JP3252047B2 - 金属帯の脱脂洗浄方法および装置 - Google Patents

金属帯の脱脂洗浄方法および装置

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JP3252047B2
JP3252047B2 JP03614294A JP3614294A JP3252047B2 JP 3252047 B2 JP3252047 B2 JP 3252047B2 JP 03614294 A JP03614294 A JP 03614294A JP 3614294 A JP3614294 A JP 3614294A JP 3252047 B2 JP3252047 B2 JP 3252047B2
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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、潤滑油、研削油および
鉱油系を含む種々様々な圧延油などの油等、および合紙
に用いられるクラフト紙の細片や繊維、粉塵、金属粉な
どの固形付着物を、金属帯の表面から高精度で除去し、
表面を清浄化するための金属帯の脱脂洗浄方法および装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ステンレス鋼帯、合金帯などの
金属帯の製造には、生産ラインにおいて潤滑油、研削油
および鉱油系やその他の圧延油などの油等が用いられて
おり、特にステンレス鋼帯などの冷間圧延には、潤滑お
よび冷却のために鉱物油系やその他の圧延油が用いられ
る。したがって金属帯の表面には圧延油を主として金属
粉なども付着している。このような鋼帯や合金帯は、光
輝焼鈍炉により無酸化焼鈍されたり、あるいは焼鈍酸洗
設備により焼鈍された後、この焼鈍によって生じた鋼帯
などの表面の酸化スケールを除去するために酸洗処理さ
れる。
【0003】このような焼鈍酸洗処理を行う場合におい
て、前述したように金属帯の表面には圧延油などが付着
しており、しかもその付着状態は不均一でむら状となっ
ているため、このような金属帯をこのまま焼鈍酸洗設備
に連続通板したのでは、焼鈍酸洗後の金属帯の表面に
は、圧延油などによって油膜模様が生じ、また焼鈍によ
って金属帯の表面に酸化スケールが不均一に生成され
て、酸洗後の金属帯の表面品質を著しく低下させてしま
う。
【0004】またその鋼帯や合金帯の表面に油や固形付
着物が付着し残存(残留)していると、その鋼帯や合金
帯の表面に印刷や塗装などを行っても、インキまたは塗
料の付着性が悪いために、その鋼帯や鋼板が製品として
ほぼ完全に脱脂されていることが要求される場合があ
る。したがってこのような金属帯の生産ラインには、複
数の工程の設備のうち所定の設備の上流側あるいは下流
側に脱脂洗浄工程が設けられている。また、生産ライン
の最終ライン間には清浄な鋼帯や鋼板製品を提供するた
めに、単独の脱脂洗浄工程が設けられている。
【0005】このような脱脂洗浄工程を実現する先行技
術が、たとえば特開平3−249135号公報に示され
ている。この先行技術では、冷間圧延された後のステン
レス鋼帯の表面に圧延油や金属粉などの異物が付着し残
存(残留)しているため、焼鈍酸洗後のステンレス鋼帯
に材質の不均一が生じるとともに鋼帯表面品質を低下さ
せてしまうことを防止するために、ステンレス鋼帯の焼
鈍に先立って、ステンレス鋼帯の温度が70℃以上でか
つ300℃を超えないように、ステンレス鋼帯の表面に
直接に還元炎を接触させて圧延油を主とする付着物を気
化または燃焼させて除去することが開示されている。
【0006】またこの先行技術には、還元炎として、プ
ロパンガスなどのような気体燃料と空気などのような酸
素含有気体とを、空気比が0.2〜0.6となるように
混合して燃焼させ、またステンレス鋼帯は300℃以上
の高温とならないようにし、さらに還元炎の周囲の雰囲
気ガスを0.5%以下の酸素濃度とし、ステンレス鋼帯
の表面に酸化スケールが生じることを防止している。
【0007】このように還元炎をステンレス鋼帯の表面
に直接に接触させるようにした理由は、この先行技術の
従来の技術として記載されているように、焼鈍酸洗の前
処理として、有機溶剤またはアルカリ溶液中にステンレ
ス鋼帯を浸漬し、続いて水を噴射しながら、洗浄ブラシ
によって水洗いを行うような方法では、コストが高くな
ってしまうので、このようなコスト面での問題を解決し
た上で、ステンレス鋼帯の表面に付着した圧延油や汚れ
を傷などを生じさせることなく除去するために行うの
で、前記圧延油や汚れがどの程度除去されるかは、問題
とされていない。またこれによってステンレス鋼帯の表
面に酸化スケールが軽く生じたとしても、次なる焼鈍時
に本格的に加熱され酸化スケールが生成するので、余り
問題とされない場合が開示されているのである。しかし
ながら、たとえばステンレス鋼帯や鋼板を多種多様な用
途に使用される製品として顧客に提供するためや、特に
ステンレス鋼帯や鋼板の製品表面に印刷などを行うため
には、表面を非常に清浄にしておく必要があり、油およ
び固形付着物(異物)の高精度の除去率が要求され、し
かも高度の濡れ性を達成する必要がある。すなわち還元
炎をステンレス鋼帯の表面に直接接触させて油を蒸発、
気化または燃焼させる方法では、金属粉などの固形付着
物(異物)を、確実に、しかも高精度で除去し清浄化す
ることができず、またたとえば40dyne/cmとい
う高い濡れ性を達成することは困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目
的は、金属帯の生産ライン内やライン間にあって製造さ
れる金属帯の材質の均一化と表面品質を極力向上させる
ために、また最終ライン間にあって顧客に清浄な金属帯
製品あるいは金属板製品を製造し提供するために、人の
健康や生命に対して直接有害性のある洗浄液や、たとえ
ばオゾン層の破壊等といった環境汚染などの原因となる
有害性の高い洗浄液を用いることなく、しかも金属帯の
表面品質を低下あるいは変質させないように、金属帯表
面に付着し残存(残留)する油等および固形付着物を高
精度で除去して清浄化し、かつ高度の濡れ性を達成する
ことができる金属帯の脱脂洗浄方法および装置を提供す
ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、連続通板され
る金属帯を、有機溶媒やアルカリ溶液などを主体とする
洗浄液で洗浄した後、この金属帯の表面を火炎で加熱さ
せるかまたはこの金属帯の表面に火炎を直接接触させて
油分をガス化させることを特徴とする金属帯の脱脂洗浄
方法である。
【0010】また本発明は、連続通板される金属帯の表
面を火炎で加熱させるかまたはこの金属帯の表面に火炎
を直接接触させて油分をガス化させた後、この金属帯
を、アルカリまたはアルカリ系を主体とする水溶液から
成る洗浄液で洗浄することを特徴とする金属帯の脱脂洗
浄方法である。
【0011】さらに本発明は、火炎が、還元炎から中性
炎付近の領域にある火炎であって、完全燃焼しない範囲
でかつ煤が極力生じない範囲から完全燃焼する域付近の
範囲までの空燃比に選ばれることを特徴とする。
【0012】さらに本発明は、空燃比が、0.4〜1.
