JP3077329B2 - 抗血栓性ポリマ組成物およびその製造方法 - Google Patents

抗血栓性ポリマ組成物およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗血栓性に優れ、かつ
非抗血栓性材料との相溶性に優れたポリマ組成物および
その製造法に関する。本発明は医療用分野において好適
に利用される。
【0002】
【従来の技術】材料と血液が接触した場合に起こる不都
合な現象の一つに血栓形成がある。そのため抗血栓性材
料の開発が長年にわたって研究されている。抗血栓性材
料としてこれまでに、1)抗血液凝固剤であるヘパリン
を合成高分子にイオン結合もしくは共有結合させて、血
栓の形成を抑制させる材料(特開昭61−168365
号公報)、2)疎水性、親水性ドメインを同一分子内に
有するブロック共重合体、3)ポリエチレンオキサイド
鎖を表面に有する材料などが開発されている。
【0003】いずれの場合においても抗血栓性を発現さ
せるためには材料、もしくは成型体の血液接触表面に抗
血栓性発現機能を付与する事が重要であり、表面だけに
機能を付与する方法としていくつか実用化されている。
例えば表面への薄膜コーティングとして、前述の特開昭
61−168365公報、特開昭62−8760号公
報、特開昭61−228869号公報等多くの報告があ
り、カテーテルなどに実用化されている。しかし、中空
糸膜などの半透膜では透過性を損なう事なく血液接触面
にコーティングする技術が確立されていない。これは、
抗血栓性物質と基材との化学的結合がされていないまま
医療用具として用いた場合には溶出物が発生し使用でき
ない問題が生じることが原因の一つである。このため、
表面化学修飾により表面に抗血栓性機能を付与する方法
として、再生セルロースからなる高分子膜にポリエチレ
ングリコールカルボン酸無水物をエステル結合させる試
みもなされている(特開平1−297103号公報)。
この他、本発明者は抗血栓性物質で膜を作成する試みを
おこない、親水性のポリエチレンオキサイド鎖を含む共
重合体からなる選択透過性中空繊維を開示した(特開昭
60−22901号公報)。また、親水性のポリエチレ
ンオキサイド鎖を含むアクリロニトリル共重合体とアク
リロニトリルからなる半透膜は溶質透過性、抗血栓性に
優れていることを見い出した(特開昭63−13010
3号公報)。
【0004】ところが、抗血栓性に優れるポリマと、非
抗血栓性材料とをブレンドしようとしても、相溶しない
場合が多く、均一な成形体を形成できない。我々は、鋭
意研究を進めた結果、抗血栓性を維持し、かつ非抗血栓
性材料との親和性に優れたポリマ組成物を発明するに至
った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、コー
ティング基材、膜強度保持材等として用いられる非抗血
栓性材料との親和性に優れ、かつ抗血栓性に優れたポリ
マ組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は下記の構成を有する。 「(1) 親水性成分と疎水性成分からなる抗血栓性ポリマ
を2種以上混合した組成物であって、該2種以上の抗血
栓性ポリマにおいて、疎水性成分の含有割合の最大値と
最小値の差が5重量%以上であることを特徴とする抗血
栓性ポリマ組成物。
【0007】(2)親水性モノマと疎水性モノマの供給速
度を変えて重合することを特徴とする上記1または2項
記載の抗血栓性ポリマ組成物の製造方法。
【0008】(3)反応性の異なる親水性モノマと疎水性
モノマとを重合することを特徴とする上記1または2項
記載の抗血栓性ポリマ組成物の製造方法。」 以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】抗血栓性とは、材料表面と血液が直接接触
した場合に起こる血栓形成を抑制する性質のことであ
り、血液と接触した後の材料表面上の血小板、白血球、
赤血球の量、変形状態を走査型電子顕微鏡観察(SE
M)で観察する評価方法はよく知られている。ガラス板
