JP3340233B2 - 捻回特性の優れた高強度鋼線およびその製造方法 - Google Patents
捻回特性の優れた高強度鋼線およびその製造方法Info
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ード、ホースワイヤ、ACSR線、コントロールケーブ
ル、PWSワイヤ、PCワイヤなどの鋼線の製造に用い
られる伸線加工における伸線方法に関する。
炭素鋼極細線は、通常必要に応じて熱間圧延した後に調
整冷却した直径4.0〜5.5mmの線材を一次伸線加工
後、最終パテンティング処理を行ない、その後ブラスメ
ッキ処理をへて最終湿式伸線加工により製造されてい
る。このような極細鋼線の多くは、2本撚り、5本撚り
などの撚り線加工を施した状態でスチールコードとして
使用されている。
鋼材が開発されている。例えば、特開昭60−2048
65号公報には、Mn含有量を0.3%未満に規制して
鉛パテンティング後の過冷組織の発生を抑え、C,S
i,Mn等の元素量を規制することによって、撚り線時
の断線が少なく高強度および高靱延性の極細線およびス
チールコード用高炭素鋼線材が開発されており、また、
特開昭63−24046号公報には、Si含有量を1.
00%以上とすることによって鉛パテンティング材の引
張強さを高くして伸線加工率を小さくした高靱性高延性
極細線用線材が開示されている。
るものの一つとして硬質の酸化物系非金属介在物があげ
られる。一般的に酸化物系介在物の中でもAl2 O3 ,
SiO2 ,CaO,TiO2 ,MgO等の単組成の介在
物は硬度も高く非延性である。従って伸線性に優れた高
炭素鋼線材製造のためには、溶鋼の清浄性を高めるとと
もに、酸化物系介在物を低融点化し軟質化する必要があ
ることは公知の事実である。
の軟質化を図る方法として、特公昭57−22969号
公報に示される伸線性の良好な高炭素鋼線材用鋼の製造
法及び特開昭55−24961号公報に示される極細線
の製造方法が示されているが、これらの技術の基本思想
は、Al2 O3 −SiO2 −MnOの三元系の酸化物系
非金属介在物の組成制御に限定されているものであっ
た。
は、非金属介在物をAl2 O3 ,SiO2 ,MnOの三
元状態図におけるスペーサータイト領域にすることによ
って製品の伸線性を改善することが提案され、又特開昭
50−81907号公報では溶鋼中に添加するAl量を
規制することによって有害な介在物を減少せしめて、伸
線性を改善する方法を開示している。
いては、非延性介在物指数20以下のスチールコード製
造に関し、Al完全規制の下で取鍋溶鋼内にキャリアー
ガス(不活性ガス)と共にCaO含有フラックスを吹込
み、予備脱酸した後、Ca,Mg,REMの一種または
二種以上を含む合金を吹込み介在物を軟質化する方法を
提案している。
い、さらに高強度でかつ延性な材料が求められるように
なり、炭素量の増加によるさらなる高強度化と良好な伸
線性の双方を満足することが、求められるようになっ
た。
ている鋼を替えることなく、より高強度で捻回特性の優
れた鋼線の製造を可能とする方法を提供する。
するもので、その要旨は以下のとおりである。 (1)高強度鋼線の製造に用いられる最終伸線加工工程
において、個別の2個の異なる穴径を持つ引き抜きダイ
スであって、前段のダイスでの減面率A、後段での減面
率Bとした時のB/(A+B)の値が0.5以下、か
つ、前後段2つのダイスの総減面率(A+B)が14.
