JP3161266B2 - 射出圧縮成形金型 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば、ディスク状光
学的記録担体であるミニディスク等の光ディスクを成形
するための射出圧縮成形金型に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ミニディスク等の光ディスクは、固定型
および可動型の間に形成されるキャビティ内に情報を記
録した原版としてのスタンパを配しておき、溶融樹脂を
射出して充填硬化させることにより製造されるのが一般
的である。また、スタンパから成形される光ディスクへ
の情報の転写率を向上させ、かつ、低複屈折とするとと
もに、内外周の圧力差を径方向に均一化しかつ冷却時の
収縮量を補うことを目的として、キャビティ内に充填さ
れた樹脂を強制的に加圧する射出圧縮成形法が提案され
ている。

【０００３】この射出圧縮成形法に採用される光ディス
ク用金型としては、固定型および可動型の間に光ディス
クを成形するための１つのキャビティを有するものが一
般的である。可動型には、キャビティの内面の一部を構
成するコア金型が型締方向に移動可能に設けられてい
る。そして、このコア金型をキャビティ側に押圧するこ
とにより、キャビティの容積が収縮させられることとな
って、キャビティ内の樹脂が圧縮されるようになってい
る。

【０００４】この場合に、コア金型をキャビティ側に押
圧するための加圧手段は、例えば、油圧シリンダにより
構成されており、光ディスク用金型が取付けられる射出
成形機に設けられている。そして、該射出成形機におい
て型締めを行うための油圧を利用してコア金型を押圧す
る押圧力を発生するようになっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
光ディスク用金型においては、生産効率の向上を図る目
的で、１つの金型内に光ディスクを成形するための複数
のキャビティを設けることにより、多数個取りを実施す
ることが考えられる。この場合には、各キャビティに対
してその容積を変化させ得る複数のコア金型を有する可
動型を設けることとなる。

【０００６】しかしながら、このような光ディスク用金
型を使用することとすると、複数のコア金型を押圧する
ための複数の油圧シリンダを射出成形機に装備しなけれ
ばならず、射出成形機自体が大型のものとなってしまう
とともに、既存の設備である汎用の射出成形機を有効に
利用することができず、光ディスク専用機として新たに
導入しなければならないという不都合があった。

【０００７】また、射出圧縮成形を実施するための油圧
シリンダとしては、かなりの圧力を発生し得る断面積の
大きな油圧シリンダが必要となる。したがって、多数個
取りを実施する場合には、各キャビティ間の間隔が大き
くなって、金型の大型化や各キャビティに樹脂を供給す
るためのランナ長の増大等が生ずることが考えられる。

【０００８】金型が大型化する場合には、金型の剛性を
保持するために厚肉に形成しなければならず、重量が増
大してしまう不都合が考えられる。また、ランナ長が増
大する場合には、該ランナ内を流通する溶融樹脂を溶融
状態に保持しておくための加熱手段を広範囲に亙って配
設しなければならず、さらに複雑な構造となる不都合が
考えられる。

【０００９】さらに、射出成形機の油圧を利用して全て
の油圧シリンダを同時に作動させる場合には、以下の不
都合が考えられる。すなわち、キャビティ内に配される
スタンパの厚さ寸法は、その保有する情報量等に応じて
変動するものであるため、同一の圧力で同一の移動量だ
けコア金型を変化させる場合には、各キャビティにおけ
る成形条件を全て最適化することが困難である。したが
って、成形条件を各キャビティごとに微調整してバラン
スさせ、全てのキャビティにおける製品の品質を向上す
ることが望まれている。

【００１０】本発明は、上述した事情に鑑みてなされた
ものであって、金型をコンパクトに構成して剛性の向上
ひいては製品精度の向上を図り、加えて、射出成形機の
構造を簡易なものとして汎用機を採用することができる
射出圧縮成形金型を提供することを目的としている。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、相互に接離させられて、複数のキャビテ
ィを型締時に形成する固定型と可動型とからなり、前記
可動型に、各キャビティの内面の一部を構成し型締方向
に移動可能に配されるコア金型と、該コア金型をキャビ
ティに向けて押圧する加圧手段とがそれぞれのキャビテ
ィについて設けられるとともに、前記加圧手段が、複数
段直列に配されるシリンダを具備する射出圧縮成形金型
を提案している。

【００１２】また、上記射出圧縮成形金型において、加
圧手段に、型締完了信号に基づいて各加圧手段を個別に
作動させる制御手段が接続されている構造とすれば効果
的である。

