JP3346887B2 - 高窒素オーステナイト・ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒 - Google Patents

高窒素オーステナイト・ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒

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JP3346887B2
JP3346887B2 JP10437194A JP10437194A JP3346887B2 JP 3346887 B2 JP3346887 B2 JP 3346887B2 JP 10437194 A JP10437194 A JP 10437194A JP 10437194 A JP10437194 A JP 10437194A JP 3346887 B2 JP3346887 B2 JP 3346887B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は発電プラント等の高温・
高圧環境下で使用されるオーステナイト・ステンレス鋼
の溶接に適用する被覆アーク溶接棒に係わるものであ
る。詳しくは、δフェライトの晶出を抑制した高窒素オ
ーステナイト・ステンレス鋼の溶接において、その溶接
部が高温・高圧環境に曝されても強度・耐高温割れ性・
耐食性等の諸特性が優れ、かつ全姿勢で溶接作業性が優
れる被覆アーク溶接棒に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、火力発電においても省エネルギー
の観点から効率向上の動きが活発になってきている。こ
うした背景から、熱効率の向上を可能とするボイラー用
鋼管等の用途に、δフェライトの晶出を抑制した高Cr
−高Ni−高N系でMo、Nb、Ti、B等を添加した
新しいオーステナイト・ステンレス鋼管が開発され、す
でに実用化されつつある。このような趨勢から溶接材料
面においても、鋼材と同様な特性を確保することが必要
になってきている。この種の溶接材料としては、特開平
5−69187号公報「高Cr高Nオーステナイト鋼用
溶接材料」のTIGワイヤが開示されており、この溶接
用ワイヤはδフェライトの晶出抑制および高温強度の確
保のために25Cr−20Ni−0.5%Nb−0.2
N−0.06C系とし、さらに溶接高温割れを防ぐため
にMgの添加およびP、Sを制限したものとなってい
る。
【0003】一方、被覆アーク溶接棒は、まだ開発途上
にあるため、従来からある高窒素オーステナイト系ステ
ンレス鋼用として21Cr−9Ni−0.2N−0.0
4C系および25Cr−14Ni−2.5Mo−0.3
N−0.04C系等の「高窒素Cr−Niオーステナイ
ト鋼被覆アーク溶接棒」が特開昭53−37554号公
報に開示されているだけである。この被覆アーク溶接棒
は27Cr−22Ni−0.3N−0.04C系および
25Cr−13Ni−2.5Mo−0.3N−0.04
C系等の心線に炭酸塩−金属弗化物系の被覆剤を被覆し
て、被覆剤の水分を抑制するとともにAlおよびSiを
心線または被覆剤に添加することによって高窒素オース
テナイト・ステンレス鋼の溶接においてブローホールの
発生を防止できる旨記載されている。
【0004】しかし、この被覆アーク溶接棒は高窒素オ
ーステナイト・ステンレス鋼の溶接において、ブローホ
ールの発生防止を目的としており、δフェライトの晶出
を完全に抑制したものではない上に、心線にNb、T
i、Bの添加やOの制御をしておらず、被覆剤の炭酸塩
および金属粉末中のCも制御していないため、本発明が
目標とするような高温・高圧下に曝された溶接部の強度
・延性・耐食性等諸特性が得られず、しかもばらつきの
大きいものとなっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記したよ
うな高温・高圧環境下で使用される完全オーステナイト
組織の高窒素ステンレス鋼に用いる被覆アーク溶接棒の
課題を解決しようとするものである。
【0006】すなわち、特開昭53−37554号公報
に開示されている従来の被覆アーク溶接棒は、Cr、N
i、N量を制御したステンレス鋼心線を用いており、こ
の点からすれば高強度で耐食性にも優れたものであると
理解できるが、このようなCr、Ni、N量を調整する
方法だけでは、最近要求値が高まりつつある高温強度お
よび耐食性の確保とともに、良好な耐高温割れ性を満足
させることは困難であった。また、この被覆アーク溶接
棒の被覆剤は炭酸塩−金属弗化物系でありSiO2 やC
r、Mn、Al等の金属粉末を添加できるものの、被覆
剤中のCを制御しておらず、ばらつきのない安定した溶
着金属性能が確保できないという問題もあった。
【0007】つぎに、特開平5−69187号公報にあ
るMgを必須とするTIGワイヤ成分等の知見を溶接棒
の心線成分設計に応用したとしても、アークの安定性が
著しく損なわれる等溶接作業性の点から実用化が困難で
あった。このように心線へMgを添加するケースは、従
来の溶接棒においては極めて少なく、Mg添加による溶
接作業性劣化について、一般的に全く知られていない。
【0008】かかる現状に鑑み、本発明は従来の知見や
技術だけではなし得ない「高温強度・延性・耐食性およ
び耐高温割れ性の確保」という課題を解決するためにな
されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高温・高
圧環境下において高い強度と優れた耐食性を有しなが
ら、脆化しにくく、しかも耐高温割れ性が良好な溶着金
属を確保するとともに、鋼管の裏波溶接が容易になるよ
うな良好な作業性も確保することを目標にして、被覆ア
ーク溶接棒の心線および被覆剤の組成上から種々の検討
を実施した。その結果、以下の知見を得るに至った。
【0010】高温・高圧下における強度、耐食性、脆化
等の諸特性を優れたものとするためには、まず溶着金属
の基本成分を25%Ni−20%Cr−1%Mo−0.
