JP3191688B2 - 亜鉛系メッキ鋼板の製造方法 - Google Patents

亜鉛系メッキ鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プレス成形性、
スポット溶接性および接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系メッキ鋼板は種々の優れた特徴を
有するために、各種の防錆鋼板として広く使用されてい
る。この亜鉛系メッキ鋼板を自動車用防錆鋼板として使
用するためには、耐食性、塗装適合性等のほかに、車体
製造工程において要求される性能として、プレス成形
性、スポット溶接性および接着性に優れていることが重
要である。
【0003】しかし、亜鉛系メッキ鋼板は、一般に冷延
鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。
これは亜鉛系メッキ鋼板とプレス金型との摺動抵抗が、
冷延鋼板の場合に比較して大きいことが原因である。即
ち、この摺動抵抗が大きいので、ビードと亜鉛系メッキ
鋼板との摺動抵抗が著しく大きい部分で、亜鉛系メッキ
鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起
こりやすくなる。
【0004】亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性を向上さ
せる方法としては、一般に高粘度の潤滑油を塗布する方
法が広く用いられている。しかしこの方法では、潤滑油
の高粘性のために、塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥
が発生したり、またプレス時の油切れにより、プレス性
能が不安定になる等の問題がある。従って、亜鉛系メッ
キ鋼板のプレス成形性が改善されることが強く要請され
ている。
【0005】一方、亜鉛系メッキ鋼板は、スポット溶接
時に電極である銅が溶融した亜鉛と反応して脆い合金層
を形成しやすいために、銅電極の損耗が激しく、その寿
命が短く、冷延鋼板に比べて連続打点性が劣るという問
題がある。
【0006】更に、自動車車体の製造工程においては、
車体の防錆、制振等の目的で各種の接着剤が使用される
が、近年になって亜鉛系メッキ鋼板の接着性は冷延鋼板
の接着性に比較して劣ることが明らかになってきた。
【0007】上述した問題を解決する方法として、特開
昭53-60332号公報および特開平2-190483号公報は、亜鉛
系メッキ鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処
理、または加熱処理を施すことにより、ZnO を主体とす
る酸化膜を形成させて溶接性、または加工性を向上させ
る技術(以下、「先行技術1」という)を開示してい
る。
【0008】特開平4-88196 号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板の表面に、リン酸ナトリウム5 〜60g/l を含みpH2
〜6 の水溶液中にメッキ鋼板を浸漬するか、電解処理、
また、上記水溶液を散布することによりP酸化物を主体
とした酸化膜を形成して、プレス成形性および化成処理
性を向上させる技術(以下、「先行技術2」という)を
開示している。
【0009】特開平3-191093号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処
理または加熱処理により、Ni酸化物を生成させること
によりプレス成形性および化成処理性を向上させる技術
(以下、「先行技術3」という)を開示している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た先行技術には下記の問題がある。先行技術1は、上述
した各種処理により、メッキ層表面にZnO を主体とする
酸化物を生成させる方法であるため、プレス金型とメッ
キ鋼板との摺動抵抗の低減効果は少なく、プレス成形性
の改善効果は少く、また、ZnO 主体の酸化物がメッキ表
面に存在すると接着性が劣化するという問題を有する。
【0011】先行技術2は、P 酸化物を主体とした酸化
膜を亜鉛系メッキ鋼板の表面に形成する方法であるた
め、プレス成形性および化成処理性の改善効果は大きい
が、スポット溶接性および接着性は劣化するという問題
を有する。
【0012】先行技術3は、Ni酸化物単相の皮膜を生
成させる方法であるため、耐食性は向上するが、一方、
接着性が低下するという問題がある。従って、この発明
の目的は、上述した問題を解決して、プレス成形性、ス
ポット溶接性および接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板を
提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
問題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛系メッ
キ鋼板のメッキ層の表面に、適正なFe−Ni−Zn系
金属皮膜を形成することにより、プレス成形性、スポッ
ト溶接性および接着性を大幅に改善することができるこ
とを見出した。
【0014】ここで、適正なFe−Ni−Zn系金属皮
膜とは、下記(1)〜(3): (1)皮膜のFe含有量とNi含有量との合計が、10〜
1500mg/m2 の範囲内にあり、(2)Fe含有量(mg/
m2 )とNi含有量(mg/m2 )との和に対するFe含有
量(mg/m2 )の比率Fe/(Fe+Ni)が、0.05〜0.
