JP3228674B2 - プレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板 - Google Patents

プレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板

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JP3228674B2 JP06012996A JP6012996A JP3228674B2 JP 3228674 B2 JP3228674 B2 JP 3228674B2 JP 06012996 A JP06012996 A JP 06012996A JP 6012996 A JP6012996 A JP 6012996A JP 3228674 B2 JP3228674 B2 JP 3228674B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車車体や家電
製品等に使用される亜鉛系めっき鋼板をベースとした有
機複合被覆鋼板であって、プレス成形性に優れ、且つ鉄
錆が共存するような特殊な腐食環境下での耐食性(以
下、耐もらい錆性という)に優れた有機複合被覆鋼板に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車車体のプレス加工工程では、作業
性、脱脂性、化成処理性が要求されるため高粘度のプレ
ス油を使用する例は少なく、一般には、塗布されている
防錆油がそのままプレス油として使用される。また、特
に車体外板のプレス加工においては、押しキズ防止のた
め洗浄油(潤滑性は防錆油よりさらに劣る)が使用され
ている。そのため、形状が複雑な部位等の加工ではプレ
ス割れ等のトラブルを起こし易いという問題がある。そ
こで、形状が複雑な部位等の加工においても安定したプ
レス成形が可能となるような、優れたプレス成形性を有
する材料の開発が求められている。
【0003】一方、家電製品の分野では、材料はプレス
油を使用して成形加工され、加工後にフロン系の溶剤で
脱脂した後使用されることが多い。しかし、フロン系の
溶剤は地球のオゾン層破壊の原因となることや、プレス
油を使用する作業環境は作業者にとって劣悪であること
から、最近では無塗油でプレス成形可能な有機複合被覆
鋼板の開発が進められている。以上のような背景の下
で、従来、次のような有機複合被覆鋼板が提案されてい
る。
【0004】(1) 特開昭64−8033号公報には、Z
n−Ni合金めっき鋼板の表面にクロメート層を有し、
その上層に第2層としてシリカやクロム酸塩を含有した
アミン変性エポキシ樹脂からなる有機皮膜を被覆した有
機複合被覆鋼板が示されている。 (2) 特開平3−284942号公報には、合金化溶融亜
鉛めっき鋼板の耐パウダリング性及び耐フレーキング性
を改善するため、有機皮膜中にシリカやフッ素樹脂微粉
末を含有させた有機樹脂被覆合金化溶融亜鉛めっき鋼板
が示されている。
【0005】(3) 特開平5−255587号公報には、
冷延鋼板または亜鉛系めっき鋼板の表面に何らかの表面
処理を施し、その上層に水分散型ポリウレタン樹脂、シ
リカ、ポリオレフィン系ワックスおよび/またはフッ素
樹脂微粉末を含有した有機皮膜を有する有機複合被覆鋼
板が示されている。 (4) 特開平5−65666号公報には、亜鉛系めっき鋼
板の表面にクロメート層を有し、その上層に水性樹脂、
シリカ、極性基を付与した分子量1000〜4000、
軟化温度150℃以下のポリオレフィンワックスディス
パージョン(粒径3.0μm以下)及びテフロンディス
パージョン(粒径3.0μm以下)を含有した有機皮膜
を有する有機複合被覆鋼板が示されている。
【0006】(5) 特開平6−173037号公報には、
エーテルエステル型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリ
カ及びポリオレフィンワックスを含有した有機皮膜を有
する有機複合被覆鋼板が示されている。 (6) 特開平6−57440号公報には、亜鉛系またはア
ルミ系めっき鋼板の表面にクロメート層を有し、その上
層にカルボキシル変性エポキシ樹脂またはポリビニルブ
チラール樹脂、シリカ、ポリエチレンワックス及びポリ
四フッ化エチレン樹脂微粉末を含有した有機皮膜を有す
る有機複合被覆鋼板が示されている。
【0007】(7) 特開平2−43040号公報には、亜
鉛系めっき鋼板の表面にクロメート層を有し、その上層
にカルボキシル変性エポキシ樹脂またはポリビニルブチ
ラール樹脂、シリカ、融点70℃以上のポリオレフィン
ワックス及びフッ素樹脂微粉末(粒径1.0〜7.0μ
m)を含有した有機皮膜を有する有機複合被覆鋼板が示
されている。 (8) 特開平3−2257号公報には、冷延鋼板または亜
鉛系めっき鋼板の表面にリン酸塩皮膜またはクロメート
皮膜を有し、その上層にエポキシ系樹脂、シリカ、11
0℃以上の融点を有するポリオレフィン系ワックス(平
均粒子径2.0〜5.0μm、比重0.94〜0.9
8)及びフッ素樹脂微粉末を含有した有機皮膜を有する
有機複合被覆鋼板が示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した(1)
〜(8)の有機複合被覆鋼板は、小物の絞り部品のような
絞りビードを付けない金型によるプレス成形性では優れ
た潤滑特性が得られるが、自動車の大物部品に代表され
るような絞りビードを付けた金型によるプレス成形では
十分な潤滑特性が得られず、優れたプレス成形性を得る
ことができない。
【0009】また、最近、腐食環境下に鉄錆が共存する
ような特殊な環境下での耐食性(耐もらい錆性)が問題
とされはじめている(CAMP-ISIJ Vol.5(1992),p.169
3)。すなわち、有機複合被覆鋼板をこのような環境下
で使用すると、鉄錆が有機皮膜の表面に付着して、有機
複合被覆鋼板本来の優れた耐食性を著しく低下させ、そ
の結果、有機皮膜を施していない亜鉛系めっき鋼板に対
する優位性を低下させるという問題が指摘され、このよ
うな耐もらい錆性の改善が求められているが、上記(1)
〜(8)の有機複合被覆鋼板の耐もらい錆性は十分なレベ
ルにはない。
【0010】耐もらい錆性の改善に関して「GALVATECH'
92, p372」では、有機樹脂中の架橋剤の添加量を減少
させて架橋密度を低下させた場合、有機複合被覆鋼板の
耐もらい錆性が低下したことが記載されているが、耐も
らい錆性を向上させるための具体的な手段については何
も示していない。本発明はこのような従来技術の問題に
鑑みなされたもので、有機皮膜による潤滑性の向上によ
り、自動車の大物部品に代表されるような絞りビードを
付けた金型によるプレス成形においても優れたプレス成
形性が得られ、且つ耐もらい錆性にも優れた有機複合被
覆鋼板を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは有機複合被
覆鋼板の皮膜構成、有機皮膜の膜厚、さらには有機複合
被覆鋼板のベースめっき鋼板の表面粗さとプレス成形性
および耐もらい錆性等との関係について鋭意検討を重ね
た結果、以下のような知見を得た。まず、耐もらい錆性
の向上については、硬化剤であるポリイソシアネート化
合物の多官能化により有機皮膜を高架橋密度化するこ
と、また、防錆添加剤としてシリカと難溶性クロム酸塩
を特定の割合で複合添加することが、優れた耐もらい錆
性を得る上で非常に有効であることが判った。
【0012】さらに、自動車の大物部品に代表されるよ
うな絞りビードを付けた金型によるプレス成形の向上を
目的として、有機複合被覆鋼板の絞りビード付きプレス
成形における成形性劣化要因を調査したところ、有機複
合被覆鋼板はビード通過時の曲げ、曲げ戻し等の塑性変
形を伴う摺動によって有機皮膜が剥離し、ビード通過後
はめっき層の露出面積がビード通過前と比較して極端に
増加すること、このため、ビード通過後の摺動ではめっ
き層とプレス金型が直接接触する面積が極端に増加する
結果潤滑性が劣化し、良好なプレス成形性が得られない
ことが判明した。そこで、ビード通過後の鋼板の潤滑性
向上について、さらに検討を重ねた結果、潤滑性の向上
に関して以下の事実が判明した。
【0013】(1) 有機皮膜の膜厚をある膜厚Co以上と
することにより、ビード通過後も良好な潤滑性が得られ
る。 (2) 有機複合被覆鋼板のベースめっき鋼板の表面粗さと
有機皮膜中の潤滑剤含有量によって、ビード通過後も良
好な潤滑性を有するに最低限必要な有機皮膜の膜厚Co
は異なり、良好な潤滑性を有するに最低限必要な有機皮
膜の膜厚Coと、有機皮膜中の潤滑剤含有量および有機
複合被覆鋼板のベースめっき鋼板の表面粗さRaとの間
には、下記実験式(i)の関係が存在し、有機皮膜の膜厚
をこの膜厚Co以上とすることにより、良好な潤滑性が
得られる。 0.1[Ra3+1.5{2/(D+2)}+0.5]=Co … (i) 但し Ra:亜鉛系めっき鋼板表面の中心線平均粗さ
(μm) D:有機皮膜中の潤滑剤(不揮発分)の含有量(wt
%) Co:良好な潤滑性を有するために必要な最低膜厚(μ
m)
【0014】(3) 潤滑剤として添加されるポリオレフィ
ンワックスとしては、チーグラー系触媒を用いた配位ア
ニオン重合法により製造されたポリオレフィンワックス
が優れた潤滑性を有しており、なかでも特定の軟化点お
よび分子量を有するポリエチレンワックスを用いること
により潤滑性が格段に向上する。 (4) フッ素樹脂微粉末としては、四フッ化エチレン樹脂
微粉末が特に優れた潤滑性を有し、その中でも低分子量
の四フッ化エチレン樹脂微粉末が特に優れた潤滑性を示
し、さらには特定の融点を有する四フッ化エチレン樹脂
微粉末を用いることにより、潤滑性が格段に向上する。
【0015】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、以下のような構成からなることをその特徴とす
る。 (1) 亜鉛系めっき鋼板の表面に第1層として、付着量が
金属クロム換算で5〜200mg/m2のクロメート層
を有し、その上層に第2層として、下記(i)に示すエポ
キシ系樹脂と防錆添加剤とを不揮発分の重量割合で、エ
ポキシ系樹脂:30〜80wt%、防錆添加剤:3〜5
0wt%の割合で含有する有機皮膜を有し、該有機皮膜
の膜厚が下記(ii)を満足するプレス成形性及び耐もらい
錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 (i) エポキシ樹脂の末端に少なくとも1個の塩基性窒素
原子と少なくとも2個の一級水酸基とを付加した基体樹
脂(A)100重量部(固形分)に対し、1分子中に少
なくとも3個のイソシアネート基を有する多官能ポリイ
ソシアネート化合物(B)を5〜80重量部(固形分)
の割合で混合したエポキシ系樹脂 (ii) 有機皮膜の膜厚が下記(1)式を満足する。 0.1(Ra3+2)≦C≦3.0 … (1) 但し C:有機皮膜の膜厚(μm) Ra:亜鉛系めっき鋼板表面の中心線平均粗さ(μm)
【0016】(2) 亜鉛系めっき鋼板の表面に第1層とし
て、付着量が金属クロム換算で5〜200mg/m2
クロメート層を有し、その上層に第2層として、下記
(i)に示すエポキシ系樹脂と下記(ii)に示す潤滑剤と防
錆添加剤とを不揮発分の重量割合で、エポキシ系樹脂:
30〜80wt%、潤滑剤:50wt%以下(但し、0
wt%を含まない)、防錆添加剤:3〜50wt%の割
合で含有する有機皮膜を有し、該有機皮膜の膜厚が下記
(iii)を満足するプレス成形性及び耐もらい錆性に優
れた有機複合被覆鋼板。 (i) エポキシ樹脂の末端に少なくとも1個の塩基性窒素
原子と少なくとも2個の一級水酸基とを付加した基体樹
脂(A)100重量部(固形分)に対し、1分子中に少
なくとも3個のイソシアネート基を有する多官能ポリイ
ソシアネート化合物(B)を5〜80重量部(固形分)
の割合で混合したエポキシ系樹脂 (ii) フッ素樹脂微粉末、ポリオレフィンワックス、1
つの粒子中にポリオレフィンとフッ素樹脂とが混在して
含まれる潤滑剤、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化カ
ーボンのなかから選ばれる少なくとも1種の潤滑剤 (iii) 有機皮膜の膜厚が下記(2)式を満足する。 0.1[Ra3+1.5{2/(D+2)}+0.5]≦C≦3.0 … (2) 但し C:有機皮膜の膜厚(μm) Ra:亜鉛系めっき鋼板表面の中心線平均粗さ(μm) D:有機皮膜中の潤滑剤(不揮発分)の含有量(wt
%)
【0017】(3) 上記(2)の有機複合被覆鋼板におい
て、有機皮膜に含まれる潤滑剤が、ポリオレフィンワッ
クス(E)とフッ素樹脂微粉末(F)が重量比でE/F
=90/10〜10/90の割合で混合された複合潤滑
剤であるプレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複
合被覆鋼板。 (4) 上記(2)または(3)の有機複合被覆鋼板において、有
機皮膜に含まれるポリオレフィンワックス(E)がチー
グラー系触媒を用いる配位アニオン重合法により製造さ
れたポリオレフィンワックスであるプレス成形性及び耐
もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 (5) 上記(2)〜(4)のいずれかの有機複合被覆鋼板にお
いて、有機皮膜に含まれるポリオレフィンワックス
(E)が、平均分子量:700〜4500、軟化点:1
00〜140℃のポリエチレンワックスであるプレス成
形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
【0018】(6) 上記(2)〜(5)のいずれかの有機複合被
覆鋼板において、有機皮膜に含まれるフッ素樹脂微粉末
(F)が、下記(a)の条件を満足する四フッ化エチレン
樹脂微粉末であるプレス成形性及び耐もらい錆性に優れ
た有機複合被覆鋼板。 (a) JIS K 7199に準拠したキャピラリーレオメ
ーターによる流れ特性試験方法において、下記測定条件
の下で測定された見掛けの溶融粘度が、見掛けの剪断速
度との間で下記(3)式を満足する。
【数3】 測定条件 試験温度:330℃ バレル直径:9.55mm キャピラリー寸法:直径d=1mm,長さ1=10mm キャピラリーの入口:フラット
【0019】(7) 上記(2)〜(6)のいずれかの有機複合被
覆鋼板において、有機皮膜に含まれるフッ素樹脂微粉末
(F)が融点:300〜330℃である四フッ化エチレ
ン樹脂微粉末であるプレス成形性及び耐もらい錆性に優
れた有機複合被覆鋼板。 (8) 上記(2)の有機複合被覆鋼板において、有機皮膜
に含まれる潤滑剤が、1つの粒子中にポリオレフィン
(E′)とフッ素樹脂(F′)とが混在して含まれる潤
滑剤粒子からなる潤滑剤(G)、若しくは該潤滑剤
(G)とポリオレフィンワックス(E)および/または
フッ素樹脂微粉末(F)とが配合された複合潤滑剤であ
って、潤滑剤(G)を構成するポリオレフィン(E′)
及びフッ素樹脂(F′)、ポリオレフィンワックス
(E)及びフッ素樹脂微粉末(F)が下記重量比で配合
