JP3337415B2 - 氷上走行に適した空気入りタイヤ - Google Patents

氷上走行に適した空気入りタイヤ

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、周方向リブの形成
による接地面積の拡大によって粘着摩擦力を高めるとと
もに、この周方向リブに設けるサイピングのエッジ効果
を有効に発揮させることができ、氷上走行性能を大巾に
改善した空気入りタイヤに関する。
【０００２】
【従来の技術】降雪時及び路面凍結時に使用される空気
入りタイヤでは、従来、トラクション性に優れるブロッ
クパターンに多数のサイピングを形成し、主に、ブロッ
ク面と氷面との接触による粘着摩擦力、および前記ブロ
ックやサイピングのエッジによる路面掘りおこし摩擦力
（エッジ効果）の作用によって、氷上性能を確保してい
る。
【０００３】これに対して、近年、氷上性能の一層の向
上を図るため、周方向リブとブロックとを併用したリブ
・ブロックパターンを採用し、これによって接地面積を
高め粘着摩擦力を増大させるとともに、前記周方向リブ
に多数のサイピングを形成しそのエッジによる路面掘り
おこし摩擦力を高める手法が提案されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このも
のは、図６に示すように、周方向リブａは、周方向に連
続してのびるため周方向剛性が高く、従って、サイピン
グｂで区切られるブロック部分ａ１・・・ の倒れ込み量も
少なくなる。そのために、各エッジが氷面と鋭角に接触
しないなど有効に機能せず、エッジが多いにも係わら
ず、充分な路面掘りおこし摩擦力が得られないという問
題がある。
【０００５】なお周方向リブａの剛性を減じるために、
サイピング間隔を小さくすることが考えられるが、この
ものでは、摩耗外観不良を招くとともに、強度が低下し
サイプ底にクラックを招くなど耐久性を低下する。
【０００６】そこで本発明は、周方向リブの壁面をジグ
ザグ面で形成し、しかもこのジグザグ面の谷底部でサイ
ピングの一端を開口させることを基本として、耐久性の
低下を招くことなく、周方向リブのブロック部分におけ
る倒れ込み量を適正化でき、サイピングのエッジ効果を
それぞれ有効に発揮させうる氷上走行に適した空気入り
タイヤの提供を目的としている。
【０００７】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明は、周方向溝と、この周方向溝に交差する向き
にのびる横溝とにより形成されるブロックと、前記周方
向溝間で周方向にのびる周方向リブとを有するリブ・ブ
ロックパターンの氷上走行に適した空気入りタイヤであ
って、前記周方向リブの周方向溝に面する少なくとも一
方の壁面を、タイヤ軸方向に出入りし周方向に山谷を交
互に繰り返すジグザグ面で形成するとともに、前記周方
向リブに、前記ジグザグ面の谷底部で一端が開口してタ
イヤ軸方向にのびかつ他端が他方の壁面で開口するサイ
ピングを形成し、しかも該サイピングの間隔Ｌａを２．
０〜５．０ｍｍ、かつジグザグ面の山頂部と谷底部との
間のタイヤ軸方向の長さである振幅Ｌｂを０．５〜２．
０ｍｍとしたことを特徴としている。
【０００８】なお前記サイピングは、両端間に、ジグザ
グ状に蛇行する蛇行部分設け、エッジ成分長さを増すこ
とが氷上性能観点から好ましい。
【０００９】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
示例とともに説明する。図１において、空気入りタイヤ
１は、本例では、乗用車用のスタッドレスタイヤであっ
て、トレッド部２は、周方向にのびる周方向溝３とこの
周方向溝３に交差する向きの横溝４とにより形成される
ブロック５、および前記周方向溝３、３間で周方向にの
