッシングとする。
【0003】(ロ)ブッシングの外周面および内周面か
ら肉厚中心部に向かってそれぞれ高周波焼入れ部が形成
されており、両高周波焼入れ部の間の肉厚心部に、表面
硬化前の調質を施すことなく、焼戻し部が形成されてお
り、内外周面間の硬さ分布がほぼV字状となっている
(例えば、特公昭63−16314号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の履帯用ブッシングあるいはその製造方法には次のよ
うな問題点がある。すなわち、上記(イ)は、高周波焼
入れ前に調質を目的とする油焼入れと焼戻しとの2工程
があり、多大なエネルギ−と時間を要する。さらに、油
焼入れは、焼入れ時期、油の温度・汚れなど多くの管理
を必要とする。また、(ロ)は、調質の2工程が無いも
のの、外周面の高周波焼入れ時に内周面まで高温加熱を
するため、通常の方法の一つである(イ)に比して前記
加熱工程では大きなエネルギ−を必要とする。さらに、
履帯用ブッシングの肉厚が厚い場合には、エネルギ−の
点でより不経済となる。
【0005】本発明は、上記従来技術の問題点に着目
し、調質工程を省略あるいは簡略化し、肉厚の厚い履帯
用ブッシングでも多大なエネルギを不要とし、かつ、機
械的特性等の品質が従来品と同等以上である履帯用ブッ
シングおよびその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係わる履帯用ブッシングにおいて、第1発
明は、ブッシング(1)の外周面(1a)および内周面
(1b)から肉厚心部(1c)に向かって、それぞれ高
周波焼入れによる主たるマルテンサイト組織である硬化
層が形成されていると共に、両硬化層の間の肉厚心部
(1c)には、高周波焼入れ前の圧延素材の硬さHRC
17〜20が残存した素地部(Lm)を有しており、内
外周面間の硬さ分布が略U字形であることを特徴とす
る。第2発明は、第1発明において、高周波焼入れにお
ける外周面(1a)からの主たるマルテンサイト組織で
ある外周硬化層厚さ(Lo)と内周面(1b)からの
たるマルテンサイト組織である内周硬化層厚さ(Li)
とを加えた硬化層厚さは、ブッシング肉厚(L)に対し
て0.35〜0.7である。
【0007】さらに、本発明に係わる履帯用ブッシング
の製造方法において、第発明は、(イ)圧延素材をブ
ッシング粗加工材にする機械加工を施す第1工程、
(ロ)前記ブッシング粗加工材の外周面に高周波焼入れ
を施し、主たるマルテンサイト組織である外周硬化層を
形成すると共に、内周面側は圧延素材の硬さである第2
工程、(ハ)前記ブッシング粗加工材の外周面を冷却し
つつ、内周面に高周波焼入れを施し、主たるマルテンサ
イト組織である内周硬化層を形成すると共に、残存する
前記外周硬化層と内周硬化層との間の素地部は圧延素材
の硬さHRC17〜20である第3工程、(ニ)焼戻し
する第4工程、(ホ)仕上げ加工する第5工程、以上の
工程からなることを特徴とする。
【0008】第発明は、第発明において、(ロ)
は、前記ブッシング粗加工材の内周面に高周波焼入れを
施し、主たるマルテンサイト組織である内周硬化層を形
成すると共に、外周面側は圧延素材の硬さである第2工
程、であり、(ハ)は、前記ブッシング粗加工材の内周
面を冷却しつつ、外周面に高周波焼入れを施し、主たる
マルテンサイト組織である外周硬化層を形成すると共
に、残存する前記内周硬化層と外周硬化層との間の素地
部は圧延素材の硬さHRC17〜20である第3工程、
である構成からなる。第発明は、第3又は第4発明の
いずれか1発明において、(ニ)焼戻しする第4工程
と、(ホ)仕上げ加工する第5工程との2工程におい
て、少なくとも1工程を省略する。本発明に係わる履帯
用ブッシングおよびその製造方法は、以上の構成とし
た。
【0009】
【作用】上記構成による本発明の作用を図面を参照しつ
つ説明する。図1に本発明の履帯用ブッシングの断面を
示す。外周面1aおよび内周面1bから肉厚心部1cに
向かってそれぞれ図示しない硬化層が形成される。該断
面のA−A間で測定したブッシング1の断面硬さ分布を
模式的に図2に示す。図2において、内外周面側には、
それぞれ硬さHRC45以上の内外周硬化層が形成さ
れ、外周硬化層厚さLoと内周硬化層厚さLiを要求さ
れる厚さにすることで、履帯用ブッシングの長期耐摩耗
性を得る。また、硬化層の主たる組織であるマルテンサ