された潤滑剤若しくは複合潤滑剤であるプレス成形性及
び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 (E+E′)/(F+F′)=10/90〜90/10
【0020】(9) 上記(8)の有機複合被覆鋼板におい
て、有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を構成するポリオ
レフィン(E′)とポリオレフィンワックス(E)が、
チーグラー系触媒を用いる配位アニオン重合法により製
造されたポリオレフィンまたはポリオレフィンワックス
であるプレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合
被覆鋼板。 (10) 上記(8)または(9)の有機複合被覆鋼板において、
有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を構成するポリオレフ
ィン(E′)とポリオレフィンワックス(E)が、平均
分子量:700〜4500、軟化点:100〜140℃
のポリエチレンまたはポリエチレンワックスであるプレ
ス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
【0021】(11) 上記(8)〜(10)のいずれかの有機複合
被覆鋼板において、有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を
構成するフッ素樹脂(F′)とフッ素樹脂微粉末(F)
が、下記(a)の条件を満足する四フッ化エチレン樹脂ま
たは四フッ化エチレン樹脂微粉末であるプレス成形性及
び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 (a) JIS K 7199に準拠したキャピラリーレオメ
ーターによる流れ特性試験方法において、下記測定条件
の下で測定された見掛けの溶融粘度が、見掛けの剪断速
度との間で下記(3)式を満足する。
【数4】 測定条件 試験温度:330℃ バレル直径:9.55mm キャピラリー寸法:直径d=1mm,長さ1=10mm キャピラリーの入口:フラット
【0022】(12) 上記(8)〜(11)のいずれかの有機複合
被覆鋼板において、有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を
構成するフッ素樹脂(F′)とフッ素樹脂微粉末(F)
が融点:300〜330℃の四フッ化エチレン樹脂また
は四フッ化エチレン樹脂微粉末であるプレス成形性及び
耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 (13) 上記(1)〜(12)のいずれかの有機複合被覆鋼板に
おいて、有機皮膜に含まれる多官能ポリイソシアネート
化合物が、1分子中に少なくとも4個のイソシアネート
基を有する多官能ポリイソシアネート化合物であるプレ
ス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 (14) 上記(1)〜(12)のいずれかの有機複合被覆鋼板に
おいて、有機皮膜に含まれる多官能ポリイソシアネート
化合物が、1分子中に少なくとも6個のイソシアネート
基を有する多官能ポリイソシアネート化合物であるプレ
ス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
【0023】(15) 上記(1)〜(12)のいずれかの有機複
合被覆鋼板において、有機皮膜に含まれる多官能ポリイ
ソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも6個のイ
ソシアネート基を有するヘキサメチレンジイソシアネー
トの多官能体であるプレス成形性及び耐もらい錆性に優
れた有機複合被覆鋼板。 (16) 上記(1)〜(15)のいずれかの有機複合被覆鋼板に
おいて、有機皮膜に含まれる防錆添加剤が、シリカ及び
難溶性クロム酸塩からなる群の中から選ばれる少なくと
も1種からなるプレス成形性及び耐もらい錆性に優れた
有機複合被覆鋼板。
【0024】(17) 上記(1)〜(15)のいずれかの有機複
合被覆鋼板において、有機皮膜に含まれる防錆添加剤
が、重量比で下記割合のシリカ及び難溶性クロム酸塩か
らなるプレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合
被覆鋼板。 シリカ/難溶性クロム酸塩=35/5〜1/39 (18) 上記(1)〜(17)のいずれかの有機複合被覆鋼板に
おいて、有機皮膜の上層に第3層として、付着量が0.
01〜10g/m2の防錆油層を有してなるプレス成形
性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細をその限定理
由とともに説明する。本発明で用いる亜鉛系めっき鋼板
の原板としては、一般加工用冷延鋼板(CQ)から深絞
り用冷延鋼板(DQ)、高深絞り用冷延鋼板(DD
Q)、超深絞り用冷延鋼板(EDDQ)に至る全ての軟
質加工用冷延鋼板が適用可能であり、また、電気めっき
に供される場合、焼鈍方法は箱焼鈍、連続焼鈍のいずれ
でもよい。また、原板としては焼付硬化性を有する比較
的強度レベルの低い高張力鋼板、390MPaを超える
一般の高張力鋼板、脱スケールした熱延鋼板等も用いる
ことができる。なお、高深絞り用冷延鋼板(DDQ)や
超深絞り用冷延鋼板(EDDQ)のようなプレス成形性
の優れた軟質加工用冷延鋼板を亜鉛系めっき鋼板の原板
として使用した場合には、特に優れた作用効果が得られ
る。
【0026】亜鉛系めっき鋼板のめっき層としては、Z
nめっき、Zn−Ni合金めっき(Ni含有率10〜1
5wt%)、Zn−Fe合金めっき(Fe含有率5〜2
5wt%またはFe含有率60〜90wt%)、Zn−
Mn合金めっき(Mn含有率30〜80wt%)、Zn
−Co合金めっき(Co含有率3〜15wt%)、Zn
−Cr合金めっき(Cr含有率5〜30wt%)、Zn
−Al合金めっき(Al含有率3〜60wt%)等が挙
げられる。また、耐食性向上を目的として、上記の各め
っき成分にCo、Fe、Ni、Cr等の合金元素、シリ
カ、アルミナ、難溶性クロム酸塩等の酸化物や塩類、ポ
リマー等を含有させることができる。
【0027】また、上記のめっき層のうち同種または異
種のものを2種以上めっきした複層めっきとすることも
できる。めっき方法としては、電解法、溶融法、気相法
のうち実施可能ないずれの方法を採用することもできる
が、素地鋼板の材質の選択性の面からは電解法が最も有
利である。めっき付着量としては、10g/m2未満で
は耐食性が劣るため問題がある。また、Zn−Ni合金
めっき、Zn−Fe合金めっき、Zn−Mn合金めっ
き、Zn−Co合金めっき、Zn−Cr合金めっきの場
合には、60g/m2を超えると耐パウダリング性が劣
るため、めっき付着量は10〜60g/m2とすること
が好ましく、また、より高度な耐食性、耐パウダリング
性を確保するためには、めっき付着量は15〜50g/
2とすることが好ましい。
【0028】さらに、Zn−Ni合金めっきについて
は、素地鋼板とZn−Ni合金めっき層との界面にNi
めっき層を設けることにより、優れた耐低温チッピング
性を確保することができる。このNiめっき層は、めっ
き付着量が0.05g/m2未満では十分な耐低温チッ
ピング性を得ることができず、一方、1g/m2を超え
ると耐パウダリング性が劣化するため、めっき付着量は
0.05〜1g/m2とすることが好ましく、また、よ
り高度な耐低温チッピング性及び耐パウダリング性を確
保するためには、0.1〜0.5g/m2とすることが
好ましい。
【0029】亜鉛系めっき鋼板の表面に形成されるクロ
メート層は、クロメート層中に含まれる6価のクロム酸
イオンによる不動態効果と、クロム酸イオンの還元生成
物である3価クロムのクロム水和酸化物皮膜が表面を被
覆することによりアノード面積が減少する効果、及び3
価クロムのクロム水和酸化物皮膜が水や酸素の拡散障壁
となる効果により鋼板の腐食を抑制する。このクロメー
ト層の付着量は、金属クロム換算で5〜200mg/m
2とする。付着量が5mg/m2未満では十分な耐食性が
得られず、一方、200mg/m2を超えると溶接性が
劣化する。また、より高度な耐食性、溶接性を得るため
には、10〜150mg/m2の範囲とすることが好ま
しい。
【0030】このクロメート層を形成するためのクロメ
ート処理としては、反応型、電解型、塗布型のいずれの
方法も適用可能である。耐食性の観点からは、クロメー
ト層中に6価のクロム酸イオンを多く含有する塗布型が
好ましい。塗布型クロメート処理としては、部分的に還
元されたクロム酸水溶液を主成分とし、これに下記(1)
〜(7)の成分の中から必要に応じて1種以上を添加した
処理液を亜鉛系めっき鋼板に塗布し、水洗することなく
乾燥させる。
【0031】(1) 水溶性または水分散性のアクリル樹
脂、ポリエステル樹脂等の有機樹脂 (2) シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化
物コロイド類および/または粉末 (3) モリブデン酸、タングステン酸、バナジン酸等の酸
および/またはその塩類 (4) リン酸、ポリリン酸等のリン酸類 (5) ジルコニウムフッ化物、ケイフッ化物、チタンフッ
化物等のフッ化物 (6) 亜鉛イオン等の金属イオン (7) リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫等の導電性微
粉末 塗布型クロメート処理は、通常、ロールコーター法によ
り処理液を塗布するが、浸漬法やスプレー法により塗布
した後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量を
調整することも可能である。
【0032】上記クロメート層の上層に第2層として形
成される有機皮膜は、クロメート層中の6価のクロム酸
イオンの腐食環境中への過剰な溶出を抑制して防食効果
を持続させるとともに、有機皮膜中に添加されたシリカ
や難溶性クロム酸塩等の防錆添加剤が耐食性をさらに向
上させる。また、有機皮膜中に添加された潤滑剤によ
り、プレス成形時の亜鉛系めっき鋼板の潤滑特性を向上
させる。この有機皮膜はエポキシ系樹脂及び防錆添加
剤、さらには潤滑剤を特定の割合で含有し、また上記エ
ポキシ系樹脂は、エポキシ樹脂の末端に少なくとも1個
の塩基性窒素原子と少なくとも2個の一級水酸基とを付
加した基体樹脂(A)に対し、1分子中に少なくとも3
個のイソシアネート基を有する多官能ポリイソシアネー
ト化合物(B)を特定の割合で混合したものである。
【0033】有機皮膜に用いるエポキシ樹脂としては、
ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとを縮合反応さ
せた縮合物を主体としたものが好ましい。エポキシ樹脂
としては、例えばエポキシ化油、エポキシポリブタジエ
ンのような脂肪族構造或いは脂環族構造のみからなるも
のがあるが、優れた耐食性を得るためには上記縮合物を
主体としたエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。エポキ
シ樹脂としては、例えば、エピコート828、100
1、1004、1007、1009、1010(いずれ
もシェル化学社製)等を用いることができる。このエポ
キシ樹脂は、特に低温での硬化を必要とする場合には数
平均分子量1500以上のものが望ましい。なお、上記
エピコートは単独または異なる種類のものを混合して使
用することができる。
【0034】エポキシ樹脂に塩基性窒素原子と一級水酸
基を導入するには、例えば、アルカノールアミンおよび
/またはアルキルアルカノールアミンをエポキシ樹脂の
オキシラン基に付加せしめる方法を採ることができる。
これらのアミンとしては、例えばモノエタノールアミ
ン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、
モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブ
タノールアミン等があり、これらのアミンを単独または
混合して使用する。
【0035】上記のような基体樹脂を用いる狙いは以下
のような点にある。すなわち、まず、ベース樹脂にビス
フェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応からな
るエポキシ樹脂を用いることにより、自動車車体防錆用
として通常用いられているカチオン電着塗料との優れた
密着性が期待できる。また、樹脂構造として塩基性窒素
原子と一級水酸基を導入することにより、(1) カチオン
電着時に発生するアルカリによる皮膜破壊を防止し、下
地クロメートおよびカチオン電着塗膜との密着性を安定
化させ、(2) 一級水酸基と後述するような選択された有
機溶媒組成が架橋剤(イソシアネート)との低温反応性
を高め、(3) さらに、エポキシ1分子中に2モル以上の
水酸基を導入することによって十分に緻密な架橋構造の
皮膜が得られる。2モル以下では十分な架橋が得られな
い。
【0036】また、他の方法として、エポキシ樹脂を部
分的に他の化合物と変性してもよい。但し、この場合に
はエポキシ樹脂1分子中に平均2モル以上の一級水酸基
を含有させることが必要である。エポキシ樹脂を部分的
に変性させる方法には、例えば以下のようなものがあ
る。 (1) モノカルボン酸によるエステル化(モノカルボン酸
としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヒマシ
油脂肪酸等の飽和または不飽和脂肪酸;酢酸、プロピオ
ン酸、酪酸等の低分子脂肪族モノカルボン酸;安息香酸
等の芳香族モノカルボン酸等) (2) 脂肪族または芳香族アミンによる変性(脂肪族また
は芳香族アミンとしては、モノメチルアミン、ジメチル
アミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、イソプロ
ピルアミン等の脂肪族アミン;アニリン等の芳香族アミ
ン等) (3) オキシ酸類による変性(オキシ酸類としては、乳
酸、γ−オキシプロピオン酸等)
【0037】なお、ジカルボン酸(例えば、アジピン
酸、ゼバチン酸等)による変性方法もあるが、この方法
は、エポキシ樹脂が必要以上に高分子量化し過ぎるこ
と、さらには分子量分布を一定にコントロールすること
が反応制御上困難であること、耐食性の向上が認められ
ないこと等の理由から、本発明の皮膜を得るには不適当
な方法である。
【0038】本発明の有機皮膜の硬化方法は、基体樹脂
中の水酸基と硬化剤であるポリイソシアネート中のイソ
シアネート基との間のウレタン化反応とすることが好適
である。本発明の有機皮膜に用いられるポリイソシアネ
ート化合物としては、耐もらい錆性向上の目的から、1
分子中に少なくとも3個のイソシアネート基(これらの
イソシアネート基はブロックしてあってもよい)を有す
るものとする。すなわち、1分子中に1個のイソシアネ
ート基を有するモノイソシアネート化合物、或いは1分