【００１３】

【作用】本発明に係る射出圧縮成形金型によれば、固定
型に対して可動型が密接させられることにより、両金型
間に複数のキャビティが形成される。そして、このキャ
ビティ内に溶融樹脂が充填されながら加圧手段が作動さ
せられると、キャビティの内面の一部を構成しているコ
ア金型がキャビティの容積を縮小させるように押圧され
て、キャビティ内の樹脂が圧縮されることになる。これ
により、キャビティ内に成形される成形体の圧力差が均
一化される。例えば、成形体が光ディスクである場合に
は、その内外周に生じる圧力差が径方向に均一化され
て、製品精度が向上されるとともに、スタンパからの情
報の転写率が向上されると同時に低複屈折な高品質の光
ディスクが成形されることになる。

【００１４】この場合において、コア金型を押圧する加
圧手段が可動型に設けられているので、この射出圧縮成
形金型を取り付ける射出成形機としては、金型の加圧手
段に対して作動流体を供給する汎用機を採用することが
可能となる。また、これとともに、加圧手段が複数段の
シリンダを直列に配して構成されているので、発生する
押圧力を各段に分配して加圧手段全体の径寸法が縮小さ
れ、キャビティ間寸法を低く抑えて金型を小さくかつ高
剛性に構成することが可能となる。その結果、製品とし
ての成形体の品質をさらに向上することが可能となる。

【００１５】また、上記射出圧縮成形金型において、加
圧手段に、型締完了信号に基づいて各加圧手段を個別に
作動させる制御手段を接続することとすれば、射出成形
機から発せられる型締完了信号に基づいて最適なタイミ
ングと加圧力で各キャビティ内の成形体を個別に圧縮し
て、全てのキャビティにおける成形条件を最適に調整す
ることが可能となる。これにより、複数のキャビティ内
に成形される全ての成形体の品質が向上されることにな
る。

【００１６】

【実施例】以下、本発明に係る射出圧縮成形金型（以
下、単に成形金型という。）の一実施例について、図１
から図３を参照して説明する。本実施例に係る成形金型
１は、光ディスク用射出圧縮成形金型であって、図１に
示すように、射出成形機（図示略）取り付けられて、該
射出成形機の作動により相互に接離させられる固定型２
と可動型３とを具備している。該固定型２と可動型３と
の間には、型締めされた状態で、複数（例えば４個）の
光ディスク（成形体）を成形するためのキャビティ４が
形成されるようになっている。

【００１７】前記固定型２は、射出成形機の固定側取付
板（図示略）に固定される金型であって、各キャビティ
４に溶融樹脂を射出する複数のノズル５と、該ノズル５
に接続するランナ６を有し射出成形機から供給される溶
融樹脂を該ランナ６を介して各ノズル５に分配するマニ
ホールド７とを有している。

【００１８】また、固定型２には、各キャビティ４の一
内面を形成することとなる表面にスタンパ８の外周を固
定するリング状のスタンパ押え９ａとスタンパ８の内周
を固定する支持スリーブ９ｂとが取り付けられている。
これらスタンパ押え９ａおよび支持スリーブ９ｂによっ
て、スタンパ８が情報を刻印された表面をキャビティ４
内に向けてそれぞれのキャビティ４に取り付けられるよ
うになっている。固定型２の下面は、キャビティ４の上
内面を構成するようになっている。

【００１９】前記可動型３は、射出成形機の可動側取付
板（図示略）に固定される金型であって、型開き方向に
移動可能に設けられる複数のコア金型１０と、各コア金
型１０をそれぞれ独立して変位させ得る加圧手段１１
と、該加圧手段１１に接続され射出成形機からの信号を
受けて各加圧手段１１に対し適当な油圧を供給する制御
手段１２と、前記固定型２のスリーブ１３との間に形成
されるゲートを下方から突き押して切断するゲートカッ
ト機構１４およびスプルを突き押すエジェクタ機構１５
等とを具備している。図１中、符号１４ａはゲートカッ
トスリーブ、１４ｂはシリンダ、１５ａはエジェクタピ
ン、１５ｂは押圧ロッド、１５ｃはスプリング、１９は
コア金型１０の周囲に配置されてコア金型１０の移動を
支持するとともにキャビティ４の内周面を構成するキャ
ビティリングである。

【００２０】前記コア金型１０は、例えば、可動型３内
部に固定され内周面に複数の鋼球１６を配してなる摺動
スリーブ１７内に嵌合状態に配置され、加圧手段１１の
作動によって、鋼球１６をその外周面に転動させながら
上下方向に微小変位することができるようになってい
る。また、前記加圧手段１１は、図１に示すように、複
数段（例えば２段）の油圧シリンダ（シリンダ）１８よ
り構成されている。

