JP3215497B2 - ドリル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】本発明は、油穴付きのドリルに関
し、特に、びびりのない高精度の穴あけが可能になるよ
うにしたものである。

【従来の技術】従来、この種のドリルとしては、例えば
特公平２−１７２８７号公報、特開昭６３−８９２１１
号公報、実開平３−８７５１８号公報、特開平４−８４
１３号公報等で開示されているように、先端逃げ面およ
び第２逃げ面から構成されるようにした二段平面研削の
ドリルが知られている。これは、円錐研削の逃げ面を有
するドリルに比べ、容易に刃先精度が得られるために利
用されるものである。そして、二段平面研削ドリルは、
第１逃げ面の角度が通常７°〜１５°（実開平３−８７
５１８号公報では３°〜１０°）に設定されるものであ
る。また、ドリルなどを対象としたスモールリリーフ付
き切削工具としては、例えば特開平１−３２１１０８号
公報に開示されているように、外周稜線部に形成される
マージン又は切刃には、第１逃げ面および第２逃げ面が
形成されている。そして、第１逃げ面の角度は、１°〜
２°に設定されることを記載しているが、先端稜線部に
形成される切刃12の逃げ面構成については何ら記載され
ていない。

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最初に
記載された二段平面研削のドリルは、鋼の穴あけ加工で
は、深さＬおよびドリル径Ｄの比率（Ｌ／Ｄ）が５以上
になるとびびりによる穴精度の低下が生じ、穴あけ能率
の向上が図れなかった。また、次に記載されたスモール
リリーフ付き切削工具は、先端稜線部に形成される切刃
は、直接切削に関与するものであるから、単純にこの角
度構成を適用できないという不都合があった。このよう
なことから、本発明では、高速切削可能で、びびりのな
い高精度の穴あけ加工を可能にした油穴付きのドリルを
提供するものである。

【課題を解決するための手段】本発明は、上述の点に鑑
みなされたもので、ドリル本体１の先端には、１対の先
端切刃稜及びクロスシンニングによるチゼルエッジを備
えた先端逃げ面が形成され、しかもこの先端逃げ面に
は、第１逃げ面及び油穴を開口させた第２逃げ面がそれ
ぞれ形成されるようにしたドリルを前提に改善したもの
である。すなわち、前記第１逃げ面は、０゜〜４°の範
囲内で設定された設定された逃げ角α1が構成され、ま
た、ドリル本体１の端面視では、第１逃げ面及び第２逃
げ面による直線状の交差稜Ｌと先端切刃稜２の外周点Ｑ
との間における幅Ｖが、ドリル直径Ｄを基準にしてＶ≦
（５／１００）・Ｄに設定され、しかも前記交差稜Ｌと
先端切刃稜２の内周点Ｐとの間における幅Ｗが、前記幅
Ｖに対し、Ｗ≧２Ｖの範囲内で設定されるようにしたも
のである。またクロスシンニングのクロス角βについて
は、４０°以上で設定されているものである。

【作用】本発明ドリルは、二段平面研削法により第１逃
げ面および第２逃げ面が形成され、しかも第１逃げ面に
ついては、その逃げ角α1が０°〜４°に設定されてい
るため、クロスシンニングによるチゼルエッジを尖らせ
ることができるものである。したがって、穴あけの喰付
き時のびびりを抑えることができる。また、先端切刃稜
の端面方向における位置関係を特定したことから高速穴
あけ加工に適用した場合、切削油のまわり込み、切屑の
折断形状が改善されるものである。

