JP3277197B2 - 耐腐食性と景観性に優れた低合金鋼の塗装方法 - Google Patents

耐腐食性と景観性に優れた低合金鋼の塗装方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用技術】本発明は、海岸環境雰囲気など鋼
材にとって厳しい環境を含めた、あらゆる大気環境下に
おいて低合金鋼に耐腐食性と景観性を付与するための低
合金鋼の塗装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】低合金鋼は鋼にCu、P、Cr、Si、
Mn、Ni、Mo、Ti等の元素を添加したもので、大
気中において、その表面に自己保護性の安定さび層を生
成するため、耐食性に優れた鋼材といわれている。この
低合金鋼の中で、JIS規格(JIS G−3114お
よびJIS G−3125)により、合金元素の添加範
囲が規定されているものが耐候性鋼である。しかし、耐
候性鋼を含め、低合金鋼において、この安定さび層生成
までには、少なくとも数年以上を要し、その間の初期さ
びの流出などによる汚染の問題がある。さらに飛来塩分
や融雪用の散布塩分の影響がある環境では、初期さびに
よる汚染だけでなく、安定さび生成までに低合金鋼が腐
食するという切実な問題がある。
【0003】そこで、このような問題を解決する方法と
して、低合金鋼に特殊な処理剤を塗布することにより、
安定さび層を形成させて、低合金鋼を腐食から守る方法
が幾つか提案されている。例えば、特公昭53−225
30、特公昭56−33991、特公昭62−5863
5などである。これらは、それらを低合金鋼に施すこと
により、初期さびの流出を抑制しつつ安定さび層を形成
させようとするものであるが、使用する樹脂、その他の
原料に多少の違いはあるものの、基本的には低合金鋼中
の合金元素を長期に亙る経時により蓄積、濃縮させるこ
とにより安定さび層を形成するものであるため、低合金
鋼をそのままで(処理剤を塗布しないで裸で)使用する
場合と同様に、安定さび層が形成されるまでには数年以
上を要する。従って、通常の環境下では問題ないが、飛
来塩分など腐食因子の影響が強い環境下では、防食膜と
なる安定さび層が形成し始めるまでに腐食が始まるとい
う欠点がある。
【0004】安定さび層形成に期間を要するため、腐食
因子の影響が強い環境下では防食膜となる安定さび層が
形成し始めるまでに腐食が始まるというような欠点を解
消する方法として、発明者は先に、特願平8−3531
2による方法を提案した。これは、Cuを少なくとも
0.2%以上含有する低合金鋼に対して、ブチラール樹
脂を主体とする樹脂中に、りん酸、水、クロームの単体
もしくはクローム化合物、さらに効果を増大するものと
して、有機酸あるいは無機酸とCuから成る銅金属塩を
必要に応じて含有させた混合塗料液を塗布することによ
り、低合金鋼表面にクロールイオンなど腐食因子を撥ね
つけるバリヤー層を形成して、安定さび層が生成するま
での腐食を防止する方法である。この方法では、特に厳
しい腐食環境下の場合は、前記の混合塗料液により低合
金鋼の表面に形成された塗膜の上にさらに上塗り塗料を
塗り重ねて、安定さび層が形成されるまで低合金鋼の腐
食を防止する効果を補強するのであるが、この上塗り用
の塗料としては、安定さび層が生成するまでの間、上塗
り塗膜の物性の変化を抑制するために、塗膜形成までの
乾燥過程、および塗膜形成後の経時において化学反応を
起こさない樹脂を使用したものに限定する必要があっ
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、本発明によ
る塗料を低合金鋼に塗装することにより、低合金鋼に対
して塗装直後から、あらゆる大気環境下での耐腐食性を
付与することに加え、特に厳しい環境下において使用す
る上塗り塗料として、普通一般に使用されている全ての
塗料を使用できるようにすることにより、色調、光沢
(艶)、風合いなど仕上がり感に幅をもたせ、低合金鋼
を使用する物件に、耐腐食性のみならず、景観性をも付