【００２１】前記各油圧シリンダ１８は、相互に直列に
取り付けられており、制御手段１２から供給される油圧
によって同時に同一方向に押圧力を発生するようになっ
ている。すなわち、各油圧シリンダ１８は、必要とされ
る押圧力を発生するためのピストン１８ａの受圧面積を
油圧シリンダ１８の段数によって分配するように構成さ
れている。その結果、各油圧シリンダ１８の外径寸法
は、光ディスクを成形するためのキャビティ４の外径寸
法に対して若干大きくなる程度に形成されており、複数
のキャビティ４の相互間隔寸法を縮小することが可能と
なっている。

【００２２】また、前記制御手段１２は、例えば、図２
に示すように、射出成形機から送信されてくる信号に基
づいて作動させられるタイマ１２ａと、該タイマ１２ａ
からの駆動信号に応じて油圧シリンダ１８に供給する油
圧を調整する油圧調整部１２ｂとを各油圧シリンダ１８
ごと、すなわち、各キャビティ４ごとに具備している。
前記タイマ１２ａは、射出成形機の型締完了信号を受け
てから設定された時間遅延させた後に油圧を発生させる
ように油圧調整部１２ｂに信号を送信する。また、樹脂
射出中における油圧シリンダ１８への圧力上昇のタイミ
ングをも油圧調整部１２ｂに指示するようになってい
る。

【００２３】この制御手段１２における一のタイマ１２
ａと油圧調整部１２ｂの作動状況を示すタイムチャート
を図３に示す。このタイムチャートによれば、射出成形
機から型締完了信号（第２型締完）が送信されると、タ
イマ１２ａ（１圧遅延タイマ）の作動によってコア金型
１０を最初に作動させるための油圧調整部１２ｂへの信
号（１圧）が予め設定された時間経過後に発信されるよ
うになっている。

【００２４】この１圧信号が発信されると、油圧シリン
ダ１８（コア圧縮シリンダ）が作動させられて、キャビ
ティ４内に充填される樹脂が圧縮される。次いで、タイ
マ１２ａ内に設定された所定時間経過ごとに、２圧、３
圧・・・・、６圧信号までが圧力調整部１２ｂに発信され、
油圧シリンダ１８に供給される油圧が上昇させられてい
く。そして、射出成形金型の型開き動作の開始（型開開
始）に先立って射出成形機から発信される型開き信号
（図示略）によって、油圧シリンダ１８へのコア金型１
０の突出方向に供給される油圧がコア金型１０が後退し
ない程度のごく弱い圧力に変更される。その後、製品エ
ジェクタピン突出し時間（図示略）終了と同時に油圧シ
リンダ１８へは、コア金型１０を戻り方向に作動させる
油圧が供給されることになる。

【００２５】本実施例に係る成形金型１においては、上
記のように動作させられるタイマ１２ａおよび油圧調整
部１２ｂが各キャビティ４ごとに設けられているので、
各キャビティ４内の樹脂を圧縮するための各コア金型１
０の動作タイミングを個別に設定することが可能とな
る。したがって、例えば、スタンパ８の厚さがキャビテ
ィ４ごとに相違する場合等のキャビティ１ごとの成形条
件の差異に応じて、成形品の出来栄えが相違する場合が
あるが、この場合にも、オペレータは、その出来栄えに
応じて各キャビティ４内の樹脂を圧縮するためのコア金
型１０の動作タイミングを最適な状態に調整することが
できる。

【００２６】その結果、全てのキャビティ４において成
形される成形品たる光ディスクを均質かつ高品質なもの
とすることができる。さらに、本実施例に係る成形金型
１によれば、射出成形機に取り付けられる成形金型１内
に、各コア金型１０を押圧するための加圧手段１１と、
この加圧手段１１を個別に作動させる制御手段１２とが
設けられている。したがって、射出成形機としては、型
締・型開完了信号等の数種の信号および油圧を成形金型
１に送信し得るものであればよく、特別な射出成形機を
開発あるいは改造するまでもなく、従来より使用してい
た汎用の射出成形機に適用して多数個取りにより光ディ
スクを成形することができる。