3%以下である引き抜きダイスを用い、2つの引き抜き
ダイスの間に引き抜き力を与えることなく引き抜く伸線
加工を、少なくとも1回以上行うことを特徴とする捻回
特性の優れた高強度鋼線の製造方法。
た高強度鋼線の製造方法を用いて製造され、下記およ
びの特徴を有することを特徴とする捻回特性の優れた
高強度鋼線。 表層から中心軸に向かって、少なくと
も深さ0.2R(R:ワイヤの半径)の間は、ワイヤの
中心軸方向の残留応力が圧縮側に調整されている。
周方向に測定された粗度におけるピーク深さが10μm
以下である。
た高強度鋼線の製造方法を用いて製造され、下記〜
の特徴を有することを特徴とする捻回特性の優れた高強
度鋼線。 ワイヤの任意の周で測定される表層の長さ
方向の残留応力において、引張応 力が働く領域の割合が
30%以下である。 引張応力が働く領域が2つ以上
連続して存在しない。 周方向に測定された粗度にお
けるピーク深さが10μm以下である。
とする上記(2)に記載の捻回特性の優れた高強度鋼
線。
特徴とする上記(2)、(3)または(4)に記載の捻
回特性の優れた高強度鋼線。
る。以下、本発明の伸線方法をダブルダイス法と呼ぶ。
Cは経済的かつ有効な強化元素であるが、この初析フェ
ライトの析出量低下にも有効な元素である。従って、引
張強さ3500MPa以上の極細線とし延性を高めるため
には、Cは少なくとも0.7%以上とすることが必要で
あるが、高すぎると延性が低下し伸線性が劣化するの
で、その上限は1.1%とする。
り、従ってその含有量があまりに少ないとき、脱酸効果
が不十分となるのでその添加量を0.1%以上とする。
また、Siは熱処理後に形成されるパーライトの中のフ
ェライト相に固溶しパテンティング後の強度を上げる
が、反面フェライトの延性を低下させ伸線後の極細線の
延性を低下させるため1.5%以下とする。
0.1%以上添加する。しかし、多量のMnの添加は偏
析を引き起こしパテンティングの際にベイナイト、マル
テンサイトという過冷組織が発生しその後の伸線性を害
するため1.5%以下とする。本発明のような過共析鋼
の場合、パテンティング後の組織においてセメンタイト
のネットワークが発生しやすくセメンタイトの厚みのあ
るものが析出しやすい。この鋼において高強度高延性を
実現するためには、パーライトを微細にし、かつ先に述
べたようなセメンタイトネットワークや厚いセメンタイ
トを無くす必要がある。
出現を抑制しさらに、パーライトを微細にする効果を持
っている。しかし、多量の天下は熱処理後のフェライト
中の転位密度を上昇させるため、引き抜き加工後の極細
線の延性を著しく害することになる。従って、Crを添
加する場合、その添加量はその効果が期待できる0.1
%以上としフェライト中の転位密度を増加させ延性を害
することの無い0.5%以下とする。
よりその効果を発揮する0.1%以上添加する。Niも
添加量が多くなり過ぎるとフェライト相の延性を低下さ
せるので上限を1.0%とする。Cuは線材の腐食疲労
特性を向上させる元素であるので、必要によりその効果
を発揮する0.1%以上添加することが望ましい。Cu
も添加量が多くなり過ぎるとフェライト相の延性を低下
させるので上限を0.8%とする。
ためSの含有量を0.020%以下とし、PもSと同様
に線材の延性を害するので、その含有量を0.020%
以下とするのが望ましい。最終仕上ダイスに2枚のダイ
スを用いると、ワイヤに導入される残留応力をコントロ
ールすることが可能となる。これを図1に示す。横軸
に、半径R0のワイヤの表層からの位置を半径R0で割
って規格化した値を取り、縦軸に、ワイヤの長手方向の
残留応力を取っている。従来の方法で0.3mmφのワイ
ヤを製造した場合を〇で示し、本発明法に従った場合を
●で示す。本発明を用いることにより、ワイヤ表層部の
残留応力を、この場合は、引張応力から圧縮応力に変え
ることができることが判る。このように、本発明法を用
いるとワイヤ表層の残留応力をコントロールできるの
で、捻回特性の優れたワイヤを得ることが可能となる。
た時のB/(A+B)の値が0.5を越えた場合、残留
応力の改善効果が表れないので、0.5以下とする。こ
の結果、表層から中心軸に向って、少なくとも深さ0.
2R(R:ワイヤの半径)の間は、ワイヤの中心軸方向
の残留応力が圧縮側に調整されたワイヤとなる。このよ
うに調整する理由は、デラミネーションの発生を抑制す
るためである。
14.3%を越えた場合、伸線加工が困難となるので、
14.3%以下とする。このダブルダイスを用いて伸線
加工を行った場合、製造された鋼線は次の特徴を具備す
る鋼線となる。 1)表層から中心軸に向かって、少なくとも深さ0.2
R(R:ワイヤの半径)の間は、ワイヤの中心軸方向の
残留応力が圧縮側に調整されている。 2)ワイヤの任意の周で測定される表層における長さ方
向の残留応力において、引張応力が働く領域の割合が3
0%以下である。 3)表面粗度におけるピーク深さが10μm以下に調整
されている。
2)は、1)のように十分圧縮側に調整されていない場
合においても、ワイヤの任意の周で測定される表層にお
ける長さ方向の残留応力において、引張応力が働く領域
が30%以下の場合、デラミネーションの抑制が可能と
なる。また、本発明方法は、残留応力の調整を、ダイス
を用いて周方向に均一に行なっているため、曲げ加工な
どの場合と異なり、残留応力の周方向での分布を見た場