9 、望ましくは0.1 〜0.5 の範囲内にあり、(3)Fe
含有量(mg/m2 )とNi含有量(mg/m2 )との和に対す
るZn含有量(mg/m2 )の比率Zn/(Fe+Ni)
が、0.01〜1.6 、望ましくは0.01〜0.7 の範囲内にある
ことを満たすものであるとの知見を得た。
【0015】亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性が冷延鋼
板に比較して劣るのは、高面圧下において融点の低い亜
鉛と金型が凝着現象を起こすために、摺動抵抗が増大す
るのが原因である。これを防ぐためには、亜鉛系メッキ
鋼板の表面のメッキ層の表面に、亜鉛または亜鉛合金メ
ッキ層より硬質で、また高融点の皮膜を形成することが
有効となる。本発明のFe−Ni−Zn系金属皮膜は、
硬質且つ高融点であるから、亜鉛系メッキ鋼板の表面に
Fe−Ni−Zn系金属皮膜を形成させることにより、
プレス成形時におけるメッキ層表面とプレス金型との摺
動抵抗が低下し、亜鉛系メッキ鋼板がプレス金型へ滑り
込みやすくなり、プレス成形性が向上する。
【0016】亜鉛系メッキ鋼板のスポット溶接における
連続打点性が冷延鋼板に比較して劣るのは、溶接時に溶
融した亜鉛と電極の銅とが接触し脆弱な合金層を生成す
るために、電極の劣化が激しくなるためである。従っ
て、亜鉛系メッキ鋼板の連続打点性を改善する方法とし
ては、メッキ表面に、高融点の皮膜を形成することが有
効であるとされている。本発明者らは亜鉛系メッキ鋼板
のスポット溶接性を改善するために、各種の皮膜につい
て検討した結果、Ni金属が特に有効であることを見出
した。この理由は明らかでないが、Ni金属が高融点で
あり、電気伝導度が高いことが理由として考えられる。
【0017】亜鉛系メッキ鋼板の接着性が、冷延鋼板に
比較して劣ることは知られていたが、この原因は明らか
になっていない。そこで、本発明者らが、この原因につ
いて調査した結果、Fe−Ni−Zn系金属皮膜中のF
eが、接着性の改善に有効であることが明らかになっ
た。但し、Feの存在により接着性が改善される機構は
明らかではない。
【0018】本発明は、上述した知見に基づいてなされ
たものであって、亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面
に、Fe−Ni−Zn系金属皮膜を形成することによ
り、プレス成形性、スポット溶接性および接着性に優れ
た亜鉛系メッキ鋼板を製造する方法であり、その要旨は
下記の通りである。
【0019】
【0020】 この発明は、Fe2+イオン、Ni2+イオ
ンおよびZn2+イオンを含む酸性硫酸塩水溶液からなる
メッキ液中で、亜鉛系メッキ鋼板を陰極にして電解する
ことにより前記亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面にF
e−Ni−Zn系金属皮膜を形成することからなる亜鉛
系メッキ鋼板の製造方法において、前記メッキ液中の前
記Fe2+イオン、前記Ni2+イオンおよび前記Zn2+
オンの合計濃度が0.3〜2.0mol/lの範囲内に
あり、前記メッキ液のpHが1〜3の範囲内にあり、前
記メッキ液の温度が30〜70℃の範囲内にあり、且
つ、電流密度が1〜150A/dm2の範囲内にある条
件で前記電解を行ない、更に、前記メッキ液中のFe 2+
イオン濃度(mol/l)、とNi 2+ イオン濃度(mo
l/l)との和に対するZn 2+ イオン濃度(mol/
l)の比率が、0超〜0.5の範囲内にあること、およ
び、前記メッキ液中のZn 2+ イオン濃度X(mol/
l)と、メッキ液平均流速U(m/s)と、前記電流密
度I K (A/dm 2 )との間の関係が下記(1)式 K /(U 1/2 X)≧100 ---(1) を満たす条件で前記電解を行なう ことに特徴を有するも
のである。
【0021】
【発明の実施の形態】次に、この発明の製造条件の限定
理由を述べる。電解液としてFe2+、Ni2+およびZn
2+を含有する酸性硫酸塩水溶液を用いるのは、効率よく
Fe、NiおよびZnを含有させて皮膜を形成するのに
適しているからである。
【0022】電解液中のFe2+、Ni2+およびZn2+
合計濃度は0.3mol/l 未満では、浴の伝導度が低く電
解電圧が高くなり、電流密度が高い場合にはメッキ焼け
が起こってニッケルや鉄の水酸化物を巻き込み溶接性が
