JP2771787B2 - 鋳鉄の安定さび生成表面処理方法 - Google Patents

鋳鉄の安定さび生成表面処理方法

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JP2771787B2 JP13688695A JP13688695A JP2771787B2 JP 2771787 B2 JP2771787 B2 JP 2771787B2 JP 13688695 A JP13688695 A JP 13688695A JP 13688695 A JP13688695 A JP 13688695A JP 2771787 B2 JP2771787 B2 JP 2771787B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、早期に鋳鉄の表面に防
食的保護作用を持つ安定なさび層を生成させるための鋳
鉄の表面処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋳鉄は炭素とケイ素の含有量が多いため
に、鋼のうち最も一般的な鋼(業界で普通鋼と呼ばれて
いる。以下普通鋼という。)と比較して、大気中の防
食、腐食の面で優れているといわれている。この理由
は、鋳鉄に含まれる炭素(黒鉛)をアンカーとしてさび
層が地鉄に密着する効果と、ケイ素によるさび層の安定
化により保護被膜が形成される効果とによるものであ
る。
【0003】近年、鋳鉄のこの効果と、その鋳肌が持つ
重厚な雰囲気と色調、鉄に暖かさを感じさせる肌あいが
あるなどの面が好まれ、照明柱、デサインポール、門
扉、高欄の飾り、燈篭などに使用されるが、やはり普通
鋼と同じく裸で使用すればさびが発生して、外観上見苦
しいだけでなく、長期的には腐食して使用に耐えられな
くなる。
【0004】これを防止するために一般に塗装を施して
使用されるが、当然塗装(塗膜)には寿命がある。塗装
(塗膜)の寿命をできるだけ延長するために膜厚に塗装
するということも考えられるが、厚膜に塗装すれば、そ
の分鋳鉄の持つ特徴、すなわち、鋳肌の雰囲気、色調や
暖かさが失われる。
【0005】他方、一般的な塗装ではなく、安定さび層
を生成させる表面処理方法が存在し、そのようなものと
しては、JIS G−3114やJIS G−3125
の耐候性鋼を対象にした特公昭53−22530号公
報、特公昭56−33991号公報、特公昭62−58
635号公報などに開示された表面処理方法や、耐候性
鋳鋼意匠パネルの表面処理方法(川鉄技法 vol .2
0,1988,No.3)の文献に提案された処理方法な
どがある。
【0006】耐候性鋼はCu,Cr,P,Ni,Moな
どの合金元素が添加された低合金鋼であり、これを裸の
まま屋外に放置すると最初の1,2年間は黄褐色のいわ
ゆる赤さびを流出するが、やがては地鉄の表面に緻密で
安定な防食的保護作用のあるさび層を形成する。この防
食的保護作用を持つ安定さび層は成分的には、Fe2+
よびFe3+の酸化物を主体とし、更に耐候性鋼素材の腐
食(溶解)により生ずるCu,Cr,Pなどの合金成分
が濃縮されたもので非常に安定である。
【0007】上記の特公昭53−22530号公報、特
公昭56−33991号公報、特公昭62−58635
号公報に開示された表面処理は、初期さびの流出を抑制
しつつ鋼の表面に安定さびを生成させようとするもので
あり、しかもそれらはいずれもJIS G−3114、
JIS G−3125規格の耐候性鋼を対象にした表面
処理方法である。従ってそれらは、鋳鉄を対象とする本
発明による処理方法とは基本的に異なっている。以下に
詳しく説明する。
【0008】まず、前記特公昭62−58635号公報
および前記耐候性鋳鋼意匠パネルの表面処理方法は、表
面処理剤の成分として防錆顔料、および耐候性鋼の安定
化さび生成に寄与するCu,Cr,Pなどの合金元素の
化合物を含有し、それらの成分を、ウレタン樹脂、エポ
キシ樹脂など水、酸素を適度に透過する樹脂中に均一に