2に選ばれることを特徴とする。
【0013】さらに本発明は、空燃比が、0.95〜
1.15に選ばれることを特徴とする。
【0014】さらに本発明は、火炎で加熱するかまたは
火炎が直接接触する金属帯の表面とは反対側の表面に冷
却ロールを接触させて冷却することを特徴とする。
【0015】さらに本発明は、洗浄液は、温水および/
または水蒸気を用いることを特徴とする。
【0016】さらに本発明は、洗浄液は、アルカリまた
はアルカリ系を主体とする水溶液を用いることを特徴と
する。
【0017】さらに本発明は、連続通板される金属帯の
表面を幅方向全長にわたって火炎で加熱させるかまたは
この金属帯の表面に幅方向全長にわたって火炎を直接に
接触させるように設けられるバーナと、酸素を含む燃焼
用ガスと燃料とを、完全燃焼しない範囲でかつ煤が極力
生じない範囲から完全燃焼する域付近の範囲までの空燃
比で混合して、前記バーナに供給する混合ガス供給手段
と、前記バーナからの火炎で加熱されるかまたはこの火
炎が直接接触される金属帯の表面とは反対側の表面が巻
掛けられ接触される冷却用ロールと、前記バーナおよび
冷却用ロールに近接して設けられ、連続通板される金属
帯の表面を、洗浄液への浸漬およびこの洗浄液の蒸気を
結露させて洗浄する手段とを含むことを特徴とする金属
帯の脱脂洗浄装置である。
【0018】
【作用】本発明に従えば、連続通板される金属帯は、有
機溶媒やアルカリ溶液などを主体とする洗浄液によっ
て、金属帯の表面に付着する油等および金属粉などの固
形付着物(異物)を除去した後、この金属帯表面をたと
えば炙る状態などの如く火炎で間接的に加熱させるかま
たは表面に火炎を直接に接触させて、前記洗浄液などに
よって除去し切れなかった残留油分等を、その沸点以下
の低温域における蒸発、その沸点付近における急激な気
化または軽度な燃焼によってガス化させる。
【0019】このようにして、まず金属帯の表面を洗浄
液などによって洗浄することによって、金属帯表面のほ
とんどの油分等が除去されるとともに、金属粉などの固
形物をほぼ完全に除去することができる。しかしながら
この金属帯の表面にわずかに付着し残存(残留)する油
分等を火炎によってさらに積極的にガス化し除去させる
のである。金属帯の表面が酸化されるのを抑制できる比
較的低温の非酸化性火炎および非酸化性環境雰囲気下で
油分等のガス化を行うので、金属帯の表面が酸化して酸
化スケールが生成することを防止することができる。
【0020】しかも前記洗浄液は、フロン(フッ素化炭
化水素の総称)やハロン(臭素を含む含フッ素化炭化水
素の総称)の如く非常に高い脱脂能力を有するけれども
オゾン層の破壊等といった環境汚染などの原因となる有
害性の高い有機溶媒とか、人の健康や生命に対して若干
有害であるとともにとりわけオゾン層の破壊等に対して
有害なトリクロロエタンや人に対して有害であるけれど
もオゾン層の破壊等に対してはそれほど有害ではないト
リクロロエチレンの如くいずれも高い脱脂能力を有する
塩素系炭化水素である有機溶媒とかを極力使用しないよ
うにする。
【0021】仮に使用するにしても、環境汚染に結びつ
く有害性の高い有機溶媒だけは絶対使用しないようにし
て、たとえば前記トリクロロエチレンを人に対して無害
化する対策、設備対策を講じて使用したり、あるいは脱
脂能力は多少低下しても、たとえばアルコール系、パラ
フィン系、灯油(系)の洗浄液を使用目的や求められる
脱脂洗浄後の表面状況などに応じて選択しながら使用で
きるようにするのである。
【0022】したがって、この洗浄液としては、前述の
如き有機溶媒のほかに、従来から使用されている一般的
なアルカリ溶液などを主体とする洗浄液も使用すること
ができる。
【0023】つまり、洗浄液として少なくとも環境汚染
などの原因となる有害性のある有機溶媒を使用すること
なく、一方、人に対しても無害または無害化された状態
で使用することができ、多少脱脂能力の低い洗浄液を使
用し洗浄して金属帯表面にわずかに油分等が付着し残留
したとしても、さらにこの油分等のみならず洗浄液もわ
ずかに残留していたとしても、このような残留油分等々
を洗浄後火炎によってガス化させ得るので、金属帯表面
を高度の脱脂および洗浄性能でもって脱脂洗浄し清浄化
することができるのである。
【0024】また本発明に従えば、まず連続通板される
金属帯の表面を火炎で間接的に加熱させるかまたは表面
に火炎を直接に接触させて表面に付着する油等を蒸発、
気化あるいは軽度な燃焼によってガス化させる。次い
で、この金属帯を水、アルカリ溶液、有機溶媒などの洗
浄液で洗浄し、先の火炎によるガス化によって除去し切
れなかったわずかな残留油分等と金属粉などの固形付着
物(異物)を除去することができる。このようにして先
に火炎により油分等をガス化して除去しておくことによ
って、後続の洗浄液による脱脂洗浄処理が容易化され、
能率良く経済的に行われる。すなわち洗浄液中に回収し
除去される金属帯表面の単位洗浄面積当たりの回収油分
等の量を少なくして、廃液中の懸濁物の生成量を減少さ
せ、廃液処理量を減少させ、洗浄液の交換回数を少なく
し、あるいは新たな洗浄液の補給量を少なくして、洗浄
液の消費量を減少させることができる。
【0025】また前記洗浄液は、人に対して有害性のあ
る洗浄液や環境汚染などの原因となる有害性の高い洗浄
液を用いることなく、水やアルカリ溶液や有機溶剤など
の無害あるいは無害化された状態の洗浄液を適宜選択し
て用いればよく、脱脂能力が多少低い洗浄液であっても
使用することが可能であり、脱脂能力が高くても人や環