子中に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネー
ト化合物では、十分な耐もらい錆性を付与することがで
きない。これに対して本発明では、1分子中に少なくと
も3個のイソシアネート基を有する多官能ポリイソシア
ネート化合物、より好ましくは4個以上、さらに好まし
くは6個以上のイソシアネート基を有する多官能ポリイ
ソシアネート化合物が、モノイソシアネート化合物やジ
イソシアネート化合物よりも、格段に優れた耐もらい錆
性を付与できることを見出したものである。
【0039】このような1分子中に少なくとも3個のイ
ソシアネート基を有する多官能ポリイソシアネート化合
物としては、1分子中に3個以上のイソシアネート基を
有する化合物、少なくとも2個のイソシアネート基を有
するイソシアネート化合物を多価アルコールと反応せし
めた化合物、若しくはそれらのビューレットタイプ付加
物、イソシアヌル環タイプ付加物等の化合物がある。例
えば、トリフェニルメタン−4,4′、4′′−トリイ
ソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼ
ン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′
−ジメチルジフェニルメタン−2,2′、5,5′−テ
トライソシアネート等の3個以上のイソシアネート基を
有するポリイソシアネート化合物;エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコー
ル、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパ
ン、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基に対し
てイソシアネート基が過剰量となる量のポリイソシアネ
ート化合物を反応させてなる付加物;ヘキサメチレンジ
イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,
4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
等のビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ
付加物等がある。
【0040】上記ポリオールの水酸基に対してイソシア
ネート基が過剰量となる量のポリイソシアネート化合物
を反応させてなる付加物において、該ポリイソシアネー
ト化合物としては、上記3個以上のイソシアネート基を
有するポリイソシアネート化合物並びにヘキサメチレン
ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシア
ネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシ
アネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロ
ンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロ
ヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−
2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3
−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘ
キサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;及びキシリ
レンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、m
−(又はp−)フェニレンジイソシアネート、ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフ
ェニル)スルホン等の芳香族ジイソシアネート化合物な
どを挙げることができる。
【0041】また、1分子中に少なくとも6個のイソシ
アネート基を有する多官能ポリイソシアネート化合物
(6官能ポリイソシアネート化合物)の中でも、特に、
ヘキサメチレンジイソシアネートの多官能体が耐もらい
錆性に最も有効である。なお、本発明で使用する多官能
ポリイソシアネート化合物は、1分子中のイソシアネー
ト基の数が異なる同属化合物の混合物であってもよい。
また、上記多官能ポリイソシアネート化合物の2種類以
上を併用してもよい。皮膜形成物を安定に保存するため
には、硬化剤のイソシアネートを保護する必要がある。
この方法としては、加熱硬化時に保護基(ブロック剤)
が脱離し、イソシアネート基が再生する保護方法が採用
できる。
【0042】この保護剤(ブロック剤)としては、例え
ば、 (1) メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル、オクチルアルコール等の脂肪族モノアルコール類 (2) エチレングリコールおよび/またはジエチレングリ
コールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プ
ロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)等の
モノエーテル (3) フェノール、クレゾール等の芳香族アルコール (4) アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム等の
オキシム 等があり、これらの1種または2種以上と前記イソシア
ネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常
温下で安定に保護されたイソシアネート化合物を得る。
【0043】このような多官能ポリイソシアネート化合
物(B)は、硬化剤として基体樹脂(A)100重量部
(固形分)に対して5〜80重量部(固形分)、好まし
くは10〜50重量部(固形分)の割合で配合する。硬
化剤の配合量が5重量部未満では、形成された皮膜の架
橋密度が不十分となり、耐もらい錆性の向上効果が小さ
い。一方、80重量部を超えて配合すると、未反応の残
留イソシアネートが吸水し、耐もらい錆性に効果がない
ばかりではなく、逆に耐食性(耐穴あき性)や密着性が
損なわれる。このような理由から、多官能ポリイソシア
ネート化合物の配合量は、基体樹脂(A)100重量部
に対して5〜80重量部とする。
【0044】さらに、架橋剤としてメラミン、尿素およ
びベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルム
アルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若
しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させ
てなるアルキルエーテル化アミノ樹脂を、イソシアネー
ト化合物と併用してもよい。なお、樹脂は以上のような
架橋剤で十分架橋するが、さらに低温架橋性を増大させ
るため、公知の硬化促進触媒を使用することが望まし
い。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモ
ルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバル
ト、塩化第一スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマス等が
ある。また、付着性など若干の物性向上を狙いとして、
上記樹脂組成物に公知のアクリル、アルキッド、ポリエ
ステル等の樹脂を併用することもできる。
【0045】本発明において以上のような樹脂組成物皮
膜を設ける狙いとしては、次のような点を挙げることが
できる。すなわち、高度な耐食性(耐穴あき性)と2コ
ート以上の多層塗膜密着性、さらに鉄錆共存腐食環境下
での優れた耐もらい錆性を得るために、ベースとして
エポキシ樹脂を採用し、素地やカチオン電着皮膜との高
密着性と高耐食性を得ることを期待し、また、樹脂の
極性を塩基性とすることによってカチオン電着時に界面
に発生するアルカリによる樹脂構造の劣化をなくす、と
いった従来の知見を生かし、さらに、エポキシ1分子
中に2モル以上の水酸基を導入したエポキシ樹脂に対し
て、硬化剤として本発明の特徴である1分子中に少なく
とも3個のイソシアネート基を有する多官能ポリイソシ
アネート化合物を添加することによって、優れた耐もら
い錆性を有する高架橋密度皮膜を得る、というものであ
る。
【0046】本発明の皮膜形成組成物は、基体樹脂であ
るエポキシ樹脂の塩基を低分子酸で中和し、水分散若し
くは水溶性組成物として使用することも可能であるが、
板温で250℃以下の低温乾燥、特に170℃以下の極
低温乾燥を必要とするようなBH鋼板用皮膜材として使
用する場合には、そのような中和操作を行わず、有機溶
剤に溶解せしめた組成物として使用するのがより望まし
い。すなわち、水分散若しくは水溶性組成物では、水溶
化のために必要とされる酸性化合物が皮膜中で塩を形成
し、湿潤環境下で水分を皮膜中および皮膜下に吸収し易
く、また低温乾燥条件では十分に強固な皮膜を得ること
ができない等の理由により、耐食性、密着性がやや劣る
傾向がある。
【0047】この有機溶剤種としては、通例塗料業界で
使用する有機溶媒の1種または2種以上の混合溶剤が使
用できるが、その目的のためには高沸点のアルコール系
溶媒は避けるのが好ましい。これには例えば、エチレン
グリコール若しくはジエチレングリコール、モノアルキ
ルエーテル類、C5以上の一級水酸基を有するアルコー
ル類が挙げられる。このような溶剤は、皮膜の硬化反応
を阻害する。推奨される溶剤としては、炭化水素系、ケ
トン系、エステル系、エーテル系溶剤が挙げられ、ま
た、低分子C4以下のアルコール類、若しくは二級、三
級の水酸基を有するアルコール類も好適である。
【0048】有機皮膜中のエポキシ系樹脂の配合量は、
不揮発分の重量割合で30〜80wt%とする。エポキ
シ系樹脂の配合量が30wt%未満ではプレス成形性、
耐もらい錆性及び塗料密着性が劣化する。一方、80w
t%を超えると添加した潤滑剤や防錆添加剤の効果が十
分発揮されず、プレス成形性や耐もらい錆性が劣化す
る。また、より高度なプレス成形性、耐もらい錆性及び
塗料密着性を得るためには、40〜70wt%の範囲と
することが好ましい。
【0049】有機皮膜に潤滑剤を添加することにより、
プレス成形性は格段に向上する。また、潤滑剤無添加の
有機皮膜と比較し、より低膜厚で良好なプレス成形性が
得られる。これは、有機皮膜中に潤滑剤が添加されるこ
とにより、有機皮膜自体の潤滑性が向上する結果、ビー
ド通過時に剥離せず残存した有機皮膜でも、十分な潤滑
性が付与できるためであると考えられる。有機皮膜中の
潤滑剤添加量が50wt%を超えるとカチオン電着塗料
との密着性が劣化するため、潤滑剤添加量は50wt%
以下とする。さらに、より高度なプレス成形性、塗料密
着性を得るためには、5〜40wt%の範囲とすること
が好ましい。
【0050】潤滑剤としては、フッ素樹脂微粉末(例え
ば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ
化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフロ
ロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四フッ化エチレ
ン−エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、
フッ化ビニリデン樹脂等の微粉末)、ポリオレフィンワ
ックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレ
ンワックス等)、1つの粒子中にポリオレフィンとフッ
素樹脂とが混在して含まれる潤滑剤、グラファイト、窒
化ホウ素、フッ化カーボンの中から選ばれる少なくとも
1種の潤滑剤を用いる。
【0051】ここで、ポリオレフィンワックス(E)と
フッ素樹脂微粉末(F)とを不揮発分の重量比でE/F
=90/10〜10/90の割合で複合添加することに
より、潤滑性は格段に向上する。ポリオレフィンワック
ス(E)とフッ素樹脂微粉末(F)とを複合添加するこ
とにより、優れた潤滑性が得られるメカニズムは必ずし
も明確ではないが、ポリオレフィンワックスが摺動時に
溶融軟化することによる半溶融性の潤滑機構を有し、一
方、フッ素樹脂微粉末の潤滑特性がC−F結合の小さい
分極による弱い分子間相互作用により自己潤滑性を有
し、且つ劈開することによる劈開性の潤滑機構を有して
いることから、このような潤滑機構が異なる潤滑剤を複
合添加することによる相乗効果により優れた潤滑性が得
られるものと考えられる。
【0052】ポリオレフィンワックス(E)とフッ素樹
脂微粉末(F)の重量比は、E/F=90/10〜10
/90の範囲とする。E/Fの重量比は10/90未満
でも、また90/10を超えても複合添加による相乗効
果が不十分となり、十分な潤滑性が得られない。また、
E/Fの重量比は70/30〜30/70の範囲におい
て特に優れた潤滑性能が得られる。
【0053】本発明において、潤滑剤として使用するポ
リオレフィンワックスとしては、チーグラー系触媒を用
いる配位アニオン重合法により製造されたポリオレフィ
ンワックスが、特に潤滑性に優れているため好ましい。
ポリオレフィンワックスの主な製造方法としては以下の
ものがある。 (a) チーグラー系触媒を用いる配位アニオン重合法によ
り製造する方法 (b) ラジカル触媒を用いるラジカル重合法により製造す
る方法 (c) 一般成型用ポリオレフィンを熱分解する方法
【0054】これらのうち(b)及び(c)の方法で製造され
たポリオレフィンワックスは図1に示すような長鎖の分
岐を持つ枝分れ構造を有している。一方、(a)の方法に
より製造されたポリオレフィンワックスは、図2に示す
ように長鎖の分岐を有しておらず、直鎖状の構造を有し
ているため、有機皮膜中で長鎖の分岐による立体障害が
起こりにくい。このため、(b)または(c)の方法で製造さ
れたものと比較して有機皮膜の最表層に濃化しやすく、
工具とポリオレフィンワックスが直接接触する面積が増
加するため、(b)及び(c)の方法で製造されたポリオレフ
ィンワックスよりも優れた潤滑性を有するものと推定さ
れる。
【0055】また、潤滑剤として添加されるポリオレフ
ィンワックスとしては、先に述べたチーグラー系触媒を
用いる配位アニオン重合法により製造されたものを用い
ることが好ましいが、その中でも特に、ポリエチレンワ
ックスが最も潤滑性に優れているため好ましい。また、
ポリエチレンワックスの中でも、分子量700〜450
0、軟化点100℃〜140℃のものが特に優れた潤滑
性を示し、さらに分子量1000〜3500、軟化点1
10℃〜130℃のものが最も優れた潤滑性を示す。
【0056】図3に亜鉛系めっき鋼板(表4のNo.