に対して、血小板の付着が少ないものが本発明での「抗
血栓性ポリマ」に該当する。ここでの基準ガラス板には
マツナミのカバーガラスを用いた。
【0010】本発明の抗血栓性ポリマは、親水性成分、
疎水性成分からなる抗血栓性ポリマであればよく、合成
高分子であっても、天然高分子であってもかまわない。
また、親水性成分および疎水性成分は、それぞれ単独成
分を用いても良いし、複数の成分を用いても良い。本発
明でいう疎水性成分とは、そのホモポリマにおいて25
℃の水に対する溶解度が50重量%未満のものが該当す
る。疎水性成分としては、例えば、エチレン、プロピレ
ン等のオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロ
ゲン化ビニル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエス
テル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル
酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステ
ル、ビニルケトン、マレイミド、スチレン、アクリロニ
トリル等の炭素−炭素二重結合を有する付加重合性化合
物、キチン、キトサン、セルロースなどの天然高分子が
挙げられる。本発明でいう親水性成分とは、そのホモポ
リマにおいて25℃の水に対する溶解度が50重量%以
上の性質を示すものが該当する。親水性成分としては、
例えば、ヘパリン、ビニルアルコール、ビニルピロリド
ン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のア
ルキレングリコール、メタクリル酸ヒドロキシエチル、
アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート等が該
当するが特にこれらのものに限定されるわけではない。
なお、親水性、疎水性の判断基準とするホモポリマはポ
リスチレン換算のGPC法による重量平均分子量が1万
の未架橋ポリマとする。
【0011】また、抗血栓性ポリマとしては、前述のと
おり親水性成分と疎水性成分からなり、抗血栓性を有し
ていればよいが、具体的な抗血栓性ポリマとしては、例
えば、ヘパリン−ポリ塩化ビニル、ヘパリン−ポリスチ
レン、ヘパリン−ポリメチルメタクリレート、ヘパリン
−ポリアクリロニトリル、ヘパリン−シリコーン、ヘパ
リン−セルロース、ポリヒドロキシメチルメタクリレー
ト−ポリ塩化ビニル、ポリヒドロキシメチルメタクリレ
ート−ポリスチレン、ポリビニルピロリドン−ポリ塩化
ビニル、ポリビニルピロリドン−ポリスチレン、ポリビ
ニルピロリドン−ポリメチルメタクリレート、ポリビニ
ルピロリドン−ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロ
リドン−シリコーン、ポリビニルピロリドン−セルロー
ス、ポリビニルピロリドン−ポリスルホン、ポリアルキ
レンオキサイド−ポリ塩化ビニル、ポリアルキレンオキ
サイド−ポリスチレン、ポリアルキレンオキサイド−ポ
リメチルメタクリレート、ポリアルキレンオキサイド−
ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキサイド−シ
リコーン、ポリアルキレンオキサイド−セルロースの組
み合わせなどがあり、優れた抗血栓性が得られるため好
ましい。
【0012】親水性成分、疎水性成分からなる抗血栓性
ポリマの合成法としては、親水性モノマ、疎水性モノマ
を重合成分として、共重合させる方法と、セルロース等
の高分子もしくは合成高分子にポリマもしくはモノマを
反応させて合成する方法があるが、通常モノマを共重合
させる方法が簡単であるために好まれる。共重合方法に
ついては特に限定するものではなく、通常のラジカル開
始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイル
パーオキサイド等を用いて溶媒中で重合する方法は、簡
単であり、好ましく用いられる。
【0013】親水性成分の中でもアルキレングリコール