境に対して有害性のある洗浄液の使用を避けることがで
きる。
【0026】しかも金属帯表面の付着油分等をガス化さ
せた後に洗浄液によって洗浄するので、金属帯の表面に
付着する油分等のみならず固形付着物をも高精度の脱脂
洗浄性能で除去することができて、金属帯表面の高度な
清浄化および濡れ性を達成することができるのである。
【0027】以上に詳述するように、本発明において
は、金属帯表面に付着する油分等および固形付着物を高
精度に効率良く除去するために、油分等および固形付着
物のガス化飛散手段と洗浄手段とを併用しているのであ
るが、いずれの手段を先に行ってもよいのである。いず
れの手段を先に行うかは、金属帯の脱脂洗浄目的や要求
される脱脂洗浄精度や金属帯表面の変質不可およびその
許容程度や脱脂洗浄時機および場所などの種々な条件と
か状況に応じて、適宜選択して行えばよい。いずれにし
ても、両手段を併用することによって、両手段が相互に
補完し合い、かつ相乗作用して前述の本発明の課題(目
的)を達成することができるのである。
【0028】さらに本発明に従えば、金属帯の表面を加
熱させるかまたはこの表面に直接に接触させる火炎は、
還元炎から酸化性炎に至らない中性炎付近の領域までに
ある火炎であって、完全燃焼しない範囲でかつ煤を極力
生じない範囲から完全燃焼する域付近の範囲までの空燃
比に選ばれる。これによって金属帯の表面に煤を極力付
着させずに、しかも非酸化性火炎および非酸化性雰囲気
中で金属帯の表面に酸化スケールを生成することなく、
油分等をガス化して除去することができる。前記空燃比
は、燃料に対して必要な理論空気量に対する実際の燃焼
に必要とされる空気量の比率(実燃焼空気量/理論空気
量)をいう。
【0029】さらに本発明に従えば、前記空燃比は0.
4〜1.2に選ばれる。この空燃比が0.4未満であれ
ば、煤をかなり多量に生じ、また1.2を超えれば金属
帯の表面に酸化スケールが生成し易くなり、その酸化ス
ケールの厚みが増大して許容範囲が認められる場合にあ
っても許容し得ない程度に厚く増大してしまうからであ
る。このような煤の発生および酸化スケールの生成かつ
その厚みの増大を同時に回避するためには、空燃比を
0.4〜1.2の範囲に選ぶ必要がある。
【0030】さらに本発明に従えば、前記空燃比を0.
95〜1.15の範囲に選ぶことによって、煤の発生を
確実に防止し、かつ非酸化性火炎の確保と非酸化性雰囲
気を確実に出現して、煤の付着および酸化スケールの生
成とその増大を確実に防ぐことができるのである。
【0031】さらに本発明に従えば、火炎で加熱するか
または火炎が直接接触する金属帯の表面とは反対側の表
面に冷却ロールを配置し接触させて、火炎による加熱表
面または火炎の直接接触する表面の裏側から冷却させ
る。これによってかかる金属帯の表面の温度上昇を可及
的に低くして、油分等をガス化させるが金属帯表面の酸
化開始およびその促進を防ぐことができる。
【0032】また殆どの場合、金属帯の表面とは反対側
の表面、すなわち裏面にも付着している油分等および固
形付着物を除去する必要にせまられるが、その場合には
表裏同時機および同場所よりも、金属帯の連続通板に従
って表面のガス化飛散処理を終えてから裏面の処理へ
と、処理する面の反対側の面に冷却ロールを配置し接触
させて冷却しながら順次処理していくことが望ましい。
【0033】さらに本発明に従えば、洗浄液として温水
および/または水蒸気が用いられる。このような温水お
よび/または水蒸気によって金属帯の表面に付着する油
分等の粘度が低下され、その流動性が高められ、金属帯
の表面から油分等を容易に分離させることができる。ま
た温水は無害なので、取扱いが容易であるとともに、温
水中に懸濁した油分等は容易に分離して、廃液中の油分
等の回収が容易である。そのため廃液を再生するための
設備が簡単ですみ、親水性の汚れに広い溶解力および分
散力を有し、容易かつ安全に実施することができる。こ
のような温水中に単に浸漬するだけでなく、温水を金属
帯の表面に噴射すること、水蒸気を表面に噴射するこ
と、浸漬とこれらの噴射を適宜組合わせて処理すること
などによって、油分等の除去能力をさらに向上すること
ができる。
【0034】さらに本発明に従えば、前記洗浄液として
アルカリあるいはアルカリ系を主体とする水溶液が用い
られる。たとえば水酸化ナトリウム(NaOH)、オル
ソ珪酸ソーダ(2Na2O・SiO2・XH2O)、メタ
珪酸ソーダ(Na2O・SiO2・XH2O)などに必要
に応じて界面活性剤やキレート剤や消泡剤などの添加剤
が加えられたアルカリあるいはアルカリ系を主体とする
水溶液は、有害性が低く、たとえば3〜5%程度の低い
濃度で重度の油分等および固形付着物を含む汚れを除去
することができる。また廃液は中和処理によって油分等
の大部分を浮上分離させることができるので、廃液処理
が容易である。このような水溶液中に単に浸漬するだけ
でなく、電界処理手段を併用したりあるいは洗浄用回転
ブラシを併用しつつ水溶液を金属帯の表面にスプレした
り、さらに前述の如き水、温水、水蒸気による浸漬とこ
れらの噴射手段とを適宜組合わせて処理すれば、油分等
々を含む汚れ除去能力をさらに向上することができる。
【0035】さらに本発明に従えば、連続通板される金
属帯の一方の表面側にはバーナが設けられ、その反対側
の表面には冷却用ロールが設けられる。前記バーナに
は、混合ガス供給手段によって混合ガスが供給される。
この混合ガスは、酸素を含む燃焼用ガスと燃料とが完全
燃焼しない範囲でかつ煤が極力生じない範囲から完全燃
焼する域付近の範囲までの空燃比で混合されたものであ