イトは、高周波焼入れ時に膨張変態してできる組織であ
り、肉厚心部の素地部Lmは未変態であるため、ブッシ
ングには図3に模式的に示す残留応力分布が生じる。内
周面および外周面には圧縮残留応力が生じており、ブッ
シングに加わる負荷に耐えるための疲労強度が向上す
る。
【0010】また、本発明において、圧延素材等を使用
することは、高周波焼入れ前の油焼入れと焼戻しとの工
程を省略あるいは簡略化するだけでなく、圧延素材など
の硬さが残存した素地部(Lm)の硬さが低いことでも
あり、このことがブッシングの内外周面の圧縮残留応力
を大きくする作用がある。また、素地部(Lm)を厚く
することは内外周面の圧縮残留応力を大きくする方向に
なるが、厚くなり過ぎると、長期使用時にこの圧縮残留
応力が減衰する。すなわち、内外周硬化層厚さの合計が
ブッシング肉厚に対して0.35〜0.7にすること
で、長期使用でも内外周面の圧縮残留応力を維持でき
る。これらのことから、ブッシングの断面硬さ分布は略
U字形であることが必要である。
【0011】さらに、高周波焼入れ前の油焼入れと焼戻
しとの工程を省略あるいは簡略化による、焼入れ歪みの
低減がある。これにより、仕上げ加工の工程を省略でき
る。また、ブッシングの断面硬さ分布は略U字形である
と共に素地部の硬さが低いので、ブッシングの靭性も向
上する。したがって、高周波焼入れ後の焼戻し工程を省
略できる。以上のことから、本発明は優れた作用に基づ
くことが明らかである。
【0012】
【実施例】以下に、本発明に係わる履帯用ブッシングお
よびその製造方法の実施例につき、図面を参照して詳細
に説明する。本発明が適用される建設機械などの履帯の
概要を図4に示す。ブッシング1は、外周面が図示しな
い起動輪と噛合し、内周面がピン12と摺動接触し、さ
らに両端がダストシ−ル14と摺動接触する。ブッシン
グ1とピン12とのそれぞれ1部がリンク13a、13
bに嵌合し、リンク13a、13bはボルト16および
ナット17によりシュ−15に配設される。履帯11は
多数のリンク13a、13bをピン12で鎖状に連結し
て構成される。
【0013】次に、本発明の製造方法により製造される
履帯用ブッシングについて、工程に基づき説明する。 (実施例1)本実施例で使用した中炭素低合金鋼の供試
材含有成分を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】第1工程において、前記中炭素低合金鋼を
筒状の圧延素材とし、機械加工等を施したブッシング粗
加工材(外径59mm、内径38mm、長さ138.5
mm)を用意する。この圧延素材の断面のビッカ−ス硬
さHv(荷重は5kg。以下も同じ荷重で測定。)は2
30〜240であり、ロックウェル硬さHRCへの近似
的換算値は18〜22となる。なお、硬さ測定はビッカ
−ス硬さ計を使用したが、以下の説明ではロックウェル
硬さHRCへの近似的換算値で述べる。機械加工後の硬
さ分布は圧延素材と同様である。
【0016】次に、第2工程において、該ブッシング粗
加工材の軸線を中心にして回転させつつ移動させ、その
外周面を、周波数10kHz、出力150kwの高周波
誘導電流により加熱し、所定加熱後ただちに5%ソリブ
ル溶液をスプレ−して焼入れを行う。この5%ソリブル
溶液は市販のもので良い。焼入れ後のブッシング粗加工
材の断面硬さ分布を図5に示す。外周面側に破線で示す
硬さHRC45以上の硬化層が形成されており、肉厚心
部から内周面間の硬さは圧延素材の硬さと同様である。
【0017】続いて、第3工程において、前記焼入れ済
のブッシング粗加工材の軸線を中心にして回転させつつ
移動させ、その外周面を5%ソリブル溶液にて冷却する
と共に、該ブッシング粗加工材の内周面を周波数30k
Hz、出力150kwの高周波誘導電流により加熱し、
所定加熱後ただちに5%ソリブル溶液をスプレ−して焼
入れを行う。ブッシング粗加工材の肉厚心部には圧延素
材の硬さである素地部があり、内外周面間の硬さ分布は
略U字形である。なお、硬さ分布は第5工程の仕上げ加
工後とほぼ同じであり省略する。
【0018】続いて、第4工程において、焼入れの完了
したブッシング粗加工材を電気炉にて180℃で焼戻し
を行う。なお、焼戻し温度は、焼入れされたブッシング
粗加工材の表面組織である焼入れマルテンサイトを焼戻
しマルテンサイト組織にする温度を選定すれば良く、1