は特に好ましく、さらにポリエチレンオキサイド単位
に、反応性の二重結合鎖を結合させたマクロモノマは抗
血栓性も高く、共重合体も容易に得られるため好んで用
いられる。
【0014】本発明においては、特に、重合度5以上の
ポリエチレンオキサイド単位と重合性炭素−炭素二重結
合とを同一分子内に有するマクロモノマが好ましく用い
られ、このようなモノマとしては、例えば一般式(1)
【0015】
【化1】 (ここで、n≧5、R1 はHまたはCH3 、R2 は水酸
基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはOCHφ
2 (φはフェニル基))であらわされるアクリル酸、ま
たはメタクリル酸エステル類、あるいは一般式(2)
【0016】
【化2】 (ここで、n≧5、R1 はHまたはCH3 )で表される
ビニル単量体である。
【0017】これらの付加重合性化合物の製法は公知で
あり、その重合性炭素−炭素二重結合により特別な装
置、手法を用いなくても、容易に重合でき、さらに他の
単量体あるいはマクロモノマとの共重合も可能であり、
ポリエチレンオキサイド単位を有する高分子組成物を効
率よく、また再現性よく形成することができる。特に式
(1)で示される成分は、入手も容易なことから好んで
用いられる。共重合体中のポリエチレンオキサイド含有
量は、たとえば元素分析、赤外線吸収スペクトル、核磁
気共鳴スペクトルなどの通常の手法により確認すること
ができる。
【0018】本発明において「親水性成分と疎水性成分
からなる抗血栓性ポリマを2種以上混合した組成物」と
は、ポリマ中における疎水性成分の含有量が異なる2種
以上のポリマを混合してなる組成物であって、親水性成
分、疎水性成分を構成する化合物は同一であっても異な
っていてもよい。また、合成方法を工夫することによ
り、2種以上のポリマを別々に合成しなくても、一度の
合成で、2種以上の抗血栓性ポリマを混合してなる本発
明の組成物を得ることは可能であるが、疎水性成分の含
有割合の最大値と最小値の差が5重量%以上のポリマ
は、本発明の組成物に該当する。「疎水性成分の含有割
合の最大値と最小値の差が5重量%以上である」とは、
2種以上のポリマそれぞれにおける、疎水性成分の重量
含有割合を測定し、その含有割合のうち、最大値と最小
値との差が5重量%以上であることを意味する。ただ
し、混合するポリマにおいて疎水性成分の重量含有量の
差が1重量%以内のポリマの総重量が、混合後の全ポリ
マ組成物中の1重量%未満であるポリマについては、こ
こでいう最大値あるいは最小値とする対象ポリマには含
まれない。
【0019】本発明においては、例えば、非抗血栓性の
疎水性材料表面に本発明の組成物をコーティングする場
合、混合物中の疎水性成分の含有量が高いポリマを選択
的に疎水性表面に濃縮し、逆に、親水性成分の含有量が
高いポリマをコーティング後の表面に濃縮させることが
可能である。抗血栓性を発現させるためには親水性成分
の含有量が比較的高い方が好ましく、また、疎水性表面
との接着性に優れるには、疎水性成分の含有量が高い方
が好ましいため、本発明の組成物を用いることにより、
基材との接着性に優れ、かつ、所望の抗血栓性が発現す
るだけの親水性成分を表面に含有した材料を作成するこ
とが可能である。
【0020】さらに、疎水性の非抗血栓性材料とブレン
ドして成形する場合において、従来の疎水性成分の含有
割合に差のない抗血栓性ポリマを用いた場合、抗血栓性
ポリマ中にブレンドするポリマと同一の成分が含まれる
場合であっても相溶しない場合が多く、また、両者を溶
媒に溶かして使用する場合でも相分離する場合が多く、
このような状態では均一な成形体を形成できなかった。
ところが、上記のとおり、本発明の5重量%以上の疎水
性成分の含有量差を有する組成物を用いることにより、
平均的な親水性成分量は同じであっても、疎水性成分の
含有量差を適宜選択することができるので、抗血栓性ポ
リマ組成物中の疎水性成分の含有量が高いポリマと非抗
血栓性材料との親和性が高まり、相溶もしくは半相溶し
た状態で安定した成形体、混合溶液を形成することが可