2N系とし、δフェライトの晶出を抑制する必要があ
る。
【0011】被覆アーク溶接棒において、このような溶
着金属成分を得るためには、これら合金成分の添加は主
として心線中から添加することになるが、心線中のNi
およびMo添加量は溶着金属の目標値とほぼ等量の添加
で良い。しかし、溶接中に酸化し易いCrの添加量につ
いては、その消耗分等も考慮に入れて決めなければなら
ない。
【0012】この基本成分系において、さらに高温強度
を高める成分としてC、Nb、TiおよびBの添加が有
効である。
【0013】本発明は、以上の知見を基にして構成され
たものであり、その要旨とするところは、心線全重量に
対し重量%で(以下同じ)、Cが0.01〜0.12
%、Siが0.05〜0.5%、Mnが0.5〜1.5
%、Pが0.01%以下、Sが0.008%以下、Ni
が22〜28%、Crが18〜28%、Moが0.5〜
2.5%、Nbが0.05〜0.6%、Tiが0.02
〜0.2%、Bが0.001〜0.01%、Nが0.1
〜0.3%、Oが0.002〜0.025%、Mgが
0.01%以下、残部Feおよび不可避的不純物の組成
の心線の周囲に、被覆剤全重量に対し、炭酸塩を15〜
45%、SiO2 を3〜17%、金属弗化物を5〜30
%、金属粉末を1〜45%含有し、かつ前記炭酸塩中の
Cが2〜5.5%、金属粉末中のCが0.001〜0.
2%である被覆剤が被覆率20〜40%で被覆されてい
ることを特徴とする高窒素オーステナイト・ステンレス
鋼用被覆アーク溶接棒にある。
【0014】
【作用】本発明の高窒素オーステナイト・ステンレス鋼
用被覆アーク溶接棒が目標とする必須性能として、高温
・高圧環境下における優れた耐食性・強度・耐脆化特性
の確保とともに、良好な耐高温割れ性や溶接作業性の確
保がある。これらすべての溶接性能を満足させるために
は、被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤の成分を調整
することにより、良好な溶接作業性を確保しつつ、高窒
素オーステナイト・ステンレス鋼の溶着金属成分をベー
スにしてC、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo、
Nb、Ti、B、N、O、Mgをそれぞれ適量範囲に制
御する必要がある。
【0015】まず心線中の各成分の限定理由について説
明する。心線中に添加するCは、被覆剤中のC添加源と
ともに溶着金属に歩留って高温強度を高めるが、適正量
を超えると耐高温割れ性の劣化を著しく助長する。従っ
て心線中のC適量範囲は0.01〜0.12%にする必
要がある。
【0016】Siは、脱酸剤として添加し、ブローホー
ル等のない清浄な溶着金属を得られるが、多量に添加す
ると高温割れの発生を助長する。従って、心線中に添加
する適量範囲は0.05〜0.5%に制御しなければな
らない。
【0017】Mnは、先のSiと同様に脱酸剤としての
効果が期待でき、窒化し易いのでブローホールがない健
全な溶着金属を保ちながら、Nの溶解量を高めることが
できる。また高温割れの防止にも有効に作用するが、多
量に添加するとスラグの剥離性を損なうことになるので
0.5〜1.5%にしなければならない。
【0018】P、Sが高温割れ感受性を高めることは一
般的に知られているが、本発明のように完全オーステナ
イト組織の溶着金属においては、Pを0.01%以下、
Sを0.008%以下に制限する必要がある。
【0019】Niは、溶着金属のオーステナイト組織を
安定化し、延性・靱性の機械的性質を高める。しかし、
心線中のNi量が高くなると被覆アーク溶接棒の耐棒焼
け性が著しく劣化するため、22〜28%に制御しなけ
ればならない。
【0020】Crは、耐食性・高温強度を良好にするた
め必須である。また先のMnと同様にNの溶解量を高め
たり、脱酸剤としても作用する反面、添加し過ぎると延
性・靱性の機械的性質を損なう。従って18〜28%が
適量である。
【0021】Moは、高温強度を高めるが、靱性の劣化
を助長するので0.5〜2.5%に制御する。
【0022】Nb、Ti、Bは、ともに耐高温割れ性に
対しては悪影響を及ぼすものの、高温強度を高めるとい
う利点がある。これらの短所を抑えながら長所を引き出
すためには、これらすべての成分をともに必須としてN
bを0.05〜0.6%、Tiを0.02〜0.2%、
Bを0.001〜0.01%に制御しなければならな
い。