80℃に限定するものではない。また、この焼戻しは、
靭性が低く不安定な焼入れマルテンサイトを改善するた
めの熱処理であるから、衝撃など機械的負荷の小さい部
位に適用する場合はこの焼戻しを省略することが出来
る。また本発明は、素地部の硬さが低く、全体として靭
性が高いことからも、本工程は省略してよい。加熱は、
電気あるいはガス等での加熱、誘導加熱など通常の方法
で行えば良い。
【0019】そして、第5工程において、研磨加工によ
る仕上げ加工を行い、最終製品となる。本工程を終了し
た最終製品である本発明のブッシングの硬さ分布を図6
に示す。内外周面間の硬さ分布は略U字形であり、素地
部の硬さHRCは17〜20、内周側と外周側との合計
硬化層厚さは、ブッシング肉厚に対し0.59である。
なお、本実施例では仕上げ加工を行ったが、仕上げ加工
前のブッシング外径寸法のバラツキの幅は、下記比較例
で説明する従来法を1とすると、本発明は0.45と大
幅に改善されており、本工程は省略してよい。
【0020】(比較例)比較例として、従来法の一方法
を行う。第1工程において、実施例1と同じブッシング
粗加工材を用い、電気炉で860℃加熱後油焼入れを行
い、570℃で焼戻する。硬さHRCは28〜31であ
る。第2工程の外周面高周波焼入れ、第3工程の内周面
高周波焼入れおよび第4工程の焼戻しはいづれも実施例
1と同じ条件で行った。そして、第5工程も実施例1と
同様に研磨加工を行い、最終製品とする。本工程後のブ
ッシングの硬さ分布を図10に示す。内外周面間の硬さ
分布は略U字形であり、素地部の硬さHRCは28〜3
1、合計硬化層厚さはブッシング肉厚に対し0.58で
ある。
【0021】上述の本発明である実施例1と従来法であ
る比較例との履帯用ブッシングの品質に関し、詳細に説
明する。建設機械での品質を推定すべく、両例に基づく
履帯用ブッシングを製作し、テストベンチで疲労試験を
行った。図7にベンチ疲労試験結果を示す。図7(a)
において、縦軸のWは建設機械の車両1台分重量の負荷
相当であり、印●は本発明品のデ−タ、印○は従来法品
でのデ−タである。また、図7(b)は本試験で使用し
たベンチでの負荷方法の概要であり、治具21に支持さ
れた履帯用ブッシング1にプッシュロッド22を用い矢
印23の方向に2Wの負荷を繰り返し加える。供試ブッ
シング本数は、本発明品でN=9、従来法品でN=3で
ある。試験の結果、破損までの平均回数は、本発明品が
8.5×105 回、従来法品が4.9×105 回であ
る。したがって、本発明品は従来法品と比較して、約
1.7倍もの疲労寿命を有していることが分かり、しか
も全ての本発明品が従来法品と同等以上である。これは
工程の違いに起因するものであり、図6と図10とに示
すブッシングの断面硬さ分布に差異を生じる。この差異
は素地部の硬さに顕著に表れ、本発明品の硬さHRCは
17〜20、従来法品のそれは28〜31である。つま
り、本発明品の肉厚心部の硬さが低いことが、内外周面
の圧縮残留応力を大きくして、疲労強度が高くなること
を示している。
【0022】(実施例2)実施例1の一部を変更して行
った別の実施例について説明する。本実施例では、第1
工程において、圧延素材を焼なまし素材、焼ならし素材
等に変更し、素材硬さHRC10〜30程度の範囲に入
る、種々の水準の素材を使用する。第2工程において、
移動速度など高周波焼入れ条件を種々変更し、外周面側
の硬化層厚さを変化させる。第3工程において、高周波
焼入れ条件を種々変更し、本工程で内周側に形成される
内周硬化層厚さと第2工程で形成される外周硬化層厚さ
との合計した硬化層厚さが、ブッシング粗加工材の肉厚
に対して、0.35〜0.7であり、かつブッシング粗
加工材の肉厚心部には焼なまし素材、焼ならし素材等の
硬さである素地部があり、内外周面間の硬さ分布は略U
字形に調整する。以上の工程以外は実施例1と同様に行
った。なお、実施例2を行う際、内周硬化層厚さと外周
硬化層厚さとの合計した硬化層厚さが、ブッシング粗加
工材の肉厚に対して、0.35〜0.7以外のブッシン
グも製作した。
【0023】以上の実施例2の機械的特性に関し、図面
を参照しつつ詳述する。なお、本発明について分かりや
すくするため、合計した硬化層厚さがブッシング粗加工
材の肉厚に対して0.35〜0.7以外に関しても、含
めて説明する。既述のブッシング断面硬さ分布図2にお