る。このような混合ガスが供給されるバーナは、前記金
属帯の表面を幅方向全長にわたって火炎で加熱させるか
またはこの金属帯表面に幅方向全長にわたって火炎を直
接に接触させるように設けられる。このようなバーナ燃
焼により、この金属帯の表面に付着する油分等を蒸発、
気化あるいは軽度に燃焼させて除去することができる。
また金属帯の表面とは反対側の表面、すなわち裏面は冷
却用ロールに巻掛けられ接触されて冷却される。これに
よって金属帯表面の温度上昇が抑制され、バーナの燃焼
による火炎によって付着している油分等のガス化は行わ
れるが金属帯の表面性状が不所望に変化してしまうこと
を防止することができる。
【0036】またこの金属帯の表面および裏面に付着し
ている油分等を除去する場合には、このような一対のバ
ーナと冷却用ロールとのほかにさらにもう一対を通板す
る金属帯に対して逆配置して順次除去させるようにすれ
ばよい。さらに金属帯の表面は、洗浄手段によって洗浄
液およびその結露によって洗浄されるので、金属帯の表
面に付着している油分等および固形付着物をより一層確
実に除去することができる。
【0037】
【実施例】本発明に係る金属帯の脱脂洗浄方法および装
置は、格別図示して説明しないが、たとえばステンレス
鋼帯やその他の高合金帯の製造においては、焼鈍酸洗設
備における焼鈍炉の上流側や、光輝焼鈍設備における光
輝焼鈍炉の上流側や、研削油を用いてエンドレスベルト
によって研磨する仕上研磨設備における下流側にそれぞ
れ圧延油や研磨油などの油分等および金属粉などの固形
付着物を除去し金属帯の表面品質を維持または向上させ
るために配置され実施される。また、各生産ラインの最
終ライン間に、高精度に清浄化され高い濡れ性をも達成
した金属帯製品を提供するために単独の装置として設備
され実施される。
【0038】このような本発明に係る実施例を、以下に
図面により具体的に説明する。
【0039】図1は、本発明の一実施例の金属帯の脱脂
洗浄方法が実施される脱脂洗浄装置1の簡略化した断面
図、図2は、洗浄手段8の具体的構成を示す断面図、図
3は、バーナ4の具体的構成を示す平面図、図4は、混
合ガス供給手段5の具体的構成を示す系統図、図5は、
冷却水供給手段59の具体的構成を示す系統図、図6
は、空燃比と酸化膜厚さとの関係を示すグラフ、図7
は、X線光電子分光による各元素Fe,C,Cr,Oの
エッチング時間に対する存在率を示すグラフ、図8は、
本発明の他の実施例の脱脂洗浄装置1を示す簡略化した
断面図である。
【0040】図1に示す本実施例の脱脂洗浄装置1は、
基本的に、矢符A方向に連続通板される金属帯3の表裏
両表面を脱脂洗浄する場合が図示されていて、この金属
帯3の表面、次いでその裏面をそれぞれ幅方向全長(図
1の紙面に垂直方向)にわたって火炎で加熱させるかま
たは両表面をそれぞれ幅方向全長にわたって火炎を直接
に接触させるように設けられるバーナ4と、酸素を含む
燃焼用ガスであるたとえば空気と、燃料であるたとえば
プロパンガスとを、完全燃焼しない範囲でかつ煤が極力
生じない範囲から完全燃焼する域付近の範囲までの空燃
比で混合して前記バーナ4に供給する混合ガス供給手段
5と、前記バーナ4からの火炎で加熱させるかまたは火
炎を直接接触させる側とは反対側の表面がそれぞれ巻掛
けられる冷却用ロール6と、このような各冷却用ロール
6に冷却水を供給する冷却水供給手段59と、前記一対
のバーナ4および冷却用ロール6とさらにもう一対のも
のとに近接して金属帯3の通板方向Aの上流側に配置さ
れ、その金属帯3の両表面を洗浄液7によって洗浄する
洗浄手段8とを備える。
【0041】この金属帯3の片側表面を脱脂洗浄する場
合は、二対のうちの一対のバーナ4および冷却用ロール
6を除いて金属帯3を連続通板すればよいのである。
【0042】前記冷却用ロール6の両側方には、一対の
ブライドルロール9,10が前記冷却用ロール6の回転
軸線と平行な回転軸線まわりに回転自在に設けられる。
各ブライドルロール9,10の外周面は耐熱性ゴムによ
って被覆され、金属帯3の表面の損傷が防がれている。
また冷却用ロール6の外周面は熱伝達率の高い合成樹脂
によって被覆されており、金属帯3の表面が損傷される
ことを防止している。
【0043】このように連続通板される金属帯3は、別
の生産ライン(工程)に設けられる図示しない冷間圧延
設備によって、たとえば鉱油系冷間圧延油が供給かつ噛
込みされながら冷間圧延された板厚0.1〜3.0m
m、板幅800mm〜1570mm程度のSUS30
4,SUS430ステンレス鋼帯である。このような金
属帯3の通板速度は、一例として述べると、仕上げ研磨
工程であれば6〜50m/分であり、光輝焼鈍工程であ
れば5〜60m/分であり、焼鈍酸洗工程であれば5〜
100m/分程度に選ばれる。
【0044】図2は、図1に示される洗浄手段8の具体
的構成を示す断面図である。洗浄槽11の底部には貯液
槽13が形成され、この貯液槽13内に前記洗浄液7が
貯留される。貯液槽13には洗浄液7を加熱するための
加熱ヒータ14が設けられ、この加熱ヒータ14によっ
てたとえば沸点付近まで加熱された洗浄液7には、浸漬
ロール15の一部が埋没し、この浸漬ロール15に巻掛
けられた金属帯3が洗浄液7の浴中に浸漬され、金属帯
3の両表面に付着する油分等および金属粉などの固形異
物を除去することができる。
【0045】洗浄槽11の上部には、冷却水が循環され
る冷却管16が設けられ、貯液槽13内で加熱された洗
浄液7の蒸発した蒸気が冷却されて洗浄液7の蒸気が結
露する。このような洗浄液7の蒸気によっても、前記金