【実施例】以下、本発明ドリルの一実施例について、図
を参照しながら説明する。図１乃至図３において、１は
例えば超硬合金からなるドリル本体であり、切刃の先端
部分には、１対の先端切刃稜２，第１逃げ面３，第２逃
げ面４およびクロスシンニング５によるチゼルエッジ６
が形成されている。そして、前記第１逃げ面３および第
２逃げ面４による直線状の交差稜Ｌが軸中心を通る直径
線として形成されている。この場合、交差稜Ｌに基づく
第１逃げ面３の逃げ角α1は、図３で明示されるが、α1
＝０゜〜４゜の範囲内で設定されるものである。これ
は、従来における７゜〜１５゜に比べて小さくなってい
るが、特に、クロスシンニング５によるチゼルエッジ６
を尖らせることにより、０゜〜４゜の範囲内であって
も、穴あけ時の喰付きが良好になってびびりを抑えられ
ることを知見したからである。この場合、α1が４゜を
こえると、高速切削に必要な本体強度が低下し、びびり
が発生するため除外した。なお、このチゼルエッジ６
は、穴あけ加工時には、刃先強化のためホーニングが施
される。また、前記先端切刃稜２は、図２で明示されて
いるように、ドリル軸１ａに対して先端角θを有する
が、この先端角θは、通常θ＝１２０゜〜１５０゜の範
囲内で設定され、心厚は、ドリル径Ｄの２５〜３５％の
範囲内で設定される。なお、前記ドリル本体１の外周方
向には、１対のねじれ溝７が形成され、外周切刃稜８側
には、マージン９が形成されるようになっている。この
場合マージン９と反対側にあるヒールの端部には、切屑
排出性の配慮から面取り１０が施されている。さらに、
前記第１逃げ面３は、直線状の前記交差稜Ｌを基準にし
たときには、先端切刃稜２の外周点Ｑおよび内周点Ｐで
それぞれ幅Ｖおよび幅Ｗを有する。そして、この幅Ｖ
は、ドリル径Ｄを基準にして、Ｖ≦（５／１００）・Ｄ
に設定され、幅Ｗは、Ｗ≧２Ｖの関係で設定される。幅
Ｖを幅Ｗよりも小さくして、ドリル径の（５／１００）
・Ｄ以下に設定したのは、第１逃げ面３の幅を小さくし
て第２逃げ面４に開口した油穴１１からの切削油のまわ
り込みを良くする配慮である。これは、換言すれば切削
速度の最も高くなる最外周部の冷却を良好にしようとす
るものであり、Ｖが（５／１００）・Ｄをこえると、切
削油のまわり込みによる冷却が不十分になる。また、幅
Ｗが２Ｖ未満であると、後述するクロス角βの関係でチ
ゼルエッジ６が短くなってびびり振動を抑える点で不具
合になる。さらに、前記クロスシンニング５は、ドリル
の端面視では、前記交差稜Ｌおよびチゼルエッジ６によ
るクロス角βが４０゜以上に設定されている。これは、
切屑の排出容積を確保するためおよびチゼルエッジ６と
先端切刃稜２が互いにびびり振動を抑え合う効果による
ものである。特に、βを４０゜以上に設定すれば、先端
切刃稜２の中心に近い側における切屑が薄くなり、これ
に伴って切屑形状も改善される。これに対し、βを４０
゜未満にすれば、回転速度の小さいチゼルエッジ６によ
る切屑が長くなり、これによる負担で切削トルクが上昇
し不具合になる。このようにして構成された本発明のド
リルについて、Ｓ５０Ｃ（ＨB=１９０〜２２０）からな
る被削材を穴あけ加工したが第１逃げ面３の逃げ角α1
を１０゜とした従来品に比べて、びびり振動が少なく穴
精度の向上が確認された。この場合、本発明品の工具仕
様は、刃先径Ｄ＝φ１０ｍｍで、先端角θ＝１４０゜第
１逃げ角α1＝２゜，第２逃げ角α2＝２０゜としたもの
であり、また、切削条件は、切削速度＝７９，１０１，
１１９ｍ／ｍｉｎ，送り＝０．１８，０．２８ｍｍ／ｒ
ｅｖとしたものである。なお、切削油としては、水溶性
のエマルジョンタイプのものを使用した。なお、本実施
例では、切刃部として超硬合金による場合を説示した
が、サーメット、セラミックスおよび超高圧焼結体によ
る場合にも適用でき、また、これらの切刃部にＴｉＣ，
ＴｉＮ，ＴｉＣＮ，Ａｌ２Ｏ3などの硬質被膜を形成す
るようにしてもよい。さらに、切刃部については、図示
のように工具本体と一体化したソリッド形式に限らず、
鋼製の工具本体部分に前述した材料からなる切刃部をろ
う付けするようにしたものにも適用できることは勿論で
ある。

【発明の効果】本発明は、以上説明したように、第１逃
げ面の逃げ角α1を０゜〜４゜の範囲内に設定して、ク
ロスシンニング５を施すことによりチゼルエッジ６を尖
らせ、しかも油穴１１による切削油のまわり込みを配慮
したものであるから、穴あけ加工の喰付き時に発生する
びびり振動を抑えることができるものである。したがっ
て、高速加工、深穴加工においても、穴精度の向上が期
待できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明ドリルの一実施例を示す端面図である。

【図２】一部正面図である。

【図３】図２のＡ矢視方向からの一部側面図である。

【符号の説明】

１ ドリル本体 ２ 先端切刃稜 ３ 第１逃げ面 ４ 第２逃げ面 ５ クロスシンニング ６ チゼルエッジ ７ ねじれ溝 ８ 外周切刃稜 ９ マージン １０ 面取り １１ 油穴

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 野村 亨 (56)参考文献 特開 平４−8413（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−321108（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−89211（ＪＰ，Ａ) 実開 平３−87518（ＪＰ，Ｕ) 特公 平２−17287（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B23B 51/00,51/06

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ドリル本体１の先端には、１対の先端切刃
   稜２及びクロスシンニング５によるチゼルエッジ６を備
   えた先端逃げ面が形成され、しかもこの先端逃げ面に
   は、第１逃げ面３、第２逃げ面４が形成されたドリルに
   おいて、 前記ドリル本体１の端面視では、第１逃げ面３及び第２
   逃げ面４による直線状の交差稜Ｌと先端切刃稜２の外周
   点Ｑとの間における幅Ｖが、ドリル直径Ｄを基準にして
   Ｖ≦（５／１００）・Ｄに設定され、しかも前記交差稜
   Ｌと先端切刃稜２の内周点Ｐとの間における幅Ｗが、前
   記幅Ｖに対し、Ｗ≧２Ｖの範囲内で設定され、 前記第１逃げ面３には、０゜〜４゜の範囲内で設定され
   た逃げ角α1が構成されるとともに、第２逃げ面４に
   は、油穴11が開口するようにしたことを特徴とするドリ
   ル。
2. 【請求項２】 前記交差稜Ｌおよびチゼルエッジ６によ
   り構成されるクロス角βが４０°以上に設定されている
   請求項１記載のドリル。