能である。中でも、非抗血栓性材料と本発明の抗血栓性
ポリマ組成物において、疎水性成分が同じ場合には、相
溶性が特に優れるため、安定にかつ抗血栓性に優れた膜
が得られる。
【0021】本発明の組成物は、疎水性成分の含有量が
異なるポリマを単に2種類混合した混合物でもよいが、
混合するポリマの組成が離れすぎると組成物内での相溶
性が悪くなるため、できるだけ多くの組成を混合するこ
とが好ましく、さらには疎水性成分の含有量は連続的に
異なっていることが好ましい。
【0022】このように疎水性成分の含有量差を有する
本発明の抗血栓性ポリマ組成物は、非抗血栓性材料と親
和性の高い組成と抗血栓性をより高く発現する親水性の
高い組成を合わせ持つため、抗血栓性を維持し、かつ非
抗血栓性材料との親和性に優れたポリマ組成物である。
中でも、少なくとも一部に疎水性成分の含有量が50重
量%以上である抗血栓性ポリマを含んでいることが、非
抗血栓性材料との親和性に優れるため好ましい。さらに
は、少なくとも一部に疎水性成分の含有量が70重量%
以上であるポリマを含んでいることがより好ましい。
【0023】ポリマの混合物は組成の異なる数種のポリ
マを混合することにより得ることができるが、モノマの
供給速度を変えて重合するか、もしくはモノマの反応性
の差を利用することにより、簡便に組成分布を持つ混合
物が得られる。次にその方法について説明する。
【0024】まず、モノマの供給速度を変えて重合する
方法とは、モノマの少なくとも一成分を重合液中に連続
もしくは断続的に供給することによって重合する方法で
ある。例えば、A,B2成分からなる共重合ポリマを得
る場合にはA成分だけ最初に重合液中に仕込んで、後に
B成分を連続もしくは断続的に供給するする方法が挙げ
られる。また、A、B両成分を共に連続供給する場合で
も両者の供給速度を適当に変えることにより目的の共重
合ポリマ組成物が得られる。
【0025】また、共重合成分の反応性が違う場合に
は、重合中にモノマを供給しなくても、組成分布をもた
せることは可能である。各成分のモノマが共重合ポリマ
になることにより消費される速度を、各成分の反応速度
とすると、AがBより2倍速い系においては重合初期に
はBの2倍の組成を有する共重合ポリマが得られるが全
体の重合率が100%付近ではAのモノマが殆ど残って
いないため、Bのホモポリマに近いものが得られる。
【0026】これらの反応生成物の組成は、各モノマの
反応性より共重合の理論計算によって算出することもで
きるし、反応中の反応液から経時的に生成ポリマを抽出
し、元素分析、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペ
クトルなどの通常の手法により経時的に得られたポリマ
組成を分析することによっても確認することができる。
また、反応中に反応液中の未反応モノマをガスクロマト
グラフィー、高速液体クロマトグラフィーによって定量
し、これより重合した量を計算することによって、経時
的に得られるポリマの組成を確認することもできる。
【0027】抗血栓性ポリマ組成物の成形は注形重合に
よる成形、溶融成形、溶媒キャストまたはディッピング
法などのほかに各種合成樹脂、たとえば軟質ポリ塩化ビ
ニル、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサンなどとの
ブレンド、その表面へのコーティングなど、性質、形状
に応じて適宜選択される。
【0028】溶媒に溶解して用いる場合の溶媒として
は、ポリマ組成物を溶解しうる溶媒は、すべて使用可能
であり、たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルスル
ホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリド
ンなどが好ましく用いられる。またこれらの混合溶媒な
どを使用することも可能である。
【0029】これらの溶媒に溶解した共重合体は塗布お
よび製膜することによって使用することができる。これ
らの成形方法は、公知の方法を用いて行うことができ