6)の表面に、第1層としてクロメート層を有し、第2
層としてエポキシ系樹脂(表5のNo.14)に防錆添
加剤(シリカ+難溶性クロム酸塩)及び製法と分子量の
異なるポリエチレンワックス(軟化点110℃〜130
℃)を添加した有機皮膜(膜厚0.8μm)を有する有
機複合被覆鋼板について、有機皮膜中に添加したポリエ
チレンワックスの分子量とプレス成形性との関係を示
す。なお、同図に示されるプレス成形性は、後述する実
施例でのプレス成形性の条件2(条件1よりも厳しいプ
レス成形条件)に相当する。
【0057】図4に亜鉛系めっき鋼板(表4のNo.
6)の表面に、第1層としてクロメート層を有し、第2
層としてエポキシ系樹脂(表5のNo.14)に、防錆
添加剤(シリカ+難溶性クロム酸塩)、四フッ化エチレ
ン樹脂微粉末(表7のNo.17)及び製法と分子量が
異なるポリエチレンワックス(軟化点110℃〜130
℃)を添加した有機皮膜(膜厚0.8μm)を有する有
機複合被覆鋼板について、有機皮膜中に添加したポリエ
チレンワックスの分子量とプレス成形性との関係を示
す。なお、同図に示されるプレス成形性は、後述する実
施例でのプレス成形性の条件2(条件1よりも厳しいプ
レス成形条件)に相当する。
【0058】図3および図4によれば、チーグラー系触
媒を用いる配位アニオン重合法により製造され、且つ分
子量が700〜4500のポリエチレンワックスを用い
た場合に優れたプレス成形性を示し、その中でも分子量
が1000〜3500ものが特に優れたプレス成形性を
示すことが判る。また、ポリエチレンワックスをフッ素
樹脂微粉末と複合添加することにより、プレス成形性が
格段に向上することが判る。
【0059】図5に亜鉛系めっき鋼板(表4のNo.
6)の表面に、第1層としてクロメート層を有し、第2
層としてエポキシ系樹脂(表5のNo.14)に防錆添
加剤(シリカ+難溶性クロム酸塩)及び製法と軟化点が
異なるポリエチレンワックス(分子量1000〜350
0)を添加した有機皮膜(膜厚0.8μm)を有する有
機複合被覆鋼板について、有機皮膜中に添加したポリエ
チレンワックスの軟化点とプレス成形性との関係を示
す。なお、図5に示されるプレス成形性も、後述する実
施例でのプレス成形性の条件2(条件1よりも厳しいプ
レス成形条件)に相当する。
【0060】図6に亜鉛系めっき鋼板(表4のNo.
6)の表面に、第1層としてクロメート層を有し、第2
層としてエポキシ系樹脂(表5のNo.14)に、防錆
添加剤(シリカ+難溶性クロム酸塩)、四フッ化エチレ
ン樹脂微粉末(表7のNo.17)及び製法と軟化点が
異なるポリエチレンワックス(分子量1000〜350
0)を添加した有機皮膜(膜厚0.8μm)を有する有
機複合被覆鋼板について、有機皮膜中に添加したポリエ
チレンワックスの軟化点とプレス成形性との関係を示
す。なお、図6に示されるプレス成形性は後述する実施
例でのプレス成形性の条件2(条件1よりも厳しいプレ
ス成形条件)に相当する。
【0061】図5及び図6によれば、チーグラー系触媒
を用いる配位アニオン重合法により製造され、且つ軟化
点100℃〜140℃のポリエチレンワックスを用いた
場合に優れたプレス成形性を示すことが判る。軟化点が
100℃未満では、摺動時にポリエチレンワックスが完
全に液化流動して塗布した油と混じり合ってしまい、ポ
リエチレンワックス本来の潤滑特性を発揮できず、この
ため十分なプレス成形性は得られない。一方、軟化点が
140℃を超えると、逆に摺動時に軟化しないためポリ
エチレンワックス本来の半溶融性の潤滑機構が機能せ
ず、この場合もプレス成形性は向上しない。また、図5
及び図6によれば軟化点110℃〜130℃のものが特
に優れたプレス成形性を示すことが判る。また、ポリエ
チレンワックスをフッ素樹脂微粉末と複合添加すること
によりプレス成形性が格段に向上することが判る。
【0062】なお、チーグラー系触媒を用いる配位ア
ニオン重合法により製造されたポリエチレンワックス
に、酸化によってカルボキシル基、水酸基またはカルボ
ニル基等の極性基を付与すること、同じく酸、エステ
ル、芳香族等により変性すること、チーグラー系触媒
を用いた配位アニオン重合の際にα−オレフィン等と共
重合させること、等によって製造されたポリエチレンワ
ックスでも、軟化点及び分子量が上記の範囲にあれば潤
滑性に何ら問題はなく、優れたプレス成形性を示す。ま
た、ポリエチレンワックスとして、軟化点及び分子量が
上述した範囲にある2種以上のポリエチレンワックスを
併用しても優れた潤滑性が得られる。
【0063】潤滑剤として使用するフッ素樹脂微粉末と
しては、分子量が小さい四フッ化エチレン樹脂微粉末が
潤滑特性に優れているため好ましい。四フッ化エチレン
樹脂は直接分子量を測定するのが困難であるため、JI
S K 7199に規定されているキャピラリーレオメー
ターによる流れ特性試験方法によって測定された見掛け
の溶融粘度の見掛け剪断速度依存性を測定することによ
り、分子量の目安とすることができる。或る見掛けの剪
断速度における見掛けの溶融粘度は分子量が大きい程大
きく、逆に分子量が小さくなると見掛けの溶融粘度は小
さくなる。
【0064】そして、JIS K 7199に準拠したキ
ャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法におい
て、下記測定条件の下で測定された見掛けの溶融粘度
が、見掛けの剪断速度との間で下記(3)式を満足する四
フッ化エチレン樹脂微粉末が、特に潤滑特性に優れてい
るため好ましい。
【数5】 測定条件 試験温度:330℃ バレル直径:9.55mm キャピラリー寸法:直径d=1mm,長さ1=10mm キャピラリーの入口:フラット
【0065】四フッ化エチレン樹脂微粉末は、その平均
粒子径が0.1〜5μmの範囲のものが特に好ましい。
平均粒子径が0.1μm未満の場合には、四フッ化エチ
レン樹脂微粉末が有機皮膜中に完全に隠薮され、十分な
潤滑性を発揮できない。一方、平均粒子径が5μm超で
は有機樹脂が四フッ化エチレン樹脂微粉末を保持できな
くなり、プレス成形時に欠落し易くなるため潤滑性が劣
る。
【0066】また、この範囲の平均粒子径を有し且つ上
記(3)式を満足する四フッ化エチレン樹脂微粉末の中で
も、融点が300〜330℃の四フッ化エチレン樹脂微
粉末が、特にプレス成形性に優れている。図7に、亜鉛
系めっき鋼板(表4のNo.6)の表面に第1層として
クロメート層を有し、第2層としてエポキシ系樹脂(表
5のNo.14)に防錆添加剤(シリカ+難溶性クロム
酸塩)及び上記(3)式を満足した融点の異なる四フッ化
エチレン樹脂微粉末(平均粒子径3〜5μm)を添加し
た有機皮膜(膜厚0.8μm)を有する有機複合被覆鋼
板と、亜鉛系めっき鋼板(表4のNo.6)の表面に第
1層としてクロメート層を有し、第2層としてエポキシ
系樹脂(表5のNo.14)に防錆添加剤(シリカ+難
溶性クロム酸塩)、ポリエチレンワックス(表6のN
o.3)及び上記(3)式を満足した融点の異なる四フッ
化エチレン樹脂微粉末(平均粒子径3〜5μm)を添加
した有機皮膜(膜厚0.8μm)を有する有機複合被覆
鋼板について、有機皮膜中に添加した四フッ化エチレン
樹脂微粉末の融点とプレス成形性との関係を示す。な
お、図7に示されるプレス成形性は、後述する実施例で
のプレス成形性の条件2に相当する。図7によれば、融
点300〜330℃の範囲で優れたプレス成形性が得ら
れている。このため四フッ化エチレン樹脂微粉末として
は、融点が300〜330℃のものを用いることが好ま
しい。
【0067】先に述べたように本発明の有機複合被覆鋼
板が塗油成形においても優れた潤滑性を示すのは、ポリ
オレフィンワックス(好ましくは、ポリエチレンワック
ス)とフッ素樹脂微粉末(好ましくは、4フッ化エチレ
ン樹脂微粉末)という潤滑機構が異なる潤滑剤を複合添
加することによって得られる相乗効果によるものであ
る。したがって、所謂メルトブレンドによって1つの粒
子中にポリオレフィン成分とフッ素樹脂成分とが混在す
るような形態に製造された潤滑剤粒子からなる潤滑剤を
用いた場合にも、上記ポリオレフィンワックスとフッ素
樹脂微粉末とを複合添加した場合と同等若しくはそれに
近い潤滑性が得られる。また、このような潤滑剤と上記
ポリオレフィンワックスおよび/またはフッ素樹脂微粉
末とを複合添加した場合も同様である。
【0068】そして、このように1つの粒子中にポリオ
レフィン(E′)とフッ素樹脂(F′)とが混在して含
まれる潤滑剤粒子からなる潤滑剤(G)を用いる場合、
若しくはこの潤滑剤(G)とポリオレフィンワックス
(E)および/またはフッ素樹脂微粉末(F)とを複合
添加して用いる場合には、潤滑剤(G)を構成するポリ
オレフィン(E′)及びフッ素樹脂(F′)、ポリオレ
フィンワックス(E)およびフッ素樹脂微粉末(F)の
配合割合は、重量比で(E+E′)/(F+F′)=1
0/90〜90/10とする。先に述べたE/Fの重量
比と同様、(E+E′)/(F+F′)の重量比が10
/90未満でも、また90/10を超えても複合添加に
よる相乗効果が不十分となり、十分な潤滑性が得られな
い。また、より優れた潤滑性を得るという観点からは、
上記の重量比は30/70〜70/30の範囲が特に好
ましい。
【0069】また、上記の1つの粒子中にポリオレフィ
ンとフッ素樹脂とが混在して含まれる潤滑剤粒子からな
る潤滑剤(G)についても、その構成成分であるポリオ
レフィンとフッ素樹脂の好ましい条件は先に述べたポリ
オレフィンワックスとフッ素樹脂微粉末と同様である。
すなわち、潤滑剤(G)を構成するフッ素樹脂は上記
(3)式を満足する見掛けの溶融粘度の見掛けの剪断速度
依存性を有する四フッ化エチレン樹脂であることが好ま
しく、また、同じく潤滑剤(G)を構成するポリオレフ
ィンはチーグラー系触媒を用いる配位アニオン重合法に
より製造されたものであることが好ましく、その中でも
特に、分子量:700〜4500、軟化点:100〜1
40℃、より望ましくは分子量:1000〜3500、
軟化点:110〜130℃のポリエチレンであることが
好ましい。
【0070】有機皮膜中の防錆添加剤の添加量は3〜5
0wt%とする。添加量が3wt%未満では耐もらい錆
性の向上効果が不十分であり、一方、50wt%を超え
るとプレス成形時に皮膜の剥離が起こりプレス成形性を
劣化させる。また、より高度な耐もらい錆性及びプレス
成形性を得るためには、5〜40wt%の範囲とするこ
とが好ましい。防錆添加剤としては、シリカ、難溶性ク
ロム酸塩、トリポリリン酸二水素アルミニウム、リンモ