びる周方向リブ６を有するリブ・ブロックパターンを具
える。
【００１０】本例では、前記周方向溝３は、タイヤ赤道
ＣＯを通る中央の周方向溝３Ａと、その外側に配される
中の周方向溝３Ｂと、そのさらに外側に配される外の周
方向溝３Ｃとの５本からなり、又前記横溝４は、前記周
方向溝３Ｂ、３Ｃ間を横切る横溝４Ａ・・・ 、および周方
向溝３Ｃとトレッド縁ＴＥとの間を横切る横溝４Ｂ・・・
とを具える。
【００１１】従って、本例のリブ・ブロックパターン
は、前記周方向溝３Ａ、３Ｂ間に配される周方向リブ
６、６と、前記周方向溝３Ｂ、３Ｃ間に配される中のブ
ロック５Ａ・・・ と、周方向溝３Ｃとトレッド縁ＴＥとの
間に配される外のブロック５Ｂ・・・ とを具えている。
【００１２】本願では、前記周方向溝３および横溝４の
溝巾、溝深さ等は、特に限定されないが、従来と同程度
の寸法、例えば乗用車用タイヤでは、溝巾においては３
〜２５ｍｍの範囲、溝深さにおいては８〜１５ｍｍの範
囲のものが好適に採用できる。本例では、周方向溝３の
溝深さＨ１は、横溝４の溝深と略等しい１０ｍｍ程度と
している。
【００１３】又空気入りタイヤ１は、前記周方向リブ６
の形成によって、接地面の全面積ＴＳに対する前記ブロ
ック５および周方向リブ６の各表面積の総和ＳＳの比で
あるランド比ＳＳ／ＴＳが、本例では、０．５〜０．８
程度まで高められ、これによる実接地面積の増大によっ
て、粘着摩擦力を向上している。なお、雪上走行性能と
のバランスを考慮したとき、前記周方向リブ６は、接地
圧が高いタイヤ赤道ＣＯ上あるいはタイヤ赤道ＣＯの両
側に隣り合って形成することが好ましく、又前記高いラ
ンド比をバランス良く得るために、前記周方向リブ６の
リブ巾ＷＲの総和（本例では２×ＷＲ）を接地面巾ＴＷ
の０．１〜０．３倍の範囲とするのが良い。
【００１４】次に、前記周方向リブ６は、図２に略示す
るように、前記周方向溝３に面する少なくとも一方の壁
面Ｓ、本例では、中央の周方向溝３Ａに面する内側の側
面Ｓ１を、タイヤ軸方向に出入りする山谷を周方向に交
互に繰り返したジグザグ面７で形成している。
【００１５】又この周方向リブ６は、タイヤ軸方向にの
びる多数のサイピング９を有し、これにより、該周方向
リブ６を複数のブロック部分１０・・・ に区画している。
【００１６】ここで、前記ジグザグ面７は、タイヤ軸方
向に最も張出す山頂部１１と最も入込む谷底部１２との
間のタイヤ軸方向の長さである振幅Ｌｂを０．５〜２．
０ｍｍの範囲とした振れ巾が小なジグザグであって、本
例では、前記山頂部１１と谷底部１２とを斜辺１３で継
ぐ鋸刃状のものを開示している。このジグザグ面７は、
前記壁面Ｓのうち、少なくともトレッド面から、前記溝
深さＨ１の０．７以上の距離Ｈ２を隔たる領域Ｙに形成
することが必要であり、この領域Ｙ内において、ジグザ
グの振幅Ｌｂは、前記範囲を充足する。従って、溝底周
辺でのクラック等を防止するため、前記振幅Ｌｂを、前
記範囲内において、トレッド面側から溝底に向かって漸
減させることもできる。
【００１７】又前記サイピング９は、１．５ｍｍ以下の
巾を有する細溝状あるいは切込み状をなし、そのサイプ
深さＨ３を、前記溝深さＨ１の１．０〜０．５倍で形成
している。このサイピング９は、前記ジグザグ面７の谷
底部１２で開口する一端Ｅ１から、他方の壁面Ｓ２で開
口する他端Ｅ２までのびるとともに、隣り合うサイピン
グ９、９間の間隔Ｌａを２．０〜５．０ｍｍの範囲に設
定している。なお周方向リブ６には、本例では、前記ジ
グザグ面７のピッチ数と同数のサイピング９が形成さ
れ、従って、ジグザグ面７のピッチ長さＬｐも前記間隔
Ｌａと等しい２．０〜５．０ｍｍの範囲に設定してい
る。
【００１８】このように、前記周方向リブ６は、その壁