与することを目的とした塗装方法である。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者は、特願平8−3
5312による方法についてさらに研究を重ねた結果特
願平8−35312による方法の混合塗料液で使用する
成分のうち、クローム単体あるいはクローム化合物とし
てクローム酸化合物を使用し、さらに加えて硫酸クロー
ムおよび硫酸銅のうちすくなくともどちらか一方を使用
し、それらの使用量を特定することにより、耐腐食性と
景観性に優れた低合金鋼の塗装方法を得ることに成功し
た。すなわち、Cuを始めとした合金元素を含有する低
合金鋼に対して、純度換算でりん酸(HPO)を
0.1〜7%、水(HO)を0.1〜10%、クロー
ム酸化合物を0.5〜20%、硫酸クロームと硫酸銅の
すくなくともどちらか一方を含有し、それらの単独量あ
るいは合計量が添加する水の量の10%未満、ブチラー
ル樹脂単独あるいはブチラール樹脂およびブチラール樹
脂と相溶性を有する樹脂との混合樹脂で、なおかつ混合
樹脂中のブチラール樹脂の含有率が30%以上の混合樹
脂を2〜60%、残部を、溶剤中における水溶解性アル
コールの含有量が5%以上である溶剤から成る混合塗料
液を塗布することにより、塩分などによる腐食環境下で
も、低合金鋼を腐食から守るとともに、極度に厳しい腐
食環境下で使用する上塗り塗料に制限がないので、一般
の塗装と同様に、低合金鋼を使用した物件に景観性を付
与することが可能となる塗装方法である。こういった耐
腐食性と景観性の効果は、塗装直後では、塗料液中の成
分により生成するバリヤー層によるものであり、経時に
おいては、鋼材中の合金成分の濃縮により生成する安定
さび層によっても引き起こされる。
【0007】塗装直後に生成するバリヤー層は2層構造
となるのであるが、その第一層(以後第一バリヤー層と
記述する)は地鉄の界面に生成するものであり、塗料中
に添加されたりん酸、水による鋼材地鉄の溶解から始ま
るのであるが、そこに硫酸クローム、硫酸銅がどちらか
一方あるいは両方が存在すると、地鉄の溶解が加速され
ることになり、第一バリヤー層の生成はより速やかにな
り、塗装直後から低合金鋼を腐食から守ることが可能と
なる。
【0008】もう1層のバリヤー層(以後第二バリヤー
層と記述する)、は塗料中成分の反応により生成し、そ
のための塗料成分としてりん酸、クローム酸化合物およ
びブチラール樹脂の3成分を添加する。溶剤中5%以上
含有する水溶解性アルコールの作用は、りん酸、クロー
ム酸化合物およびブチラール樹脂の3成分の反応のため
に必須成分である水とブチラール樹脂を併用することに
より生じる阻害、例えば塗料の分離、鋼材への塗膜の付
着性低下を防止することである。ブチラール樹脂は、基
本的には水に良く溶解するものではないが、水溶解性ア
ルコールは当然水とよく混じり合うし、またブチラール
樹脂をもよく溶解させるためそのような阻害を防止する
ことができるのである。
【0009】
【作用】本発明の方法により低合金鋼上にスプレー方式
あるいはハケ塗りによって塗装すると、まず塗料中のり
ん酸と水によりりん酸イオンが、また硫酸クロームおよ
び硫酸銅と水からクロームイオン、銅イオンおよび硫酸
イオンが電離生成する。そして、りん酸イオンと硫酸イ
オンが鋼材地鉄表面を溶解し鉄イオンを生成する。生成
した鉄イオンは酸化してFeOOH、Feおよび
Feなどのさび粒子となってさび層となるのであ
るが、この際りん酸イオン、クロームイオン、銅イオン
の作用によりち密で非晶質なさび層となり、第一バリヤ
ー層となる。鉄の溶解により生成する鉄イオンが酸化し
て酸化鉄となる時にりん酸イオン、クロームイオンや銅
イオンが存在すると、そのさび層は耐候性鋼の長期経時
変化により生成する安定さび層のようにち密で非晶質な
さびとなることは広く知られていることである。
【0010】一方、第二バリヤー層は、塗料中の成分が
反応することにより生成する化合物で、ブチラール樹脂
とクロームおよびりん酸の3者からなる。さらに詳しく
は、ブチラール樹脂のアセタール基にりん酸クロームが