リブデン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等の微粉末やコロ
イドを使用することができるが、これらのうち耐食性の
観点からはシリカと難溶性クロム酸塩が最も好ましい。
シリカは腐食環境中に微量に溶解し、ケイ酸イオンが皮
膜形成型腐食抑制剤として機能することにより、防食効
果が発揮されるものと推定される。また、難溶性クロム
酸塩は腐食環境中で微量に溶解することにより、6価の
クロム酸イオンを放出し、クロメート層と同様のメカニ
ズムで亜鉛系めっき鋼板の腐食を抑制するものと考えら
れる。
【0071】また、シリカと難溶性クロム酸塩を複合添
加することによりさらに高度な耐食性を得ることが可能
となる。すなわち、有機皮膜中にシリカおよび難溶性ク
ロム酸塩をシリカ/難溶性クロム酸塩の重量比で35/
5〜1/39の範囲で添加することにより、両成分の相
乗的な防食効果によって最も優れた耐食性が得られる。
シリカ/難溶性クロム酸塩の重量比が35/5を超えて
も、また、1/39未満でも相乗効果が不十分となり、
耐もらい錆性がやや劣る。
【0072】図8に有機皮膜中に硬化剤としてヘキサメ
チレンジイソシアネート系の6官能ポリイソシアネート
化合物を添加し、且つ防錆添加剤としてシリカと難溶性
クロム酸塩を重量比を変えて添加した有機複合被覆鋼板
について、シリカ/難溶性クロム酸塩の重量比と未塗装
耐食性(耐穴あき性試験200サイクル後の評価)及び
耐もらい錆性(耐もらい錆性試験15サイクル後の評
価)との関係について示す。なお、同図に示される耐も
らい錆性は、後述する実施例での耐もらい錆性の条件2
(条件1よりも厳しい耐もらい錆性試験条件)に相当す
る。
【0073】図8によれば、シリカ/難溶性クロム酸塩
の重量比が35/5を超えると耐もらい錆性が劣化し、
一方、1/39未満では通常の未塗装耐食性(耐穴あき
性)が劣化している。また、シリカ/難溶性クロム酸塩
の重量比は20/20〜5/35の範囲において最も良
好な耐食性が得られている。したがって、シリカ/難溶
性クロム酸塩の配合比は35/5〜1/39、望ましく
は20/20〜5/35とすることが好ましい。
【0074】さらに、後述する実施例から明らかなよう
に、ヘキサメチレンジイソシアネート系の6官能ポリイ
ソシアネート化合物とイソホロンジイソシアネート系の
6官能ポリイソシアネート化合物とを比べた場合、シリ
カ/難溶性クロム酸塩の配合比を同一とした場合には、
ヘキサメチレンジイソシアネート系の6官能ポリイソシ
アネート化合物を用いた方がより優れた耐もらい錆性が
得られる。
【0075】本発明で使用するシリカとしては、乾式シ
リカ(例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSI
L 130、AEROSIL 200、AEROSIL
300、AEROSIL 380、AEROSIL R9
72、AEROSIL R811、AEROSIL R8
05等)、オルガノシリカゾル(例えば、日産化学工業
(株)製のMA−CT、IPA−ST、NBA−ST、
IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、ETC−S
T、DMAC−ST等)、沈降法湿式シリカ(例えば、
徳山曹逹(株)製のT−32(S)、K−41、F−8
0等)、ゲル法湿式シリカ(例えば、富士デヴィソン化
学(株)製のサイロイド244、サイロイド150、サ
イロイド72、サイロイド65、SHIELDEX等)
等を使用することができる。また、上記のシリカを2種
以上混合して使用することも可能である。
【0076】シリカには親水性シリカと疎水性シリカと
がある。これらのうち親水性シリカでも耐もらい錆性の
向上効果は期待できるが、疎水性シリカのほうが耐もら
い錆性を顕著に向上させる。親水性シリカは、その表面
が水酸基(
【化1】 )で覆われており、親水性を示す。このシラノール基は
反応性に富むため各種有機化合物と反応しやすく、シリ
カ表面を有機化することができる。一方、疎水性シリカ
は、このような親水性シリカ表面のシラノール基の一部
または大部分をメチル基やアルキル基で置換反応させ、
シリカ表面に疎水化させたものである。
【0077】疎水性シリカの製法は多種多様であり、そ
の代表的なものとして、アルコール類、ケトン類、エス
テル類等の有機溶剤、シラン類、シラザン類、ポリシロ
キサン類等の反応であり、反応の方法としては、有機溶
媒中における反応加圧法、触媒加熱法等がある。シリカ
は優れた防食効果を有しているが、先に述べたように親
水性シリカよりも疎水性シリカのほうが耐もらい錆性を
向上させる効果が大きい。親水性シリカはその強い親水
性のために鉄錆中の鉄イオンや鉄の酸化物の浸透を招き
やすく、これが耐もらい錆性向上に効果が少ない理由で
あると推定される。このため本発明においては、防錆添
加剤としては疎水性シリカを用いるほうが好ましい。
【0078】本発明で使用する難溶性クロム酸塩として
は、クロム酸バリウム(BaCrO4)、クロム酸スト
ロンチウム(SrCrO4)、クロム酸カルシウム(C
aCrO4)、クロム酸亜鉛(ZnCrO4・4Zn(O
H)2)、クロム酸亜鉛カリウム(K2O・4ZnO・4
CrO3・3H2O)、クロム酸鉛(PbCrO4)等の
微粉末が使用できる。また、上記の難溶性クロム酸塩を
2種以上混合して使用することも可能である。但し、耐
食性の観点からは、長期にわたって6価のクロム酸イオ
ンによる自己修復効果の期待できるクロム酸バリウム、
クロム酸ストロンチウムを使用することが好ましい。
【0079】また、自動車の塗装前処理工程において、
有機皮膜中に添加した難溶性クロム酸塩からの水可溶性
クロムの溶出をできるだけ少なくするという観点から
は、水に対する溶解度の小さいクロム酸バリウムを用い
ることが好ましい。難溶性クロム酸塩の平均粒子径とし
ては0.1〜1.0μmの範囲が好ましい。平均粒子径
が0.1μm未満では難溶性クロム酸塩の水に対する溶
解性が過剰となるため、6価のクロム酸イオンによる自
己修復効果の持続性が無くなり、一方、1μmを超える
と電着塗装面の平滑性が低下し鮮映性が劣化する傾向が
あるためである。
【0080】なお、本発明では上記の潤滑剤および防錆
添加剤が樹脂組成物中への主たる添加成分となるが、そ
の他にも導電性物質(例えば、リン化鉄、グラファイ
ト、アンチモンドープ型酸化錫、アンチモンドープ型酸
化錫被覆酸化チタン、アンチモンドープ型酸化インジウ
ム、カーボンブラック、チタンブラック、金属粉末
等)、シランカップリング剤、着色顔料(例えば、縮合
多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料等)、着色
染料(例えば、アゾ系染料、アゾ系金属錯塩染料等)、
界面活性剤等の1種以上を配合することも可能である。
【0081】有機皮膜は、クロメート皮膜上に下記(2)
式を満足する範囲の膜厚で形成される。 0.1[Ra3+1.5{2/(D+2)}+0.5]≦C≦3.0 … (2) 但し C:有機皮膜の膜厚(μm) Ra:亜鉛系めっき鋼板表面の中心線平均粗さ(μm) D:有機皮膜中の潤滑剤の不揮発分の重量割合(wt
%) 0≦D≦50
【0082】まず、有機皮膜の下限値はビード通過後の
潤滑性から規定される。前述したように、自動車の大物
部品に代表されるような絞りビードを付けた金型による
プレス成形の向上を目的として、有機複合被覆鋼板のビ
ード付きプレス成形における成形性劣化要因を調査した
ところ、有機複合被覆鋼板はビード通過時の曲げ、曲げ
戻し等の塑性変形を伴う摺動によって有機皮膜が剥離を
起こし、ビード通過後は、ビード通過前と比較してめっ
き層がより多く露出した状態となり、めっき層とプレス
金型が直接接触する面積がビード通過前と比較して極端
に増加する。その結果、ビード通過後は潤滑性が劣化
し、良好なプレス成形性が得られないことが判明した。
そこで、本発明者らは、ビード通過後の鋼板の潤滑性を
向上させるために、有機複合被覆鋼板のベースめっき鋼
板の表面粗さRa(中心線平均粗さ)、有機皮膜中の潤
滑剤含有量D、有機皮膜の膜厚Cとビード通過後の潤滑
性との関係について検討を行った。
【0083】図9〜図15に、表面粗さの異なる亜鉛系
めっき(表3のNo.1)鋼板の表面に、第1層として
クロメート層を有し、第2層としてエポキシ系樹脂(表
5のNo.14)に防錆添加剤(シリカ+難溶性クロム
酸塩)と、潤滑剤(四フッ化エチレン樹脂微粉末(表7
のNo.17)+ポリオレフィンワックス(表6のN
o.3):0〜50%を添加した有機皮膜(膜厚0.0
5〜4.0μm)を有する有機複合被覆鋼板について、
有機複合被覆鋼板のベースめっき鋼板の表面粗さRa、
有機皮膜中の潤滑剤含有量D及び有機皮膜の膜厚Cとビ
ード通過後の潤滑性との関係の一例を示す。これらの関
係から、有機皮膜の膜厚をある一定以上の厚さCoとす
ることによりビード通過後の潤滑性が向上し、また、有
機複合被覆鋼板のベースめっき鋼板の表面粗さRa、有
機皮膜中の潤滑剤含有量Dによって、ビード通過後も良
好な潤滑性を有するに最低限必要な有機皮膜の膜厚Co
が異なることを見い出した。すなわち、ベースめっき鋼
板の表面粗さRaが細かくなるほど、また、潤滑剤含有
量Dが多くなるほど、ビード通過後も良好な潤滑性を得
るために最低限必要な有機皮膜の膜厚Coは低下する。
【0084】そして、これらの実験結果から、有機複合
被覆鋼板のベースめっき鋼板の表面粗さRa、有機皮膜
中の潤滑剤含有量D、ビード通過後も良好な潤滑性を有
するに最低限必要な有機皮膜の膜厚Coの実験結果を回
帰分析した結果、良好な潤滑性を有するに必要な有機複
合被覆鋼板の最低膜厚Co、有機皮膜中の潤滑剤含有量
Dおよびそのベースめっき鋼板の表面粗さRaとの間
に、下記実験式(i)の関係が存在することを見い出
し、これを有機皮膜の下限膜厚とした。 0.1[Ra3+1.5{2/(D+2)}+0.5]=Co … (i) 但し Ra:亜鉛系めっき鋼板表面の中心線平均粗さ
(μm) D:有機皮膜中の潤滑剤(不揮発分)の含有量(wt
%) Co:良好な潤滑性を有するために最低限必要な膜厚
(μm)
【0085】このように有機皮膜の下限膜厚がベースめ
っき鋼板の表面粗さに依存するのは、有機皮膜が同じ場
合でも、ベースめっき鋼板の表面粗さによって有機皮膜
にかかる力が異なるためであると考えられる。これを図
16に示す模式図に基づいて説明すると、有機皮膜にビ
ードにより一定荷重が加えられた場合、表面粗さが粗い