合、広い領域に圧縮側の残留応力を導入できる。さら
に、3)は、残留応力の調整をダイスを用いて行ってい
るため、曲げ加工やショットピーニングによる残留応力
制御の場合と異なり、これらの加工で表面疵が導入され
ないため、表面の粗度は一般的な伸線加工の場合と同等
か、スキンパス効果で、それ以上に滑らかな表面肌を得
ることができる。
きに適用することで十分な効果を得ることができるが、
仕上げ部以外においても有効で、繰り返し用いると一層
良い結果を得ることができる。
説明する。熱間圧延によって製造された表1および表2
に示される化学成分の5.5mmφと11mmφの線材をそ
れぞれ表3および表4に示す工程に従ってワイヤを製造
した。
加熱温度950℃、鉛浴温度550℃〜575℃の範囲
で処理を行うことで、表3に示す引張強さに調整され
た。なお、表3において、最終LP材はブラスめっき前
のLP材である。その後、最終伸線の際に、本発明法1
〜3、5〜14、18および19は、請求範囲に示すダ
ブルサイズ伸線を行い、製品ワイヤを得たものである。
この時の仕上前のダイス径、ダブルダイスでの前段Aの
ダイス径、後段Bのダイス径、A、B、A+Bそれぞれ
での減面率、B/(A+B)の値は表4に示す通り、本
発明範囲に調整されている。
スを使用しないこと以外は本発明法13と同じ場合であ
る。比較法27は仕上部に本発明のダブルダイスを使用
しないこと以外は本発明法14と同じ場合である。比較
法28は仕上部に本発明のダブルダイスを使用しないこ
と以外は本発明法21と同じ場合である。
の場合である。比較法30はA+Bが40%以上の場合
である。表3および表4の本発明法1〜3、5〜14、
18および19、比較法26〜30に従って製造された
ワイヤを用いて、残留応力測定、表面粗度測定、引張試
験、捻回試験を行い、機械的性質を調査した。この結果
を表5に示す。
R(R:ワイヤの半径)の間は、ワイヤの中心軸方向の
残留応力が圧縮側に調整されている。 周方向に測定された粗度における、ピーク深さが1
0μm以下である。 以上の2項目を満足する場合を○、満足しない場合を×
で示した。
ワイヤの任意の周で測定される表層の長さ方向の残留
応力において、引張応 力が働く領域の割合が30%以下
である。 引張応力が働く領域が2つ以上連続して存
在しない。 周方向に測定された粗度におけるピーク
深さが10μm以下である。以上の3項目を満足する場
合を〇、満足しない場合を×で示した。
は残留応力規定Iあるいは残留応力規定IIを満足すると
共に、高い引張強さと優れた捻回特性を示し、さらに、
デラミネーションの発生が無い。比較鋼26,27,2
8は引張強さ、絞り値は変らないが、捻回の際にデラミ
ネーションが発生し、ワイヤ特性が低下している。
いないが、捻回の際にデラミネーションが発生し、ワイ
ヤ特性が低下している。比較鋼30はA+Bが大きすぎ
るため伸線加工ができなかった。
特性の優れたワイヤを得ることができる。
置と残留応力との関係を示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 高強度鋼線の製造に用いられる最終伸線
加工工程において、個別の2個の異なる穴径を持つ引き
抜きダイスであって、前段のダイスでの減面率A、後段
での減面率Bとした時のB/(A+B)の値が0.5以
下、かつ、前後段2つのダイスの総減面率(A+B)が
14.3%以下である引き抜きダイスを用い、2つの引
き抜きダイスの間に引き抜き力を与えることなく引き抜
く伸線加工を、少なくとも1回以上行うことを特徴とす
る捻回特性の優れた高強度鋼線の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1に記載の捻回特性の優れた高強
度鋼線の製造方法を用いて製造され、下記およびの
特徴を有することを特徴とする捻回特性の優れた高強度
鋼線。 表層から中心軸に向かって、少なくとも深さ
0.2R(R:ワイヤの半径)の間は、ワイヤの中心軸
方向の残留応力が圧縮側に調整されている。 周方向
に測定された粗度におけるピーク深さが10μm以下で
ある。 - 【請求項3】 請求項1に記載の捻回特性の優れた高強
度鋼線の製造方法を用いて製造され、下記〜の特徴
を有することを特徴とする捻回特性の優れた高強度鋼
線。 ワイヤの任意の周で測定される表層の長さ方向
の残留応力において、引張応 力が働く領域の割合が30
%以下である。 引張応力が働く領域が2つ以上連続
して存在しない。 周方向に測定された粗度における
ピーク深さが10μm以下である。 - 【請求項4】 前記鋼線が、質量%で C :0.7〜1.1% Si:0.1〜1.5% Mn:0.1〜1.5% Cr:0〜0.5%(無添加の場合を含む) Cu:0〜0.8%(無添加の場合を含む) Ni:0〜1.0%(無添加の場合を含む) 残部Fe及び不可避不純物の鋼成分からなることを特徴
とする請求項2に記載の捻回特性の優れた高強度鋼線。 - 【請求項5】 表面にめっきが施されていることを特徴
とする請求項2、3または4に記載の捻回特性の優れた
高強度鋼線。
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1994
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