結合した高分子錯化合物であり、りん酸クロームは、り
ん酸から生成するりん酸イオンとクローム酸化合物から
生成するクロームイオンとから生成する。この高分子錯
化合物は全体としてはマイナス性であるためイオン透過
性としてはマイナスイオンを撥ねつけ、プラスイオンを
透過させる性質を持つ。従って、最も一般的な鋼材の腐
食因子である塩分のマイナスイオン性のClイオン(塩
素イオン)を撥ねつけるバリヤー層となり、塩分環境下
での腐食防止に効果的となる。この高分子錯化合物生成
にも水が寄与する。つまり、りん酸とクロームからりん
酸クロームが生成する反応はイオン反応であるため、水
の影響が大きく、適当量の水の存在により反応は速やか
に進行するのである。
【0011】先に述べた特公昭53−22530,特公
昭56−33991、特公昭62−58635による耐
候性鋼のさび安定化処理剤においても、銅化合物やりん
酸を使用するが、これらによるさびのち密化、非晶質化
には時間を要する。すなはち、特公昭62−58635
ではウレタン樹脂やエポキシ樹脂中に銅単体あるいは銅
化合物を添加しているが、水を使用しないため銅イオン
の生成が遅く、初期のさびがち密化、非晶質化すること
に寄与するまでにはいたらない。
【0012】また、特公昭53−22530、特公昭5
6−33991ではりん酸を添加し、さらに必要に応じ
てりんや銅の単体あるいは化合物を添加するが、これら
の方法も、水の使用を特に規定しておらず、りん酸の電
離によるりん酸イオンの生成や、りんや銅の単体あるい
は化合物からのりん酸イオン、銅イオンの生成は非常に
遅く初期のさび層のち密化、非晶質化に寄与するには不
充分である。このように、特公昭53−22530,特
公昭56−33991、特公昭62−58635による
方法では、塗膜形成後に降雨などにより浸透してくる水
分を期待して安定さび層を生成させようとするのに対
し、塗料そのものに水を添加して、りん酸イオンやCu
イオンを早く生成させ、初期のさび層をち密化、非晶質
化させる本発明による塗装方法は、特公昭53−225
30,特公昭56−33991、特公昭62−5863
5らによるさび安定化処理方法とは異なる考え方による
ものである。
【0013】さらに本発明は、硫酸クロームあるいは硫
酸銅を少なくとも一方含有させることにより、りん酸と
水、および鋼材中の銅とからなる第一バリヤー層生成が
速やかで、第一バリヤー層は塗装直後から生成している
ので、特に腐食条件が厳しい環境下の場合で、本発明に
よる混合塗料液による塗膜を保護するために、その上に
上塗り塗料(塗膜)を塗る場合でも、第一バリヤー層が
すでに生成している理由により、上塗り塗料(塗膜)の
硬度、水分透過性、酸素透過性などの物性の経時変化に
制限がなく、一般に使用されるすべての塗料(塗膜)が
使用可能という点で先に発明者が提案した特願平8−3
5312による発明よりも優れているのである。
【0014】本発明による混合塗料液で使用し、請求項
で規定した添加成分について説明する。まず、りん酸の
量を0.1〜7%としたのは、0.1%以下では少量す
ぎて地鉄を溶解する効果、クロームおよびブチラール樹
脂と高分子鎖体を形成する効果などで全く効果が認めら
れず、また7%以上になると、塗膜がべとつき常温での
塗膜乾燥に支障をきたし実用的でないからである。
【0015】水の添加量を0.1〜10%としたのは
0.1%以下であると、りん酸および硫酸クローム、硫
酸銅からりん酸イオン、硫酸イオンを充分電離生成させ
ることができないので、地鉄を溶解させる効果が充分で
はないことと、りん酸とクロームからりん酸クロームを
生成するイオン反応の促進の効果が認められないからで
あり、逆に10%を越えるとブチラール樹脂との相溶性
が悪くなり、塗料の安定性あるいは鋼材への塗膜の付着
性が悪くなるからである。
【0016】塗料展色剤として使用する樹脂としては、
後にのべるブチラール樹脂独特の特性から、ブチラール
樹脂単独が最も好ましいが、塗膜の物理性能あるいは化
学性能を改質するために、ブチラール樹脂と相溶性を有