属帯3の両表面が洗浄される。
【0046】貯液槽13内には、金属帯3に付着してい
た油分等および固形付着物が混入して洗浄液7が懸濁す
るため、この汚濁された洗浄液7を管路17によって油
液分離槽18に導き、自然沈降によって油分等と洗浄液
とを分離する。油液分離槽18内において、油分は洗浄
液7に比べて比重が小さいため、上層へ集まり、金属粉
や合紙の一部などの固形付着物が下層へ集まり、上層と
下層との間には、比較的清浄な洗浄液7によって占めら
れた中間層が形成される。このような中間層に集まった
洗浄液7は、微細な油分および懸濁物を含んでいるた
め、管路19を介して蒸留槽20へ導き、加熱ヒータ2
1によって加熱しながら液中に分散している油分を分離
させる。ここでも比重の小さい油分は上層に集まり、比
重の大きい懸濁物は下層に集まる。
【0047】このように下層に集まった洗浄液は、前述
の油液分離槽18における中間層の洗浄液に比べて清浄
化されており、このような洗浄液を加熱ヒータ21によ
って加熱して蒸発し、蒸留槽20の上部側に設けられる
冷却管23によって冷却し、液化した洗浄液は管路24
によって貯液槽13内へ送液され、再び金属帯3の脱脂
および洗浄に用いられる。
【0048】蒸留層20には、たとえば導電率を計測す
る汎用多成分濃度計を設けて油分の濃度を測定し、所定
の油分濃度を超えたとき廃液として排出管路25を介し
て外部へ導き、廃液処理設備において処理される。
【0049】前記洗浄液7は、親油性有機溶剤としてオ
ゾン層破壊物質に指定されていないトリクロロエチレン
(商品名トリクレン)が用いられる。このような塩素系
合成有機溶剤は、一般に不燃性であり、脱脂能力が非常
に大きく、低沸点であるために再生が容易であり、特に
前記トリクロロエチレンは、1,1,1−トリクロロエ
タン(C23Cl3 )によって代表される他の塩素系合
成有機溶剤に比べてオゾン層破壊の危険性が低い。その
理由は、トリクロロエチレン(C2HCl3)分子構造中
の炭素が二重結合を有するため、分子結合が不安定でオ
ゾン層に達するまでに分解されてしまうからである。
【0050】また、このような洗浄液としては、以上に
説明するような高脱脂能力を有する塩素系合成有機溶剤
であるトリクロロエチレンのほかに、脱脂能力は低いの
であるが、一般的に公知である温水および/または水蒸
気や、たとえば水酸化ナトリウム、オルソ珪酸ソーダ、
メタ珪酸ソーダなどのアルカリあるいはアルカリ系を主
体とする水溶液や、これらを適宜組合わせたものに、単
に浸漬するだけでなく、電界処理、洗浄用回転ブラシ、
スプレ処理などを適宜組合わせ併用しながら、使用する
ことができるのであるが、簡単に後記説明する。
【0051】図3は、バーナ4の具体的構成を示す平面
図である。前記バーナ4は、リボンバーナといわれる直
火形バーナであって、円筒状のバーナヘッド26の長手
方向両端部にはフランジ継手27,28が固定され、各
フランジ継手27,28にはスイベルジョイント29,
30が連結される。各スイベルジョイント29,30の
前記フランジ継手27,28に接続される一端部には、
複動空気圧シリンダ31,33のピストン棒34,35
が連結され、バーナヘッド26に軸線方向に沿って一直
線状に形成される複数の炎孔36が、前記冷却用ロール
6に巻掛けられた金属帯3の表面に向けて、希望する角
度を成すように、火炎の噴射方向を調整することができ
るように構成されている。
【0052】前記スイベルジョイント29,30の各他
端部はまた、バーナヘッド26の軸線に対して直角に矢
符B1,B2方向に変位自在である。このような矢符B
1,B2方向に変位することによって、金属帯3の表面
との間隔L1を調整しこの表面を加熱したりあるいは直
接接触させたりすることができる。前記バーナヘッド2
6の軸線方向長さL2は、前記金属帯3の幅を含む長さ
以上に適宜選ばれ、たとえば約1.7m程度である。前
記各スイベルジョイント29,30の各他端部には、炎
孔36から出る炎を還元炎あるいは中性炎とするため
に、完全燃焼しない範囲でかつ煤が極力生じない範囲か
ら完全燃焼する域付近の範囲までの空燃比に選ばれた燃
料と酸素を含む燃焼用ガスとの混合ガスが供給される供
給口37,38が設けられる。ここで、空燃比とは、燃
料に対して必要な理論空気量に対する実際の燃焼に必要
な空気量の比率(実際の空気量/理論空気量)である。
また前記燃料としては、プロパンガス(略称LPG)で
あってもよく、液化天然ガス(略称LNG)であっても
よい。また燃焼用ガスとしては、空気が用いられる。
【0053】図4は、混合ガス供給手段5の具体的構成
を示す系統図である。圧力容器39に充填されたガス燃
料は、管路40に介在される減圧器41によって所定圧
に減圧された後、主弁43およびゼロガバナ44を経て
空燃比調整手段45に導かれ、その空燃比調整手段45
から供給されるガス燃料は、混合器46に供給される。
【0054】一方、ブロア47によって吸引された燃焼
用空気は、管路48,49を経て前記混合器46に供給
される。また前記管路48に供給された燃焼用空気の一
部は、管路50を介して燃焼室51に導かれる。前記混
合器46では、空燃比調整手段45において流量が調整
されたガス燃料と、前記管路48,49を経て供給され
た燃焼用空気とが混合され、管路53へ導出される。こ
の管路53内の混合ガスは、管路54によって前記燃焼
室51に導かれ、前述の管路50から供給された燃焼用
空気によって燃焼され、このときのO2 濃度がフレーム
アレスタ55によって検出される。このようなO2 濃度