低下する。一方、上記合計濃度が2.0mol/l を超える
と溶解度の限界に達して温度が低い場合には硫酸ニッケ
ル、硫酸第一鉄および硫酸亜鉛の沈殿を生じる。従っ
て、電解液中のFe2+、Ni2+およびZn2+の合計濃度
は0.3〜2.0mol/l の範囲内に限定すべきである。
【0023】また、メッキ液には、この発明において用
いられる亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層等に含まれるC
o、Mn、Mo、Al、Ti、Sn、W、Si、Pb、
NbおよびTa等の陽イオンおよび水酸化物並びに酸化
物、更に、硫酸イオン以外の陰イオンを不可避的に含有
していてもよい。
【0024】電解液のpHが1未満では水素発生が陰極
反応の主体となって電流効率が大きく低下し、一方、p
Hが3を超えると第2Feの水酸化物が沈殿析出する。
従って、電解液のpHは1〜3の範囲内に限定すべきで
ある。
【0025】電解液の温度が30℃未満では浴の伝導度
が低く、電解電圧が高くなり、電流密度が高い場合には
メッキ焼けが起こってニッケルおよび鉄の水酸化物を巻
き込み溶接性が低下する。一方、70℃を超えると電解
液の蒸発量が多くなってニッケルイオンおよび鉄イオン
濃度のコントロールが困難になる。従って、電解液の温
度は30〜70℃の範囲内に限定すべきである。
【0026】電流密度が1A/dm2 未満では水素発生が陰
極反応の主体となって電流効率が大きく低下する。一
方、電流密度が150A/dm2 を超えるとメッキ焼けが起
こってFe、NiおよびZnの水酸化物を巻き込み溶接
性が低下する。従って、電流密度は1〜150A/dm2
範囲内に限定すべきである。
【0027】Fe−Ni−Zn系金属皮膜中のZnは、
プレス成形性を向上させる効果をもち、この効果は皮膜
中のFe含有量(mg/m2 )とNi含有量(mg/m2 )との
和に対するZn含有量(mg/m2 )の比率Zn/(Fe+
Ni)を、0.01〜1.6、より望ましくは0.01
〜0.7の範囲内に限定することにより更に大きく発揮
される。
【0028】本発明者は、皮膜中のZn/(Fe+N
i)を0.7以下とするためには、メッキ液中のFe2+
イオン濃度とNi2+イオン濃度との和に対するZn2+
オン濃度の比率を0.5以下とし、更にメッキ液中のZ
2+イオン濃度X(mol/l )と、メッキ液平均流速U(m
/s) と、電流密度IK (A/dm2) との間には、下記(1)
式: IK /(U1/2 X)≧100 ----------------------------(1) の関係が満たされる条件で電解を行なうことが必要であ
ることを見い出した。従って、より望ましくは、メッキ
液中のFe2+イオン濃度とNi2+イオン濃度との和に対
するZn2+イオン濃度の比率を0.5以下とし、更にメ
ッキ液中のZn2+イオン濃度X(mol/l )と、メッキ液
平均流速U(m/s) と、電流密度IK (A/dm2) との間に
は、上記(1)式の関係が満たされる条件で電解を行な
うべきである。
【0029】この発明において用いられるFe−Ni−
Zn系金属皮膜を形成するための亜鉛系メッキ鋼板とし
ては、Fe含有率が7〜15wt.%の合金化溶融亜鉛メッ
キ鋼板、並びに、電気亜鉛メッキ鋼板および溶融亜鉛メ
ッキ鋼板が最適である。これらの亜鉛系メッキ鋼板は冷
延鋼板や亜鉛−ニッケル合金メッキ鋼板に比較して加工
性および溶接性等に劣るため本発明を適用したときに得
られる効果が大きい。
【0030】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。下記3種のメッキ種(符号GA、GIおよびE
G)の亜鉛系メッキ鋼板に対して、硫酸ニッケル、硫酸
第一鉄および硫酸亜鉛の混合溶液中で陰極電解処理を施
すことによりその表面にFe−Ni−Zn系金属皮膜を
形成させた。但し、硫酸亜鉛を含まない溶液中で処理を
施したものおよび処理を施さなかったものを一部含む。
【0031】GA:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(10wt.%
Fe、残部Zn)であり付着量は両面共に60g/m2である。 GI:溶融亜鉛メッキ鋼板であり、付着量は両面共に90
g/m2である。
【0032】EG:電気亜鉛メッキ鋼板であり付着量は
両面共に40g/m2である。 表1〜4に、本発明の範囲内の条件で電解処理をした実