いて、ブッシング肉厚Lに対する、主たるマルテンサイ
ト組織である外周硬化層厚さLoと主たるマルテンサイ
ト組織である内周硬化層厚さLiとを加えた合計硬化層
厚さの比を硬化層比((Lo+Li)/L)とする。実
施例2で得られたブッシングについて、硬化層比をパラ
メ−タとする時の、内周面の円周方向残留応力を図8に
示す。この残留応力はX線法により測定した。素地硬さ
HRC10および30について図示してあるが、素地硬
さが10および30の範囲内にある場合は、図示の2曲
線の間にある。前述のように、疲労強度を確保するため
には圧縮残留応力が生じている方が有効であり、硬化層
比が約0.7以下では内周面の円周方向残留応力は圧縮
残留応力となる。また、イ)素地部の硬さの低い方が圧
縮残留応力は大きくなり、ロ)硬化層比が大きすぎると
残留応力は引張残留応力に転じる、ことも明らかになっ
た。
【0024】また、実施例2で得られたブッシングにつ
いて、硬化層比をパラメ−タとする時の、残留応力減衰
率を図9に示す。この残留応力減衰率は、建設機械など
での長期使用における、ブッシング内外周面の圧縮残留
応力の低下、すなわち疲労強度の低下を推定できる。図
9において、残留応力減衰率は、(初期のブッシング内
周面の円周方向残留応力σ0 −繰り返し負荷後のブッシ
ング内周面の円周方向残留応力)/σ0 、より求めた。
繰り返し負荷条件は、ブッシング内周面の応力が117
6N/mm2 となる負荷で10000回の繰り返しであ
る。図中には素地硬さHRC10および30について示
してあるが、素地硬さが10および30の範囲内にある
場合は、図示の2曲線の間にある。この図より、硬化層
比が小さい場合、ブッシングに高負荷がかかると、素地
部が降伏し、硬化層に生じている圧縮残留応力が開放さ
れ、減衰することが推察され、ハ)素地部の硬さが低い
ほど減衰しやすい、ニ)硬化層比が低いほど減衰しやす
い、ホ)硬化層比をある程度以上大きくすれば素地部の
硬さに関係なく減衰しない、等が明らかになる。したが
って、長期使用における疲労強度が確保されるために
は、残留応力減衰率が小さいか好ましくは0であること
が必要であり、本実施例の硬化層比0.35以上であれ
ば残留応力減衰率0を満足する。
【0025】したがって、前述の実施例2に関する円周
方向残留応力および残留応力減衰率から、硬化層比は
0.35〜0.7が好ましいことが分かる。なお、該硬
化層比の範囲は、高周波焼入れ前の種々の素材の硬さを
包括する場合であり、素地硬さが低い場合、たとえば素
地硬さHRC10で圧縮残留応力を得る為には硬化層比
0.8以下であればよい。
【0026】以上、実施例1および2について詳述した
が、履帯用ブッシングにおいて、圧延素材、焼なまし素
材、焼ならし素材あるいは硬さHRC10〜30程度の
素材を使用し、内外周面に高周波焼入れを施し、必要に
応じて焼戻しを行い、肉厚心部に素材硬さを残存した素
地部を有する略U字形の硬さ分布とすればよい。また、
硬化層比は好ましくは0.35〜0.7にすると良い。
【0027】なお、材料は中炭素低合金鋼について開示
したが、限定するものではなく、他の鋼でも良い。ま
た、高周波焼入れ工程で、外周面焼入れを先に施した
が、内周面焼入れを先に施しても同様の成果が得られ
る。
【0028】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。高
周波焼入れ前の素材として、圧延、焼なましあるいは焼
ならし等の素材が使用できるので、油焼入れ・焼戻しに
よる調質工程が省略あるいは簡略化され、工程の管理が
容易になり、かつコストが改善されると共に、油焼入れ
での歪みが小さくなり、仕上げ加工の省略も可能であ
る。また、内外周側に硬化層を有し、肉厚心部に硬さの
低い素材硬さを残存した素地部を有する略U字形の硬さ
分布とすることで、内外周面の圧縮残留応力を大きくす
ることが容易となり、従来のブッシングと同程度以上の
疲労強度を持つ高品質の履帯用ブッシングが得られる。
前述した、硬さの低い素地部と略U字形の硬さ分布から
ブッシングの靭性が高く、高周波焼入れ後の焼戻し工程
の省略が可能である。さらに、ブッシング肉厚に対す
る、外周硬化層厚さと内周硬化層厚さとを加えた合計硬
化層厚さの比である硬化層比は、0.35〜0.7と広
範囲で高品質の履帯用ブッシングが得られるので、厚肉
なブッシングの場合、硬化層が比較的浅くてよく、高周