【0023】心線から溶着金属に添加されるN量は、溶
接中のシールドが完全であれば大気中のNの侵入を阻止
できるため、心線と溶着金属のN量はほぼ当量になる。
しかし、Nの上限添加量には限界があり、Nと親和力の
強いCr、Mn等の含有量によって必然的に決まる。N
は、高温強度および耐食性を高める上で心線中に0.1
%以上必要であるが、心線中にNが固溶できる最大量は
0.3%程度である。
【0024】O(酸素)は、心線中や被覆剤中から溶着
金属に添加するCr、Mn、Nb、Ti、B、C等の歩
留率を低下するので、間接的ではあるが高温強度や耐食
性等の溶接諸性能に影響を及ぼすので0.002〜0.
025%に制御する必要がある。
【0025】Mgは、脱酸剤としての効果があるもの
の、心線中にMgを所定量以上に含有すると、心線の溶
融速度を高める結果、アーク切れを多発させるので溶接
を安定して持続させることが難しくなる。したがって
0.01%以下に制限する必要がある。
【0026】その他の心線中に含有する残部成分として
はFeおよび不可避的不純物がある。
【0027】つぎに、被覆剤中の各成分の限定理由につ
いて説明する。溶着金属に添加されるCは、心線中のC
とともに、被覆剤中に不純物として含まれるCや炭酸塩
中のCからもたらされるので、これらのCの添加源につ
いて、それぞれ適正範囲に制御しなければ溶着金属のC
含有量は不安定なものとなる。例えば、Cは高温強度を
高める一方、適正添加量を超えると耐高温割れ性が著し
く劣化する性質があるので、溶着金属性能を安定化させ
るためにもC量の制御は必須である。
【0028】被覆剤中の炭酸塩は、溶接中にCO2 を発
生してアークの吹付けを強くするとともに、スラグの流
動性を良くするが、過多にするとスパッタが多発し、ビ
ード形状も劣化するので15〜45%に制御しなければ
ならない。炭酸塩としては炭酸カルシウム、マグネサイ
ト、ドロマイト、炭酸バリウム等を添加できる。
【0029】SiO2 は溶融スラグに適度の粘性を持た
せ、全姿勢溶接でのビード形状を良好にするが、過多に
なると立向姿勢のビード形状が凸になるので3〜17%
にする必要がある。SiO2 の添加源としては、珪砂、
カリ長石、セリサイト、固着剤に用いる水ガラス等があ
る。
【0030】金属弗化物はスラグの融点や粘性を下げ、
かつ溶込みを深くするので、融合不良やブローホールの
欠陥防止に有効である。しかし過多になるとスパッタが
多発し、ビード形状が凸になるので5〜30%に制御し
なければならない。
【0031】金属粉末は溶着金属の成分調整を目的とし
た合金剤および脱酸剤として添加するものであり、C
r、Ni、Mn、Mo、Ti、Fe−Nb、Fe−B、
Fe−Al等の粒径が350μm以下の粉末を指す。1
%以上添加されるが45%を超えると被覆剤の耐熱性が
著しく劣化するので、上限を制限しなければならない。
【0032】炭酸塩中のCは、溶接中に溶融金属を保護
するCO2 発生量に関係するため、大気雰囲気を遮断
し、安定した溶着金属成分を得るために有効である。炭
酸塩が溶接中に発生するCO2 量は炭酸塩中のCに比例
するから、溶着金属のC量やその他の成分の含有量にも
影響を及ぼすので、2〜5.5%に制御しなければなら
ない。
【0033】金属粉末中のCは、前記の合金剤や脱酸剤
中に含まれるC量を指し、これらのCは、心線中のCと
同様に溶着金属に歩留り易く、その作用も同様であり
0.001〜0.2%に制御しなければならない。
【0034】被覆剤中に添加できるその他成分として、
CaO、MgO、Al23 、Na2 O、K2 O、Fe
O、MnO、TiO2 等があり、アークの安定性、スラ
グの流動性等作業性目的の必要に応じて、単独あるいは
2種類以上を複合して使用できるが、いずれの場合にお
いても、その許容範囲は必須成分の構成比を損なわない
程度の、被覆剤全重量で10%以下にとどめる必要があ
る。
【0035】被覆率とは被覆アーク溶接棒全重量に対す
る被覆剤全重量の占める割合を意味し、少なすぎたり、
多すぎても溶接時のアークは不安定になり、溶着金属成
分もばらつくことになる。また、少なすぎると溶接棒が
棒焼けを起こし、多すぎるとスラグ量は過多になるので
20〜40%の範囲に制御しなければならない。
【0036】以上のように本発明の高窒素オーステナイ
ト・ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒は心線中のC、M