に基づいて空燃比調整手段45におけるガス燃料の供給
量が調整される。
【0055】前記管路53から導出される混合ガスは、
管路56を経て金属製のフレキシブルホース57,58
を介して前記スイベルジョイント29,30のガス供給
口37,38にそれぞれ供給される。このような構成を
有する混合ガス供給手段5によって、前記バーナ4に任
意の空燃比でガス燃料を供給することができる。
【0056】図5は、冷却用ロール6に供給される冷却
水を供給するための冷却水供給手段59の構成を示す系
統図である。前記冷却用ロール6は、中空であって、軸
線方向一端部から他端部に向けて冷却水を流過させるこ
とができる。このような冷却用ロール6の軸線方向両端
部は、一対のロータリジョイント60,61によって軸
支され、これらのロータリジョイント60,61を介し
て外部から冷却水を供給し、または排出することができ
る。
【0057】たとえば循環水を1.5m3 程度貯留する
ことができるタンク63の上部には、一方のロータリジ
ョイント61の接続口に連なる管路64が接続され、ま
たタンク63の下部には他方のロータリジョイント60
の接続口に連なる管路65が接続される。これらのタン
ク63、各管路64,65および冷却用ロール6によっ
て、循環流路が構成される。タンク63には、冷却水供
給用管路66からたとえば温度32℃程度の冷却水が
0.5kg/cm2 の供給圧で流量を1.5m3/時で
供給される。
【0058】冷却水供給用管路66には、温度調整弁6
7が介在され、タンク63に設けられる温度検出器90
によって検出されたタンク63内の水温に基づいて、管
路66を介してタンク63に供給される冷却水の供給量
を調整することができるように構成される。このような
タンク63内の水温は、通常40℃に維持されている。
そのため、管路68を介して5kg/cm2 の供給圧で
流量が20kg/時の水蒸気がタンク63内に供給され
る。このようにしてタンク63内の水を昇温させてい
る。なお、このようにして水蒸気によってタンク63内
の水温を上昇させるのは、冷却用ロール6が金属帯3と
の接触によって加熱していない起動時だけに用いられ、
起動後は、冷却用ロール6内を循環する冷却水が昇温す
るので、加熱する必要はない。
【0059】前記管路65にはポンプ69が設けられ、
タンク63内の冷却水を冷却用ロール6内に循環して供
給することができる。タンク63内で過剰の冷却水は、
管路70を介して工場内に設けられるピット71内に排
出される。またタンク63の底部に蓄積したスラッジな
どの懸濁物は、管路73を介して前記ピット71に排出
することができる。
【0060】さて、このようにして、本実施例の脱脂洗
浄設備に連続通板する金属帯3は、たとえばトリクロロ
エチレン溶剤から成る洗浄液7に浸漬され、その表面に
付着する油分等と金属粉や研磨粉などの固形付着物の汚
れとを除去し、その後、空燃比を0.4〜1.2の範囲
内に制御されたガス燃料を用いるバーナ4からの還元炎
あるいは中性炎で加熱させるかあるいは火炎を直接接触
させて、金属帯3の表面に残留する油分等をガス化、す
なわち蒸発、気化または軽く燃焼させ、金属帯3表面の
脱脂を完了させる。バーナ4の反対側には、前述の冷却
用ロール6が設けられて冷却され、金属帯3の温度上昇
が抑制される。
【0061】
【表1】
【0062】表1は、前述の脱脂処理を行った場合の金
属帯3表面の残留油分等および固形付着物の汚れの数を
示したものである。残留油分等は切出した鋼板を四塩化
炭素CCl4 によって洗浄し、その四塩化炭素溶液を赤
外吸光光度法によって定量して求めたものである。処理
前の付着量973mg/m2 に対して、トリクロロエチ
レン洗浄液に浸漬後の残留量は、21mg/m2 と減少
しているが、充分ではない。すなわちこのような油分等
が残留している金属帯3の表面に印刷しても、インキが
のらないのである。したがって続くバーナ4による火炎
脱脂を行うことによって、残留油分等は2mg/m2
満となり、しかも固形付着物の汚れは前記洗浄液の洗浄
作用によって、そのほとんどが流れ落ちている。このよ
うにして金属帯3の表面に付着する油分等および固形付
着物を超精密洗浄して高精度の清浄度(クリナビリテ
ィ)および濡れ性を実現することができる。次に、前記
バーナ4によって燃焼する混合ガスの空燃比について説
明する。
【0063】図6は、空燃比とたとえばSUS304,
SUS430ステンレス鋼帯金属帯表面の酸化膜の厚さ
の比率との関係をかかる鋼帯の通板速度が5m/min
と50m/minについて調査した状況を示すグラフで
ある。前記バーナ4に供給される混合ガスは、混合供給
手段5によって空燃比が0.4〜1.2の範囲となるよ
うに制御される。すなわちプロパンガスなどの炭化水素
系のガス燃料と酸素含有気体であるたとえば空気とを混
合して燃焼させると、不完全燃焼の火炎から完全燃焼す
る域付近の火炎、すなわち酸化性炎に至らない還元炎か
ら中性炎が生ずるのであるが、このような還元炎あるい
は中性炎を使用するのは、金属帯表面の油分等が蒸発、
気化または軽く燃焼するときに金属帯3の表面が酸化さ
れて、酸化スケールが生成するのを極力防止するためで
ある。非酸化性の還元炎あるいは中性炎と非酸化性雰囲
気中で金属帯の表面を加熱することによって、その表面
を酸化させることなく油分等だけをガス化させて油分等
だけをほぼ完全に除去することができる。
【0064】この空燃比が1.2以上になると、同図か
らも明らかなように、酸化皮膜の厚さ比率が増加してし
まい、また空燃比が0.4未満になると、金属帯の表面