る。たとえば平膜の場合においては、温度および湿度の
コントロールされた雰囲気下で、ガラス板上に該製膜原
液を流延し、市販のアプリケータなどで、必要な膜厚に
製膜した後、凝固浴中に浸漬し、凝固脱溶媒を行って、
目標の膜を得ることができる。
【0030】抗血栓性材料と強度保持材等の疎水性の非
抗血栓性材料と混合して併用した場合、成形条件を工夫
することにより、抗血栓性材料の分布を不均一にし、血
液接触面にこの抗血栓性成分を凝集させることが可能で
あるが、疎水性成分の含有割合が5重量%未満のポリマ
組成物では、通常は抗血栓性材料と非抗血栓性材料は非
相溶であるため、両相の相分離が激しく成形できなくな
る。それに対して、本発明のポリマ組成物は、疎水性成
分含有量の平均値が同じ場合は、疎水性材料との相溶性
に優れるため、安定にかつ抗血栓性に優れた膜が得られ
る。
【0031】このような、生体成分非付着性の材料は前
述したような理由で、特に血液や体液あるいは生体組織
と直接接触する医療材料として、有用に用いられること
ができ、たとえば創傷保護材、人工腎臓あるいは人工肺
などの膜材料、薬剤の固定化あるいは徐放化基材、ある
いは血液適合性を要求される各種カテーテル、カニュー
ラ、血管留置針、血液保存容器、血液ポンピングチャン
バーなどとして特に優れた性能を発揮するものである。
【0032】以下、実施例によってさらに詳しく説明す
るが、本発明はこれら実施例により限定されるものでは
ない。
【0033】
【実施例】
実施例1 メトキシポリエチレングリコールメタクリレート”M9
00G”(エチレンオキサイド部分の平均重合度90、
重量平均分子量4060、新中村化学工業(株)製、以
下M900Gと略記)48.5重量部をジメチルスルホ
キシド(以下DMSOと略記)343重量部に溶解した
後、アクリロニトリル(以下ANと略記)113重量部
と2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリ
ル(以下ADVNと略記)0.248重量部を加えて、
窒素雰囲気下の密閉容器内で41℃、48時間の条件に
てラジカル重合を行った。重合後4リットルのメタノー
ル中で残留モノマを抽出し、これを6回繰り返した後に
30℃で48時間真空状態で乾燥させて、抗血栓性ポリ
マ組成物を得た。
【0034】本実施例における重合では、100%に近
い反応率まで重合を行うため、仕込みモノマの組成と重
合終了時の全ポリマの平均組成が同じになる。この組成
物では炭素、水素、窒素の元素分析によって平均のM9
00G含有量が30重量%であることが確かめられた。
重合中に経時的に得られたポリマを元素分析し、また、
高速液体クロマトグラフィーによって、重合中の各モノ
マの反応性を測定するとにより、重合開始直後には、低
濃度のAN成分を含むポリマが生成し、重合終了直前に
は高濃度のAN成分を含むポリマが生成していることを
確認した。組成物全体でのAN成分の含有割合は、50
重量%〜95重量%に分布していた。
【0035】この共重合体10重量部と、公知の方法に
よってAN100重量部をDMSO中で重合したポリス
チレン換算のGPC法による重量平均分子量が60万の
ポリアクリロニトリル6.6重量部とDMSO94重量
部とを混合し、90℃で8時間撹拌し溶解した。撹拌後
の状態は肉眼で透明であり、この温度(90℃)で20
時間保存しておいてもムラは発生せず、透明な状態が保
たれていた。
【0036】またこの組成物の抗血栓性は次の方法で確
かめられた。
【0037】ポリマ溶液を厚さ100μmのスペーサを
張り付けたガラス板に滴下し、ステンレス棒で平膜状に
延伸した。溶媒が蒸発する前に水中にこのガラス板を入
れ多孔質膜を形成した。生成した多孔質フィルムは十分
に水洗を行った。多孔質膜は半透明の状態ではあるが、
肉眼で観察できる1mm以上のムラはなかった。
【0038】この多孔質膜を兎富血小板血漿(PRP)
に37℃、3時間浸漬し、膜表面に付着した血小板量を
走査型電子顕微鏡で観察した。その表面の顕微鏡写真を
図1に示した。ここでPRPは兎頚動脈から注射器を用
いて採血し、直ちに血液の1/9容積の3.8%クエン