n、Ni、Cr、Mo、Nb、Ti、B、N、O等の成
分を適量範囲に制御し、かつ所定の割合に制御した被覆
剤において、その被覆剤中の炭酸塩、SiO2 、金属弗
化物、金属粉末を適正範囲に制御するとともに、炭酸塩
や金属粉末に含まれるC量を制御することにより、高温
・高圧下でも高強度・高耐食性の耐高温割れ性に優れる
溶着金属が得られ、全姿勢の溶接作業性も良好にするこ
とができる。
【0037】ここで、被覆アーク溶接棒の製造方法につ
いて言及すると、心線と配合・混合した被覆剤を準備し
てから被覆剤に固着剤(珪酸カリおよび珪酸ソーダの水
溶液)を添加しながら湿式混合を行い、心線の周囲に塗
装する。また塗装後150〜400℃で約1〜3時間の
乾燥・焼成を行う。
【0038】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。本
発明被覆アーク溶接棒の適用鋼種は高温環境で使用され
る高窒素オーステナイト・ステンレス鋼であり、その他
の溶接施工条件は市販汎用ステンレス溶接棒と特に差異
のない一般的なものである。表1に供試心線の化学成分
を示す。また表2ないし表5に供試心線と被覆剤の組合
わせによる被覆アーク溶接棒の組成を示す。表6には使
用した母材の化学成分を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】表7ないし表10に表2ないし表5の被覆
アーク溶接棒と母材を用いて溶接した溶着金属の分析結
果、引張試験結果、衝撃試験結果、側曲げ試験結果、高
温割れ試験結果、耐食性試験結果、X線試験結果、溶接
作業性試験結果を示す。
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
【表10】
【0050】溶接方法は棒径3.2mmの溶接棒を用
い、溶接電流70〜100A(AC)、アーク電圧21
〜25V、溶接速度100〜250mm/minで図1
に示す開先形状の試験板を治具で拘束してから1パス目
を裏波溶接し、その上を積層盛りした。図1において、
板厚t=16mm、開先角度θ=60°、ルートフェー
スr=1.5mmとした。なお、溶接作業性試験は下向
および立向上進の各姿勢で行ったが、その他の諸試験は
下向だけで実施した。
【0051】高温割れ試験は溶接部断面マクロ試験片を
6個採取し、湿式研磨およびエッチング後、100〜2
00倍の顕微鏡にて割れの有無を観察した。また引張試
験片は図2の要領でJIS Z3111 A2号試験片
を採取した。衝撃試験は700℃×1000および30
00時間の時効処理した溶着金属から図3の要領でJI
S Z3111 4号試験片を採取した。また側曲げ試
験は溶接部から厚さ9.5mmの試験片を採取し、曲げ
半径18mm、曲げ角度180°の条件で溶接部断面の
曲げ延性を調査した。
【0052】耐食性試験は図4の要領で試験片を採取
し、石炭焚ボイラの環境を想定した混合ガス(0.5%
SO2 +5%O2 +15%CO2 +bal.N2 )雰囲
気のもとで人工合成灰(1.5mol K2 SO4
1.5mol Na2 SO4 +1.0mol Fe2
3 )中における700℃×100hrの条件で腐食減量
を調査した。なお上記図2ないし図4において1が母
材、2が溶接金属、3がそれぞれの試験片採取位置であ
る。またX線試験は溶接部のX線透過写真を撮影し、J
IS Z3104の判定基準により評価した。
【0053】表2ないし表5および表7ないし表10の
被覆アーク溶接棒記号No.1〜21は比較例であり、
No.22〜36は本発明である。表7ないし表10か
ら明らかなように、No.1は心線中のCが0.01%
未満で、被覆剤中の炭酸塩のCも2%未満のため高温強
度が低すぎる。またNo.2は心線中のCが0.12%
を超え、被覆剤中の炭酸塩のCも5.5%を超えてお
り、また金属粉末のCも0.2%を超えたため高温割れ
が発生し易い。またNo.3は心線中のSiが0.05
%未満で、Mnも0.5%未満のためブローホールが発
生し易い。
【0054】No.4は心線中のSiが0.5%を、T
iが0.2%を、Bが0.01%をいずれも超えている
ため高温割れが発生し易い。またNo.5は心線中のM
nが1.5%を超えているため、スラグの剥離性が悪
い。またNo.6は心線中のPが0.01%を、Sが
0.008%をそれぞれ超えているため高温割れが発生
し易い。No.7はNiが22%未満で、Crが28%