ものは表面の凸部分に荷重が局所的に集中するため、表
面粗さが小さいものと比較して有機皮膜に非常に大きな
面圧がかかることになる。その結果、皮膜の剥離が生じ
やすくなり、良好な潤滑性を有するに最低限必要な膜厚
は、表面粗さが増加するにしたがって増加するものと考
えられる。なお、潤滑剤添加の効果は、有機皮膜そのも
のの潤滑性が向上したことにより、ビード通過時に剥離
せずに残存した有機皮膜でも、十分な潤滑性が付与でき
るためであると考えられる。
【0086】一方、有機皮膜の膜厚Cの上限値は溶接性
から規定され、有機皮膜の膜厚が3.0μmを超えると
溶接性(特に連続打点性)が低下する。図17に有機皮
膜の膜厚Cとスポット溶接性(連続打点性)との関係を
調べた結果を示す。これによれば、膜厚が3.0μmを
超えるとスポット溶接性が低下することがわかる。図1
8及び図19に本発明が規定する有機皮膜の膜厚の範囲
を示す。
【0087】有機皮膜を得る場合、通常はロールコータ
ー法により塗料組成物を塗布するが、浸漬法やスプレー
法により塗布した後に、エアーナイフ法やロール絞り法
により塗布量を調整することも可能である。また、塗料
組成物を塗布した後の加熱処理は、熱風炉、高周波誘導
加熱炉、赤外線炉等を用いて行うことができる。加熱処
理は、到達板温で80℃〜250℃、好ましくは100
℃〜200℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が
80℃未満では皮膜の架橋が進まないため十分な耐食性
を得ることができない。一方、250℃を超える高温焼
付になると耐食性が劣化する。これは、クロメート皮膜
成分中に含まれる水分の揮散と、水酸基(
【化2】 )どうしの脱水縮合反応の急速な進行とにより、クロメ
ート皮膜のクラック発生による皮膜の破壊が進行し、ま
た、6価クロムの還元が進んで6価クロムの不動態化作
用が低減すること等によるものと推定される。
【0088】なお、本発明をBH性を有する亜鉛系めっ
き鋼板に適用する場合には、170℃以下の加熱処理を
行うことが好ましい。また、自動車車体にはカチオン電
着塗装が施されるが、クロメート皮膜+有機皮膜の湿潤
電気抵抗が200kΩ/cm2を超えるとカチオン電着
塗装が適切に形成されないという問題があり、このため
自動車車体を主たる用途とする本発明鋼板では、クロメ
ート+有機皮膜の湿潤抵抗を200kΩ/cm2以下に
抑えるよう両皮膜を形成させることが好ましい。
【0089】本発明は、以上述べたような皮膜構造を両
面または片面に有する鋼板を含むものである。したがっ
て、本発明の態様としては例えば以下のようなものがあ
る。 (1) 片面:めっき層−クロメート層−有機皮膜,片面:
Fe面 (2) 片面:めっき層−クロメート層−有機皮膜,片面:
めっき面 (3) 片面:めっき層−クロメート層−有機皮膜,片面…
めっき層−クロメート層 (4) 両面:めっき層−クロメート層−有機皮膜 なお、本発明の有機複合被覆鋼板は自動車用に限らず、
家電や建材等の用途にも適用できる。
【0090】有機皮膜上には第3層として防錆油膜層を
設けることができ、この防錆油としては、錆止め添加剤
(例えば、油溶性界面活性剤)、石油系基剤(例えば、
鉱油、溶剤)、油膜調整剤(例えば、鉱油、結晶性物
質、粘調物質)、酸化防止剤(例えば、フェノール系酸
化防止剤)、潤滑剤(例えば、極圧添加剤)を主な構成
成分とした、通常の防錆油、洗浄防錆油、潤滑防錆油等
が挙げられる。通常の防錆油としては、基剤を石油系溶
剤に溶解・分解させた指紋除去型防錆油、溶剤希釈型防
錆油、ペトロラクタム、ワックスを基剤とした潤滑油型
防錆油、気化性防錆油等が挙げられる。
【0091】防錆油膜の付着量は0.01〜10g/m
2とする。付着量が0.01g/m2未満では鋼板と金型
との凝着が起こりやすく、プレス成形性が劣る傾向があ
る。一方、10g/m2を超えると、塗装の前処理工程
における脱脂時に防錆油を完全に除去することが困難と
なる。より高度なプレス成形性及び脱脂性を得るために
は、付着量を0.05〜5g/m2の範囲とすることが
好ましい。
【0092】
【実施例】亜鉛系めっき鋼板をアルカリ脱脂及び水洗、
乾燥した後、クロメート処理を施し、次いで、塗料組成
物をロールコーターにより塗布し、焼き付けた後、防錆
油または洗浄油を塗布した。このようにして得られた有
機複合被覆鋼板について、潤滑性、プレス成形性、耐パ
ウダリング性、耐食性(耐穴あき性)、耐もらい錆性、
塗料密着性、溶接性の各試験を行った。
【0093】(1) 亜鉛系めっき鋼板 (1-1) めっき用素材鋼板 表1および表2に本実施例で使用しためっき用素材鋼板
(板厚0.8mm)を示す。 (1-2) 亜鉛系めっき 表3に本実施例で使用した亜鉛系めっき鋼板のめっき組
成およびめっき付着量を示す。 (1-3) 亜鉛系めっき鋼板 表4に本実施例で使用した亜鉛系めっき鋼板をその表面
粗さ(中心線平均粗さRa)とともに示す。
【0094】(2) クロメート処理 (a) 塗布型クロメート処理:下記に示す液組成のクロメ
ート処理液をロールコーターにより塗布し、水洗するこ
となく乾燥させた。クロメート層の付着量は、ロールコ
ーターのピックアップロールとアプリケーターロールの
周速比を変化させて調整した。 無水クロム酸:20g/L リン酸イオン:4g/L ジルコニウムフッ化物イオン:1g/L 亜鉛イオン:1g/L 6価クロム酸イオン/3価クロム酸イオン:3/3(重
量比) 無水クロム酸/ジルコニウムフッ化物イオン:20/1
(重量比)
【0095】(b) 電解クロメート処理:無水クロム酸:
30g/L、硫酸:0.2g/L、浴温:40℃の処理
液を用いて、電流密度:10A/dm2で亜鉛系めっき
鋼板に陰極電解処理を行ない、水洗、乾燥した。クロメ
ート層の付着量は陰極電解処理の通電量を制御すること
により調整した。 (c) 反応型クロメート処理:無水クロム酸:30g/
L、リン酸:10g/L、NaF:0.5g/L、K2
TiF6:4g/L、浴温:60℃の処理液を用いて亜
鉛系めっき鋼板にスプレー処理し、水洗、乾燥した。ク
ロメート層の付着量は処理時間を変化させ調整した。
【0096】(3) 有機樹脂 表5に有機皮膜に用いた有機樹脂(基体樹脂+硬化剤)
を示す。なお、同表に示す基体樹脂A,Bと硬化剤a〜
e(ポリイソシアネート化合物)は下記に示す方法で作
成した。 〔基体樹脂〕 (I) 還流冷却器、撹拌装置、温度計および窒素ガス吹
込み装置を付属してある反応装置にエピコート1004
(シェル化学(株)製エポキシ樹脂;分子量約160
0)1600gにペラルゴン酸(試薬)57g、キシレ
ン80gを加え、170℃で反応させた。その後、減圧
下でキシレンを除去し、反応中間体〔A〕を得た。
【0097】(II) 撹拌装置、還流冷却器、温度計、液
体滴下装置を付属してある反応装置にエピコート100
9(シェル化学(株)製エポキシ樹脂;分子量約375
0)1880g(0.5モル)とメチルイソブチルケト
ン/キシレン=1/1(重量比)の混合溶媒1000g
を加えた後、撹拌加熱し、溶媒の沸点下で均一に溶解し
た。その後、70℃まで冷却し、液体滴下装置に分取し
たジ(n−プロパノール)アミン70gを30分間を要
して滴下した。この間、反応温度を70℃に保持した。
滴下終了後120℃で2時間保持し、反応を完結させ
た。得られた反応物を樹脂Aとする。樹脂Aの有効成分
は66%である。 (III) 上記(II)と同じ反応装置に(I)で得た反応中間体
〔A〕1650gとキシレン1000gを秤取し、10
0℃に加熱し、これに液体滴下装置に分取したジエタノ
ールアミン65gとモノエタノールアミン30gとを3
0分間要して滴下した。その後120℃で2時間保持
し、反応を完結させた。得られた反応生成物を樹脂Bと
する。樹脂Bの有効成分は63%であった。
【0098】〔硬化剤〕 (a) 6官能イソシアネート(硬化剤a) 温度計、撹拌器および滴下ロート付還流冷却器を付属し
てある反応容器にイソホロンジイソシアネート222部
とメチルイソブチルケトン34部を秤取し、均一に溶解
した後、メチルエチルケトンオキシム87部を前記滴下
ロートから、70℃に保持した撹拌状態のイソシアネー
ト溶液中に2時間を要して滴下した。その後、ソルビト
ール30.4部を加えて120℃に昇温し、120℃で
反応させた。その後、この反応物のIR測定をし、
【数6】 のイソシアネート基による吸収がないことを確認し、ブ
チルセロソルブ50.4部を加え、硬化剤aを得た。こ
の硬化剤aの有効成分は80%であった。
【0099】(b) 4官能イソシアネート(硬化剤b) 温度計、撹拌器および滴下ロート付還流冷却器を付属し
てある反応容器にイソホロンジイソシアネート222部
とメチルイソブチルケトン34部を秤取し、均一に溶解
した後、メチルエチルケトンオキシム87部を前記滴下
ロートから、70℃に保持した撹拌状態のイソシアネー
ト溶液中に2時間を要して滴下した。その後、ペンタエ
リスリトール34部を加えて120℃に昇温し、120
℃で反応させた。その後、この反応物のIR測定をし、
【数7】 のイソシアネート基による吸収がないことを確認し、ブ
チルセロソルブ52部を加え、硬化剤bを得た。この硬
化剤bの有効成分は80%であった。
【0100】(c) 3官能イソシアネート(硬化剤c) 温度計、撹拌器および滴下ロート付還流冷却器を付属し
てある反応容器にデュラネートTPA−100(HMD
Iのイソシアヌル環タイプ;旭化成(株)製)550部
とメチルイソブチルケトン34部を秤取し、均一に溶解
した後、メチルエチルケトンオキシム270部を前記滴
下ロートから、70℃に保持した撹拌状態のイソシアネ
ート溶液中に2時間を要して滴下した。その後、この反
応物のIR測定をし、
【数8】 のイソシアネート基による吸収がないことを確認し、ブ
チルセロソルブ47部を加え、硬化剤cを得た。この硬
化剤cの有効成分は90%であった。
【0101】(d) 2官能イソシアネート(硬化剤d) タケネートB−870N(IPDIのMEKオキシムブ
ロック体;武田薬品工業(株)製)を硬化剤dとして用
いた。 (e) ヘキサメチレンジイソシアネート系6官能イソシア
ネート(硬化剤e) ヘキサメチレンジイソシアネート系の6官能イソシアネ
ート化合物であるデュラネートMF−B80M(HMD
I系の6官能イソシアネートのオキシムブロック体:旭
化成工業(株)製)を硬化剤eとして用いた。
【0102】(4) 潤滑剤 表6〜表8に本実施例で有機皮膜中に添加した潤滑剤を