酸ナトリウム溶液の入ったシリコン処理を施した試験管
に移し、800回転/分で8分間遠沈させることによっ
て得られたも血小板数が40万個/μlのものを用い
た。
【0039】比較例1 実施例1において、多孔質膜の代わりに、ガラス板を用
いる以外は、同様にして、ガラス表面に付着した血小板
量を走査型電子顕微鏡で観察し、その顕微鏡写真を図2
に示した。実施例1においては、膜の血小板付着量は著
しく少ないことがわかる。
【0040】比較例2 組成の均一な共重合ポリマの合成を行い、比較を行っ
た。M900G27重量部をDMSO838重量部に溶
解した後、AN143重量部とADVN 0.3重量部
を加えて窒素雰囲気下の密閉容器内で41℃、4時間の
条件にてラジカル重合を行った。重合後4リットルの水
中で再沈し、その後残留モノマ成分を4リットルのメタ
ノールで5回抽出した後に30℃で48時間真空状態で
乾燥させて、抗血栓性ポリマ組成物を得た。
【0041】この方法は重合開始後まもなく重合を停止
させるため、反応性の異なるポリマであっても、実施例
1に対してより均一な組成のポリマが得られる。この組
成物も炭素、水素、窒素の元素分析によって平均のM9
00G含有量が30重量%であることが確かめられた。
また、実施例1と同様に元素分析、高速液体クロマトグ
ラフィーによって、PAN成分含有割合の差が5重量%
以下であるポリマの混合物からなる組成物が合成されて
いることを確認した。
【0042】この共重合体10重量部と、公知の方法に
よってANをDMSO中で重合したポリアクリロニトリ
ル6.6重量部とDMSO94重量部とを混合し、90
℃で8時間撹拌し溶解した。撹拌後の状態は肉眼でも相
分離のムラが認められ、この温度(90℃)で20時間
保存しておいて再度観察したところムラの大きさが大き
くなっており、相分離を起こしていた。また、この液を
実施例1と同じ方法で製膜した膜には、1mmから5m
m程度の透明度の異なるムラがあり、このムラの境界で
容易に破れてしまった。
【0043】
【発明の効果】本発明により、コーティング基材、膜強
度保持材等として用いられる非抗血栓性材料との親和性
に優れ、かつ抗血栓性に優れたポリマ組成物を提供する
ことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において得られた膜表面の兎富血小板
血漿の電子顕微鏡写真を示す。
【図2】比較例1において得られた膜表面の兎富血小板
血漿の電子顕微鏡写真を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/16 A61L 33/00 C08F 2/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】親水性成分と疎水性成分からなる抗血栓性
    ポリマを2種以上混合した組成物であって、該2種以上
    の抗血栓性ポリマにおいて、疎水性成分の含有割合の最
    大値と最小値の差が5重量%以上であることを特徴とす
    る抗血栓性ポリマ組成物。
  2. 【請求項2】抗血栓性成分ポリマの構成成分モノマとし
    て、重合度5以上のポリアルキレンオキサイド単位と重
    合性炭素−炭素二重結合とを同一分子内に有するモノマ
    が含まれることを特徴とする請求項1記載の抗血栓性ポ
    リマ組成物。
  3. 【請求項3】親水性モノマと疎水性モノマの供給速度を
    変えて重合することを特徴とする請求項1または2記載
    の抗血栓性ポリマ組成物の製造方法。
  4. 【請求項4】反応性の異なる親水性モノマと疎水性モノ
    マとを重合することを特徴とする請求項1または2記載
    の抗血栓性ポリマ組成物の製造方法。
JP03305460A 1991-10-23 1991-10-23 抗血栓性ポリマ組成物およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3077329B2 (ja)

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