分散させることにより、短期間的な効果としては、防錆
顔料および水、酸素を適度に透過させる樹脂との作用に
より、初期の急激な発錆を抑制して流れさびを防止する
ことであり、長期間的な効果としては、地鉄表面の溶解
で生じる鉄イオンを処理剤中のCu,Cr,Pなどの化
合物が捕捉することにより錆の発生を抑えつつ、処理膜
を透過してくる微量の水分、酸素による地鉄の溶解で地
鉄表面に、鋼中のCu,Cr,Pなどの合金元素を相対
的に濃縮させて安定さびを生成するものである。処理膜
を透過してくる水分、酸素による地鉄の溶解の速度は極
めて遅いものであるが、安定さびが生成するまでには早
くて数年から5年、遅い場合は十数年以上を要するのが
通常で早期(1年以内)の安定さび生成には適さない。
【0009】このように、上記処理方法とは、樹脂とし
てブチラール樹脂を主体とし、含有成分であるりん酸、
銅金属塩その他の作用により1年以内の早期に安定さび
を促進的に生成させる本発明による処理液とは明らかに
異なるものである。
【0010】一方、同じく耐候性鋼を対象とする特公昭
53−22530号公報および特公昭56−33991
号公報に記載された処理液は、ビヒクルとしてブチラー
ル樹脂を主体とするもので、この点では本発明による処
理液と同じであるが、安定化さび生成までの主たる機
能、作用の点で異なっている。すなわち、これらの公報
記載による処理液ではその成分として、Fe2 3 ,F
3 4 を最初から処理液中に大量に含有させ、経時的
にこれらを被膜中に蓄積させることにより防食被膜を形
成させようとするものであるに対し、本発明による処理
液は、含有するりん酸および銅金属塩の作用による地鉄
の酸化によりFe2 3 ,Fe3 4 を生成させて安定
さびへと変化させるものであり、組成上の面でも、機
能、作用の面でも明らかに異なるものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】鋳鉄の場合は前述のよ
うに炭素やケイ素による保護被膜の形成効果もあり、鋳
込み当初の赤さび発生については不問にし、赤さびによ
る外観上の見苦しさには目をつむるか、あるいは初期の
赤さびを抑えるために耐候性鋼の表面処理剤をそのまま
適用しているのが実状である。
【0012】しかし、耐候性鋼の表面処理剤を鋳鉄に適
用する場合にしても、次のような問題がある。つまり、
現在実用化されている耐候性鋼の表面処理剤はいずれ
も、耐候性鋼の安定化さびを生成させることを目的とし
ているものの、その安定さび生成の基本的な機能を耐候
性鋼に求めており、処理剤はその耐候性鋼の機能を助長
させるにすぎないのが現状である。つまり既に述べたよ
うに、耐候性鋼が安定化するまでには、長期間を要する
(条件が良く早い環境で5年程度、条件が悪い場合には
十数年を要する)ため、鋳鉄に表面処理をした場合に
も、当然安定さびを生成するまでには長期間を必要とす
ることになる。
【0013】更に組成上の問題点もある。鋳鉄と耐候性
鋼は成分的にみて、添加する合金元素の種類では似通っ
た部分があるが、鋳鉄の種類によってはそれら成分の含
有量は、耐候性鋼のJIS規格(JIS G−311
4、JIS G−3125)の含有規格値から外れるこ
とがある。従って、本来耐候性鋼用として設計された表
面処理剤との組み合わせが適切でない組成の鋳鉄の場
合、初期に流れさびが発生したり、あるいはいつまでも
安定化しないというような場合がある。
【0014】本発明は、鋳鉄の表面に比較的薄い膜厚
(100μまで)で処理することにより、鋳鉄の特徴を
生かしながら、鋳鉄の表面にできるだけ早期に防食保護
作用を持つ安定さび層を形成し、鋳鉄を長期に腐食から
守る鋳鉄の表面処理法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】発明者らは、鋳鉄で生成
される安定さび層が、耐候性鋼で生成される安定さび層
に匹敵するほどの地鉄保護作用を持つさび層にする方法
について研究した結果、Cuを0.2%以上、Pを0.