示す。なお、図20は表7に記載されたNo.18、N
o.19、No.21〜No.28のフッ素樹脂微粉末
のキャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法
(JIS K 7199に準拠)によって測定された見掛
けの溶融粘度を示している。この結果に基づき、各フッ
素樹脂微粉末が先に述べた(3)式の条件を満足している
か否かを表7に示した。なお、表7のNo.17、N
o.29のフッ素樹脂微粉末は、見掛けの溶融粘度が試
験装置の測定限界を超える程度に十分に低く、したがっ
て(3)式の条件を満足していた。また、表7のNo.2
0のフッ素樹脂微粉末は、測定条件よりも融点が高いた
め完全に溶融せず、したがって(3)式の条件を満足して
いなかった。 (5) 防錆添加剤 表9、表10に本実施例で有機皮膜中に添加した防錆添
加剤を示す。
【0103】(6) 塗料組成物 上記の有機樹脂に潤滑剤および防錆添加剤をサンドミル
を用いて分散させ、塗料組成物を作成した。塗料組成物
の構成を表11〜表20に示す。 (7) 防錆油 表21に本実施例で用いた防錆油を示す。
【0104】以上のようにして作成した有機複合被覆鋼
板の構成およびそれらの潤滑性、ビード付きハット成形
性、プレス成形性(深絞り成形性)、耐パウダリング
性、耐食性(耐穴あき性)、耐もらい錆性、塗料密着性
及び溶接性の評価結果を表22〜表59に示す。なお、
各特性の評価方法は以下の通りである。
【0105】(a) 潤滑性(ドロービード後摩擦) 供試材を28.5mm幅に剪断し、図21に示すような
ドロービード試験(3角ビード、ビードの先端半径:
0.5mm、ビード高さ:4mm、押し付け力:400
kgf、引き抜き速度:1.0m/sec)を行なった
後、ビードにより摺動を受けた面を対象面として、図2
2に示す平板摺動試験(ビード:3×10mm、押し付
け力:400Kgf、引き抜き速度:1.0m/se
c)を行い、その時の引き抜き力(F)を測定し、摩擦
係数(μ=F/400)を測定した。なお、評価基準は
以下の通りである。 ◎ :0.06未満 ○+:0.06以上、0.08未満 ○ :0.08以上、0.12未満 △ :0.12以上、0.13未満 × :0.13以上
【0106】(b)ビード付きハット型成形試験 供試材を280×60mmに剪断し、図23に示すビー
ド付きハット型成形試験を下記条件で行い、しわ押さえ
圧(以下BHF)を変化させることにより、割れが初め
て生じたBHFを破断限界BHFとして測定し、材質レ
ベルの異なる冷延鋼板(板厚;0.8mm)の破断限界
BHFと比較した。 試験条件 パンチ径:角筒100mm、パンチ肩半径5mm、 ダイス:ビード半径5mm、ビード高さ2mm、 ブランク:280×60mm 成形高さ:50mm なお、評価基準は以下の通りである。 ◎ :超深絞り用冷延鋼板(表1のNo.8)より優れ
る。 ○+:超深絞り用冷延鋼板(表1のNo.8)と同等。 ○ :高深絞り用冷延鋼板(表1のNo.6)と同等。 △ :深絞り用冷延鋼板(表1のNo.4)と同等。 × :一般加工用冷延鋼板(表1のNo.1)と同等あ
るいはそれより劣る。
【0107】(c) プレス成形性 (条件1)供試材を直径115φの円形に加工し、パン
チ直径:50mm、パンチ肩半径5mm、ダイス直径:
53mm、ダイス肩半径5mm、BHF:3.5トンで
円筒深絞り成形を行ない、割れが発生した時点の深絞り
成形高さを測定し、材質レベルの異なる冷延鋼板(板
厚:0.8mm)の深絞り成形高さと比較した。 (条件2)供試材を直径115φの円形に加工し、パン
チ直径:50mm、パンチ肩半径5mm、ダイス直径:
53mm、ダイス肩半径3mm、BHF:5.0トンで
円筒深絞り成形を行ない、割れが発生した時点の深絞り
成形高さを測定し、材質レベルの異なる冷延鋼板(板
厚:0.8mm)の深絞り成形高さと比較した。条件1
及び条件2における評価基準は以下の通りである。 ◎ :超深絞り用冷延鋼板(表1のNo.8)より優れ
る ○+:超深絞り用冷延鋼板(表1のNo.8)と同等 ○ :高深絞り用冷延鋼板(表1のNo.6)と同等 △ :深絞り用冷延鋼板(表1のNo.4)と同等 × :一般加工用冷延鋼板(表1のNo.1)と同等或
いはそれより劣る
【0108】*なお、実施例No.1、No.4〜N
o.16に関しては、材質の影響をより顕著に見るた
め、本実施例の(条件2)の下での成形高さを、材質レ
ベルの異なる冷延鋼板(板厚:0.8mm)の(条件
1)の測定条件下での深絞り成形高さと比較した。 5:条件1の下での超深絞り用冷延鋼板(表1のNo.
8)より優れる。 4:条件1の下での超深絞り用冷延鋼板(表1のNo.
8)と同等。 3:条件1の下での高深絞り用冷延鋼板(表1のNo.
6)と同等。 2:条件1の下での深絞り用冷延鋼板(表1のNo.
4)と同等。 1:条件1の下での一般加工用冷延鋼板(表1のNo.
1)と同等あるいはそれより劣る。 (実施例中には、プレス成形性の条件2の欄に、上記5
〜1の指数を◎〜×の評価とともに記載した)
【0109】(d) 耐パウダリング性 供試材を30mm幅に剪断し、ビードの先端半径:0.
5mm、ビード高さ:4mm、押し付け力;500kg
f、引き抜き速度:200mm/minで図21に示す
ドロービードテストを行なった後、ビード部で摺動を受
けた部分を接着テープで剥離し、テスト前後の単位面積
当たりのめっき剥離量を測定した。その評価基準は以下
の通りである。 ◎ :2g/m2未満 ○ :2g/m2以上、3g/m2未満 ○−:3g/m2以上、4g/m2未満 △ :4g/m2以上、6g/m2未満 × :6g/m2以上
【0110】(e) 耐食性(耐穴あき性) 供試材を日本パーカライジング(株)製FCL−446
0(標準条件)で脱脂処理し、端部及び裏面をテープシ
ールした後、試験片の下半面にカッターナイフでクロス
カットを入れ、下記の複合腐食試験サイクルの腐食促進
試験を施し、200サイクル後の赤錆発生程度で評価し
た。 5%NaCl噴霧、35℃、4時間 ↓ 乾燥、60℃、2時間 ↓ 95%RH湿潤、50℃、4時間 なお、評価基準は以下の通りである。 ◎ :赤錆発生無し ○+:赤錆面積率5%未満 ○ :赤錆面積率5%以上、10%未満 ○−:赤錆面積率10%以上、20%未満 △ :赤錆面積率20%以上、50%未満 × :赤錆面積率50%以上
【0111】(f) 耐もらい錆性 供試材を日本パーカライジング(株)製FCL−446
0(標準条件)で脱脂処理し、端部及び裏面をテープシ
ールした後、下記の鉄錆共存下の複合腐食試験サイクル
の腐食促進試験を施し、7サイクル後(条件1)及び1
5サイクル後(条件2)の赤錆発生程度で評価した。 鉄錆共存下(*注)5%NaCl浸漬、50℃、18時
間 ↓ 95%RH湿潤、50℃、3時間 ↓ 乾燥、60℃、3時間 (*注) 鉄錆の供給方法:塩水1.0L当たり10c
2の面積の冷延鋼板を浸漬した。 なお、評価基準は以下の通りである。 ◎ :赤錆発生無し ○+:赤錆面積率5%未満 ○ :赤錆面積率5%以上、10%未満 ○−:赤錆面積率10%以上、20%未満 △ :赤錆面積率20%以上、50%未満 × :赤錆面積率50%以上
【0112】(g) 塗料密着性 供試材に日本ペイント(株)製U−600で電着塗装
(25μm)を行ない、次いで関西ペイント(株)製K
PX−36で中塗り塗装(30μm)を行ない、さらに
関西ペイント(株)製ルーガーベークB−531で上塗
り塗装(35μm)を行なった。これらの供試材を40
℃のイオン交換水中に240時間浸漬した後、試験片を
取り出し、24時間室温で放置した後、塗膜に2mm間
隔の碁盤目を100個刻み、接着テープを粘着・剥離し
て、塗膜の残存率で評価した。その評価基準は以下の通
りである。 ◎:剥離無し ○:剥離率3%未満 △:剥離率3%以上、10%未満 ×:剥離率10%以上
【0113】(h) 溶接性 電極として、先端径6mmのDR型アルミナ分散銅を用
い、加圧力:200kgf、通電時間:10サイクル/
50Hz、溶接電流;10kAで連続打点性の試験を行
ない、連続打点数で評価した。その評価基準は以下の通
りである。 ◎:3000点以上 ○:2000点以上、3000点未満 △:1000点以上、2000点未満 ×:1000点未満
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
【表7】
【0121】
【表8】
【0122】
【表9】
【0123】
【表10】
【0124】
【表11】
【0125】
【表12】
【0126】
【表13】
【0127】
【表14】
【0128】
【表15】
【0129】
【表16】
【0130】
【表17】
【0131】
【表18】
【0132】
【表19】
【0133】
【表20】
【0134】表11〜表20中に記載された*1〜*6
は、以下の内容を示す。 *1:表5に記載の有機樹脂No. *2:不揮発分の重量% *3:表6〜表8に記載の潤滑剤No. *4:不揮発分の重量比 *5:表9に記載の防錆添加剤No. *6:表10に記載の防錆添加剤No.
【0135】
【表21】
【0136】
【表22】
【0137】
【表23】
【0138】
【表24】
【0139】
【表25】
【0140】
【表26】
【0141】
【表27】
【0142】
【表28】
【0143】
【表29】
【0144】
【表30】
【0145】
【表31】
【0146】
【表32】
【0147】
【表33】
【0148】
【表34】
【0149】
【表35】
【0150】
【表36】
【0151】
【表37】
【0152】
【表38】
【0153】
【表39】
【0154】
【表40】
【0155】
【表41】
【0156】
【表42】
【0157】
【表43】
【0158】
【表44】
【0159】
【表45】
【0160】
【表46】
【0161】
【表47】
【0162】
【表48】
【0163】
【表49】
【0164】
【表50】
【0165】
【表51】
【0166】
【表52】
【0167】
【表53】
【0168】
【表54】
【0169】
【表55】
【0170】
【表56】
【0171】
【表57】
【0172】
【表58】
【0173】
【表59】
【0174】表22〜表59に記載された*1〜*5
は、以下の内容を示す。 *1:発…本発明例,比…比較例 *2:表4に記載のめっき鋼板No. *3:金属クロム換算のクロメート付着量(mg/
2) *4:表11〜表20に記載の塗料組成物No. *5:表21に記載の防錆油No.