するブチラール樹脂以外の樹脂を併せて使用することも
可能である。しかし、この際もブチラール樹脂が持つ特
性を保持するために、混合樹脂中のブチラール樹脂比率
は30%以上必要である。その理由は次のようである。
つまり、前述のようにブチラール樹脂は、クローム、り
ん酸とともに高分子錯体を形成して第二バリヤー層とな
りクロールイオンをはねつける効果を発揮するのである
が、この高分子鎖体の形成にはブチラール樹脂中のアセ
タール基が寄与しているからである。さらにブチラール
樹脂は水酸基(−OH基)を多く持っているため、鋼材
との密着性が良いという特性を持つので、混合樹脂を用
いるとしてもその中のブチラール樹脂の比率は30%以
上必要なのである。
【0017】さらに、ブチラール樹脂単独あるいはブチ
ラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂
の混合物の添加量を2〜60%としたのは、2%以下で
は樹脂分が少なすぎるため塗膜が脆くきずつきやすく実
用に適さないためであり、逆に60%以上では相対的に
溶剤の量が少なくなるので塗料の粘性が高まり作業性が
悪くなること、塗膜の乾燥が遅くなることのためであ
る。
【0018】溶剤中において5%以上使用するアルコー
ルは、水とブチラール樹脂を良く混じり合わせるために
水溶解性のものでなくてはならないので、炭素数が11
以下の低級アルコールを使用する。メチルアルコール、
エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマル
ブタノール、イソブチルアルコールが特に有効である。
また、水溶解性アルコールの含有量を5%以上としたの
は、5%未満であると、水とブチラール樹脂とを混じり
合わせる効果が充分発揮されないからである。
【0019】りん酸およびブチラール樹脂と反応して、
第二バリヤー層を生成するクローム化合物としてクロー
ム酸化合物を使用する。これは、クローム酸化合物は、
りん酸およびブチラール樹脂と反応して第二バリヤー層
を生成するクロームイオンの供給源となるだけではな
く、クローム酸化合物そのものにも防食性があるため、
第二バリヤー層とともに防食性能を増強させるからであ
る。このようなクローム酸化合物としては、クローム酸
鉛、クローム酸亜鉛、クローム酸カリウムなどがある。
クローム酸化合物の添加量を0.5〜20%とするは
0.5%未満であると充分な量のりん酸クロームが生成
せず、そのためにブチラール樹脂との高分子鎖体形成が
不充分になるためであり、逆に20%を越えても、りん
酸の量に制限があるので無駄になるとともに、一般にク
ローム酸化合物は酸化性があるため過剰のクローム酸化
合物は塗膜を酸化して脆弱にし、塗膜の付着性やその他
の物性を低下させ、結果的には防食性を低下させるから
である。
【0020】硫酸クロームおよび硫酸銅は少なくともど
ちらか一方を使用するのであるが、その量を添加する水
の量の10%未満とするのは、硫酸クロームおよび硫酸
銅は水の存在下でクロームイオン、銅イオン、硫酸イオ
ンを生成し、それらの作用により第一バリヤー層および
第二バリヤー層生成の効果を発揮するものであるが、添
加する水の量の10%を越えて使用しても、効果が増大
せず無駄になるだけでなく、余剰の硫酸クロームおよび
硫酸銅は降雨その他により浸透してくる水分によりいつ
までも硫酸イオンを生成し、この硫酸イオンが本発明の
混合塗料液による塗膜や、およびその塗膜の上に塗り重
ねる上塗り塗膜に悪影響を及ぼし、塗膜の剥離、変色な
どを起こし、景観性を損なうことがあるからである。一
般的な塗料常識では、硫酸クロームや硫酸銅は、鉄を発
錆させたり、塗膜を劣化させるものであり、塗料成分と
して使用されるものではなく、むしろ避けられるもので
ある。
【0021】発明者らは、本発明による塗装方法の効果
を試験するにあたって、実施例で示す鋼材を入手して使
用したが、その結果によれば、合金元素の種類の組み合
わせや量が異なる2種類の低合金鋼どちらにも、本発明
による塗装方法が効果的であることが判明した。これ
は、本発明の塗装方法で形成される2層のバリヤー層は