施例1〜24、並びに、電解処理条件の内少なくとも1
つが本発明の範囲外であったか、電解処理をしなかった
場合の比較例1〜16につき、電解処理条件を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】実施例および比較例の各供試体のFe−N
i−Zn系金属皮膜について、下記からを次の方法
で測定した。 Fe含有量とNi含有量との合計値:Fe+Ni(mg
/m2 )、 Fe含有量(mg/m2 )とNi含有量(mg/m2 )との和
に対するFe含有量(mg/m2 )の比率:Fe/(Fe+
Ni)、および、 Fe含有量(mg/m2 )とNi含有量(mg/m2 )との和
に対するZn含有量(mg/m2 )の比率:Zn/(Fe+
Ni) 〔測定方法〕下層のメッキ層中にはFe−Ni−Zn系
金属皮膜中の成分元素を含むので、ICP法では、上層
のFe−Ni−Zn系金属皮膜中の成分と下層のメッキ
層中の成分元素とを完全に分離することは困難である。
そこで、ICP法により、Fe−Ni−Zn系金属皮膜
中の元素の内、下層のメッキ層中に含まれていない元素
のみを定量分析した。更に、Arイオンスパッタした
後、XPS法によりFe−Ni−Zn系金属皮膜中各成
分元素の測定を表面から繰り返すことによって、メッキ
層の深さ方向に対する各成分元素の組成分布を測定し
た。この測定方法においては、下層のメッキ層中に含ま
れていないFe−Ni−Zn系金属皮膜の元素が最大濃
度を示す表面からの深さ(xとする)に、その元素が検
出されなくなる表面からの深さ(yとする)と上記最大
濃度を示す表面からの深さ(x)との差(y−x)の1
/2を加えた表面からの深さ(x+(y−x)/2)、
即ち、最大濃度を示す表面からの深さ(x)と、その元
素が検出されなくなる表面からの深さ(y)との、表面
からの平均深さ((x+y)/2)をFe−Ni−Zn
系金属皮膜の厚さと定義した。そして、ICP法の結果
とXPS法の結果から、Fe−Ni−Zn系金属皮膜の
付着量および組成を算定した。次いで、皮膜中のFe含
有量とNi含有量との合計値、皮膜中のFe/(Fe+
Ni)(含有量比率)、およびZn/(Fe+Ni)
(含有量比率)を算定した。
【0038】表5および6に、実施例および比較例の亜
鉛系メッキ鋼板の表面に形成されたFe−Ni−Zn系
金属皮膜についての〜の測定結果を示す。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】次に、実施例および比較例の供試体につい
て、プレス成形性、スポット溶接性および接着性を評価
するために、摩擦係数測定、スポット溶接における連続
打点性試験および接着性試験を行なった。各評価試験方
法は下記の通りである。
【0042】〔摩擦係数測定試験〕プレス成形性を評価
するために、各供試体の摩擦係数を、下記装置により測
定した。
【0043】図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面
図である。同図に示すように、供試体から採取した摩擦
係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、
水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されて
いる。スライドテーブル3の下面には、これに接したロ
ーラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5
が設けられ、これを押上げることにより、ビード6によ
る摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するため
の第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取
付けられている。上記押付力を作用させた状態で、スラ
イドテーブル3の水平移動方向の一方の端部には、スラ
イドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗
力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテ
ーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑
油として、日本パーカライジング社製ノックスラスト5