に煤が付着してしまう。したがって空燃比は0.4〜
1.2の範囲に選ばれる。さらに好ましくは、空燃比は
0.95〜1.15の範囲、すなわち完全燃焼に近い状
態の範囲で燃焼させることによって、酸化させず煤を付
着させてしまうことなく、しかも燃費を向上しながら油
分等をガス化することができる。
【0065】同図の曲線は、X線光電子分光((electro
n spectroscoty for chemicalanalysis)、略称ESC
A)の評価方法において、図7に示されるように、Fe
とOとの交点P1を酸化皮膜と金属帯の素地との境界に
あると定義し、この点P1までの深さを酸化皮膜の厚さ
としている。なお、CrとOとの交点P2をとったり、
2/3Fe=Oとなる点、P3を境界としてもよい。た
だし、この評価方法は、横軸のエッチング時間[分]と
縦軸の各元素存在率[%]との関係はSiO2 を標準と
して求めたものであるため、金属帯がステンレス鋼帯で
ある場合には、エッチング速度が異なる。このため、酸
化皮膜の厚さの絶対量を求めることはできない。
【0066】図8は、本発明の他の実施例の概略的構成
を示す断面図である。なお、前述の実施例と対応する部
分には、同一の参照符を付す。本実施例において、注目
すべきは、洗浄手段8の上流側にバーナ4と冷却用ロー
ル6とが設けられ、また洗浄液7は温水を用いている。
このような脱脂洗浄装置に連続通板される金属帯3は、
まず空燃比を0.4〜1.2、もっと好ましくは0.9
5〜1.15に制御されたガス燃料を用いるバーナ4の
還元炎あるいは中性炎によって金属帯表面を加熱するこ
とによって油分等をガス化させ、次に温水浴中に浸漬し
て、金属粉や研磨粉などの固形付着物を除去し、金属帯
の脱脂洗浄を完了させる。表2は、本実施例の脱脂およ
び洗浄処理を行った場合の金属帯表面の残留油分等およ
び固形付着物の数を示している。
【0067】
【表2】
【0068】前述の実施例と同様に、付着油分等は、切
出した鋼板を、四塩化炭素によって洗浄し、その四塩化
炭素溶液を赤外吸光光度法によって定量して求めたもの
である。付着油分量は、処理前に、1005mg/m2
であったのに対し、火炎脱脂後の残留量は2mg/m2
未満となっており、油分等の除去はほぼ完全に完了して
いるが、固形付着物の汚れの数は100から89と余り
減少していない。次に温水浴に浸漬することによって固
形付着物の汚れの数は5と格段に減少させることができ
る。
【0069】上述の図1〜図8に示される実施例の洗浄
装置によって脱脂洗浄を行った場合、高精度の洗浄度を
達成することができるのに加えて、高度の濡れ性を達成
することができることが本件発明者によって確認され
た。
【0070】本件発明者は、濡れ性が向上することを確
認するために、次の実験を行った。すなわち図1に示さ
れる実施例の脱脂洗浄装置1において、金属帯3とバー
ナ4との炎孔36との間隔を38.1mmに設定し、4
0m/分の通板速度で空燃比1.0で燃焼する還元炎に
接触させたところ、54dyne/cm以上の濡れ性が
確認された。
【0071】本発明のさらに他の実施例として、アルカ
リ系有機溶剤を主体とする水溶液を洗浄液として用いる
ようにしてもよい。このような水溶液としては、珪酸ソ
ーダが好適である。この場合、洗浄液の温度を70℃程
度とし、その濃度は3%程度とし、10A/dm2 の電
解電気量で2.0sec程度の電流密度で電解洗浄を行
い、合成樹脂製の洗浄回転ブラシによって金属帯の表面
を洗浄するようにしてもよい。
【0072】本発明のさらに他の実施例として、非アル
カリあるいは非アルカリ系脱脂剤を洗浄液として用いる
ようにしてもよい。このような非アルカリ系脱脂剤とし
ては、たとえばアルコール系の水系脱脂剤およびパラフ
ィンや灯油などの石油系脱脂剤が好ましい。このような
洗浄剤を用いることによって水質汚濁および大気汚染な
どの点で充分な安全性を確保することができる。
【0073】本発明の脱脂洗浄方法および脱脂洗浄装置
は、単独の脱脂洗浄ラインは勿論のこと、焼鈍酸洗ライ
ン、光輝焼鈍ライン、アルカリ脱脂洗浄ラインおよび仕
上げ研磨ラインに組み込んで実施することができる。ま
た脱脂洗浄後の懸濁した廃液は、市販の遠心分離機によ
って懸濁物を除去し、清浄化された洗浄液を再び洗浄槽
に送液して再利用するようにしてもよい。
【0074】
【発明の効果】本発明によれば、洗浄液で洗浄した後、
還元炎や中性炎によって金属帯表面の油分等を除去する
ようにしたので、環境汚染などの原因となる有害性の高
い洗浄液を用いることなく金属帯の表面に付着し残留す
る油分等および固形付着物(異物)を高精度で除去し清
浄化することができるとともに、その表面に高度の濡れ
性を達成することができる。
【0075】また本発明によれば、金属帯の表面を還元
炎や中性炎によって油分等を除去した後に、アルカリま
たはアルカリ系を主体する水溶液から成る洗浄液によっ
て洗浄するようにしたので、環境汚染などの原因となる
有害性の高い洗浄液を用いることなく、多少脱脂能力の
低い洗浄液でも充分脱脂洗浄することが可能となり、金
属帯の表面に付着する油分等および固形付着物(異物)
を高精度で除去して清浄化かつ高度の濡れ性を達成する
ことができる。
【0076】さらに本発明によれば、還元炎や中性炎の
空燃比を完全燃焼しない範囲でかつ煤が極力生じない範
囲から完全燃焼する域付近の範囲までに選ぶようにした
ので、金属帯の材質の変化やその表面が酸化することを
防止することができる。
【0077】さらに本発明によれば、前記空燃比を0.