いずれも塗料中の成分が主体であり、このバリヤー層に
より塗装直後から塩分などをはねつけて発錆を抑制する
ことが可能であるのに対して、低合金鋼中に含有された
Cuを始めとしたP、Cr、Si、Mn、Ni、Mo、
Tiなどの合金元素は、塗装後長期間経過後に地鉄表面
に濃縮して始めて、低合金鋼の防食性に寄与するもので
あって、本発明による塗装方法が低合金鋼の防食性に寄
与する塗装直後においては関与しないからであると考え
られる。
【0022】このように本発明による低合金鋼の塗装方
法は、現在市販されている耐候性鋼あるいは低合金鋼用
のさび安定化処理方法が、耐候性鋼(低合金鋼)の安定
化さび層生成機能を助長する形のものであるため、安定
さび形成までに長期間を要するので、耐候性鋼(低合金
鋼)の安定さび形成にとって良好な環境では効果的であ
るが、海岸地域など腐食条件が厳しい環境では安定さび
が生成するまでに発錆が起こる恐れがあるのに対し、り
ん酸、水、ブチラール樹脂、アルコール、クローム酸化
合物、硫酸クローム、硫酸銅などの成分により、鋼材表
面には緻密なさび層の第一バリヤー層を塗装直後から形
成し、さらにその層の上に高分子錯体から成るクロール
イオンを撥ね付ける第二バリヤー層を速やかに形成させ
ることによって鋼材を腐食から守ることが出来る。ま
た、特に腐食条件が厳しい環境や物件部位では、上塗り
塗膜を塗り重ねることにより鋼材を腐食から守る効果を
さらに補強するなどの方法を採ることが出来るため、す
べての大気環境下で低合金鋼を腐食から守ることができ
る。さらに、上塗り塗膜として、一般の塗料を使用する
ことができるので、色相、光沢(艶)、風合いなど仕上
がり性に選択の幅が広いことに加え、塗膜の劣化に悪影
響を及ぼすことがある、硫酸クロームおよび硫酸銅を適
切な量で使用することにより、それら仕上がり性を持続
させるので景観性に優れているのである。
【0023】本発明の塗装方法で使用する塗料には着色
力を持たせることも当然可能である。すなわち、特許請
求項1の低合金鋼に直接塗装する塗料は、ブチラール樹
脂を主体とする樹脂成分と、りん酸、水、クローム酸化
合物、アルコールを含有する溶剤、および硫酸クローム
や硫酸銅から構成されるが、これらはいずれも着色力が
ないかあるいは非常に弱いものであるため、そのままで
は一般の塗料のように仕上がりの色を好みの色に着色す
ることができないが、上記成分が請求項で示された含有
量に納まる範囲内で、それら成分の一部を一般の塗料で
使用される着色用の顔料に置き換える事により着色が可
能となる。そのための着色顔料としては、一般の塗料で
使用される着色顔料を使用すればよく、例えば無機系顔
料では二酸化チタン、べんがら、カーボンブラック、黄
鉛などがあり、有機系顔料ではフタロシアニンブルー、
フタロシアニングリーン、有機系赤顔料、有機系黄色顔
料などがある。一方、請求項2において使用する塗り重
ねる塗料は、既に述べたように一般の塗料を使用するこ
とができるので任意の色にすることができる。以下実施
例にて説明する。
【0024】表.1および表.2の〜▲16▼の16
種類の配合の塗料と,先に発明者が提案した特願平8−
35312による配合の塗料を、一般的な塗料製造方法
であるペブルボールミルにより作成した。また、市販さ
れている特公昭62−58635および特公昭53−2
2530によるとされるそれぞれの耐候性鋼のさび安定
化処理剤を入手した。表.2中では特公昭62−586
35によるものをイ、特公昭53−22530によるも
のをロ、特願平8−35312による配合の塗料をハで
表示した。ペブルボールミルにより作成した塗料のう
ち、は乾燥性が悪く、は塗料が分離し、また▲14
▼は粘性が高く作業性が悪く、乾燥性も遅いことから、
それぞれ実用性がないので、後に述べる自然暴露試験の
対象から除外した。
【0025】一方、これら塗料あるいはさび安定化処理
材を塗装して自然暴露試験を実施する鋼板として、表.
3に示す合金成分のAおよびBの鋼板を用意した。試験
板の作成方法は、大きさ100×200mm、厚み3.