を超えており、またMoも2.5%を超えているため靱
性が低い。
【0055】No.8はNiが28%を超えているため
耐棒焼け性が悪く、No.9はCrが18%未満で、M
oも0.5%未満のため高温強度が低い。またNo.1
0はNbが0.6%を超えているため高温割れが発生し
易く、またNo.11はNが0.1%未満のため高温強
度が低い。またNo.12はOが0.002%未満のた
め、C、Si、Nb、Ti、Bの歩留りが高くなったた
め、高温割れが発生し易く、逆にOが0.025%を超
えているNo.13は高温強度が低い。
【0056】No.14はMgが0.01%を超えてい
るためアークが切れ易く、不安定になっている。またN
o.15は被覆剤中の炭酸塩が15%未満のためアーク
が弱く、スラグの流動性も悪いため凸ビードになり易
い。またNo.16は炭酸塩が45%を超えているた
め、スパッタが多く、均一なビードが得られない。また
No.17はSiO2 が3%未満のため、ビード形状が
悪く、No.18は17%を超えているため立向姿勢の
作業性が悪い。
【0057】No.19は金属弗化物が5%未満のため
スラグ流動性が悪く、30%を超えるNo.20はスパ
ッタが多い。またNo.21は金属粉末が45%を超え
ているため耐棒焼け性が悪い。これに対して本発明のN
o.22〜36は、いずれも強度、靱性、耐食性が良好
であり、X線性能や耐高温割れ性、溶接作業性も優れて
いる。
【0058】
【発明の効果】以上のように本発明の高窒素オーステナ
イト・ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒は、発電プラン
ト等の高温・高圧環境で使用される高窒素オーステナイ
ト・ステンレス鋼の溶接において良好な溶接作業性を有
し、高温割れおよびブローホール、融合不良等の欠陥防
止が容易であって、その溶接部は強度・延性・靱性・耐
食性が優れている。従って高窒素オーステナイト・ステ
ンレス鋼の被覆アーク溶接の作業能率が向上するととも
に、健全で高品質の溶接部を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の溶接試験における開先形状を示す断面
【図2】溶着金属の引張試験片採取位置を示す断面図
【図3】溶着金属の衝撃試験片採取位置を示す断面図
【図4】溶着金属の腐食試験片採取位置を示す断面図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−220594(JP,A) 特開 平2−205293(JP,A) 特開 昭61−182897(JP,A) 特開 昭53−37554(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/30 B23K 35/365

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 心線全重量に対し重量%で、Cが0.0
    1〜0.12%、Siが0.05〜0.5%、Mnが
    0.5〜1.5%、Pが0.01%以下、Sが0.00
    8%以下、Niが22〜28%、Crが18〜28%、
    Moが0.5〜2.5%、Nbが0.05〜0.6%、
    Tiが0.02〜0.2%、Bが0.001〜0.01
    %、Nが0.1〜0.3%、Oが0.002〜0.02
    5%、Mgが0.01%以下、残部Feおよび不可避的
    不純物の組成の心線の周囲に、被覆剤全重量に対し、炭
    酸塩を15〜45%、SiO2 を3〜17%、金属弗化
    物を5〜30%、金属粉末を1〜45%含有し、かつ前
    記炭酸塩中のCが2〜5.5%、金属粉末中のCが0.
    001〜0.2%である被覆剤が被覆率20〜40%で
    被覆されていることを特徴とする高窒素オーステナイト
    ・ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒。
JP10437194A 1994-04-20 1994-04-20 高窒素オーステナイト・ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒 Expired - Fee Related JP3346887B2 (ja)

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