05%以上含有する鋳鉄に、りん酸を0.01〜5%、
地鉄に作用してFe2+イオンを生成可能な有機酸あるい
は無機酸とCuからなる銅金属塩を5〜50%、または
銅金属塩の一部をりん酸塩に置き換えて使用し、銅金属
塩の添加量が5%以上およびりん酸塩の添加量が45%
未満でなおかつ銅金属塩とりん酸塩との合計添加量が5
〜50%、更にCrの単体もしくは化合物を0.01〜
10%、ブチラール樹脂単独あるいはブチラール樹脂お
よびブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂の混合樹脂で
なおかつ混合樹脂中のブチラール樹脂の比率が30%以
上である混合樹脂を3〜30%、残部溶剤よりなる混合
処理液を塗布することにより、約1年の大気暴露により
鋳鉄の表面に均一で安定なさび層を形成し、それ以後は
鋳鉄が腐食することを防止することに成功した。
【0016】
【作用】本発明による処理液を鋳鉄上にスプレー方式あ
るいはハケ塗りによって施し、50〜100μの被膜を
形成すると、まず被膜中のりん酸が地鉄表面に作用して
地鉄表面と均一に反応し、地鉄表面を溶解し鉄イオンを
生成する。また、りん酸は銅金属塩およびりん酸塩の加
水分解を促進させるが、これらの加水分解により生成し
た有機酸あるいは無機酸も鋳鉄と反応、溶解させてFe
2+イオンを生成する。このFe2+イオンは酸化してFe
OOH,Fe2 3 およびFe3 4 などのさび粒子と
なって安定さび層の主体となるが、この時銅金属塩およ
びりん酸塩の加水分解により生成したCuイオンおよび
Pイオンが共存するためこれらイオンの作用により緻密
なさびとなる。
【0017】CuイオンやPイオンが存在すると、鉄の
酸化物すなわちさびが緻密になることは良く知られてい
ることである。更に、りん酸はFe2+イオンからさび粒
子が生成する時に作用してさび粒子をマイナスに荷電さ
せる。一般に金属はプラスに荷電するので、地鉄もプラ
スに荷電する。従って、りん酸の作用によりマイナスに
荷電したさび粒子は、地鉄の方へ引っ張られることにな
り、緻密なさび層が地鉄と処理膜との界面に生成する。
このさび層は地鉄の溶解および処理剤中の成分の加水分
解に伴って生成したものなので、このさび層中には当然
のことながら、鉄酸化物を主体に鋳鉄中のCu,Pおよ
び処理剤中のCu,Cr,Pが濃縮されている。
【0018】このように本発明による処理剤の効果はり
ん酸による地鉄ならびに銅金属塩およびりん酸塩への作
用を引金として達成されるものである。従って、1年程
度の短期間に鋳鉄の安定化さびが生成するためには、り
ん酸の地鉄ならびに銅金属塩およびりん酸塩への作用が
速やかに起こることと、更にこの作用が一過性とならず
に安定さび生成までの期間継続的に進行することが重要
である。
【0019】本発明の処理剤でビヒクルの主体として使
用するブチラール樹脂がその継続的な効果を保つ役目を
果たしている。すなわちブチラール樹脂はクローム化合
物とともに地鉄ならびに銅金属塩およびりん酸塩への作
用として必要とされる量以外のりん酸と反応して高分子
錯体を生成することが可能なため、被膜形成直後のりん
酸の速やかな作用の後は、この高分子錯体成分のりん酸
により地鉄ならびに銅金属塩およびりん酸塩の継続的な
作用が安定さび生成まで進行する。従って、ブチラール
樹脂のこのような特性を応用した本発明による処理剤
は、既に述べたように特公昭62−58635号公報に
記載された処理法および耐候性鋳鋼意匠パネルの表面処
理方法などのように、ブチラール樹脂以外の例えばウレ
タン樹脂あるいはエポキシ樹脂を主体とした処理剤とは
基本的に考え方を異にする。更に、りん酸、銅金属塩の
作用により地鉄から促進的にFeイオンを生成させてF
23 ,Fe3 4 とする機能、作用を発揮するとい
う点で、特公昭53−22530号公報や特公昭56−
33991号公報による処理剤のように、処理剤中に最
初からFe2 3 ,Fe3 4 を大量に含有させて防食
被膜とする処理剤とも異なるものである。