面Ｓに形成したジグザグ面７によって、図３(A) に示す
ように、雪柱に対する剪断力およびエッジ効果（路面掘
りおこし摩擦力）を発揮させることができる。又このと
きジグザグ面７が受ける氷面からの作用力Ｆは、図３
(B) に示すように、各ブロック部分１０・・・ を周方向に
倒れ込ませ、そのエッジを氷面と鋭角に適正に接触させ
るため、サイピング９自体のエッジ効果を最大限まで引
き上げることが可能となる。そしてこれらの相乗効果に
よって、氷上性能を大巾に向上させうるのである。
【００１９】なお図４(A) 、(B) に示すように、サイピ
ング９の一端Ｅ１が山頂部１１で開口する場合には、ブ
ロック部分１０の端部１０Ｅでの剛性が低くなり、作用
力Ｆによって端部１０Ｅが集中的に変形してしまう。そ
の結果、ブロック部分１０全体の倒込み量が減じて、エ
ッジ効果の向上が期待できない。又前記端部１０Ｅが剛
性低下により早期に摩耗するなど摩耗外観も悪くなる。
【００２０】又サイピング９の前記間隔Ｌａが２．０ｍ
ｍ未満の時、ブロック部分１０の剛性が小さすぎて倒込
み量が過大となり、逆にエッジ効果を損ね、かつブロッ
ク部分１０の強度不足を招く。又５．０ｍｍをこえる
と、サイピング９の形成数、すなわちエッジ成分長さ自
体が不足し、必要な氷上性能が得られ難くなる。
【００２１】又ジグザグ面７の前記振幅Ｌｂが０．５ｍ
ｍ未満では、ジグザグ面自体のエッジ効果およびブロッ
ク部分１０への倒し込みが期待できず、逆に２．０ｍｍ
をこると、前記エッジ効果および倒し込みは大きくなる
が、耐偏摩耗性が低下し摩耗外観を悪化する。
【００２２】なお前記ジグザグ面７は、図５(A) の如
く、山頂部１１と谷底部１２とを継ぐ斜辺１３Ａ、１３
Ｂのタイヤ軸方向に対する角度を違えた鋸刃状に形成す
ることもでき、さらには図５(B) の如く矩形凸状の山頂
部１１と矩形凹状の谷底部１２とを連続させたもの、あ
るいは正弦波形など円曲線を有する波形状（図示しな
い）など種々の形状のものが採用できる。又図５(C) の
如く、周方向リブ６の両側の壁面Ｓ、Ｓに、ジグザグ面
７をそれぞれ形成することができ、このときサイピング
９の両端Ｅ１、Ｅ２は各ジグザグ面７の谷底部１２で開
口させる。なお左右のジグザグ面７、７のジグザグ形状
を互いに相違させることもできるが、各ジグザグ形状の
ピッチ数を等しくすることが好ましい。
【００２３】又ジグザグ面７は、そのピッチ長さＬｐを
小に設定し、２ピッチ長さ、あるいは３ピッチ長さ毎に
１本のサイピング９を形成することもできるが、山の部
分の過度の剛性低下を招く恐れがあり、従って、ピッチ
長さＬｐは、２．０ｍｍ以上とするのが良い。
【００２４】又本例では、サイピング９は、本例では、
その両端Ｅ１、Ｅ２間に、ジグザグ状に蛇行する蛇行部
分１５を有し、これによってサイピング１本当たりのエ
ッジ成分長さを増大している。なお蛇行部分１５の形状
に関しては、前記ジグザグ面７と同様に、鋸刃状、矩形
凹凸状、波状等種々な形状が採用できる。
【００２５】又本例では、図１に示すように、各前記ブ
ロック５Ａ、５Ｂにも、サイピング９と同様、蛇行部分
１６を有する複数のサイピング１７が設けられ、エッジ
効果を発生させている。
【００２６】なお本願の空気入りタイヤは、氷雪路での
走行が要求されるタイヤであれば、乗用車用に限定され
ることなく、例えば重荷重用、小型トラック用など種々
のタイプに適用できる。
【００２７】
【実施例】図１に示すトレッドパターン有するタイヤサ
イズ１９５／６５Ｒ１５のタイヤを試作するとともに、
該試作タイヤの氷上制動性能を互いに比較した。なお試
作タイヤは、表１の如く、サイピングの間隔Ｌａを1.5
、2.0 、4.0 、5.0 、6.0mm の間隔で、又ジグザグ面
の振幅Ｌｂを、0 、0.2 、0.5 、1.0 、1.5 、2.0 、2.