50HNを試料1の表面に塗布して試験を行った。
【0044】供試体とビードとの間の摩擦係数μは、
式:μ=F/Nで算出した。但し、押付荷重N:400
kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水
平移動速度):100cm/minとした。
【0045】図2は、使用したビードの形状・寸法を示
す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に
押しつけられた状態で摺動する。その下面形状は、幅1
0mm、摺動方向長さ3mmの平面を有し、その前後面
の幅10mmの各々の線には4.5mmRを持つ筒面の
1/4筒面が同図のように接している。
【0046】〔連続打点性試験〕スポット溶接性を評価
するために、各供試体について連続打点性試験を行っ
た。
【0047】同じ供試体を2枚重ね、それを両面から1
対の電極チップで挟み、加圧通電して電流を集中させた
抵抗溶接(スポット溶接)を、下記条件で連続的に実施
した。 ・電極チップ:先端径6mmのドーム型 ・加圧力:250kgf ・溶接時間:0.2秒 ・溶接電流:11.0kA ・溶接速度:1点/sec. 連続打点性の評価としては、スポット溶接時に、2枚重
ねた溶接母材(供試体)の接合部に生じた溶融凝固した
金属部(ナゲット)の径が、4xt1/2 (t:1枚の板
厚)未満になるまでに連続打点した打点数を用いた。な
お、上記打点数を以下、電極寿命という。
【0048】〔接着性試験〕各供試体から次の接着性試
験用試験体を調製した。図3は、その組み立て過程を説
明する概略斜視図である。同図に示すように、幅25m
m、長さ200mmの2枚の供試体10を、その間に
0.15mmのスペーサー11を介して、接着剤12の
厚さが0.15mmとなるように重ね合わせて接着し、
接着性試験体13を作製し、150℃x10min.の
焼き付けを行う。このようにして調製された前記試験体
を図4に示すようにT型に折り曲げ、引張試験機を用い
て200mm/min.の速度で引張試験をし、試験体
が剥離したときの平均剥離強度(n=3回)を測定し
た。剥離強度は、剥離時の引張荷重曲線の荷重チャート
から、平均荷重を求め、単位:kgf/25mmで表し
た。図4中、Pは引張荷重を示す。なお、接着剤は塩ビ
系のヘミング用アドヒシブを用いた。
【0049】表5および6に、実施例および比較例の各
供試体についての上記評価試験結果を併記した。表1〜
4、並びに表5および6より、下記事項が明らかであ
る。 (1)Fe−Ni−Zn系金属皮膜を形成させなかった
場合(比較例1、13および15)は、亜鉛系メッキ鋼
板のメッキ種の如何を問わず、本発明の範囲内のFe−
Ni−Zn系金属皮膜を形成させた場合と比較して、プ
レス成形性、スポット溶接性および接着性のいずれにお
いても劣っている。
【0050】(2)Zn2+イオンを含まない電解浴中で
皮膜形成処理を施した場合(比較例2〜5、14および
16)には、皮膜中Zn/(Fe+Ni)比率が0で皮
膜の成分はFe−Ni系金属となり、亜鉛系メッキ鋼板
のメッキ種の如何を問わず、本発明の範囲内のFe−N
i−Zn系金属皮膜を形成させた場合と比較して、プレ
ス成形性において劣っている。
【0051】(3)pHが本発明の範囲外に小さい電解
浴で皮膜形成処理を施した場合(比較例8〜10)に
は、電流効率が低下してFe−Ni−Zn系金属皮膜の
付着量が少なくなったため、プレス成形性、スポット溶
接性および接着性のいずれにおいても劣っている。
【0052】(4)Fe2+イオン、Ni2+イオンおよび
Zn2+イオンの合計濃度が本発明の範囲外に低い濃度の
電解浴で皮膜形成処理を施した場合(比較例11および
12)には、浴の伝導度が低く電解電圧が高くなりNi
およびFeの水酸化物を巻き込んだため溶接性の改善効
果が小さい。
【0053】(5)本発明の範囲外に小さい電流密度で
皮膜形成処理をした場合(比較例6)には、Fe−Ni
−Zn系金属皮膜の付着量が少ないため、プレス成形
性、スポット溶接性および接着性のすべてにおいて劣っ
ている。一方、本発明の範囲外に大きい電流密度で皮膜
形成処理をした場合(比較例7)には、メッキ焼けが起
こりFe、NiおよびZnの水酸化物を巻き込んだた
め、スポット溶接性の改善効果が小さい。
【0054】(6)これに対して、本発明の範囲内であ
る実施例1〜24はいずれもプレス成形性、スポット溶