【0020】本発明による処理剤で重要な役目を果たす
りん酸の量を0.01〜5%としたのは、0.01%未
満では少量すぎて全く効果が認められず、また5%を超
えると、被膜がべとつき常温での被膜乾燥に支障をきた
し実用的でないからである。
【0021】また、本発明による処理剤においては、前
述のまた次にも述べるようにブチラール樹脂独特の特性
から、ブチラール樹脂単独が最も好ましいが、処理膜の
物理性能あるいは化学性能を改質するために、ブチラー
ル樹脂と相溶性を有するブチラール樹脂以外の樹脂を使
用することも可能である。しかし、この際もブチラール
樹脂が持つ特性を保持するために、混合樹脂中のブチラ
ール樹脂比率は30%以上必要である。その理由は次の
ようである。つまり、上記のようにブチラール樹脂は、
クローム化合物とともにりん酸と高分子錯体を形成して
地鉄へのりん酸の急激な作用を防止するとともに、それ
らは安定さび層生成に必要な上記銅金属塩およびりん酸
塩およびクローム単体あるいはクローム化合物を処理液
中に均一に分解させる媒体としても働き、更に銅金属塩
およびりん酸塩の加水分解が徐々に進行するように水分
の透過を調節する働きをするからである。
【0022】加えて、ブチラール樹脂は樹脂中に水酸基
(−OH基)を多く持っているため、鋳鉄地鉄との密着
性が良いので鋳鉄の表面処理剤に用いる樹脂の主体とし
て最適である。混合樹脂を使用する場合、混合樹脂中の
ブチラール樹脂の比率が30%未満であるとこのような
ブチラール樹脂の特性が充分に発揮されず、鋳鉄の表面
に早期に、確実に安定さび層を形成することが難しくな
るからである。
【0023】更に、ブチラール樹脂単独あるいはブチラ
ール樹脂およびブチラール樹脂と相溶性を有する樹脂の
混合物の添加量を3〜30%としたのは、3%未満では
被膜が脆くキズ付きやすいのと透過水分量の調節がうま
くいかないためであり、逆に30%超では相対的に銅金
属塩およびりん酸塩およびクロームあるいはクローム化
合物の添加量が少なくなることと、処理液の粘性が高ま
り作業性が悪くなること、被膜の乾燥が遅くなることの
ためである。
【0024】地鉄に作用してFe2+イオンを生成可能な
有機酸あるいは無機酸とCuからなる銅金属塩を単独で
使用する場合はその添加量を5〜50%、銅金属塩およ
びりん酸と金属からなるりん酸塩とを併用する場合は銅
金属塩の添加量を5%以上、りん酸塩の添加量を45%
未満とし、なおかつそれらの合計量を5〜50%とする
理由について述べる。
【0025】まず、銅金属塩単独あるいは銅金属塩とり
ん酸塩を併用する場合はそれらの合計添加量を5〜50
%とする理由について述べる。銅金属塩単独の場合でも
併用の場合でも5%未満であると銅金属塩の加水分解で
生じる有機酸あるいは無機酸、りん酸およびりん酸塩か
ら生成するりん酸イオンの総量が少ないため地鉄の溶解
およびFe2+イオンの生成が少ないので安定さび層生成
までの期間が長くなるためであり、逆に50%を超える
と銅金属塩およびりん酸塩成分の量が多すぎるため被膜
が脆くキズ付きやすくなり処理膜としての効果を発揮し
にくくなるからである。
【0026】実測値によれば、地鉄に作用してFe2+
オンを生成可能な有機酸あるいは無機酸とCuからなる
銅金属塩あるいは銅金属塩とりん酸塩との合計量が5%
未満の場合は屋外暴露で安定さび層が生成するまでに約
5年を要した。また銅金属塩とりん酸塩との添加量の比
率は、銅金属塩が5%以上、りん酸が45%未満で、両
者の合計添加量が5〜50%であれば任意で良いが実施
例によれば銅金属塩添加量とりん酸塩添加量の比率は1
対1が最も良好であった。
【0027】次に銅金属塩の添加量を5%以上、りん酸
塩の添加量を45%未満とする理由を述べる。前に述べ
たように、CuイオンとPイオンの共存により、地鉄の
溶解によって生成したFeイオンが酸化してFeOO
H,Fe2 3 ,Fe3 4 のさび粒子となる時に緻密
なさび粒子となるのであるが、銅金属塩はCuイオンの
発生源となり、りん酸塩はPイオンの発生源となる。本