5mm の間隔で変化させたものであり、他の条件は全て同
一としている。
【００２８】・氷上制動性能：試供タイヤを、内圧（２
００ｋｐａ）、リム（６ＪＪ×１５）で車両（乗用車：
２０００ｃｃ；ＦＲ車）の全輪に装着し、氷盤路を４０
km／Ｈの定速度で走行させるとともに、４輪ロックにて
急ブレーキをかけ、車が停車するまでの制動距離の逆数
を指数表示している。なお指数は、間隔Ｌａ＝４．０ｍ
ｍ、振幅Ｌｂ＝０としたジグザグ面のないタイヤの制動
距離の逆数を１００としたものであり、指数値が大なほ
ど、氷上性能が優れている。
【００２９】
【表１】
【００３０】サイピングの間隔Ｌａが２．０〜５．０ｍ
ｍ、かつジグザグ面の振幅Ｌｂが０．５〜２．０ｍｍの
範囲において、高い氷上性能が発揮されるのが確認でき
る。
【００３１】
【発明の効果】本発明は、叙上の如く構成しているた
め、耐久性の低下を招くことなく、周方向リブのブロッ
ク部分における倒れ込み量を適正化でき、サイピングの
エッジ効果をそれぞれ有効に発揮させることにより氷上
性能を大巾に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施例のタイヤのリブ・ブロックパ
ターンを示す展開図である。
【図２】その周方向リブをサイピングとともに示す斜視
図である。
【図３】(A) 、(B) は本願の作用効果を説明する周方向
リブの平面図および断面図である。
【図４】(A) 、(B) はサイピングの形成位置の相違によ
る欠点を示す周方向リブの平面図である。
【図５】(A) 〜(C) はジグザグ面の他の実施例を示す平
面図である。
【図６】従来技術を説明する線図である。
【符号の説明】
３、３Ａ、３Ｂ、３Ｃ 周方向溝 ４、４Ａ、４Ｂ 横溝 ５Ａ、５Ｂ ブロック ６ 周方向リブ ７ ジグザグ面 ９ サイピング １１ 山頂部 １２ 谷底部 １５ 蛇行部分 Ｅ１ サイピングの一端 Ｅ２ サイピングの他端 Ｓ、Ｓ１、Ｓ２ 壁面

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】周方向溝と、この周方向溝に交差する向き
    にのびる横溝とにより形成されるブロックと、前記周方
    向溝間で周方向にのびる周方向リブとを有するリブ・ブ
    ロックパターンの氷上走行に適した空気入りタイヤであ
    って、 前記周方向リブの周方向溝に面する少なくとも一方の壁
    面を、タイヤ軸方向に出入りし周方向に山谷を交互に繰
    り返すジグザグ面で形成するとともに、 前記周方向リブに、前記ジグザグ面の谷底部で一端が開
    口してタイヤ軸方向にのびかつ他端が他方の壁面で開口
    するサイピングを形成し、 しかも該サイピングの間隔Ｌａを２．０〜５．０ｍｍ、
    かつジグザグ面の山頂部と谷底部との間のタイヤ軸方向
    の長さである振幅Ｌｂを０．５〜２．０ｍｍとしたこと
    を特徴とする氷上走行に適した空気入りタイヤ。
  2. 【請求項２】前記サイピングは、両端間に、ジグザグ状
    に蛇行する蛇行部分を有することを特徴とする請求項１
    記載の氷上走行に適した空気入りタイヤ。
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