接性および接着性のすべてについて優れている。そし
て、本発明の範囲内であってしかも請求項2記載の発明
に該当する場合(実施例2〜4、7〜13、15、16
および19〜24)にはプレス成形性において一層優れ
ている。
【0055】
【発明の効果】本発明は以上のように構成したので、亜
鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面に形成されたFe−N
i−Zn系金属皮膜は、亜鉛または亜鉛合金メッキ層に
比べて硬質、且つ、高融点であるために、プレス成形時
におけるメッキ層表面とプレス金型との摺動抵抗が低下
させる。また、高融点のFe−Ni−Zn系金属皮膜の
存在により、スポット溶接性における連続打点性を向上
させる効果をもつ。更に、Fe−Ni−Zn系金属皮膜
中のFeの存在により、接着性を向上させる効果をも
つ。従って、本発明によればプレス成形性、スポット溶
接性および接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板の製造方法
を提供することができ、工業上極めて有用な効果がもた
らされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。
【図2】図1中のビードの形状・寸法を示す概略斜視図
である。
【図3】接着性試験体の組み立て過程を説明する概略斜
視図である。
【図4】接着性試験における剥離強度測定時の引張荷重
の負荷を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】 1 摩擦係数測定用試料 2 試料台 3 スライドテーブル 4 ローラ 5 スライドテーブル支持台 6 ビード 7 第1ロードセル 8 第2ロードセル 9 レール 10 供試体 11 スペーサー 12 接着剤 13 接着性試験体 N 押付荷重 F 摺動抵抗力 P 引張荷重
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 櫻井 理孝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−3417(JP,A) 特開 平7−145469(JP,A) 特開 昭57−47890(JP,A) 特開 昭59−173289(JP,A) 特開 平10−30191(JP,A) 特開 平9−143788(JP,A) 特公 昭62−5239(JP,B2) 特公 平7−103474(JP,B2) 特公 昭63−20316(JP,B2) 特公 平7−103475(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 5/26 C25D 3/56

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe2+イオン、Ni2+イオンおよびZn
    2+イオンを含む酸性硫酸塩水溶液からなるメッキ液中
    で、亜鉛系メッキ鋼板を陰極にして電解することにより
    前記亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面にFe−Ni−
    Zn系金属皮膜を形成することからなる亜鉛系メッキ鋼
    板の製造方法において、前記メッキ液中の前記Fe2+
    オン、前記Ni2+イオンおよび前記Zn2+イオンの合計
    濃度が0.3〜2.0mol/lの範囲内にあり、前記
    メッキ液のpHが1〜3の範囲内にあり、前記メッキ液
    の温度が30〜70℃の範囲内にあり、且つ、電流密度
    が1〜150A/dm2の範囲内にある条件で前記電解
    を行ない、更に、前記メッキ液中のFe 2+ イオン濃度
    (mol/l)、とNi 2+ イオン濃度(mol/l)と
    の和に対するZn 2+ イオン濃度(mol/l)の比率
    が、0超〜0.5の範囲内にあること、および、前記メ
    ッキ液中のZn 2+ イオン濃度X(mol/l)と、メッ
    キ液平均流速U(m/s)と、前記電流密度I K (A/
    dm 2 )との間の関係が下記(1)式 K /(U 1/2 X)≧100 ---(1) を満たす条件で前記電解を行なう ことを特徴とする亜鉛
    系メッキ鋼板の製造方法。
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