【0175】
【発明の効果】以上述べた本発明の有機複合被覆鋼板
は、優れたプレス成形性と耐もらい錆性を示し、しかも
塗料密着性及び溶接性等の諸特性にも優れていることか
ら、自動車用、家電用および建材用表面処理鋼板として
極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラジカル触媒を用いるラジカル重合法により製
造されたポリエチレンワックスまたは一般成型用ポリエ
チレンを熱分解することにより製造されたポリエチレン
ワックスの分子構造モデル
【図2】チーグラー系触媒を用いる配位アニオン重合法
により製造されたポリエチレンワックスの分子構造モデ
【図3】有機皮膜中に添加されたポリエチレンワックス
の平均分子量と有機複合被覆鋼板のプレス成形性との関
係を示すグラフ
【図4】有機皮膜中に添加されたポリエチレンワックス
の平均分子量と有機複合被覆鋼板のプレス成形性との関
係を示すグラフ
【図5】有機皮膜中に添加されたポリエチレンワックス
の軟化点と有機複合被覆鋼板のプレス成形性との関係を
示すグラフ
【図6】有機皮膜中に添加されたポリエチレンワックス
の軟化点と有機複合被覆鋼板のプレス成形性との関係を
示すグラフ
【図7】有機皮膜中に添加された四フッ化エチレン樹脂
微粉末の融点と有機複合被覆鋼板のプレス成形性との関
係を示すグラフ
【図8】有機皮膜中に添加されたシリカ及び難溶性クロ
ム酸塩の重量比と有機複合被覆鋼板の通常の未塗装耐食
性(耐穴あき性)及び耐もらい錆性との関係を示すグラ
【図9】有機皮膜中の潤滑剤含有量が0%である有機複
合被覆鋼板のビード通過後の潤滑性を、ベースめっき鋼
板の表面粗さと有機皮膜厚との関係で示すグラフ
【図10】有機皮膜中の潤滑剤含有量が2%である有機
複合被覆鋼板のビード通過後の潤滑性を、ベースめっき
鋼板の表面粗さと有機皮膜厚との関係で示すグラフ
【図11】有機皮膜中の潤滑剤含有量が3%である有機
複合被覆鋼板のビード通過後の潤滑性を、ベースめっき
鋼板の表面粗さと有機皮膜厚との関係で示すグラフ
【図12】有機皮膜中の潤滑剤含有量が5%である有機
複合被覆鋼板のビード通過後の潤滑性を、ベースめっき
鋼板の表面粗さと有機皮膜厚との関係で示すグラフ
【図13】有機皮膜中の潤滑剤含有量が10%である有
機複合被覆鋼板のビード通過後の潤滑性を、ベースめっ
き鋼板の表面粗さと有機皮膜厚との関係で示すグラフ
【図14】有機皮膜中の潤滑剤含有量が18%である有
機複合被覆鋼板のビード通過後の潤滑性を、ベースめっ
き鋼板の表面粗さと有機皮膜厚との関係で示すグラフ
【図15】有機皮膜中の潤滑剤含有量が50%である有
機複合被覆鋼板のビード通過後の潤滑性を、ベースめっ
き鋼板の表面粗さと有機皮膜厚との関係で示すグラフ
【図16】有機複合被覆鋼板のベースめっき鋼板の表面
粗さと有機皮膜の膜厚との関係モデル図
【図17】有機複合被覆鋼板の有機皮膜の膜厚と溶接性
の関係を示すグラフ
【図18】有機皮膜中に潤滑剤を添加しない有機複合被
覆鋼板において、本発明の規定する有機皮膜の膜厚の範
囲をベースめっき鋼板の表面粗さとの関係で示すグラフ
【図19】有機皮膜中に潤滑剤を添加した有機複合被覆
鋼板において、本発明の規定する有機皮膜の膜厚の範囲
をベースめっき鋼板の表面粗さとの関係で示すグラフ
【図20】JIS K 7199に準拠したキャピラリー
レオメーターによる流れ特性試験方法によって測定され
た、表7に記載の四フッ化エチレン樹脂の見掛けの溶融
粘度を見掛けの剪断速度との関係で示すグラフ
【図21】実施例で行なったドロービード試験方法を示
す説明図
【図22】実施例で行なった平板摺動試験方法を示す説
明図
【図23】実施例で行なったハット型成形試験方法を示
す説明図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C23C 28/00 C23C 28/00 C (72)発明者 窪田 隆広 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 山崎 雄司 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 春田 泰彦 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−118869(JP,A) 特開 平4−94770(JP,A) 特開 平2−274532(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05D 7/14 B05D 7/24 301 B05D 7/24 302 B32B 15/08 C23C 22/24 C23C 28/00 C09D 163/00

Claims (18)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板の表面に第1層とし
    て、付着量が金属クロム換算で5〜200mg/m2
    クロメート層を有し、その上層に第2層として、下記
    (i)に示すエポキシ系樹脂と防錆添加剤とを不揮発分の
    重量割合で、エポキシ系樹脂:30〜80wt%、防錆
    添加剤:3〜50wt%の割合で含有する有機皮膜を有
    し、該有機皮膜の膜厚が下記(ii)を満足するプレス成形
    性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 (i) エポキシ樹脂の末端に少なくとも1個の塩基性窒素
    原子と少なくとも2個の一級水酸基とを付加した基体樹
    脂(A)100重量部(固形分)に対し、1分子中に少
    なくとも3個のイソシアネート基を有する多官能ポリイ
    ソシアネート化合物(B)を5〜80重量部(固形分)
    の割合で混合したエポキシ系樹脂 (ii) 有機皮膜の膜厚が下記(1)式を満足する。 0.1(Ra3+2)≦C≦3.0 … (1) 但し C:有機皮膜の膜厚(μm) Ra:亜鉛系めっき鋼板表面の中心線平均粗さ(μm)
  2. 【請求項2】 亜鉛系めっき鋼板の表面に第1層とし
    て、付着量が金属クロム換算で5〜200mg/m2
    クロメート層を有し、その上層に第2層として、下記
    (i)に示すエポキシ系樹脂と下記(ii)に示す潤滑剤と防
    錆添加剤とを不揮発分の重量割合で、エポキシ系樹脂:
    30〜80wt%、潤滑剤:50wt%以下(但し、0
    wt%を含まない)、防錆添加剤:3〜50wt%の割
    合で含有する有機皮膜を有し、該有機皮膜の膜厚が下記
    (iii)を満足するプレス成形性及び耐もらい錆性に優
    れた有機複合被覆鋼板。 (i) エポキシ樹脂の末端に少なくとも1個の塩基性窒素
    原子と少なくとも2個の一級水酸基とを付加した基体樹
    脂(A)100重量部(固形分)に対し、1分子中に少
    なくとも3個のイソシアネート基を有する多官能ポリイ
    ソシアネート化合物(B)を5〜80重量部(固形分)
    の割合で混合したエポキシ系樹脂 (ii) フッ素樹脂微粉末、ポリオレフィンワックス、1
    つの粒子中にポリオレフィンとフッ素樹脂とが混在して
    含まれる潤滑剤、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化カ
    ーボンのなかから選ばれる少なくとも1種の潤滑剤 (iii) 有機皮膜の膜厚が下記(2)式を満足する。 0.1[Ra3+1.5{2/(D+2)}+0.5]≦C≦3.0 … (2) 但し C:有機皮膜の膜厚(μm) Ra:亜鉛系めっき鋼板表面の中心線平均粗さ(μm) D:有機皮膜中の潤滑剤(不揮発分)の含有量(wt
    %)
  3. 【請求項3】 有機皮膜に含まれる潤滑剤が、ポリオレ
    フィンワックス(E)とフッ素樹脂微粉末(F)が重量
    比でE/F=90/10〜10/90の割合で混合され
    た複合潤滑剤である請求項2に記載のプレス成形性及び
    耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  4. 【請求項4】 有機皮膜に含まれるポリオレフィンワッ
    クス(E)がチーグラー系触媒を用いる配位アニオン重
    合法により製造されたポリオレフィンワックスである請
    求項2または3に記載のプレス成形性及び耐もらい錆性
    に優れた有機複合被覆鋼板。
  5. 【請求項5】 有機皮膜に含まれるポリオレフィンワッ
    クス(E)が、平均分子量:700〜4500、軟化
    点:100〜140℃のポリエチレンワックスである請
    求項2、3または4に記載のプレス成形性及び耐もらい
    錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  6. 【請求項6】 有機皮膜に含まれるフッ素樹脂微粉末
    (F)が、下記(a)の条件を満足する四フッ化エチレン
    樹脂微粉末である請求項2、3、4または5に記載のプ
    レス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
    板。 (a) JIS K 7199に準拠したキャピラリーレオメ
    ーターによる流れ特性試験方法において、下記測定条件
    の下で測定された見掛けの溶融粘度が、見掛けの剪断速
    度との間で下記(3)式を満足する。 【数1】 測定条件 試験温度:330℃ バレル直径:9.55mm キャピラリー寸法:直径d=1mm,長さ1=10mm キャピラリーの入口:フラット
  7. 【請求項7】 有機皮膜に含まれるフッ素樹脂微粉末
    (F)が融点:300〜330℃である四フッ化エチレ
    ン樹脂微粉末である請求項2、3、4、5または6に記
    載のプレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被
    覆鋼板。
  8. 【請求項8】 有機皮膜に含まれる潤滑剤が、1つの粒
    子中にポリオレフィン(E′)とフッ素樹脂(F′)と
    が混在して含まれる潤滑剤粒子からなる潤滑剤(G)、
    若しくは該潤滑剤(G)とポリオレフィンワックス
    (E)および/またはフッ素樹脂微粉末(F)とが配合
    された複合潤滑剤であって、潤滑剤(G)を構成するポ
    リオレフィン(E′)及びフッ素樹脂(F′)、ポリオ
    レフィンワックス(E)及びフッ素樹脂微粉末(F)が
    下記重量比で配合された潤滑剤若しくは複合潤滑剤であ
    る請求項2に記載のプレス成形性及び耐もらい錆性に優
    れた有機複合被覆鋼板。 (E+E′)/(F+F′)=10/90〜90/10
  9. 【請求項9】 有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を構成
    するポリオレフィン(E′)とポリオレフィンワックス
    (E)が、チーグラー系触媒を用いる配位アニオン重合
    法により製造されたポリオレフィンまたはポリオレフィ
    ンワックスである請求項8に記載のプレス成形性及び耐
    もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  10. 【請求項10】 有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を構
    成するポリオレフィン(E′)とポリオレフィンワック
    ス(E)が、平均分子量:700〜4500、軟化点:
    100〜140℃のポリエチレンまたはポリエチレンワ
    ックスである請求項8または9に記載のプレス成形性及
    び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  11. 【請求項11】 有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を構
    成するフッ素樹脂(F′)とフッ素樹脂微粉末(F)
    が、下記(a)の条件を満足する四フッ化エチレン樹脂ま
    たは四フッ化エチレン樹脂微粉末である請求項8、9ま
    たは10に記載のプレス成形性及び耐もらい錆性に優れ
    た有機複合被覆鋼板。 (a) JIS K 7199に準拠したキャピラリーレオメ
    ーターによる流れ特性試験方法において、下記測定条件
    の下で測定された見掛けの溶融粘度が、見掛けの剪断速
    度との間で下記(3)式を満足する。 【数2】 測定条件 試験温度:330℃ バレル直径:9.55mm キャピラリー寸法:直径d=1mm,長さ1=10mm キャピラリーの入口:フラット
  12. 【請求項12】 有機皮膜に含まれる潤滑剤(G)を構
    成するフッ素樹脂(F′)とフッ素樹脂微粉末(F)が
    融点:300〜330℃の四フッ化エチレン樹脂または
    四フッ化エチレン樹脂微粉末である請求項8、9、10
    または11に記載のプレス成形性及び耐もらい錆性に優
    れた有機複合被覆鋼板。
  13. 【請求項13】 有機皮膜に含まれる多官能ポリイソシ
    アネート化合物が、1分子中に少なくとも4個のイソシ
    アネート基を有する多官能ポリイソシアネート化合物で
    ある請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
    0、11または12に記載のプレス成形性及び耐もらい
    錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  14. 【請求項14】 有機皮膜に含まれる多官能ポリイソシ
    アネート化合物が、1分子中に少なくとも6個のイソシ
    アネート基を有する多官能ポリイソシアネート化合物で
    ある請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
    0、11または12に記載のプレス成形性及び耐もらい
    錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  15. 【請求項15】 有機皮膜に含まれる多官能ポリイソシ
    アネート化合物が、1分子中に少なくとも6個のイソシ
    アネート基を有するヘキサメチレンジイソシアネートの
    多官能体である請求項1、2、3、4、5、6、7、
    8、9、10、11または12に記載のプレス成形性及
    び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  16. 【請求項16】 有機皮膜に含まれる防錆添加剤が、シ
    リカ及び難溶性クロム酸塩からなる群の中から選ばれる
    少なくとも1種からなる請求項1、2、3、4、5、
    6、7、8、9、10、11、12、13、14または
    15に記載のプレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有
    機複合被覆鋼板。
  17. 【請求項17】 有機皮膜に含まれる防錆添加剤が、重
    量比で下記割合のシリカ及び難溶性クロム酸塩からなる
    請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
    1、12、13、14または15に記載のプレス成形性
    及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。 シリカ/難溶性クロム酸塩=35/5〜1/39
  18. 【請求項18】 有機皮膜の上層に第3層として、付着
    量が0.01〜10g/m2の防錆油層を有してなる請
    求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
    1、12、13、14、15、16または17に記載の
    プレス成形性及び耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
    板。
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