発明による処理液はりん酸を必須成分として含むため、
Pイオンはこのりん酸からも生成するので、りん酸塩は
必ずしも含有する必要はないが、Cuイオンの発生源で
ある銅金属塩は必ず含有する必要があり、その含有量が
5%未満であると充分な効果を発揮できないため銅金属
塩の添加量は5%以上を必要とする。場合により、銅金
属塩と併用するりん酸塩は、必須成分である銅金属塩の
添加量と銅金属塩とりん酸塩との合計添加量が5〜50
%という制限量から決定され、結果的にその添加量は4
5%未満ということになる。
【0028】クローム単体あるいはクローム化合物の量
を0.01〜10%としたのは0.01%未満であると
安定さび層中にクロームが濃縮せず、逆に10%を超え
ても安定さび層中に濃縮されるクローム量は変わらない
ので無駄であるばかりでなく、一般にクローム化合物は
酸化性が強いためそれらが多すぎると被膜に悪影響をお
よぼすからである。
【0029】このように本発明による処理剤は、現在市
販されている耐候性鋼用の処理剤が耐候性鋼の安定化さ
び生成機能を助長する形で効果的であるのに対し、りん
酸、ブチラール樹脂、銅金属塩、りん酸塩、クローム化
合物などの本発明による処理剤に含有される成分が鋳鉄
と反応、あるいは鋳鉄に作用することにより促進的に鋳
鉄の安定さびを生成することが可能であるが、安定さび
が生成するまでに要する期間は、やはり鋳鉄そのものの
組成により多少影響されるものであり、鋳鉄中のCuお
よびPの含有量がそれぞれ0.2%以上、0.05%以
上の鋳鉄に本発明の処理剤を適用することにより約1年
程度の短期間で安定さびを生成することが可能である。
一方、CuおよびPともに、安定さび生成の効果に対す
る飽和添加量があり、またこれらCuおよびPを過度に
添加した場合、鋳鉄としての機能を損なうことがあるた
め、その添加量の上限を実用上制限することが好まし
い。例えば、Pを必要以上に添加すると熔接性が低下す
る。従って、実用上から添加上限量は、Cuの場合は3
%、Pの場合は1.0%とするのが望ましい。
【0030】本発明による処理液に着色力を持たせるこ
とも可能である。すなわち、本発明による処理液は、ブ
チラール樹脂を主体とする樹脂成分と、りん酸、銅金属
塩、りん酸塩、クローム単体かクローム化合物からな
り、これらはいずれも着色力がないかあるいは非常に弱
いものであるため一般の塗料のように鋳鉄を好みの色に
着色することができないが、銅金属塩、りん酸塩の一部
を、一般の塗料で使用される着色用の顔料に置き換える
ことにより可能となる。つまり、銅金属塩あるいは銅金
属塩とりん酸塩の合計量が5%より小さくならない範囲
で着色顔料を添加することにより、鋳鉄を好みの色で仕
上げることが可能である。着色顔料としては、一般の塗
料で使用される着色顔料を使用すれば良く、例えば無機
系顔料では二酸化チタン、べんがら、カーボンブラッ
ク、黄鉛などがあり、有機系顔料ではフタロシアニンブ
ルー、フタロシアニングリーン、有機系赤顔料、有機系
黄色顔料などがある。以下実施例にて説明する。
【0031】
【実施例】厚さ10mm、大きさ300×300mmの表1
に示す組成の鋳鉄1〜11を各8枚および比較材A、比
較材B用の鋳鉄をそれぞれ2枚、全部で90枚の鋳鉄と
比較材Cとして耐候性鋼8枚の計98枚を用意し、これ
らをショットブラスト処理した。このうち、鋳鉄1〜1
1と比較材Cについては、表2の処理剤のうち処理剤6
および処理剤8の2種類を除く8種類の処理剤にて処理
した。表3に鋳鉄1〜11および比較材と各処理剤との
組み合わせを示す。これら処理はエアースプレーにて行
い、鋳鉄の表面に膜厚50μの被膜を形成せしめ、これ
らを鋳鉄と処理剤の組み合わせの各実施例とした。ま
た、比較材Aには何も塗装せず、比較材Bには、JIS
K−5621一般さび止め塗料をエアースプレーにて
塗布し、50μの厚みの塗膜を形成した。この2枚を比
較例とした。
【0032】これら98枚の試験板(実施例88種類、
比較例3種類の計98種類)を工業地帯に1年間自然暴
露した。1年後に各試験板の外観観察を行うとともに、