波焼入れに要するエネルギ−コストの上昇を抑制できる
と共に、熱処理条件も幅広く選定できるため、1台の高
周波焼入れ装置が効率よく活用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる履帯用ブッシングの断面図であ
る。
【図2】本発明に係わるブッシングの断面硬さ分布の模
式図である。
【図3】本発明に係わるブッシングの残留応力分布の模
式図である。
【図4】本発明に係わる建設機械などの履帯の概要図で
ある。
【図5】実施例1に係わる外周面焼入れ後のブッシング
粗加工材の断面硬さ分布図である。
【図6】実施例1に係わる最終製品でのブッシングの硬
さ分布図である。
【図7】実施例1に係わるベンチ疲労試験結果を示す図
である。
【図8】実施例2に係わる内周面の円周方向残留応力を
示す図である。
【図9】実施例2に係わる残留応力減衰率を示す図であ
る。
【図10】従来の最終製品でのブッシングの硬さ分布図
である。
【符号の説明】
1 ブッシング 1a 外周面 1b 内周面 1c 肉厚心部 11 履帯 L ブッシング肉厚 Lo 外周硬化層厚さ Li 内周硬化層厚さ Lm 素地部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−78746(JP,A) 特開 平5−78745(JP,A) 特開 平1−165725(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B62D 55/21 C21D 9/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブッシング(1)の外周面(1a)およ
    び内周面(1b)から肉厚心部(1c)に向かって、そ
    れぞれ高周波焼入れによる主たるマルテンサイト組織で
    ある硬化層が形成されていると共に、両硬化層の間の肉
    厚心部(1c)には、高周波焼入れ前の圧延素材の硬さ
    HRC17〜20が残存した素地部(Lm)を有してお
    り、内外周面間の硬さ分布が略U字形であることを特徴
    とする履帯用ブッシング。
  2. 【請求項2】 高周波焼入れにおける外周面(1a)か
    らの主たるマルテンサイト組織である外周硬化層厚さ
    (Lo)と内周面(1b)からの主たるマルテンサイト
    組織である内周硬化層厚さ(Li)とを加えた硬化層厚
    さは、ブッシング肉厚(L)に対して0.35〜0.7
    である請求項1記載の履帯用ブッシング。
  3. 【請求項3】 (イ)圧延素材をブッシング粗加工材に
    する機械加工を施す第1工程、(ロ)前記ブッシング粗
    加工材の外周面に高周波焼入れを施し、主たるマルテン
    サイト組織である外周硬化層を形成すると共に、内周面
    側は圧延素材の硬さである第2工程、(ハ)前記ブッシ
    ング粗加工材の外周面を冷却しつつ、内周面に高周波焼
    入れを施し、主たるマルテンサイト組織である内周硬化
    層を形成すると共に、残存する前記外周硬化層と内周硬
    化層との間の素地部は圧延素材の硬さHRC17〜20
    である第3工程、(ニ)焼戻しする第4工程、(ホ)仕
    上げ加工する第5工程、以上の工程からなることを特徴
    とする履帯用ブッシング製造方法。
  4. 【請求項4】 (ロ)は、前記ブッシング粗加工材の内
    周面に高周波焼入れを施し、主たるマルテンサイト組織
    である内周硬化層を形成すると共に、外周面側は圧延素
    材の硬さである第2工程、であり、(ハ)は、前記ブッ
    シング粗加工材の内周面を冷却しつつ、外周面に高周波
    焼入れを施し、主たるマルテンサイト組織である外周硬
    化層を形成すると共に、残存する前記内周硬化層と外周
    硬化層との間の素地部は圧延素材の硬さHRC17〜2
    である第3工程、である構成からなる請求項記載の
    履帯用ブッシング製造方法。
  5. 【請求項5】 (ニ)焼戻しする第4工程と、(ホ)仕
    上げ加工する第5工程との2工程において、少なくとも
    1工程を省略する請求項3又は4のいずれか1項に記載
    の履帯用ブッシング製造方法。
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