2mmの表.3のAおよびBの鋼材を必要枚数用意し
て、それらの表面をサンドブラスト処理し、表.1の各
試験番号に決められた塗料あるいはさび安定化処理材を
各試験番号につき2枚つつ、50μの厚みになるように
エアースプレー塗装した。表.1および表.2中の試験
番号2,3,4,10,11,12,27,28の鋼板
には表.4に示す規格の市販仕上げ塗料(白色)を、各
試験番号に決められた通りに、50μの厚みにて塗り重
ねて、同様に自然暴露試験を実施した。
【0026】そして、各試験番号の2枚の試験板のう
ち、1枚は都市環境雰囲気(東京都江東区)で、1枚は
海岸環境雰囲気(福井県小浜市・・・海岸から50m以
内の暴露試験場所)で自然暴露試験を1年間実施した。
そして、1年後に、外観を観察するとともに、試験板の
一部(約30×30mm)を切り取り、断面の顕微鏡観
察により、地鉄界面での安定さびの有無を調査した。
表.1と表.2に示した試験結果における記号の意味は
次の通りである。 外観の○ 発錆や塗膜の変色、剥離など、なんら異常がない状態 外観の△ 50%未満の面積にて、発錆あるいは塗膜の変色、剥離がある状態 外観の× 50%以上の面積にて、発錆あるいは塗膜の変色、剥離がある状態 断面の○ 断面の顕微鏡観察で安定さびの存在が確認されるもの 断面の× 断面の顕微鏡観察で安定さびの存在が確認されないもの
【0027】
【表.1】
【0028】
【表.2】 試験結果における記号の意味は、表.1 本発明による
実施例と同じである。試験番号27および28は、発明
者が先に提案した特願平8−35312によるものであ
る。
【0029】
【表.3】
【0030】
【表.4】
【0031】
【発明の効果】表.1の実施例および表.2の比較例か
ら判明するように、特公昭62−58635および特公
昭53−22530によるものでは、都市環境および海
岸環境いずれにおいても、1年間の暴露では安定さび生
成までにはいたらない。また、発明者が先に提案した特
願平8−35312によるものでは、上塗り塗料とし
て、特願平8−35312で規定したものを使用した試
験番号27は都市環境および海岸環境いずれの試験結果
も良好であるが、上塗り塗料として、特願平8−353
12の規定以外のものを使用した試験番号28は、都市
環境の試験結果は良好なものの、海岸環境での試験では
安定さびが生成しなかった。
【0032】一方、本発明による混合塗料液を塗装した
ものは、都市環境および海岸環境いずれにおいても、1
年間の暴露で発錆あるいは塗膜の変色、剥離などの異常
がなく、また顕微鏡観察でも安定さびの生成が認められ
た。さらに、上塗り塗料を塗り重ねたものについての試
験でも、上塗り塗料の種類にかかわらず同様の効果が認
められた。以上より、本発明は耐腐食性と景観性に優れ
た低合金鋼の塗装方法であることが判明した。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cuを始めとして、P、Cr、Si、M
    n、Ni、Mo、Tiなどいわゆる鋼材の耐食性を向上
    させると言われている合金元素を含有する低合金鋼に対
    して、純度換算でりん酸(HPO)を0.1〜7
    %、水(HO)を0.1〜10%、クローム酸化合物
    を0.5〜20%、硫酸クロームと硫酸銅のすくなくと
    もどちらか一方を含有し、それらの単独量あるいは合計
    量が、添加する水(HO)の量の10%未満、ブチラ
    ール樹脂単独あるいはブチラール樹脂およびブチラール
    樹脂と相溶性を有する樹脂との混合樹脂で、なおかつ混
    合樹脂中のブチラール樹脂の含有率が30%以上の混合
    樹脂を2〜60%、残部を、溶剤中における水溶解性ア
    ルコールの含有量が5%以上である溶剤、とから成る混
    合塗料液を低合金鋼に直接的に塗布することを特徴とす
    る低合金鋼の耐腐食性塗装方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の塗装方法により塗膜を形成し
    た上に、さらに塗料を塗り重ねる方法で、塗り重ねる塗
    料として、一般に使用される仕上げ用塗料を使用するこ
    とにより、低合金鋼を使用した物件に耐腐食性のみなら
    ず、景観性を付与することが可能な低合金鋼の塗装方
    法。
JP12777797A 1997-04-10 1997-04-10 耐腐食性と景観性に優れた低合金鋼の塗装方法 Expired - Fee Related JP3277197B2 (ja)

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