各試験板の一部を切断して樹脂にて埋め込み、切断断面
を顕微鏡観察した。更に、同じ試験板で更に暴露試験を
続行し更に1年後に外観観察を実施した。結果を表4乃
至表6に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】表4〜6の試験結果から、鋳鉄を裸で暴露
したもの(比較例A)は地鉄表面に安定さび層は生成せ
ず、2年後には全面に赤いさびと黒いさびが混在した。
鋳鉄にJIS K−5621の一般さび止め塗料を塗装
したもの(比較例B)も地鉄表面に安定さび層は生成せ
ず、2年後には全面に点さびが発生するとともに、とこ
ろどころで塗膜が剥離した。これらはいずれも、外観が
不良であった。また、耐候性鋼に処理したもの(比較例
C)では、1年以内では地鉄表面に安定なさび層が生成
しないか、あるいは生成しても数μ程度のものであり、
地鉄の防食作用は充分ではなかった。
【0040】一方、Cuを0.2%以上およびPを0.
05%以上含有する鋳鉄(鋳鉄5,10,11)に本発
明による処理剤を塗布したもの(実施例5,10,1
1,16,21,22,27,32,33,38,4
3,44)は、1年間の暴露で地鉄表面に約5〜15μ
のさび層を形成し、更に1年暴露を続行しても外観に異
常を認めないことから、このさび層は地鉄を防食する効
果を持つ安定さび層であり、従って本発明による鋳鉄の
処理剤は、鋳鉄の表面に安定なさび層を生成する表面処
理方法である。
【0041】
【発明の効果】以上のように本発明は、鋳鉄表面に比較
的薄い膜厚で処理し、鋳鉄表面にできるだけ早期に防食
保護作用を持つ安定さび層を形成し、鋳鉄を長期に腐食
から守ることができ、工業的に極めて有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 増田 一広 東京都千代田区大手町2−6−3 新日 本製鐵株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C09D 5/10

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量でCuを0.2%以上、Pを0.0
    5%以上含有する鋳鉄に、りん酸を0.01〜5%、地
    鉄に作用してFe2+イオンを生成可能な有機酸あるいは
    無機酸とCuからなる銅金属塩を5〜50%、Crの単
    体もしくは化合物を0.01〜10%、ブチラール樹脂
    単独あるいはブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相
    溶性を有する樹脂との混合樹脂でなおかつ混合樹脂中の
    ブチラール樹脂の含有率が30%以上の混合樹脂を3〜
    30%、残部溶剤よりなる混合処理液を塗布することを
    特徴とする鋳鉄の安定さび生成表面処理方法。
  2. 【請求項2】 重量でCuを0.2%以上、Pを0.0
    5%以上含有する鋳鉄に、りん酸を0.01〜5%、地
    鉄に作用してFe2+イオンを生成可能な有機酸あるいは
    無機酸とCuからなる銅金属塩を5%以上およびりん酸
    と金属からなるりん酸塩を45%未満含有し、なおかつ
    銅金属塩とりん酸塩との合計添加量が5〜50%、Cr
    の単体もしくは化合物を0.01〜10%、ブチラール
    樹脂単独あるいはブチラール樹脂およびブチラール樹脂
    と相溶性を有する樹脂との混合樹脂でなおかつ混合樹脂
    中のブチラール樹脂の含有率が30%以上の混合樹脂を
    3〜30%、残部溶剤よりなる混合処理液を塗布するこ
    とを特徴とする鋳鉄の安定さび生成表面処理方法。
JP13688695A 1995-06-02 1995-06-02 鋳鉄の安定さび生成表面処理方法 Expired - Lifetime JP2771787B2 (ja)

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