4〜1.2の範囲に選ぶようにしたので、金属帯表面の
酸化をより一層確実に防止することができる。
【0078】さらに本発明によれば、前記空燃比を0.
95〜1.15の範囲に選ぶようにしたので、金属帯表
面の酸化を確実に防止することができるとともに、燃料
を節約することができる。
【0079】さらに本発明によれば、還元炎や中性炎で
加熱させるかまたは還元炎や中性炎を接触させる金属帯
の表面とは反対側の表面を冷却するようにしたので、金
属帯の熱による材質上および表面性状上の変質を防止
し、かつ表面の酸化を確実に防止することができる。
【0080】さらに本発明によれば、洗浄液として温水
を用いるようにしたので、有害性がなく安価であり、ま
た洗浄後の油分等を含む廃液の油分と水との分離が容易
である。
【0081】さらに本発明によれば、洗浄液としてアル
カリまたはアルカリ系を主体とする水溶液を用いるよう
にしたので、高い脱脂能力で金属帯表面に付着する油分
等を除去し、環境汚染の原因となる有害性の高い洗浄液
の使用を回避して、高精度で脱脂し清浄化するとともに
高度の濡れ性を達成することができる。
【0082】さらに本発明によれば、油分等および金属
粉などの固形付着物が付着する金属帯の表面をバーナか
らの還元炎や中性炎で加熱させるかその表面にバーナか
らの還元炎や中性炎を直接接触させ、かつ反対側の表面
を冷却用ロールに接触させて冷却するとともに、その金
属帯を洗浄液およびその結露によって洗浄するようにし
たので、前記油分等および水などを高精度で除去しかつ
高度の濡れ性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の金属帯の脱脂洗浄方法が実
施される脱脂洗浄装置1の簡略化した断面図である。
【図2】洗浄手段8の具体的構成を示す断面図である。
【図3】バーナ4の具体的構成を示す平面図である。
【図4】混合ガス供給手段5の具体的構成を示す系統図
である。
【図5】冷却水供給手段59の具体的構成を示す系統図
である。
【図6】空燃比と酸化膜厚さの比率との関係を示すグラ
フである。
【図7】X線光電子分光による各元素Fe,C,Cr,
Oのエッチング時間に対する存在率を示すグラフであ
る。
【図8】本発明の他の実施例の脱脂洗浄装置1を示す簡
略化した断面図である。
【符号の説明】
1 脱脂洗浄装置 3 金属帯 4 バーナ 5 混合ガス供給手段 6 冷却用ロール 7 洗浄液 8 洗浄手段 11 洗浄槽 26 バーナヘッド 45 空燃比調整手段 59 冷却水供給手段
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23G 3/02 C23G 1/19 C23G 1/24 C23G 5/00 C23G 5/02

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続通板される金属帯を、有機溶媒やア
    ルカリ溶液などを主体とする洗浄液で洗浄した後、この
    金属帯の表面を火炎で加熱させるかまたはこの金属帯の
    表面に火炎を直接接触させて油分をガス化させることを
    特徴とする金属帯の脱脂洗浄方法。
  2. 【請求項2】 連続通板される金属帯の表面を火炎で加
    熱させるかまたはこの金属帯の表面に火炎を直接接触さ
    せて油分をガス化させた後、この金属帯を、アルカリま
    たはアルカリ系を主体とする水溶液から成る洗浄液で洗
    浄することを特徴とする金属帯の脱脂洗浄方法。
  3. 【請求項3】 火炎は、還元炎から中性炎付近の領域に
    ある火炎であって、完全燃焼しない範囲でかつ煤が極力
    生じない範囲から完全燃焼する域付近の範囲までの空燃
    比に選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載
    の金属帯の脱脂洗浄方法。
  4. 【請求項4】 空燃比は、0.4〜1.2に選ばれるこ
    とを特徴とする請求項3に記載の金属帯の脱脂洗浄方
    法。
  5. 【請求項5】 空燃比は、0.95〜1.15に選ばれ
    ることを特徴とする請求項3に記載の脱脂洗浄方法。
  6. 【請求項6】 火炎で加熱するかまたは火炎が直接接触
    する金属帯の表面とは反対側の表面に冷却ロールを接触
    させて冷却することを特徴とする請求項1〜5のいずれ
    かに記載の金属帯の脱脂洗浄方法。
  7. 【請求項7】 洗浄液は、温水および/または水蒸気を
    用いることを特徴とする請求項1,3〜6のいずれかに
    記載の金属帯の脱脂洗浄方法。
  8. 【請求項8】 洗浄液は、アルカリまたはアルカリ系を
    主体とする水溶液を用いることを特徴とする請求項1,
    3〜6のいずれかに記載の金属帯の脱脂洗浄方法。
  9. 【請求項9】 連続通板される金属帯の表面を幅方向全
    長にわたって火炎で加熱させるかまたはこの金属帯の表
    面に幅方向全長にわたって火炎を直接に接触させるよう
    に設けられるバーナと、 酸素を含む燃焼用ガスと燃料とを、完全燃焼しない範囲
    でかつ煤が極力生じない範囲から完全燃焼する域付近の
    範囲までの空燃比で混合して、前記バーナに供給する混
    合ガス供給手段と、 前記バーナからの火炎で加熱されるかまたはこの火炎が
    直接接触される金属帯の表面とは反対側の表面が巻掛け
    られ接触される冷却用ロールと、 前記バーナおよび冷却用ロールに近接して設けられ、連
    続通板される金属帯の表面を、洗浄液への浸漬およびこ
    の洗浄液の蒸気を結露させて洗浄する手段とを含むこと
    を特徴とする金属帯の脱脂洗浄装置。
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