【００２７】また、本実施例に係る成形金型１によれ
ば、コア金型１０を押圧する加圧手段１１が複数の油圧
シリンダ１８を直列に接続して構成することとしている
ので、上述したように、その外径寸法を小さくしてキャ
ビティ４間寸法を縮小することができる。したがって、
固定型２に設けられているランナ６の長さを低減し得
て、該ランナ６を加熱状態に保持するためのヒータ等の
加熱部材を減少させて金型構造を簡易なものとすること
ができるとともに、成形金型１全体の重量増大を防止
し、かつ、コンパクト設計により成形金型１の剛性を保
持して製品精度を向上することができる。

【００２８】なお、本実施例においては、４個取りの成
形金型１について記載したが、これに限定されることな
く、２個、３個あるいは５個以上の成形金型１に適用す
ることとしてもよい。また、加圧手段１１として油圧シ
リンダ１８を２段直列に接続したものを例示したが、こ
れに変えて、例えば、３段、４段・・・・とすれば、さらに
外径寸法を低減することができるとともに、押圧力を増
大させることも可能である。この場合には、型開き方向
の寸法増大となるので、両者のバランスを考えながら適
宜に設計することとすればよい。

【００２９】さらに、本発明に係る成形金型１は、コア
金型１０を押圧するための加圧手段１１を具備すること
および該加圧手段１１の動作タイミングを調整する制御
手段１２を設けることを特徴とするものであるから、そ
の他の構成、例えば、固定型２・可動型３の構造、エジ
ェクタ機構１５の構造、ゲートカット機構１４の構造、
コア金型１０の支持構造等は任意に変更することとして
よい。また、光ディスクを成形するための射出圧縮成形
金型を例示して説明したが、これに代えて他の任意の成
形体の成形に適用することとしてよい。

【００３０】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る射出
圧縮成形金型は、固定型に対して接離させられて、型締
時に複数のキャビティを固定型との間に形成する可動型
に、各キャビティについて、その内面の一部を構成し型
締方向に移動可能に配されるコア金型をキャビティに向
けて押圧する加圧手段を設け、加圧手段を、複数段直列
に配されるシリンダにより構成したので、各キャビティ
に対するコア金型の押圧力を個別に調整することができ
るとともに、多数個取りの場合であっても、各キャビテ
ィを近接させて金型自体をコンパクトに構成することが
できるという効果を奏する。

【００３１】その結果、金型の剛性を低減させることな
く成形体の製品精度を向上し、かつ、キャビティごとに
生じる差異をコア金型の押圧力の個別調整によって消滅
させることができる。すなわち、１回の射出圧縮成形に
よって得られる複数の成形体を均質かつ高品質に成形す
ることができるので、生産効率を著しく向上することが
できる。

【００３２】さらに、加圧手段に、型締完了信号に基づ
いて各加圧手段を個別に作動させる制御手段を接続する
こととすれば、従前より使用しておりあるいは特殊仕様
でない汎用の射出成形機に適用して、成形体の成形を高
い生産効率において行うことができるという効果を奏す
る。したがって、特殊な射出成形機の導入や新規設計等
の新たな設備投資を極力低減して、製品コストの低減を
図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る射出圧縮成形金型の一実施例を示
す縦断面図である。

【図２】図１の射出圧縮成形金型の加圧手段に接続され
る制御手段を示すブロック図である。

【図３】図１の射出圧縮成形金型の動作タイミングを示
すタイムチャートである。

【符号の説明】

１ 成形金型（射出圧縮成形金型） ２ 固定型 ３ 可動型 ４ キャビティ １０ コア金型 １１ 加圧手段 １２ 制御手段 １８ 油圧シリンダ（シリンダ）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平５−220598（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−125824（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−208734（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−254916（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−188122（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−229520（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−169512（ＪＰ，Ａ) 実開 昭56−18200（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭49−39871（ＪＰ，Ｕ) 実開 平３−39530（ＪＰ，Ｕ) 登録実用新案3011097（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B29C 45/00 - 45/84

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 相互に接離させられて、複数のキャビテ
   ィを型締時に形成する固定型と可動型とからなり、 前記可動型に、各キャビティの内面の一部を構成し型締
   方向に移動可能に配されるコア金型と、該コア金型をキ
   ャビティに向けて押圧する加圧手段とがそれぞれのキャ
   ビティについて設けられるとともに、 前記加圧手段が、複数段直列に配されるシリンダを具備
   することを特徴とする射出圧縮成形金型。
2. 【請求項２】 加圧手段に、型締完了信号に基づいて各
   加圧手段を個別に作動させる制御手段が接続されている
   ことを特徴とする請求項１記載の射出圧縮成形金型。